説明

遺伝子発現を用いて腎癌の臨床的結果の見込みを判定する方法

本開示は、その発現が癌、特に腎細胞癌の分類および/または予後において重要である遺伝子および遺伝子セットを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2010年1月11日に出願された米国仮特許出願第61/294,038号明細書の優先権利益および2010年5月19日に出願された米国仮特許出願第61/346,230号明細書の優先権利益を主張するものであり、これらの出願はそれぞれ、その内容全体が本明細書に組み込まれるものとする。
【0002】
本開示は、腎癌患者の予後に関する情報を提供する分子診断アッセイに関する。
【背景技術】
【0003】
米国では毎年、腎細胞癌(腎臓癌)および上部尿路癌が約51,000症例あり、12,900を超える死亡者が出ている。これらの腫瘍は、成人の悪性腫瘍の約3%を占める。腎細胞癌(RCC)は、米国におけるすべての癌の約3パーセントに相当する。2007年の米国についての予測では、40,000人の新しい患者がRCCと診断され、13,000人がこの疾患で死亡するだろうとされている。
【0004】
腎細胞癌患者に対する臨床的結果は、患者の特定の癌が有する病原力に大部分が依存する。全身療法は限られた有効性しか実証されていないため、外科的切除がこの疾患のための最も一般的な処置である。しかしながら、局所的な腫瘍に罹患した患者の約30%は、外科手術の後に再発を経験することになり、腎細胞癌の全患者の40%のみが5年間生存する。
【0005】
米国では、2005年に早期腎細胞癌の患者によるアジュバント処置法の決定の数は25,000を超えた。欧州連合における割合も同様であると予想される。医師は、腎細胞癌の患者のために十分な情報を得た上で処置法を決定する助けとなり、また臨床試験のために適切なハイリスク患者を採用する助けとなる予後情報を必要としている。外科医は、特定の腫瘍の病原力についての予測に一部基づいて、腎臓およびその周辺組織をどの範囲まで取り除くかを決定しなければならない。今日、癌腫瘍は、一般に、病期、悪性度および壊死の存在など臨床的および病理学的特徴に基づいて分類される。これらの指定は標準化された基準を適用することにより行われるが、病理検査室間で一致しないことにより、その主観性が示されてきた。
【発明の概要】
【0006】
本開示は、その発現が腎癌において予後診断的価値を有するバイオマーカーを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1a】RFIと関連した代表的な遺伝子に関して、病期IとIIIとの一致を示す図である。
【図1b】RFIと関連した代表的な遺伝子に関して、病期IとIIIとの一致を示す図である。
【図1c】RFIと関連した代表的な遺伝子に関して、病期IとIIIとの一致を示す図である。
【図2】代表的な遺伝子に関して、エンドポイント(OSおよびRFI)にわたって一致している結果を示す図である。
【図3】カプラン・マイアー曲線:クリーブランドクリニック財団(Cleveland Clinic Foundation)(CCF)の組織学的壊死による無再発期間(RFI)を示す図である。
【図4】CCFデータに適用されたMayo予後診断ツールの成績を示す図である。
【図5】1つの遺伝子を用いて評価を改善する例(Mayo基準に加えてEMCN)を示す図である。
【図6】1つの遺伝子を用いて評価を改善する例(Mayo基準に加えてAQP1)を示す図である。
【図7】1つの遺伝子を用いて評価を改善する例(Mayo基準に加えてPPAP2B)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
定義
別に定義されていない限り、本明細書において使用する技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の技術者が一般に理解するのと同じ意味を有する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology 2nd ed.,J.Wiley & Sons(New York,NY 1994)、およびMarch,Advanced Organic Chemistry Reactions,Mechanisms and Structure 4th ed.,John Wiley & Sons(New York,NY 1992)が、本出願において使用する用語の多くに対して一般的なガイドを当分野の技術者に提供する。
【0009】
当分野の技術者であれば、本発明の実施において使用することができる、本明細書に記載のものに類似または等価な多くの方法および材料を認識されよう。実際、本発明は、記載の方法および材料に決して限定されない。本発明の目的のために、次の用語を以下に定義する。
【0010】
用語「腫瘍」は、すべての新生細胞の成長および増殖、ならびにすべての前癌および癌の細胞および組織を指すために本明細書において使用する。用語「原発腫瘍」は、腫瘍が最初に発生した原発部位にある腫瘍を指すために本明細書において使用する。例えば、原発腎細胞癌腫瘍は腎臓の中で発生した腫瘍である。用語「転移性腫瘍」は、原発部位から離れて成長する腫瘍を指すために本明細書において使用する。例えば、腎細胞癌転移は、最も一般的には、背骨、肋骨、骨盤および近位の長骨を冒す。
【0011】
用語「癌(cancerおよびcarcinoma)」とは、典型的には無秩序な細胞成長を特徴とする、哺乳類における生理学的状態を指すかまたは記載するものである。癌の病理には、例えば、異常または制御不能な細胞成長、転移、近隣細胞の正常機能に対する妨害、サイトカインまたは他の分泌産物の異常なレベルでの放出、炎症応答または免疫応答の抑制または悪化、組織異常増殖、前悪性病変、悪性病変、周辺または遠隔の組織または器官(リンパ節、血管など)の侵襲等が挙げられる。
【0012】
本明細書において使用する用語「腎癌」または「腎細胞癌」とは、腎臓から発生した癌を指す。
【0013】
本明細書において使用する用語「腎細胞癌(renal cell cancerまたはrenal cell carcinoma)」(RCC)とは、近位尿細管曲部の裏層で生じる癌を指す。より具体的には、RCCはいくつかの比較的一般的な組織学的サブタイプ、すなわち、明細胞腎細胞癌、乳頭状小突起(色素親和性細胞)、色素嫌性細胞、集合管癌、および髄様癌を包含する。腎細胞癌に関するさらに詳しい情報は、Y.Thyavihally,et al.,Int Semin Surg Oncol 2:18(2005)に見出すことができ、その内容は参照により本明細書に組み込まれるものとする。明細胞腎細胞癌(ccRCC)はRCCの最も一般的なサブタイプである。ccRCCの発生率は増加しており、局所性疾患の80%および転移性疾患の90%超を含む。
【0014】
腎細胞癌に関する病期分類システムは腎臓を越えて広がった腫瘍の度合いに基づいている。米国対癌合同委員会(American Joint Committee on Cancer)(AJCC)(Greene,et al.,AJCC Cancer Staging Manual,pp.323−325(6th Ed.2002)の腫瘍、リンパ節、および転移(TNM)病期分類システムに従って、腎細胞癌の様々な病期を以下に規定する。本明細書において使用する「高い病期」とは、さらに進行した病期にある腫瘍の分類を指す。例えば、病期4は、病期1、2、および3に比較して高い病期である。
【0015】
RCC病期の説明
腎細胞癌に関する病期
病期1:T1、N0、M0
病期2:T2、N0、M0
病期3:T1〜T2、N1、M0;T3、N0〜1、M0;T3a、N0〜1、M0;T3b、N0〜1、M0;およびT3c、N0〜1、M0
病期4:T4、N0〜1、M0;すべてのT、N2、M0;およびすべてのT、すべてのN、M1
原発腫瘍(T)
TX:原発腫瘍の評価が不可能
T0:原発腫瘍の兆候がない
T1:最大径が7cm以下で、腎臓に限局する腫瘍
T1a:最大径が4cm以下で、腎臓に限局する腫瘍
T1b:最大径が4cm超、7cm以下で、腎臓に限局する腫瘍
T2:最大径が7cm超で、腎臓に限局する腫瘍
T3:腫瘍が、主静脈に進展するか、または副腎もしくは腎周辺組織に浸潤するが、ゲロタ(Gerota)筋膜は越えない
T3a:腫瘍が、副腎または腎周辺および/もしくは腎洞の脂肪組織に直接浸潤するが、ゲロタ筋膜は越えない
T3b:腫瘍が、腎静脈またはその区域(すなわち、筋組織を含有する)分脈に著しく進展するか、または横隔膜下の大静脈に進展する
T3c:腫瘍が、横隔膜上の大静脈に著しく進展するか、または大静脈壁に浸潤する
T4:腫瘍がゲロタ筋膜を越えて浸潤する
所属リンパ節(N)
NX:所属リンパ節の評価が不可能
N0:所属リンパ節転移なし
N1:1個の所属リンパ節転移
N2:2個以上の所属リンパ節転移
遠隔転移(M)
MX:遠隔転移の評価が不可能
M0:遠隔転移なし
M1:遠隔転移あり
【0016】
本明細書において使用する用語「早期腎癌」とは、米国対癌合同委員会(AJCC)Cancer Staging Manual,pp.323−325(6th Ed.2002)で定義される病期1〜3を指す。
【0017】
本明細書において使用する、腎細胞癌に関する腫瘍「悪性度」は、腫瘍細胞の顕微鏡的外観に基づく悪性度分類システムを指す。AJCCのTNM病期分類システムによれば、様々な悪性度の腎細胞癌は次のとおりである。
GX(分化の悪性度評価は不可能);
G1(高分化);
G2(中分化);および
G3〜G4(低分化/未分化)。
本明細書において使用する「高い悪性度」とは、さらに進行した悪性度にある腫瘍の分類を指す。例えば、悪性度4(G4)4は、悪性度1、2および3に比較して高い悪性度である。腫瘍悪性度分類は腎細胞癌における重要な予後因子である。H.Rauschmeier,et al.,World J Urol 2:103−108 (1984)。
【0018】
本明細書において使用する用語「壊死」または「組織学的壊死」とは、生細胞または組織の死を指す。壊死の存在は癌の予後因子になる可能性がある。例えば、壊死は、腎細胞癌(RCC)の中に通常見られ、特定のRCCサブタイプにおける予後不良因子であることを示されてきた。V.Foria,et al.,J Clin Pathol 58(1):39−43(2005)。
【0019】
本明細書において使用する用語「リンパ節浸潤」または「リンパ節陽性(N+)」とは、原発腫瘍を含有する器官と関連した(例えば、器官を排膿する)1つまたは複数のリンパ節中に癌細胞が存在することを指す。リンパ節浸潤は、腎細胞癌を含むほとんどの癌に関する腫瘍病期分類の一部である。
【0020】
用語「予後遺伝子」とは、単数形または複数形で使用するが、その発現レベルが、癌患者の予後良好または予後不良と相関する遺伝子を指す。遺伝子は、その遺伝子発現レベルとそれに対応するエンドポイントとの関連に応じて、予後遺伝子にも予測遺伝子にもなり得る。
【0021】
用語「相関する」および「関連する」とは、本明細書において互換的に使用し、2つの測定(または測定した実体)間の関連性の強さを指す。本開示は、ある遺伝子の発現レベルと再発事象または再燃の可能性との間のように、その発現レベルが特定の結果評価項目と関連する遺伝子および遺伝子サブセットを提供する。例えば、ある遺伝子の発現レベルの増大が、癌の再発可能性の低下など患者の良好な臨床的結果の可能性の増大と正に相関する(正に関連する)ことがある。このような正の相関は、様々な方法で統計的に、例えば1.0未満のハザード比により実証することができる。別の例では、ある遺伝子の発現レベルの増大が、患者にとっての良好な臨床的結果の可能性の増大と負に相関する(負に関連する)ことがある。その場合には、例えば、ある遺伝子が高発現レベルにある患者は、癌の再発の可能性が増大している可能性がある。このような負の相関により、ある遺伝子が高発現レベルにある患者は、予後不良の可能性が高いか、または化学療法に対する反応性が低い可能性があることが示されるが、このことは、様々な方法で統計的に、例えば1.0を超えるハザード比により実証することができる。
【0022】
「共発現」は、生物学的に類似する2つの異なる遺伝子の発現レベル間の関連性の強さを指すために本明細書において使用するが、この関連性の強さの結果として、それらの遺伝子の発現が相関するため、所与の分析おいて、第1の遺伝子の発現レベルは第2の遺伝子の発現レベルで代用可能となる。このような共発現する遺伝子(または相関する発現)は、それらの2つの遺伝子が発現アルゴリズムにおいて相互に代用可能であることを示し、例えば、第1の遺伝子が腎細胞癌に関して良好な臨床的結果の可能性の増加と正または負に高度に相関する場合、第2の共発現遺伝子もまた、第1の遺伝子と同じ方向に同じ結果と相関する。対での共発現は当技術分野で公知の様々な方法により、例えば、ピアソン相関係数もしくはスピアマン相関係数を計算することにより、またはクラスタリング法により計算することができる。本明細書で記載の方法では、少なくとも0.5のピアソン相関係数で共発現する1つまたは複数の遺伝子を組み込むことができる。共発現遺伝子クリークもグラフ理論を用いて確認することができる。共発現の分析は、正規化されたまたは標準化かつ正規化された発現データを用いて計算することができる。
【0023】
用語「予後」および「臨床的結果(clinical outcome)」は、癌に起因する死亡または腎細胞癌などの新生物疾患の再発および転移拡散を含む進行の可能性に関する評価を指すために、本明細書において互換的に使用する。用語「予後良好」または「正の臨床的結果」とは、望ましい臨床的結果を意味する。例えば、腎細胞癌の関連では、予後良好とは、腎細胞癌の初診の2、3、4、5年またはそれ以上の年数内に局所再発または転移がないことの予測とすることができる。用語「予後不良」または「負の臨床的結果」は、望ましくない臨床的結果を意味するために本明細書において互換的に使用する。例えば、腎細胞癌の関連では、予後不良とは、腎細胞癌の初診の2、3、4、5年またはそれ以上の年数内に局所再発または転移があることの予測とすることができる。
【0024】
用語「予測遺伝子」は、その発現が、処置に対して有益に応答する可能性と正または負に相関する遺伝子を指すために本明細書において使用する。
【0025】
「臨床的結果」は、(1)腫瘍成長の病原力(例えばより高い病期への移行);(2)転移;(3)局所再発;(4)処置後の生存期間の増加;および/または(5)処置後のある時点での死亡率の減少を含むがこれらに限定されない任意のエンドポイントを用いて評価することができる。臨床応答も臨床的結果の様々な評価項目によって表現することができる。臨床的結果はまた、比較可能な臨床診断を受けている患者集団の結果に対して個体の結果に関連して検討することができ、無再発期間(RFI)の増加、集団の全生存(OS)期間の増加、無病生存(DFS)期間の増加、遠隔無再発期間(DRFI)の増加等の様々なエンドポイントを用いて評価することができる。
【0026】
本明細書において使用する用語「処置」とは、癌細胞増殖の停止もしくは軽減、腫瘍の縮小、進行および転移の回避、または原発腫瘍もしくは転移の退縮をもたらすために、患者に投与される治療化合物を指す。処置の例としては、例えば、サイトカイン療法、プロゲステロン製剤、抗血管新生療法、ホルモン療法、ならびに化学療法(小分子および生物製剤を含む)が挙げられる。
【0027】
用語「外科手術」または「外科的切除」は、腫瘍の一部または全部と通常は周辺組織の一部とを外科的に除去することを指すために本明細書において使用する。外科的手法の例としては、腹腔鏡手法、生検、または腫瘍アブレーション(凍結療法、高周波アブレーション、および高強度超音波など)が挙げられる。癌患者では、手術中に除去される組織の範囲は、外科医が観察する腫瘍の状態に依存する。例えば、腎部分切除術は、一方の腎臓の一部を除去することを示す;単純な腎切除術は、一方の腎臓全部の除去を意味する;根治的腎切除術は、一方の腎臓全部および近隣組織(例えば副腎、リンパ節)の除去;そして両側性腎切除術は、両方の腎臓の除去。
【0028】
用語「再発」および「再燃」は、癌の潜在的な臨床的結果に関連して、局所転移または遠隔転移を指すために本明細書において使用する。例えばCTイメージング、超音波、動脈造影、またはX線、生検、尿もしくは血液の検査、健康診断、あるいは研究センター腫瘍登録により再発を確認することができる。
【0029】
本明細書において使用する用語「無再発期間」とは、外科手術から最初の再発または腎癌再発による死亡までの時間を指す。再発に先立つ、脱落バイアス(losses to follow−up)、二次原発癌、他の原発癌、および死亡は中途打ち切り事象と見なされる。
【0030】
用語「全生存期間」とは、外科手術から任意の原因による死亡までの時間として定義される。脱落バイアスは中途打ち切り事象と見なされる。再発は全生存期間(OS)を計算する目的に対しては無視される。
【0031】
用語「無病生存期間」とは、外科手術から、どちらが最初に起こっても最初の再発または任意の原因による死亡までの時間として定義される。脱落バイアスは中途打ち切り事象と見なされる。
【0032】
本明細書において使用する用語「ハザード比(HR)」とは、事象(すなわち再発または死亡)のハザードまたはリスクに対する説明変数の影響を指す。比例ハザード回帰モデルでは、HRは、2つの群(例えば壊死のある患者または壊死のない患者)に対する、または連続変数の単位変化(例えば遺伝子発現の1標準偏差変化)に対する予測ハザードの比である。
【0033】
本明細書において使用する用語「オッズ比(OR)」とは、事象(例えば壊死の存在)のオッズに対する説明変数の影響を指す。ロジスティク回帰モデルでは、ORは、連続変数の単位変化(例えば遺伝子発現の1標準偏差変化)に対する予測オッズの比である。
【0034】
本明細書において使用する用語「予後の臨床的および/または病理学的共変数」とは、臨床的結果に有意に関連する(p≦0.05)臨床的および/または予後の共変数を指す。例えば、腎細胞癌における予後の臨床的および病理学的共変数としては、腫瘍病期(例えば大きさ、リンパ節浸潤等)および悪性度(例えばFuhrman悪性度)、組織学的壊死、及び性別が挙げられる。
【0035】
用語「代理(proxy)遺伝子」とは、その発現が1つまたは複数の予後の臨床的および/または病理学的共変数と(正または負に)相関する遺伝子を指す。1つまたは複数の代理遺伝子の発現レベルを、病理検査室における物理的または機械的検査による腫瘍の分類の代わりにまたはそれに加えて使用することができる。
【0036】
用語「マイクロアレイ」とは、基材上のハイブリダイズ可能なアレイエレメント、好ましくはポリヌクレオチドプローブの規則正しい配置を指す。
【0037】
用語「ポリヌクレオチド」とは、単数形または複数形で使用する場合、一般に、任意のポリリボヌクレオチドまたはポリデオキシリボヌクレオチドを指し、修飾されていないRNAもしくはDNAであっても修飾されたRNAもしくはDNAであってもよい。したがって、例えば、本明細書において定義されるポリヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、一本鎖および二本鎖DNA、一本鎖および二本鎖領域を含むDNA、一本鎖および二本鎖RNA、ならびに一本鎖および二本鎖領域を含むRNA、一本鎖もしくはより典型的には二本鎖であり得るかまたは一本鎖および二本鎖領域を含み得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子が挙げられる。さらに、本明細書において使用する用語「ポリヌクレオチド」は、RNAもしくはDNAまたはRNAおよびDNAの両方を含む三本鎖領域も指す。このような領域中の鎖は、同一分子に由来することも異なる分子に由来することもある。これらの領域には、1つまたは複数の分子すべてが含まれ得るが、より典型的にはこれらの中の一部の分子の領域のみが含まれ得る。多くの場合、三重らせん領域の分子の1つはオリゴヌクレオチドである。用語「ポリヌクレオチド」は、具体的には1つまたは複数の修飾塩基を含有するDNA(例えばcDNA)およびRNAを含む。したがって、安定性のためにまたは他の理由で修飾された主鎖を有するDNAまたはRNAは、本明細書においてその用語が意図する「ポリヌクレオチド」である。さらに、イノシンなどの異常塩基またはトリチウム化塩基などの修飾塩基を含むDNAまたはRNAは、本明細書において定義する用語「ポリヌクレオチド」の中に含まれる。一般に、用語「ポリヌクレオチド」は、修飾されていないポリヌクレオチドが化学的、酵素的および/または代謝的に修飾されたすべての形態、ならびに単純な細胞および複雑な細胞を含む細胞およびウイルスに特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
【0038】
用語「オリゴヌクレオチド」とは、比較的短いポリヌクレオチドを指し、これらに限定されないが、一本鎖デオキシリボヌクレオチド、一本鎖または二本鎖リボヌクレオチド、RNA:DNAハイブリッド、および二本鎖DNAが含まれる。一本鎖DNAプローブオリゴヌクレオチドなどのオリゴヌクレオチドは、化学的方法によって、例えば、市販の自動オリゴヌクレオチド合成装置を用いて合成される場合が多い。しかしながら、オリゴヌクレオチドは、インビトロ組換えDNA媒介技術を含む様々な他の方法によって、ならびに細胞および生物体内でのDNAの発現によって作製することができる。
【0039】
遺伝子に適用される用語「発現レベル」とは、遺伝子産物の正規化されたレベルを指す。
【0040】
用語「遺伝子産物」または「発現産物」は、mRNAを含む遺伝子のRNA転写産物(RNA転写物)およびそのようなRNA転写物のポリペプチド翻訳産物を指すために本明細書において互換的に使用する。遺伝子産物は、例えば、スプライシングされていないRNA、mRNA、スプライシング変異mRNA、マイクロRNA、断片化RNA、ポリペプチド、翻訳後修飾ポリペプチド、スプライシング変異ポリペプチド等であり得る。
【0041】
ハイブリダイゼーション反応の「ストリンジェンシー」は、当分野の技術者によって容易に決定可能であり、一般には、プローブ長、洗浄温度、および塩濃度に依存する経験的計算である。一般には、より長いプローブは、適切なアニーリングのためにより高い温度を必要とするが、より短いプローブは、より低い温度を必要とする。ハイブリダイゼーションは、一般には、相補鎖がそれらの融解温度より低温の環境に存在する場合、変性したDNAが再アニールする能力に依存する。プローブとハイブリダイズ可能な配列との間の所望の相同性の程度が高いほど、使用できる相対温度が高くなる。結果として、より高い相対温度は、反応条件をよりストリンジェントにするが、より低い温度は、反応条件をあまりストリンジェントにしない傾向にある。ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーのさらなる詳細および説明については、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,(Wiley Interscience,1995)を参照のこと。
【0042】
本明細書において定義する「ストリンジェントな条件」または「高度にストリンジェントな条件」は、典型的には以下のとおりである。(1)洗浄のために、低イオン強度の溶液および高い温度、例えば0.015M塩化ナトリウム/0.0015Mクエン酸ナトリウム/0.1%ドデシル硫酸ナトリウムを50℃で使用する;(2)ハイブリダイゼーション中に、ホルムアミドなどの変性剤、例えば0.1%ウシ血清アルブミン/0.1%フィコール(Ficoll)/0.1%ポリビニルピロリドン/50mMリン酸ナトリウム緩衝液(pH6.5、750mM塩化ナトリウム、75mMクエン酸ナトリウムを含む)を含む50%(v/v)ホルムアミドを42℃で使用する;または、(3)50%ホルムアミド、5×SSC(0.75M NaCl、0.075Mクエン酸ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.1%ピロリン酸ナトリウム、5×デンハルト(Denhardt)液、超音波処理したサケ精子DNA(50μg/ml)、0.1%SDS、および10%硫酸デキストランを42℃で使用し、0.2×SSC(塩化ナトリウム/クエン酸ナトリウム)中42℃で、50%ホルムアミド中55℃で洗浄した後、EDTAを含有する0.1×SSCからなる高ストリンジェンシーの洗浄を55℃で行う。
【0043】
「中程度にストリンジェントな条件」は、Sambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Cold Spring Harbor Press,1989)に記載のとおりに特定することができ、上記よりもストリンジェントではない洗浄溶液およびハイブリダイゼーション条件(例えば、温度、イオン強度、および%SDS)の使用を含む。中程度にストリンジェントな条件の例は、20%ホルムアミド、5×SSC(150mM NaCl、15mMクエン酸三ナトリウム)、50mMリン酸ナトリウム(pH7.6)、5×デンハルト液、10%硫酸デキストラン、および20mg/ml変性剪断サケ精子DNAを含む溶液中で37℃にて一晩インキュベートした後、約37〜50℃で1×SSC中にてフィルターを洗浄するものである。当分野の技術者であれば、プローブ長などの因子を適応させるために必要な温度、イオン強度等を調整する方法を認識していよう。
【0044】
本発明に関連して、任意の特定の遺伝子セットに記載された遺伝子について「少なくとも1つ」、「少なくとも2つ」、「少なくとも5つ」等の表現は、リストに記載された遺伝子のうちの任意の1つまたはありとあらゆる組合せを意味する。
【0045】
用語「スプライシング」および「RNAスプライシング」は互換的に使用され、真核細胞の細胞質へ移行する、連続したコード配列を有する成熟mRNAを、イントロンを除去しエキソンを連結して生成させるRNAプロセシングを指す。
【0046】
理論上では、用語「エキソン」とは、成熟RNA産物で表される分断化された遺伝子の任意のセグメントを指す(B.Lewin,Genes IV(Cell Press,1990))。理論上では、用語「イントロン」とは、転写されるが、その両側にあるエキソンと共にスプライシングされることにより、転写物内から除去される、DNAの任意のセグメントを指す。操作上、エキソン配列は、参照配列番号により定義される遺伝子のmRNAの配列内に存在する。操作上、イントロン配列は、ゲノムDNA内の遺伝子の介在配列であり、エキソン配列により挟まれ、その5’側および3’側の境界にGTおよびAGのスプライシング共通配列を通常有する。
【0047】
「コンピュータベースシステム」は、情報を分析するために用いられるハードウェア、ソフトウェア、およびデータ記憶媒体からなるシステムを指す。患者用コンピュータベースシステムの最小ハードウェアは、中央処理装置(CPU)、ならびにデータ入力、データ出力(例えばディスプレイ)およびデータ記憶のためのハードウェアを含む。当分野の技術者であれば、現在利用可能なコンピュータベースシステムおよび/またはそのコンポーネントはいずれも、本開示の方法に関連して使用するのに適していることを容易に認識することができる。データ記憶媒体は、上記に記載のような、現在の情報を記録することを含むいずれの製品も、またはそのような製品にアクセスすることができるメモリアクセス装置も含むことができる。
【0048】
コンピュータが読取り可能な媒体上に、データ、プログラミング、または他の情報を「記録する」こととは、当技術分野で公知の任意の方法も用いて、情報を記憶する工程を指す。記憶情報にアクセスするために使用する手段に基づいて、任意の好都合なデータ記憶機構を選択することができる。データプロセッサの様々なプログラムおよびフォーマット、例えばワードプロセシングテキストファイル、データベースフォーマット等を記憶のために使用することができる。
【0049】
「プロセッサ」または「計算手段」とは、それに要求される機能を実行することになる任意のハードウェアおよび/またはソフトウェアの組合せを指す。例えば、適切なプロセッサは、電子制御器、メインフレーム、サーバ、またはパーソナルコンピュータ(デスクトップまたはポータブル)の形態で利用できる、プログラム可能なデジタルマイクロプロセッサとすることができる。プロセッサがプログラム可能な場合には、適切なプログラミングを、遠隔地からプロセッサに伝達するか、またはコンピュータプログラム製品(磁気、光学、または固体素子の装置のいずれかをベースとした、ポータブルまたは固定コンピュータの読取り可能記憶媒体など)の中にあらかじめ保存することができる。例えば、磁気媒体または光ディスクは、プログラミングを保持可能であり、その対応するステーションにある、各プロセッサと通じている適切な読取り装置により読むことができる。
【0050】
本開示は、患者の癌再発リスクを評価する方法を提供し、この方法は、患者から得られた生体試料中の、少なくとも1つの遺伝子またはその遺伝子産物の発現レベルをアッセイすることを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、患者の腎臓または周辺組織から得られた腫瘍試料であり得る。他の実施形態では、生体試料は血液または尿などの体液から得られる。
【0051】
本開示は本明細書において開示される方法に有用な遺伝子を提供する。これらの遺伝子は表3aおよび3bに記載されており、表3aに記載の遺伝子の発現増大は、癌再発のより低いリスクと有意に関連し、表3bに記載の遺伝子の発現増大は、癌再発のより高いリスクと有意に関連する。いくつかの実施形態では、共発現遺伝子を、それが共発現する相手である、表3aまたは3bに記載の遺伝子と一緒にまたはその代わりに使用することができる。
【0052】
本開示は、臨床的/病理学的共変数(病期、腫瘍悪性度、腫瘍サイズ、リンパ節の状態、および壊死の存在)を調整した後に、腎癌再発と正または負に有意に関連する遺伝子をさらに提供する。例えば、表8aには、臨床的/病理学的共変数を調整した後に、発現増大が腎癌再発のより低いリスクと有意に関連する遺伝子が記載されており、表8bには、臨床的/病理学的共変数を調整した後に、発現増大が腎癌再発のより高いリスクと有意に関連する遺伝子が記載されている。表8aおよび8bに記載の遺伝子のうち、臨床的/病理学的共変数を調整し、偽発見率(false discovery rate)を10%に制御した後に、予後良好と正または負に有意に関連する16個の遺伝子を表9に記載する。これらの遺伝子の1つまたは複数個を、別個にまたは表3aおよび3bに記載の遺伝子の少なくとも1つに加えて使用することにより、患者の予後に関する情報を提供することができる。
【0053】
本開示はまた、臨床的および/または病理学的共変数の状態を評価するために有用な代理遺伝子を癌患者のために提供する。腫瘍病期に関する代理遺伝子は、表4aおよび4bに記載されており、表4aに記載の遺伝子の発現増大は、より高い腫瘍病期と有意に関連し、表4bに記載の遺伝子の発現増大は、より低い腫瘍病期と有意に関連する。腫瘍悪性度に関する代理遺伝子は、表5aおよび5bに記載されており、表5aに記載の遺伝子の発現増大は、より高い腫瘍悪性度と有意に関連し、表5bに記載の遺伝子の発現増大は、より低い腫瘍悪性度と有意に関連する。壊死の存在に関する代理遺伝子は、表6aおよび6bに記載されており、表6aに記載の遺伝子の発現は、壊死の存在と有意に関連し、表6bに記載の遺伝子の発現増大は、壊死なしと有意に関連する。リンパ節併発に関する代理遺伝子は、表7aおよび7bに記載されており、表7aに記載の遺伝子のより高い発現は、リンパ節浸潤の存在と有意に関連し、表7bに記載の遺伝子の発現増大は、リンパ節浸潤なしと有意に関連する。代理遺伝子の1つまたは複数個を、別個にまたは表3aおよび3bに記載の遺伝子の少なくとも1つに加えて使用することにより、患者の予後に関する情報を提供することができる。いくつかの実施形態では、以下の代理遺伝子:TSPAN7、TEK、LDB2、TIMP3、SHANK3、RGS5、KDR、SDPR、EPAS1、ID1、TGFBR2、FLT4、SDPR、ENDRB、JAG1、DLC1、およびKLの少なくとも2つを患者の予後に関する情報を提供するために使用する。いくつかの実施形態では、共発現遺伝子を、それが共発現する相手である代理遺伝子と一緒にまたはその代わりに使用することができる。
【0054】
本開示はまた、癌患者が正の臨床的結果を有することになる可能性を評価するために有用である、生物学的経路の中の遺伝子セットを提供する。この遺伝子セットは、本明細書においては「遺伝子サブセット」と呼ばれる。この遺伝子サブセットには、血管新生、免疫応答、輸送、細胞接着/細胞外マトリックス、細胞周期、およびアポトーシスが含まれる。いくつかの実施形態では、血管新生遺伝子サブセットには、ADD1、ANGPTL3、APOLD1、CEACAM1、EDNRB、EMCN、ENG、EPAS1、FLT1、JAG1、KDR、KL、LDB2、NOS3、NUDT6、PPAP2B、PRKCH、PTPRB、RGS5、SHANK3、SNRK、TEK、ICAM2、およびVCAM1が含まれる;免疫応答遺伝子サブセットには、CCL5、CCR7、CD8A、CX3CL1、CXCL10、CXCL9、HLA−DPB1、IL6、IL8、およびSPP1が含まれる;輸送遺伝子サブセットには、AQP1およびSGK1が含まれる;細胞接着/細胞外マトリックス遺伝子サブセットには、ITGB1、A2M、ITGB5、LAMB1、LOX、MMP14、TGFBR2、TIMP3、およびTSPAN7が含まれる;細胞周期遺伝子サブセットには、BUB1、C13orf15、CCNB1、PTTG1、TPX2、LMNB1、およびTUBB2Aが含まれる;アポトーシス遺伝子サブセットには、CASP10が含まれる;初期応答遺伝子サブセットには、EGR1およびCYR61が含まれる;代謝シグナリング遺伝子サブセットには、CA12、ENO2、UGCG、およびSDPRが含まれる;ならびに、シグナリング遺伝子サブセットには、ID1、およびMAP2K3が含まれる。
【0055】
本開示はまた、癌再発のリスクと正または負に相関し、化学療法の標的となる、生物学的経路の中の遺伝子を提供する。これらの遺伝子には、KIT、PDGFA、PDGFB、PDGFC、PDGFD、PDGFRb、KRAS、RAF1、MTOR、HIF1AN、VEGFA、VEGFB、およびFLT4が含まれる。いくつかの実施形態では、化学療法はサイトカイン療法および/または抗血管新生療法である。他の実施形態では、化学療法はスニチニブ、ソラフェニブ、テニシロリムス、ベバシズマブ、エベロリムス、および/またはパゾバニブである。
【0056】
いくつかの実施形態では、共発現遺伝子を、それが共発現する相手である遺伝子と一緒にまたはその代わりに使用することができる。
【0057】
いくつかの実施形態では、癌は腎細胞癌である。他の実施形態では、癌は明細胞腎細胞癌(ccRCC)、乳頭状小癌、色素嫌性癌、集合管癌、および/または髄様癌である。
【0058】
開示された遺伝子の発現レベルを測定するための様々な技術的アプローチが本明細書中に記載されており、そのアプローチには、これらに限定されないが、逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)、マイクロアレイ、ハイスループットシークエンシング、遺伝子発現の連続分析(SAGE)、およびデジタル遺伝子発現(DGE)が含まれ、以下で詳細に説明される。特定の態様では、各遺伝子の発現レベルは、エキソン、イントロン、タンパク質エピトープ、およびタンパク質活性を含む遺伝子の発現産物の様々な特徴に関して測定することができる。
【0059】
本明細書において同定された遺伝子の発現レベルは腫瘍組織において測定することができる。例えば、腫瘍組織は腫瘍の外科的切除または腫瘍生検により得ることができる。同定された遺伝子の発現レベルはまた、末梢循環腫瘍細胞または体液(例えば尿、血液、血液分画等)を含む、腫瘍から遠隔の部位で回収される腫瘍細胞においても測定することができる。
【0060】
アッセイされる発現産物は、例えばRNAであってもポリペプチドであってもよい。発現産物は断片化されていてもよい。例えば、このアッセイでは、発現産物の標的配列に相補的なプライマーを使用することができるので、完全な転写物および標的配列を含有する断片化した発現産物を測定することができる。さらに詳しい情報が表AおよびBの中に与えられており、順方向プライマー、逆方向プライマー、プローブ、およびプライマーを使用して生成したアンプリコンの配列の例が挙げられている。
【0061】
RNA発現産物は、PCRベースの増幅方法、例えば定量的逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(qRT−PCR)から得られるcDNA生成物の検出によりまたは直接的にアッセイすることができる。(例えば米国特許出願公開第2006−0008809A1号明細書を参照のこと)。ポリペプチド発現産物は免疫組織化学(IHC)を用いてアッセイすることができる。さらに、RNAおよびポリペプチドの発現産物は両方とも、マイクロアレイを用いてアッセイすることも可能である。
【0062】
臨床的有用性
現在のところ、RCC患者に関する臨床的結果の予測は、腫瘍の臨床的および病理学的特徴ついての主観的判断に基づいている。例えば、医師は、腎腫瘍の病期、悪性度、および壊死の存在に基づいて、適切な外科手術手順およびアジュバント療法について決定する。これらを決定する際に病理学者をガイドするための標準化された評価項目があるが、病理検査室間の一致のレベルは低い(Al−Ayanti M et al.(2003)Arch Pathol Lab Med 127,593−596を参照のこと)。これら腫瘍の特徴を測定および/または確認するための再現可能な分子アッセイがあれば有用であろう。
【0063】
さらに、標準臨床基準では、それだけで正確に患者の予後を評価する能力は限定されている。患者の腫瘍の生物学に基づいて患者の予後を評価するための再現可能な分子アッセイがあれば有用であろう。そのような情報は、患者カウンセリング、臨床試験(例えばアジュバント試験)のための患者の選択、および腎細胞癌の生物学の理解を目的として利用することができよう。さらに、そのような試験は、各患者の腫瘍の生物学に基づいて医師が外科および処置の提言を行う際に助けとなろう。例えば、ゲノム試験によって、再発リスクおよび/または再発(再燃、転移等)もなく長期間生存の可能性に基づいてRCC患者を階層化することができよう。アジュバント放射線および化学療法を含むRCC療法ための進行中および計画中のいくつかの臨床試験がある。標準臨床基準よりも正確にハイリスク患者を特定することができるゲノム試験があれば有用であり、それによって研究のためのアジュバントRCC集団がさらに充実する。これによって、アジュバント試験に必要とされる患者数およびアジュバントセッティングにおけるこれらの新しい薬剤の最終的試験に必要とされる時間を減らせるであろう。
【0064】
最後に、化学療法などの処置に患者が応答する可能性を予測できる分子アッセイがあれば有用であろう。さらに、これよって、個別の処置判断および臨床試験のための患者の採用が容易になり、癌と診察された後にヘルスケアの判断を下す際に、医師および患者の自信が高まることになろう。
【0065】
結果の報告
本開示の方法は、本開示の方法から得られる臨床的結果の予測を要約するレポートの作成に適している。「レポート」とは、本明細書において述べる場合、可能性評価およびその結果に関する対象情報を提供する報告要素を含む電子文書または有形文書である。被検者レポートには、可能性評価、例えば腎細胞癌の被験者に対する再発リスクに関する指摘が少なくとも含まれる。被験者レポートは、完全にまたは部分的に電子的に作成することができ、例えば電子表示装置(例えばコンピュータモニター)上に提示することができる。レポートには、さらに、1)試験施設に関する情報;2)サービス提供者情報;3)患者データ;4)試料データ;5)解釈レポート、ここにはa)指摘;b)試験データ(ここには1つまたは複数の目的遺伝子の正規化されたレベルを含むことができる)を含む様々な情報を含むことができる;および6)他の特徴の1つまたは複数を含むことができる。
【0066】
このように、本開示には、レポートの作成方法およびそれにより生まれるレポートを提供する。レポートには、患者腫瘍から得られた細胞中の特定の遺伝子に対するRNA転写物またはそのようなRNA転写物の発現産物の発現レベルの要約を含むことができる。レポートには、患者の予後共変数に関する情報を含むことができる。レポートには、患者の再発リスクが増大しているという評価を含むことができる。その評価は、スコアの形であってもよいし、患者の階層スキーム(例えば低い、中程度、または高い再発リスク)の形であってもよい。レポートには、患者のための適切な外科手術(例えば腎部分切除術もしくは腎全切除術)または処置に関する決定を支援することに関する情報を含むことができる。
【0067】
したがって、いくつかの実施形態では、本開示の方法は、患者の可能性のある臨床的結果、例えば再発リスクに関する情報を含むレポートを作成することをさらに含む。例えば、本明細書において開示の方法は、被験者に対するリスク評価の結果を提供するレポートを作成または出力する工程をさらに含むことができ、このレポートは、電子媒体の形態(例えばコンピュータモニター上の電子表示)または有形媒体の形態(例えば紙または他の有形媒体上に印刷されたレポート)で提供することができる。
【0068】
患者の起こり得る予後(例えば外科手術および/または処置に反応して腎細胞癌の患者が予後良好または正の臨床的結果を得ることになる可能性)に関する情報を含むレポートがユーザに提供される。可能性に関する評価は、以下において「リスク報告」または簡単に「リスクスコア」と呼ばれる。さらに、レポートを作成する人または実体(「レポートジェネレータ」)は、可能性評価を実施することができる。レポートジェネレータはまた、試料収集、試料処理、およびデータ作成の1つまたは複数を実施することができる。例えば、レポートジェネレータはまた、a)試料収集;b)試料処理;c)リスク遺伝子レベルの測定;d)参照遺伝子レベルの測定;およびe)リスク遺伝子の正規化されたレベルの決定の1つまたは複数を実施することができる。あるいは、レポートジェネレータ以外の実体が、1つまたは複数の試料収集、試料処理、およびデータ作成を実施することができる。
【0069】
明確さのために、「クライアント」と互換的に使用する用語「ユーザ」は、レポートが送られる人または実体を指すものであり、a)試料収集;b)試料処理;c)試料または処理試料の提供;および、d)データ(例えばリスク遺伝子レベル;参照遺伝子産物レベル;可能性評価で使用するリスク遺伝子の正規化されたレベル)の作成、の1つまたは複数を行うものと同じ人または実体である場合もあることに留意されたい。いくつかのケースでは、試料収集および/または試料処理および/またはデータ作成を行う人または実体およびその結果および/またはレポートを受け取る人は異なる人になる場合があるが、混乱を回避するために本明細書においては両方とも「ユーザ」または「クライアント」と呼ばれる。特定の実施形態では、例えば、この方法が一つのコンピュータ上で完全に実行される場合、ユーザまたはクライアントが、データ入力、およびデータ出力のレビューに備える。「ユーザ」は、医療専門家(例えば臨床医、検査技師、医師(例えば腫瘍学者、外科医、病理学者)等)の場合がある。
【0070】
ユーザが方法の一部のみを実行する実施形態では、本開示の方法に従うコンピュータによるデータ処理の後に、データ出力をレビューする(例えば結果の発表前に完全なレポート、完成品を用意する、または「不完全」レポートをレビューし、解釈レポートの手作業による介入および完成に備える)人は、本明細書においては「レビュア」と呼ばれる。レビュアはユーザとは離れた場所(例えば、ユーザがいることできるヘルスケア施設とは別に用意されているサービス地点)にいてもよい。
【0071】
政府規制または他の制約(例えば保健、不正治療、または責任保険の必要条件)が課せられている場合には、結果はすべて、電子的に全面的に作成されたものか部分的に作成されたものかにかかわらず、ユーザへの発表前に品質管理ルーチンに付される。
【0072】
遺伝子産物の発現レベルをアッセイする方法
遺伝子産物の発現レベルを測定するための多数のアッセイ方法が、核酸遺伝子産物(例えばmRNA)の発現レベルを測定するためのアッセイ方法、およびポリペプチド遺伝子産物の発現レベルを測定するためのアッセイ方法を含めて、当技術分野で公知である。
【0073】
核酸遺伝子産物レベルの測定
一般に、核酸遺伝子産物(例えばmRNA)レベルを測定する方法としては、ポリヌクレオチドのハイブリダイゼーション分析を含む方法およびポリヌクレオチドの増幅を含む方法が挙げられる。試料中のmRNA発現を定量する、当技術分野で公知の一般に使用される方法としては、ノーザンブロット法およびin situハイブリダイゼーション(例えば、Parker & Barnes,Methods in Molecular Biology 106:247−283(1999)を参照のこと);RNAseプロテクションアッセイ(Hod,Biotechniques 13:852−854(1992));および逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)(Weis et al.,Trends in Genetics 8:263−264(1992))が挙げられる。あるいは、DNA二本鎖、RNA二本鎖、およびDNA‐RNAハイブリッド二本鎖、またはDNA−タンパク質二本鎖を含む、特異的二本鎖を認識できる抗体を使用することができる。シークエンシングをベースとした遺伝子発現解析のための代表的な方法としては、遺伝子発現の連続分析(SAGE)および超並列的遺伝子ビーズクローン解析法(massively parallel signature sequencing)(MPSS)による遺伝子発現解析が挙げられる。
【0074】
ハイブリダイゼーションに基づく発現検出法
標的核酸のレベルは標的核酸にハイブリダイズするプローブを用いて測定することができる。標的核酸は、例えばVEGF/VEGFR阻害剤に対する応答に関連した応答指標遺伝子のRNA発現産物である場合も、参照遺伝子のRNA発現産物である場合もある。いくつかの実施形態では、標的核酸は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法を用いて最初に増幅する。
【0075】
特定の核酸の存在および/またはレベルについて核酸混合物を分析するためのいくつかの方法が利用可能である。mRNAは、分析のためにcDNAへ逆転写してまたは直接的にアッセイすることができる
【0076】
いくつかの実施形態では、本方法は、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件の下で、試料を核酸プローブに接触させる工程と、試料中の核酸へのプローブの結合を(もし存在すれば)検出する工程とを含む。様々な核酸ハイブリダイゼーション法が当分野の技術者には周知であり、任意の方法が使用可能である。いくつかの実施形態では、核酸プローブは検出可能に標識化する。
【0077】
標的増幅に基づく発現検出法
核酸を増幅する(例えばPCRによる)方法、プライマー伸長を行う方法、および核酸を評価する方法は、一般には、当技術分野で周知である。(例えば、Ausubel,et al,Short Protocols in Molecular Biology,3rd ed.,Wiley & Sons,1995、およびSambrook,et al,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Third Edition,(2001)Cold Spring Harbor,N.Y.を参照のこと)。
【0078】
標的mRNAは、cDNAへmRNAを逆転写し、次いでPCR(逆転写PCRまたはRT−PCR)を実施することにより増幅することができる。あるいは、米国特許第5,322,770号明細書に記載のように、単一酵素を両方の工程に用いてもよい。
【0079】
TaqMan(登録商標)アッセイ(Roche Molecular Systems,Inc.)として知られる蛍光発生的5’ヌクレアーゼアッセイは、核酸標的用の強力で多用途のPCRベースの検出システムである。TaqManアッセイ、試薬、およびその使用条件の詳細な説明については、例えば、Holland et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.(1991)88:7276−7280;米国特許第5,538,848号明細書、同第5,723,591号明細書、および同第5,876,930号明細書を参照のこと。これらの文献すべての内容全体は、参照により本明細書に組み込まれるものとする。したがって、本明細書に記載の標的核酸の領域に由来するプライマーおよびプローブをTaqMan分析に用いて、生体試料中の標的mRNAレベルを検出することができる。熱サイクルを行いながら、蛍光シグナルの生成をモニターすることにより分析を実施する。(TaqManはRoche Molecular Systemsの登録商標である。)
【0080】
蛍光発生的5’ヌクレアーゼアッセイは、蛍光レポーター色素およびクエンチャーの両方で標識された内部オリゴヌクレオチドプローブを消化するために、例えば、内在性5’ヌクレアーゼ活性を有するAmpliTaq Gold(登録商標)DNAポリメラーゼを用いて簡便に実施される(Holland et al.,Proc Nat Acad Sci USA(1991)88:7276−7280;およびLee et al.,Nucl.Acids Res.(1993)21:3761−3766)を参照のこと)。蛍光プローブが消化されて、色素およびクエンチャーの標識が分離し、標的核酸の増幅に比例する蛍光シグナルの増大がもたらされるので、増幅サイクルの間に起こる蛍光変化を測定することによりアッセイ結果が検出される。(AmpliTaq Goldは、Roche Molecular Systemsの登録商標である。)
【0081】
増幅産物は溶液中でまたは固体担体を用いて検出することができる。この方法では、TaqManプローブは、所望のPCR生成物内の標的配列にハイブリダイズするように設計する。TaqManプローブの5’末端は蛍光レポーター色素を含有する。このプローブの3’末端はプローブ伸長を防ぐためにブロックされており、5’フルオロフォアの蛍光をクエンチする色素を含有する。その後の増幅の間に、5’エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼが反応の中に存在する場合には、5’蛍光ラベルは切断されて離れる。5’フルオロフォアの切除により、検出可能な蛍光の増大がもたらされる。
【0082】
遺伝子発現解析のための最初の工程は、標的試料からmRNAを単離することである。出発物質は、典型的には、ヒトの腫瘍または腫瘍細胞株およびそれぞれに対応する正常な組織または細胞株から単離した全RNAである。このように、RNAは、胸、肺、結腸、前立腺、脳、肝臓、腎臓、膵臓、脾臓、胸腺、精巣、卵巣、子宮、頭頸部等の腫瘍を含む様々な原発腫瘍、または腫瘍細胞株から、健常ドナーからプールされたDNAと共に単離することができる。mRNAの供給源が原発腫瘍である場合、mRNAは、例えば凍結または保管されている、パラフィン包埋および固定(例えば、ホルマリン固定)の組織試料から抽出することができる。
【0083】
mRNA抽出の一般的方法は当技術分野で周知であり、Ausubel et al.,Current Protocols of Molecular Biology(Wiley and Sons,1997)を含む分子生物学の標準的教科書に開示されている。パラフィン包理組織からのRNA抽出の方法は、例えば、M.Cronin,Am J.Pathol 164(1):35−42(2004)に開示されており、その内容は本明細書に組み込まれるものとする。具体的には、RNA単離は、商用製造業者から得られるキットおよび試薬を用いて製造業者の説明書に従い実施することができる。例えば、培養細胞からの全RNAは、RNeasy(登録商標)ミニカラム(Qiagen GmbH Corp.)を用いて単離することができる。他の市販のRNA単離キットとしては、MasterPure(商標)完全DNAおよびRNA精製キット(EPICENTRE(登録商標)Biotechnologies,Madison,WI)、mirVana (Applied Biosystems,Inc.)、およびパラフィンブロックRNA単離キット(Ambion,Inc.)が挙げられる。組織試料からの全RNAは、RNA STAT−60(商標)(IsoTex Diagnostics,Inc.,Friendswood TX)を用いて単離することができる。腫瘍から調製されたRNAは、例えば、塩化セシウム密度勾配遠心分離により単離することができる。(RNeasyは、Qiagen GmbH Corp.の登録商標である;MasterPureは、EPICENTRE Biotechnologiesの商標である;RNA STAT−60は、Tel−Test Inc.の商標である。)
【0084】
RNAはPCRの鋳型とはなり得ないので、RT−PCRによる遺伝子発現プロファイリングの最初の工程は、cDNAへのRNA鋳型の逆転写であり、次いでPCR反応におけるその指数関数的増幅が続く。最も一般的に使用される2つの逆転写酵素は、トリ骨髄芽球症ウイルス逆転写酵素(AMV−RT)およびモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(MMLV−RT)である。逆転写工程は、典型的には、状況および発現プロファイリングの目的に応じて、特異的プライマー、ランダムヘキサマー、またはオリゴ−dTプライマーを用いてプライミングされる。例えば、抽出RNAは、GeneAmp(登録商標)RNA PCRキット(Applied Biosystems Inc.,Foster City,CA)を用いて、製造業者の説明書に従い逆転写することができる。次いで、得られたcDNAは、その後のPCR反応の鋳型として用いることができる。(GeneAmpは、Applied Biosystems Inc.の登録商標である。)
【0085】
PCR工程では、様々な耐熱性DNA依存性DNAポリメラーゼを用いることができるが、典型的には、5’−3’ヌクレアーゼ活性は有するが3’−5’プルーフリーディングエンドヌクレアーゼ活性は欠くTaqDNAポリメラーゼを使用する。したがって、TaqMan PCRは、典型的には、TaqまたはTthポリメラーゼの5’−ヌクレアーゼ活性を利用して、その標的アンプリコンに結合したハイブリダイゼーションプローブを加水分解するが、同等の5’ヌクレアーゼ活性を有する任意の酵素を用いることもできる。2つのオリゴヌクレオチドプライマーを用いてアンプリコンを生成する。第3のオリゴヌクレオチド、すなわちプローブは、2つのPCRプライマー間に位置するヌクレオチド配列を検出するように設計する。このプローブは、Taq DNAポリメラーゼ酵素により伸長不可能であり、レポーター蛍光色素およびクエンチャー蛍光色素で標識される。この2つの色素が、プローブ上にあるときのように互いに近接して位置していると、レポーター色素からのいかなるレーザ誘導発光もクエンチング色素によりクエンチされる。増幅反応の間に、Taq DNAポリメラーゼ酵素は鋳型依存的にプローブを切断する。結果として生じたプローブ断片は溶液中に解離し、遊離したレポーター色素からのシグナルは第2のフルオロフォアのクエンチング作用を受けない。合成された新しい分子毎に1分子のレポーター色素が放出され、クエンチされないレポーター色素の検出により、データの定量的解釈のための基礎が得られる。(TaqManは、Applied Biosystemsの登録商標である。)
【0086】
TaqMan RT−PCRは、例えば、ABI PRISM 7700(登録商標)配列検出システム(Applied Biosystems,Foster City,CA,USA)、またはLightcycler(登録商標)(Roche Molecular Biochemicals,Mannheim,Germany)などの市販の装置を用いて実施することができる。好ましい実施形態では、5’ヌクレアーゼ手順は、ABI PRISM 7900(商標)配列検出システム(商標)などのリアルタイム定量的PCRデバイス上で実行する。このシステムは、サーモサイクラー、レーザ、電荷結合素子(CCD)、カメラ、およびコンピュータからなる。このシステムでは、サーモサイクラーを用いて96穴フォーマットで試料を増幅する。増幅の間に、レーザ誘導蛍光シグナルが、96穴すべてに対して、リアルタイムスルーファイバーオプティクスケーブルに集められ、CCDで検出される。このシステムには、この機器の実行およびデータ解析のためのソフトウェアが含まれる。(PRISM 7700は、Applied Biosystemsの登録商標である;Lightcyclerは、Roche Diagnostics GmbH LLC.の登録商標である。)
【0087】
5’−ヌクレアーゼアッセイデータは、C、すなわち閾値サイクルとして最初に表現される。上記に説明のように、蛍光値は、各サイクルの間、記録され、増幅反応のその時点までに増幅された生成物の量を表わす。蛍光シグナルが統計的に有意なものとして最初に記録される時点が、閾値サイクル(Ct)である。
【0088】
試料間変動の影響を最小にするために、定量的RT−PCRは、通常、内部標準すなわち1つまたは複数の参照遺伝子を用いて実施する。理想的な内部標準は、様々な組織間で一定のレベルで発現され、実験処理によって影響を受けない。遺伝子発現のパターンを正規化するために用いることができるRNAには、例えば、参照遺伝子となるグリセリンアルデヒド−3−リン酸−脱水素酵素(GAPDH)およびβ−アクチンのmRNAが含まれる。
【0089】
RT−PCR手法の最近のバリエーションとしてリアルタイム定量的PCRがあり、これは、二重標識蛍光発生性プローブ(すなわち、TaqMan(登録商標)プローブ)によってPCR産物の蓄積を測定する。リアルタイムPCRは、各標的配列の内部競合物を正規化に用いる定量的競合PCRおよび試料内に含有される正規化遺伝子またはRT−PCRのための参照遺伝子を用いる定量的比較PCRの両方と適合する。さらなる詳細については、例えば、Held et al.,Genome Research 6:986−994(1996)を参照のこと。
【0090】
PCRプライマーの設計で考慮される要素には、プライマー長、融解温度(Tm)およびG/C含量、特異性、相補的プライマー配列、ならびに3’末端配列が挙げられる。一般に、最適なPCRプライマーは、概して17〜30の塩基長であり、約20〜80%のG+C塩基(例えば、約50〜60%のG+C塩基など)を含有する。50℃と80℃との間、例えば、約50〜70℃のTmを使用することができる。
【0091】
PCRプライマーおよびプローブの設計のさらに詳しいガイドラインについては、Dieffenbach,C.W.et al.,“General Concepts for PCR Primer Design”in:PCR Primer,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,New York,1995,pp.133−155;Innis and Gelfand,“Optimization of PCRs”in:PCR Protocols,A Guide to Methods and Applications,CRC Press,London,1994,pp.5−11;およびPlasterer,T.N.PrimerSelect:Primer and probe design.Methods Mol.Biol.70:520−527(1997)を参照のこと。これら文献の開示全体は参照により本明細書に明確に組み込まれるものとする。
【0092】
核酸遺伝子産物レベルをアッセイする他の適切な方法としては、例えば、マイクロアレイ;遺伝子発現の連続分析(SAGE);MassARRAY(登録商標)分析;デジタル遺伝子発現(DGE)(J.Marioni,Genome Research 18(9):1509−1517(2008))、超並列的遺伝子ビーズクローン解析法による遺伝子発現(例えば、Ding and Cantor,Proc.Nat’l Acad Sci 100:3059−3064(2003)を参照のこと);ディファレンシャルディスプレイ(Liang and Pardee,Science 257:967−971(1992));増幅断片長多型(iAFLP)(Kawamoto et al.,Genome Res.12:1305−1312(1999));BeadArray(商標)技術(Illumina,San Diego,CA;Oliphant et al.,Discovery of Markers for Disease (Supplement to Biotechniques),June 2002;Ferguson et al.,Analytical Chemistry 72:5618(2000));遺伝子発現の迅速アッセイにおいて、市販のLuminex100 LabMAPシステムおよび多色コード化ミクロスフェア(Luminex Corp.,Austin,TX)を用いる遺伝子発現検出用BeadsArray(BADGE)(Yang et al.,Genome Res.11:1888−1898(2001));および高カバー率遺伝子発現プロファイリング(HiCEP)分析(Fukumura et al.,Nucl.Acids.Res.31(16)e94(2003))が挙げられる。
【0093】
イントロン
RNA遺伝子発現産物の量を測定するアッセイは、転写一次産物のイントロン配列またはエキソン配列を標的とすることができる。ヒト組織試料中で測定されるスプライシングされたイントロンの量は、試料中に存在する対応するエキソン(すなわち同じ遺伝子由来のエキソン)の量を一般に表す。イントロン配列からなるまたはそれに相補的なポリヌクレオチドは、例えば、応答指標遺伝子の発現レベルをアッセイするハイブリダイゼーション法または増幅法において用いることができる。
【0094】
ポリペプチド遺伝子産物レベルの測定
ポリペプチド遺伝子産物レベルを測定する方法は、当技術分野で公知であり、酵素標識免疫定量法(ELISA)、放射免疫定量法(RIA)、タンパク質ブロット分析、免疫組織化学分析などの抗体ベースの方法が挙げられる。in vivoイメージングに用いられる常磁性ラベルまたは他のラベルが結合した、標的ポリペプチドに特異的に結合する抗体を用い、磁気共鳴イメージングなどの適切なin vivoイメージング法により被験者内の標識抗体の分布を視覚化することで、被験者内のポリペプチド遺伝子産物の測定をin vivoで行うこともできる。このような方法には、当技術分野で公知である、質量分析法などのプロテオミクス法も含まれる。
【0095】
体液からRNAを単離する方法
血液、血漿、および血清から(例えば、Tsui NB et al.(2002)48,1647−53およびその中の引用文献を参照のこと)、ならびに尿から(例えば、Boom R et al.(1990)J Clin Microbiol.28,495−503およびその中の引用文献を参照のこと)発現分析用のRNAを単離する方法が記載されている。
【0096】
パラフィン包埋組織からRNAを単離する方法
RNA供給源として固定パラフィン包埋組織を用いて、遺伝子発現をプロファイリングするための代表的なプロトコルの工程が、mRNAの単離、精製、プライマー伸長、および増幅を含めて、様々な出版雑誌論文に記載されている。(例えば、T.E.Godfrey et al,.J.Molec.Diagnostics 2:84−91(2000);K.Specht et al.,Am.J.Pathol.158:419−29(2001),M.Cronin,et al.,Am J Pathol 164:35−42(2004)を参照のこと。)
【0097】
マニュアルおよびコンピュータ支援による方法および製品
本明細書に記載の方法およびシステムは、数多くの方法で実行することができる。特に興味ある一実施形態では、本方法は、通信インフラ、例えばインターネットの使用を含む。いくつかの実施形態を以下に説明する。本開示は、様々な形態のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、プロセッサ、またはそれらの組合せで実行することができることも理解されよう。本明細書に記載の方法およびシステムは、ハードウェアおよびソフトウェアの組合せとして実行することができる。ソフトウェアはプログラム記憶装置に有形に記録されたアプリケーションプログラムとして、またはユーザの計算環境で実行されるソフトウェアの様々な部分として(例えばアプレットとして)実行することができる。また、レビュアの計算環境で実行することもでき、レビュアは、関連するリモートサイトに(例えばサービスプロバイダーの施設に)いてもよい。
【0098】
例えば、ユーザによるデータ入力の間またはその後に、データ処理の一部をユーザ側の計算環境の中で実施することができる。例えば、ユーザ側の計算環境を、可能性「リスクスコア」を表示するために、定義された試験コードに備えるようにプログラムすることができ、このスコアは、処理された応答または部分的に処理された応答として、1つまたは複数のアルゴリズムを続けて実行するための試験コードの形態で、レビュアの計算環境に送信されて、結果が提供されかつ/またはレビュアの計算環境でレポートが作成される。リスクスコアは数値スコア(数値による表示)の場合も、数値または数値範囲の非数値スコアによる表示(例えば低い、中程度、または高い)の場合もある。
【0099】
本明細書に記載のアルゴリズムを実行するアプリケーションプログラムを、任意の適切なアーキテクチャを含むマシンにアップロードし、かつそれによって実行することができる。一般に、マシンは、1つまたは複数の中央処理装置(CPU)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および入力/出力(I/O)インタフェースなどのハードウェアを有するコンピュータプラットフォームを含む。コンピュータプラットフォームはまた、オペレーティングシステムとマイクロ命令コードを含む。本明細書に記載の様々なプロセスおよび機能は、オペレーティングシステムによって実行される、マイクロ命令コードの一部またはアプリケーションプログラムの一部(またはそれらの組合せ)のいずれかにすることができる。さらに、追加のデータ記憶装置および印刷装置などの様々な他の周辺機器を、コンピュータプラットフォームに接続することができる。
【0100】
コンピュータシステムとして、本システムはプロセッサユニットを通常含む。プロセッサユニットは作動して情報を受信するが、この情報に、試験データ(例えばリスク遺伝子レベル、参照遺伝子産物レベル;遺伝子の正規化されたレベル)を含めることができ、また、患者データなどの他のデータも含めることができる。この受信情報を、データベースに少なくとも一時的に記憶し、上記に記載のようにデータ分析してレポートを作成することができる。
【0101】
入出力データの一部またはすべてを電子的に送信することもできる;特定の出力データ(例えば、レポート)を、電子的にまたは電話で(例えばファクシミリにより、例えばファックスバックなどの装置を用いて)送信することができる。代表的な出力受信装置としては、表示要素、プリンタ、ファクシミリ装置等を挙げることができる。伝送および/または表示の電子的形態としては、電子メール、双方向テレビ等を挙げることができる。特に興味ある実施形態では、入力データのすべてもしくは一部および/または出力データのすべてもしくは一部(例えば、通常は、少なくとも最終レポート)を、典型的なブラウザによるアクセス、好ましくは機密アクセスのためにウェブサーバ上に保持する。このデータは、所望により、アクセスすることができ、または医療専門家に送信することができる。この入出力データは、最終レポートのすべてまたは一部を含めて、ヘルスケア施設の機密データベースに存在し得る、患者の医療記録に記入するために用いることができる。
【0102】
本明細書に記載の方法で使用するシステムは、一般には、少なくとも1つのコンピュータプロセッサ含むか(例えば、本方法をすべて単一サイトで行う場合)、または少なくとも2つのネットワーク接続されたコンピュータプロセッサを含む(例えば、データがユーザ(本明細書においては「クライアント」とも呼ばれる)によって入力され、分析のために第2のコンピュータプロセッサまでリモートサイトに伝送されることになる場合、ただし、この場合、第1および第2のコンピュータプロセッサは、例えばイントラネットまたはインターネットを介して、ネットワークにより接続されている)。システムはまた、入力のためのユーザコンポーネントならびにデータのレビュー、レポートの作成、および手作業による介入のためのレビュアコンポーネントを含むことができる。システムのさらなるコンポーネントとして、サーバコンポーネントおよびデータ記憶用のデータベース(例えば、解釈レポート要素などのレポート要素のデータベース、またはユーザによるデータ入力およびデータ出力を含むことができるリレーショナルデータベース(RDB)など)を含むことができる。コンピュータプロセッサは、パーソナルデスクトップコンピュータ(例えば、IBM、Dell、Macintosh)、ポータブルコンピュータ、メインフレーム、ミニコンピュータ、または他の計算装置の中に典型的に見出されるプロセッサとすることができる。
【0103】
ネットワーク接続されたクライアント/サーバアーキテクチャは、所望に応じて選択することができ、例えば、古典的な2層または3層のクライアントサーバモデルとすることができる。リレーショナルデータベース管理システム(RDMS)は、アプリケーションサーバコンポーネントの一部としてか、または別個のコンポーネント(RDBマシン)としてかのいずれかで、データベースに対するインターフェースを提供する。
【0104】
一例では、アーキテクチャは、データベース中心のクライアント/サーバアーキテクチャとして提供され、このアーキテクチャでは、クライアントアプリケーションが、要求される様々なレポート要素、特に解釈レポート要素、とりわけ解釈テキストおよび警告をレポートに記入するために、データベース(またはデータベースサーバ)への要求を行うアプリケーションサーバからのサービスを通常は要求する。サーバ(例えば、アプリケーションサーバマシンの一部としてか、または別個のRDB/リレーショナルデータベースマシンとしてかのいずれか)は、クライアントの要求に応答する。
【0105】
入力クライアントコンポーネントは、アプリケーションを実行するために最大限のパワーおよび機能を提供する完全なスタンドアロン型パーソナルコンピュータとすることができる。クライアントコンポーネントは通常、任意の所望されるオペレーティングシステムのもとで作動し、これには、情報伝達要素(例えば、ネットワークに接続するためのモデムまたは他のハードウェア)、1つまたは複数の入力装置(例えば、情報またはコマンドを転送するために用いるキーボード、マウス、キーパッド、または他の装置)、記憶要素(例えば、ハードドライブまたは他のコンピュータ読取り可能、コンピュータ書込み可能な記憶媒体)、および表示要素(例えば、情報をユーザに伝えるモニター、テレビ、LCD、LED、または他の表示装置)が含まれる。ユーザは、入力コマンドを、入力装置を介してコンピュータプロセッサに入力する。一般には、ユーザインターフェースは、ウェブブラウザアップリケーションのために書かれたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)である。
【0106】
サーバコンポーネントは、パーソナルコンピュータ、ミニコンピュータ、またはメインフレームとすることができ、データ管理、クライアント間での情報共有、ネットワークの管理およびセキュリティを提供する。使用するアプリケーションおよび任意のデータベースは、同じサーバまたは異なるサーバに置くことができる。
【0107】
クライアントおよびサーバのための他のコンピュータ配置が、メインフレームなどの単一マシン、一群のマシン、または他の適切な構成での処理を含めて、考えられる。一般には、クライアントマシンおよびサーバマシンを、本開示の処理を達成するために一緒に作動させる。
【0108】
使用する場合、データベースは、データベースサーバコンポーネントに通常接続し、データを保持する任意の装置とすることができる。例えば、データベースは、コンピュータのための任意の磁気記憶装置または光学記憶装置(例えば、CDROM、内部ハードドライブ、テープドライブ)とすることができる。データベースは、(ネットワーク、モデム等を介するアクセスにより)サーバコンポーネントから遠隔に置くことも、またはサーバコンポーネントの近傍に置くこともできる。
【0109】
本システムおよび方法において使用する場合、データベースは、データ項目間の関係に従って編成およびアクセスされるリレーショナルデータベースとすることができる。リレーショナルデータベースは、一般に、複数の表(単位)から構成される。表の行は記録(個々の項目に関する情報の集合)を表し、列はフィールド(記録の特定の属性)を表す。その最も単純な概念では、リレーショナルデータベースは、少なくとも1つの共通フィールドを介して互いに「関連する」データ入力の集合である。
【0110】
コンピュータおよびプリンタを装備するワークステーションもまた、データを入力するために、また、いくつかの実施形態では、所望されれば、適切なレポートを作成するためにサービス地点で使用することができる。コンピュータは、所望に応じて、データ入力、伝送、分析、レポート受信等の開始を容易にするために、アプリケーションを起動させるためのショートカットを(例えば、デスクトップに)備えることができる。
【0111】
コンピュータ読み取り可能な記憶媒体
本開示ではまた、計算環境の中で実行した場合、本明細書に記載のような応答可能性評価の結果のすべてまたは一部を行うためのアルゴリズムの実行に与えるプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体(例えば、CD−ROM、メモリキー、フラッシュメモリカード、ディスケット等)が考えられる。コンピュータ読み取り可能な媒体が本明細書に記載の方法を実行するための完全なプログラムを含有する場合には、このプログラムは、収集し、分析し、出力を作成するためのプログラム命令を含み、一般には、本明細書に記載のようにユーザと対話し、そのデータを分析情報と併せて処理し、そのユーザのためにユニークな印刷媒体または電子媒体を作成するためのコンピュータ読取り可能なコード装置を含む。
【0112】
記憶媒体が本明細書に記載の方法の一部(例えば、本方法のユーザ側側面(例えばデータ入力、レポート受信能力等))の実行を与えるプログラムを提供する場合には、このプログラムは、リモートサイトにある計算環境への、ユーザによるデータ入力の伝送(例えば、インターネットを介して、イントラネットを介して等)に備える。データの処理またはデータ処理の完了がリモートサイトで実行され、レポートが作成される。レポートのレビューおよび何らかの必要とされる手作業による介入が行われ、完全なレポートが用意された後に、この完全なレポートは、電子文書または印刷文書(例えばファックスまたは郵送の紙レポート)としてユーザに伝送される。本開示によるプログラムを含有する記憶媒体は、そのような説明書が入手可能な適切なサブストレートまたはウェブアドレスに記録された説明書(例えば、プログラムのインストール、使用法等のための)と共にパッケージにすることができる。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体はまた、応答可能性評価を実行するための1つまたは複数の試薬(例えば、プライマー、プローブ、アレイ、または他のそのようなキットコンポーネント)と組み合わせて提供することができる。
【0113】
データ分析の方法
参照正規化
試料中の非生物学的変動、例えば測定される発現産物の量および質による発現測定の変動を最小にするために、遺伝子産物に関して測定された発現レベルの生データ(例えば、qRT−PCRにより得られたサイクル閾値(C)の測定)を、1つまたは複数の参照遺伝子について得られた平均発現レベルデータに対して正規化することができる。正規化へのアプローチの1つでは、少数の遺伝子を参照遺伝子として使用する;参照遺伝子として選択される遺伝子は、典型的には、試料間の発現の変動量が最小であり、他の遺伝子の発現レベルが相対的に安定な参照遺伝子発現と比較される。グローバルな正規化アプローチでは、特定の遺伝子の発現を全物質量と比較するために、試料中の各遺伝子の発現レベルを試料中のすべての遺伝子の平均発現レベルと比較する。
【0114】
qRT−PCRからの未処理データは、サイクル閾値(C)、すなわち定義された閾値を検出可能なシグナルが越えるのに必要な増幅サイクルの数として表現される。高いCは、より多くのサイクルが増幅産物を検出するのに必要とされるため、低い発現を示す。遺伝子産物の正規化された発現レベルの1単位の増加が、概ね、試料中に存在する発現産物の量における2倍の増加を反映するように、正規化を行うことができる。腫瘍組織からのqRT−PCRデータに適用可能な正規化手法に関するさらに詳しい情報については、例えば、Silva S et al.(2006)BMC Cancer 6,200;de Kok J et al.(2005)Laboratory Investigation 85,154−159を参照のこと。次いで、その特定の遺伝子に関して、患者すべてにわたって、正規化された遺伝子発現を発現の標準偏差で割ることにより遺伝子発現を標準化することができる。正規化された遺伝子発現の標準化により、ハザード比は遺伝子を越えて比較可能であり、遺伝子発現の各標準偏差の相対リスクを反映する。
【0115】
統計分析
当分野の技術者であれば、2群においてある遺伝子の発現レベル(または他の変数)を比較し、見出された発現レベルの差の統計的有意性を判定するのに適した様々な統計的方法が利用可能であることを認識されよう。(例えば、H.Motulsky,Intuitive Biostatistics(Oxford University Press,1995);D.Freedman,Statistics(W.W.Norton & Co,4th Ed.,2007)を参照のこと。)例えば、コックス比例ハザード回帰モデルは、特定の臨床的時間−事象(time−to−event)エンドポイント(例えば、RFI、OS)に適合させることができる。コックス比例ハザード回帰モデルの仮定の1つは、比例ハザード仮定、すなわち、モデル効果が根底にあるハザードを増加させるという仮定である。モデル妥当性の評価は、これに限定されないが、マルチンゲール残差の累積合計の検討を含めて、実施することができる。当分野の技術者であれば、効果が時間依存的になり得る状態において、対数累積ハザード関数の自然スプライン平滑化によるワイブル分布およびハザードスケールを用いて、フレキシブルなパラメトリックモデルに適合させるために使用することができる(例えば、Royston and Parmer(2002)、平滑化スプライン等)数多くの統計的方法があることを認識されよう。(P.Royston,M.Parmer,Statistics in Medicine 21(15:2175−2197(2002)を参照のこと。)再発リスクと(1)再発リスク群および(2)臨床的/病理学的共変数(例えば、腫瘍病期、腫瘍悪性度、壊死の存在、リンパまたは血管の浸潤等)との関係は、有意性に関して試験することができる。モデルのさらなる例としては、遺伝子発現と二分的(ロジスティックに対して)または順序的(順序ロジスティックに対して)臨床エンドポイント(すなわち、病期、壊死、悪性度)との関連を評価することができる、ロジスティックまたは順序ロジスティク回帰モデルが挙げられる。(例えば、D.Hosmer and S.Lemeshow,Applied Logistic Regression(John Wiley and Sons,1989)を参照のこと。)
【0116】
代表的な実施形態では、複数の仮説検定のために結果を調整し、Storey手法および別々のクラスに関するTDRASを用いて、10%の偽発見率(FDR)を可能にした(M.Crager,Gene identification using true discovery rate degree of association sets and estimates corrected for regression to the mean,Statistics in Medicine(published online(Dec.2009))。別の実施形態では、主成分分析(PCA)により同定された因子のサブセットを用いるフォワードステップワイズコックスPH回帰を使用する交差検定手法によってRFIと有意な関連を有する遺伝子を同定した。
【0117】
相関係数、特にピアソン積率相関係数を計算する方法は当技術分野で公知である。(例えば、J.Rodgers and W.Nicewander,The American Statistician,42,59−66(1988);H.Motulsky,H.,Intuitive Biostatistics(Oxford University Press,1995)を参照のこと。)特定の生物過程を行うために、遺伝子は、協調して一緒に機能する、すなわち共発現される場合が多い。癌のような疾患プロセスについて同定された共発現遺伝子群は、疾患の進行および処置に対する応答に関するバイオマーカーとして役に立つ可能性がある。このような共発現遺伝子は、共発現する相手である予後遺伝子および/または予測遺伝子の代わりにまたはそれに加えてアッセイすることができる。
【0118】
当分野の技術者であれば、現在公知のまたは今後開発される多くの共発現分析法が、本発明の範囲および精神の中に入ることを認識されよう。これらの方法は、例えば、相関係数、共発現ネットワーク分析、クリーク分析などを組み込むことができ、RT−PCR、マイクロアレイ、シークエンシング、および他の類似の方法から得られる発現データに基づいて行うことができる。例えば、遺伝子発現クラスターは、ピアソンまたはスピアマンの相関係数に基づいたペアワイズ相関分析を用いて同定することができる。(例えば、Pearson K.and Lee A.,Biometrika 2,357(1902);C.Spearman,Amer.J.Psychol 15:72−101(1904);J.Myers,A.Well,Research Design and Statistical Analysis,p.508(2nd Ed.,2003)を参照のこと。)一般に、0.3以上の相関係数は、少なくとも20の試料サイズにおいては統計的に有意であると考えられる。(例えば、G.Norman,D.Streiner,Biostatistics:The Bare Essentials,137−138(3rd Ed.2007)を参照のこと。)
【0119】
さらに、本開示の態様はすべて、例えば、高いピアソン相関係数により証明された、開示された遺伝子と共発現する限られた数の追加の遺伝子を、開示された遺伝子に加えてかつ/またはそれの代わりに予後試験または予測試験に含むように実施することができる。
【0120】
本発明を説明してきたが、同じことは、以下の実施例を参照することにより、より容易に理解されよう。この実施例は、実例を通して提供されるもので、本発明を限定することを意図するものでは全くない。本開示全体を通しての引用はすべて、参照により本明細書に明確に組み込まれるものとする。
【実施例】
【0121】
腎細胞癌患者から得られた腎腫瘍に基づく遺伝子発現プロファイリングの実現可能性を実証するために、2つの研究を実施した。(M.Zhou,et al.,Optimized RNA extraction and RT−PCR assays provide successful molecular analysis on a wide variety of archival fixed tissues,AACR Annual Meeting(2007)による抄録を参照のこと)。
【0122】
研究設計
腎腫瘍組織は、クリーブランドクリニック財団(CCF)のデータベースにある約1200人の患者から得た。このデータベースは、1985年〜2003年の間に腎癌、明細胞型、病期I、II、およびIIIと診断され、利用可能なパラフィン包埋腫瘍(PET)ブロックがあり、適切な臨床的経過観察を受け、かつアジュバント/ネオアジュバント全身療法による処置がなされなかった患者からなる。遺伝性VHL疾患または両側性腫瘍の患者もまたは除外した。腫瘍の悪性度分類は、(1)腫瘍:病理学および遺伝学:尿路系および男性性器の腫瘍の世界保健機構(World Health Organization)分類に明記のFuhrman悪性度分類システム;および(2)修正Fuhrman悪性度分類システムを用いて行った(表1)。一般に、リンパ節併発が患者に対して予想されない、または観察されない場合は、リンパ節併発の検査は行わず、Nxと明記する。この研究では、Nxは病期分類の目的のためにN0として処理した。732個の遺伝子の発現を、個々の患者の組織試料について定量的に評価した。
【0123】
【表1】

【0124】
包含基準
(1)CCFで腎切除術を受け、最低限で6か月の臨床的経過観察を受けるかまたは再発RCCを有し、カルテ、データベース、または登録の中で文書化されている患者
【0125】
(2)RCC、明細胞型、病期1、II、またはIIIと診断された患者
【0126】
(3)ホルマリン、Hollande液、またはZenker固定液に固定された腎ブロック
【0127】
除外基準
(1)クリーブランドクリニックのアーカイブ中に初診からの利用可能な腫瘍ブロックがない。
【0128】
(2)Hollandeおよび/またはヘマトキシリン‐エオジン染色(H&E)スライドの検査により評価した場合に、ブロック中に腫瘍がないかまたは極めて小さな腫瘍しかない(浸潤癌細胞領域の5%未満)
【0129】
(3)参照遺伝子の高いサイクル閾値(C)。RNA量にかかわらず試料はすべてRT−qPCRにより試験されるが、参照遺伝子の平均Ctが35未満であるプレートのみが分析されることになる。
【0130】
(4)遺伝性VHL疾患および/または両側性腫瘍の患者
【0131】
(5)ネオアジュバントまたはアジュバント全身療法を受けた患者
【0132】
臨床的および病理学的因子の一致
別個の2つの病理検査室が、同じ標準化された評価項目を用いて、いくつかの臨床的および病理学的因子の分析を行なった。共変数による一致のレベルを以下の表2に示す。統計分析の目的に対しては、一方の中央検査室の測定のみを用いた。
【0133】
【表2】

【0134】
発現プロファイル遺伝子パネル
包含/除外基準すべてに合致した患者942人から得られたパラフィン包埋組織(PET)試料由来のRNAを、固定腎組織のために最適化されたプロトコルを用いて抽出し、TaqMan(登録商標)RT−PCRを用いて、定量的遺伝子発現の分子アッセイを実施した。RT−PCRは、2枚の384穴プレートを用いて、5μL反応容量当たり1.0ngのRNA投入量で実施した。
【0135】
PET試料のRT−PCR分析は、732個の遺伝子を用いて行った。これらの遺伝子は、一次エンドポイントおよび二次エンドポイント、無再発期間(RFI)、無病生存期間(DFS)、ならびに全生存期間(OS)に関連して評価した。
【0136】
一次および二次の分析はすべて、正規化のための参照遺伝子の平均を用いて参照正規化された遺伝子発現レベルについて行った。3つの正規化スキームを、AAMP、ARF1、ATP5E、EEF1A1、GPX1、RPS23、SDHA、UBB、およびRPLP1を用いて試験した。試験パネル中の他の遺伝子の一部または全部を、別の正規化スキームの分析に用いた。
【0137】
732個の遺伝子のうち、647個はさらなる検討に対して評価可能であると考えられた。Storey手法を用いかつ別々のクラスに関してTrue Discovery Rate Degree of Association Sets(TDRDAS)を用いて、10%の偽発見率(FDR)を可能にすることにより、647個の評価可能遺伝子の結果分析を、複数の仮説検定のために調整した(M.Crager,Gene identification using true discovery rate degree of association sets and estimates corrected for regression to the mean,Statistics in Medicine 29:33−45(2009))。ベースライン共変数を調整せず、かつFDRの制御を行わないと、遺伝子のうちの448個(69%)のサブセットがRFI(p≦0.05)と有意に関連すると同定された。TDRDAS分析を用いると1.2を超える最大下限(MLB)を有する188個の遺伝子のサブセットについて、FDRは制御するが、別々のクラスは考慮に入れずに、教師付き主成分分析(PCA)によるさらなる分析を行った。トップ10の因子は、高い因子負荷(負荷/最大負荷>0.7)を有する遺伝子を維持するようにして修正した。修正されたトップ10の因子を5倍交差検定に付し、遺伝子群の性能を評価しかつ最大頻度で出現している因子を同定した。
【0138】
再発リスクと有意に関連する(p≦0.05)遺伝子を、表3aおよび3bに記載し、その中で、予後良好と正に関連する(すなわち、発現の増大がより低い再発リスクを示す)遺伝子を、表3aに記載する。予後良好と負に関連する(すなわち、発現の増大がより高い再発リスクを示す)遺伝子を、表3bに記載する。予後良好とは正または負に関連したが、臨床的/病理学的共変数とは関連しなかった遺伝子は、BBC3、CCR7、CCR4、およびVCANである。さらに、臨床的および病理学的共変数(病期、腫瘍悪性度、腫瘍サイズ、リンパ節の状態、および壊死の存在)について調整した後に、予後良好と正に関連した遺伝子を、表8aに記載する。臨床的/病理学的共変数について調整した後に、予後良好と負に関連した遺伝子を、表8bに記載する。表8aおよび8bに記載の遺伝子の中から、臨床的および病理学的共変数について調整し、偽発見率を10%に制御した後に、予後良好と正または負に有意に関連した16遺伝子を表9に記載する。
【0139】
RFIと有意に関連した(p≦0.05)(82%)これらの遺伝子の大多数については、発現の増大は予後良好と関連する。RFIと有意に関連した遺伝子の大部分は、(1)病期(I〜III)の間と(2)一次および二次エンドポイント(RFIおよびOS)との間で一貫性を示した。例えば、図1および2をそれぞれ参照のこと。
【0140】
この分析から、再発および全生存期間と有意に関連したものとして、特定の遺伝子サブセットが出現した。例えば、血管新生遺伝子(例えば、EMCN、PPAP2B、NOS3、NUDT6、PTPRB、SNRK、APOLD1、PRKCH、およびCEACAM1)、細胞接着/細胞外マトリックス遺伝子(例えば、ITGB5、ITGB1、A2M、TIMP3)、免疫反応遺伝子(例えば、CCL5、CCXL9、CCR7、IL8、IL6、およびCX3CL1)、細胞周期(例えば、BUB1、TPX2)、アポトーシス(例えばCASP10)、ならびに輸送遺伝子(AQP1)の発現増大が、RFIと正または負に強く関連した。
【0141】
さらに、腎癌薬剤(スニチニブ、ソラフェニブ、テニシロリムス、ベバシズマブ、エベロリムス、パゾバニブ)の経路標的に関連する特定の遺伝子が、KIT、PDGFA、PDGFB、PDGFC、PDGFD、PDGFRb、KRAS、RAF1、MTOR、HIF1AN、VEGFA、VEGFB、およびFLT4を含めて、結果と有意に関連するものとして同定された。
【0142】
これら腫瘍の中の壊死の存在は、外科手術後の少なくとも最初の4年における高い再発リスクと関連することが判明した。図3を参照のこと。しかしながら、4年以降の予後に対する壊死の影響は無視できるものであった。
【0143】
特定の遺伝子の発現が、病理学的および/または臨床的因子と正または負に相関することも判明した(「代理遺伝子」)。例えば、表4a〜7bに記載の代理遺伝子の発現増大が、それぞれ腫瘍病期、腫瘍悪性度、壊死の存在、およびリンパ節浸潤と正または負に相関する。表4a〜7bでは、遺伝子発現を正規化し、次いで、オッズ比(OR)が遺伝子発現の1標準偏差の変化を反映するように標準化した。
【0144】
これらから、TSPAN7、TEK、LDB2、TIMP3、SHANK3、RGS5、KDR、SDPR、EPAS1、ID1、TGFBR2、FLT4、SDPR、ENDRB、JAG1、DLC1、およびKLを含む鍵遺伝子が、ベースライン共変数(病期、悪性度、壊死)のための良好な代理遺伝子であると同定した。これらの遺伝子のいくつか、すなわち、SHANK3、RGS5、EPAS1、KDR、JAG1、TGFBR2、FLT4、SDPR、DLC1、EDNRBは低酸素誘導経路にある。
【0145】
図4〜7に、Mayo予後診断ツール(Leibovich et al.“prediction of progression after radical nephrectomy for patients with clear cell renal cell carcinoma”(2003)Cancer 97:1663−1671に記載)をCCF発現データに適用することにより得られる患者層別化(低い、中程度、または高いリスク)の比較を示す。図4に示すように、Mayo予後診断ツール単独で、低リスク(5年で93%が無再発)、中程度リスク(5年で79%が無再発)、および高リスク(5年で36%が無再発)の3つの集団への層別化が実現する。これに対して、1遺伝子の発現データでも使用すると(EMCN(図5)、AQP1(図6)、またはPPAP2B(図7)に例示されるように)、リスクによる患者のより詳細な層別化が可能になった。
【0146】
【表3】

【0147】
【表4】

【0148】
【表5】

【0149】
【表6】

【0150】
【表7】

【0151】
【表8】

【0152】
【表9】

【0153】
【表10】

【0154】
【表11】

【0155】
【表12】

【0156】
【表13】

【0157】
【表14】

【0158】
【表15】

【0159】
【表16】

【0160】
【表17】

【0161】
【表18】

【0162】
【表19】

【0163】
【表20】

【0164】
【表21】

【0165】
【表22】

【0166】
【表23】

【0167】
【表24】

【0168】
【表25】

【0169】
【表26】

【0170】
【表27】

【0171】
【表28】

【0172】
【表29】

【0173】
【表30】

【0174】
【表31】

【0175】
【表32】

【0176】
【表33】

【0177】
【表34】

【0178】
【表35】

【0179】
【表36】

【0180】
【表37】

【0181】
【表38】

【0182】
【表39】

【0183】
【表40】

【0184】
【表41】

【0185】
【表42】

【0186】
【表43】

【0187】
【表44】

【0188】
【表45】

【0189】
【表46】

【0190】
【表47】

【0191】
【表48】

【0192】
【表49】

【0193】
【表50】

【0194】
【表51】

【0195】
【表52】

【0196】
【表53】

【0197】
【表54】

【0198】
【表55】

【0199】
【表56】

【0200】
【表57】

【0201】
【表58】

【0202】
【表59】

【0203】
【表60】

【0204】
【表61】

【0205】
【表62】

【0206】
【表63】

【0207】
【表64】

【0208】
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【0209】
【表66】

【0210】
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【0211】
【表68】

【0212】
【表69】

【0213】
【表70】

【0214】
【表71】

【0215】
【表72】

【0216】
【表73】

【0217】
【表74】

【0218】
【表75】

【0219】
【表76】

【0220】
【表77】

【0221】
【表78】

【0222】
【表79】

【0223】
【表80】

【0224】
【表81】

【0225】
【表82】

【0226】
【表83】

【0227】
【表84】

【0228】
【表85】

【0229】
【表86】

【0230】
【表87】

【0231】
【表88】

【0232】
【表89】

【0233】
【表90】

【0234】
【表91】

【0235】
【表92】

【0236】
【表93】

【0237】
【表94】

【0238】
【表95】

【0239】
【表96】

【0240】
【表97】

【0241】
【表98】

【0242】
【表99】

【0243】
【表100】

【0244】
【表101】

【0245】
【表102】

【0246】
【表103】

【0247】
【表104】

【0248】
【表105】

【0249】
【表106】

【0250】
【表107】

【0251】
【表108】

【0252】
【表109】

【0253】
【表110】

【0254】
【表111】

【0255】
【表112】

【0256】
【表113】

【0257】
【表114】

【0258】
【表115】

【0259】
【表116】

【0260】
【表117】

【0261】
【表118】

【0262】
【表119】

【0263】
【表120】

【0264】
【表121】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
癌患者について可能性のある臨床的結果を判定するための方法であって、
(a)前記患者から得られた生体試料において、表3a、3b、8a、または8bからの少なくとも1つの遺伝子またはその発現産物の発現レベルを測定する工程と、
(b)正規化された発現レベルを得るために前記発現レベルを正規化する工程と、
(c)前記患者が前記正規化された発現レベルに基づいて負の臨床的結果を示すことになる可能性を評価するスコアを計算する工程とを含み、
表3aおよび8aに記載の遺伝子の発現が、負の臨床的結果のリスクと負に相関し、
表3bおよび8bに記載の遺伝子の発現が、負の臨床的結果のリスクと正に相関する方法。
【請求項2】
前記スコアに基づいてレポートを作成する工程をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記負の臨床的結果が癌の再発である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記生体試料が腫瘍から得られる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記腫瘍が腎細胞癌である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つの遺伝子の発現レベルが測定される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも2つの遺伝子が1つまたは複数の遺伝子サブセットに由来する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つまたは複数の遺伝子サブセットが血管新生、免疫応答、輸送、細胞接着/細胞外マトリックス、細胞周期、またはアポトーシスの遺伝子である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
癌患者から得られた腫瘍に関する病期を判定するための方法であって
(a)前記腫瘍から得られた生体試料において、表4aまたは4bからの少なくとも1つの代理遺伝子またはその遺伝子産物の発現レベルを測定する工程と、
(b)正規化された発現レベルを得るために前記発現レベルを正規化する工程と、
(c)前記正規化された発現レベルに基づいて前記腫瘍の病期を判定する工程とを含み、
表4aに記載の代理遺伝子の発現が、前記腫瘍の高い病期と正に相関し、
表4bに記載の代理遺伝子の発現が、前記腫瘍の高い病期と負に相関する方法。
【請求項10】
前記腫瘍が腎細胞癌である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
癌患者から得られた腫瘍の悪性度を判定するための方法であって、
(a)前記腫瘍から得られた生体試料において、表5aおよび5bからの少なくとも1つの代理遺伝子またはその遺伝子産物の発現レベルを測定する工程と、
(b)正規化された発現レベルを得るために前記発現レベルを正規化する工程と、
(c)前記正規化された発現レベルに基づいて腫瘍の悪性度を判定する工程とを含み、
表5aに記載の代理遺伝子の発現が、前記腫瘍の高い悪性度と正に相関し、
表5bに記載の代理遺伝子の発現が、前記腫瘍の高い悪性度と負に相関する、方法。
【請求項12】
前記腫瘍が腎細胞癌である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
癌患者から得られた組織試料中の壊死の存在を判定するための方法であって、
(a)前記組織試料において、表6aおよび6bからの少なくとも1つの代理遺伝子またはその遺伝子産物の発現レベルを測定する工程と、
(b)正規化された発現レベルを得るために前記発現レベルを正規化する工程と、
(c)前記正規化された発現レベルに基づいて組織の壊死の存在を判定する工程とを含み、
表6aに記載の代理遺伝子の発現が、前記壊死の存在と正に相関し、
表6bに記載の代理遺伝子の発現が、前記壊死の存在と負に相関する方法。
【請求項14】
前記癌が腎細胞癌である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
癌患者のリンパ節の状態を判定するための方法であって、
(a)前記癌患者から得られた生体試料において、表7aおよび7bからの少なくとも1つの代理遺伝子またはその遺伝子産物の発現レベルを測定する工程と、
(b)正規化された発現レベルを得るために前記発現レベルを正規化する工程と、
(c)前記正規化された発現レベルに基づいて癌患者のリンパ節の状態を判定する工程とを含み、
表7aに記載の代理遺伝子の発現が、リンパ節浸潤と正に相関し、
表7bに記載の代理遺伝子の発現が、前記リンパ節浸潤と負に相関する方法。
【請求項16】
前記癌が腎細胞癌である、請求項15に記載の方法。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2013−516195(P2013−516195A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−548188(P2012−548188)
【出願日】平成23年1月7日(2011.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2011/020596
【国際公開番号】WO2011/085263
【国際公開日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(504345126)ジェノミック ヘルス, インコーポレイテッド (17)
【Fターム(参考)】