説明

遺伝子発現用プロモーター

【課題】細菌宿主内におけるタンパク質の効率的な発現系の提供。
【解決手段】組換えDNA構築体であって、タンパク質のコード領域がそのタンパク質の宿主内での発現を可能にするプロモーターに操作可能に連結してなり、そのプロモーターは特定な配列で示されるDNA配列からなる組換えDNA構築体による、大腸菌などの細菌宿主細胞における発現系。当該宿主細胞をタンパク質が産生される条件下で培養し、そのタンパク質を回収して組み換えタンパク質を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、細菌宿主に適用される遺伝子工学技術に関する。さらに詳しくは、本発明は、細菌宿主におけるタンパク質の製造のための発現系に関する。
【背景技術】
【0002】
組換えDNA技術の出現は、様々の天然に存在するタンパク質および合成タンパク質の細菌、かび、酵母および哺乳動物細胞のような生物体内における製造を可能にしてきた。一般的に、それは、所望のタンパク質をコードする遺伝子の宿主生物体内への挿入、およびその遺伝子発現のための宿主細胞機構の利用を包含する。
【0003】
組換えDNA技術は、工業的に受け入れられる収率でのタンパク質の製造を達成するために、絶えず発展を続けている。タンパク質の組換え製造における制限因子は、所望のタンパク質をコードする遺伝子の発現率である。とくに、遺伝子のプロモーター領域が遺伝子発現の転写過程に重要であることが明らかにされている。大腸菌に見出されるtrpプロモーターのような効率的なプロモーターはDNA−依存性RNAポリメラーゼに強固に結合し、mRNAの発生における遺伝子の転写を開始させる。lacプロモーターのような効率がより低いプロモーターはRNAポリメラーゼにそれほど強固には結合せず、mRNAの発生率はもっと低下する。
【0004】
trpプロモーターは、転写を効率的に開始させるその能力により、異種タンパク質の製造に広範囲に用いられている。その効率性にもかかわらず、trpプロモーターには制御が容易ではないという固有の欠点がある。とくに、trpプロモーターは完全には抑制されず、すなわち宿主が培養液中でタンパク質の産生に適当な期に生育する前に転写を駆動してしまう。他の広範囲に使用されるプロモーターのlacは、trpほど効率的ではないが、制御はより容易である。
【0005】
さらに効率的なプロモーターを開発するため、異なるプロモーターの機能成分が、たとえば米国特許第5,362,646号に記載の場合のように組合わされてきた。一例では、バクテリオファージT7プロモーターA1(PA1)が2つのlacオペレーターと組合わされている。とくに、バクテリオファージT7プロモーターのいわゆる−35および−10領域の間のスペーサー領域が修飾lacオペレーター配列で置換され、得られたプロモーターハイブリッドを制御するために、第二のlacオペレーターが下流に導入された。生じたプラスミド/オペレーター系を市販のpUHEプラスミドに導入すると、誘導により効率的に転写を開始し、しかも誘導前には高度に抑制されることが見出された。
【0006】
Tsungら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1990, 87: 5940)によって記載された他のプロモーターは、有効なtrp−35領域、高度に効率的なlppP-5プロモーター(lppプロモーターの変異体)からの−10領域およびlacプロモーター由来のスペーサーから構成される。このプロモーターは転写開始に極めて効率的であり、細胞の致死を生じるほどであった。様々なプロモーターが微生物宿主におけるタンパク質の収率の改善を可能にしているものの、工業的に価値のあるタンパク質のさらに効率的な産生を駆動するプロモーターの要求は依然として存在する。
【0007】
発明の概要
本発明の一態様によれば、細菌宿主内におけるタンパク質の発現に有用な新規組換えDNA構築体が提供される。この構築体は、タンパク質のコード領域と、それに操作可能(operably)に連結する。
5′-TTGACAACATAAAAAACTTTGTGTTATACT-3′
および
5′-TTGACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATACT-3′
から選択されるDNA配列を有するプロモーターを含む制御領域によって構成される。
【0008】
発明の詳細な説明
本発明は、細菌宿主たとえば大腸菌内において、高度に効率的なDNAの発現を駆動させるのに有用なDNA配列を提供する。これらの配列からなる発現ベクターの使用は、同種および異種の両方の発現タンパク質の産生の増大を達成するために有用な手段を与える。本発明の一態様においては、細菌宿主内でのタンパク質の発現に有用な新規組換えDNA構築体が提供される。この構築体はタンパク質のコード領域と、このタンパク質に操作性に連結して宿主内におけるこのタンパク質の発現を可能にするプロモーターを含む制御領域を含み、この場合プロモーターは、
5′-TTGACAACATAAAAAACTTTGTGTTATACT-3′
および
5′-TTGACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATACT-3′
から選択されるDNA配列を有する。
【0009】
これらのプロモーターは共通してコンセンサス配列の−35領域:TTGACAおよびその配列の−10領域:TATACTを有する。スペーサー配列すなわち介在する18塩基の配列は、本発明よれば、ACATAAAAAACTTTGTGTまたはCTTTATGCTTCCGGCTCGのいずれかであることができ、好ましくは、ACATAAAAAACTTTGTGTである。したがって、本発明はその好ましい実施態様においては、所望のタンパク質をコードするDNAが、配列:
5′-TTGACAACATAAAAAACTTTGTGTTATACT-3′
のプロモーターに対する発現制御下に操作性に連結しているDNA構築体を提供するものである。
【0010】
本技術分野の熟練者には明らかなように、本発明のプロモーターは、機能制御領域内に、発現を駆動するために要求される成分の1つの必須エレメントを構成する。さらに、これらのプロモーターはグラム陰性またはグラム陽性(Gram−ve or +ve)細菌内で複製可能な任意の適当な発現ベクター中に標準操作を用いて挿入することができる。さらに特定すれば、遺伝子発現制御領域を形成させるために、本発明のプロモーターは、発現に通常要求される他の制御エレメント、たとえばリボソーム結合部位および、本発明の実施態様においては、プロモーター機能を制御するように働くオペレーターとともに導入されることになる。
【0011】
これらの成分は、よく理解されている遺伝子発現原理に従って発現が起こるために要求される互いの相対位置で配列される必要がある。
【0012】
本発明の一実施態様においては、構築体の制御領域にオペレーターが導入される。使用できるオペレーターには、化学インデューサーによって直接誘導されうるオペレーター、およびlacのように脱抑制可能なオペレーターが包含される。適当なオペレーターの例には大腸菌ラクトース、ガラクトース、トリプトファンおよびテトラサイクリンオペレーターが包含される(Millerら, “The Operon”, Cold Spring HarborLabo-ratory, 1980 ならびに Hillら, J.Mol. Biol., 1984, 172; 185参照)。好ましいオペレーターは高度に抑制可能であって、タンパク質をコードするDNAの発現の制御が可能である。特定の実施態様においては、制御領域は、合成インデューサーのイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド(IPTG)および天然インデューサーのラクトースの不存在下に、プロモーターからの発現を防止するlacオペレーターを含む(図1)。
【0013】
制御領域はさらに、リボソームのmRNA転写体への結合を促進し、それによりRNAコード領域の翻訳を開始させてタンパク質を発生させるリボソーム結合部位(RBS)を含む。適当なリボソーム結合部位には、lacおよびバクテリオファージT5が包含される。好ましい実施態様では、RBSは配列:5′-ATTAAAGAGGAGAAATTAAGC-3′を有するT5バクテリオファージRBSに由来する配列である。
【0014】
本発明の構築体の制御領域は、内因性または異種タンパク質のコード領域と操作可能に連結される。「異種タンパク質」の語は、細菌宿主によって天然には産生されないが、そのタンパク質をコードするDNAで適当にトランスフォームされた場合、この宿主によって発現されるポリペプチドまたはタンパク質を意味し、宿主のトランスフォームにはゲノムDNA、cDNAおよび合成DNAを使用することができる。ここに記載されるシステムを用いて産生できるタンパク質としては、それらに限定されるものではないが、ホルモンたとえば副甲状腺ホルモン(PTH)、グルカゴンまたはそのフラグメントおよび関連ペプチドたとえばGLP-1およびGLP-2、増殖因子たとえば上皮増殖因子(EGF)、ならびにリンホカインたとえばインターロイキン−6および−8(IL−6、−8)が包含される。タンパク質の標準型すなわち付加的N−末端Met残基をもたないタンパク質の単離を容易にするため、発現に続いて切断される融合タンパク質を産生させることもできる。たとえば、問題とするタンパク質をコードするDNAに、シグナルペプチドたとえば大腸菌外膜タンパク質ompAをコードするDNAを先行させる。この例では、遺伝子発現により、N-Met含有ompAシグナルペプチドに所望のタンパク質が続く融合ペプチドが生成する。シグナルペプチドは細菌内膜を通過して融合タンパク質を運搬し、そこでシグナルペプチドは切断される。使用できる他のシグナルペプチドには、アルカリホスファターゼ、大腸菌熱安定性エンテロトキシンIIおよびブドウ球菌からのプロテインAがある。別法として融合タンパク質の合成と切断を別個の操作で行って所望のタンパク質を得ることもできる。たとえば、グルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)は所望のタンパク質からトロンビンまたは第Xa因子によって切断できる。
【0015】
本発明の特定の実施態様においては、コード領域はそのアミノ酸配列がHendyら(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1981, 78: 7365)によって記載されているヒトPTHをコードするDNAから構成される。本明細書に記載の実施例においてはPTHをコードするDNA配列はompAシグナルペプチドをコードするDNAと直接リーディングフレームを合わせて連結される。
【0016】
図1に例示する好ましい組換えDNA構築体は、lppまたはlacUV5スペーサーを有し、ホスホルアミダイト法によって合成された一本鎖オリゴヌクレオチドから製造された。XhoIからEcoRI制限部位までの配列からなるゲル精製鎖をついで初期PCR標的として使用し、これを、示した初期オリゴヌクレオチド配列またはその相補性鎖いずれかの末端に特異的にハイブリダイズする相補性一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを用いて二本鎖DNAフラグメントにPCR増幅した。すなわち、構築体は、たとえばManiatisら(“Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Laboratories,1982)ならびにInnisら(“PCR Protocols, A Guide to Methods and Applications”)に記載されている標準遺伝子合成法を用いて調製される。
【0017】
本発明の他の態様においては、本発明の組換えDNA構築体を導入する細菌宿主細胞トランスフォーマントの産生に有用な発現ベクターが提供される。本発明のDNA構築体は確立された技術により、「カセット」としてベクター好ましくはプラスミドベクター中に導入することができる。一般的にベクターは、カセット上のいずれか一方の末端における制限部位に相当する制限部位で切断される。カセットはついで、その末端をベクター上の相補性の切断部位にライゲートして導入される。
【0018】
バクテリオファージベースのベクターも使用できるが、プラスミドベクター、たとえば
pBR322およびpUC系のプラスミドが好ましい。適当なベクター中に導入されたならば、生成したプラスミドを宿主内で以下のクローニング作業に十分な量が得られるように増殖させる。選ばれたタンパク質をコードするDNAは、標準的なクローニング/ライゲーション法を用い、多重クローニング部位を有するプラスミドへの導入が便利なことは自明である。また、プラスミドにより当然、複製の起源が導入され、トランスフォームされた細胞の選択を可能にするためのマーカー、たとえばアンピシリンもしくはテトラサイクリン抵抗性遺伝子も導入されることがとくに望ましい。また3つのすべてのリーディングフレームでの翻訳停止コドンおよび正しく配置された転写停止領域が所望のタンパク質の満足できる発現に必要なことも自明の通りである。適当な転写ターミネーターには大腸菌trpA、thr、hisおよびphe遺伝子の転写ターミネーターが包含される。
【0019】
所望のタンパク質をコードするDNAがベクターに導入されたならば、標準的塩化カルシウム誘導トランスフォーメーション法を用いて、選択された細菌宿主を上記ベクターでトランスフォームする。適当な細菌宿主には大腸菌およびサルモネラ菌のようなグラム陰性菌が包含される。好ましくは、宿主は市販の大腸菌株であり、とくに好ましくはJM101およびその誘導体である。
【0020】
DNA構築体の制御領域が、以下に詳細に記述するようにlacオペレーターを含む場合には、トランスフォームされた宿主株は、プロモーター機能したがってタンパク質の発現を調節できるように、lacI産物の発現が可能であり、場合により望ましくは過剰産生が可能でなければならない。一部のトランスフォーマントによるlacI過剰産生の必要性は、本発明の一実施態様においてlacI産物の過剰産生に応答するlacIq遺伝子がすでに繋留されている宿主を用いることによって達成できる。宿主として使用できる大腸菌のlacI過剰産生株には ClontechLaboratories Inc.(California, USA)から入手できるJM系列の株が包含される。使用に適した特定の宿主株には、たとえばJM101、JM105およびJM107が包含される。また、トランスフォーマントによるlacI過剰産生は、本発明のベクターにlacIq遺伝子を導入することによっても達成することができる。この場合、lacIの過剰産生はベクターによって誘導されるので、市販されている様々な細菌宿主株の任意の株、たとえば、大腸菌株DH1、RR1、C600、CMK603およびEB505を使用することができる。ベクターに導入するlacIq遺伝子はプラスミドpMMB22(Bagdasarianら, Gene, 1983, 26: 273に記載されている)の1.2kb HindIIIフラグメントとして得られ、ついでプラスミドベクターの任意の部位に非破壊的に導入することができる。
【0021】
ベクターとくにプラスミドにおいて、最初にトランスフォームされた株からその子孫への遺伝の安定性を増大させるためには、大腸菌内で機能する分配エレメント(par)もベクターに導入される。このようなparエレメントの一つはpSC101から380bp HincII/AvaIフラグメントとして遊離させ、ついでベクターの適当な部位にクローン化される。
【0022】
トランスフォーメーションに続いて、発現ベクターを繋留する細菌宿主を選ばれた宿主に最も適当な培養培地内で培養する。大腸菌の場合、本発明に好ましい株の培養には、LB培地または2YT培地(酵母エキス/トリプトン)が使用できる。プラスミドトランスフォーマントの選択圧は、トランスフォームされていない宿主株を死滅させる細胞毒性物質を与えることによって維持される。たとえばテトラサイクリン抵抗性の遺伝子を繋留するプラスミドによるトランスフォーマントは、テトラサイクリン含有培地内で培養する。テトラサイクリンの培地中濃度は5〜15μg/mL程度が適当である。
【0023】
構築体におけるプロモーターは、制御領域においてプロモーターに隣接して配置されるオペレーターに対するレプレッサー分子の結合によって調節可能であることが好ましい。好ましい実施態様においては、lacI遺伝子産物が、そのプロモーターに隣接して配置されるlacオペレーターに結合する。この例では、lacI産物の結合がプロモーターを抑制し、その制御下にあるコードDNAの発現レベルを低下させる。発現レベルを上昇させるためには、lacIを結合してプロモーターを脱抑制する化学物質、IPTG(イソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド)を培養培地に添加してプロモーターを脱抑制し、発現を誘導する。IPTGは、細胞が中間対数増殖期に到達した時点で培養培地に添加することが適当である。
【0024】
所望のタンパク質の最大収率を実現するために培養体を増殖させなければならない至適濃度の決定には、試験を実施してタンパク質のレベルを経時的にアッセイすることができる。一般に、タンパク質の合理的な収率は細胞が中間対数期に到達した時点で回収できるが、さらに大量のタンパク質の蓄積はその後約4〜5時間以内に期待できる。
【0025】
所望のタンパク質は、本技術分野において確立された、そのタンパク質に適当な方法によって精製することができる。本発明の特定の実施態様においては、発現したPTHはペリプラスム間隙を通って培養培地中に分泌され、そこで直接回収される。タンパク質が分泌されたならば、使用した培地を、分子サイズ、正味電荷、等電点等のタンパク質の性質に応じた生物学的方法を用いて単離することができる。培地は最初にたとえば凍結乾燥によって濃縮する。さらに、タンパク質に対する抗体、または天然のリガンドが利用できる場合には、親和性カラムも使用できる。本発明の特定の実施態様を以下に図面を参照しながら例示する。
【実施例】
【0026】
実施例 1
その成熟型においてPTHは84−アミノ酸ペプチドであり、ヒトでは血中カルシウムを上昇させ、骨形成を調節する作用を有する。ヒトのPTHをコードするDNAは、確立された方法を用い、Hendyら(前出)によって発表されたアミノ酸配列に従って合成され、以下に記載する構築体内に、図1に示すように導入された。
以下に示す表1および図1に例示したプロモーター#1および#2を導入した好ましい組換えDNA構築体、ならびに対照プロモーター#3および#4を導入した構築体は、ホスホルアミダイト法によって合成された一本鎖オリゴヌクレオチドから製造した。XhoIからEcoRI制限部位までの配列からなるゲル精製鎖をついで初期PCR標的として使用し、示した初期オリゴヌクレオチド配列もしくはその相補性鎖いずれかの末端に特異的にハイブリダイズする相補性の一本鎖DNAオリゴヌクレオチドを用い二本鎖DNAフラグメントにPCR増幅した。すなわち構築体は、たとえばManiatisら(“Molecular Cloning”, Cold Spring Harbor Labo-ratories, 1982)ならびに Innisら(“PCR Protocols, A Guide toMethods and Applications”)に記載されている標準遺伝子合成法を用いて調製される。
この構築体をついで、アンピシリン抵抗性に代えテトラサイクリン抵抗性を付与するpUC18誘導プラスミドにクローン化した。次にJM101誘導大腸菌宿主株を確立された技術(Maniatisら, “Molecular Cloning”,Cold Spring Harbor Laboratory, 1982)に従ってトランスフェクトした。
【0027】
実施例2 トランスフォームされた宿主の発現
PTHベクターを含有するトランスフォーマントを、0.5%グルコースおよびテトラサイクリンを含有する2YT培地中30℃において一夜培養し、同一組成の新鮮な培地中に接種し、中間対数期に達するまで30℃で培養を続けた。培養液をついで1時間の増殖間隔で誘導し(1mM IPTG)、培養液のアリコートを採取し、分画化して培養培地のサンプルを作成し、分泌されたPTH産物を標準Allegroアッセイを用いて同定した。結果は以下の表1に示す。
【0028】
【表1】

【0029】
Allegroアッセイの結果は、18b.p. lppおよびlacUV5配列を導入するプロモーターが異種PTHタンパク質のレベルの上昇を促進することを示している。プロモーター#1および#2はスペーサーが修飾lacオペレーター配列(lacO)で置換されたプロモーター#3、および−35および−10領域がバクテリオファージT7に由来しスペーサーがlacOプロモーターであるプロモーター#4に比較して好ましい。クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)をコードする遺伝子の発現に同じプロモーターを用いた研究でもプロモーター#1および#2によって発現が増大する類似の結果を示した。また、それぞれのプロモーターの実験で、バクテリオファージT5 RBSと組合わせた場合に、lac由来のRBSに比較してタンパク質収率の増加を示すことが注目された。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の組換えDNA構築体が導入された発現カセットのヌクレオチド配列および模式的表示を例示す。
【図2】プロモーターおよびオペレーター領域を含む本発明のDNA構築体のヌクレオチド配列を例示する。
【図3】プロモーターおよびオペレーター領域を含む本発明のDNA構築体のヌクレオチド配列を例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細菌宿主細胞内でタンパク質を発現する組換えDNA構築体において、タンパク質のコード領域がそのタンパク質の宿主細胞内での発現を促進するプロモーターを含む制御領域に操作可能に連結してなり、そのプロモーターは
5′-TTGACACTTTATGCTTCCGGCTCGTATACT-3′ (配列番号:2)
からなるDNA配列であることを特徴とする組換えDNA構築体。
【請求項2】
細菌細胞が大腸菌細胞である請求項1に記載の組換えDNA構築体。
【請求項3】
制御領域はさらにタンパク質の発現を調節するオペレーターを含む請求項1または2に記載の組換えDNA構築体。
【請求項4】
オペレーターがlacオペレーターである請求項3に記載の組換えDNA構築体。
【請求項5】
タンパク質がヒト副甲状腺ホルモンである請求項1〜4のいずれか一項に記載の組換えDNA構築体。
【請求項6】
宿主細胞のペリプラスムへのタンパク質の分泌を促進する、コード領域とリーディングフレームの合致したOmpAシグナルペプチドをコードするDNAをさらに含む請求項1〜5のいずれか一項に記載の組換えDNA構築体。
【請求項7】
制御領域が、DNA配列:
ATTAAAGAGGAGAAATTAAGC (配列番号:5)
をもつT5リボソーム結合部位を含む請求項1〜6のいずれか一項に記載の組換えDNA構築体。
【請求項8】
制御領域が、DNA配列:
5′-CTCGAGGCCACCCGGGCCAAAATTTATCAAATTGACACTTTATGCTTCCG
GCTCGTATACTGTCGACAATTGTGAGCGGATAACAATTTCACACAGAATTC -3′ (配列番号:13)
を含む請求項1〜7のいずれか一項に記載の組換えDNA構築体。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の組換えDNA構築体を含むベクター。
【請求項10】
請求項9に記載のベクターでトランスフォームされた細菌宿主細胞。
【請求項11】
大腸菌細胞である請求項10に記載の細菌宿主細胞。
【請求項12】
請求項10または11に記載の宿主細胞をタンパク質が産生される条件下で培養し、次いでそのタンパク質を回収することからなる組換えタンパク質の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−187295(P2006−187295A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66844(P2006−66844)
【出願日】平成18年3月13日(2006.3.13)
【分割の表示】特願平8−534675の分割
【原出願日】平成8年5月16日(1996.5.16)
【出願人】(506084977)アリリックス・バイオファーマシュウティカルズ・インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】