説明

避難開始時間の算定方法

【課題】 本発明は建物の居室におけるレイアウトプランにかかわらず、安全な避難開始時間を簡便に算定することができる避難開始時間の算定方法の提供を目的とするものである。
【解決手段】建物内の居室において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間tstの算定方法である。居室内に天井までの間仕切り壁等による子室が設置される場合でも、煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の床面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)、0.95以下の係数φを簡易煙降下式に適用することにより避難開始時間tst(s)を算定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物内の居室において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間の算定方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建物の排煙設備や防火シャッターの取止めなど、建築基準法の仕様規定によらない設計を行う場合は、避難安全検証により安全確認を行い、評価機関の「性能評価書」および国交省の「大臣認定書」を取得する。そして、このときの避難安全検証は、下記のように居室避難、階避難、全館避難からなる。
【0003】
居室避難:居室内の人が廊下へ避難するまでの間、煙降下の影響を受けないこと。
階 避 難:階の全員が階段室内へ避難するまでの間、煙降下の影響を受けないこと。
全館避難:在館者が地上へ避難するまでの避難経路において、煙の影響を受けないこと。
【0004】
このうち居室避難の評価方法としては、下記のとおり避難時間が限界煙層降下時間以下であることが確認される。この避難時間は、建物内の居室で火災が発生した場合に該居室内の在室者が火災に気づいて避難を開始するまでの避難開始時間と、避難を開始してから室外に移動するまでの避難行動時間からなり、さらに避難行動時間は在室者が居室内を歩行するときの居室内歩行時間と、出口を通過するときの出口通過時間からなる。
【0005】
避難時間
=避難開始時間+避難行動時間
=避難開始時間+居室内歩行時間+出口通過時間≦限界煙層降下時間
【0006】
そして、避難開始時間としては、例えば下記の数式2の算定式が用いられることが多い。なお、この他にも、数式2の算定式に180秒をプラスする方法や、天井下10%の高さまで煙が降下した時点を算定する方法や、特許文献1の算定方法も提案されている。
(数式2)

start:居室の避難開始時間(s)
A:居室床面積(m
【0007】
また、歩行時間としては下記の数式3の算定式が用いられることが多い。
(数式3)

travel:居室内歩行時間(s)
L:歩行距離(m)
v:歩行速度(m/s)<一般には、事務室1.3m/s,一般1.0m/s>
【0008】
また、出口通過時間としては下記の数式4の算定式が用いられることが多い。
(数式4)

queue:出口通過時間(s)
p:人口密度(人/m)
A:居室床面積(m)
N:有効流動係数(人/m・s)<一般には、1.5人/m・s>,
eff:有効扉幅(m)
【0009】
したがって、避難時間は、一般には下記の数式5の算定式で表される。
(数式5)

【0010】
一方、限界煙層降下時間としては下記の数式6の算定式が用いられることが多い。本式は田中の簡易煙降下式とも呼ばれ、居室において天井から煙が溜まり、床面からある限界煙層高さ(一般には1.8m)まで煙が降下する時間を避難可能な限界時間として算定するものである。
(数式6)

:煙層降下時間(s)
ρ:煙層密度(kg/m3)<一般には初期火災とみなして1.0kg/mとおくことが多い>
:居室床面積(m
k:火災プルーム量に関わる係数(-)<一般には0.08>]
:火災成長率(kW/s)<室用途による。一般には事務室0.102,会議室0.016など>
Z:煙層高さ(m)
:天井高さ(m)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−33361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
ところで、現在、避難安全検証を大臣認定により取得した建物において居室の設計変更が生じると、性能評価、大臣認定を、変更ごとに繰り返さなければならない。これらの申請には、何ヶ月もかかるため、竣工前検査を受ける何ヶ月か前にはテナントとなる居室のレイアウトプランを決定しなければならないが、現実的にはそんなに早く決まらないため、居室のレイアウトプラン決定上の問題となっている。
【0013】
建物の居室内に天井までの間仕切りによる子室が形成されている場合、該子室から子室以外の居室の部分(親室と呼ぶ)での出火の状況を把握できない、あるいはL型やコの字型、ロの字型といった折れ曲がり形状の居室では見通しが悪く、出火点から遠い人は避難開始が遅れるといった理由から、避難の遅れを見込んだ検証を行う必要があるとされている。
【0014】
このため、従来は、子室の煙感知器発報時間、子室から親室へ確認しに行く時間をプランごとに計算する、子室の間仕切り壁をガラスにする、子室の間仕切り壁の上部をスリットにして親室の煙を子室に呼び込んで早く気付かせる、などの方法がとられているが、このように設計条件の影響を受ける算定方法では、具体的プランが決定しないと検討に入ることができない、間仕切り仕様の制約が大きい、といった欠点があった。
【0015】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであって、建物の居室におけるレイアウトプランにかかわらず、安全な避難開始時間を簡便に算定することができる避難開始時間の算定方法の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記目的を達成するために、建物の居室内において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間tstの算定方法であって、避難開始時間tst(s)は、煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の床面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)、0.95以下の係数φを用いて、下記数式1により算定することを特徴とする避難開始時間の算定方法。
(数式1)

【0017】
これによれば建物の居室におけるレイアウトプランにかかわらず、安全な避難開始時間を簡便に算定することができる。
【0018】
また、前記係数φは0.90以下であるのが好ましい。これによればより安全な避難開始時間を算定することはもちろんのこと、会議室、事務所、物販を初めとする各種用途の居室において、概ね安全な避難開始時間をカバーすることができる。
【0019】
また、本発明に係る避難開始時間の算定システムは、建物の居室内において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間tstの算定システムであって、煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)、0.95以下の係数φを入力する入力手段と、該入力手段により入力された各数値を用いて、請求項1または請求項2に記載の算定方法に基づいて避難開始時間を算定する演算手段と、該演算手段により算定された避難開始時間を出力する出力手段とを備えてなることを特徴とする。
【0020】
また、本発明に係るコンピュータ読み取り可能なプログラムは、コンピュータを、上述の避難開始時間の算定システムとして機能させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、建物の居室におけるレイアウトプランにかかわらず、安全な避難開始時間を簡便に算定することができる。このため、避難安全検証を大臣認定により取得した建物において居室の設計変更が生じた場合でも、性能評価、大臣認定を、変更ごとに繰り返す必要がなくなる。よって、顧客の要望に応じてレイアウトを変更する自由度が拡大し、設計の作業効率を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本実施形態に係るテナントとなる居室の(a)平面図と(b)断面図である。
【図2】奥まった子室までの伝達歩行時間の考え方を示す図である。
【図3】時間差tと伝達歩行時間tβ’の関係を示した図である。
【図4】係数φ別の床面積と時間との関係を示した図である。
【図5】用途別の床面積と係数φの関係を示した図である。
【図6】避難開始時間算定システムの構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に本発明の一実施形態について説明する。
【0024】
図1は、本実施形態に係るテナントとなる居室の(a)平面図と(b)断面図である。
【0025】
図1に示すように、この居室は廊下側に2つの扉が設けられ、中央に親室、奥側に4室の子室、廊下側の隅部に各1室の子室が設けられ、親室と子室とは天井までの間仕切り壁等で仕切られている。なお、以下の説明においては、親室において火災が発生した場合を想定している。
<避難開始時間の算定に際しての居室避難の考え方>
【0026】
居室の煙降下が限界煙層高さまで降下する以前に、避難が完了することを安全目標とする。避難開始の遅れの要因は、子室の人が親室における煙の状況を即座に把握できないこと、子室が妨げとなり見通しが悪くなること、及び、大面積のテナントでL型やコの字型のように折れ曲がったプランの場合に見通しが悪くなることが考えられる。従って、本検証ではこれら出火覚知の遅れを考慮した避難開始時間の算定を行う。
<避難開始時間の算定>
【0027】
本実施形態では、避難開始時間tstは、子室の占める位置や面積に関係なく、親室出火の煙が仮想的に居室全体に天井下10%まで溜まったとみなしたときの煙層降下時間を用いるとする。すなわち、親室出火の煙は本来親室の部分のみで煙降下するが、子室の避難の遅れを考慮して仮想的に居室全体の床面積を用いて煙降下時間を算定するものであり、安全側の設定となる。
(数式7)

ρs(kg/m):煙層密度
R(m):居室全体の床面積
k:火災プルーム量に関わる係数
0(kW/s):火災成長率
R(m):天井高さ
【0028】
このように避難開始時間には、上述の数式6と同様の田中の簡易煙降下式(田中哮義著「改訂版 建築火災安全工学入門」(財)日本建築センター発行,2002.1)をベースに用いている。
【0029】
本発明は、従来、避難開始時間として用いられていた算定式(例えば数式2)ではなく、数式7の算定式を用いていることに特徴がある。そして、本発明の最大の特徴は、簡易煙降下式を採用するに際して、算定式のパラメータの一つである居室の床面積を親室のみではなく居室全体とするとともに、煙層高さを天井高さの5%降下(天井高さ×0.95)以下、さらに好ましくは10%降下(天井高さ×0.90)に設定した点である。これら設定を行った数式が安全な避難開始時間として機能する点の検証については後述する。なお、数式7は、天井高さの10%降下(天井高さ×0.90)に設定しており、この0.90が係数φに置き換わることによりその他の数値にも変更可能である。
【0030】
一方、限界煙層降下時間tsは、親室の床面積を対象として、煙が限界煙層高さ(通常、FL+1.8m:床面から1.8mの高さ)まで降下する時間とする。
(数式8)

ρ:煙層密度(kg/m)
β:親室率(居室全体に対する親室の床面積の割合)
:居室全体の床面積(m
k:火災プルーム量に関わる係数
:火災成長率(kW/s)
:天井高さ(m)
【0031】
このように限界煙層降下時間の算定にも、上述の数式6と同様の田中の簡易煙降下式(田中哮義著「改訂版 建築火災安全工学入門」(財)日本建築センター発行,2002.1)をベースに用いている。
<避難開始時間の安全性の確認>
【0032】
子室を無視して仮想的に居室全体を対象に煙降下する時間を避難開始時間と設定する方法は、次のように考えれば現実的に安全側の設定であると考えることができる。
【0033】
親室出火の煙が親室部分の天井下10%まで降下した時点で親室の人が出火を覚知して避難を開始とし、このとき親室のうち子室に最も近い位置にいる人が、その位置からみて一番奥にある子室の入口まで歩行して出火を伝達するとすれば、子室の避難開始時間は、
子室の避難開始時間=親室を対象として天井下10%による避難開始時間+子室までの伝達歩行時間
となる。このとき、子室床面積が大きい場合、「親室を対象とした天井下煙降下10%による避難開始時間」は短くなるが、子室が増えるため「子室までの伝達歩行時間」が長くなる。一方、子室床面積が小さい場合、「親室を対象として天井下煙降下10%による避難開始時間」は長くなるが、子室が少ないため「子室までの伝達歩行時間」が短くて済む。
【0034】
このように設定した子室の避難開始時間よりも、先に設定した居室全体の床面積を対象とした天井下10%の煙降下時間、すなわち数式7の避難開始時間が長ければ、数式7の避難開始時間は安全側の設定になると考えることができる。
a)伝達歩行距離について
【0035】
ここで伝達歩行距離について説明する。親室から子室への伝達歩行時間は子室のプランにより変わるが、子室配置のパターンから見れば、子室が親室周囲に配置されるプランよりも、奥まった廊下に子室群が配置されるプランで最も長くなると考えられる。従って、奥まった廊下に子室が配置される状況をイメージした伝達歩行時間について次に考える。
【0036】
居室床面積Am(幅Wm×奥行Dm)に子室率β'となる子室が図2のように配置されるとき、最も奥にある子室までの伝達歩行距離Lβ(m)を簡易に与える方法として次のような方法が考えられる。ただし、ここでいう子室率β'とは、親室ではない部分全ての占める割合を指し、親室率をβとしたときにβ'=1−β と表される。
【0037】
方法1 :図2(a)に示すように、子室部分の幅をWとし、奥行は子室率β'に応じて変化する。親室から奥の子室扉へ至る通路の歩行距離はβ’D となる。
【0038】
方法2 :図2(b)に示すように、子室部分の奥行をDとし、幅が子室率β'に応じて変化する。親室から奥の子室扉へ至る通路の歩行距離はβ’Wとなる。
【0039】
なお、居室の奥行き寸法をもとに、居室の形状が奥行きの長い長方形となる場合は 方法1、幅の長い長方形となる場合は方法2になるとみなして、親室率βごとにスタディした。本実施形態では居室の奥行きが20mにつき、400m以下の居室は方法1、超える場合は方法2とした。
b)煙降下時間の時間差と、伝達歩行時間との関係について
【0040】
仮想的に居室全体の床面積を対象とした10%煙降下の算定式、すなわち本発明に係る避難開始時間の算定式は下記の数式9である。
(数式9)

【0041】
一方、親室率β(子室率β'=1−β)のときの親室の床面積を対象とした10%煙降下の算定式は下記の数式10である。
(数式10)

【0042】
これらの2つの時間の時間差tは、数式11となる。
(数式11)

【0043】
ここで、
(数式12)

とおくと、
(数式13)

となり、時間差tは床面積Aと親室率βで表されるとわかる。子室への伝達歩行時間tβ’は、歩行時間をv(m/s)とすれば、tβ’=Lβ/vであるから、
方法1では、
(数式14)

となり、方法2では
(数式15)

となる。
【0044】
例えば、天井高さH=2.8(m)、煙層密度ρ=1.0(kg/m)、v=1.3(m/s)[=78(m/分)]、火災成長率Q0=0.1129(kW/s)を代入して、数式13〜15をスタディすると、図3に示すグラフのようになる。
【0045】
このグラフは、仮想的に居室全体を対象とした場合の煙降下時間と 親室のみを対象とした場合の煙降下時間の時間差tと伝達歩行時間tβ’を、親室率βごとに表したものである。
【0046】
このグラフを見ると、親室率βが小さい場合、つまり子室床面積が大きい場合は、時間差tが長くなり、子室群の突き当たりまで歩行して伝達すると考えれば、十分余裕がある。また親室率βが大きい場合、つまり子室床面積が小さい場合は、時間差tが短くなるが、そもそも子室床面積が小さいので奥まった子室群のようなプランにはならず、出火覚知した親室からの伝達歩行は殆ど必要ないと考えられる。
【0047】
したがって、居室全体の床面積を対象とした10%煙降下の時間を避難開始時間とすれば、子室床面積の大小に関係なく、子室の避難の遅れを安全側に算定することができると分かる。
【0048】
なお、子室のプランニングによってはさらに奥まった子室が発生する可能性もあるが、伝達歩行時間が伝達余裕時間よりも長くならないようプランニングを行えばよいとする。
【0049】
<避難開始時間における係数φの検証>
【0050】
上述のように、本発明の最大の特徴は、簡易煙降下式を採用するに際して、算定式のパラメータの一つである居室の床面積を親室のみではなく居室全体とするとともに、煙層高さを天井高さの5%降下(天井高さ×0.95)以下、さらに好ましくは10%降下(天井高さ×0.90)に設定した点である。特に算定式のパラメータの煙層高さの5%降下や10%降下の臨界的意義について検証することする。
【0051】
煙が天井に溜まり始めてある程度降下した時点で出火覚知して避難を開始する、としたときの床面からの煙層高さをφH(0<φ<1)とすると、煙降下式による避難開始時間が、告示などで用いられている数式2による避難開始時間よりも安全側に算定されるためのφは、次の通りである。
(数式16)

【0052】
この数式16において、φを、0.95(5%降下)、0.90(10%降下)、0.85(15%降下)、0.80(20%降下)と設定すると、図4に示すグラフのようになる。このグラフを見ると、φが0.95(5%降下)の場合が従来の告示の方法にほぼ一致することから、φは0.95以下、すなわち天井高さの5%降下が限界であることがわかる。なお、このグラフからわかるように、φは0.80以上の数値であれば概ね限界煙層降下時間より下側に位置する。
【0053】
また、数式16を、φを中心に展開すると、
(数式17)

となる。
【0054】
この数式17において、会議室(Q0=0.016)、軽物販(Q0=0.08)、事務所(Q0=0.1)、重物販(Q0=0.24)をそれぞれ設定すると、図5に示すグラフのようになる。このグラフを見ると、φが0.9(10%降下)が各種類の居室に対して安全な数値であることがわかる。なお、居室床面積が概ね30m 以下では、安全なφが0.9未満になることがあるが、この程度の小床面積の居室では子室を作ることがほとんどなく、また避難開始の遅れが問題となることはないため無視できる。
<避難開始時間の算定システムの構成図及び流れ>
【0055】
次に上記避難開始時間の算定方法をコンピュータに適用したシステム(以下、本システムという)について説明する。
【0056】
本システムは、図6に示すように、各部を統括的に制御する制御部100と、各種データを入力する入力部110と、避難開始時間を算定する演算部120と、各種データや算定結果を記憶する記憶部130と、各種データや算定結果を出力する出力部140とを備えてなる。
【0057】
前記入力部110は、:煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の床面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)などの各種データが入力されるものであり、例えばPCの場合にはキーボードやマウスとなる。
【0058】
前記演算部120は、前記制御部100とともに主にCPU(中央演算処理装置)により構成されるものであり、数式7による避難開始時間などを算定する。この避難開始時間の算定のためのプログラムは記録媒体からダウンロードされてもよいし、あるいはインターネット等のネットワークからダウンロードされてもよい。
【0059】
前記記憶部130は、キャッシュメモリやハーディディスクなどで構成されるものであり、入力部110により入力された各種データや、演算部120により算定された避難開始時間を記憶する。
【0060】
前記出力部140は、例えばPCの場合にはモニタから構成されるものであり、記憶部130に記憶されている算定結果である避難開始時間を出力するものである。
【0061】
而して、入力部110に各種データが入力されると、演算部120は数式7により避難開始時間を算定し、それを出力部140に出力する。このとき各種データや算定結果となる避難開始時間は記憶部130に随時記憶される。
なお、本実施形態では、係数φとして0.90の場合を例に挙げて説明したが、0.95以下の数値であれば、その他の数値であってもよい。
【符号の説明】
【0062】
100…制御部
110…入力部
120…演算部
130…記憶部
140…出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物内の居室において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間tstの算定方法であって、
避難開始時間tst(s)は、煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の床面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)、0.95以下の係数φを用いて、下記数式1により算定することを特徴とする避難開始時間の算定方法。
(数式1)

【請求項2】
前記係数φは0.90以下である請求項1に記載の避難開始時間の算定方法。
【請求項3】
建物内の居室において火災が発生した場合における該居室内の在室者が避難を開始するまでの避難開始時間tstの算定システムであって、
煙層密度ρs(kg/m)、居室全体の床面積AR(m)、火災プルーム量に関わる係数k、火災成長率Q0(kW/s)、天井高さHR(m)、0.95以下の係数φを入力する入力手段と、
該入力手段により入力された各数値を用いて、請求項1または請求項2に記載の算定方法に基づいて避難開始時間を算定する演算手段と、
該演算手段により算定された避難開始時間を出力する出力手段とを備えてなることを特徴とする避難開始時間の算定システム。
【請求項4】
コンピュータを、請求項3に記載の避難開始時間の算定システムとして機能させることを特徴とするコンピュータ読み取り可能なコンピュータプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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