説明

避雷器

【課題】設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、長期にわたって安定した避雷性能を発揮すること。
【解決手段】一対の端子を備えた筒型ヒューズを収容する避雷器本体101と、一対の端子のうち電源側に設けられた一方の端子または当該一方の端子に電気的に接続された部材に圧縮接続されることによって当該一方の端子に電気的に接続されたリード線104と、リード線104の他端を外部に延出させた状態で、リード線104と一方の端子との圧縮接続部105を覆うキャップ106と、を備えた避雷器100を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電柱などに設置される避雷器に関する。
【背景技術】
【0002】
避雷器は、たとえば、高圧電線や当該高圧電線から引き下げられた高圧引下用絶縁電線への落雷による雷サージ電流電圧を素早く対地へ流すために、送配電路の途中などに設けられる。従来、たとえば、高圧引下用絶縁電線の先端部分に接続される線路側端子を備え、当該線路側端子に対して高圧引下用絶縁電線の先端部分をネジ止めすることによって、当該高圧引下用絶縁電線と避雷器本体とを電気的に接続するようにした避雷器があった(たとえば、下記非特許文献1を参照。)。
【0003】
このような従来技術においては、線路側端子に対して高圧引下用絶縁電線の先端部分をネジ止めする際には、ネジによって締め付ける部分における高圧引下用絶縁電線の被覆を剥ぎ取ることによって、高圧引下用絶縁電線と線路側端子との電気的な接続状態を確保していた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】株式会社戸上電機製作所、アレスタ、p1、[online]、[平成22年9月30日検索]、インターネット<http://www.togami-elec.co.jp/products/pdf/zl.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来技術による避雷器は、線路側端子に対して高圧引下用絶縁電線の先端部分をネジ止めすることによって、当該高圧引下用絶縁電線と避雷器本体とを電気的に接続する構成であるため、風雨に起因する高圧引下用絶縁電線の振動によって、当該高圧引下用絶縁電線を線路側端子に対して締め付けているネジ(以下「締め付けネジ」という)が緩むことがあった。そして、締め付けネジが緩むと、高圧引下用絶縁電線が避雷器本体から外れ、停電事故に至るという問題があった。
【0006】
また、上述した従来技術による避雷器は、線路側端子に対して高圧引下用絶縁電線の先端部分をネジ止めする際に、締め付けネジによって締め付ける部分における高圧引下用絶縁電線の被覆を剥ぎ取っていたため、充電部が露出していた。このため、上述した従来技術による避雷器では、高圧引下用絶縁電線と避雷器本体とを接続するごと、すなわち当該接続工事ごとに充電部を絶縁する処理や、充電部を絶縁するためのカバーの取り付け作業をおこなわなくてはならず煩わしいという問題があった。
【0007】
また、上述した従来技術による避雷器は、作業者によって当該避雷器の設置状態にばらつきが生じる。具体的には、たとえば、ネジによる高圧引下用絶縁電線の締め付け具合や当該締め付けによる高圧引下用絶縁電線の損傷の程度などにばらつきが生じる。このため、上述した従来技術による避雷器では、作業者に左右されずに避雷器の設置状態を均一化することが難しいという問題があった。
【0008】
また、上述した従来技術による避雷器は、締め付けネジを高圧引下用絶縁電線に食い込ませることによって高圧引下用絶縁電線と避雷器本体とを電気的に接続する構成であるため、風雨に起因する高圧引下用絶縁電線の振動によって、当該高圧引下用絶縁電線と締め付けネジとが擦れると、高圧引下用絶縁電線と締め付けネジとの接触位置において高圧引下用絶縁電線が細くなることがあった。このため、上述した従来技術による避雷器では、高圧引下用絶縁電線と締め付けネジとの接触位置において高圧引下用絶縁電線が細くなると、高圧引下用絶縁電線と避雷器との電気的な接続が不安定になったり高圧引下用絶縁電線が避雷器本体から外れたりして、停電事故に至るという問題があった。
【0009】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、長期にわたって安定した避雷性能を発揮することができる避雷器を提供することを目的とする。
【0010】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、容易かつ確実に設置することができる避雷器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかる避雷器は、一対の端子を備えた筒型ヒューズを収容する避雷器本体と、前記一対の端子のうち電源側に設けられた一方の端子または当該一方の端子に電気的に接続された部材に圧縮接続されることによって当該一方の端子に電気的に接続されたリード線と、前記リード線の他端を外部に延出させた状態で、前記リード線と前記一方の端子との圧縮接続部を覆うキャップと、を備えたことを特徴とする。
【0012】
また、この発明にかかる避雷器は、上記の発明において、前記キャップの内側が、絶縁材料によって充填されていることを特徴とする。
【0013】
また、この発明にかかる避雷器は、上記の発明において、前記キャップが、絶縁材料によって形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
この発明にかかる避雷器によれば、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、長期にわたって安定した避雷性能を発揮することができるという効果を奏する。
【0015】
また、この発明にかかる避雷器によれば、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、容易かつ確実に設置することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明にかかる実施の形態の避雷器の構成を示す説明図である。
【図2】リード線と電線との接続状態を示す説明図である。
【図3】この発明にかかる実施の形態の避雷器の製造方法を示す説明図である。
【図4】従来の避雷器の一例を示す説明図(その1)である。
【図5】従来の避雷器の一例を示す説明図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかる避雷器の好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0018】
(避雷器の構成)
まず、この発明にかかる実施の形態の避雷器の構成について説明する。図1は、この発明にかかる実施の形態の避雷器の構成を示す説明図である。図1においては、この発明にかかる実施の形態の避雷器を、一部断面して示している。図1において、この発明にかかる実施の形態の避雷器100は、避雷器本体を備えている。避雷器100は、避雷器本体101に設けられた支持バンド102を介して、電柱などに設置される。
【0019】
避雷器本体101は、中空形状をなす磁器であって、内側の中空部分にヒューズ筒(図示を省略する)を収容している。ヒューズ筒は、可溶体を備えた可溶子、キャップ、ホルダ、アダプタなどによって構成されている。可溶子は、磁気性の絶縁筒の内部に、銀などによって形成された可溶体と、当該可溶体の周囲に充填される砂などの消弧剤と、によって構成されている。ヒューズ筒は、避雷器本体の内側において、ボルトやナットなどを用いて避雷器本体に固定されている。
【0020】
また、ヒューズ筒は、一対の端子を備えている。ヒューズ筒が備える一対の端子のうち、一方の端子は、避雷器本体101においてヒューズ筒よりも電源側に設けられた上部固定電極に電気的に接続され、他方の端子は、避雷器本体101においてヒューズ筒よりも接地側に設けられた下部固定電極に電気的に接続されている。ヒューズ筒については、公知の技術を用いて容易に実現可能であるため説明を省略する。
【0021】
上部固定電極には、リード線取付部材103が設けられている。リード線取付部材103は、上部固定電極に電気的に接続されており、一部が避雷器本体101の外側に突出している。リード線取付部材103には、リード線104が電気的に接続されている。リード線取付部材103とリード線104とは、圧縮接続されている。リード線104は、避雷器本体101の外側においてリード線取付部材103に圧縮接続されている。
【0022】
リード線104は、絶縁材料によって形成された被膜104aを備えている。リード線104は、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105付近においてのみ、被膜104aが剥ぎ取られた状態とされている。
【0023】
避雷器100は、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105を覆うキャップ106を備えている。キャップ106は、ゴム等の絶縁材料を用いて形成され、キャップ本体107とキャップカバー108とによって構成されている。キャップ本体107は、避雷器本体101に固定されている。キャップ本体107は、避雷器本体101に対して密着した状態で固定されている。
【0024】
避雷器本体101とキャップ本体107との間には、融着材(図示を省略する)が設けられている。避雷器本体101とキャップ本体107との間(避雷器本体101とキャップ本体107との接合部)に融着材を設けることにより、避雷器本体101とキャップ本体107、すなわち、避雷器本体101とキャップ106とを確実に固定することができる。これによって、避雷器本体101とキャップ106との間における振動を緩和することができ、避雷器本体101とキャップ106とのずれを防止することができる。
【0025】
キャップ本体107は、たとえばポリエチレンなどの高い絶縁性を有する絶縁材料によって形成されている。キャップ本体107は、空洞を備えず、全体に絶縁材料が充填されて形成されている。キャップ本体107は、上部固定電極に電気的に接続されたリード線取付部材103をキャップ本体107の外側へ導通させる孔109を備えている。リード線104は、キャップ本体107よりも電源側、すなわちキャップ本体107の外側において、リード線取付部材103に圧縮接続されている。
【0026】
キャップカバー108は、避雷器本体101に固定されたキャップ本体107に取り付けられ、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105を覆う。キャップカバー108は、略三角錐形の筒形状をなし、内側にリード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105を収容するようにして、当該圧縮接続部105を覆う。リード線104の一端は、キャップ106内においてリード線取付部材103に圧縮接続されている。
【0027】
この実施の形態では、電柱、より詳細には、末端柱や分岐線路柱電柱高圧開閉器取付柱などの配電線路電柱を避雷器100を設置する場所として想定している。キャップカバー108は、電柱などに避雷器100を設置した状態において、水平方向に対して75度の傾斜角度をなす形状とされている。すなわち、キャップカバー108は、柱などに避雷器100を設置した状態において、避雷器本体101の軸心方向に対して15度の傾斜角度をなす形状とされている。
【0028】
電柱への設置を想定している避雷器100において、キャップカバー108の傾斜角度を75度とすることにより、降雨に際して、キャップカバー108に降った雨水は自重によってキャップカバー108に沿って落下する。これによって、キャップカバー108に付着したゴミや埃などの異物を雨水により洗浄することができる。
【0029】
避雷器本体101に固定されたキャップ本体107と当該キャップ本体107に取り付けられるキャップカバー108とによって構成される空間(図3における符号310を参照)には、コーキング110が充填されている。コーキング110は、高い絶縁性を有することが好ましい。具体的には、コーキング110は、たとえば、ポリエチレン樹脂製のコーキング110を用いることができる。また、コーキング110は、たとえば、シリコーン系のコーキング110やポリウレタン系のコーキング110などを用いてもよい。リード線104とキャップ106とは、キャップカバー108の内側に充填されたコーキング110によって一体化されている。
【0030】
一端がキャップ106内においてリード線取付部材103に圧縮接続されたリード線104の他端は、キャップ106の外部に位置付けられている。リード線104は、圧縮接続部105の付近においてのみ被覆104aが剥ぎ取られた状態とされているため、キャップ106(キャップカバー108)の内側と外側との境界付近においては被覆104aが設けられた状態とされている。このように、キャップ106(キャップカバー108)の内側と外側との境界付近においてリード線104の被覆104aを残した状態とすることにより、リード線104における充電部分が、外部にさらされることがない。
【0031】
電柱などにおいて避雷器100の設置場所の周辺には、高圧絶縁電線や高圧引下用絶縁電線などの電線111を支持する腕金などの導電物が多数取り付けられている場合がある。このような場所においては、カラスなどの野鳥が営巣しやすく、営巣中の野鳥や営巣された巣が電線111に接触することによって停電事故が発生する事象が報告されている。この実施の形態の避雷器100は、充電部分が外部にさらされることがないので、上記のような停電事故を防止することができる。
【0032】
図2は、リード線104と電線111との接続状態を示す説明図である。図2においては、リード線104と電線111との接続状態を模式的に示している。図2において、電線111は、リード線104の他端に電気的に接続される。この実施の形態における避雷器100は、設置に際して、リード線104と電線111とを圧縮接続することによって当該リード線104と電線111とを電気的に接続する。具体的には、リード線104と電線111とは、たとえば、市販の圧着スリーブ201を用いて圧縮接続することができる。
【0033】
リード線104と電線111との圧縮接続部202は、絶縁材料によって形成されたテープやカバーなどの絶縁部材203を用いて絶縁されている。リード線104と電線111とを圧縮接続する方法や圧着スリーブ201、および、圧縮接続部202の絶縁方法や絶縁部材203については、公知の技術であるため説明を省略する。
【0034】
(避雷器100の製造方法)
つぎに、この発明にかかる実施の形態の避雷器100の製造方法について説明する。図2は、この発明にかかる実施の形態の避雷器100の製造方法を示す説明図である。この発明にかかる実施の形態の避雷器100の製造に際しては、ヒューズ筒が備える一対の端子のうちの電源側の端子に上部固定電極を電気的に接続した状態で、当該ヒューズ筒を避雷器本体101の内側に収容する。
【0035】
そして、上部固定電極にリード線取付部材103を電気的に接続し、当該リード線取付部材103がキャップ本体107に設けられた孔109を介してキャップ本体107の外部に臨むようにして、当該キャップ本体107を避雷器本体101の電源側に固定する。その後、キャップ本体107の外部に臨んだリード線取付部材103に、被覆104aを剥ぎ取ったリード線104を圧縮接続する。
【0036】
つぎに、避雷器本体101の電源側に取り付けられたキャップ本体107に、キャップカバー108を取り付ける。そして、避雷器本体101に固定されたキャップ本体107と当該キャップ本体107に取り付けられるキャップカバー108とによって構成される空間310に、コーキング110を充填する。コーキング110を充填することによってキャップ本体107とキャップカバー108とが一体化されたキャップ106が形成され、当該キャップ106とリード線104とが一体化される。
【0037】
コーキング110は、たとえば、図3に示したように、キャップカバー108に当該キャップカバー108を貫通する注入ホース301を設け、当該注入ホース301を介してキャップカバー108の外側から内側に注入することで充填することができる。注入ホース301は、キャップカバー108の製造時においてあらかじめ設けられていることが好ましい。注入ホース301は、避雷器100の製造に際してキャップカバー108に設けられるものであってもよい。
【0038】
注入ホース301は、キャップカバー108において、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105を間にして対向する2箇所に設けることが好ましい。注入ホース301は、2箇所に限るものではなく、3箇所以上であってもよい。いずれの場合も、注入ホース301を介してコーキング110が注入される注入位置が、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105を中心とした同一円周上となるように注入ホース301を設けることが好ましい。これによって、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲にコーキング110を均等に注入することができ、キャップカバー108内にコーキング110を確実に充填することができる。
【0039】
キャップカバー108内にコーキング110が充填された後は、キャップカバー108内へのコーキング110の注入に用いた注入ホース301を切断する。注入ホース301は、キャップカバー108の外表面と注入ホース301の付き出し部との境界部分(図3における矢印302を参照)において切断する。これによって、キャップカバー108すなわちキャップ106から不用意に突出する突起を残すことなく避雷器100を製造することができる。
【0040】
キャップカバー108に取り付ける注入ホース301は、たとえば直径(開口径)が3mm程度であることが好ましい。注入ホース301の直径(開口径)を3mm程度とすることにより、キャップカバー108内へのコーキング110の注入を容易かつ確実におこなうとともに、注入完了後における注入ホース301の切断を容易におこなうことができる。
【0041】
このように、キャップカバー108の内側にコーキング110を充填することによって、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲をコーキング110で被覆し、当該圧縮接続部105の周囲に土・埃・雨水などの異物が付着することを防止することができる。そして、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105における異物の付着を防止することにより、当該圧縮接続部105付近におけるリード線104の絶縁不良によって電流が漏れる、いわゆるリークの発生を防止することができる。
【0042】
一般的にリード線104は銅線を用いて構成されているため、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲をコーキング110で被覆し、当該圧縮接続部105の周囲に土・埃・雨水などの異物が付着することを防止することによって、銅すなわちリード線の腐食を防止することができる。銅線は、風雨にさらされる環境下においては青カビが多く発生しやすく、銅線における電気的な導通は、青カビが発生することによって阻害される。
【0043】
この実施の形態の避雷器100は、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲にコーキング110を充填しているため、当該圧縮接続部105の周囲に土・埃・雨水などの異物が付着することを防止することができる。これによって、良好な電気的導通状態を維持することができる。
【0044】
図4および図5は、従来の避雷器の一例を示す説明図である。図4において、従来の避雷器401は、被覆402を剥ぎ取ることによって露出させた銅線403に締め付けネジ404を食い込ませることによって当該銅線403と避雷器401とを電気的に接続する構成とされている。銅線403に締め付けネジ404を食い込ませた箇所は、安全キャップ410によって覆われている。
【0045】
このように、被覆402を剥ぎ取ることによって露出させた銅線403に締め付けネジ404を食い込ませる構成の従来の避雷器401においては、電線111が風雨などに起因して振動すると、当該電線111と締め付けネジ404との摩擦によって銅線403が細くなる傾向にある(図5における符号501を参照)。
【0046】
そして、従来の避雷器401では、電線111が細くなると、電線111と避雷器401との電気的な接続が不安定になったり電線111が避雷器本体101から外れたりする接触不良が発生していた。これに対し、この発明にかかる実施の形態の避雷器100によれば、電線111が振動した場合にも、当該電線111が細くなることがないので、安定した接続状態を維持することができる。
【0047】
従来、塩害区域用の避雷器と一般区域用の避雷器との二種類の避雷器が存在し、それぞれの区域に適した避雷器を設置しているが、実際は、塩害区域に指定されていない一般区域であっても地形の変化などによって塩害区域になる場合があり、十分な塩害対策が実現できていないという現状があった。また、電柱は道路沿いに設置されることが多く、このため電柱に設置される避雷器も道路沿いに設置されることも多い。降雪区域においては、冬期に、塩化ナトリウムなどの融雪剤を道路に散布することがあり、塩害区域に指定されていない避雷器が融雪剤に起因する塩害にさらされることがあるという現状があった。
【0048】
この実施の形態の避雷器100は、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲にコーキング110を充填しているため、当該圧縮接続部105の塩害を防止することができるので、塩害区域用の避雷器100として対応することができる。すなわち、この実施の形態の避雷器100は、塩害区域であっても一般区域であっても設置区域の種別にかかわらず安定して効果を発揮することができる。
【0049】
また、この実施の形態の避雷器100は、設置区域の種別にかかわらず設置することができるので、避雷器100の設置に際しての作業の単一化を図ることができる。これによって、避雷器100の設置作業にかかるコスト低減を図ることができる。さらに、この実施の形態の避雷器100は、設置区域の種別にかかわらず同じ避雷器100を設置することができるので、避雷器100の在庫管理にかかる負担を軽減することができる。これによって、避雷器100の在庫管理にかかるコスト低減を図ることができる。すなわち、この実施の形態の避雷器100は、避雷器100の設置作業にかかるコスト低減を図るとともに、避雷器100の在庫管理にかかるコスト低減を図ることができる。
【0050】
従来の避雷器401は、工事の都度電線111を接続し、接続箇所に安全キャップ410を別途取り付けている。これに対し、この発明にかかる避雷器100は、避雷器100の製造段階において当該避雷器100にリード線104を圧縮接続し、圧縮接続による圧縮接続部105を絶縁材料であるコーキング110によって覆い、圧縮接続部105とキャップ106とを一体型にしている。
【0051】
これにより、避雷器100におけるリード線取付部材103とリード線104との接触不良を抑制することができる。また、これにより、樹木やカラスなどが避雷器100に接触することに起因する停電事故を抑制することができる。さらに、リード線取付部材103とリード線104とを圧縮接続することにより、避雷器100の設置作業をおこなう作業者にかかわらず、リード線取付部材103とリード線104との接続状態の均一化を図ることができる。
【0052】
従来、避雷器100が設置される区域においては、冬期に、降雪により高圧絶縁電線の直径が20cm〜30cm程度になる程に積雪し、積雪の重みによって高圧絶縁電線が断線する事象が報告されている。同様の理由によって、リード線取付部材103とリード線104との接続点において、当該リード線104が積雪の重みによって断線する事象が報告されている。
【0053】
この実施の形態の避雷器100は、キャップカバー108の傾斜角度を75度とすることにより、設置した状態の避雷器100のキャップカバー108における積雪を当該積雪の自重によって落下させることができる。そして、キャップカバー108における積雪を当該積雪の自重によって落下させる際に、キャップカバー108に付着したゴミや埃などの異物を落下する積雪によって洗浄することができる。
【0054】
また、従来、上記のような積雪に起因する停電事故を含め、避雷器に対する高圧絶縁電線の接続不良による高圧停電事故は、過去に数十件発生し、電力設備において発生した事故全体の数割を占め、延べ戸数にして約5万戸が停電しているという報告がある。この実施の形態の避雷器100は、リード線104とキャップ106とを一体式にし、あらかじめリード線104が設けられた避雷器100とされているため、接続不良による停電事故の防止を図ることができる。
【0055】
以上説明したように、この実施の形態の避雷器100は、一対の端子を備えた筒型ヒューズを収容する避雷器本体101と、一対の端子のうち電源側に設けられた一方の端子または当該一方の端子に電気的に接続された部材に圧縮接続されることによって当該一方の端子に電気的に接続されたリード線104と、リード線104の他端を外部に延出させた状態で、リード線104と一方の端子との圧縮接続部105を覆うキャップ106と、を備えたことを特徴としている。
【0056】
この実施の形態の避雷器100によれば、風雨などに起因して電線111が振動した場合にも当該振動に起因して電線111が細くなることを防止することができる。これによって、電線111と避雷器との電気的な接続の安定化を図り、電線111と避雷器100との電気的な接続が不安定になったり電線111と避雷器100との電気的接続が遮断されたりするなどの接触不良を長期にわたって防止することができる。
【0057】
また、この実施の形態の避雷器100によれば、圧縮接続部105においてリード線取付部材103とリード線104とを圧縮接続するとともに、当該圧縮接続部105の周囲にコーキング110を充填することによってリード線104とキャップ106とを一体化しているため、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、リード線取付部材103とリード線104と接続することができる。
【0058】
これによって、この実施の形態の避雷器100によれば、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、長期にわたって安定した避雷性能を発揮することができる。また、設置現場においては、電線111とリード線104とを圧縮接続するだけでよいので、設置作業をおこなう作業者に左右されることなく、容易かつ確実に設置することができる。
【0059】
また、この実施の形態の避雷器100は、キャップ106の内側が、絶縁材料であるコーキング110によって充填されていることを特徴としている。この実施の形態の避雷器100によれば、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105がコーキング110によって覆われるので、圧縮接続部105およびその近傍におけるリークの発生を防止することができる。これによって、長期にわたって安定した避雷性能を発揮することができる。
【0060】
また、この実施の形態の避雷器100は、キャップ106が、絶縁材料によって形成されていることを特徴としている。この実施の形態の避雷器100によれば、リード線取付部材103とリード線104との圧縮接続部105の周囲を確実に絶縁することができるので、圧縮接続部105およびその近傍におけるリークの発生を確実に防止することができる。これによって、長期にわたって安定した避雷性能を発揮することができる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、この発明にかかる避雷器は、電柱などに設置される避雷器に有用であり、特に、風雨などの外的要因に起因する振動が著しい電線に接続される避雷器に適している。
【符号の説明】
【0062】
100 避雷器
101 避雷器本体
104 リード線
105 圧縮接続部
106 キャップ
107 キャップ本体
108 キャップカバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一対の端子を備えた筒型ヒューズを収容する避雷器本体と、
前記一対の端子のうち電源側に設けられた一方の端子または当該一方の端子に電気的に接続された部材に圧縮接続されることによって当該一方の端子に電気的に接続されたリード線と、
前記リード線の他端を外部に延出させた状態で、前記リード線と前記一方の端子との圧縮接続部を覆うキャップと、
を備えたことを特徴とする避雷器。
【請求項2】
前記キャップの内側は、絶縁材料によって充填されていることを特徴とする請求項1に記載の避雷器。
【請求項3】
前記キャップは、絶縁材料によって形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の避雷器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−79482(P2012−79482A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−221924(P2010−221924)
【出願日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】