部分放電測定装置及び部分放電測定方法
【課題】同一被測定物に対する部分放電開始電圧の測定値のばらつきを低減すること。
【解決手段】導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。被測定物2で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源7と、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、直流電源7又は交流電源3を被測定物2に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチ8,9と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備えた。そして、部分放電開始電圧の測定前にスイッチ8によって、直流電源7を被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ直流電圧が印加されるように、電気的に接続を行う。
【解決手段】導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。被測定物2で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源7と、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、直流電源7又は交流電源3を被測定物2に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチ8,9と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備えた。そして、部分放電開始電圧の測定前にスイッチ8によって、直流電源7を被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ直流電圧が印加されるように、電気的に接続を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧機器における絶縁皮膜間の部分放電開始時の電圧を測定する部分放電測定装置及び部分放電測定方法に関し、特に絶縁皮膜の厚さを適正に推定可能とするために、同一被測定物(高電圧機器)に対する部分放電開始電圧の測定ばらつきを低減させる部分放電測定装置及び部分放電測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁体に高電圧が加わると、絶縁体内の空間(ボイド)や絶縁体同士が接する隙間の空間で、部分放電と呼ばれる微小な放電が発生することが知られている。ここで、交流電源の場合は、交流電圧の極性が反転する度に部分放電が発生し、これによって絶縁体を継続的に浸食し、やがては絶縁破壊に至る。この部分放電は、空間の距離と電界強度とがパッシェンの法則に従った一定条件を満たすと発生することが知られている。
【0003】
このため、機器内で放電の発生が許されない様な高電圧機器の製造に当っては、放電発生条件を満たさない様に、印加電圧と絶縁体の厚さ及び誘電率等を決定して設計が行われている。例えば、車両搭載のハイブリッドモータは高電圧で作動させているので、部分放電を起こさないようにすることが設計基準において重要となっている。
【0004】
また、設計又は製造の段階で、絶縁体の厚さがどの程度あるのかを判断する必要があり、一般的に非破壊検査である部分放電測定が行われている。これは、部分放電が発生し始める時の印加電圧である部分放電開始電圧が、膜厚によって変わることを利用するものである。この部分放電測定は、例えばハイブリッドモータ完成後の検査時に、モータコイルの絶縁皮膜の潰れやひび等を調べるために行う。
【0005】
しかし、部分放電開始電圧は、測定条件によって大きくばらつきが発生する。図1は、高電圧機器等の同一被測定物に、横軸にIV0〜IV6で示す電圧「V」を繰り返し時間間隔を置いて印加し、この時の縦軸にED1〜ED1000で示す放電量「pC」を測定した例を示す。この例において、符号J1〜J5等の立ち上がり線で示すように放電量が急激に立上る際の印加電圧が部分放電開始電圧となる。但し、低電圧域の値は、測定時のノイズ成分である。図1における部分放電開始電圧は、測定毎に変動することがわかる。
【0006】
ここで、部分放電開始電圧がばらつく理由を、図2を参照して説明する。図2は巻回されたコイルの絶縁皮膜I1,I2同士が当接している状態の断面図である。図2(a)に示すように、各コイル間に高電圧が印加されることにより、空間に高電圧が加わった際、絶縁体空間部において、絶縁皮膜表面の残留電荷(丸中に+,−で示す)や矢印Y1で示す宇宙線による空間気体の電離によって発生する初期電子(丸中に−で示す)が高電界によって加速される。
【0007】
この加速された初期電子が気体分子と衝突することで図2(b)に矢印Y2で示すように電離が開始され、これが継続的に発生することで図2(c)に矢印Y3で示すように経路破壊(部分放電)が形成される。このため、絶縁皮膜表面の残留電荷の有無によって初期電荷の有無が変わり、この変化に応じて部分放電開始電圧がばらつく。また絶縁皮膜表面に残留電荷があった場合でも、その電荷量に応じて絶縁体空間部の電位差が変化するため、同様にばらつきを発生させてしまう。この部分放電開始電圧のばらつきは、例えば図1では部分放電開始電圧J1〜J5が、およそ印加電圧IV3〜IV5の広い電圧幅にばらついた状態となる。
【0008】
これに対して、部分放電測定前に一定量の放電をさせ、絶縁皮膜表面の電荷量をコントロールし、部分放電開始電圧の測定ばらつきを低減する手法が特許文献1にて提案されている。これは、測定前に予め定められた量のプレ放電を行うことで、絶縁皮膜表面の残留電荷をコントロールし、部分放電開始電圧を少ないばらつきで測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−257549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1の手法では、同一被測定物でも測定条件や被測定物の種類によっては、部分放電が、ある印加電圧を境に急激に発生し、目標の放電量を超え、絶縁皮膜表面の電荷量にばらつきが生じる場合がある。また、目的の放電量にするためには継続的に部分放電を発生させる必要があり、このためプレ放電時間が測定毎に変わるため積算放電量がばらつく。言い換えれば、プレ放電の時間が異なるので、その分、絶縁皮膜表面の電荷量の積算値がばらつく。このように絶縁皮膜表面の電荷量がばらつくので、絶縁皮膜間の電位差が異なってしまい、これによって部分放電開始電圧値が異なってしまう。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも大きくなるといった問題が生じる。
【0011】
このように部分放電開始電圧の測定値がばらつく場合、例えばハイブリッドモータのコイルの絶縁皮膜を適正設計値よりも厚くしておかなければ、その測定ばらつきを吸収することができない。絶縁皮膜を厚くした場合、コスト高の要因となる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、同一被測定物に対する部分放電開始電圧の測定値のばらつきを低減することができる部分放電測定装置及び部分放電測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源と、前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、前記直流電源又は前記交流電源を前記被測定物に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチと、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記スイッチによって前記直流電源を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ前記直流電圧が印加されるように、電気的に接続することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、直流電源からの直流電圧によって被測定物に1回のみ部分放電を発生させるプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、前記交流電源から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流手段と、前記交流電圧又は前記全波整流波形電圧を、前記被測定物に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチと、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、交流電源からの交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、これを被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、全波整流波形電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留する。この残留によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物へ出力する電源と、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、電源からの交流オフセット電圧を、被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物での部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、交流オフセット電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより被測定物の絶縁体表面に残留した電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、被測定物に1回のみ部分放電が発生するように直流電圧を印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、被測定物に1回のみ部分放電が発生するように片極性の全波整流波形電圧を印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0028】
この方法によれば、全波整流波形電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留するが、この残留電荷によって縁体空間の0V電位がオフセットされ、部分放電の放電量が徐々に減少して数回で生じなくなる。この場合の残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留するので、その状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物に当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加することを特徴とする。
【0030】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、交流オフセット電圧を、被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じるので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0032】
この方法によれば、交流オフセット電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留するが、この残留電荷によって縁体空間の0V電位がオフセットされ、部分放電の放電量が徐々に減少して数回で生じなくなる。この場合の残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留するので、その状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の被測定物における部分放電時の放電量と印加電圧との関係図である。
【図2】被測定物における部分放電の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施形態の被測定物における部分放電時の放電量と印加電圧との関係図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】全波整流の説明図である。
【図8】第2実施形態の部分放電測定装置において全波整流波形電圧で被測定物に部分放電が生じる際の説明図である。
【図9】交流電圧で被測定物に部分放電が生じる際の説明図である。
【図10】第2実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図12】第3実施形態の部分放電測定装置における交流オフセット電圧生成の説明図である。
【図13】第3実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0035】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図3において、1は部分放電測定装置、2は導体が絶縁体(又は絶縁皮膜)で被覆された被測定物である。部分放電測定装置1は、交流電源3と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6と、直流電源7と、第1スイッチ8と、第2スイッチ9とを備えて構成されている。
【0036】
交流電源3及び直流電源7は、インピーダンス部4を介して被測定物2の一端とアースとの間に並列に接続されており、各電源3,7とアースとの間には第1スイッチ8及び第2スイッチ9が接続されている。被測定物2の他端はアースに接続されている。また、インピーダンス部4及び被測定物2の接続間と、被測定物2及びアースの接続間とには、インピーダンス部4側に配置されたコンデンサ5と放電電流検出部6が直列に接続されている。
【0037】
但し、被測定物2が例えばハイブリッドモータのモータコイルであれば、被測定物2において電圧が印加される両端は、図2(a)に示したように、巻回されたコイルの両端となり、このコイルの絶縁皮膜I1,I2同士は当接した状態となっている。
【0038】
インピーダンス部4は、被測定物2の放電時の放電電流を遮断する。コンデンサ5は、被測定物2を放電電流検出演算部6に結合するものであり、高周波数の放電電流を放電電流検出演算部6へ出力する。第1スイッチ8は、直流電源7を被測定物2に接続/非接続状態とするオン/オフスイッチ、第2スイッチ9は、交流電源3を被測定物2に接続/非接続状態とするオン/オフスイッチである。その接続の際、各電源3,7と被測定物2との間にはインピーダンス部4が介在するが、インピーダンス部4はリアクタンスが小さいので、各電源3,7の何れかの電圧はそのまま被測定物2に印加されるようになっている。放電電流検出演算部6は、被測定物2の放電時の放電電流を検出し、この検出された放電電流に応じた放電量並びに放電開始電圧を求める。
【0039】
このような構成の部分放電測定装置1によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
まず、ステップS1において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、被測定物2において必ず部分放電が生じる電圧値の1.5〜2倍程度の高電圧とする。つまり、直流電源7から出力される直流電圧がその設定高電圧とされる。また、印加時間は、その直流高電圧を被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。この時間が短すぎると部分放電が生じない。
【0041】
次に、ステップS2において、第1スイッチ8のみをON(オン)とする。これによってステップS3において、直流電源7から被測定物2へ直流高電圧が印加される。ステップS4において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS1で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。この部分放電によって、例えば図2(a)に示したように絶縁皮膜I1,I2の表面に少量の電荷(丸中に+,−で示す)が残留する。
【0042】
つまり、被測定物2に直流高電圧を印加すると、電圧が上昇する期間に被測定物2の絶縁体空間部の電圧が上昇し、部分放電が発生する。この発生した部分放電の電流は高周波数なのでコンデンサ5を介して放電電流検出演算部6で検出される。
【0043】
また、その発生した部分放電は被測定物2の絶縁皮膜表面に残留するため空間の電位差が低下し、このため、それ以上継続して放電が発生しなくなる。従って、直流高電圧の印加によって被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない所定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0044】
更に、ステップS4において、被測定物2への直流高電圧の印加時間が、上記ステップS1で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS5において、第1スイッチ8がOFF(オフ)とされ、直流高電圧の印加が停止される。つまり、ステップS2〜S5の動作によって、被測定物2への直流高電圧の印加がパルス状に行われる。
【0045】
その後、ステップS6において、第2スイッチ9のみがONとされ、これによって交流電源3からの交流電圧が被測定物2に印加され、ステップS7において、部分放電開始電圧が測定される。この測定は、交流電源3から交流電圧を徐々に上げて被測定物2に印加し、この印加で最初に部分放電が生じた際の電圧を、放電電流検出演算部6で求めて行う。この測定される部分放電開始電圧は、例えば図5に符号J11〜J13等の立ち上がり線で示すように放電量「pC」が急激に立上る際の印加電圧「V」が部分放電開始電圧となる。この測定時の部分放電開始電圧J11〜J13のばらつきは、図1に示した従来例の部分放電開始電圧J1〜J5が、およそ印加電圧IV3〜IV5の広い電圧幅にばらついた状態であったのに対して、図5のようにおよそ印加電圧IV2とIV3との略中間位置からIV3前後までの狭い電圧幅となっている。
【0046】
このように第1実施形態の部分放電測定装置1は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定するものであり、本実施形態の特徴は、被測定物2で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源7と、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、直流電源7又は交流電源3を被測定物2に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチ8,9と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備えた。そして、部分放電開始電圧の測定前にスイッチ8によって、直流電源7を被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ直流電圧が印加されるように、電気的に接続を行うようにした。
【0047】
この構成によれば、部分放電測定装置1によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、直流電源7からの直流電圧によって被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。言い換えれば、測定される部分放電開始電圧値のばらつきを低減させることが出来る。
【0048】
このように部分放電開始電圧の測定値のばらつきが小さくなるので、例えば被測定物2がハイブリッドモータのコイルである場合、そのコイルの絶縁皮膜を適正設計値とするか又は適正設計値に近づけることができ、従来のように絶縁皮膜を厚くしておかなくてもよいので、その分、コスト低減を図ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図6に示す部分放電測定装置1−1は、交流電源3と、全波整流回路10と、第1切替スイッチ11と、第2切替スイッチ12と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6とを備えて構成されている。
【0050】
全波整流回路10は、カソード端同士を接続した2つのダイオードD1,D2と、アノード端同士を接続した2つのダイオードD3,D4とが、一方の端子がアース接地された交流電源3のアース側端子及び電源側端子の間に、並列に接続されて構成されている。
【0051】
第1切替スイッチ11は、切替接続部11aをH端子又はL端子に切り替えて接続できるようになっており、全波整流回路10とインピーダンス部4との間に介在されている。この第1切替スイッチ11のH端子が、交流電源3の電源側端子に接続され、L端子が各ダイオードD1,D2のカソード接続部分に接続され、切替接続部11aがインピーダンス部4に接続されている。
【0052】
第2切替スイッチ12は、切替接続部12aをH端子又はL端子に切り替えて接続できるようになっており、全波整流回路10と被測定物2との間に介在されている。この第2切替スイッチ12のL端子が、全波整流回路10のアース接続側に接続され、H端子が各ダイオードD3,D4のアノード接続部分に接続され、切替接続部12aが被測定物2の両端の内、インピーダンス部4への接続端と反対側の端部に接続されている。
【0053】
つまり、被測定物2は、一端がインピーダンス部4に、他端が切替接続部12aに接続されている。また、インピーダンス部4及び被測定物2の接続間と、被測定物2及び切替接続部12aの接続間には、インピーダンス部4側に配置されたコンデンサ5と放電電流検出部6が直列に接続されている。
【0054】
全波整流回路10は、交流電源3から出力される図7(a)に示すような両極性の交流波形W1を、図7(b)に示すような片極性(例えば正極性)の全波整流波形W2に変換するものである。
【0055】
第1及び第2切替スイッチ11,12は、交流電源3からの交流波形W1が、全波整流回路10で片極性の全波整流波形W2に変換されて、被測定物2へ印加されるようにスイッチング切替を行うものである。第1切替スイッチ11の切替接続部11aをH端子側へ切り替え、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをL端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1がそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0056】
一方、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをL端子側へ切り替え、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをH端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1が全波整流回路10で全波整流波形W2に変換されてインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。この印加される全波整流波形W2の電圧レベルVpを適切に設定することで、前述した直流電源7からの直流電圧を印加したと同様に、被測定物2において継続性の無いパルス状の部分放電を発生させることが出来る。
【0057】
このパルス状の部分放電の発生について図8を参照して更に説明する。図8(a)は被測定物2における印加電圧等の各種電圧の様子を示す様態図である。2aは被測定物2の導体、2bは導体を被覆する絶縁体(絶縁皮膜)であり、導体2a間に印加電圧Vが印加されると、絶縁皮膜2bに電圧Vi1とVi2とが加わり、その絶縁皮膜2b間の空間に電圧Vgが加わる。この状態において絶縁皮膜2b間に部分放電16が発生する。
【0058】
ここで、印加電圧Vとして図8(b)に示す全波整流波形W2が印加されたとする。この場合、絶縁皮膜2bに電圧Vi1とVi2とが加わり、図8(c)に矢印Y11で示すように、各絶縁皮膜2b間の空間(絶縁体空間)に電圧(空間電圧)Vgの印加が開始され、この印加開始から空間電圧Vgが上昇し始め、印加電圧VがピークVpとなって空間電圧Vgが矢印Y12で示すように一定電圧を超えると、絶縁体空間部分で部分放電16が発生する。
【0059】
この部分放電16により電荷が絶縁皮膜2bの表面に残留することで絶縁体空間の0V電位が、図9(c)に示すように正極側上方にオフセットされる。この際、空間電圧Vgの絶対値は上昇しない。このため、部分放電は矢印Y13で示すように前回に比較して低い放電量で生じるが、その後は生じなくなる。つまり、部分放電の発生は続かない。この場合の絶縁皮膜2b表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。
【0060】
これに対して、図9(a)に示すような両極性の交流波形W1の電圧Vが、図9(b)に矢印Y21で示すように印加された場合、矢印Y22で示すように一度部分放電16が発生すると、絶縁皮膜2bの残留電荷によって電極反転時の電圧が印加電圧レベルVpよりも上昇する。このため、矢印Y23で示すように再度放電が発生し、これを矢印Y24、Y25で示すように繰り返すため、継続的に部分放電16が発生してしまう。このため、プレ放電においては、被測定物2への交流波形W1の電圧印加は不適切である。
【0061】
このような構成の部分放電測定装置1−1によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0062】
まず、ステップS11において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、交流電源3からの交流波形W1の電圧VのレベルVpを被測定物2において必ず部分放電が生じるレベルとする。印加時間は、その交流波形W1の電圧Vを被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。この時間が短すぎると部分放電が生じない。
【0063】
次に、ステップS12において、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをL端子側、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをH端子側へ切り替える。これによってステップS13において、交流電源3からの交流波形W1が全波整流回路10で全波整流波形W2に変換されてインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0064】
ステップS14において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS11で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。そして、被測定物2への全波整流波形W2の電圧Vの印加時間が、上記ステップS11で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS15において、交流電源3の電圧印加が停止される。
【0065】
このようにプレ印加時間を決めることによって、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるようにしてある。このように部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0066】
但し、このステップS14〜S15では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるように、交流電源3の電圧印加を停止していたが、前述したように部分放電が複数回発生して自然に放電しなくなる時点で交流電源3を停止するようにしても良い。この部分放電によって、上述したように絶縁皮膜2bの表面に電荷が残留する。この残留電荷により、絶縁皮膜2b間の空間電圧Vgの絶対値は上昇しないが、絶縁皮膜2b間の空間の0V電位が正極側上方にオフセットするので、部分放電の発生は続かない。
【0067】
これら何れのプレ印加時間設定の場合も、絶縁体表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留することになる。
【0068】
その後、ステップS16において、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをH端子側、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをL端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1がそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加され、ステップS17において、部分放電開始電圧が測定される。
【0069】
このように第2実施形態の部分放電測定装置1−1は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。本実施形態の特徴は、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、交流電源3から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流回路10と、交流電圧又は全波整流波形電圧を、被測定物2に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチ11,12と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備え、部分放電開始電圧の測定前に、切替スイッチ11,12によって全波整流波形電圧が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにした。
【0070】
この構成によって、部分放電測定装置によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、交流電源3からの交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、これを被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0071】
また、部分放電開始電圧の測定前に、切替スイッチ11,12によって全波整流波形電圧が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が発生し、その後その発生が無くなる時点まで印加されるようにしても良い。
【0072】
この場合、被測定物2での部分放電による絶縁体表面の残留電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0073】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図11に示す部分放電測定装置1−2は、交流電源3及び直流電源7が直列接続された構成を含む電源18と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6とを備えて構成されている。
【0074】
電源18は、交流電源3の交流電圧のみを出力するか、又は、交流電源3の交流電圧を直流電源7の直流電圧でオフセットし、このオフセットされた交流オフセット電圧を出力する。この交流オフセット電圧について図12を参照して説明する。図12(a)に示すように、交流電圧3の交流電圧Vは、0V電位を中央に上下に同レベルVpだけ波形W1が突き出た正弦波となっている。その0V電位を、直流電源7の直流電圧によって図12(b)に矢印Y30で示すように、負極側へ所定レベルずらすオフセットを行い、これによって正極側の電圧レベルがVpよりも大きいVp1となった交流オフセット電圧V1を生成する。
【0075】
なお、交流オフセット電圧V1は、オフセットによって0V電位が正負何れかの極側にずれたアンバランスな交流電圧となっていれば良い。破線L0で示すように、正弦波W1の最下端位置に0V電位があってもよく、この逆に最上端位置に0V電位があってもよい。
【0076】
このような交流オフセット電圧V1を被測定物2に印加した場合、第2実施形態で説明したと同様に、被測定物2の絶縁体空間部分で部分放電16が発生し、この部分放電16により、空間電圧Vgの絶対値は変わらないが、電荷が絶縁皮膜2bの表面に残留することで絶縁体空間の0V電位が、正極側上方にオフセットされる。このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じ、その後の部分放電においても後で発生するほどに放電量が低くなり、複数回の発生で部分放電が生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。
【0077】
このような構成の部分放電測定装置1−2によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0078】
まず、ステップS21において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、電源18からの交流オフセット電圧V1のレベルVp1を被測定物2において必ず部分放電が生じるレベルとする。印加時間は、その交流オフセット電圧V1を被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。
【0079】
次に、ステップS22において、電源18からの交流オフセット電圧V1がインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0080】
ステップS23において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS21で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。そして、被測定物2への交流オフセット電圧V1の印加時間が、上記ステップS21で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS25において、電源18が停止される。
【0081】
このようにプレ印加時間を決めることによって、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるようにしてある。このように部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0082】
但し、このステップS23〜S24では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるように、交流電源3の電圧印加を停止していたが、前述したように部分放電が複数回発生して自然に放電しなくなる時点で電源18を停止するようにしても良い。この部分放電によって、上述したように絶縁皮膜表面に電荷が残留する。この残留電荷により、絶縁皮膜間の空間電圧の絶対値は上昇しないが、絶縁皮膜間の空間の0V電位が正極側上方にオフセットするので、部分放電の発生は続かない。
【0083】
これら何れのプレ印加時間設定の場合も、絶縁体表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留することになる。
【0084】
その後、ステップS25において、電源18からの交流電圧Vがそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加され、ステップS26において、部分放電開始電圧が測定される。
【0085】
このように第3実施形態の部分放電測定装置1−3は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。本実施形態の特徴は、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧V1を、被測定物2へ出力する電源18と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備え、部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにした。
【0086】
この構成によって、部分放電測定装置によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1を、被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2での部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0087】
また、部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が発生し、その後その発生が無くなる時点まで印加されるようにしてもよい。
【0088】
この場合、交流オフセット電圧V1の印加により被測定物2で部分放電が生じ、これにより被測定物2の絶縁体表面に残留した電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【符号の説明】
【0089】
1,1−1,1−2 部分放電測定装置
2 被測定物
2a 導体
2b 絶縁体(絶縁皮膜)
3 交流電源
4 インピーダンス部
5 コンデンサ
6 放電電流検出演算部
7 直流電源
8 第1スイッチ
9 第2スイッチ
10 全波整流回路
D1〜D4 ダイオード
11 第1切替スイッチ
12 第2切替スイッチ
18 電源
【技術分野】
【0001】
本発明は、高電圧機器における絶縁皮膜間の部分放電開始時の電圧を測定する部分放電測定装置及び部分放電測定方法に関し、特に絶縁皮膜の厚さを適正に推定可能とするために、同一被測定物(高電圧機器)に対する部分放電開始電圧の測定ばらつきを低減させる部分放電測定装置及び部分放電測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、絶縁体に高電圧が加わると、絶縁体内の空間(ボイド)や絶縁体同士が接する隙間の空間で、部分放電と呼ばれる微小な放電が発生することが知られている。ここで、交流電源の場合は、交流電圧の極性が反転する度に部分放電が発生し、これによって絶縁体を継続的に浸食し、やがては絶縁破壊に至る。この部分放電は、空間の距離と電界強度とがパッシェンの法則に従った一定条件を満たすと発生することが知られている。
【0003】
このため、機器内で放電の発生が許されない様な高電圧機器の製造に当っては、放電発生条件を満たさない様に、印加電圧と絶縁体の厚さ及び誘電率等を決定して設計が行われている。例えば、車両搭載のハイブリッドモータは高電圧で作動させているので、部分放電を起こさないようにすることが設計基準において重要となっている。
【0004】
また、設計又は製造の段階で、絶縁体の厚さがどの程度あるのかを判断する必要があり、一般的に非破壊検査である部分放電測定が行われている。これは、部分放電が発生し始める時の印加電圧である部分放電開始電圧が、膜厚によって変わることを利用するものである。この部分放電測定は、例えばハイブリッドモータ完成後の検査時に、モータコイルの絶縁皮膜の潰れやひび等を調べるために行う。
【0005】
しかし、部分放電開始電圧は、測定条件によって大きくばらつきが発生する。図1は、高電圧機器等の同一被測定物に、横軸にIV0〜IV6で示す電圧「V」を繰り返し時間間隔を置いて印加し、この時の縦軸にED1〜ED1000で示す放電量「pC」を測定した例を示す。この例において、符号J1〜J5等の立ち上がり線で示すように放電量が急激に立上る際の印加電圧が部分放電開始電圧となる。但し、低電圧域の値は、測定時のノイズ成分である。図1における部分放電開始電圧は、測定毎に変動することがわかる。
【0006】
ここで、部分放電開始電圧がばらつく理由を、図2を参照して説明する。図2は巻回されたコイルの絶縁皮膜I1,I2同士が当接している状態の断面図である。図2(a)に示すように、各コイル間に高電圧が印加されることにより、空間に高電圧が加わった際、絶縁体空間部において、絶縁皮膜表面の残留電荷(丸中に+,−で示す)や矢印Y1で示す宇宙線による空間気体の電離によって発生する初期電子(丸中に−で示す)が高電界によって加速される。
【0007】
この加速された初期電子が気体分子と衝突することで図2(b)に矢印Y2で示すように電離が開始され、これが継続的に発生することで図2(c)に矢印Y3で示すように経路破壊(部分放電)が形成される。このため、絶縁皮膜表面の残留電荷の有無によって初期電荷の有無が変わり、この変化に応じて部分放電開始電圧がばらつく。また絶縁皮膜表面に残留電荷があった場合でも、その電荷量に応じて絶縁体空間部の電位差が変化するため、同様にばらつきを発生させてしまう。この部分放電開始電圧のばらつきは、例えば図1では部分放電開始電圧J1〜J5が、およそ印加電圧IV3〜IV5の広い電圧幅にばらついた状態となる。
【0008】
これに対して、部分放電測定前に一定量の放電をさせ、絶縁皮膜表面の電荷量をコントロールし、部分放電開始電圧の測定ばらつきを低減する手法が特許文献1にて提案されている。これは、測定前に予め定められた量のプレ放電を行うことで、絶縁皮膜表面の残留電荷をコントロールし、部分放電開始電圧を少ないばらつきで測定するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−257549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記の特許文献1の手法では、同一被測定物でも測定条件や被測定物の種類によっては、部分放電が、ある印加電圧を境に急激に発生し、目標の放電量を超え、絶縁皮膜表面の電荷量にばらつきが生じる場合がある。また、目的の放電量にするためには継続的に部分放電を発生させる必要があり、このためプレ放電時間が測定毎に変わるため積算放電量がばらつく。言い換えれば、プレ放電の時間が異なるので、その分、絶縁皮膜表面の電荷量の積算値がばらつく。このように絶縁皮膜表面の電荷量がばらつくので、絶縁皮膜間の電位差が異なってしまい、これによって部分放電開始電圧値が異なってしまう。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも大きくなるといった問題が生じる。
【0011】
このように部分放電開始電圧の測定値がばらつく場合、例えばハイブリッドモータのコイルの絶縁皮膜を適正設計値よりも厚くしておかなければ、その測定ばらつきを吸収することができない。絶縁皮膜を厚くした場合、コスト高の要因となる。
【0012】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、同一被測定物に対する部分放電開始電圧の測定値のばらつきを低減することができる部分放電測定装置及び部分放電測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するためになされた請求項1に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源と、前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、前記直流電源又は前記交流電源を前記被測定物に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチと、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記スイッチによって前記直流電源を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ前記直流電圧が印加されるように、電気的に接続することを特徴とする。
【0014】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、直流電源からの直流電圧によって被測定物に1回のみ部分放電を発生させるプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、前記交流電源から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流手段と、前記交流電圧又は前記全波整流波形電圧を、前記被測定物に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチと、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、交流電源からの交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、これを被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0017】
請求項3に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0018】
この構成によれば、全波整流波形電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留する。この残留によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0019】
請求項4に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物へ出力する電源と、前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、部分放電測定装置によって、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、電源からの交流オフセット電圧を、被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物での部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0022】
この構成によれば、交流オフセット電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより被測定物の絶縁体表面に残留した電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする。
【0024】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、被測定物に1回のみ部分放電が発生するように直流電圧を印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする。
【0026】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、被測定物に1回のみ部分放電が発生するように片極性の全波整流波形電圧を印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0027】
請求項8に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0028】
この方法によれば、全波整流波形電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留するが、この残留電荷によって縁体空間の0V電位がオフセットされ、部分放電の放電量が徐々に減少して数回で生じなくなる。この場合の残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留するので、その状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0029】
請求項9に記載の発明は、導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、前記部分放電開始電圧の測定前に、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物に当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加することを特徴とする。
【0030】
この方法によれば、被測定物の部分放電開始電圧の測定前に、交流オフセット電圧を、被測定物に1回のみ部分放電を発生させるように印加するようにした。これによって、被測定物に部分放電が1回だけ生じるので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となり、このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0031】
請求項10に記載の発明は、前記部分放電開始電圧の測定前に、前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする。
【0032】
この方法によれば、交流オフセット電圧の印加により被測定物で部分放電が生じ、これにより電荷が被測定物の絶縁体表面に残留するが、この残留電荷によって縁体空間の0V電位がオフセットされ、部分放電の放電量が徐々に減少して数回で生じなくなる。この場合の残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留するので、その状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】従来の被測定物における部分放電時の放電量と印加電圧との関係図である。
【図2】被測定物における部分放電の原理を説明するための図である。
【図3】本発明の第1実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図4】第1実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図5】本実施形態の被測定物における部分放電時の放電量と印加電圧との関係図である。
【図6】本発明の第2実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図7】全波整流の説明図である。
【図8】第2実施形態の部分放電測定装置において全波整流波形電圧で被測定物に部分放電が生じる際の説明図である。
【図9】交流電圧で被測定物に部分放電が生じる際の説明図である。
【図10】第2実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第3実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。
【図12】第3実施形態の部分放電測定装置における交流オフセット電圧生成の説明図である。
【図13】第3実施形態の部分放電測定装置により被測定物にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。但し、本明細書中の全図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適時省略する。
【0035】
(第1実施形態)
図3は、本発明の第1実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図3において、1は部分放電測定装置、2は導体が絶縁体(又は絶縁皮膜)で被覆された被測定物である。部分放電測定装置1は、交流電源3と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6と、直流電源7と、第1スイッチ8と、第2スイッチ9とを備えて構成されている。
【0036】
交流電源3及び直流電源7は、インピーダンス部4を介して被測定物2の一端とアースとの間に並列に接続されており、各電源3,7とアースとの間には第1スイッチ8及び第2スイッチ9が接続されている。被測定物2の他端はアースに接続されている。また、インピーダンス部4及び被測定物2の接続間と、被測定物2及びアースの接続間とには、インピーダンス部4側に配置されたコンデンサ5と放電電流検出部6が直列に接続されている。
【0037】
但し、被測定物2が例えばハイブリッドモータのモータコイルであれば、被測定物2において電圧が印加される両端は、図2(a)に示したように、巻回されたコイルの両端となり、このコイルの絶縁皮膜I1,I2同士は当接した状態となっている。
【0038】
インピーダンス部4は、被測定物2の放電時の放電電流を遮断する。コンデンサ5は、被測定物2を放電電流検出演算部6に結合するものであり、高周波数の放電電流を放電電流検出演算部6へ出力する。第1スイッチ8は、直流電源7を被測定物2に接続/非接続状態とするオン/オフスイッチ、第2スイッチ9は、交流電源3を被測定物2に接続/非接続状態とするオン/オフスイッチである。その接続の際、各電源3,7と被測定物2との間にはインピーダンス部4が介在するが、インピーダンス部4はリアクタンスが小さいので、各電源3,7の何れかの電圧はそのまま被測定物2に印加されるようになっている。放電電流検出演算部6は、被測定物2の放電時の放電電流を検出し、この検出された放電電流に応じた放電量並びに放電開始電圧を求める。
【0039】
このような構成の部分放電測定装置1によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図4に示すフローチャートを参照して説明する。
【0040】
まず、ステップS1において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、被測定物2において必ず部分放電が生じる電圧値の1.5〜2倍程度の高電圧とする。つまり、直流電源7から出力される直流電圧がその設定高電圧とされる。また、印加時間は、その直流高電圧を被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。この時間が短すぎると部分放電が生じない。
【0041】
次に、ステップS2において、第1スイッチ8のみをON(オン)とする。これによってステップS3において、直流電源7から被測定物2へ直流高電圧が印加される。ステップS4において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS1で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。この部分放電によって、例えば図2(a)に示したように絶縁皮膜I1,I2の表面に少量の電荷(丸中に+,−で示す)が残留する。
【0042】
つまり、被測定物2に直流高電圧を印加すると、電圧が上昇する期間に被測定物2の絶縁体空間部の電圧が上昇し、部分放電が発生する。この発生した部分放電の電流は高周波数なのでコンデンサ5を介して放電電流検出演算部6で検出される。
【0043】
また、その発生した部分放電は被測定物2の絶縁皮膜表面に残留するため空間の電位差が低下し、このため、それ以上継続して放電が発生しなくなる。従って、直流高電圧の印加によって被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない所定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0044】
更に、ステップS4において、被測定物2への直流高電圧の印加時間が、上記ステップS1で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS5において、第1スイッチ8がOFF(オフ)とされ、直流高電圧の印加が停止される。つまり、ステップS2〜S5の動作によって、被測定物2への直流高電圧の印加がパルス状に行われる。
【0045】
その後、ステップS6において、第2スイッチ9のみがONとされ、これによって交流電源3からの交流電圧が被測定物2に印加され、ステップS7において、部分放電開始電圧が測定される。この測定は、交流電源3から交流電圧を徐々に上げて被測定物2に印加し、この印加で最初に部分放電が生じた際の電圧を、放電電流検出演算部6で求めて行う。この測定される部分放電開始電圧は、例えば図5に符号J11〜J13等の立ち上がり線で示すように放電量「pC」が急激に立上る際の印加電圧「V」が部分放電開始電圧となる。この測定時の部分放電開始電圧J11〜J13のばらつきは、図1に示した従来例の部分放電開始電圧J1〜J5が、およそ印加電圧IV3〜IV5の広い電圧幅にばらついた状態であったのに対して、図5のようにおよそ印加電圧IV2とIV3との略中間位置からIV3前後までの狭い電圧幅となっている。
【0046】
このように第1実施形態の部分放電測定装置1は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定するものであり、本実施形態の特徴は、被測定物2で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源7と、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、直流電源7又は交流電源3を被測定物2に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチ8,9と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備えた。そして、部分放電開始電圧の測定前にスイッチ8によって、直流電源7を被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ直流電圧が印加されるように、電気的に接続を行うようにした。
【0047】
この構成によれば、部分放電測定装置1によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、直流電源7からの直流電圧によって被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、その電荷発生量の増大は抑制される。つまり、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。言い換えれば、測定される部分放電開始電圧値のばらつきを低減させることが出来る。
【0048】
このように部分放電開始電圧の測定値のばらつきが小さくなるので、例えば被測定物2がハイブリッドモータのコイルである場合、そのコイルの絶縁皮膜を適正設計値とするか又は適正設計値に近づけることができ、従来のように絶縁皮膜を厚くしておかなくてもよいので、その分、コスト低減を図ることができる。
【0049】
(第2実施形態)
図6は、本発明の第2実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図6に示す部分放電測定装置1−1は、交流電源3と、全波整流回路10と、第1切替スイッチ11と、第2切替スイッチ12と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6とを備えて構成されている。
【0050】
全波整流回路10は、カソード端同士を接続した2つのダイオードD1,D2と、アノード端同士を接続した2つのダイオードD3,D4とが、一方の端子がアース接地された交流電源3のアース側端子及び電源側端子の間に、並列に接続されて構成されている。
【0051】
第1切替スイッチ11は、切替接続部11aをH端子又はL端子に切り替えて接続できるようになっており、全波整流回路10とインピーダンス部4との間に介在されている。この第1切替スイッチ11のH端子が、交流電源3の電源側端子に接続され、L端子が各ダイオードD1,D2のカソード接続部分に接続され、切替接続部11aがインピーダンス部4に接続されている。
【0052】
第2切替スイッチ12は、切替接続部12aをH端子又はL端子に切り替えて接続できるようになっており、全波整流回路10と被測定物2との間に介在されている。この第2切替スイッチ12のL端子が、全波整流回路10のアース接続側に接続され、H端子が各ダイオードD3,D4のアノード接続部分に接続され、切替接続部12aが被測定物2の両端の内、インピーダンス部4への接続端と反対側の端部に接続されている。
【0053】
つまり、被測定物2は、一端がインピーダンス部4に、他端が切替接続部12aに接続されている。また、インピーダンス部4及び被測定物2の接続間と、被測定物2及び切替接続部12aの接続間には、インピーダンス部4側に配置されたコンデンサ5と放電電流検出部6が直列に接続されている。
【0054】
全波整流回路10は、交流電源3から出力される図7(a)に示すような両極性の交流波形W1を、図7(b)に示すような片極性(例えば正極性)の全波整流波形W2に変換するものである。
【0055】
第1及び第2切替スイッチ11,12は、交流電源3からの交流波形W1が、全波整流回路10で片極性の全波整流波形W2に変換されて、被測定物2へ印加されるようにスイッチング切替を行うものである。第1切替スイッチ11の切替接続部11aをH端子側へ切り替え、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをL端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1がそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0056】
一方、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをL端子側へ切り替え、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをH端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1が全波整流回路10で全波整流波形W2に変換されてインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。この印加される全波整流波形W2の電圧レベルVpを適切に設定することで、前述した直流電源7からの直流電圧を印加したと同様に、被測定物2において継続性の無いパルス状の部分放電を発生させることが出来る。
【0057】
このパルス状の部分放電の発生について図8を参照して更に説明する。図8(a)は被測定物2における印加電圧等の各種電圧の様子を示す様態図である。2aは被測定物2の導体、2bは導体を被覆する絶縁体(絶縁皮膜)であり、導体2a間に印加電圧Vが印加されると、絶縁皮膜2bに電圧Vi1とVi2とが加わり、その絶縁皮膜2b間の空間に電圧Vgが加わる。この状態において絶縁皮膜2b間に部分放電16が発生する。
【0058】
ここで、印加電圧Vとして図8(b)に示す全波整流波形W2が印加されたとする。この場合、絶縁皮膜2bに電圧Vi1とVi2とが加わり、図8(c)に矢印Y11で示すように、各絶縁皮膜2b間の空間(絶縁体空間)に電圧(空間電圧)Vgの印加が開始され、この印加開始から空間電圧Vgが上昇し始め、印加電圧VがピークVpとなって空間電圧Vgが矢印Y12で示すように一定電圧を超えると、絶縁体空間部分で部分放電16が発生する。
【0059】
この部分放電16により電荷が絶縁皮膜2bの表面に残留することで絶縁体空間の0V電位が、図9(c)に示すように正極側上方にオフセットされる。この際、空間電圧Vgの絶対値は上昇しない。このため、部分放電は矢印Y13で示すように前回に比較して低い放電量で生じるが、その後は生じなくなる。つまり、部分放電の発生は続かない。この場合の絶縁皮膜2b表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。
【0060】
これに対して、図9(a)に示すような両極性の交流波形W1の電圧Vが、図9(b)に矢印Y21で示すように印加された場合、矢印Y22で示すように一度部分放電16が発生すると、絶縁皮膜2bの残留電荷によって電極反転時の電圧が印加電圧レベルVpよりも上昇する。このため、矢印Y23で示すように再度放電が発生し、これを矢印Y24、Y25で示すように繰り返すため、継続的に部分放電16が発生してしまう。このため、プレ放電においては、被測定物2への交流波形W1の電圧印加は不適切である。
【0061】
このような構成の部分放電測定装置1−1によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図10に示すフローチャートを参照して説明する。
【0062】
まず、ステップS11において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、交流電源3からの交流波形W1の電圧VのレベルVpを被測定物2において必ず部分放電が生じるレベルとする。印加時間は、その交流波形W1の電圧Vを被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。この時間が短すぎると部分放電が生じない。
【0063】
次に、ステップS12において、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをL端子側、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをH端子側へ切り替える。これによってステップS13において、交流電源3からの交流波形W1が全波整流回路10で全波整流波形W2に変換されてインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0064】
ステップS14において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS11で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。そして、被測定物2への全波整流波形W2の電圧Vの印加時間が、上記ステップS11で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS15において、交流電源3の電圧印加が停止される。
【0065】
このようにプレ印加時間を決めることによって、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるようにしてある。このように部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0066】
但し、このステップS14〜S15では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるように、交流電源3の電圧印加を停止していたが、前述したように部分放電が複数回発生して自然に放電しなくなる時点で交流電源3を停止するようにしても良い。この部分放電によって、上述したように絶縁皮膜2bの表面に電荷が残留する。この残留電荷により、絶縁皮膜2b間の空間電圧Vgの絶対値は上昇しないが、絶縁皮膜2b間の空間の0V電位が正極側上方にオフセットするので、部分放電の発生は続かない。
【0067】
これら何れのプレ印加時間設定の場合も、絶縁体表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留することになる。
【0068】
その後、ステップS16において、第1切替スイッチ11の切替接続部11aをH端子側、第2切替スイッチ12の切替接続部12aをL端子側へ切り替えることで、交流電源3からの交流波形W1がそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加され、ステップS17において、部分放電開始電圧が測定される。
【0069】
このように第2実施形態の部分放電測定装置1−1は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。本実施形態の特徴は、被測定物2に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源3と、交流電源3から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流回路10と、交流電圧又は全波整流波形電圧を、被測定物2に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチ11,12と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備え、部分放電開始電圧の測定前に、切替スイッチ11,12によって全波整流波形電圧が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにした。
【0070】
この構成によって、部分放電測定装置によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、交流電源3からの交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、これを被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じ、その絶縁皮膜表面には必ず電荷が発生するが、部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0071】
また、部分放電開始電圧の測定前に、切替スイッチ11,12によって全波整流波形電圧が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が発生し、その後その発生が無くなる時点まで印加されるようにしても良い。
【0072】
この場合、被測定物2での部分放電による絶縁体表面の残留電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【0073】
(第3実施形態)
図11は、本発明の第3実施形態に係る部分放電測定装置の構成を示すブロック図である。図11に示す部分放電測定装置1−2は、交流電源3及び直流電源7が直列接続された構成を含む電源18と、インピーダンス部4と、コンデンサ5と、放電電流検出演算部6とを備えて構成されている。
【0074】
電源18は、交流電源3の交流電圧のみを出力するか、又は、交流電源3の交流電圧を直流電源7の直流電圧でオフセットし、このオフセットされた交流オフセット電圧を出力する。この交流オフセット電圧について図12を参照して説明する。図12(a)に示すように、交流電圧3の交流電圧Vは、0V電位を中央に上下に同レベルVpだけ波形W1が突き出た正弦波となっている。その0V電位を、直流電源7の直流電圧によって図12(b)に矢印Y30で示すように、負極側へ所定レベルずらすオフセットを行い、これによって正極側の電圧レベルがVpよりも大きいVp1となった交流オフセット電圧V1を生成する。
【0075】
なお、交流オフセット電圧V1は、オフセットによって0V電位が正負何れかの極側にずれたアンバランスな交流電圧となっていれば良い。破線L0で示すように、正弦波W1の最下端位置に0V電位があってもよく、この逆に最上端位置に0V電位があってもよい。
【0076】
このような交流オフセット電圧V1を被測定物2に印加した場合、第2実施形態で説明したと同様に、被測定物2の絶縁体空間部分で部分放電16が発生し、この部分放電16により、空間電圧Vgの絶対値は変わらないが、電荷が絶縁皮膜2bの表面に残留することで絶縁体空間の0V電位が、正極側上方にオフセットされる。このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じ、その後の部分放電においても後で発生するほどに放電量が低くなり、複数回の発生で部分放電が生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。
【0077】
このような構成の部分放電測定装置1−2によって被測定物2にプレ放電を行わせた後に部分放電開始電圧を測定する際の動作を、図13に示すフローチャートを参照して説明する。
【0078】
まず、ステップS21において、プレ放電の印加電圧及び印加時間を設定する。印加電圧は、電源18からの交流オフセット電圧V1のレベルVp1を被測定物2において必ず部分放電が生じるレベルとする。印加時間は、その交流オフセット電圧V1を被測定物2に印加した際に必ず部分放電が1回だけ生じる時間とする。
【0079】
次に、ステップS22において、電源18からの交流オフセット電圧V1がインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加される。
【0080】
ステップS23において、その直流高電圧の印加時間が上記ステップS21で設定されたプレ印加時間に達すると、このプレ印加時間以前の何れかにおいて被測定物2において部分放電が生じる。そして、被測定物2への交流オフセット電圧V1の印加時間が、上記ステップS21で設定されたプレ印加時間を超えたと判断されると、ステップS25において、電源18が停止される。
【0081】
このようにプレ印加時間を決めることによって、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるようにしてある。このように部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。この残留電荷量は、後述の部分放電開始電圧の測定前に行う、本プレ放電において略一定となる。
【0082】
但し、このステップS23〜S24では、被測定物2に部分放電が1回だけ生じるように、交流電源3の電圧印加を停止していたが、前述したように部分放電が複数回発生して自然に放電しなくなる時点で電源18を停止するようにしても良い。この部分放電によって、上述したように絶縁皮膜表面に電荷が残留する。この残留電荷により、絶縁皮膜間の空間電圧の絶対値は上昇しないが、絶縁皮膜間の空間の0V電位が正極側上方にオフセットするので、部分放電の発生は続かない。
【0083】
これら何れのプレ印加時間設定の場合も、絶縁体表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留することになる。
【0084】
その後、ステップS25において、電源18からの交流電圧Vがそのままの状態でインピーダンス部4を介して被測定物2へ印加され、ステップS26において、部分放電開始電圧が測定される。
【0085】
このように第3実施形態の部分放電測定装置1−3は、導体が絶縁体で被覆された被測定物2に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する。本実施形態の特徴は、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧V1を、被測定物2へ出力する電源18と、被測定物2で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める放電電流検出演算部6とを備え、部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにした。
【0086】
この構成によって、部分放電測定装置によって、被測定物2の部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1を、被測定物2に1回のみ部分放電を発生させるように印加するプレ放電を行う。このプレ放電では、被測定物2での部分放電が1回だけなので、絶縁皮膜表面には、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、絶縁体空間部の電位差は略一定なので部分放電開始電圧値も略一定となる。このため、測定される部分放電開始電圧値のばらつきも小さくなる。
【0087】
また、部分放電開始電圧の測定前に、電源18からの交流オフセット電圧V1が被測定物2に、当該被測定物2で部分放電が発生し、その後その発生が無くなる時点まで印加されるようにしてもよい。
【0088】
この場合、交流オフセット電圧V1の印加により被測定物2で部分放電が生じ、これにより被測定物2の絶縁体表面に残留した電荷によって、絶縁体間の空間電圧の絶対値は変わらないが、縁体空間の0V電位がオフセットされ、このため、部分放電が前回に比較して低い放電量で生じながら数回で生じなくなる。この場合の絶縁体表面への残留電荷は、絶縁体空間部の電位差が大きく変化することのない一定量の電荷が残留する。従って、その電荷が残留した状態で部分放電開始電圧を測定すれば、測定値のばらつきが小さくなる。
【符号の説明】
【0089】
1,1−1,1−2 部分放電測定装置
2 被測定物
2a 導体
2b 絶縁体(絶縁皮膜)
3 交流電源
4 インピーダンス部
5 コンデンサ
6 放電電流検出演算部
7 直流電源
8 第1スイッチ
9 第2スイッチ
10 全波整流回路
D1〜D4 ダイオード
11 第1切替スイッチ
12 第2切替スイッチ
18 電源
【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源と、
前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、
前記直流電源又は前記交流電源を前記被測定物に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチと、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記スイッチによって前記直流電源を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ前記直流電圧が印加されるように、電気的に接続することを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項2】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、
前記交流電源から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流手段と、
前記交流電圧又は前記全波整流波形電圧を、前記被測定物に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチと、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項3】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項2に記載の部分放電測定装置。
【請求項4】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物へ出力する電源と、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項5】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項4に記載の部分放電測定装置。
【請求項6】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項7】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項8】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項7に記載の部分放電測定方法。
【請求項9】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物に当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項10】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項9に記載の部分放電測定方法。
【請求項1】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を出力する直流電源と、
前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、
前記直流電源又は前記交流電源を前記被測定物に、電気的に接続又は非接続状態とするスイッチング動作を行うスイッチと、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記スイッチによって前記直流電源を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ前記直流電圧が印加されるように、電気的に接続することを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項2】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
前記被測定物に部分放電を発生させるための交流電圧を出力する交流電源と、
前記交流電源から出力される両極性の交流波形の交流電圧を、片極性の全波整流波形電圧に変換する全波整流手段と、
前記交流電圧又は前記全波整流波形電圧を、前記被測定物に印加又は非印加状態とする切り替え動作を行う切替スイッチと、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項3】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記切替スイッチによって前記全波整流波形電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項2に記載の部分放電測定装置。
【請求項4】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定装置において、
交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物へ出力する電源と、
前記被測定物で部分放電が生じた際の電流を検出して放電量及び部分放電開始電圧値を求める検出演算手段とを備え、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加されるようにすることを特徴とする部分放電測定装置。
【請求項5】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記電源からの前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項4に記載の部分放電測定装置。
【請求項6】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の直流電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項7】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が1回のみ生じるように印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項8】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記被測定物で部分放電が生じる電位の交流電圧を片極性の全波整流波形電圧に変換し、この変換された全波整流波形電圧を前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項7に記載の部分放電測定方法。
【請求項9】
導体が絶縁体で被覆された被測定物に、所定レベルの電圧を印加して部分放電を発生させ、この際の部分放電開始電圧を測定する部分放電測定方法において、
前記部分放電開始電圧の測定前に、交流電圧を0V電位に対して正負何れかの極側にシフトするオフセットを行った交流オフセット電圧を、前記被測定物に当該被測定物で部分放電が1回のみ生じる時間だけ印加することを特徴とする部分放電測定方法。
【請求項10】
前記部分放電開始電圧の測定前に、前記交流オフセット電圧が前記被測定物に、当該被測定物で部分放電が発生し、その後に該部分放電の発生が無くなる時点まで印加されるようにすることを特徴とする請求項9に記載の部分放電測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−88080(P2012−88080A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232859(P2010−232859)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(000004695)株式会社日本自動車部品総合研究所 (1,981)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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