説明

部分放電発生監視装置及び方法

【課題】絶縁性能を評価する課電試料による課電寿命試験での部分放電のデータ量が低減でき、部分放電のデータを記憶するための記憶容量が少なくて済む部分放電発生監視装置及び方法を提供する。
【解決手段】部分放電発生監視装置2は、課電試料3に交流試験電圧を印加して行う課電寿命試験で、課電試料3に発生する部分放電を部分放電検出装置6により検出、計測して監視するもので、部分放電検出装置6により検出された課電試料3からの部分放電の放電信号Sが入力する入力手段8と、分圧器5を介して入力された試験電圧の電圧波形の極性反転を検出する検出手段9と、入力した放電信号Sの信号レベルが所定の閾値Pを超えたものであるか否かの判定を試験電圧の半周期毎に行い、該半周期毎の放電の有無についての判定結果を1ビットで出力する判定・出力手段11を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器、またはその絶縁材料の絶縁性能を評価する課電寿命試験における課電試料の部分放電を計測、監視する部分放電発生監視装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器には電気絶縁物が使用されており、稼動時に電気的、機械的、熱的なストレスが加わることにより、絶縁物の劣化が進行して最終的には電気機器の故障を引き起こすことがある。電気機器の信頼性を確保するには、電機器の絶縁性能の把握が必要である。
【0003】
絶縁性能の評価の一つに、電気機器、またはその絶縁材料に一定条件下で長期間にわたり所定の電圧を印加しつづけて絶縁破壊までの時間を測定し、評価する課電寿命試験が有る。ある条件で電圧を印加すると絶縁物近傍で部分放電が発生し、この部分放電が絶縁物の劣化の一因となることが知られている。よって、課電寿命試験において、絶縁物の性能を評価し、劣化メカニズムを検討する上で部分放電の発生状況を把握することが重要である。
【0004】
一方、信号波形の測定については、一般にオシロスコープを用いているが、課電寿命試験における部分放電の放電信号は数kHzの周波数帯からGHzの周波数帯であるため、部分放電波形を測定するにはサンプリング周波数を放電周波数程度以上に上げる必要がある。そのため、部分放電波形を保存するにはデータ量が膨大であるから、多量の記憶容量が必要となるだけでなく、データ処理や伝送にも多くの時間が必要となる。
【0005】
こうした状況に対し、部分放電波形を測定する際、正と負のピーク値を保持することにより、サンプリング点数を抑えることでデータ量を低減する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は部分放電波形の保存や解析に適している。しかし、課電寿命試験における部分放電の発生状況を把握するには、長時間に渡ってデータを記憶し続ける必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−39606号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記のような状況に鑑みて本発明はなされたもので、その目的とするところは、電気機器等の絶縁性能を評価する課電寿命試験で、課電試料に発生する部分放電を計測することによって得る部分放電のデータ量を低減することができ、また部分放電のデータを記憶する記憶装置の記憶容量を少なくすることができる部分放電発生監視装置及び方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記目的を達成するものであって、本発明の部分放電発生監視装置及び監視方法は、部分放電発生監視装置が、課電試料に交流試験電圧を印加して課電寿命試験を行う際、前記課電試料に発生する部分放電を、部分放電検出装置により検出し計測して監視する部分放電発生監視装置であって、前記部分放電検出装置により検出された前記課電試料からの部分放電の放電信号を入力する入力手段と、分圧器を介して入力された前記試験電圧の電圧波形の極性反転を検出する検出手段と、入力した前記放電信号の信号レベルが所定の閾値を超えたものであるか否かの判定を前記試験電圧の半周期毎に行い、該半周期毎の放電の有無についての判定結果を1ビットで出力する判定・出力手段を備えていることを特徴とするものである。
【0009】
また、部分放電発生監視方法が、課電試料に交流試験電圧を印加して発生する部分放電を、検出し計測して監視する課電寿命試験における部分放電発生監視方法であって、前記課電試料の部分放電に伴う放電信号の信号レベルと前記試験電圧の電圧波形の極性反転を検出した後、前記信号レベルが所定の閾値を超えたものであるか否かの判定を前記試験電圧の半周期毎に行い、該半周期毎の放電の有無を計数するようにして監視することを特徴とする方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、課電試料に発生する部分放電を検出するようにした課電寿命試験での部分放電のデータ量を低減することができると共に、長期間の試験であってもデータを記憶する記憶装置の記憶容量を少なくすることができ、装置も簡素な構成となるので安価なものとなる等の効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る部分放電発生監視システムの構成図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る部分放電発生監視システムを説明するための回路図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における制御フローを示すフローチャートである。
【図4】本発明の第1の実施形態における入力信号波形と放電判定の出力データを示す図である。
【図5】本発明の第1の実施形態において出力される放電判定データの個数を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施形態に係る部分放電発生監視システムの構成図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る部分放電発生監視システムを説明するための回路図である。
【図8】本発明の第2の実施形態における制御フローを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下本発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0013】
先ず第1の実施形態を図1乃至図5により説明する。図1は部分放電発生監視装置を備えた部分放電発生監視システムの構成図であり、図2は部分放電発生監視装置を備えた部分放電発生監視システムの回路図であり、図3は部分放電発生監視装置における制御フローを示すフローチャートであり、図4は部分放電発生監視装置の入力信号波形と放電判定の出力データを示す図であり、図5は部分放電発生監視装置から出力される放電判定データの個数を示す図である。
【0014】
図1乃至図5において、1は部分放電発生監視システムで、部分放電発生監視装置2を備え、電気機器、あるいはその絶縁材料等の絶縁性能を評価するための課電寿命試験を行うよう構成されている。課電寿命試験にかける課電試料3としては、例えば回転電機の固定子巻線における巻線間に発生する部分放電を模擬したツイストペア試料が用いられる。なお、ツイストペア試料は、固定子巻線に使用するエナメル被覆で覆った導線2本を数回程度ねじったもので、製作が容易で、複数の試料を用意できるので絶縁性能の評価試験によく使用される。
【0015】
部分放電発生監視システム1は、部分放電発生監視装置2の他に、課電試料3に所定の交流試験電圧を印加する電源4と、課電試料3に印加する試験電圧を分圧して出力する分圧器(VT)5と、課電試料3に発生した部分放電を、課電試料3に流れる放電電流を検出することによって放電信号Sを出力する部分放電検出装置6と、部分放電発生監視装置2から所定間隔で出力され送信された部分放電のデータを記憶、保存する外部記憶装置(PC)7を備えて構成されている。
【0016】
部分放電発生監視装置2については、部分放電検出装置6によって検出された課電試料3の放電信号Sが入力する入力手段8と、電源4から課電試料3に印加された交流試験電圧を分圧し、計測用に降圧する分圧器5の出力を得て試験電圧の電圧波形の極性反転を検出する検出手段9と、入力手段8と検出手段9の出力に基づき、入力した放電信号Sの信号レベルが設定手段10に予め設定した所定の信号レベルの閾値Pを超えたものであるか否かの判定を試験電圧の半周期毎に行い、部分放電があったか否か、すなわち、放電の有無についての判定を行い、結果を1ビットで出力する判定・出力手段11を備えて構成されている。
【0017】
また、部分放電発生監視装置2には、図示しない表示部に放電の有無の判定結果、例えば所定経過時間に対する放電判定信号の累積回数等が表示され、部分放電の発生の監視が行えるようになっている。さらに、部分放電発生監視装置2には装置内メモリ12が設けられていて、放電の有無の判定結果のデータが装置内メモリ12に一時記憶できるようになっており、記憶された判定結果は、予め設定した所定の間隔で判定・出力手段11の伝送路を介して外部記憶装置7にシリアル通信で伝送され、記憶、保存され、その表示部に表示させることで計測結果の確認を行うことができるようになっている。
【0018】
また、部分放電を検出する部分放電検出装置6は、部分放電による放電電流を検出する高周波変成器(CT)13と、高周波変成器13の出力からノイズ信号を除去し放電信号Sを出力するフィルタ14を備えて構成されている。なお、部分放電を検出する部分放電検出装置6としては、前述のもの以外に、部分放電による放電光を検出する光電子倍増管を用いたり、部分放電に伴う電磁波を検出する電磁アンテナや、放電電荷を検出する結合コンデンサ等を用いたりしたものであってもよい。
【0019】
そして、上記のように構成された部分放電発生監視装置2の部分放電の計測、監視の制御フローは以下に示す通りとなっており、図3を参照して説明する。
【0020】
第1ステップS1では、装置内のメモリ12に放電判定信号の回数を計数し記憶するように設けられたカウンタCの計数値を「0」とする。続く、第2ステップS2では、放電判定フラッグFを設けて、まず「L」(Low)を書き込み初期化しておく。なお、放電判定フラグFは、読み込んだ放電信号の大きさが信号レベルの閾値Pと比べて大きい「H」(High)であるか、閾値P以下「L」であるかを記憶しておくフラグである。
【0021】
次の第3ステップS3では、部分放電検出装置6から入力した放電信号Sを読み込み、第4ステップS4に進む。放電信号Sの読み込み間隔については、部分放電の検出漏れを防ぐため、部分放電発生時の放電波形のパルス幅の1/2より短い時間とする。
【0022】
第4ステップS4では、読み込んだ放電信号Sのレベルが予め設定した信号レベルの閾値Pを超えているか否かの判定をする。閾値Pの設定については、放電信号Sのノイズレベルに対し若干大きい値にしておく。またノイズレベルについては、試験環境や試験装置、測定試料(課電試料3)により変化するため、ノイズレベルに合わせて放電判定の閾値Pを、閾値の可変設定可能に構成した設定手段10に変更、設定することで、放電判定の精度を上げることができる。
【0023】
そして、放電信号Sのレベルが予め設定した閾値Pを超えている場合(第4ステップS4:YES)は、第5ステップS5に進む。第5ステップS5では、放電信号Sのレベルが閾値Pを超えているから、放電判定フラッグFに判定結果の「H」を書き込み、第6ステップS6に進む。また、放電信号Sのレベルが閾値P以下の場合(第4ステップS4:NO)は、第6ステップS6に進む。
【0024】
第6ステップS6では、分圧器5から入力した試験電圧を降圧した電圧のレベルを読み込み、その後、第7ステップS7に進む。ここでの電圧を読み込む間隔は、例えば放電電圧を読み込む間隔と同じとする。しかし、部分放電の放電信号Sが数kHzの周波数帯からGHzの周波数帯であり、この放電信号Sを読み込む間隔は電圧波形に対して極端に短い。そこで、極性反転の判定には数百μsオーダの間隔であれば十分であるため、電圧を読み込む間隔を長くし、電圧を読み込むまでは、放電信号Sの読み込みと判定を行う第3ステップS3〜第5ステップS5を繰り返すように制御を行ってもよい。
【0025】
第7ステップS7では、読み込んだ電圧の極性が反転しているか否かを判定する。ここでは、例えば電圧半周期毎に放電判定結果を記憶する。そのため、電圧波形の正の部分と負の部分、すなわち、電圧の極性が反転した時点で1回ずつ放電判定結果の記憶を行う。半周期の設定については、位相をずらし適宜に設定するようにしてもよいが、電圧が0[V]付近では部分放電の発生頻度が少ないため、電圧が0[V]となる極性反転点を放電判定の境界とするのが望ましい。そして、電圧の極性が反転している場合(第7ステップS7:YES)は、第8ステップS8に進み、電圧の極性が反転していない場合(第7ステップS7:NO)は、第3ステップS3に戻り、次の放電信号Sの読込みを行い、放電判定を繰り返す。
【0026】
第8ステップS8では、放電判定フラグFに記憶している内容が「H」であるか否かの判定を行う。そして、放電判定フラグFが「H」である場合(第8ステップS8:YES)は、第9aステップS9aに進み、放電結果としてメモリ12に“1”を書き込み記憶させ、第10ステップS10に進む。また、放電判定フラグFが「L」である場合(第8ステップS8:NO)は、第9bステップS9bに進み、放電結果としてメモリ12に“0”を書き込み記憶させ、第10ステップS10に進む。
【0027】
第10ステップS10では、メモリ12に放電判定信号の回数を計数し記憶するカウンタCの計数値に「1」を加え、第11ステップS11に進む。そして、第11ステップS11では、カウンタCの計数値が予め設定した計数値の閾値N以上であるか否かの判定を行い、カウンタCの計数値が閾値N以上であると判定した場合(第11ステップS11:YES)は、第12ステップS12に進む。
【0028】
続く第12ステップS12では、装置内メモリ12に記憶した全てのデータを外部記憶装置7にシリアル通信により送信する。そして、送信した後、第13ステップS13に進む。一方、カウンタCの計数値が閾値N未満であると判定した場合(第11ステップS11:NO)は、第2ステップS2に戻り、次の電圧半周期での部分放電の判定を行い、以降のステップを繰り返す。
【0029】
以上のように、第12ステップS12においてメモリ12に所定量のデータが溜まった段階、つまり、計数値の閾値N以上となったところで定期的にデータを転送することにより、装置内メモリ12の容量を小さくすることができる。課電寿命試験では長期間、常に放電監視を行い、放電判定信号をメモリ12に記憶し続けることになるため、メモリ12内のデータを外部に転送することで、装置内メモリ12の記憶容量の節約ができ、また試験途中でも、これまでの放電の発生状況を外部の離れたところでも確認することができる。なお、計数値の閾値Nについては、装置内メモリ12の記憶容量や確認の間隔等に合せ、適正な値に予め設定を行う。
【0030】
また、本実施形態においては、試験電圧の半周期で1ビットを出力するため、測定時間に対する放電監視で出力されるデータ量は図5に示す通りとなる。すなわち、試験電圧の周波数が60Hzでは、1時間で54kバイト、1年でも473Mバイトのデータ量で済むことになる。よって、長時間の部分放電発生監視においては、データ量を抑えながらも全期間に渡って放電データを得ることができる。また本実施形態では、カウンタCを用いて一定間隔でデータを送信しているが、カウンタCを用いず送信指示があった時のみデータを送信するようにしてもよい。
【0031】
そして、第13ステップS13では、計測終了の指示が入力されていた場合(第13ステップS13:YES)は、計測を終了する。この計測終了時点においては、前の第12ステップS12で装置内メモリ12に記憶した全てのデータを外部記憶装置7に送信し終えているので、装置内メモリ12にはデータが記憶されていない状態になる。また、計測終了の指示が入力されていない場合(第13ステップS13:NO)は、第1ステップS1に戻り、カウンタCの計数値を「0」に戻し、再びそれ以降のステップを実行し、計測を継続する。
【0032】
以上のように構成し、電圧半周期毎に部分放電の発生の有無を1ビットで記憶することで、長期間に渡る課電寿命試験においてもデータ量を抑えるようにしながら部分放電発生の監視を行うことができる。また、データ量の低減により、装置内メモリ12や外部記憶装置7等のメモリ容量が小さくて済み、さらに、機能を放電の有無を出力することに限定することにより装置構成を簡素なものとすることができるため、装置を安価なものとすることができる。またさらに、部分放電の検出、計測時、部分放電検出装置6からの放電信号Sにはノイズが含まれていることがあるから、そのノイズレベルに合わせて放電判定を行う際の信号レベルの閾値Pを適正に設定することで、測定環境に適した精度で部分放電を計測し監視することができる。
【実施例2】
【0033】
次に第2の実施形態を図6乃至図8を参照して説明する。図6は部分放電発生監視装置を備えた部分放電発生監視システムの構成図であり、図7は部分放電発生監視装置を備えた部分放電発生監視システムの回路図であり、図8は部分放電発生監視装置における制御フローを示すフローチャートである。なお、第1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略し、第1の実施形態と異なる本実施形態の構成について説明する。
【0034】
図6乃至図8において、21は部分放電発生監視システムで、部分放電発生監視装置22を備え、電気機器、あるいはその絶縁材料等の絶縁性能を評価するための課電寿命試験を、例えば回転電機の固定子巻線における巻線間に発生する部分放電を模擬したツイストペア試料の課電試料3を用いて行うよう構成されている。さらに、部分放電発生監視システム21は、部分放電発生監視装置22の他に、電源4と、交流試験電圧を分圧して出力する分圧器(VT)5と、課電試料3に発生した部分放電を検出し放電信号Sを出力する部分放電検出装置6と、部分放電発生監視装置22から所定間隔で出力され送信された部分放電のデータを記憶、保存する外部記憶装置(PC)7を備えて構成されている。
【0035】
そして、部分放電発生監視装置22は、部分放電検出装置6によって検出された課電試料3の放電信号Sが入力する入力手段8と、電源4から課電試料3に印加された交流試験電圧を分圧し、計測用に降圧する分圧器5の出力を得て試験電圧の電圧波形と電圧波形の極性反転を検出する検出手段23と、入力手段8と検出手段23の出力に基づき、入力した放電信号Sの信号レベルが設定手段10に予め設定した所定の信号レベルの閾値Pを超えたものであるか否かの判定を試験電圧の半周期毎に行い、部分放電があったか否か、すなわち、放電の有無についての判定を行い、結果を1ビットで出力すると共に、放電有りと判定した際の半周期における電圧波形のピーク値を出力する判定・出力手段24を備えて構成されている。
【0036】
また、部分放電発生監視装置22には、図示しない表示部に放電の有無の判定結果、例えば所定経過時間に対する放電判定信号の累積回数や部分放電が有ったと判断した際の試験電圧の半周期毎の電圧波形のピーク値の状況等が表示され、部分放電の発生の監視が行えるようになっている。さらに、部分放電発生監視装置22には装置内メモリ12が設けられていて、放電の有無の判定結果、放電有りと判定した際の半周期における電圧波形のピーク値等が装置内メモリ12に一時記憶できるようになっており、記憶された判定結果は、予め設定した所定の間隔で判定・出力手段24の伝送路を介して外部記憶装置7にシリアル通信で伝送され、記憶、保存され、その表示部に表示させることで計測結果の確認を行うことができるようになっている。
【0037】
そして、上記のように構成された部分放電発生監視装置22の部分放電の計測、監視の制御フローは以下に示す通りとなっており、図8を参照して説明する。
【0038】
第1ステップS21では、装置内のメモリ12に放電判定信号の回数を計数し記憶するように設けられたカウンタCの計数値を「0」とする。続く、第2ステップS22では、放電判定フラッグFを設けて、まず「L」(Low)を書き込み初期化しておく。また第3ステップS23において、電圧振幅の最大値として電圧ピークVを設けて、その数値を「0」と書き込んでおく。
【0039】
次の第4ステップS24では、部分放電検出装置6から入力した放電信号Sを読み込み、第5ステップS25に進む。放電信号Sの読み込み間隔については、部分放電の検出漏れを防ぐため、部分放電発生時の放電波形のパルス幅の1/2より短い時間とする。
【0040】
第5ステップS25では、読み込んだ放電信号Sのレベルが予め設定した信号レベルの閾値Pを超えているか否かの判定をする。放電信号Sのレベルが予め設定した閾値Pを超えている場合(第5ステップS25:YES)は、第6ステップS26に進む。第6ステップS26では、放電信号Sのレベルが閾値Pを超えているから、放電判定フラッグFに判定結果の「H」を書き込み、第7ステップS27に進む。また、放電信号Sのレベルが閾値P以下の場合(第5ステップS25:NO)は、第7ステップS27に進む。
【0041】
第7ステップS27では、分圧器5から入力した試験電圧を降圧した電圧のレベルを読み込み、第8ステップS28に進む。続く第8ステップS28では、読み込んだ電圧の絶対値が電圧ピークVを超えているか否かを判定する。読み込んだ電圧の絶対値が書き込まれている電圧ピークVを超えている場合(第8ステップS28:YES)は、第9ステップS29に進み、読み込んだ電圧の絶対値を電圧ピークVに書き込み、第10ステップS30に進む。また、読み込んだ電圧の絶対値が書き込まれている電圧ピークVを超えていない場合(第8ステップS28:NO)は、第10ステップS30に進む。
【0042】
第10ステップS30では、読み込んだ電圧の極性が反転しているか否かを判定する。そして、電圧の極性が反転している場合(第10ステップS30:YES)は、第11ステップS31に進み、電圧の極性が反転していない場合(第10ステップS30:NO)は、第4ステップS24に戻り、次の放電信号Sの読込みを行い、放電判定を繰り返す。
【0043】
第11ステップS31では、放電判定フラグFに記憶している内容が「H」であるか否かの判定を行う。そして、放電判定フラグFが「H」である場合(第11ステップS31:YES)は、第12aステップS32aに進み、放電結果としてメモリ12に“1”を書き込み記憶させ、さらに第13ステップS33に進み、メモリ12に読み込んだ電圧の絶対値が書き込まれた電圧ピークVをメモリ12に書き込み記憶させ、第14ステップS34に進む。一方、放電判定フラグFが「L」である場合(第11ステップS31:NO)は、第12bステップS32bに進み、放電結果としてメモリ12に“0”を書き込み記憶させ第14ステップS34に進む。
【0044】
第14ステップS34では、メモリ12に放電判定信号の回数を計数し記憶するカウンタCの計数値に「1」を加え、第15ステップS35に進む。本実施形態においては、放電ありの場合のみ電圧値も同時に記憶しているため、カウンタCとメモリ12に記憶したデータ量とが対応していないことになる。つまり、データ量ではなく、時間間隔を一定にしてデータを外部に送信することになる。このため、データ量で閾値を設定する場合には、カウンタCの計数値に記憶したビット数を加えて、データ量を積算する制御としてもよい。電圧値を1回記憶するのに必要なデータ量は、例えば2バイト整数を使用すると、16ビットとなる。
【0045】
そして、第15ステップS35では、カウンタCの計数値が予め設定した計数値の閾値N以上であるか否かの判定を行い、カウンタCの計数値が閾値N以上であると判定した場合(第15ステップS35:YES)は、第16ステップS36に進む。
【0046】
続く第16ステップS36では、装置内メモリ12に記憶した全てのデータを外部記憶装置7にシリアル通信により送信する。そして、送信した後、第17ステップS37に進む。一方、カウンタCの計数値が閾値N未満であると判定した場合(第15ステップS35:NO)は、第2ステップS22に戻り、次の電圧半周期での部分放電の判定を行い、以降のステップを繰り返す。
【0047】
第17ステップS37では、計測終了の指示が入力されていた場合(第17ステップS37:YES)は、計測を終了する。また、計測終了の指示が入力されていない場合(第17ステップS37:NO)は、第1ステップS21に戻り、カウンタCの計数値を「0」に戻し、再びそれ以降のステップを実行し、計測を継続する。
【0048】
以上のように構成し、電圧半周期毎に部分放電の発生の有無を1ビットで記憶し、放電発生有りの時のみ半周期の電圧ピーク値を同時に記憶することで、長期間に渡る課電寿命試験においてもデータ量を抑えるようにしながら部分放電発生の監視を行うことができ、さらに、放電発生時の電圧の確認が行えることから、課電試料3に印加される試験電圧の外部ノイズや電源系統の電圧変動等による変化の履歴が明らかとなり、課電寿命試験の信頼性を向上させることができる。また、データ量の低減により必要とするメモリ容量が小さくてよく、装置構成も簡素なものとすることができるので装置を安価なものとすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1,21…部分放電発生監視システム
2,22…部分放電発生監視装置
3…課電試料
4…電源
5…分圧器
6…部分放電検出装置
7…外部記憶装置
8…入力手段
9,23…検出手段
10…設定手段
11,24…判定・出力手段
12…メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
課電試料に交流試験電圧を印加して課電寿命試験を行う際、前記課電試料に発生する部分放電を、部分放電検出装置により検出し計測して監視する部分放電発生監視装置であって、
前記部分放電検出装置により検出された前記課電試料からの部分放電の放電信号を入力する入力手段と、分圧器を介して入力された前記試験電圧の電圧波形の極性反転を検出する検出手段と、入力した前記放電信号の信号レベルが所定の閾値を超えたものであるか否かの判定を前記試験電圧の半周期毎に行い、該半周期毎の放電の有無についての判定結果を1ビットで出力する判定・出力手段を備えていることを特徴とする部分放電発生監視装置。
【請求項2】
放電の有無の判定で放電有りと判定した際、放電有りと判定した半周期における電圧波形のピーク値を出力するピーク値出力段を備えていることを特徴とする請求項1記載の部分放電発生監視装置。
【請求項3】
課電試料に交流試験電圧を印加して発生する部分放電を、検出し計測して監視する課電寿命試験における部分放電発生監視方法であって、
前記課電試料の部分放電に伴う放電信号の信号レベルと前記試験電圧の電圧波形の極性反転を検出した後、前記信号レベルが所定の閾値を超えたものであるか否かの判定を前記試験電圧の半周期毎に行い、該半周期毎の放電の有無を計数するようにして監視することを特徴とする部分放電発生監視方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−164453(P2010−164453A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7461(P2009−7461)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】