説明

部分的な金属化製造工程、転写フィルム及びその用途

【課題】本発明は、部分的な金属化製造工程、転写フィルム及びその用途に関する。
【解決手段】キャリアー基板に可溶性の第一着色層が少なくとも部分的に設けられ、該可溶性の第一着色層には該キャリアー基板から離れた側にその全面積にわたって金属層が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャリアー基板に部分的な金属化を製造する工程に関しており、該キャリアー基板に可溶性の第一着色層が少なくとも部分的に設けられ、該可溶性の第一着色層には上記のキャリアー基板から離れた側にその全面積に亘って金属層が設けられている。
本発明はさらにキャリアー基板と部分的な金属化を有する転写層構造とを備える転写フィルムに関しており、該キャリアー基板はキャリアーフィルムの形態にあり、該転写層構造は少なくとも部分的に配置された1つの第一着色層及び該第一層と一致関係で配置された金属層を有している。
本発明はさらにその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
そのような工程及びそのような転写フィルムは特許文献1から知られている。該文献において、ラッカー層の領域と一致関係あるいは正確なレジスタ関係で形成された反射金属層を部分的に有する合わせフィルム構造が開示されている。
その場合、キャリアーフィルムは可溶性の、場合により第一着色ラッカー層でコーティングされ、該第一ラッカー層の上記キャリアーフィルムから離れた側は反射金属層で覆われている。
次に、金属層の領域は下記の手順で取り除かれる。すなわち、ベースが好ましいパターンで金属層に施されるか、あるいはベースにおいて不溶性の層がパターンで金属層に施され、その後、ベースが不溶性の層と不溶性の層のない金属層の領域とに形成される。ベースは現在、金属層を介して可溶性の第一ラッカー層を溶解すると言われている。しかしながら、その方法により所望な領域において第一ラッカー層を確実に且つ完全に溶解することが極めて難しいと判断された。その理由としては、施された、通常PVDプロセス(物理的気相成長法)によって形成される金属層のためであるように思われる。該金属層は一般的に第一ラッカー層に蒸着あるいは陰極スパッタリングにより形成される。その方法は、少なくとも形成された金属層に接触する第一ラッカー層の表面の領域において、第一ラッカー層の化学構造の変化をもたらし、その結果、以前のベース可溶性の第一ラッカー層が少なくとも部分的にベースに対して不溶性になり、そのために金属層を形成するに当たっての困難を引き起こす。
【0003】
部分的な金属化を製造するために、金属層は部分的に腐食レジストラッカーでコーティングされ、また金属層の露出している領域はエッチングにより取り除かれることが、特許文献2から知られている。キャリアー基板に部分的な金属化を製造するために、可溶性のラッカー層は部分的にキャリアー基板に施され、金属層はラッカー層とキャリアー基板のラッカー層のない領域とに亘って配置され、その後ラッカー層は溶解されることが更に開示されている。
【0004】
さらに、可溶性ラッカーは硬化剤で部分的にプリントされ、該硬化剤及び硬化剤のないラッカーの領域は金属層でコーティングされ、その後、硬化剤がない領域におけるラッカー及びその上に設けられた金属層は溶解され、それによってラッカーの硬化された領域と正確なレジスタ関係でキャリアー基板の部分的な金属化を製造する工程が記載されている。以上既に記載され、最後に記載された2つの工程は、大量なラッカーが使用されるとき、金属化操作の後にラッカー層の溶解度が著しく悪化し、その結果、直接金属層が設けられたラッカー層の領域を確定に溶解するのが難しくあるいは更に不可能になる結果を招く。
【0005】
特許文献2において、可溶性の第一色あるいはラッカー層がキャリアー基板に全面積にわたって施され、また該第一層に硬化剤を含んでいる第二色あるいはラッカー層で部分的に覆われていることがさらに開示されている。該第二層が存在しない第一層の領域は溶剤によって溶解されるので、正確なレジスタ関係で2つのカラー層を有する領域は形成される。
【0006】
特許文献3は装飾金属層を有するフィルム及びその製造工程を開示している。その場合、キャリアーフィルム上の可溶性ラッカーは硬化剤あるいは硬化剤を過度に含む硬化ラッカーで部分的に印刷される。該硬化剤は、下側にある可溶性ラッカーに拡散され、それを硬化させる。その場合、可溶性ラッカーにおいて、硬化剤の濃度勾配が発生し、硬化剤濃度のレベルがキャリアーフィルムの方向に減少し、それによって局部的に異なる程度に可溶性層の硬化が実行される。そのように、可溶性ラッカーの硬化されていない領域はキャリアーフィルムの領域に存在でき、また硬化剤でプリントされなかった領域を洗い落とすとき、完全にあるいは部分的に溶解される。しかしながら、キャリアーフィルムの領域における可溶性ラッカーの硬化は、溶解度がもはやかかわっていないことを条件とするのに十分であっても、濃度勾配により発生する可溶性ラッカーの不規則な硬化はその機械特性に悪影響を与える。さらに純粋な硬化剤の残り (あるいは硬化ラッカーにしても) は常に以前の可溶性ラッカーの表面の裏側に残存し、その結果金属層と以前の可溶性ラッカーとの間に残存している。それは金属化の不十分な接着をもたらすことが可能である。
【特許文献1】WO 98/50241
【特許文献2】DE 102 56 491 A1
【特許文献3】DE 34 30 111 C1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、キャリアー基板に正確なレジスタ関係で部分的な金属化を形成する改良した工程及び正確なレジスタ関係で境界が明瞭な金属化領域を有する転写フィルムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
キャリアー基板に可溶性の第一着色層が少なくとも部分的に設けられ、該可溶性の第一着色層には該キャリアー基板から離れた側にその全面積にわたって金属層が設けられる工程について、該目的は下記のa)あるいはb)において達成される。
a) 少なくとも一つの可溶性の第二層が第一層と金属層との間に部分的に設けられ、あるいは
b) 少なくとも一つの不溶性の第三層が該第一層の金属層に向けた側に部分的に設けられ、また可溶性の第二層が該第三層の金属層に向けた側に少なくとも部分的に施され且つ第三層がない第一層の領域に部分的に施される。
そこに、a)及びb)の場合において、
(1) 硬化剤が第一層に加えられ、該第一層の硬化剤を不活性化するようにされた添加剤が第二層に加えられ、任意に設けられた上記少なくとも一つの第三層が該添加剤を通さず、
(2) 該第二層の添加剤は、第一層が硬化剤により硬化される前に、該第二層に直接接触するように設けられた第一層の領域において第一層の硬膜剤を不活性化し、
(3) 該第二層及び硬化剤が不活性化された第一層の領域は液体により溶解されて取り除かれ、該第二層に直接設けられた領域において金属層が取り除かれる。
【0009】
従って、本発明によると、再び溶解される第一層の領域は、金属層で直接コーティングされる部分がないため、金属層がコーティングされることが原因で第一層の溶解度における変化がない。本発明によると、再び溶解される第一層の領域は、該第一層に含まれている硬化剤に適合させた添加剤を有する第二層と直接接触するようにもたらされている。硬化剤が活性になって第一層を硬化させる前に、第二層における添加剤は第一層における硬化剤を不活化する。第二層及び該第二層に覆われていない第一層の領域は、望ましく例えば蒸着あるいは陰極スパッタリングなどのPVD工程により形成される金属層でコーティングされる。第二層でコーティングされていない第一層の領域、その結果第一層における硬化剤の不活化が起こらなかった第一層の領域において、第一層が部分的にのみ硬化した後に、第二層及び硬化剤が不活性化された第一層の領域は液体によって溶解されて取り除かれる。その場合、第二層に直接設けられている金属層の一部も取り除かされ、その結果、キャリアー基板に部分的な金属化が形成される。部分的な金属化は、第一層が直接金属層でコーティングされ且つ硬化された位置で見つけられる。場合b)に存在する上記の少なくとも一つの第三層は不溶性であり、さらなる装飾効果を可能にする。その点に関して、第一層及び第三層の光学印象(optical impression)を互いに重ねることができ、また該第三層に少なくとも部分的に金属層が設けられることができる。本発明に係る工程は、第一層の硬化されていない領域及びその上に設けられている金属層の領域が確実に溶解されることを可能にし、その場合、鋭い縁を有し形成された寸法の金属層領域を再生可能な方法で製造することができる。一方では、第一ラッカー層は硬化された領域及び硬化されていない領域に分割され、他方では、硬化されるべき第一ラッカー層の領域は金属層で直接コーティングされ、それが上述の第一ラッカー層の溶解度の低減につながる。第一ラッカー層へのその二重影響は、形成された金属化領域の高レベルの縁の鋭さが原因で、また第一ラッカー層の硬化された領域及びその上に設けられた金属層に対して極めて高度なレジスタ精度であると見なされる。
【0010】
その点に関して、特許文献3と比べると、それらの生産過程によって、本発明によれば該第一層の領域の下部に残されている該第一層の硬化された領域は、第一層を形成する操作において硬化剤が第一層を形成する材料の中で既に均一に分配されているため、それらの面積また断面から見てそれらの層厚さに亘って均一な硬化度を有することが特に有利である。第一層の均一な硬化は、例えば、第一層の摩耗と、溶解度と、屈折率と、モル質量または分子と量が、断面から見て異なる層深さについて解明されると共に比較されることにより証明することができる。さらに、第一層の硬化度が、例えば、第一層におけるポリマーの蒸気圧により、あるいは第一層の変形能を断面から見て異なる層深さについて解明されると共に比較することが可能である。本発明に係る工程により得られる硬化された第一層において異なる測定値を見出すことができなかった。
【0011】
第一層における硬化剤はアジリジンあるいはポリイミンに基づいて選択され、第二層はPH値が11乃至14の範囲を有する水溶性の強アルカリ性の印刷用インクによって形成される場合、該工程にとって特に価値があると判断された。
【0012】
特に、その点に関して、印刷用インクは水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムによってアルカリ型で作られ、該水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが添加剤を形成することが望ましいと分かった。第二層からのそれらの添加剤が第一層におけるアジリジンベースあるいはポリイミンベースの硬化剤を確実に不活性化させ、その結果、再生可能な方法で部分的に第一層の硬化を防止することが分かった。その種類の硬化剤は約80度以上の温度のみで第一層を加速的に硬化させる。室温では、硬化が非常にゆっくりとしか生じないため、その結果、特に後の印字機構において第一層にインラインを適用するときに印刷用インクにおける添加剤による硬化剤の不活化を行うことができる。
【0013】
形成された第二層の構造及び設置を簡単な方法で目視検査することができるため、その場合、望ましくは、第二層を形成するための印刷用インクには、着色充てん剤あるいは顔料が混ぜられる。その点に関して、それを明確に視認できるために、硫酸バリウム、酸化チタンまたは硫化亜鉛が印刷用インクに加えられることが望ましいと判断された。
【0014】
本発明の目的は、転写フィルム、特にホットスタンピングフィルムを実現することである。該フィルムにおいて、第一層がアジリジンベースまたはポリイミンベースの硬化剤により硬化され、該第一層がその層厚さに亘って考慮して均一に硬化されている。
【0015】
それは、金属層の硬化された第一層への良好な接着と同時に第一層の最適な機械的性質をもたらす。
【0016】
第一層の境界が明瞭な領域を、直接接触領域においてこのような硬化剤に基づく局部的に明瞭に画定した影響作用によって製造することができ、その結果、正確なレジスタ関係で境界が明瞭な金属化領域も存在する。
【0017】
望ましくは、第一層は、望ましくポリアクリル酸あるいはスチレン無水マレイン酸に基づいて、アルカリ溶解性のラッカーによって形成される。
【0018】
望ましくは、第一層の層厚さは0.7乃至2μmの範囲である。その範囲では、第二層の添加剤が第一層の層厚さ全体に亘って該第一層における硬化剤を確実に不活性化することができる。第二層が0.8乃至3μmの範囲の厚さで形成されることが望ましいと判断された。
【0019】
金属鏡が第一層を介して可視であるようにさせ、またそれを最大限示すために、第一層が透明であることが望ましいと判断された。その点に関して、第一層は複数の透明層により構成されることができ、その光学効果は互いに影響を及ぼす。
【0020】
転写フィルムのキャリアーフィルム及び/または転写層構造が少なくとも部分的に透明であることが望ましいと判断された。例として、部分的に透明であり、また有価ドキュメントに施される転写層構造は、ドキュメントの表面を、さらに認識させまた偽造に対する保護対策の付加的レベルを達成させることを可能にする。
【0021】
転写層構造は接着層を有することが望ましいと判断され、該接着層が転写層構造のキャリアーフィルムから離れた側に配置されている。転写層構造を透明基板に適用するための接着層に透明な接着剤を使用するとき、転写層構造の着色層及び金属層は、基板及び接着層を通してなお認知できるようにされている。
【0022】
転写層構造に設けることが可能である少なくとも1つの第三層によって、該第三層が着色不透明の性質及び/または着色透明の性質を有するものである場合、特定の装飾効果を達成することが可能である。
【0023】
例えば、有価ドキュメントに転写フィルムの転写層構造の転写を容易にするために、キャリアーフィルムと転写層構造との間にワックスのような隔離層が設けられることが有利であると判断された。その種類の隔離層は通常0.001乃至0.1μmの範囲の厚さである。望ましくは、プラスチック材料例えば、PI、PP、PE、PET、PPS、LCP、PEN、PA、PVC、紙、織物あるいは金属フィルムなどから形成されるキャリアーフィルムは、その結果、ホットスタンプリング操作において圧力と温度の下で転写層構造から容易にリリースされ、またスタンプされた材料に正確且つ完全な適用を可能にする。
【0024】
供給ロールで準備され、延々と処理されることができるため、使用されるキャリアー基板は、5乃至700μmの範囲内、望ましくは12乃至50μmの範囲内の厚さの柔軟なフィルム材料であることが特に望ましい。
【0025】
その点に関して、キャリアー基板がロールからロールまでに輸送されて部分的な金属化を形成することが特に有利である。それは、キャリアー基板が第一供給ロールから引き出され、本発明に係る工程に従い、場合によって更なる工程段階に、そして、最終的に更なる処理をする第二供給ロールに巻き付けられることを意味する。例として、スタンピング操作、温度処理または照射操作もさらなる工程段階としてみなすことができる。
【0026】
特に金属層が反射、望ましくは鏡反射性質を有することがさらに好ましい。それは部分的な金属化の装飾効果をさらに高める。
【0027】
金属層がアルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、チタニウム、銀、金の一つあるいは2つ以上のそれらの金属の合金から形成されることが望ましいと判断された。それらの金属は鏡反射金属層を作り出すことができる。
【0028】
望ましくは、金属層は蒸着あるいは陰極スパッタリングによって形成され、その結果、これらの工程が連続的それ故に特に経済的な手順で行われることができる。
【0029】
金属層または層が10乃至100nmの範囲の厚さで形成されることが望ましい。
【0030】
本発明に係る転写フィルムの用途は、データ記録媒体、特に有価ドキュメント例えば身分証明書または通行証、カードまたは紙幣、特に建築あるいは他の技術分野における構造用部品または装飾要素、特に製薬または食糧産業における包装材料、または電気あるいは電子産業における構成部品などに、セキュリティー要素を形成することが理想的である。
【発明の効果】
【0031】
本発明は、キャリアー基板に部分的な金属化を製造することを可能にする。また、本発明は、キャリアー基板と部分的な金属化を有する転写層構造を備える転写フィルムを提供できる。該転写フィルムはデータ記録媒体、特に有価ドキュメントなどにセキュリティー要素を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
図1(a)乃至図3は実施例を用いて、本発明に係る工程及び本発明に係る転写層の構造を説明する。
【0033】
第一層を形成するラッカーは以下の組成を有する。
エタノール 3200g
酢酸エチル 3100g
n−ブタノール 100g
SMA樹脂(分子量約200000、酸価約250) 1000g
アルコール可溶のニトロ・セルロース(規格 30A) 100g
錯塩染料オレンジ 85g
錯塩染料イエロー 38g
アジリジン硬化剤 25g
【0034】
その場合、PETのキャリアー基板1の厚さは25μmであり、第一層2の厚さは1μmである。その場合、第一層2はキャリアー基板1に表面積全体に亘って、あるいは部分的に施されることができる。この場合、第一層2はアジリジンベースの硬化剤を含んでいる。キャリアー基板1と第一層2との間に、ラッカー層と、反射層あるいは例えば磁気特性を持つことができる他の層をさらに設けることが可能である。水溶性の強アルカリ性の印刷用インクは第二層3として第一層2に部分的に施され、該第二層が添加剤として水酸化ナトリウムを含んでおり、厚さが1.5μmである。良好な可視性且つ制御可能な印刷結果を得るために、酸化チタンが印刷用インクに加えられている。
【0035】
第二層を形成する印刷用インクは以下の組成を有する。
水 9200g
メチルセルロース(低分子) 750g
高度に分散したシリカ 150g
二酸化チタン(ルチル型) 2000g
エタノール 1000g
n−ブタノール 600g
ソーダ苛性アルカリ溶液(50パーセント) 2000g
【0036】
厚さ40nmであるアルミニウムの鏡反射金属層4は、第二層3及びそれによって第一層2のカバーされていない領域をカバーする。第二層3の水酸化ナトリウムは、第一層2と第二層3との間に直接接触が発生する領域において第一層2の硬化剤を不活性化する。
【0037】
図1(b) は第二層3及び第一層2の非硬化(non-hardened)領域が水に溶解された後の図1(a)のキャリアー基板1を示す。第二層3によりカバーされていない第一層2の領域のみにおいては、硬化剤が活性化になり、第一層2の硬化をもたらす。その結果、第一層2の硬化されていない領域及び第二層3に設けられた金属層4の領域が取り除かれているが、直接その上に設けられ、正確なレジスタ関係にある金属層4の領域を含むそれらの領域がキャリアー基板1上に残っている。
【0038】
図2(a)は図1(a)に示す水溶性のスチレン無水マレイン酸ベースの第一層2を有するさらなるキャリアー基板1を示しており、該第一層2がキャリアー基板1の表面積全体に施され、アジリジンベースの硬化剤を含んでいる。該第一層2は、有色であり、また透明である。水に不溶の、着色透明な第三層7は第一層2に部分的に施されている。
【0039】
第三層を形成するための水に不溶のラッカーは以下の組成を有する。
メチルエチルケトン 2600g
PMMA(高分子、Tg 120℃) 500g
トルエン 2000g
エステル可溶のニトロ・セルロース(規格 34E) 1000g
シクロヘキサノン 300g
錯塩染料レッド 45g
【0040】
その点に関して、図1(a)に示す強アルカリ性の印刷用インクから形成される水溶性の第二層3は第三層7に部分的に施され、また第三層7にカバーされていない第一層2の領域に部分的に施される。添加剤として、第二層3は水酸化ナトリウムを含んでおり、該水酸化ナトリウムがそれと直接接触する領域において第一層2の硬化剤を不活性化する。しかしながら、第二層3は第三層7に影響を与えないので、その結果第三層7は第二層3の水酸化ナトリウムに障壁層を形成する。クロムの閉鎖式金属層4は第二層3と第一層2の一部と第三層7の一部とをカバーする。
【0041】
図2(b)は第二層3及び第一層2の非硬化領域が水に溶解された後の図2(a)のキャリアー基板1を示す。キャリアー基板1上に残っているのは、金属層4の領域と正確なレジスタ関係にある第一層2の領域と、第三層7のコーティングされていない領域と、金属層4の領域により覆われている第三層7との領域である。個々の層のアレンジメントを変更することにより、広範囲の異なる効果を達成することができる。
【0042】
図3は部分的な金属化を有するホットスタンピングフィルム10を通して見た断面を示す。キャリアーフィルムの形態でキャリアー基板1に配置されたのはワックスのような隔離層5であり、該隔離層5が印刷される材料上のキャリアー基板1から転写層構造9の分離を容易にする。該隔離層5に配置されているのは、無色で透明な不溶性のラッカー層8であり、該ラッカー層8に図1(b)に示すように形成された第一層2及び金属層4の領域が設けられている。接着層6は転写層構造9のキャリアー基板1から離れた側に配置されている。望ましくは、使用される接着剤が熱シール可能な接着剤である。ホットスタンピング操作において、印刷される材料に抗して、ホットスタンピングフィルム10は接着層6と共に温度の影響下で押圧され、また転写層構造9は全体的に転写され、あるいは部分的に、例えばパターン、英数字またはイメージの形で転写される。キャリアー基板1は、ホットスタンピングフィルムがすでに施された材料に転写された転写層構造9の領域と隔離されている。無色で透明なラッカー層8は、今、転写層構造9の転写された領域の表面を形成し、例えば損害あるいは操作の変化からその真下に設けられた層部分を保護する。
【0043】
図に示した層システムは、さらなる透明あるいは不透明な層により補完されることができ、その点に関して、様々な効果を実現することができる。また、キャリアーフィルムに引き続いて、本発明に係る工程の複数の適用も可能であり、添加剤が所定の領域あるいは層面において効力を生じることを防止するために障壁層を意図的に使用することができる。さらに、第一層2は2つ以上の有色の、透明な、可溶性のラッカー層から形成されることができる。また、構造のため不透明な有色の層を使用することも可能であり、あるいは異なる色の金属から部分的に形成される金属層を使用することも可能である。それは、当業者が本発明の概念に包含されていると認識する多くの可能な変化を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1(a)】第一層と第二層と金属層とを有するキャリアー基板の断面図。
【図1(b)】第二層及び第一層の硬化されていない領域が溶解された後の図1(a)のキャリアー基板を示す図。
【図2(a)】第一層と第二層と第三層と金属層とを有するさらなるキャリアー基板の断面図。
【図2(b)】第二層及び第一層の硬化されていない領域が溶解された後の図2(a)のキャリアー基板を示す図。
【図3】部分的な金属化を有するホットスタンピング形式の転写層を通して見た断面図。
【符号の説明】
【0045】
1 キャリアー基板
2 第一層
3 第二層
4 金属層
5 隔離層
6 接着層
7 第三層
9 転写層構造
10 ホットスタンピングフィルム
【図1a】

【図1b】

【図2a】

【図2b】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアー基板(1)に可溶性の第一着色層(2)が少なくとも部分的に設けられ、該可溶性の第一着色層(2)には該キャリアー基板(1)から離れた側にその全面積に亘って金属層(4)が設けられているキャリアー基板(1)に部分的な金属化製造工程であって、
a) 少なくとも一つの可溶性の第二層(3)が第一層(2)と金属層(4)との間に部分的に設けられ、あるいは
b) 少なくとも一つの不溶性の第三層(7)が該第一層(2)の金属層(4)に向けた側に部分的に設けられ、また可溶性の第二層(3)が該第三層(7)の金属層(4)に向けた側に少なくとも部分的に適用され且つ該第三層(7)がない第一層(2)の領域に部分的に適用され、
a)及びb)の場合において、
1. 硬化剤が第一層(2)に加えられ、該第一層(2)の硬化剤を不活性化するようにされた添加剤が第二層(3)に加えられ、場合b)において設けられた少なくとも一つの第三層(7)が該添加剤を通さず、
2. 該第二層(3)の添加剤は、第一層(2)が硬化剤により硬化される前に、該第二層(3)に直接接触するように設けられた第一層(2)の領域において第一層(2)の硬膜剤を不活性化し、
3. 該第二層(3)及び硬化剤が不活性化された第一層(2)の領域は少なくとも1液体により溶解されて取り除かれ、該第二層(3)に直接設けられた領域において金属層(4)が取り除かれることを特徴とする部分的な金属化製造工程。
【請求項2】
前記第一層(2)はアルカリに可溶のラッカーにより、好ましくはポリアクリル酸あるいはスチレン無水マレイン酸に基づいて形成されることを特徴とする請求項1に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項3】
水溶性の染料が前記アルカリに可溶のラッカーに添加されることを特徴とする請求項2記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項4】
前記硬化剤はアジリジンあるいはポリイミンに基づいて選択され、第二層(3)はPH値が11乃至14の範囲を有する水溶性の強アルカリ性の印刷用インクにより形成されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項5】
前記印刷用インクは添加剤である水酸化ナトリウムあるいは水酸化カリウムによりアルカリ性質を有することを特徴とする請求項4に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項6】
前記印刷用インクには着色充てん剤あるいは顔料が混ぜられることを特徴とする請求項4または5に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項7】
硫酸バリウム、酸化チタンまたは硫化亜鉛が前記印刷用インクに加えられることを特徴とする請求項6に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第三層(7)は着色不透明の性質及び/または着色透明の性質を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項9】
前記少なくとも1液体は水を含むあるいは水からなることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項10】
柔軟なフィルム材料はキャリアー基板(1)として使用されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項11】
前記キャリアー基板(1)はロールからロールまでに輸送されて部分的な金属化を形成することを特徴とする請求項10に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項12】
前記金属層(4)は反射、望ましくは鏡反射性質を有することを特徴とする請求項1乃至11のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項13】
前記金属層(4)はアルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、チタニウム、銀、金の一つあるいは2つ以上のそれらの金属の合金から形成されることを特徴とする請求項1乃至12のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項14】
前記金属層(4)は蒸着あるいは陰極スパッタリングにより形成されることを特徴とする請求項1乃至13のいずれか1項に記載の部分的な金属化製造工程。
【請求項15】
転写フィルム、特にホットスタンピングフィルムであって、
キャリアー基板(1)と、
部分的な金属化を有する転写層構造(11)とを備え、
前記キャリアー基板(1)はキャリアーフィルムの形態にあり、
前記転写層構造(11)は少なくとも1つの部分的に配置された着色の第一層(2)と、部分的金属化として該第一層(2)と一致関係で設けられた金属層(4)とを有しており、
該第一層(2)はアジリジンベースあるいはポリイミンベースの硬化剤により硬化され、該第一層(2)がその層厚さに亘って見たとき均一に硬化されていることを特徴とする転写フィルム。
【請求項16】
前記第一層(2)はアルカリに可溶のラッカーにより、好ましくはポリアクリル酸あるいはスチレン無水マレイン酸に基づいて形成されることを特徴とする請求項15に記載の転写フィルム。
【請求項17】
前記アルカリに可溶のラッカーは水溶性の染料を含むことを特徴とする請求項16に記載の転写フィルム。
【請求項18】
前記金属層(4)はアルミニウム、クロム、銅、ニッケル、鉄、チタニウム、銀、金の一つあるいは2つ以上のそれらの金属の合金から形成されることを特徴とする請求項15乃至17のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項19】
前記金属層(4)は反射、望ましくは鏡反射性質を有することを特徴とする請求項16乃至18のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項20】
前記第一層(2)は一つ以上の透明な層から形成されることを特徴とする請求項15乃至19のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項21】
キャリアーフィルム及び/または転写層構造(11)が少なくとも部分的に透明であることを特徴とする請求項15乃至20のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項22】
前記転写層構造(11)は少なくとも1つの着色不透明あるいは着色透明な第三層(7)を有することを特徴とする請求項15乃至21のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項23】
前記キャリアーフィルムと転写層構造(11)との間にワックスのような隔離層(5)が設けられることを特徴とする請求項15乃至22のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項24】
前記転写層構造(11)は接着層(6)を有し、該接着層(6)が転写層構造(11)のキャリアーフィルムから離れた側に設けられることを特徴とする請求項15乃至24のいずれか1項に記載の転写フィルム。
【請求項25】
データキャリアーに、特に有価ドキュメントである身分証明書または通行証、カードまたは紙幣、特に建築あるいは他の技術分野における構造用部品または装飾要素、特に製薬または食糧産業における包装材料、または電気あるいは電子産業における構成部品に、セキュリティー要素を形成するための請求項15乃至24の何れか1項に記載の転写フィルムの用途。


【図3】
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【公表番号】特表2008−504153(P2008−504153A)
【公表日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−518443(P2007−518443)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【国際出願番号】PCT/DE2005/001136
【国際公開番号】WO2006/000201
【国際公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【出願人】(506088850)レオンハード クルツ ゲーエムベーハー ウント コー.カーゲー (15)
【Fターム(参考)】