説明

部分芳香族ポリアミドを備えた組成物

【課題】配合物が熱分解副産物の生成を低減させることにより、金型のガス抜き穴を詰まらせる付着物の急速な堆積が回避される。
【解決手段】耐衝撃性が改良された高温の部分芳香族ポリアミドと、オレフィン族耐衝撃性改良剤と、銅含有安定剤と、二級アリールアミンとを備えた組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の背景)
本発明は、ポリアミドに関し、特に、熱安定化ポリアミド成形用樹脂及び組成の改良に関する。さらには、本発明は、成形品の焼けと変色の傾向を低減させる熱安定化耐衝撃性改良ポリアミド射出成形用配合物を対象とする。本発明は、さらに、ハロゲン化銅熱安定剤を含有する耐衝撃性改良部分芳香族ポリアミドを備えた射出成形用配合物の金型焼けを抑制する方法を対象とするとされる。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリアミドは多数の用途で適切になる熱特性、強度特性及び剛性に関して均衡を示す。その樹脂は、化学的攻撃及び熱攻撃に対する耐性が必要な用途での使用に特に魅力がある。一般に、ナイロンと称する脂肪族ポリアミドは熱処理が容易で、成形技術や紡糸、フィルム押出し等の押出し技術において広く受け入れられている。
【0003】
部分芳香族ポリアミド及びコポリアミドが高温用途での利用のために開発されており、少なくとも約40モル%の部分脂肪族テレフタルアミド単位を備えた結晶質及び半晶質コポリアミドは、その特に優れた熱特性と厳しい環境での性能が知られている。しかしながら、通常、そのようなポリアミドの融点は、例えば、約290℃以上と相対的に高く、一部は、その劣化温度が融点を大きく上回ることがない。したがって、これらのポリアミドを溶融加工及び成形するための要件は、例えば、約260ないし265℃で溶融するナイロン6,6等のポリアミドの場合の要件よりも極めて厳しく複雑である。
【0004】
成形品、押出し異形材製品、積層品等を特に充填剤入りで製造するために高温の部分芳香族ポリアミドを製造するには、型成形または押出し作業時の厳しい剪断応力とともに、樹脂分解温度に非常に近い温度で樹脂を加工する必要がある。様々な用途で、特に厳しい環境下での用途で成形品の特性を維持するだけでなく、その良好な特性を実現するには、良好な樹脂熱安定性が極めて重要である。
【0005】
熱酸化性環境での暴露による劣化に抗して樹脂を安定化させる技術は、十分に発達している。脂肪族ポリアミドの分解は非常に多数の研究の課題であったし、加工時においても使用中においても、その熱酸化性抵抗を向上させるために多数の添加剤が提案されている。安定剤は、脂肪族ポリアミドの鎖をそのまま維持しつつ酸化過程を抑制する働きをする。ハロゲン化銅(I)及びハロゲン化アルカリ金属を備えた安定剤組成物は、業界ではポリアミドとともに使用するためのものとされており、銅塩とジアミンを含んだ錯化合物の使用も明らかにされている。ハロゲン化銅、ハロゲン化アルカリ金属及びリン化合物の組合せを含んだ熱安定剤は、ポリアミド成形用樹脂等での利用に採用されている。
【0006】
高温部分芳香族ポリアミドの脂肪族部分は同じ熱酸化性分解処理を加えられ、脂肪族ポリアミド用の熱安定剤もこれらのポリアミドにとって有用であることが分かっている。しかしながら、一般に、部分芳香族ポリアミドは、より高い加工温度を必要とし、そうでない場合は、より厳しい条件にさらされることになりがちである。脂肪族ポリアミドとともに一般的に採用される安定剤は、このような高温の処理時には部分的に熱分解し、成形品や押出し品の特性や外観に有害な影響を及ぼすガス状産物を形成する可能性がある。相当な劣化が発生する場合は、これらの副産物が成形品内で霧状に形成されていることがある。これらの問題を克服する方法と組成物は、当業界で明らかにされている。
【0007】
部分芳香族ポリアミド成形用樹脂配合物は、耐衝撃性改良剤、流動向上剤等の樹脂成分をさらに含んでもよい。これらの目的で広く商業的に利用されている改良剤には、ポリオレフィンや改質ポリオレフィンがある。ポリオレフィン改良剤は、部分芳香族ポリアミドを成形する際に一般的に採用される高温にさらされた時に架橋してひどく劣化するとともに、熱酸化性攻撃に敏感であることが知られている。さらに、ポリアミドとともに一般的に使用される熱安定剤内に見られるような銅化合物は、オレフィンを基剤とする樹脂改良剤の熱分解を促進する傾向がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
重要なことに、複雑な細部の射出成形には、多数の小さく狭い空間を有する固定側金型を使用する必要がある。これらの金型には、溶融樹脂によって移動させられた空気、同伴ガス及び同伴ガス状分解産物を上記の金型キャビティ領域から逃がして溶融樹脂が金型をくまなく埋めるよう配置されたガス抜き穴が設けられている。熱分解副産物は、少量のその他の揮発性成分、例えば、加工助剤、安定剤または低分子量固体とともに、脱出ガスに載せられ、ガス抜き穴に搬送され、これら通路内の冷却器表面上に付着する。銅安定化高温ポリアミド配合物の成形時には、この問題がオレフィン族改良剤の存在によって特に悪化することは明らかである。
【0009】
銅安定化耐衝撃性改良ポリアミドを使用する拡張された成形作業時に、これらの付着物は時間が経てば堆積し、通風路内に、ガス抜き穴を詰まらせたり塞いだりする固体状の処理し難い残渣を形成する。それにより、熱ガスや分解副産物の逃げが妨げられ、成形品に、傷、ボイド、及び、変色や“焼け”やその他の容認できない表面上の欠陥等の目に見える欠陥が発生する。そのため、金型を洗浄している間、成形作業を中止しなければならない。また、これらのポリアミド配合物を成形する際に生成された手におえず処置し難い残渣は、キャビティ表面を傷つけることなく除去することが難しいので、費用のかかる金型キャビティ交換やその他の修理が必要になる場合がある。
【0010】
ガス抜き穴を詰らせる容認できないレベルの付着物を生成することなく射出成形されるような銅安定化耐衝撃性改良高温ポリアミド樹脂配合物を提供する方法と組成が、樹脂成形技術には明らかに必要とされている。そのようなポリアミド成形用配合物の改良により、金型の洗浄間隔を大幅に延ばすことによってコストの大幅な低下が実現され、成形作業の頻繁な停止の必要をなくすことになる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、高温部分芳香族ポリアミドを含んだ銅安定化耐衝撃性改良ポリアミド成形用樹脂配合物を提供する方法と、成形品の焼けと変色の傾向を低減させる改良型耐衝撃性改良ポリアミド射出成形用樹脂配合物を対象とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかる射出成形用配合物は、金型付着物の堆積率を減少させるとともに、優れた熱安定性を示すことによって、金型の洗浄間隔を延長させるとともに焼けや変色を起こした成形製品の発生を減少させる。本発明の配合物は、厳しい環境下や高温での利用拡大を目的とし、化学的及び熱的攻撃に対する抵抗が重要な考慮事項である射出成形製品や押出し製品の製造時に特に有用である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の耐衝撃性改良ポリアミド射出成形用樹脂及び組成物は、部分芳香族ポリアミドと、ポリオレフィンを基剤とする耐衝撃性改良剤と、銅含有安定剤組成物と、ヒンダードフェノール及び二級アリールアミンから選択された低揮発性高分子量有機化合物とを備えている。
【0014】
本発明の実施に有用な部分芳香族ポリアミドは、1つ以上の脂肪族ジアミンと1つ以上の芳香族ジカルボン酸とから誘導された単位を、そのような単位を含有するコポリマーも含め、含有している。さらに特に、本発明の実施時の使用に適したポリアミドには、高い加工温度を必要とし従って劣化なく溶融加工することが難しい、様々な線状熱可塑性高温部分芳香族ポリアミド及びそのコポリマー類似物や、たびたび称されている部分芳香族ナイロンがある。結晶質または半晶質のポリアミドが好ましく、特に好ましいのは、脂肪族ジアミンのテレフタルアミドを備えた結晶質または半晶質の高温コポリアミドである。そのようなコポリアミドは、通常、構造単位として、炭化水素部分に結合された1つ以上のC1-C4アルキル置換基を有するジアミンも含め、ヘキサメチレンジアミン等の1つ以上のC4-C14脂肪族ジアミンのテレフタルアミドを備えている。テレフタルアミド単位に加え、これらのコポリアミドは、そのような脂肪族ジアミンからなる1つ以上の別のジアミド、例えば、芳香族ジカルボン酸から誘導されたジアミドあるいはイソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の関連化合物と、脂肪族ジアミン及びC4-C14脂肪族ジカルボン酸から誘導されたジアミドあるいはアジピン酸、セバシン酸、シクロヘキサンジカルボン酸及び類似のジカルボン酸から誘導されたジアミド単位などの関連化合物とをさらに備えていてもよい。ポリテレフタルアミドの結晶化可能性は、例えば、イソフタルアミド単位等のそれ以外の構造単位の存在によって影響を受けることがあり、そのような単位が高濃度でコポリマー内に存在することにより、ポリテレフタルアミドが非結晶化可能になって非晶質になるかもしれない。したがって、ポリアミド内の高度の結晶性と高速結晶化が重要な考慮事項である場合には、結晶化可能性を減少させることが分かっているジアミド単位をさらに使用することを避けるかあるいはそのような単位を結晶化を妨げない濃度で使用することが望ましい。
【0015】
テレフタルアミド単位を備えた様々なポリアミドが当業界では公知であり、ヘキサメチレンテレフタルアミド単位とヘキサメチレンアジパミド単位との、場合によってはヘキサメチレンイソフタルアミド単位をも含めた、組合せを備えたコポリアミドが公知である。本発明の実施時の使用に特に望ましいのは、少なくとも40モル%のヘキサメチレンテレフタルアミド単位を備えたコポリアミドであり、残りは、ヘキサメチレンアジパミド単位単独かあるいはそれと約30モル%までのヘキサメチレンイソフタルアミド単位との組合せである。また、このような目的にとって有用なのは、ヘキサメチレンジアミン、2−メチル−ペンタメチレンジアミン等の2つ以上のジアミンからなるテレフタルアミドを備えた結晶化可能なポリアミドである。
【0016】
さらに詳細には、本発明の組成物のポリアミド成分は、さらに以下の構造式で表現されるとされている少なくとも約40モル%、好ましくは約40ないし100モル%の反復ジアミンテレフタルアミド単位を備えた結晶化可能ポリアミドであってもよい。
【0017】
【化2】

但し、Rは少なくとも1つの脂肪族ハイドロカルビル遊離基を備えている。
【0018】
好ましくは、上記の式の脂肪族遊離基Rは、少なくとも1つのC4-C14脂肪族ハイドロカルビル遊離基、特に、約4個ないし約14個の炭素原子を有する少なくとも1つの直鎖あるいは枝分れあるいは環状の、置換あるいは非置換脂肪族遊離基を備えている。そのような遊離基を備えたポリアミドは、溶融温度と熱劣化温度を射出成形作業時及び押出し作業時の溶融加工と製造にとって十分に適したものにするとともに、良好な結晶性と望ましい高温特性を現す。適切な脂肪族遊離基の具体例としては、テトラメチレン、ヘキサメチレン、ドデカメチレン等、さらに、それらのアルキル置換類似物である2−メチルペンタメチレン、2,4−ジメチルヘキサメチレン等、環状類似物であるp−シクロヘキシル等がある。より好ましくは、上記の式のRは、ヘキサメチレン遊離基を単独または4個ないし14個の炭素原子脂肪族遊離基との混合物の形で備えている。好ましいポリアミド成分は、テレフタルアミド単位が高含有率である結果として少なくとも約270℃の融点を有しており、さらに好ましいのは、約290℃ないし約330℃で溶融するポリアミド成分である。
【0019】
本発明での使用に適したポリアミドは、特に、下記に示す構造式A、B、Cに相当する反復単位をAを約40ないし約100モル%、Bを0ないし約35モル%、Cを約0ないし約60モル%の比率で備えた、高速または中速の結晶化速度の結晶性あるいは半晶質部分芳香族ポリアミドとしてもよい。
【0020】
【化3】

【0021】
上記の式において、Rは、本文で上述した少なくとも1つの脂肪族ハイドロカルビル遊離基を備え、4個ないし14個の炭素原子脂肪族遊離基の混合物を表現しており、単位A、B、Cのモル比は約40ないし100対35ないし0対60ないし0の範囲内にある。
【0022】
そのようなポリアミドの中でより好ましいのは、単位A、B、Cのモル比が約40ないし90対35ないし0対50ないし5の範囲内にあるものであり、さらに好ましいのは、約40ないし70対30ないし0対50ないし5の範囲内にあるものであって、その理由は、そのような組成が優れた熱及び機械的特性を示すからである。そのようなポリアミドは、通常、約280ないし約350℃、好ましくは約290ないし約330℃の融点と、約80ないし約130℃、好ましくは約90ないし約130℃のガラス転移温度(Tg)と、約0.7ないし約1.4dl/gの範囲内にほぼ入る、好ましくは成形品の特性及び成形容易性の観点から約0.8ないし約1.2dl/gの範囲内のインヘレント粘度を有している。
【0023】
そのようなポリアミドの中で特に好ましいのは、上述の式のRがヘキサメチレンを備えているものである。また、本発明の組成物のポリアミド成分として非常に適しているのは、上記に示した単位A、B、Cのうちの2つを備えた、例えば、A:B:Cのモル比が30〜70:30〜0:55〜0の範囲内のものを備えた、例えば、45:0:55、60:0:40、65:0:35、65:25:10、55:0:45の比の単位A、B、Cを含有するポリアミドも含めた、ポリアミドである。一方、わずかな量のイソフタルアミド成分Bを、例えば、50:5:45、40:5:55、70:30:0等のモル比で有するターポリマーは、低溶融温度に遭遇するような用途の場合に特に望ましいことが分かる。
【0024】
テレフタルアミド単位を備えた他のコポリマーも有用であることが分かる。例えば、テレフタルアミド単位とラクタムから誘導された単位とを備えたコポリマーであり、例えば、ヘキサメチレンテレフタルアミドとカプロラクタムからなるコポリマー、ヘキサメチレンテレフタルアミドとヘキサメチレンアジパミドとカプロラクタムから誘導された単位とからなるターポリマー等である。
【0025】
適切な部分芳香族ポリアミド及びコポリアミド樹脂は、例えば、米国特許4,831,108、5,112,685、4,163,101、RE34,447及び米国特許5,288,793、5,378,800、5,322,923、5,218,082に詳しく記載されている。部分芳香族ポリアミドは、例えば、米国特許4,603,193、RE34,447及び5,387,645に記載された連続及びバッチ処理等の技術に記載された公知の処理を用いて容易に作成される。ASTM D5336-93に記載の“ポリフタルアミド”という言葉は、テレフタルアミド単位とイソフタルアミド単位を化合した含有量が少なくとも60モル%であるポリアミドのために用意されている。しかしながら、業界で一般的に使用されることにより、その言葉は、そのような単位の量やその単位がテレフタルアミドやイソフタルアミドであるか否かにかかわらず、フタルアミド単位を含むどんなポリアミドにも幅広く関連付けられるようになった。
【0026】
ポリアミドの分子量は、一般に、樹脂業界において広く公知の慣行に従って、想定される特定の最終用途の要件とその製造用に考えている処理方法の要件を満たすように設定される。例えば、繊維及びフィラメント用途を考える場合に繊維用銘柄のポリアミドは最良に適しているが、業界が押出し用銘柄や射出成形用銘柄として同定するポリアミドはそれらの用途に採用されることになる。適切な樹脂は、濃度0.4g/dlの60対40のフェノールとテトラクロロエチレン(TCE)の混合物において30℃で測定した場合に、約0.6を超える、好ましくは約0.7を超える、より好ましくは約0.8を超えるインヘレント粘度(IV)を一般に有しているとしてもよい。分子量に関するこれらの組成物内での使用に適する特定の上限はないが、2.0ものあるいはそれさえ超える大きさのインヘレント粘度を有する非常に高い分子量のポリアミドは、熱処理をするのが極めて難しく、したがって好ましくない。
【0027】
本発明にかかる射出成形用配合物は、ポリオレフィンを基剤とする少なくとも1つの耐衝撃性改良剤をさらに備えている。
【0028】
ポリアミドとの使用のために本技術で一般的に採用される耐衝撃性改良剤は、総じてゴム状ポリオレフィン及び改質ポリオレフィンとすることができ、より詳しくは官能性付与ポリエチレンとしてもよい。官能性を付与されたブロックコポリマー、例えば、重合化されたスチレンの含量が約5ないし約50重量%、好ましくは約10ないし約35重量%であるスチレンブロックとオレフィン系ブロックを備えた無水マレイン酸改質ブロックコポリマーは、望ましい靭性の向上を達成する。
【0029】
改質ブロックコポリマーのゴムブロックは、エチレン/プロピレンポリマーブロック、エチレン/ブチレンポリマーブロックまたはエチレン/ペンチレンポリマーブロック、あるいはそれらの組合せを備えていてもよい。これらブロック内のエチレンとプロピレン、ブチレンまたはペンチレンとの比率は広く変更可能である。また、そのようなブロックは、濃度の上昇が官能性付与ブロックコポリマーの熱安定性を不適当にするので、わずかな量のエチレン不飽和、好ましくは高々約15重量%の不飽和を含んでいる場合がある。
【0030】
官能性付与ブロックコポリマーは、約0.1ないし約10重量%、好ましくは約0.5ないし約5重量%の無水琥珀酸ペンダント基を適切に備えている。さらに低い濃度を採用してもよいが、低濃度は改質用成分のポリフタルアミド成分への不適切な取り込みに通じる恐れがある。約5重量%を超える濃度は総じて明らかな利益をもたらさず、したがって好ましくない。これらのペンダント基は、プロピレン基、ブチレン基またはペンチレン基からなる1個以上の第二級または第三級炭素に、あるいはスチレン基からなるベンジル炭素に主として結合される。好ましくは、ブロックコポリマーは、スチレン、αメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレンなどの1つ以上の重合可能なビニル芳香族モノマーと、これと共重合可能な1つ以上の共役ジエンモノマーとを備えた水素化ブロックコポリマーである。適切なコポリマーには、元の不飽和分の約10%までの残留不飽和分を有するよう水素化され、スチレンと1,3−ブタジエンまたはイソプレンとからなるブロックコポリマーがある。そのような水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマーにおいて、ゴムブロックは、未水素化コポリマー内のジエンの1,2付加及び1,4付加の相対的な濃度によって変動するエチレン単位とブチレン単位の比率で、エチレン/ブチレンポリマーブロックを備えている。また、無水琥珀酸ペンダント基がそのような水素化ブロックコポリマーの無水マレイン酸との反応によって生じることが好ましい。これら及びその他の適切な官能性付与ゴム状ブロックコポリマー耐衝撃性改良剤と、その作成方法は、本技術に記載されている。
【0031】
本発明にかかる使用に適した好ましい官能性付与ゴム状耐衝撃性改良剤の具体例は、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Company)からKraton(登録商標)FG1901Xとして市販され、無水琥珀酸ペンダント基を有するスチレン/エチレン/ブチレン−スチレンブロックコポリマーである。また、改良剤は、無水マレイン酸をグラフトした水素化スチレン−ブタジエンブロックコポリマーとして、あるいは、マレイン酸化SEBSとすることもできる。この製品は、約29重量%の重合スチレンと約2重量%の無水琥珀酸ペンダント基を含有し、その水素化重合ブタジエンブロックは、約−42℃のガラス転移温度を有している。約270℃と約315℃との間で、熱重量分析によって決まるこの材料の熱劣化が開始し、製造者の書類(1987年6月22日付MSDS 2,898-1)には、処理時に温度が華氏550度(287℃)を超えてはいけないことが記述されている。
【0032】
官能性付与ブロックコポリマーは、あらゆる適切な技術で作成することが可能である。従来技術に開示されたそのような方法の1つによれば、約7ないし約100%の1,2−微細構造を有するスチレン−ブタジエンブロックコポリマーが、スチレン及び1,3−ブタジエンを逐次あるいは段階的に増加するように付加したモノマーと重合されることによって、あるいは、カップリング技術によって作成される。好ましくは、モノマーは、約10ないし約50、より好ましくは約10ないし約35重量%の重合スチレンをブロックコポリマー内に供給するように利用される。そのようなコポリマーの水素化は、公知の技術、例えば、ラネーニッケル、貴金属または可溶性遷移金属触媒が存在するシクロヘキサン等の炭化水素溶媒にブロックコポリマーを溶解させる水素化によって行うことができる。水素化を行うことにより、少量、例えば、元の含有量の約10%までの残留不飽和が水素化後の生成物に残るが、ブロックコポリマーのジエンブロック中の残留不飽和がほぼなくなる。それにより、スチレンブロック及びエチレン/ブチレンブロックを備えた水素化生成物がグラフトされ、無水マレイン酸との反応によって約0.5ないし約5重量%の無水琥珀酸ペンダント基が発生する。好ましくは、この反応は、遊離基開始剤を用いて行われる。グラフト反応は、溶液中あるいは溶融生成物中で行うことができる。同様の技術は、スチレン−イソプレンまたはスチレン−ブタジエン−イソプレンコポリマーまたはターポリマーの作成と水素化のため、及び、水素化ポリマーのグラフト化のために利用可能である。無水琥珀酸ペンダント基がブロックコポリマーのスチレン単位のベンジル炭素に主として結合される方法等、その他の適切な方法も、従来技術に開示されている。
【0033】
本発明の実施時に使用可能な別の官能性付与ゴム状耐衝撃性改良剤としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸やそれらのエステル等の適切な反応性カルボン酸やそれらの誘導体とグラフトまたは共重合されることによって反応的官能性が付与され、好ましくはASTM D-638に従って決まる約50,000psiまでの引張弾性率を有するようなエチレンポリマー、エチレン−高次α−オレフィンポリマー、エチレン−高次α−オレフィン−ジエンポリマー等がある。適切な高次α−オレフィンには、例えば、プロピレン、ブテン−1、ヘキサン−1、スチレン等のC3ないしC8α−オレフィンがあり、好ましくはプロピレンである。あるいは、そのような単位を備えた構造を有するコポリマーは、重合された1,3ジエンモノマーの適切なホモポリマー及びコポリマーの水素化によっても得られる。例えば、様々な濃度のペンダントビニル単位を有するポリブタジエンは、入手が容易であり、水素化されてエチレン−ブテンコポリマー構造を提供することができる。同様に、ポリイソプレンの水素化を利用することにより、同等のエチレン−イソブチレンコポリマーを提供することができる。
【0034】
エチレン−α−オレフィン−ジエンターポリマーの作成に使用する適切なジエンは、4ないし約24個の炭素原子を有する非共役ジエンであり、その例としては、1,4−ヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネン等のアルキリデンノルボルネンがある。エチレン−高次α−オレフィンコポリマーゴム内のエチレン単位及び高次α−オレフィン単位のモル分率は、総体的に約40:60ないし約95:5の範囲内にある。これらのうち、約70ないし約95モル%のエチレン単位及び約5ないし約30モル%のプロピレン単位を有するエチレン−プロピレンコポリマーが好ましい。重合化されたジエンモノマーを備えたターポリマーにおいて、ジエン単位の含有量は、約10モル%までの、好ましくは約1ないし約5モル%の範囲内にあることができる。また、それぞれエチレン及び高次α−オレフィンから選択された1つ以上のモノマーから形成された2つ以上のポリマーブロックを備えた対応するブロックコポリマーが適切である。官能性付与ポリオレフィンは、概ね、約0.1ないし約10重量%の官能基をさらに備えている。適切な商業的に製造されている官能性付与ポリオレフィンの具体例としては、エクソン・ケミカル社(Exxon Chemical company)からEXXELOR(登録商標)VA 1801として同定され、約0.6重量%の無水琥珀酸ペンダント基を備えた無水マレイン酸−官能性付与エチレン−プロピレンコポリマーゴムや、ユニロイヤル社(Uniroyal Company)からROYALTUF 465として同定され、約1重量%の無水琥珀酸ペンダント基を備えた無水マレイン酸−官能性付与エチレン−プロピレン−ジエンモノマーターポリマーゴムがある。
【0035】
本発明の配合物は、合計100重量部の安定化ポリアミド成分を基準にして、約50重量部までの、好ましくは約5ないし約50重量部の改良剤成分を備えている。配合物は、代替物では、50ないし95wt%のポリフタルアミド成分と約50ないし約5wt%の上述の改良剤成分とを備えるものと説明することもできる。
【0036】
一般的に言って、約2.5から約10wt%までの低濃度の官能性付与ポリオレフィンでは、室温での耐衝撃特性向上が見られるが、官能性付与ポリオレフィン濃度が約15ないし30wt%の濃度までさらに上昇すると、高延性で非常に高い耐衝撃性の樹脂配合物を生成することができる。官能性付与ゴム状ポリオレフィンの濃度がさらに上昇すると、弾性特性に表される配合物の剛性の著しい低下があり、この剛性の損失は、引張特性や靭性等の他の機械的特性の低下とともに、機械的特性の優れた特性バランスを維持しながら延性を向上させるという目標に失敗することになる。しかしながら、極低温での機械的特性維持が重要である用途や、特に良好な低温延性と耐衝撃性が重要である用途におけるような特定目的で使用する場合は、25ないし30wt%もの高濃度の耐衝撃性改良剤を有する配合物は、それに伴う靭性の損失があるとしても望ましい。
【0037】
改良剤成分の相対的な量は、低コストで耐衝撃性、強度、加工性及び剛性の望ましい組合せを達成するように設定される。一般に、採用される量は望ましい耐衝撃性の向上をもたらすのに必要な最低量に設定され、好ましくは、配合物の約2.5ないし約40wt%の範囲内にある。より多量の改良剤を使用することもあるが、耐衝撃性のさらなる向上がほとんど実現せず、したがって、そのようなより高い濃度を使用することにより、コストを最小限に抑えるという目的に失敗することになる。高い引張強度と曲げ弾性率の望ましい組合せを有する最大耐衝撃性強度にとって、好ましい比率は、全樹脂成分重量あたりで、約70ないし約85wt%のポリフタルアミド成分と約10ないし約30wt%の官能性付与ポリオレフィン改良剤である。
【0038】
高い引張強度と曲げ弾性率の望ましい組合せを有する最大耐衝撃性強度にとって、好ましい比率は、全樹脂成分重量あたりで、約70ないし約85wt%のポリフタルアミド成分と約10ないし約30wt%の官能性付与ポリオレフィン改良剤である。
【0039】
本発明の実施にかかるポリアミド成形用樹脂配合物には、銅含有安定剤がさらに含まれる。この目的のために使用される銅含有安定剤は、ポリアミドに可溶の銅化合物とハロゲン化アルカリ金属とを備えるものとしてさらに特徴付けることができる。より好ましくは、安定剤は、銅(I)塩、例えば、酢酸第一銅、ステアリン酸第一銅、アセチルアセトン酸銅、ハロゲン化第一銅等の有機錯化合物と、ハロゲン化アルカリ金属である。好ましくは、安定剤は、ヨウ化銅及び臭化銅から選択されたハロゲン化銅と、リチウム、ナトリウム及びポタシウムのヨウ化物及び臭化物からなる群から選択されたハロゲン化アルカリ金属である。ヨウ化銅(I)とヨウ化ポタシウムを備えた安定化配合物は、本発明の実施に特に有用である。
【0040】
銅含有安定剤の量は、存在するポリアミドに対して100万分の約50ないし約1000重量部(ppm)の濃度になるよう当業界の慣例にしたがって設定される。ハロゲン化アルカリ金属のハロゲン化銅(I)に対する重量比は、好ましくは約2.5:1ないし約20:1の範囲内にあり、最も好ましくは約8:1ないし約10:1の範囲内にある。一般に、安定化ポリアミド内での銅化合物とハロゲン化アルカリ金属とを組み合わせた重量は、ポリアミドと銅含有安定剤とを組み合わせた重量を基準にして、総計約0.01ないし約2.5wt%、好ましくは約0.1ないし約1.5wt%に達する。
【0041】
本発明のポリアミド成形用樹脂配合物は、この配合物の射出成形時に金型付着物の堆積率を低減できる低揮発性を有する高分子量有機化合物をさらに備えている。好ましくは、高分子量有機化合物は、二級アリールアミンとヒンダードフェノールからなる群から選択され、少なくとも260g/molの分子量と、少なくとも290℃、より好ましくは少なくとも300℃、最も好ましくは少なくとも310℃の熱重量分析(TGA)によって決められた10%減量温度とを有しているものとさらに特徴付けることができる。本発明の目的のため、TGA減量は、空気パージ流内で10℃/min.の加熱速度と0.8mL/sの適切な流量とを使用して、ASTM D3850-94にしたがって決定される。
【0042】
二級アリールアミンとは、窒素原子に化学結合され、少なくとも1つの、好ましくは両方の置換基が芳香族である2つの置換基を含有するアミン化合物を意味する。好ましくは、例えば、フェニル基、ナフチル基またはヘテロ芳香族基等の芳香族置換基の少なくとも1つは、少なくとも1つの置換基、好ましくは1個ないし20個の炭素原子を含む少なくとも1つの置換基と置換される。本発明の実施での使用に好ましい二級アリールアミンは、少なくとも約260の分子量と、少なくとも290℃、好ましくは少なくとも300℃、最も好ましくは少なくとも310℃の10%TGA減量温度によって特徴付けられる低揮発性とを有するものである。
【0043】
適切な二級アリールアミンの例としては、コネチカット州ミドルベリーのユニロイヤル・ケミカル社(Uniroyal Chemical Company)からNaugard 445の名で市販されている4,4'ジ(α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミンや、ユニロイヤル・ケミカル社からAminoxの名で市販され、ジフェニルアミンのアセトンとの反応による二級アリールアミン縮合生成物や、、ユニロイヤル・ケミカル社からNaugard SAの名で市販されているパラ−(パラトルエンスルフォニルアミド)ジフェニルアミンがある。他の適切な二級アリールアミンとしては、インドのカルカッタのICIラバーケミカルズ社(ICI Rubber Chemicals)から入手可能なN,N'−ジ−(2−ナフチル)−p−フェニレンジアミンがある。
【0044】
ヒンダードフェノールとは、少なくとも1つのフェノール基を含有し、その芳香族部分が置換基としてフェノール性ヒドロキシル基を有する炭素に直接隣接する少なくとも1つの位置、好ましくは両方の位置で置換される有機化合物を意味する。ヒドロキシル基に隣接する置換基は、1個ないし10個の炭素原子を有するアルキル基から適切に選択されたアルキル遊離基であり、好ましくは、三級ブチル基である。ヒンダードフェノールの分子量は、適切なのは、少なくとも約260、好ましくは少なくとも約500、より好ましくは少なくとも約600である。最も好ましいのは、低揮発性、特に配合物の成形に使用される加工温度で低揮発性を有するヒンダードフェノールであり、少なくとも290℃、より好ましくは少なくとも300℃、最も好ましくは少なくとも310℃の10%TGA減量温度を有するものとしてさらに特徴付けることもできる。
【0045】
適切なヒンダードフェノール化合物には、例えば、ニューヨーク州タリータウンのチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(CIBA Specialty Chemicals)からIrganox 1010の名で市販されているテトラキス(メチレン(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンニメート))メタンや、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社からIrganox 1098の名で入手可能なN,N'−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナマミド)がある。他の適切なヒンダードフェノールとしては、それぞれチバ・スペシャルティ・ケミカルズ社からIrganox 1330及び259の名で入手可能な1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼンと1,6−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナメート)がある。
【0046】
成形用樹脂配合物に使用されるヒンダードフェノールまたは二級アリールアミンの量は、金型付着物の堆積率を低減して成形時の焼けや変色を抑制するのに有効な量である。適切には、その量は、組成物内に存在するポリアミドの重量を基準として、約0.01ないし3.0wt%、好ましくは約0.1ないし約2.0wt%の範囲内にある。
【0047】
本発明の安定化組成物は、様々な化学的物理的特性を向上または改良するように約60wt%までの様々な添加剤を含有するようにさらに配合することもできる。そのような添加物の例としては、難燃剤、さらに別の安定剤、酸化防止剤や、テフロン(登録商標)、ポリエチレン(PE)ワックス等の加工助剤、着色剤、充填剤、補強剤がある。補強剤として適切なものは、ガラス繊維と、グラファイト繊維などの炭素繊維である。金属繊維、アルミナ繊維、ケイ酸アルミニウム繊維、酸化アルミニウム繊維、ロックウォール繊維等も特定の用途には有用なことがある。代表的な充填剤材料には、ケイ酸カルシウム、シリカ、白土、タルク、雲母、カーボンブラック、二酸化チタン、ケイ灰石、ポリテトラフルオロエチレン、グラファイト、アルミナ三水和物、炭酸ナトリウムアルミニウム、重晶石等の粒子状物及び粉末状物がある。そのような添加剤の適切な種類と濃度は、加工技術と結果得られる製品の最終用途に依存し、当業者が決定することができる。
【0048】
本発明の組成物は、射出成形品の製造に使用されてもよいし、繊維の溶融紡糸、板材、管類またはフィルムの押出し成形等、製造技術においてよく知られ広く実践されている様々な処理や方法を用いて製品に製造されてもよい。また、本組成物は、複合構造または積層構造用の基質材料や結合剤としても使用可能であり、厳しい環境下での使用を目的とする成形品を提供する際に使用するための補強充填剤等、5ないし60wt%の1つ以上の充填剤とさらに配合することも可能である。
【0049】
本発明にかかる配合物は、樹脂配合技術においてよく知られ一般的に使用されている様々な配合方法を利用して配合してもよい。好都合なことに、ポリアミドと安定剤は、そして、あるとすれば、充填剤と改質成分も、粉末状、タブレット状またはその他の形状で使用することができる。好ましくは、構成成分は、高剪断ミキサ、例えば、二軸スクリュー押出し機を用いて樹脂成分を溶融状態にして望ましい均一の配合物を得るのに有効な温度で溶融配合される。構成成分は、混合を容易にするため、最初に、粉末やタブレットなどの固体形状で混合された後、溶融配合されてもよい。粒子、繊維、その他の添加剤を1つ以上の構成成分に取り込んだ後、残る成分と混合してもよいし、従来のドライブレンド方法を用いて構成成分を粉末状またはタブレット状で物理的に混合した後、押出し配合してもよい。配合押出し機内で樹脂を可塑化することや、当業界で一般的に実践されているように、押出し機のポートを介して溶融組成物に添加剤、粒子あるいは繊維を送給することは、本発明の組成物を配合するのに有用なことがある。
【0050】
本発明は、その特定の実施形態を示すために提供する以下の実施例を考察することでさらによく理解できるであろう。
【0051】
(実施例)
ポリアミド作成
下記の実施例に用いられるポリアミドを以下に要約する。以下の要約においては、ポリアミド作成に有用な連続工程が概略的に説明される。
【0052】
大型で、蒸気熱式、ステンレス鋼の、攪拌塩反応器に適時にモノマー及び水を充填して反応物の水性混合物を形成することにより、最終的なポリマーは以下に示すような適切なモル比を有する。ジアミン全体(ヘキサメチレンジアミン)の酸全体に対するモル比は、アミンの豊富なポリアミドを作成するか又はアミンの乏しいポリアミドを作成するかによってそれぞれ適宜選択されるが、キャッピング剤として適量の酢酸を加えることにより特定の濃度のアミン末端基を得るようにしても良い。重合は、揮発性物質を再生処理することなくおこなわれるので、過剰な反応物、特に酢酸やジアミンを用いて揮発による損失を埋め合わせる。触媒用の次亜リン酸ナトリウム又はホスホン酸が、最終的なポリマー中に400ppm(NaH2PO3)又は125ppm(H3PO3)のリンを存在させるような濃度の固溶体或いは溶液の何れかとして炉の中に加えられ、その後、炉は閉じられて窒素で洗浄され、窒素により約2.8kg/cm2 (40psig)まで加圧され、そして、約120℃まで加熱された後、その温度のまま保たれる。
【0053】
塩反応器の内容物は、リサーチコントロールバルブ(Research Control Valve)が取り付けられた、ジャケット付、油熱式の濃縮装置に連続的にポンプにより送られて揮発性物質が放出され、炉の内容物が約220℃ないし約225℃まで加熱される一方、11.3kg/cm2 ないし13.1kg/cm2(160psigないし185psig)の圧力下に維持される。凝縮装置から流出する反応混合物の水分は、約15分の滞留時間で約15wt%未満に減少する。反応混合物は凝縮装置から、並べて配置された二つの、油熱式、ステンレス鋼の予熱器に連続的にポンプで送られる。第1の予熱器の出口での溶解温度は約279℃ないし約290℃に、第2の予熱器の溶解温度は約282℃ないし約293℃にそれぞれ選択可能に保たれる。予熱器内の圧力を127kg/cm2(1800psig)に保つためにリサーチコントロールバルブが用いられる。
【0054】
反応混合物は予熱器を出ると連続的にリサーチコントロールバルブを通過し、約7kg/cm2(100psig)の圧力下にある、ジャケット付管型反応装置内に送られ、熱交換用の流動体を加熱ジャケット中に循環させることにより壁の温度が約325℃ないし345℃まで加熱される。反応混合物は、別のリサーチコントロールバルブを通過し、溶解温度が310℃以上に保たれた反応装置を流出した後、ウェルナー・アンド・プフライデラー社(Werner and Pfleiderer Corporation)の、ガス抜き穴を有する、二軸スクリュー押出し機に、下流(金型の端部)ポートでのガス抜き穴の真空を利用して導入される。最終的なポリマーは、約5.8kg/hrないし約6.4kg/hrの押出し量で、ストランドダイから水槽内に押し出され、その後刻まれてタブレット化される。
【0055】
ポリアミド樹脂の組成物及び性質を以下に要約する。ジカルボン酸単位TA、IA、及びAA(テレフタリル、イソフタリル、アジピル)のモル比は、各樹脂、樹脂のI.V.(インヘレント粘度)及びTgに対して分析的に決定される酸及びアミンの末端基の量と共に示される。使用されるジアミンはヘキサメチレンジアミンである。
【0056】
試験手順
成形品は、そのインヘレント粘度、酸及びアミンの末端基が分析された後、機械試験及び熱酸化エージングを受けた。
【0057】
インヘレント粘度決定: 0.100gのポリマーを25mlの60:40のフェノール:テトラクロロエタン中に、120℃ないし130℃で溶解させた。この溶解の流下時間は、30℃に一定に保たれた槽内に浸したキャノン社(Cannon)の1C型ウッベローデ粘度計を用いて決定された。
【0058】
dl/g単位のインヘレント粘度は次のように算出される。
【0059】
インヘレント粘度=(In(溶液流下時間/溶媒流下時間))/濃度
酸の末端基濃度は、0.2gのポリマーをca. 6mlのo-クレゾールに100℃で溶解した後、冷却し、4mlないし6mlのベンジルアルコール及び50μlのホルムアルデヒドを高分子溶液に加えて、メチルアルコール中の0.1 N KОHを用いて電位差滴定で滴定をおこなうことにより決定された。
【0060】
アミンの末端基濃度は、0.4gのポリマーをca. 12mlの六ふっ化イソプロピルアルコールに50℃で溶解した後、冷却し、0.1mlの水を加えて、水中の0.1 N HCIを用いて電位差滴定で滴定をおこなうことにより決定された。
【0061】
HDT(加熱たわみ温度(heat distortion temperature))は、ASTM D−648法Aに従って決定された。
【0062】
引張特性の保持(引張損失50%所要時間): 引張試験は標準的なASTM試験手順に従っておこなわれた。熱酸化エージングとして、五つの引張試験用標本に対し、示したような温度で長さの異なる5つないし7つの期間、空気循環式オーブンにおいてエージングが施された。引張試験用標本には、その後、室温で引張試験がおこなわれ、そのデータは3次方程式にあてはめらて分析された。50%の引張強さの損失にかかる時間単位の所要時間は補間法により決定された。
【0063】
伸び保持率(%): 引張試験用バーには、155℃で1000時間(空気循環式オーブンを用いて)、エージングが施された。破損時の伸びはASTM D638−97により決定された後、エージングが施されなかった標本の破損時の伸びの値と比較され、%保持率として算出された。
【0064】
焼けまでのショット数: 標準的な成形条件下でおこなわれる成形サイクルの回数では、望ましくない焼け部分や変色部分が生じる。配合物の射出成形には、シングル・ゲートの、1/4×1/2×5 3/8インチのバーを成形する金型が、ガス抜き穴を(0.0005mm×4.75mm)に制限した状態で用いられた。溶解温度は320℃、充填剤のない樹脂に対して使用した工具の温度は60℃(ガラス繊維が充填された樹脂には140℃の工具が用いられた)、平均射出速度は毎秒1.75インチであった。成形は最初の焼け部分が生じるまで継続され、サイクル数、すなわちショット数が記録された。
【0065】
樹脂、改良剤及び組成物
以下の実施例の成形配合物において使用された組成物には次のものが含まれる。
【0066】
PPA1: 実質的に上述の方法に従い、高い濃度のアミン末端基を有するように作成された、TA/IA/AA比=65/25/10の部分芳香族ポリアミド。T(m)=305℃、T(g)=122℃。フェノール/TCE(ISO307)中の固有粘度=0.87、アミン末端基=79μeq/g、酸末端基=37μeq/g、T(g)=122℃。
【0067】
PPA2: 実質的に上述の方法に従い、高い濃度のアミン末端基を有するように作成された、TA/IA/AA比=65/25/10の部分芳香族ポリアミド。T(m)=305℃、T(g)=122℃。フェノール/TCE(ISO307)中の固有粘度=1.0、アミン末端基=79μeq/g、酸末端基=38μeq/g、T(g)=122℃。
【0068】
改良剤1: デラウェア州ウィルミントン、デュポン社(Dupont)のFusabond MB 226として入手される、無水マレイン酸をグラフトしたLLDPE。融点=122℃、メルトインデックス(190℃、2.16kg)=1.5。
【0069】
改良剤2: テキサス州ヒューストン、シェル・ケミカル社(Shell Chemical Co.)のKraton FG 1901Xとして入手される、水素を添加したSEBS(マレイン無水酸をグラフトした)ブロックコポリマー。
【0070】
アリールアミン1: コネティカット州ミドルベリー、ユニロイアル・ケミカル社(Uniroyal Chemical)のNaugard(登録商標)445として入手される4、4’ジ(α、α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミン。TGA減量温度(10%)=300℃。
【0071】
アリールアミン2: コネティカット州ミドルベリー、ユニロイアル・ケミカル社のNaugard Jとして入手されるN、N’−ジフェニル−p−フェニレンジアミン。TGA減量温度(10%)=254℃。
【0072】
ヒンダードフェノール: (ニューヨーク州タリータウンの)チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社(Ciba Specialty Chemicals)のIrganox 1010として入手されるテトラキス(メチレン(3、5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンニマート))メタン。TGA減量温度(10%)=328℃。
【0073】
銅安定剤1: (ミズーリ州セントルイスの)マリンクロット社(Mallinckrodt)のASC−300として入手される、8.5%のCulと、85.0%のKlと、6.5%のステアリン酸マグネシウムとのタブレット化された配合物。
【0074】
銅安定剤2: (ミズーリ州セントルイスの)マリンクロット社のASC−200として入手される、6.3%のCulと、60.7%のKlと、24.6%のTalcと、8.4%のステアリン酸マグネシウムとのタブレット化された配合物。
【0075】
灰色色素: 二酸化チタン(25:1)の混合物(テキサス州、クロノス社(Kronos Inc.)のKronos 2220)、及びカーボンブラック(マサチューセッツ州、カボット社(Cabot Corp.)のBlack Pearls 880)。
【0076】
ガラス繊維: (ペンシルバニア州バレー・フォージの)ベトロテックス・サートン・ティード社(Vetrotex Certain Teed Corp.)のCertain Teed 994として入手される、アミノ−シランで処理された、直径10ミクロンに刻まれたガラス繊維。
【0077】
実施例1、実施例2、及び対照例C−1ないしC−2
ZSK40二軸スクリュー押出し機により350℃で化合され、タブレット化された後、真空オーブンで12時間乾燥させた、実施例1、実施例2、及び対照例C−1、C−2の成形配合物を以下の表1に要約する。タブレット化された樹脂は射出成形され、ASTM 1型、1/8インチの伸張性のバーが形成された。成形機としてトーヨー社(Toyo)の300トン成形機が使用された。工具は循環させた高温の油で約140℃まで加熱された。
【0078】
【表1】

【0079】
表1中の、「引張損失50%所要時間」の値が示すような、ガラス繊維が充填されたポリアミド樹脂の配合物の長期的な熱的安定性を考察することにより、銅安定剤を含有しない耐衝撃性改良配合物の長期的な熱的安定性が劣っていることが理解できる。それにもかかわらず、これらの不安定な配合物においては、「焼けまでのショット数」の高い値で例証されるように、ガス抜き穴を詰まらせる副産物を生じてガス抜き穴を詰まらせてしまうことなく、多数の成形サイクル、すなわちショット数が可能になっている。
【0080】
耐衝撃性改良ポリアミド配合物に銅を含有する安定剤を加えたことにより、配合物の長期的な熱安定性が著しく向上したことは、C−2の「引張損失50%所要時間」の値とC−1の「引張損失50%所要時間」の値とを比較することにより分かる。しかしながら、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が著しく増加したことにより、ガス抜き穴の詰まりが加速されてしまうことが、対照例C−2の「焼けまでのショット数」の値と対照例C−1の「焼けまでのショット数」の値とを比較することにより分かる。
【0081】
実施例1に示す、本発明に係る充填剤入りのポリアミド配合物は、耐衝撃性改良ポリアミド樹脂、銅安定剤、及び低い揮発性の二級アリールアミン(アリールアミン1、TGA減量温度300℃)を含み、実質的に長期的な熱的安定性を有しているとともに、「焼けまでのショット数」の高い値が示すように、ガス抜き穴を詰まらせる副産物を減少させていることが分かる。
【0082】
これらの目的に関して、高い分子量のヒンダードフェノール化合物は、二級アリールアミンほど効果的ではない場合がある。高い分子量のヒンダードフェノールを含有する、本発明に係る銅安定剤を用いた配合物でも良好な長期的熱安定性を得ることができるものの、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の減少量においては劣る。実施例2の「焼けまでのショット数」の値とC−2の「焼けまでのショット数」の値とを比較されたい。
【0083】
以上のことから分かるのは、銅により安定された耐衝撃性改良ポリアミドに、高い分子量で揮発性の低い二級アリールアミン又はフェンダードフェノールを加えたことにより、成形特性の向上がもたらせることであり、それは金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の減少、及びそれに伴う、焼け部分が生じる前の成形ショット数の増加により例証されている。
【0084】
実施例3、実施例4、及び比較例C−4ないしC−6
充填剤のない、銅により安定された、耐衝撃性改良ポリアミド及びヒンダードフェノールを含む本発明に係る配合物のさらなる実施例を、三つのさらなる対照例とともに表2に要約する。この配合物は、ZSK40二軸スクリュー押出し機により350℃で化合され、タブレット化された後、真空オーブンで12時間乾燥された。タブレット化された樹脂は、トーヨー社の300トン成形機を用いて射出成形され、ASTM 1/16インチの可撓性のバー及び4型の伸張性のバーが形成された。工具は循環させた高温の油で約120℃まで加熱された。
【0085】
【表2】

【0086】
ここでも、表2にあるように、「伸び保持率」の値が示すような、充填剤入りのポリアミド樹脂配合物の長期的な熱的安定性を考察することにより、銅安定剤を含まない、耐衝撃性改良組成物の長期的な熱的安定性が劣ることが理解できる。しかしながら、これらの不安定な配合物においても、「焼けまでのショット数」の高い値が示すように、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が低いため、ガス抜き穴を詰まらせることなく、多数の成形サイクル、すなわちショット数が可能になっている。対照例C−4を参照されたい。
【0087】
配合物に銅を含有する安定剤を加えることのみでも、長期的な熱安定性は実質的に向上されているが、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量も実質的に増加し、それによりガス抜き穴の詰まりが加速されている。対照例C−5の「焼けまでのショット数」の値と対照例C−4の「焼けまでのショット数」の値とを比較されたい。
【0088】
銅で安定された、耐衝撃性改良ポリアミド配合物に揮発性のアリールアミン(アリールアミン2、MW=236g/mol、TGA減量温度254℃)を加えることでは、成形特性は向上していないことが分かる。配合物における「焼けまでのショット数」の値が許容範囲を越える程低いままであるため、それに従って、金型洗浄間隔も短くなっている。対照例C−6と対照例C−4及びC−5とを比較されたい。
【0089】
実施例3及び実施例4に示す本発明に係る充填剤入りポリアミド配合物は、耐衝撃性改良ポリアミド樹脂、銅安定剤、及び高い分子量と低い揮発性を有するヒンダードフェノールを含み、実質的に長期的な熱的安定性を有しているとともに、ガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が適度に減少されていることが分かる。実施例3及び実施例4の「焼けまでのショット数」の値と対照例C−5の「焼けまでのショット数」の値とを比較されたい。
【0090】
従って、本発明はその組成物に、高温の部分芳香族ポリアミドとともに、耐衝撃性改良剤、銅を含有する安定剤、そして、ヒンダードフェノールと二級アリールアミンのうちから選択される低い揮発性を有し且つ高い分子量の化合物を含み、且つ本発明による配合物を含めた成形品も含む。本発明の実施に使用する上で好ましいヒンダードフェノール及び二級アリールアミンは、少なくとも260g/molの分子量と、少なくとも290℃、さらに好ましくは少なくとも300℃、最も好ましくは少なくとも310℃での熱重量分析(TGA)により決定された10%減量温度を有する。本発明においては、組成物中に存在するポリアミドの重量に基づき、約0.01ないし約3.0wt.%、好ましくは約0.1ないし約2.0wt.%の、低い揮発性の二級アリールアミン又はヒンダードフェノールを、銅により安定された、耐衝撃性改良部分芳香族ポリアミドに組み入れて、その熱酸化安定性を向上させる方法もさらに考慮されている。ガス抜き穴を詰まらせるに十分な沈殿物が形成されてガス抜き穴がふさがれ、焼け部分及び変色部分が生じる前に、極めて多くの回数の成形サイクルが実現されていることから、本発明による配合物は向上された射出成形特性を有していることが例証されている。
【0091】
成形特性は、ポリアミドのグラム毎に約50μ未満のマイクロ等量のアミン末端基を有する、改善された部分芳香族ポリアミドを含む事によりさらに向上する。
【0092】
本発明の実施に有用な、改善された部分芳香族ポリアミドは、低い濃度のアミン末端基を有するか、又は逆に、高い濃度の酸及び/又はエンドキャップされた基を有する。通例、ポリアミドは、ヘキサメチレンジアミンなどのジアミンの、アジピン酸やテレフタル酸などのジカルボン酸に対する縮合反応により作成される。ポリアミドは、カプロラクタム又はアミノ酸の重合などにより、アミン及びカルボン酸の両方の官能性を有する適切なモノマー化合物から作成されても良い。結果的に得られるポリアミドは、通例、アミン末端基及びカルボン酸末端基を含有することになる。ジアミンとジカルボン酸の化学量論的バランスを利用して作成した場合、重合の間に副反応が生じることが無く、結果的に得られる樹脂は、実質的にバランスのとれたアミン末端基とカルボキシル末端基を有することになる。モノマーのうちの過剰になった一つを用いた場合、又は反応性のエンドキャッピング剤を加えた場合、一つの末端基が優位になる。例えば、ジアミンが豊富なモノマー混合物を重合させると、結果的にアミン末端基がより多く、カルボン酸末端基がより少ないポリマーとなる。酸が豊富なモノマー混合物を重合させると、結果的に、カルボン酸末端基がより多く、アミン末端基の濃度が低減されたポリマーとなる。また、アミンに反応する酢酸などのエンドキャッピング剤を用い、アミン末端の、官能基が存在する部分に反応させることにより、結果的に得られるポリアミド中のアミン末端基の割合を低下させることも可能である。
【0093】
ジアミン又はジカルボン酸にかかわらず、モノマー又はエンドキャッピング剤の相対的に小さい過剰分のみを重合に利用することが必要である。末端基の総数、エンドキャッピング剤が用いられた場合にはそのエンドキャッピング剤と関係する末端基を含めた総数は、重合度を表す関数、特に、最終的なポリマーの分子量の平均を表す関数となる。縮合ポリマー技術においてよく知られているように、完成時の重合度は不均衡の程度又はエンドキャッピング剤の量により決定されることになる。従って、通例は約5モル%級の、好ましくは約2モル%のみの、モノマーの僅かな過剰分又は少量のエンドキャッピング剤を用い、ポリマーの分子量が望ましくないほど低い程度にまで低下されてしまうことを回避する。
【0094】
末端基が典型的にはアミン、カルボン酸及び非官能性の「エンドキャップ」から構成されている部分芳香族ポリアミドでは、線状ポリマーの総末端基数は次の式で表される。
【0095】
2,000,000/Mn=末総端基数[μeq/g]
約0.8から約1.2の好ましいインヘレント粘度範囲で、部分芳香族ポリアミドは9,000から14,000g/molの範囲の平均分子量を有することになり、総数が約140から約220μeq/gの末端基を含有することになる。
【0096】
アミン末端基用の典型的なエンドキャッピング剤は、例えばC−1ないしC−8のモノカルボン酸などの非官能性のカルボン酸である。具体例としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、安息香酸などが含まれる。これらの酸のエンドキャッピング剤を、使用する反応混合物に加えることにより、ポリアミドを酸の形で、あるいは無水物、エステル、酸ハロゲン化物の形で作成してもよい。その他のアミンのエンドキャッピング剤として、フタル酸なども当該技術において知られている。
【0097】
本発明の実施において使用される、ポリアミド中のアミン末端基の好ましい濃度は、通例は、全ての末端基のうちの僅かに25%、又はグラム単位で僅かに約50マイクロ等量(μeq/g)、好ましくは僅かに25μeq/gの低い濃度である。25μeq/gから低い10μeq/g又は5μeq/gまでの濃度のアミン末端基を有する部分芳香族ポリアミドは、感知できる濃度のアミン末端基がポリアミドに存在しないことになるため本発明の実施には有用である。
【0098】
低い濃度のアミン末端基とともに望ましい分子量を有するポリアミドは、好都合にも、上述したような、酸を豊富にする化学量論を利用することによっても作成することができ、その際は、アミンに反応するエンドキャッピング剤のモル量を適切な量にすることもできる。そして、結果的に得られるポリアミド中の酸の末端基とエンドキャップされた末端基との結合の程度は比較的高いものとなる。縮合反応において起こる脱アミノ及び他の副反応を利用して部分芳香ポリアミドを作成することにより、分子量を制限する追加的な末端基が導入されるとともに、枝分かれ及び架橋が生じることが知られている。重合プロセスを高温でおこなうことにより、揮発に起因して、加えられたジアミンが部分的に失われる場合がある。従って、このような損失を補うため、十分な量のジアミンでプロセスを開始することが好都合である。そして、重合プロセスを慎重に制御し、高い濃度で完了させることが望ましく、それにより意図した分子量とともに望ましい濃度のアミン末端基を有するポリアミドを作成することができる。
【0099】
以下の、低い濃度のアミン末端基を有する、改善されたポリアミドPPA−3及びPPA−4を用い、試験用のさらなる配合物を作成する。
【0100】
PPA3(低アミン): PPA−1と同じポリアミドに相当する部分芳香族ポリアミドであるが、アミン末端基の濃度が低く、TA/IA/AA比=65/25/10であり、実質的に上述の方法に従い、低い濃度のアミン末端基を有するように作成されている。T(m)=305℃、T(g)=122℃。フェノール/TCE(ISO307)中の固有粘度=0.82、アミン末端基=40μeq/g、酸の末端基=91μeq/g、T(g)=122℃。
【0101】
PPA4(低アミン): PPA−2と同じポリアミドに相当する部分芳香族ポリアミドであるが、アミン末端基の濃度が低く、TA/IA/AA比=65/25/10であり、実質的に上述の方法に従い、低い濃度のアミン末端基を有するように作成されている。T(m)=305℃、T(g)=122℃。フェノール/TCE(ISO307)中の固有粘度=0.91、アミン末端基=40μeq/g、酸の末端基=86μeq/g、T(g)=122℃。
実施例5、及び対照例C−7ないしC−8
以下の表3に要約する実施例5及びその対照例の配合物は、ZSK40二軸スクリュー押出し機により350℃で化合され、タブレット化された後、真空オーブンで12時乾燥された。タブレット化された樹脂は射出成形され、トーヨー社の300トン成形機を用いて、ASTM、1/16インチの伸張性のバー及び4型の伸張性のバーが形成された。工具は循環させた高温の油で約120℃まで加熱された。
【0102】
【表3】

【0103】
表3中の、「伸び保持率」の値が示すような、樹脂配合物の長期的な熱的安定性を考察することにより、高い濃度のアミン末端基を有する樹脂、PPA−1、を含むとともに銅安定剤を含有しない耐衝撃性改良配合物は、長期的な熱的安定性が劣っていることが理解できる。対照例C−4を参照されたい。銅安定剤のみを含む、耐衝撃性改良配合物は、熱的安定性が実質的に向上されている。「焼けまでのショット数」の値が示すように、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が実質的に増加しており、それによりガス抜き穴の詰まりが加速され、金型洗浄間隔が短縮されている。対照例C−7を参照されたい。
【0104】
アミン末端基が少ないポリアミド樹脂、PPA−3、を含む耐衝撃性改良組成物は、銅安定剤のみとともに、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の程度を低減する上である程度改善されている。しかしながら、「焼けまでのショット数」の値が許容範囲を超えるほど低いため、金型洗浄間隔が短縮されている。対照例C−8を参照されたい。
【0105】
実施例5の、アミン末端基が少ないポリアミド樹脂、PPA−3、を含むとともに銅を含有する安定剤及びヒンダードフェノールを含む耐衝撃性改良配合物は、実質的に長期的な熱安定性を有していることに加え、「焼けまでのショット数」の良好な値が示すように、ガス抜き穴を詰まらせる副産物を低減していることが分かる。
【0106】
以上のことから分かるように、ポリアミド中のアミン末端基の濃度を低減することにより、銅により安定された耐衝撃性改良ポリアミドの成形特性が適度に向上するが、そのことは金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物が低減されていることや、それに伴なう、焼け部分が生じる前の成形ショット数の増加によっても実証されている。しかしながら、ヒンダードフェノールをさらに加えることにより、同様の目的にかなった、配合物の成形特性を著しく向上することができる。
実施例6、及び対照例C−8ないしC−13
表2に示す配合物は、ZSK40二軸スクリュー押出し機により350℃で化合され、タブレット化された後、真空オーブンで12時間乾燥された。ASTM、1/8インチ、1型の伸張性のバーが、トーヨー社の300トン成形機を用いて成形された。工具は循環させた高温の油で約140℃まで加熱された。伸張性のバーはASTM D638に従って、(空気循環式オーブンを用いた)210℃での加熱エージングの前後に試験された。
【0107】
【表4】

【0108】
ここでも、アミン末端基がPPA−2のように多いかPPA−4のように少ないかに関わらず、オーブンで210℃のエージングを行なった配合物において得られた「引張損失50%所要時間」の値が示すように、銅を含有する安定剤が、耐衝撃性改良ポリアミドに長期的な熱安定性をもたらすことが分かる。しかしながら、これらの耐衝撃性改良配合物に銅化合物が存在することにより、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が著しく増加し、「焼けまでのショット数」の値が示すように、ガス抜き穴の詰まりが加速されている。対照例C−1、C−2及びC−9を参照するとともに対照例C−10と対照例C−11とを比較されたい。
【0109】
対照例C−10の「焼けまでのショット数」の値と対照例C−2の「焼けまでのショット数」の値とを比較すること、及び対照例C−11の「焼けまでのショット数」の値と対照例C−9の「焼けまでのショット数」の値とを比較することでも明らかなように、アミン末端基の濃度を低減することによりもたらされるのは、銅により安定された配合物の成形特性の僅かな向上でしかない。
【0110】
アミン末端基の濃度が低いポリアミド、PPA−4、を含む配合物にヒンダードフェノールを加えることにより、金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が著しく低減され、それにより、「焼けまでのショット数」の値が表すように、金型洗浄間隔が著しく延長されている。実施例6と対照例C−11とを比較されたい。
【0111】
以上のことから分かるように、アミン末端基の濃度を低減することにより、銅により安定された、耐衝撃性改良ポリアミド樹脂配合物の成形特性が適度に向上しているが、そのことは金型のガス抜き穴を詰まらせる副産物の生成量が低下していることや、それに伴なう、焼け部分が生じる前に達成される成形の実行回数の増加が金型洗浄間隔を延長していることからも実証されている。
【0112】
このように、本発明は、脂肪族ジアミンテレフタルアミド単位を備えた高温の部分芳香族ポリアミドと本発明による配合物を含む成形品を対象にするものとしてさらに特徴付けられ、上記ポリアミドは、グラム単位で約50マイクロ等量(μeq/g)の、好ましくは約25μeq/g未満の、さらに好ましくは約20μeq/g未満のアミン末端基を有しており、耐衝撃性改良剤、銅を含有する安定剤、そして、二級アリールアミンとヒンダードフェノールのうちから選択される高分子化合物とともに、成形樹脂配合物に使用される。本発明においては、ポリアミドのアミン末端基の量を約40μeq/g未満、好ましくは約30μeq/g未満、さらに好ましくは約20μeq/g未満に低減することにより、銅により安定された、耐衝撃性改良部分芳香族ポリアミドの熱酸化安定性を向上させる方法もさらに考慮される。本発明による配合物は、金型のガス抜き穴を詰まらせるのに十分な量の沈殿物が形成されてガス抜き穴がふさがれ、焼け部分や変色部分が生じる前に達成される成形サイクルの回数の著しい増加によっても実証されるように、射出成形特性が向上している。
【0113】
ここまで、本発明を具体的な実施例で説明及び例示したが、樹脂配合物及び化合物を作成する技術の当業者であれば、さらなる変更及び変形が可能であることは容易に分かることである。例えば、本発明の組成物には、先に本願明細書中で記されたような充填材及び補強材に加えて、高温ポリアミドに用いられることで知られている色素剤、染料、潤滑剤、加工補助剤、光安定剤、熱安定剤などの従来の添加剤が含まれていても良い。本発明の組成物は、この技術分野においてよく知られているようなポリマー及び樹脂にさらに化合させて作成した混合物であってもよい。
【0114】
これらの及びその他の変更及び変形は、ポリマー技術の当業者であれば容易に理解できることであるので、付記されている特許請求の範囲のみにより定義される本発明の範囲内に包含されるものと見なされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形可能な組成物であって、
(a)Rが少なくとも1つの直鎖C4−C14脂肪族ハイドロカルビル遊離基のとき以下の構造式で表される脂肪族ジアミンテレフタルアミド単位の少なくとも40モル%を備え、290℃〜330℃の融点を有し、アミン末端基の濃度が0ないし50μeq/gの範囲内にあり、全ての末端基の25%以下である高温の結晶化可能な部分芳香族ポリアミドと、
【化1】

(b)オレフィン族耐衝撃性改良剤と、
(c)2.5:1ないし20:1の重量比でハロゲン化アルカリ金属とハロゲン化銅(I)とを備えた、上記組成物の総重量に対して0.01ないし2wt%の銅含有熱安定剤と、
(d)上記組成物の総重量に対して0.01ないし3wt%の二級アリールアミンとを備え、
上記二級アリールアミンは、ASTM D3850-94に従ってTGAによって決定された少なくとも260g/molの分子量と少なくとも290℃の10%減量温度とを有しており、窒素原子に化学的に結合された2つの芳香族置換基を含有し、該芳香族置換基の少なくとも1つは、1個ないし20個の炭素原子を含む置換基と置換されている組成物。
【請求項2】
上記ハロゲン化アルカリ金属がヨウ化ポタシウムであり、上記ハロゲン化銅(I)がヨウ化銅(I)である請求項1記載の組成物。
【請求項3】
上記ハロゲン化アルカリ金属の上記ハロゲン化銅(I)に対する重量比が8:1ないし10:1である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
上記改良剤は、官能性が付与されたポリオレフィンと、エチレン/プロピレンポリマーブロック、エチレン/ブチレンポリマーブロックまたはエチレン/ペンチレンポリマーブロックあるいはそれらの組合せを備えたゴムブロックと重合化されたスチレンブロックとを備え、ペンダント無水琥珀酸で官能性が付与されたブロックコポリマーとから選択される請求項1記載の組成物。
【請求項5】
上記化合物が4,4'ジ(α,α−ジメチル−ベンジル)ジフェニルアミンから選択されることを特徴とする請求項1記載の組成物。
【請求項6】
5ないし60wt%の充填剤をさらに備えている請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載の組成物からなる射出成形品または押出し品。
【請求項8】
前記アミン末端基の濃度が0ないし25μeq/gの範囲内にある請求項1記載の部分芳香族ポリアミド。

【公開番号】特開2011−12283(P2011−12283A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−236350(P2010−236350)
【出願日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【分割の表示】特願2001−505621(P2001−505621)の分割
【原出願日】平成12年6月15日(2000.6.15)
【出願人】(502030880)ソルヴェイ アドバンスド ポリマーズ リミテッド ライアビリティ カンパニー (39)
【Fターム(参考)】