説明

部品の取付構造

【課題】クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる、部品の取付構造を提供する。
【解決手段】部品の取付構造は、アシストグリップ1(部品)の基台11を車両側パネル2(取付部材)の取付穴2bに取り付ける取付構造において、弾性係止部3a及び段部3f(保持部)をもつクリップ3と、脚部4bをもつキャップ4と、を備える。クリップ3は取付穴2bに嵌挿されて段部3fで基台11に保持されている。弾性係止部3aで取付穴2bの周縁に係止されている。クリップ3の内部空間にはキャップ4の脚部4bが嵌挿されていて脚部4bがクリップ3の窪み部3kに当接して、アシストグリップ1を車両側パネル2に取り付けている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリップを用いて取付部材に取り付けられる部品の取付構造及び部品の取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アシストグリップなどの車両内装用の部品を、車体側パネルに取り付けるにあたっては、たとえば、特許文献1(特開2003−226182号公報)の図1、図10に示すように、アシストグリップのグリップ本体(アシストグリップ1)を揺動可能に保持する基台(固定部2)に、弾性係止部(31)をもつクリップ(3)を取付け、クリップ(3)を取付穴(41)に嵌挿して弾性係止部(31)を取付穴(パネル穴41)の周縁に係止し、その後クリップ(3)の内部空間(後端間隙部303)にキャップ(21)の脚部(22)を嵌挿することが開示されている。
また、特許文献2(特開平2001−130307号公報)の図3に開示されているように、アシストグリップ(10)のグリップ本体(12)に幅広部(26A、26B)と幅狭部(28A、28B)を有する拡縮部材(16)を一体的に設け、この拡縮部材(16)を天井基材(30)の取付穴(32,36)に嵌挿し、その後、ロックピン(20)を拡縮部材(16)内の空隙(18)に挿入して、アシストグリップ(10)を天井基材(30)に固定する構造がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−226182号公報
【特許文献2】特開2001−130307号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記特許文献1においては、キャップ(21)の脚部(22)をクリップ3の内部空間に嵌挿する前の仮止め工程では、クリップ(3)の弾性係止部(31)は、取付穴(41)の周縁に、一対の側壁の間の内部空間(303)の中心方向に向けて圧縮された状態で係止されているにすぎない。このため、クリップ(3)が取付穴(41)から抜け出る方向の動きは何ら規制されていない。ゆえに、取付穴(41)の周縁による中心方向への圧縮力よりも弾性係止部(31)の外側方向へのばね反発力が弱い場合には、クリップ(3)が取付穴(41)の中心方向に撓んでクリップ(3)が挿入方向と反対側に移動して、取付穴(41)から抜け出るおそれがある。そこで、弾性係止部(3)の剛性を高めて、ばね反発力を高めることが考えられる。しかし、この場合には、弾性係止部(31)が中心方向に撓みにくくなる。このため、仮止め工程後に、クリップ(3)を取付穴(41)に嵌挿しにくくなり、取付け作業性が低下するおそれがある。
【0005】
また、特許文献2においても、特許文献1と同様に、仮止め工程時には、ロックピン(20)の拡縮部材(16)は、抜け方向の動きが規制されておらず、取付穴(32,36)から抜け出るおそれがある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、クリップを用いて部品を取付部材に取り付けるにあたって、取付部材の取付穴にクリップを嵌挿したとき、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる、部品の取付構造及び部品の取付方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、請求項1に係る発明の部品の取付構造は、基台を有する部品と、取付穴をもつ取付部材と、一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ前記取付穴の周縁に係止される弾性係止部及び前記基台に保持される保持部を配設したクリップと、前記クリップの前記基端部を覆う覆い部及び前記開口から前記内部空間に嵌挿される脚部をもつキャップと、をもち、前記クリップの前記保持部を前記基台に保持するとともに前記クリップを前記取付穴に嵌挿して前記弾性係止部を前記取付穴の周縁に係止し、前記キャップの前記覆い部で前記クリップの前記基端部を覆うとともに前記脚部を前記クリップの前記開口から前記内部空間に嵌挿させることにより、前記部品を前記取付部材に取り付けてなる部品の取付構造であって、前記基台は、前記クリップを前記取付穴に嵌挿するときに前記クリップの前記取付穴から抜け出る方向への動きを規制する規制部をもつことを特徴とする。
【0008】
請求項2に係る発明は、前記規制部は、前記クリップの前記内部空間に挿入されるとともに前記クリップの当該挿入方向の先端部に当接する当接リブであることを特徴とする。
【0009】
請求項3に係る発明は、前記キャップの前記脚部は、前記当接リブと前記弾性係止部との間に配設されるとともに、前記脚部は、前記当接リブを挟持する挟持部をもつことを特徴とする。
【0010】
請求項4に係る発明は、前記当接リブは、前記一対の側壁の間の前記内部空間の奥行き方向の中心に配置されているとともに前記内部空間の奥行き方向の両側から前記挟持部で挟持されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に係る発明は、前記挟持部は、前記クリップの前記側壁に圧接していることを特徴とする。
【0012】
請求項6に係る発明は、前記挟持部は前記弾性係止部に圧接していることを特徴とする。
【0013】
請求項7に係る発明は、前記クリップの前記先端部には先端保持孔が形成されており、前記先端保持孔には前記当接リブの挿入方向の先端が嵌挿されているとともに、前記先端保持孔の周縁には、前記当接リブの前記先端の近傍に形成した係止部が係止されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8に係る発明の部品の取付方法は、一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ弾性係止部及び保持部を配設したクリップを、前記保持部で部品の基台に保持するクリップ保持工程と、前記クリップを取付部材に形成された取付穴に嵌挿して前記クリップの前記弾性係止部を前記取付穴の周縁に係止するクリップ嵌挿工程と、覆い部と脚部とをもつキャップの前記覆い部で前記クリップの基端部を覆うとともに前記脚部を前記クリップの前記基端部の開口から前記内部空間に嵌挿させるキャップ嵌挿工程と、を有する部品の取付方法であって、前記クリップ嵌挿工程において、前記基台に形成された規制部により、前記クリップの前記取付穴から抜け出る方向への動きを規制することを特徴とする。
【0015】
請求項9に係る発明は、前記規制部は、前記基台に形成された当接リブであって、前記クリップ保持工程において、前記当接リブを前記クリップの前記内部空間に嵌挿して前記クリップの挿入方向の先端部に当接させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
前記請求項1に係る発明によれば、部品の基台は、クリップを取付穴に嵌挿するときに、クリップの取付穴から抜け出る方向(以下、「抜け方向」ともいう。)への動きを規制する規制部をもつ。このため、クリップを基台に保持された状態で取付穴に嵌挿するとき、クリップは、規制部によって抜け方向への移動が規制される。ゆえに、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる。
【0017】
前記請求項2に係る発明によれば、クリップを取付穴に嵌挿したときに、当接リブが、クリップの挿入方向の先端部に当接している。このため、クリップは、挿入方向と反対側の抜け方向への移動が規制される。ゆえに、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる。
【0018】
前記請求項3に係る発明によれば、キャップの脚部の挟持部で当接リブが挟持されている。このため、当接リブをクリップ内の内部空間の中心位置に保持しやすくなる。従って、クリップを、取付穴に対して傾斜することなく、取付穴の軸線方向に沿って嵌挿することができる。
【0019】
前記請求項4に係る発明によれば、弾性係止部は、一対の側壁の間の内部空間の奥行き方向に弾性変形する。この奥行きの中心に当接リブを配置し、キャップの挟持部で奥行き方向の両側から当接リブを挟持することにより、取付後に、弾性係止部が弾性変形することを効果的に抑制できる。また、当接リブを奥行き中心に保持し、クリップが取付穴に対して傾斜したり、ガタついたりすることを抑制できる。
【0020】
前記請求項5に係る発明によれば、挟持部は、クリップの側壁に圧接している。このため、クリップの側壁の間の内部空間の奥行き方向に隙間がない。ゆえに、側壁は、撓むことなく、挟持部で安定に保持される。したがって、クリップのガタつきを抑制できる。
【0021】
前記請求項6に係る発明によれば、挟持部により一対の弾性係止部を圧接している。このため、弾性係止部の間の内部空間の奥行き方向に隙間が無くなり、クリップのガタつきを防止できる。
【0022】
前記請求項7によれば、クリップの先端部は、当接リブの先端に開口する先端保持孔に嵌挿されている。このため、当接リブをクリップの内部空間の中央に位置決めすることができる。また、クリップに対する当接リブの位置ズレを抑制でき、クリップが取付穴に対して傾斜したり、ガタついたりすることを抑制できる。
【0023】
前記請求項8に係る発明によれば、部品の基台は、クリップを取付穴に嵌挿するときに、クリップの抜け方向への動きを規制する規制部をもつ。このため、クリップを基台に保持した状態で取付穴に嵌挿したとき、クリップは、規制部によって抜け方向への移動が規制される。ゆえに、クリップを取付穴に嵌挿したときに、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる。
【0024】
前記請求項9に係る発明によれば、クリップ保持工程時に、当接リブが、クリップの開口から内部空間に挿入されて、挿入方向の先端部に当接する。このため、クリップを取付穴に嵌挿したときに、挿入方向と反対側の抜け方向への移動が規制される。ゆえに、クリップが取付穴から抜け出ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係るアシストグリップの取付構造の正面図である。
【図2】実施形態に係るアシストグリップの取付構造の分解斜視図である。
【図3】実施形態に係るアシストグリップの取付構造の要部断面図である。
【図4】実施形態に係るクリップの斜視図である。
【図5】実施形態に係るキャップの斜視図である。
【図6】実施形態に係る基台の斜視図である。
【図7】実施形態に係る基台の平面図である。
【図8】実施形態に係るアシストグリップの取付方法を説明するために、基台にクリップを保持したときの取付構造の断面図である。
【図9】図8に続く、基台及びクリップにキャップを仮挿入したときの取付構造の断面図である。
【図10】図9のP−P矢視断面図である。
【図11】図8に続く、基台にグリップ本体を取り付けたときの取付構造の断面図である。
【図12】図11に続く、クリップを車両側パネルの取付穴に嵌挿してアシストグリップを車両側パネルに仮固定したときの取付構造の断面図である。
【図13】図12に続く、キャップの脚部をクリップの内部空間に更に押し込んで、アシストグリップを車両側パネルに本固定したときの取付構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る実施形態について、図面に基づいて説明する。図1は、アシストグリップを車両側パネルに取り付けた取付構造の正面図である。図2は、取付構造の分解斜視図である。図1、図2に示すように、アシストグリップ1は、クリップ3及びキャップ4を用いて車両側パネル2に取り付けられている。
【0027】
アシストグリップ1は、グリップ本体10と、グリップ本体10の両端部に設けられグリップ本体10を回動可能に支持する基台11とをもつ。グリップ本体10の両端部は、基台11を収容する凹部10aをもつ。凹部10aの側壁には、軸孔10bが開口している。軸孔10b、及び基台11に設けられた軸受部11aの孔に、軸12を挿入することで、グリップ本体10を基台11に対して回動可能に支持している。また、軸受部11aと軸孔10bとの間に凹部10aが基台11に近接する方向にグリップ本体10を付勢するばね13が配設されている。ばね13の一端13aは、凹部10aの係止部10cに係止され、他端13bは軸受部11aの係止部11nに係止されている。基台11は、後述するようにクリップ3及びキャップ4を用いて車両パネル2に固定される部分である。なお、グリップ本体10及び基台11は、樹脂材料を金型内に射出して成形される。
【0028】
図3は、アシストグリップの取付構造の要部断面図である。図3において、紙面下方向を挿入方向、紙面上方向を抜け方向、紙面左右横方向をクリップの内部空間の奥行き方向とする。また、クリップの一対の側壁の間の奥行きの中心に向かう方向を、奥行き中心方向Gといい、クリップの側壁の奥行きの外側に向かう方向を、奥行き外側方向Hという。クリップの側壁の間の内部空間の奥行き方向の幅は、奥行き幅Dという。図8、図9,図11〜図13において同じである。
【0029】
図3に示すように、車両側パネル2は、車両室内に露出している表面パネル21と、表面パネル21とボディとの間に介設されている内部パネル22とをもつ。表面パネル21は、車両の天井パネルに表皮材が貼り付けられたものである。表面パネル21及び内部パネル22には、基台11を取り付る位置に、取付穴2aが貫通して形成されている。取付穴2aの表面パネル貫通部2bは、内部パネル貫通部2cよりも開口径が大きいため、内部パネル貫通部2cの周縁2dは、表面パネル貫通部2bに露出している。
【0030】
図3,図4に示すように、クリップ3は、断面U字形状を呈している。クリップ3は、内部空間3bを挟んでその両側に一対の側壁3eをもつ。クリップ3の先端部3gでは、一対の側壁3eがU字状に湾曲して連結されている。クリップ3の基端部3dでは、側壁3eは連結されておらず、内部空間3bに連通する開口3cを有している。クリップ3は、その長手方向に車両側パネル2の取付穴2aに嵌挿される。クリップ3の側壁3eは、長手方向と直交する方向、即ち内部空間3bの奥行き方向の相対する位置に一対の弾性係止部3aをもつ。弾性係止部3aは、側壁3eの先端部3g近傍から延びており、また、側壁3eの長手方向と平行な平面部3hに対して奥行き外側方向Hに横V字状に張り出した張り出し部3mを有している。弾性係止部3aの端部3iは、円弧状に湾曲して、平面部3hよりも奥行き外側方向Hに突出している。弾性係止部3aの張り出し部3mと端部3iとの間には、窪み部3kを有している。窪み部3kは、キャップ4の脚部4bの挿入前の状態で、側壁3eよりも内側に位置している。また、側壁3eにおける弾性係止部3aよりも基端部3d側には、基台11に保持される保持部としての段部3fを有している。段部3fは、側壁3eを奥行き外側方向Hに屈折させて形成された部分である。クリップ3は、金属板に打ち抜き曲げ加工を施して形成される。クリップ3は、樹脂で射出成形等により形成されてもよい。
【0031】
図3,図5に示すように、キャップ4は、クリップ3の基端部3dを覆う覆い部4aと、クリップ3の開口3cから内部空間3bに挿入され該挿入方向に延びる脚部4bをもつ。覆い部4aは、基台11の上部に形成されたキャップ保持壁11cの上面及び側面を覆うように、断面コ字状に湾曲している。脚部4bは、矩形の四隅に位置する4本の支柱4cと、隣り合う支柱4cの間を平面状に連結する一対の挟持部4dとをもつ。脚部4bにおける、クリップ3の側壁3eと対向する部分、即ち脚部4bの外側面には、側壁3eに対して圧接する圧接部4eをもつ。脚部4bの奥行き方向の厚みは、挿入方向の先端4x近傍で、挿入方向に向けて漸次小さくなっている。なお、図10に示すように、キャップ4の覆い部4aの側壁内面側には、突部4fが形成されている。キャップ4は、樹脂材料を金型内に射出して成形される。
【0032】
図3、図6,図7に示すように、アシストグリップ1の基台11は、クリップ3を嵌挿する四角形状のクリップ保持穴11bをもつ枠部11fと、枠部11fの上方に突出するキャップ保持壁11cとをもつ。キャップ保持壁11cは、キャップ4の覆い部4aの内側面に沿った形状をもち、該内側面に当接してキャップ4を保持する。キャップ保持壁11cの後端には、上記グリップ本体10を回動可能に支持する軸受部11aが一体に固定されている。
【0033】
更に、基台11は、枠部11fの下方に突出する当接リブ11dをもつ。当接リブ11dは、クリップ3を車両側パネル2の取付穴2aに嵌挿するときに、クリップ3の抜け方向への動きを規制する規制部である。当接リブ11dは、クリップ保持穴11bの中央に配置されクリップ保持穴11bを2つに区画している。当接リブ11dは、平滑な板状を呈しており、当接リブ11dの横幅Bは、クリップ3の横幅Cとほぼ同じである(図10参照)。図3に示すように、当接リブ11dの内部空間3bの奥行き方向の厚みは、基端11vから先端11eまで変化している。即ち、当該厚みは、基端11vから、取付穴2aよりも挿入方向側の位置11wに向けて漸次厚くなり、当該位置11wから先端11eに向けて漸次薄くなっている。また、図6に示すように、当接リブ11dの先端11eは、面取りされて横幅Bが縮小されている。図10に示すように、この先端11eは、クリップ3の先端部3gに開口する先端保持孔3jに挿入されて、当接リブ11dをクリップ3の内部空間3bの奥行き幅Dの略中央に位置決めしている。また、当接リブ11dの横幅方向の両端には、枠部11fから下方に延び、該横幅方向と直交する方向に横幅Jをもつ補強部11kが固定されている。
【0034】
クリップ3及びキャップ4を用いて、アシストグリップ1を車両側パネル2に取り付けるにあたっては、まず、図8に示すように、クリップ3の側壁3eを奥行き中心方向Gに圧縮して、クリップ3の内部空間3bの奥行き幅Dを狭くする。この状態でクリップ3を基端部3d側から、アシストグリップ1の基台11のクリップ保持穴11bに挿入する。クリップ3の側壁3eは、基台11の当接リブ11dに摺接しながら、クリップ保持穴11bの下側から上側に向けて挿入される。クリップ3の横幅方向の端部が、補強部11kの内側面に摺接して、クリップ保持穴11bの横幅に対するクリップ3の横幅Cの位置合わせが行われる(図4,図10参照)。したがって、クリップ3をクリップ保持穴11bに挿入するに当たって、クリップ3の側壁3eを当接リブ11d及び補強部11kに当接させて、クリップ保持穴11b側に向けて摺接させることで、クリップ保持穴11bに確実に誘導される。そして、クリップ3の基端部3dに形成された段部3fをクリップ保持穴11bの上側周縁11mに係止する。このとき、当接リブ11dの先端11eが、クリップ3の先端3gに開口する先端保持孔3jに嵌挿されて、当接リブ11dの先端11e近傍のテーパ状又は段状の係止部11hが先端保持孔3jの周縁3nに係止される(図10参照)。このようにして、クリップ3を基台11に保持するとともに、当接リブ11dを、クリップ3の内部空間3bの奥行き幅Dの略中央に位置決めする。
【0035】
次に、図9、図10に示すように、クリップ3の基端部3dの開口3cから内部空間3bに、キャップ4の脚部4bを仮挿入する。このとき、図10に示すように、キャップ4の覆い部4aの内側面に突出する突部4fが、基台11のキャップ保持壁11cの外縁11gに係止され、この位置で挿入が一旦停止される。図9に示すように、脚部4bの先端4xは、クリップ3の内部空間3bにおける弾性係止部3aの位置する部分に配置される。また、弾性係止部3aの位置する部分の内部空間3bには奥行き方向に隙間3pが残る。それゆえ、弾性係止部3aは、内部空間3bの奥行き方向に容易に変形し得る。本実施形態においては、脚部4bは、クリップ3の側壁3eに摺接しているため、その隙間3pは、脚部4bと当接リブ11dとの間に形成されている。しかし、脚部4bが当接リブ11dに摺接している場合には、隙間3pが、脚部4bとクリップ3の側壁3eとの間に形成されていてもよい。脚部4bの外周面、内周面ともに、クリップ3の側壁3e、当接リブ11dに対して非接触の場合には、脚部4bの外周面と側壁3eとの間、及び脚部4bの内周面と当接リブ11dとの間に、隙間3pが形成される。また、脚部4bの先端4xが、弾性係止部3aよりも基端部3d側に位置して、内部空間3bの奥行き幅と同じ幅の隙間3pが残っていてもよい。いずれの場合にも、内部空間3bにおける弾性係止部3aの配置部分の奥行き方向に、弾性係止部3aが変形可能な隙間3pが残る構成であればよい。
【0036】
次に、図11、図2に示すように、基台11をグリップ本体部10の凹部10aに配設させる。凹部10aの軸孔10b及び基台11の軸受部11aに軸12を挿入するとともに、軸12は円筒状のカラー14の孔の中に挿入する。また、軸受部11aと軸孔10bとの間にばね13を配設する。ばね13の一端13aは、凹部10aの係止部10cに係止させ、他端13bは軸受部11aの係止部11nに係止させる。これにより、グリップ本体10が基台11に取り付けられるとともに、ばね13によって基台11にグリップ本体10が付勢される。そして、凹部10aの内面10dに、キャップ4の端部4kが当接する。これにより、基台10に対して、クリップ3、キャップ4及びグリップ本体部10が、一体的に保持される。
【0037】
次に、図12に示すように、グリップ本体10を車両側パネル2側(図12のF1方向)に向けて押圧する。これにより、グリップ本体10の凹部10aの内面10dでキャップ4の覆い部4aの端部4kが押される。更に、キャップ4が、脚部4bで基台11を押して(図10参照)、基台11に保持されているクリップ3が、車体側パネル2の取付穴2aに嵌挿される。このため、クリップ3の弾性係止部3aの間の内部空間3bの奥行き幅Dが縮められ、弾性係止部3aの張り出し部3mが取付穴2aを通過する。取付穴2aを通過した後、弾性係止部3aは、そのばね反発力によって奥行き幅Dを元の大きさに近づける。そして、このばね反発力で、弾性係止部3aの窪み部3kが、内部パネル貫通部2cの周縁2dに係止される。これにより、アシストグリップ1が車両側パネル2に仮固定される。なお、本実施形態においては、取付穴2aの中に露出している内部パネル貫通部2cの周縁2dに、クリップの弾性係止部3aが係止されているが、取付穴2aの表面パネル貫通部2bの周縁に弾性係止部3aが係止されていてもよい。
【0038】
次に、図13に示すように、キャップ4の覆い部4aを車両側パネル2側、即ち図13に示すF2方向で、図12の仮固定時の力F1よりも大きな荷重で押圧する。これにより、キャップ4の突部4fと基台11のキャップ保持壁11cの外縁11gとの係止が外れて、更に、キャップ4は、挿入方向に本挿入される(図10参照)。覆い部4aの内側面に、キャップ保持壁11cが当接して、クリップ3の基端部3d側及び基台11のキャップ保持壁3cが覆い部4aで覆われる。また、キャップ4の脚部4bがクリップ3の内部空間3bに嵌挿される。これにより、脚部4bの間に形成された一対の挟持部4dで、基台11の当接リブ11dが挟持される。また、当接リブ11dの内部空間3bの奥行き方向の厚みは、基端11vから、取付穴2aよりも挿入方向側の位置11wに向けて漸次厚くなっている。このため、脚部4bがクリップ3の側壁3eと当接リブ11dとの間に挿入されていくと、挿入開始位置では脚部4bの内側面が当接リブ11dとは離間しているが、やがて当接リブ11dに摺接する。また、脚部4bの外側面がクリップ3の側壁3eの内面と摺接するとともに、弾性係止部3aの窪み部3kの内面に圧接する。すなわち、図13,図4,図5に示すように、キャップ4の脚部4bの挟持部4dは、クリップ3の弾性係止部3aの窪み部3kに当接し、弾性係止部3aの変形を抑制する。また、キャップ4の脚部4bの支柱4cは、クリップ3の側壁3eの平面部3hに当接し、弾性係止部3aを除くクリップ3全体の変形を抑える。これにより、クリップ3の内部空間3bの奥行き方向の隙間がなくなり、弾性係止部3aが内部空間3bの奥行き中心方向Gへ変形しにくくなる。そして、クリップ3の側壁3e及び弾性係止部3aの窪み部3kが、奥行き中心方向Gへ撓みにくくなり、クリップ3が取付穴2aから抜け出ることが防止される。このようにして、アシストグリップ1が車両側パネル2に本固定される。
【0039】
本実施形態においては、図12に示すように、クリップ3を、車体側パネル2の取付穴2aに嵌挿したときに、弾性係止部3aが奥行き幅Dを狭める方向に弾性変形してクリップ3が挿入方向と反対側に抜け出る場合がある。このとき、当接リブ11dは、クリップ3の挿入方向側の先端部3gに当接する。したがって、当接リブ11dが、クリップ3の抜け方向への動きを規制する。ゆえに、クリップ3が取付穴2aから抜け出ることを防止することができる。
【0040】
また、図3、図5に示すように、アシストグリップ1を車両側パネル2に取付けた後には、当接リブ11dは、キャップ4の挟持部4dで挟持されている。このため、当接リブ11dをクリップ3の中心位置に保持しやすくなり、クリップ3を、取付穴2aに対して傾斜することなく、取付穴2aの軸線方向に保持することができる。
【0041】
また、クリップ3の側壁3eが挟持部4dによって奥行き外側方向Hに押圧された状態で、取付穴2aに嵌挿されている。このため、クリップ3の側壁3eの間の奥行き方向の内部空間3bには、隙間がなくなる。ゆえに、側壁3eは、撓むことなく、挟持部4dで安定に保持される。また、挟持部4dにより一対の弾性係止部3aを圧接している。このため、弾性係止部3aの間の内部空間3bに隙間が無くなる。したがって、クリップのガタつきを防止できる。
【0042】
本実施形態においては、クリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入した後に、車両側パネル2の取付穴2aにクリップ3を嵌挿している。これは、アシストグリップ1の基台11、グリップ本体10,クリップ3及びキャップ4を一体化品としてまとめて運搬、取り扱いを容易とするためである。しかし、この順序が逆であっても、本発明の効果を発揮することができる。即ち、先に、クリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入しない状態で取付穴2aにクリップ3を嵌挿し、その後にクリップ3の内部空間3bにキャップ4の脚部4bを挿入しても良い。この場合には、キャップ4の脚部4bは、ワンアクションで、クリップ3の内部空間3bに完全に挿入することができる。
【0043】
なお、本実施形態においては、部品として車両内装部品の一つであるアシストグリップを適用したが、コンソールボックス、インストルメントパネル、サンバイザー、コートフック、レジスタ、ルームランプなどの車両内外部品にも適用できる。
【0044】
また、本実施形態においては、クリップを保持している部品が、グリップ本体10と基台11の2部材から構成されていたが、本発明の基台の構成を有していれば、1部材から部品が構成されていてもよい。もちろん、部品は、基台と、その他の2以上の部材から構成されていてもよい。
【0045】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々の変形が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0046】
1:アシストグリップ、10:グリップ本体、10a:凹部、10b:軸孔、11:基台、11a:軸受部、11b:クリップ保持穴、11c:キャップ保持壁、11d:当接リブ、11e:先端、11f:枠部、11g:外縁、11h:係止部、12:軸、2:車両側パネル、2a:取付穴、2b:表面パネル貫通部、2c:内部パネル貫通部、2d:周縁、3:クリップ、3a:弾性係止部、3b:内部空間、3c:開口、3d:基端部、3e:側壁、3f:段部、3g:先端部、3h:平面部、3i:端部、3j:先端保持孔、3k:窪み部、3m:張り出し部、4:キャップ、4a:覆い部、4b:脚部、4c:支柱、4d:挟持部、4e:圧接部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台を有する部品と、
取付穴をもつ取付部材と、
一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ前記取付穴の周縁に係止される弾性係止部及び前記基台に保持される保持部を配設したクリップと、
前記クリップの前記基端部を覆う覆い部及び前記開口から前記内部空間に嵌挿される脚部をもつキャップと、をもち、
前記クリップの前記保持部を前記基台に保持するとともに前記クリップを前記取付穴に嵌挿して前記弾性係止部を前記取付穴の周縁に係止し、前記キャップの前記覆い部で前記クリップの前記基端部を覆うとともに前記脚部を前記クリップの前記開口から前記内部空間に嵌挿させることにより、前記部品を前記取付部材に取り付けてなる部品の取付構造であって、
前記基台は、前記クリップを前記取付穴に嵌挿するときに前記クリップの前記取付穴から抜け出る方向への動きを規制する規制部をもつことを特徴とする部品の取付構造。
【請求項2】
前記規制部は、前記クリップの前記内部空間に挿入されるとともに前記クリップの当該挿入方向の先端部に当接する当接リブであることを特徴とする請求項1記載の部品の取付構造。
【請求項3】
前記キャップの前記脚部は、前記当接リブと前記弾性係止部との間に配設されるとともに、前記脚部は、前記当接リブを挟持する挟持部をもつことを特徴とする請求項2に記載の部品の取付構造。
【請求項4】
前記当接リブは、前記一対の側壁の間の前記内部空間の奥行き方向の中心に配置されているとともに前記内部空間の奥行き方向の両側から前記挟持部で挟持されていることを特徴とする請求項3記載の部品の取付構造。
【請求項5】
前記挟持部は、前記クリップの前記側壁に圧接していることを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の部品の取付構造。
【請求項6】
前記挟持部は前記弾性係止部に圧接していることを特徴とする請求項3ないし請求項5のいずれか1項に記載の部品の取付構造。
【請求項7】
前記クリップの前記先端部には先端保持孔が形成されており、前記先端保持孔には前記当接リブの挿入方向の先端が嵌挿されているとともに、前記先端保持孔の周縁には、前記当接リブの前記先端の近傍に形成した係止部が係止されていることを特徴とする請求項2ないし請求項6のいずれか1項に記載の部品の取付構造。
【請求項8】
一対の側壁の間に内部空間をもち先端部において前記一対の側壁が連結され基端部において前記内部空間に連通する開口をもち、前記一対の側壁にそれぞれ弾性係止部及び保持部を配設したクリップを、前記保持部で部品の基台に保持するクリップ保持工程と、
前記クリップを取付部材に形成された取付穴に嵌挿して前記クリップの前記弾性係止部を前記取付穴の周縁に係止するクリップ嵌挿工程と、
覆い部と脚部とをもつキャップの前記覆い部で前記クリップの基端部を覆うとともに前記脚部を前記クリップの前記基端部の開口から前記内部空間に嵌挿させるキャップ嵌挿工程と、を有する部品の取付方法であって、
前記クリップ嵌挿工程において、前記基台に形成された規制部により、前記クリップの前記取付穴から抜け出る方向への動きを規制することを特徴とする部品の取付方法。
【請求項9】
前記規制部は、前記基台に形成された当接リブであって、前記クリップ保持工程において、前記当接リブを前記クリップの前記内部空間に嵌挿して前記クリップの挿入方向の先端部に当接させることを特徴とする請求項8記載の部品の取付方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−255888(P2011−255888A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154599(P2011−154599)
【出願日】平成23年7月13日(2011.7.13)
【分割の表示】特願2007−298403(P2007−298403)の分割
【原出願日】平成19年11月16日(2007.11.16)
【出願人】(000241463)豊田合成株式会社 (3,467)
【Fターム(参考)】