説明

部品の角度制御された回転方法

【解決手段】ねじを回転させるためのパワースクリュードライバ(10)は、容積式ポンプ(26)を有し、且つ定義された流量を供給する油圧部(25)によって供給される。油圧ライン(28)内の圧力は圧力センサ(32)によって測定され、制御部(31)に与えられる。油圧部(25)の体積流量は、単位時間毎の量で決定される。油圧シリンダの充填容量が分かっているため、単位時間毎のピストンストロークを決定することができる。ピストンが、可動部を回転させるレバーシステムに作用する。レバーの長さが分かっているため、単位時間毎の回転角を決定することができる。これにより角度測定装置が不要となり、単に圧力を測定するだけで回転角を決定することが可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧ピストン/シリンダドライブ及びラチェットを用いた、部品の角度制御された回転方法、特に、油圧式パワーレンチを操作する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
国際公開第03/013797号パンフレットは、ピストン/シリンダ部を設けた油圧式パワーレンチがねじを数ストロークで締める間欠的なねじ締め操作の制御方法について記述している。ねじ締め操作は、所定のアセンブリトルクに達するまで有効なトルクモードと、アセンブリトルクから開始し、ねじが所定の角度更に回転される回転角モードとに分割される。パワーレンチにはトルクセンサと回転角センサとが装備されている。このようなセンサに更なる努力が示された結果、特定タイプのパワーレンチを用いた場合のみこの方法は実現可能である。
【特許文献1】国際公開第03/013797号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、角度センサを必要とせず、従って単純な方法で特定のピストン/シリンダドライブに限定することなく実行できる、回転可能な部品の角度制御された回転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の油圧ピストン/シリンダドライブ及びラチェットを用いた、回転可能な部品の角度制御された回転方法は、請求項1の特徴を備える。
【0005】
本発明によれば、作業操作の前に、リニアドライブに供給される、定義された体積流量についての回転角と回転時間との関係として角速度が決定される。その後、作業操作中、期間を測定しながら、定義された体積流量がリニアドライブに供給される。回転角モードにて、この期間と角速度とから回転角が決定される。
【0006】
回転角モードに関するこの方法を実現するために、センサ及び測定装置のいずれも機械回転装置に設ける必要はない。測定されるのは、単に、定義された体積流量で供給される油圧流体の供給期間である。そのため、角度回転の測定を時間測定に変えることができる。
【0007】
ピストン/シリンダドライブに供給される定義された体積流量を決める操作では、作業操作の前に、この体積流量について「単位時間毎の回転角」が決定される。この単位時間毎の回転角は、回転角の測定によって実験的に決定されるか、あるいは算出によっても決定できる。この算出は、油圧シリンダの充填容量、ピストン/シリンダドライブに供給された定義された体積流量、及び回転可能な部品を回転させるレバーシステムのレバーの長さから単位時間毎の回転角を算出することにより実施される。無論、相互的値、つまり「回転角毎の時間」を決定することも可能である。いずれの場合においても、時間測定が実施され、時間測定が所望の角度範囲の網羅を示すと回転が停止する。所望の回転角を操作開始前に設定することも可能である。設定値と実値との比較を使用して、所望の回転角に達した後、この操作をオフに切り換えることができる。
【0008】
定義された体積流量は、例えばギアポンプのような容積式ポンプ又は容量ポンプを含む油圧集合体によって生成することができる。容量ポンプは、ポンプの回転速度に比例する体積流量を供給する。所望の体積流量は、ポンプの回転速度を制御することにより得られる。
【0009】
最も簡単な場合では、定義された体積流量は一定の体積流量である。これは、所定の時間プログラムに応じて、あるいは、測定された例えば油圧式媒体の圧力によって変更することができる。
【0010】
本発明の好ましい開発では、回転角モードの前に、ピストン/シリンダドライブに定義された体積流量を供給しながら、アセンブリトルクに達するまで回転可能部品が回転されるトルクモードが実施される。トルクモードは、ピストン/シリンダドライブにおける圧力増加が、アセンブリトルクに対応する値に達すると終了する。このトルクが、ピストン/シリンダドライブに供給する油圧式システム内の圧力を使用して測定される。この圧力は、トルク測定に使用できるよう、回転される部品の断面係数に比例して増加する。しかし、トルク測定は、ピストン/シリンダドライブが停止部と接した時点で最早使用することができない。そこで、駆動手段を反転に切り替えて、ピストンが戻りストロークを行うようにしなければならない。
【0011】
本発明の好ましい開発では、ピストン/シリンダドライブの未負荷時に基本的特性が決定され、この特性は、圧力の時間的経過を示し、ピストン/シリンダドライブの阻止によって生じる上昇部分を有する。現在の作業操作における圧力の時間的経過の傾斜が基本的特性の上昇部分の傾斜と一致すると、ピストン/シリンダ部が反転される。一般に、1つのピストンストロークの終了時におけるピストンの阻止が、圧力の急速な上昇に基づいて検出される。これが起こると、ピストンの戻りストロークが開始され、その後次のピストンストロークが開始する。やはりここでも、油圧測定だけ必要である。圧力センサは必要ではない。
【0012】
回転角モードでは、少なくとも2つのピストンストロークにわたって期間を測定できる。本発明の好ましい実施形態では、1つのピストンストロークの終了時に、期間の測定値が記憶され、次のピストンストロークの初期値として受け付けられる。そのため、網羅された回転角が累積され、回転を停止すべき所望の回転角が高精度で決定される。
【0013】
以下は、図面を参照した本発明の実施形態の詳細な記述である。これらの説明は、本発明の保護範囲の限定として解釈されるべきではない。むしろこれは、特許請求の範囲及びその均等物によって定義される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
図1、図2は、パワーレンチ10を概略的に示す。パワーレンチ10は、油圧シリンダ12とピストン13とを内部に移動可能に設けた油圧ピストン/シリンダドライブ11を備えている。このピストンはピストンロッド14と接続しており、ピストンロッドの端部は、ラチェットホイール17の歯と係合する戻り止め15aを有するレバー15と係合する。ラチェットホイール17は、管状部材18の一部であり、回転させるソケットレンチ又はねじ頭を挿入するためのソケット19を設けている。ピストン13が往復移動することで管状部材18が回転され、管状部材18と共にねじも回転される。環状部材18は、ピストン/シリンダドライブ11をも収容するハウジング20内に支持される。
【0015】
図1に示す油圧集合体25によってピストン/シリンダドライブ11に圧力が供給され、油圧集合体25は、例えばギアポンプのような容積式ポンプ26、速度制御同期モータ及びタンクを有する。油圧集合体25は圧力ライン28及び戻りライン29と接続している。これら2本のラインは、制御弁30を介してピストン/シリンダドライブ11と接続している。制御弁30を切り換えることで、ピストン13を前方又は後方に移動することができる。
【0016】
制御装置31は、油圧集合体16と制御弁30とを制御するために設けられている。制御装置31は、モータのための可変駆動周波数を生成する周波数変換器を有する。これにより、制御装置31がポンプ17の速度を決定する。このポンプ速度によって、圧力ライン28に供給される体積流量Qが決定される。
【0017】
圧力ライン28には、圧力ライン内の油圧pを測定する圧力センサ32が設けられている。圧力センサはライン33を介して制御装置31と接続している。
【0018】
制御装置31には図3に示す油圧式システムの基本的特性GKLがあり、所与の体積流量(又は所与のポンプ速度)に対する時間tの関数として圧力pを示す。この曲線は、他の体積流量又はポンプ速度に対しても対応してシフト可能である。
【0019】
基本的特性GKLは、同一の集合体及びホースからのそれぞれの油圧回路について記録された。基本的特性はピストン13のアイドルストローク中に一定の体積流量にて得られる。まず、摩擦を克服するために、区間35において圧力が短期間増加する。次に、アイドルストローク中の圧力が一定である区間36が続く。ポイント37においてピストンが阻止されるので停止に達して、その後、区間38において圧力が直線的に増加する。最大圧力Pmax に達すると、圧力センサ32における圧力がゼロに降下する間、戻りストロークが行われる。区間38は上昇区間である。時間における2つのモーメント間の圧力勾配p’=dp/dtが測定され、制御装置31に記憶される。
【0020】
図4は、合計4つのピストンストロークKH1〜KH4よりなるパワーレンチの作業操作を図示する。圧力センサ32の圧力曲線pが時間tにわたって示されている。ピストンストロークKH1は、図3の区間35に対応する開始区間40を有する。その後、ねじが回転されるが高い負荷モーメントは生成されない区間42が続く。ポイント43において、ピストン13が前部停止部と接する。その結果、区間44に示されるより急激な圧力増加が生じる。ねじ締め操作の間、区間42における圧力変化が間をおいて測定されることにより勾配dp/dtが決定する。この勾配が図3中の値p’よりも小さい場合には、まだ阻止状態に達していない、つまりねじはまだ回転中である。区間42における勾配を基本的特性GKLの勾配p’と比較することで、阻止状態に達したか否かが決定される。
【0021】
区間44では阻止状態に達して、次に、ピストンの戻りストロークが生じる区間45が続く。その後、次のピストンストロークKH2が続く。
【0022】
ピストンストロークKH2における開始区間40は先行のピストンストロークにおける開始区間40よりも長く、すなわち、この開始区間40は、KH1中にポイント44にて達したトルクに再び達するまで続く。その後に、ねじが回転抵抗に対して回転される区間42が開始する。
【0023】
ピストンが阻止されていない限り、圧力センサ32にて測定された圧力pはねじに作用しているトルクと一致する。これにより、アセンブリトルクMと一致する圧力値が決定される。例えば図4のポイント46にてこの圧力に達すると、トルクが監視されるトルクモードDMMから、定義された角度範囲にわたって回転する回転角モードDWMに推移し、この推移は、ねじ締め操作が中断されることなく起こる。回転角モードDWMの開始時に時間測定が開始される。これは、図4の均一な間隔0〜6で示される。
【0024】
この時間測定は以下の概念に基づいている。集合体の体積流量は単位時間毎の体積として決定される。油圧シリンダの充填量が分かっているため、単位時間毎のピストン移動を決定することができる。ピストンがレバーシステムに作用することで、ねじが回転される。レバーの長さが分かっているため、単位時間毎の回転角を決定することができる。同一の体積流量、同一のホースの長さ及び同一のパワーレンチであると仮定すると、1°(角度数)についての時間を定義することができる。例えば、この時間は1°につき64ミリ秒である。ねじ回転中にこの時間が経過すると、角度数がそれぞれ算出され、それまで適用されていた角度数に追加される。図4の0〜8と符号付けされた間隔は各々1つの角度数に相当する。
【0025】
ピストンストロークKH2の終わり、つまりポイント43では、1つの間隔の64ミリ秒一部分のみが経過している。戻りストロークが行われる前に、それぞれのカウンタ値が記憶される。この時点で間隔2は中断され、また、圧力pがピストンストロークKH2の有効部分が終了したレベルと同一レベルに達した次のピストンストロークKH3のポイント48で継続される。これにより、間隔2はその後ポイント48から最終値まで算出される。その後、間隔3が開始し、次に間隔4、5、6が続く。更に間隔6がまた、ピストンストロークKH3の有効部分の終了により中断され、圧力が対応する高レベルにまで増加すると、次のピストンストロークKH$の間に限り継続される。これにより、アセンブリトルクMF の到達後に経過しなければならない時間間隔の数を定義することができる。この数は、所望の回転角範囲に対応する。
【0026】
図4は、パワーレンチがねじと再び係合するため、また、先行のピストンストロークが終了したモーメントを超えるために到達しなければならない区間40の勾配p’1=dp/dtを示している。その後、ねじが締められる区間42では上昇が減少し、この減少が、ピストンの阻止状態に達し、図3中の勾配p’と等しい勾配p’3が得られるまで継続する。
【0027】
上述のねじ締め方法では、ねじは、測定した圧力pからトルクを決定することによってアセンブリトルクMF に達するまで締められ、最終的には、決定された回転角に達するまで更に回転される。ねじ締め操作の開始前に、アセンブリトルクと回転角とが手動入力される。これらの値は、ねじ締め操作のための設定値である。
【0028】
本発明による回転角方法は、先行のトルクモードなしで、つまり純粋な角回転として実施することも可能である。更に、これはねじ締め操作に限定されるものではない。むしろ、パイプ及びロッドをねじれ抵抗に対して油圧回転させてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】ねじを回転させるための油圧集合体とパワーレンチとを備えたねじ締め装置の略図的な実施形態を示す図である。
【図2】ピストン/シリンダドライブを含むパワーレンチの略図である。
【図3】圧力集合体、接続ホース、ピストン/シリンダドライブを備える油圧式システムの基本的特性の一例を示す図である。
【図4】数ピストンストロークから成る作業操作の時間的経過を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
油圧ピストン/シリンダドライブ(11)及びラチェット(15a、17)を用いた、回転可能な部品の角度制御された回転方法において、
作業操作の前に、ピストン/シリンダドライブに供給される定義された体積流量での回転角と回転時間との関係として角速度が決定され、次の作業操作では、前記ピストン/シリンダドライブに定義された体積流量が供給され、その期間が測定され、回転角モード(DWM)にて、前記期間及び角速度から回転角が決定されることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記回転角モード(DWM)が行われる前に、トルクモード(DMM)が行われ、前記回転部品が、アセンブリトルク(MF )に達するまで回転され、前記ピストン/シリンダドライブに、定義された体積流量が供給され、前記トルクモードは、前記ピストン/シリンダドライブにおける圧力増加が前記アセンブリトルク(MF )に相当する値に達したとき停止されることを特徴とする請求項1に記載の方法
【請求項3】
前記ピストン/シリンダドライブの未負荷時に基本的特性(GKL)が決定され、前記基本的特性は、圧力(p)の時間的経過を示し、前記ピストン/シリンダドライブ(11)の阻止によって生じた上昇区間(38)を有し、また、現在の作業操作における圧力の時間的経過の上昇(p’3)が、前記基本的特性(GKL)の上昇区間(38)の上昇と等しい場合に、前記ピストン/シリンダドライブ(11)の反転が実行されることを特徴とする請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記回転角モード(DWM)にて、前記期間は、少なくとも2つのピストンストロークについて測定されることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
ピストンストロークの終わりに、前記期間の測定値が記憶され、次のピストンストロークの初期値として受け付けられることを特徴とする請求項4に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−532331(P2007−532331A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−507704(P2007−507704)
【出願日】平成17年4月7日(2005.4.7)
【国際出願番号】PCT/EP2005/003628
【国際公開番号】WO2005/099964
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(504001381)
【Fターム(参考)】