説明

部品収容体

【課題】切り起こし片を起こす作業を無くし、組み立て工数を低減し、専用治具を用いることなく長手方向寸法の異なる複数の円筒部材を固定する部品収容体を提供することにある。
【解決手段】矩形状の基体本体1、及び該基体本体の対向する2つの端辺4上の対向する部位に夫々外向きに突設された挿入保持板部5を有する矩形状基本体体と、各挿入保持板部5に対して夫々組み付けられ、長さの異なる収容部本体品の両端部を保持する起立板部3aを有した分割保持体3と、を備え、挿入保持板部5は、その外側端縁から前記基体本体1側へ向けて伸びるスリット10と、該スリットに沿って順次形成され且つ互いに線対称形状をなす複数の穴形状部分11、12と、を有し、分割保持体3は、挿入保持板部5を嵌合する嵌合穴3bと、該嵌合穴の一部に設けられた凸形状部分3cを有し、凸形状部分3cを穴形状部分11、12と整合する形状とした部品収容体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、複写機、プリンタ等の画像形成装置に使用する部品の運搬や輸送の際に使用される改良された部品収容体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
運搬、或いは保管用の部品収容体内に長尺な円筒部材を収容する場合、収容体の形状、寸法は特定の円筒部材の全長や外形寸法に合わせた専用の構成となっているため、全長や外形寸法の異なる他の円筒部材を収容するために用いることができず、部品収容体の共用化を図ることができないという不都合がある。
特に、円筒部材としてローラを収容する部品収容体は、ローラを支持する保持体とこの保持体を固定するための基板とが接着等の手段によって一体化されて、分離すると破壊される構造となっているから、全長や外形寸法が変更されるたびに既存の部品収容体を廃棄せざるを得ず、資源上の無駄が生じる。
また、上述した部品収容体を構成する分割保持体に使用する材料としては、発泡質の材料、プラスチック製材料等が多用され、産業廃棄物の観点からも好ましくない。
そこで、上述した不都合を解消するために、構成部品の交換を行なわなくても長さの異なる円筒部材を保持、収容することができる技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、矩形形状基体の一方の辺部に沿って配列される分割保持体に対して矩形形状基体の他方の辺部に沿って配列される分割保持体の挿入保持板部に対する挿入方向を変更する技術が開示されている。
図8は従来技術における分割保持体抜け止めのための切り起こし片を説明する概略図である。図8には、分割保持体20の起立板部分20aの切り欠き部に収容された長尺形状の円筒部材22を部分的に示している。
矩形状基体21は、分割保持体20の下方の開口を貫通して分割保持体20の脚板部20bと平行に円筒部材22と反対側に延びる挿入保持板部21aを有し、この挿入保持板部21aを挿入した分割保持体20が矩形状基体21から抜け外れるのを防止するために矩形状基体21と一体の挿入保持板部21aから切り起こした切り起こし片23を有している。
この切り起こし片23は、通常、挿入保持板部21a上に設けた切れ目を適切な角度に立ち上げることによって形成されるが、この場合、矩形状基体21、すなわち、挿入保持板部21aの材質によっては立ち上げに時間が掛かり、立ち上げを簡単化するために専用治具を用いる場合もある。
【特許文献1】特開2007−69968公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、上述したように、部品収容体の組み立てにおいて分割保持体の抜け止めのために切り起こし片を起こす作業が必要となり、組み立て工数が多くなり、また、切り起こし片を起こす作業が困難で専用治具が必要となる、という課題がある。
そこで、本発明の目的は、上述した実情を考慮して、切り起こし片を起こす作業を無くし、組み立て工数を低減し、専用治具を用いることなく長手方向寸法の異なる複数の円筒部材を固定する部品収容体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、矩形状の基体本体、及び該基体本体の対向する2つの端辺上の対向する部位に夫々外向きに突設された挿入保持板部を有する矩形状基体本体と、前記各挿入保持板部に対して夫々組み付けられ、長さの異なる収容部品の両端部を保持する起立板部を有した分割保持体と、を備え、前記挿入保持板部は、その外側端縁から前記基体本体側へ向けて伸びるスリットと、該スリットに沿って順次形成され且つ互いに線対称形状をなす複数の穴形状部分と、を有し、前記分割保持体は、前記挿入保持板部を嵌合する嵌合穴と、該嵌合穴の一部に設けられた凸形状部分を有し、前記凸形状部分を前記穴形状部分と整合する形状とした部品収容体を特徴とする。
また、請求項2に記載の発明は、前記挿入保持板部には2つ穴形状部分を有する請求項1記載の部品収容体を特徴とする。
また、請求項3に記載の発明は、前記分割保持体に設けられた前記凸形状部分が前記挿入保持板部の前記スリット及び前記穴形状部分に対向する頂部を有する角錐形状である請求項1記載の部品収容体を特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、分割保持体の嵌合穴の一部に凸形状部分を設け矩形状基体の挿入保持板部の嵌合穴に合致させる、分割保持体と矩形状基体とを固定する構造としたので、従来技術で必要であった分割保持体の固定を目的とした切り起こし片が不要で、従って、切り起こし片を起こす作業が無くなるため、工数の低減と専用治具を使用する必要が無くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は本発明に係わる部品収容体の組み立て状態を示す斜視図である。図2は本発明の部品収容体の矩形状基体を示す平面図である。図3は本発明の部品収容体の分割保持体を示す斜視図である。図4は矩形状基体における挿入保持板部を拡大して示す図である。
図1乃至図4を参照して説明すると、本発明による部品収容体Aは、補強材1bを間装している上下の薄板1aから構成される矩形状基体本体1と、この矩形状基体本体1の長手方向両側、すなわち、長辺4両側に配置する分割保持体3とからなっている。
矩形状基体本体1は互いに平行な長辺4を有し、この長辺4に沿って互いに間隔を置いて形成されかつ長辺4と直交する方向にこの長辺4から互いに反対方向(基板中央部と反対方向、すなわち、外側方向)に延びるように長辺4と一体に形成された複数の挿入保持板部5を有している。
ここで矩形状基体本体1は長方形基体本体を想定して記載しているので長辺という表現を使用しているが、もちろん、正方形の基体本体も使用可能であるので、その場合には長辺とは言えず、単に対向する端辺となる。
【0008】
分割保持体3は、矩形の基体本体1上に、該基体本体1の対向する端辺から外側へ突出した挿入保持板部5を介して着脱可能に嵌合され、矩形状基体本体1の互いに平行な長辺4に沿って、矩形状基体本体1の両側に複数個配列されている。後述するように分割保持体3に設けた開口3b内に挿入保持板部5が嵌合する。
各長辺4に沿って対向配置された分割保持体3間には、部品収容体Aに収容する長尺形状の円筒部材(図8に部分的に示している部材)、例えば、画像形成装置の構成部品であるマグネットローラが掛け渡される。
矩形状基体本体1の一方の長辺部4に沿って配列される分割保持体3及び矩形状基体本体1の他方の長辺部4に沿って配列される分割保持体3は、矩形状基体本体1に対して起立する方向に延びかつ互いに協働して円筒部材の両端部を保持する起立板部3aを有している。
【0009】
図3(a)は分割保持体3を裏側6から見た図であり、図3(b)は分割保持体3を表側8から見た図である。裏側6と表側8は外観形状が異なっており、矩形状基体本体1に各分割保持体の裏側6同志が対向する場合と、表側8同志が対向する場合で分割保持体3間の距離を僅かながら変えることができる。
分割保持体3の起立板部3aには、図3に拡大して示すように、その上方に、分割保持体3の長手方向全体にわたって鋸歯状部分3eを有し、この鋸歯状部分3eの谷部である凹所3dは収容部品である円筒部材の軸受として役立つように形成する。
【0010】
また、分割保持体3の起立板部3aの下方部分である、鋸歯状部分3eの下の分割保持体3の長手方向の中央区域には、図2において示すような矩形状基体本体1上の挿入保持板部5が貫通する開口(嵌合穴)3bが設けてある。
矩形状基体本体1の一方の長辺4に沿って配列される分割保持体3に対して矩形状基体1の他方の長辺4に沿って配列される分割保持体3によって、具体的には、分割保持体3の起立板部3aの鋸歯状部分3eの凹所3dにより分割保持体3の起立板部3aが長さの異なる円筒部材を保持可能になっている。
この場合、部品収容体Aを構成する矩形状基体本体1は、この矩形状基体本体1の挿入保持板部5の長手方向中心線上で左右対称になるようにスリット10とこのスリット10と直交する第1及び第2穴形状部分11及び12を有している。
【0011】
図1の部品収容体Aは、図2に示す矩形状基体本体1の両方の長辺4に沿って図3に示す分割保持体3が4つずつ配列され、矩形状基体本体1の挿入保持板部5が分割保持体3の嵌合穴(下方の開口)3bに挿入される構成になっている。両方の長辺4上の分割保持体3は背中合わせ(図1)で、すなわち、分割保持体3の裏側6が対向する状態で配列される。
分割保持体3の嵌合穴3bの一部に、すなわち、図3では、嵌合穴3bの中央上辺部に、下方に向けて突出する凸形状部分3cを設け、この凸形状部分3cを矩形状基体本体1の対向する端辺から外側へ突出した挿入保持板部5に設けたスリット10とこのスリット10と直交する第1及び第2穴形状部分11及び12に合致させる構造としている。
【0012】
矩形状基体本体1の挿入保持板部5に設けた第1及び第2穴形状部分11及び12のずれは、本発明の部品収容体Aに、従来例を説明する図8に部分的に示している円筒部材を収容する際、異なる長さの円筒部材の収容を可能にするのに役立つようになっている。
すなわち、矩形状基体本体1の両方の長辺4上の分割保持体3は長辺4と直交する方向において第1及び第2穴形状部分11及び12に対応する距離だけ矩形状基体本体1上の対向する分割保持体3の間隔を変更することができる。
挿入保持板部5において第1穴形状部分11と第2穴形状部分12の穴形状は第1穴形状部分11に対して第2穴形状部分12が挿入保持板部5の軸線方向において逆形状に形成されている。
【0013】
長手方向の寸法が異なる軸物である上述した円筒部材を本部品収容体Aに収容して保持する場合に、分割保持体3は、矩形状基体本体1上で図1の配置状態から180度回転させた状態で配置され、矩形状基体本体1の挿入保持板部5を分割保持体3の嵌合穴(下方の開口)3bに挿入する。
その際に、分割保持体3の凸形状部分3cと挿入保持板部5の穴形状部分が挿入方向と直交する方向において同一の形状では、意図する穴形状部分への凸形状部分3cの嵌合を行なう時に誤ってしまう恐れがある。このため、第1穴形状部分11に対して第2穴形状部分12を逆の形状で配置している。
長手方向の寸法が(もう一方にくらべて)短い軸物、すなわち、短い円筒部材を対向する分割保持体3間に保持することを可能とするには、両長辺4間での分割保持体3の距離を縮める必要がある。
【0014】
第1穴形状部分11と第2穴形状部分12の穴形状が同一形状であると、短い寸法の円筒部材を保持する場合に、分割保持体3の起立板部3aが矩形状基体本体1上に整列されない可能性がある。このため、図4に示すような穴配置と、分割保持体3を矩形状基体本体1上で180度回転させた状態で、開口(嵌合穴)3bに挿入保持板部5を挿入するのが好都合である。
すなわち、分割保持体3の凸形状部分3cにおける凸形状をそれぞれの穴形状部分11、12に嵌合させることによって、矩形状基体本体1の互いに平行な両長辺4に沿って配列されている分割保持体3間の距離を変化させることができ、長手方向において寸法の異なる円筒部材を収納することが可能になる。
【0015】
分割保持体3の凸形状部分3cは、挿入される挿入保持板部5に対して頂部を有する、図4の略菱型形状又は矢じり形状の第1及び第2の穴形状部分11、12に対応する角錐形状の構造になっている。すなわち、図4の第1及び第2穴形状部分11及び12の略菱型形状に嵌合するように、凸形状部分3cは、嵌合穴3bの上辺部中央から、船底状の突起を有する、略菱形部分として突出するようになっている。
このようにすると、分割保持体3における凸形状部分3cが、これに挿入される挿入保持板部5に対向する頂部を持つことになり、嵌合穴3bへの挿入保持板部5の挿入に際してスリット10内を摺動して第1の穴形状部分11又は第2の穴形状部分12への凸形状部分3cの配置に抵抗を受け難くなり挿入が容易になる。
【0016】
図5は挿入保持板部を分割保持体の嵌合穴に挿入する手順を示す概略図である。図6は挿入保持板部の第1の穴形状部分に嵌合している分割保持体の嵌合穴の凸形状部分を示す上面図である。図7は図6の状態を示す断面図である。
図5乃至図7を参照して説明すると、図3の分割保持体3の嵌合穴3bに図4に示す穴形状部分11、12を有する挿入保持板部5を挿入する。この挿入保持板部5は、嵌合穴3bに下向きに突出している凸形状部分3cの頂部と挿入保持板部5のスリット10に案内され、凸形状部分3cが挿入保持板部5の所定の穴形状部分11又は12に嵌合する。
【0017】
図6に示す第1の穴形状部分11と凸形状部分3cの嵌合では、矩形状基体本体1の互いに平行な両長辺4に沿って対向配列されている分割保持体3間の距離が大きくなるので、例えば、図8の従来例で部分的に示した円筒部材において、この円筒部材の寸法が長手方向において大きくなっても両長辺4の分割保持体3間に収納することが可能になる。
上述したように、本発明によれば、矩形状基体本体1の互いに平行な両長辺4に沿って対向配列されている分割保持体3の凸形状部分3cが挿入保持板部5の所定の穴形状部分11又は12に嵌合する構成であるので、従来技術におけるように、矩形状基体本体1の挿入保持板部にカッター等の切断手段で切り込みを設け、この切り込みを、矩形状基体本体1への分割保持体3の取り付け時に挿入保持板部からの分割保持体3の抜け止めを形成するために工具又は手で切り起こして抜け止め切り起こし片を形成するという作業が不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係わる部品収容体の組み立て状態を示す斜視図である。
【図2】本発明の部品収容体の矩形状基体を示す平面図である。
【図3】本発明の部品収容体の分割保持体を示す斜視図である。
【図4】矩形状基体における挿入保持板部を拡大して示す図である。
【図5】挿入保持板部の分割保持体の嵌合穴への挿入を示す概略図である。
【図6】挿入保持板部の第1の穴形状部分に嵌合している分割保持体の嵌合穴の凸形状部分を示す上面図である。
【図7】図6の状態を示す断面図である。
【図8】従来技術における分割保持体抜け止めのための切り起こし片を説明する概略図である。
【符号の説明】
【0019】
A 部品収容体、1 矩形状基体、3 分割保持体、3a 起立板部、3b 嵌合穴(開口)、3c 凸形状部分、3d 凹所(鋸歯状部分の谷部)、3e 鋸歯状部分、4 矩形状基体の互いに平行な両長辺部、5 挿入保持板部、6 分割保持体の裏側、8 分割保持体の表側、10 挿入保持板部のスリット、11 挿入保持板部の第1穴形状部分、12 挿入保持板部の第2穴形状部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状の基体本体、及び該基体本体の対向する2つの端辺上の対向する部位に夫々外向きに突設された挿入保持板部を有する矩形状基体本体と、
前記各挿入保持板部に対して夫々組み付けられ、長さの異なる収容部品の両端部を保持する起立板部を有した分割保持体と、を備え、
前記挿入保持板部は、その外側端縁から前記基体本体側へ向けて伸びるスリットと、該スリットに沿って順次形成され且つ互いに線対称形状をなす複数の穴形状部分と、を有し、
前記分割保持体は、前記挿入保持板部を嵌合する嵌合穴と、該嵌合穴の一部に設けられた凸形状部分を有し、
前記凸形状部分を前記穴形状部分と整合する形状としたことを特徴とする部品収容体。
【請求項2】
前記挿入保持板部には2つの穴形状部分を有することを特徴とする請求項1記載の部品収容体。
【請求項3】
前記分割保持体に設けられた前記凸形状部分が前記挿入保持板部の前記スリット及び前記穴形状部分に対向する頂部を有する角錐形状であることを特徴とする請求項1記載の部品収容体。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2009−208826(P2009−208826A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−55545(P2008−55545)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】