説明

部品実装機における基板搬送装置及び基板搬送方法

【課題】基板搬送時に生じる基板の品質劣化が防止でき且つ歩留まり及び生産性の向上を図ることができる部品実装機における基板搬送装置及び基板搬送方法を提供すること。
【解決手段】基板Kを部品実装部3に順次供給する基板ローダー部2と、供給されてきた基板Kに部品を実装する部品実装部3と、部品が実装された基板Kを部品実装部3から順次取り出す基板アンローダー部4とを有する部品実装機1における基板搬送装置であって、前記基板ローダー部2、前記部品実装部3、前記基板アンローダー部4の少なくともいずれかの部位に、前記基板Kの搬送方向に沿って互いに平行に配設され、前記基板Kを浮上させるための圧縮空気を吹き出すように構成された一対のレール部材5A,5Bと、当該一対のレール部材5A,5B上に浮上した基板Kを前記搬送方向に駆動する基板駆動手段7とを備える構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品実装機における基板搬送装置及び基板搬送方法に関する。より詳しくは、半導体チップ等の部品を回路基板上に実装する部品実装機に適用される基板搬送装置及び基板搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
部品を回路基板上に実装する部品実装機は、図7に示すように、基板Kを順次部品実装部9bに供給する基板ローダー部9aと、供給されてきた基板Kに部品を実装する部品実装部9bと、部品が実装された基板Kを部品実装部9bから順次取り出す基板アンローダー部9cとを有する。部品実装機における基板Kの供給及び取り出しは、基板搬送装置により行う。従来の基板搬送装置として、例えばベルトコンベア方式(特許文献1参照)、ローラコンベア方式(特許文献2参照)、レール方式(特許文献3参照)などがある。
【0003】
ベルトコンベア方式の基板搬送装置では、図7(A)に示すように、プーリ91間に掛け渡された無端状のベルト92と、プーリ92を駆動するためのACサーボモータ93とを備える。ベルト92上に載置された基板Kは、ACサーボモータ93を回転駆動することにより、搬送方向Lに搬送される。
【0004】
ローラコンベア方式の基板搬送装置では、図7(B)に示すように、基板Kの搬送方向Lに直交する両サイドに配設された複数対のフリーローラ94と、基板Kを搬送方向Lに駆動する駆動装置(図示せず)とを備える。駆動装置は、例えば基板Kの後端面を搬送方向Lに押圧するプッシャーや、基板Kの両サイドを把持した状態で搬送方向Lに駆動する可動式グリッパなどで構成される。両サイドが複数対のフリーローラ94上に支持された基板Kは、駆動装置により搬送方向Lに駆動され、フリーローラ94を順次乗り変えながら搬送される。
【0005】
レール方式の基板搬送装置では、図7(C)に示すように、互いに平行な状態で基板Kの搬送方向Lに直交する両サイドに配設された1対のレール96と、上記と同様な駆動装置とを備える。1対のレール96上に載置された基板Kは、駆動装置により搬送方向Lに沿う方向に駆動され、1対のレール96上を摺動しながら搬送される。
【0006】
【特許文献1】特開平8−18293号公報
【特許文献2】特開平9−278181号公報
【特許文献3】特開平8−46390号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述した従来の各基板搬送装置では、それぞれ次のような問題があった。すなわち、ベルトコンベア方式の基板搬送装置では、基板Kは、ベルト92の表側面と基板Kの裏側面との間に生じる摩擦力により保持されているため、高速での搬送が困難であり、歩留まり及び生産性の向上が期待できなかった。また、ベルト92は、基板Kとの表面接触やプーリ91における折り返し動作に伴って摩耗を生じ、装置の稼働頻度が多い場合、2年に1回程度の割合で定期的に交換する必要があった。ローラコンベア方式の基板搬送装置では、フリーローラから次のフリーローラに基板Kが乗り変わるときに生じる衝撃により、部品実装後の基板Kの品質に悪影響を与えることがあった。したがって、高速での搬送も困難であった。レール方式の基板搬送装置では、基板Kとレール96との摩擦により発塵や静電気が生じ、ローラコンベア方式の場合と同様に、部品実装後の基板Kの品質に悪影響を与えることがあった。
【0008】
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたものであり、基板搬送時に生じる基板の品質劣化が防止でき且つ歩留まり及び生産性の向上を図ることができる部品実装機における基板搬送装置及び基板搬送方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の課題を解決するために、請求項1の発明は、基板Kを部品実装部3に順次供給する基板ローダー部2と、供給されてきた基板Kに部品Cを実装する部品実装部3と、部品Cが実装された基板Kを部品実装部3から順次取り出す基板アンローダー部4とを有する部品実装機1における基板搬送装置であって、前記基板ローダー部2、前記部品実装部3、前記基板アンローダー部4の少なくともいずれかの部位に、前記基板Kの搬送方向Lに沿って互いに平行に配設され、前記基板Kを浮上させるための圧縮空気を吹き出すように構成された一対のレール部材5と、当該一対のレール部材5上に浮上した基板Kを前記搬送方向Lに駆動する基板駆動手段7とを備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2の発明では、前記一対のレール部材5は、それぞれ前記圧縮空気を吹き出す微少口径の圧空噴出孔を多数有する長尺状の多孔質部材51と、当該多孔質部材51に取り付けられ多孔質部材51の上面から圧縮空気が噴出するように圧縮空気を導く空気通路522及びこの空気通路522に圧縮空気を導入するための圧空導入ポート523を備えた長尺状の圧空導入体52とにより構成される。
【0011】
請求項3の発明は、前記一対のレール部材5の外側には、前記基板Kの搬送方向Lと平行して設けられ前記基板Kがその搬送方向Lに直交する方向へ逸脱する動きを規制するための規制部材53を備える。
【0012】
請求項4の発明では、前記一対のレール部材5は、前記基板ローダー部2、前記部品実装部3及び前記アンローダー部4にそれぞれ個別に配設され、これら各部位における一対のレール部材5A,5B,5Cには、それぞれ個別に圧空導入ポート523A,523B,523Cが設けられ、基板Kの搬送に伴い、基板Kの搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板Kの搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポート523A,523B,523Cに供給する圧縮空気を切り替えて導入する切替手段63A,63B,63Cを備える。
【0013】
請求項5の発明は、前記一対のレール部材5間に前記基板Kを所定の一定温度に保持するためのヒーター8を備える。
【0014】
請求項6の発明は、請求項1から請求項5のいずれかに記載の部品実装機における基板搬送装置を用いた部品実装機における基板搬送方法であって、前記一対のレール部材5から、前記基板Kを浮上させるための圧縮空気を吹き出し、当該一対のレール部材5上に浮上した基板Kを前記搬送方向Lに基板駆動手段7により駆動することを特徴とする。
【0015】
請求項7の発明は、請求項4または請求項5に記載の部品実装機における基板搬送装置を用いた部品実装機における基板搬送方法であって、基板Kの搬送に伴い、前記切替手段63A,63B,63Cにより、基板Kの搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板Kの搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポート523A,523B,523Cに供給する圧縮空気を切り替えて導入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
請求項1,2,6の発明によると、基板Kはレール部材5上に浮上した状態で基板駆動手段7により駆動されて搬送されるため、摩耗や衝撃や発塵や静電気が生じない。したがって、高速での基板Kの搬送が可能であり、歩留まり及び生産性の向上が期待できる。併せて、前述の摩耗や衝撃や発塵や静電気に起因する基板Kの品質劣化が防止できる。
【0017】
請求項3の発明によると、レール部材5の外側に設けた規制部材53により、基板Kの傾きが矯正され安定して基板Kを搬送することができる。
【0018】
請求項4,7の発明によると、基板Kの搬送に伴い、前記切替手段63A,63B,63Cにより、基板Kの搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板Kの搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポート523A,523B,523Cに供給する圧縮空気を切り替えて導入するため、搬送中の基板Kの下面にのみ圧力膜を形成することができ、圧縮空気の消費量を節減することができる。
【0019】
請求項5の発明によると、搬送中の基板Kは、ヒーター8により温度が所定の一定温度に保持されるため、吸湿から生じる基板Kの品質劣化を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照しながら説明する。図1は本発明に係る基板搬送装置を適用した部品実装機の正面概略図、図2は本発明に係る基板搬送装置を適用した部品実装機の平面概略図である。図1,2において、直交座標系の3軸をX、Y、Zとし、基板は水平面であるXY平面をX軸方向(搬送方向L)に搬送されるものとする。
【0021】
図1,2に示すように、本発明に係る基板搬送装置を適用した部品実装機1は、基板ローダー部2と部品実装部3と基板アンローダー部4とを備える。
【0022】
基板ローダー部2は、基板Kを部品実装部3に順次供給する部位であり、複数枚の基板Kをストックする基板マガジン21と、基板マガジン21を昇降させるマガジン昇降機構22と、基板Kの搬送方向Lに沿って互いに平行に対向配設された一対のレール部材5Aと、一対のレール部材5Aに接続された圧空供給部6Aと、基板Kの後端面K1を搬送方向Lに押圧して基板マガジン21から基板Kを送り出す第1プッシャー24と、基板Kの後端面K1を搬送方向Lに押圧する第2プッシャー7Aと、一対のレール部材5A間に各レール部材5Aと間隔を開けて基台20に固定配設されたヒーター8Aとを備える。
【0023】
部品実装部3は、供給されてきた基板Kに半導体チップ等の部品Cを実装する部位であり、基板Kの搬送方向Lに沿って互いに平行に対向配設された一対のレール部材5Bと、一対のレール部材5Bに接続された圧空供給部6Bと、一対のレール部材5Bを基板搬送位置B1と部品実装位置B2との間で昇降させるレール昇降機構31と、基板真空吸着孔32及び内部ヒーター(図示せず)を備え一対のレール部材5B間に各レール部材5Bと間隔を開けて昇降可能に基台30に配設されたステージ33と、実装すべき部品Cをストックするための部品ストッカー34と、部品ストッカー34における部品Cを真空吸着によりピックアップし且つ基板K上の実装箇所において加圧可能に構成された実装ヘッド35と、実装ヘッド35に吸着保持された部品Cとステージ33に載置保持された基板KとのそれぞれのXY方向位置を同時に読み取る2視野カメラ36と、2視野カメラ36で読み取った位置データに基づいて基板Kと部品Cとの位置関係が正確な実装箇所となるようにステージ33をXY方向に駆動してアラインメント(位置補正)を行うアラインメント機構37と、基板Kの後端面K1を搬送方向Lに押圧する第3プッシャー7Bと、基台30から出没自在に設けられたストッパー38とを備える。
【0024】
なお、一対のレール部材5Bは、基板搬送位置B1では、図1の実線に示されるように、レール部材5Bの上面がステージ33の基板載置面よりも高くなる。レール部材5Bが基板搬送位置B1にあるとき、基板Kはレール部材5Bの上方に浮上可能となる。部品実装位置B2では、図1の2点鎖線に示されるように、レール部材5Bの上面がステージ33の基板載置面よりも低くなる。レール部材5Bが部品実装位置B2にあるとき、基板Kはステージ33上に載置可能となる。
【0025】
基板アンローダー部4は、部品Cが実装された基板Kを部品実装部3から順次取り出す部位であり、部品実装済みの複数枚の基板Kをストックする基板マガジン41と、基板マガジン41を昇降させるマガジン昇降機構42と、基板Kの搬送方向Lに沿って互いに平行に対向配設された一対のレール部材5Cと、実装済みの基板Kの後端面K1を搬送方向Lに押圧して基板Kを基板マガジン41に受け渡す第4プッシャー7Cと、基台40上における一対のレール部材5C間に各レール部材5Cと間隔を開けて基台40に固定配設されたヒーター8Cとを備える。
【0026】
部品実装機1において、本発明に係る部品実装機における基板搬送装置は、基板ローダー部2、部品実装部3及び基板アンローダー部4の3つの部位にそれぞれ一つずつ配設される。すなわち、基板ローダー部2におけるレール部材5A、圧空供給部6A、第2プッシャー7A及びヒーター8A、部品実装部3におけるレール部材5B、圧空供給部6B、第3プッシャー7B及びステージ33、並びに基板アンローダー部4におけるレール部材5C、圧空供給部6C、第4プッシャー7C及びヒーター8Cを構成要素とする。この基板搬送装置の各構成要素について、主に図3,4を参照して説明する。
【0027】
なお、上記3つの各部位における構成要素は、基本的にはいずれも同様なものであり、基板ローダー部2、部品実装部3及び基板アンローダー部4の各部位における構成要素で、説明上、部位毎に区別する必要のある場合は、各符号の末尾に「A」「B」「C」を付記するが、区別する必要のない場合は、これらの各文字を省略する。「A」は基板ローダー部2の構成要素であることを示し、「B」は部品実装部3の構成要素であることを示し、「C」は基板アンローダー部4の構成要素であることを示す。
【0028】
図3は図2のI−I線矢示図、図4はレール部材の正面一部断面図である。図3,4に示すように、レール部材5は、長尺状の多孔質部材51と、長尺状の多孔質部材51が嵌合し且つ接着される長尺状の枠体52と、長尺状の枠体52の外側に設けられたサイドガイド53とを備える。
【0029】
長尺状の多孔質部材51は、30μm〜90μmの微少径孔を多数有する市販のカーボン系の多孔質体をレール状に加工したもので構成される。なお、ステンレス、セラミックス、またはシリコン若しくはPTFE(四フッ化エチレン)などの樹脂系の材料で構成してもよい。多孔質部材51は、搬入された基板Kの下側面両サイドに向けて0.2MPa程度の圧力で圧縮空気を噴出する手段として機能する。圧縮空気の噴出により、多孔質部材51と基板Kの下面両サイドとの間には均一な圧力膜が形成され、これにより基板Kを多孔質部材51の上面から30μm程度浮上させることができる。
【0030】
本形態では、多孔質部材51の幅は、ヒーター8による加熱面を広く確保するため3mm〜5mm程度とされるが、熱膨張による基板Kの反りを抑制防止する目的で金属製のキャリアに基板Kを搭載して搬送する形態とした場合は、キャリアへの圧縮空気の作用面積を大きくする必要があるため3mm〜20mm程度とすることが好ましい。
【0031】
長尺状の枠体52は、長尺状の多孔質部材51を内側に嵌合可能とする長溝521が形成され、長溝521の下側には、長溝521よりも幅細の長溝522が形成される。この長溝522は、多孔質部材51の上面から圧縮空気が噴出するように圧縮空気を導く空気通路として機能する。長尺状の枠体52は、長溝522に圧縮空気を導入するための圧空導入ポート523を備える。多孔質部材51は、少なくとも基板Kの搬送面のみが多孔質となっていればよいため、長溝522及び圧空導入ポート523は側面に形成してもよい。サイドガイド53は、搬送中の基板Kが搬送方向Lに直交する方向へ逸脱する動きを規制する手段として機能する。
【0032】
なお、上述したレール部材5は、長尺状の枠体52の中に長尺状の多孔質部材51を埋め込むタイプであるが、例えば図5に示すように、長尺状の多孔質部材51と同一幅であり断面視が略凹字形を呈する長尺状のプレート部材54を、長尺状の多孔質部材51の下に設け、幅方向(Y方向)の外側及び内側にそれぞれサイドガイド53及び内側プレート55を接着剤等の固着手段により固定する形態とすることもできる。この場合、プレート部材54の凹部541が、圧縮空気を導く空気通路として機能する。凹部541の幅は0.5mm〜1mm、深さは0.1mm〜1mm程度が好ましい。この形態によると、上述した長尺状の枠体52に比べて、加工に要する手間が少なくて手済み、装置の低コスト化を図ることができる。
【0033】
圧空供給部6は、圧空供給ポンプ61(図2参照)、継ぎ手62、開閉バルブ63及び配管64から構成される。圧空供給ポンプ61は、継ぎ手62、開閉バルブ63及び配管64を介して基板ローダー部2、部品実装部3及び基板アンローダー部4における各長尺状の枠体52の圧空導入ポート523に接続される。各開閉バルブ63は図示しない制御装置により個別に制御可能とされる。なお、多孔質部材51に供給する一次側空気には、複数の多段フィルターを通過させた清浄空気(例えばクラス100のクリーンエア)を用いる。これにより、基板Kにゴミ等が付着することがなく、不良発生のおそれもない。また、供給する圧縮空気にイオナイザーを介することで静電気の除電ブローとしての役割を持たせることも可能である。
【0034】
プッシャー7は、図2によく示されるように、平面視が略「L」字形状を呈するアーム71と、アーム71をX方向及びZ方向に駆動するためのアクチュエータ72とを備える。アーム71は、X方向及びZ方向への駆動により基板Kの後方端部に配置された状態でX方向に駆動されることで後端面K1を押圧可能とされる。プッシャー7に代えて、例えば、基板Kの前端サイドまたは基板Kの横両サイド若しくは横片サイドを把持した状態で搬送方向Lに駆動する可動式グリッパなどを使用してもよい。
【0035】
ヒーター8は、搬送中の基板Kに加熱面が対向するように一対のレール部材5間に配設された扁平型のものであり、基板Kの温度が80〜120°C程度に保持されるように加温制御される。一対のレール部材5A間の距離を基板Kの幅程度にすることで、ヒーター8Aを配設するのに十分なスペースが確保できる。
【0036】
次に、以上のように構成された部品実装機1の実装動作について、図1〜6を参照して説明する。図6は実装動作時における開閉バルブの開閉状態を示すタイムチャートである。
【0037】
基板ローダー部2において、第1プッシャー24は、基板マガジン21にストックされた基板Kのうち最下段にある基板KをX方向に押し出す。なお、ストックされた基板Kの実装箇所には予めアンダーフィル剤(接着剤)が塗布されている。このとき、開閉バルブ63Aは開いている(図6のt1参照)ため、圧空供給ポンプ61からレール部材5Aに圧縮空気が供給され、多孔質部材51Aからは、上方向に0.2MPa程度の圧力で圧縮空気が吹き出す。レール部材5Aの上方に押し出された基板Kは、吹き出した圧縮空気により30μm程度浮上した状態となる。この状態で第1プッシャー24は元の位置に戻り、第2プッシャー7Aのアーム71Aが基板Kの後方に配置された後、X方向に駆動されることで、基板Kを部品実装部3に受け渡す。
【0038】
基板Kの前端面K2が部品実装部3に差し掛かる直前に、開閉バルブ63Bが開くことにより(図6のt3参照)、レール部材5Bには圧空供給ポンプ61から圧縮空気が供給され、多孔質部材51Bからは、上方向に0.2MPa程度の圧力で圧縮空気が吹き出す。レール部材5Bの上方に搬入された基板Kは、吹き出した圧縮空気により30μm程度浮上した状態となる。この状態で第2プッシャー7Aのアーム71Aは元の位置に戻り、第3プッシャー7Bのアーム71Bは、基板Kの後方に配置された後、X方向に駆動される。基板Kの全ての部分が部品実装部3に搬入された時点で、開閉バルブ63Aは閉じ(図6のt2参照)、レール部材5Aからの圧縮空気の噴出は停止する。基板Kがレール部材5A上を浮上しながらステージ33の真上に到達すると、第3プッシャー7Bのアーム71Bが停止すると共に基板ストッパー38が突出し、基板Kはその前端面K2が基板ストッパー38に当接することにより停止する。そして、レール部材5Bは基板搬送位置B1から部品実装位置B2まで降下する。レール部材5Bの降下により、基板Kはステージ33上に載置される。基板Kを載置した状態でステージ33は、基板真空吸着孔32に真空圧を作用させることにより基板Kを吸着保持する。
【0039】
この時点で開閉バルブ63Bは一旦閉じ(図6のt4参照)、レール部材5Bからの圧縮空気の噴出は停止する。実装ヘッド35は、部品ストッカー34にストックされた実装すべき部品Cをピックアップした後、基板K上の実装箇所の上部に配置される。2視野カメラ36は、部品Cとステージ33上の基板KとのXY方向位置を同時に読み取る。この位置データに基づいてアラインメント機構37は、基板Kと部品CとのXY位置関係が正確な実装箇所となるようにステージ33を駆動してアラインメントを行う。アラインメントを行った後、実装ヘッド35が降下し、部品Cを基板Kの実装箇所に加圧して実装を行う。実装後、実装ヘッド35は上昇して元の位置に戻り、ステージ33は基板Kの吸着保持を解除する。そして、開閉バルブ63Bが再び開く(図6のt5参照)と共にレール部材5Bは部品実装位置B2から基板搬送位置B1まで上昇する。その結果、基板Kは再びレール部材5B上に浮上した状態となる。基板ストッパー38が引っ込み、第3プッシャー7Bのアーム71Bが基板Kの後方に配置された後、X方向に駆動されることで、基板Kを基板アンローダー部4に受け渡す。
【0040】
基板Kの前端面K2が基板アンローダー部4に差し掛かる直前に、開閉バルブ63Cが開くことにより(図6のt7参照)、レール部材5Cには圧空供給ポンプ61から圧縮空気が供給され、多孔質部材51Cからは、上方向に0.2MPa程度の圧力で圧縮空気が吹き出す。基板Kの全ての部分が基板アンローダー部4に搬入された時点で、開閉バルブ63Bは閉じ(図6のt6参照)、レール部材5Bからの圧縮空気の噴出は停止する。レール部材5Cの上方に搬入された基板は、吹き出した圧縮空気により30μm程度浮上した状態となる。この状態で第4プッシャー7Cのアーム71Cは、基板Kの後方に配置された後、X方向に駆動されることで、基板Kを押圧して基板マガジン41にストックする。
【0041】
このような実装動作中において、ヒーター8A,8C及びステージ33の内部ヒーターは、基板Kの温度が80〜120°C程度に保持されるように加温制御される。
【0042】
以上のようにして、一枚の基板Kについての実装動作が終了する。次の基板Kに対する実装時には、基板マガジン21は、前回送り出された基板Kの1枚上段の基板Kが送り出されるように、マガジン昇降機構22により所定量降下し、第1プッシャー24により送り出される。そして、上記実装動作と同様に部品実装部3にて部品Cが実装される。その後、基板マガジン41は、前回ストックされた基板Kの上段に次の基板Kがストックされるように、マガジン昇降機構42により所定量降下し、第4プッシャー7Cによりストックされる。このような動作を繰り返す。
【0043】
このように、本発明に係る基板搬送装置によると、基板Kはレール部材5上に浮上した状態でプッシャー7により駆動されて搬送されるため、摩耗や衝撃や発塵や静電気の問題がない。したがって、高速での基板Kの搬送が可能であり、歩留まり及び生産性の向上が期待できると共に、基板搬送時に生じる基板の品質劣化が防止できる。併せてプッシャー7の負荷が少なくて済む。高速での搬送は、重量の重い基板に対しても可能であり、特に液晶ドライバー用途の個片フィルム基板を金属キャリアに集合化して搬送する場合に非常に有効である。また、基板Kが傾いた状態で供給された場合、搬送レールの両端に設けたサイドガイド53により、基板Kの傾きが矯正されるため、安定して基板Kを搬送することができる。
【0044】
また、レール部材5A,5B,5Cは、それぞれ個別に配設され、レール部材5Aからレール部材5Cの順に圧縮空気が供給される。すなわち、切替手段63A,63B,63Cにより、基板Kの搬送に伴い、基板Kの搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板Kの搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポート523A,523B,523Cに供給する圧縮空気を切り替えて導入するため、搬送中の基板Kの下面にのみ圧力膜を形成することができ、圧縮空気の消費量を節減することができる。また、搬送中の基板Kは、ヒーター8により温度が所定の一定温度に保持されるため、吸湿から生じる基板Kの品質劣化を防止することができる。例えば、基板が吸湿した水分の体積膨張や蒸発により、基板の実装箇所に塗布されたアンダーフィル剤における実装界面が剥離したりボイドが発生したりすることを防止できる。また、吸湿による体積変化のため基板が反ることも防止でき、部品や基板のバンプと電極との正確な接合ができ、より信頼性の高い実装を達成できる。
【0045】
以上、本発明の実施の形態について説明を行ったが、上に開示した実施の形態は、あくまで例示であって、本発明の範囲はこれら実施の形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、更に特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更を含むことが意図される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る基板搬送装置を適用した部品実装機の概略構成を示す正面図である。
【図2】本発明に係る基板搬送装置を適用した部品実装機の概略構成を示す平面図である。
【図3】図2のI−I線矢示図である。
【図4】レール部材の正面一部断面図である。
【図5】レール部材の他の形態を示す側面一部断面図である。
【図6】実装動作時における開閉バルブの開閉状態を示すタイムチャートである。
【図7】従来の基板搬送装置を適用した部品実装機の概略構成を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 部品実装機
2 基板ローダー部
3 部品実装部
4 基板アンローダー部
5 レール部材
7 プッシャー(基板駆動手段)
8 ヒーター
51 多孔質部材
52 枠体(圧空導入体)
53 規制部材
63 圧空切替手段
522 長溝(空気通路)
523 圧空導入ポート
C 部品
K 基板
L 搬送方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を部品実装部に順次供給する基板ローダー部と、供給されてきた基板に部品を実装する部品実装部と、部品が実装された基板を部品実装部から順次取り出す基板アンローダー部とを有する部品実装機における基板搬送装置であって、
前記基板ローダー部、前記部品実装部、前記基板アンローダー部の少なくともいずれかの部位に、前記基板の搬送方向に沿って互いに平行に配設され、前記基板を浮上させるための圧縮空気を吹き出すように構成された一対のレール部材と、当該一対のレール部材上に浮上した基板を前記搬送方向に駆動する基板駆動手段とを備えることを特徴とする部品実装機における基板搬送装置。
【請求項2】
前記一対のレール部材は、それぞれ前記圧縮空気を吹き出す微少口径の圧空噴出孔を多数有する長尺状の多孔質部材と、当該多孔質部材に取り付けられ多孔質部材の上面から圧縮空気が噴出するように圧縮空気を導く空気通路及びこの空気通路に圧縮空気を導入するための圧空導入ポートを備えた長尺状の圧空導入体とにより構成される請求項1に記載の部品実装機における基板搬送装置。
【請求項3】
前記一対のレール部材の外側には、前記基板の搬送方向と平行して設けられ前記基板がその搬送方向に直交する方向へ逸脱する動きを規制するための規制部材を備える請求項1または請求項2に記載の部品実装機における基板搬送装置。
【請求項4】
前記一対のレール部材は、前記基板ローダー部、前記部品実装部及び前記アンローダー部にそれぞれ個別に配設され、これら各部位における一対のレール部材には、それぞれ個別に圧空導入ポートが設けられ、基板の搬送に伴い、基板の搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板の搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポートに供給する圧縮空気を切り替えて導入する切替手段を備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の部品実装機における基板搬送装置。
【請求項5】
前記一対のレール部材間に前記基板を所定の一定温度に保持するためのヒーターを備える請求項1から請求項3のいずれかに記載の部品実装機における基板搬送装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の部品実装機における基板搬送装置を用いた部品実装機における基板搬送方法であって、前記一対のレール部材から、前記基板を浮上させるための圧縮空気を吹き出し、当該一対のレール部材上に浮上した基板を前記搬送方向に基板駆動手段により駆動することを特徴とする部品実装機における基板搬送方法。
【請求項7】
請求項4または請求項5に記載の部品実装機における基板搬送装置を用いた部品実装機における基板搬送方法であって、基板の搬送に伴い、前記切替手段により、基板の搬送に供する一対のレール部材から圧縮空気が噴出し、基板の搬送に供しない一対のレール部材からは圧縮空気が噴出しないように、各圧空導入ポートに供給する圧縮空気を切り替えて導入することを特徴とする部品実装機における基板搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−158097(P2007−158097A)
【公開日】平成19年6月21日(2007.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−352269(P2005−352269)
【出願日】平成17年12月6日(2005.12.6)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)
【Fターム(参考)】