説明

部品搬送装置及び部品搬送方法

【課題】傾斜した部品待機面を滑降することにより、ロボットアームによるピックアップが行われる位置に供給される部品の姿勢の乱れを抑制し、安定した部品の搬送を行うことを課題とする。
【解決手段】部品搬送装置は、待機部品が連続して並べられ、水平に対する角度が第1の角度とされた第1部品待機面を備えた搬送部を備える。部品搬送装置は、第2部品待機面の法線方向に移動することによって搬送部から連続的に滑降する部品の列を分断するバッファ部を備える。部品搬送装置は、第2部品待機面から供給される複数の部品を載置する部品保持面の水平に対する角度を第1の角度よりも小さい第2の角度とすることができる。ピックアップ部の最前列に供給される部品に対する後続部品の重量の影響は、バッファ部によって緩和される。また、ピックアップ部の最前列へ供給される部品は、角度が緩やかな斜面を滑降し、姿勢の乱れが抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部品搬送装置及び部品搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ロボットアームによりピックアップされる位置に部品を連続的に自動的に供給する装置が種々提案されている。例えば、電子部品が、傾斜状態に設置されたシュートレール上を自重により滑り落ちてハンドによる把持が行われる位置に供給される部品自動供給装置が開示されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平7−10040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、部品が斜面を滑り落ちることによって連続的に所定位置に搬送される場合、複数の部品が移動方向に接触した状態で積み重なり、斜面上に待機させられることがある。複数の部品が斜面上に待機させられる場合、待機状態にある部品の数によって最前列に位置する部品に加わる力が変化する。最前列に位置する部品に加わる力が大きいと、最前列に位置する部品が姿勢を乱し、ロボットアームによる部品のピックアップに影響を与え、部品取り出しに不具合が生じることが懸念される。斜面の傾斜角度が大きければ大きいほど、後続の部品群に押し付けられる力が大きくなり、姿勢が不安定になり易いため、この不具合が生じる傾向が強まる。
【0005】
斜面の途中における姿勢の乱れは、部品群を覆うカバーを装着することにより解決可能であるが、部品のピックアップが行われる部品の最前列にはカバーを装着することができない。このため、部品の持ち上がり等の姿勢の乱れを抑制することが困難な場合がある。
【0006】
最前列の部品の姿勢乱れに対応すべく、最前列の部品を押さえる押さえフィルムを装備することも考えられるが、この押さえフィルムは、部品の取り出し抵抗になることをできるだけ避けなければならない。その一方で、待機状態にある部品群の重量に対抗して最前列の部品の姿勢を維持しなければならない。これらの条件を満たし、適切な部品取り出しを実現するための押さえフィルムの厚さ、押さえ面積を設定することは困難を伴う。また、押さえフィルムは、繰り返しの利用により、折れ曲がったり、押さえ力が低下したりすることが懸念される。
【0007】
一方、最前列の部品に加わる力を抑制するために斜面の傾斜角度を小さくした場合、待機部品数が減るにつれて、斜面途中の部品の姿勢を整えるカバーの影響で部品の搬送不全や搬送姿勢の不安定化を招来するおそれがある。また、最前列の部品を押さえる押さえフィルムも部品滑降の抵抗となり、部品の搬送不全や搬送姿勢の不安定化の一因となる。
【0008】
このように、複数の部品が移動方向に接触した状態で積み重なり、斜面上に待機させられ、待機部品が恰も連結した状態となっていると、刻々と変化する待機部品数が最前列の部品へ与える影響が大きくなる。この結果、上記のような不具合が生じるおそれがある。
【0009】
このような不具合を回避するために、仕切板を用いたり、斜面を可動としたりして斜面上に位置する部品の列を上流側と下流側に分断することも考えられる。しかしながら、斜面の傾斜角度の設定によっては、最前列に移動する部品が勢いよく滑降し、ピックアップ位置に位置決めするストッパに勢いよく衝突して、やはり、部品の姿勢が乱れることが想定される。
【0010】
前記特許文献1に開示された部品供給装置もこれらの問題を解決することができるものとはなっていない。
【0011】
そこで、本明細書開示の部品搬送装置は、傾斜した部品待機面を滑降することにより、ロボットアームによるピックアップが行われる位置に供給される部品の姿勢の乱れを抑制し、安定した部品の搬送を行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本明細書開示の部品搬送装置は、複数の待機部品が連続して並べられ、水平に対する角度が第1の角度とされた第1部品待機面を備えた搬送部と、前記搬送部の下流側に配置されるとともに、前記第1部品待機面から部品が搬送される第2部品待機面を備え、前記第2部品待機面の法線方向に移動することによって前記搬送部から連続的に滑降する部品の列を分断するバッファ部と、前記第2部品待機面から供給される複数の部品を載置する部品保持面を備え、前記バッファ部の下流側において、回転可能に軸支され、前記部品保持面が前記第1の角度から前記第1の角度よりも小さい第2の角度との間で可変とされ、前記部品保持面の下流側端部にロボットアームによってピックアップされる部品が当接する突き当て部を備えるピックアップ部と、部品をピックアップするときの前記ロボットアームによる押し付け力から開放された状態において、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第2の角度に維持する弾性部材と、前記部品保持面が第2の角度にあるときに、前記第1部品待機面上の部品を前記第2部品待機面上へ移動可能とし、ロボットアームによる部品ピックアップ時に前記ロボットアームが前記部品保持面を押し下げて回転させ、前記部品保持面が前記第1の角度となるときに、前記バッファ部を上昇させて、前記第2部品待機面上の部品を前記部品保持面上へ移動可能とし、前記部品保持面の前記ロボットアームによる押し付け力からの開放による前記部品保持面の前記第2の角度への復帰に遅れて前記バッファ部を下降させるタイミング調節機構と、を備える。
【0013】
バッファ部を設けたので、ピックアップ部へ搬送させる部品に対する第1部品待機面に待機している部品の重量の影響を低減することができる。また、突き当て部に向かって部品が滑降するときに、部品保持面の水平に対する角度を小さくし、部品の滑降の勢いを抑制したので、部品が突き当て部に衝突することによる姿勢の乱れを軽減することができる。このように、本明細書開示の部品搬送装置は、ロボットアームによるピックアップが行われる位置に供給される部品の姿勢の乱れを抑制し、安定した部品の搬送を行うことができる。
【0014】
本明細書開示の部品搬送方法は、第1部品待機面が設けられた搬送部に待機した部品を、前記搬送部の下流側に配置され第2部品待機面が設けられたバッファ部を介して、前記バッファ部の下流側に配置され、部品保持面が設けられたピックアップ部へ搬送する部品搬送方法であって、水平に対する角度を第1の角度とした前記第1部品待機面に待機した部品を前記第2部品待機面へ移動可能とするとともに、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第1の角度よりも小さい第2の角度とする工程と、ピックアップされる部品が載置された状態の前記部品保持面に部品をピックアップするロボットアームを押し付け、当該部品保持面の水平に対する角度を前記第2の角度から前記第1の角度とする工程と、前記部品保持面の水平に対する角度の前記第2の角度から前記第1の角度への移行に合せて、前記バッファ部を上昇させ、前記第2部品待機面に待機した部品を前記部品保持面へ移動可能とする工程と、前記ロボットアームによる前記部品保持面の押し付けの解除に伴って、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第1の角度から前記第2の角度に復帰させる工程と、前記部品保持面の前記第2の角度への復帰に遅らせて、前記バッファ部を下降させ、前記第1部品待機面に待機した部品を前記第2部品待機面へ移動可能な状態とする工程と、を含む。
【0015】
バッファ部を上昇させることにより、ピックアップ部へ搬送させる部品に対する第1部品待機面に待機している部品の重量の影響を低減することができる。また、突き当て部に向かって部品が滑降するときに、部品保持面の水平に対する角度を第2の角度として、部品の滑降の勢いを抑制する。これにより、部品が突き当て部に衝突することによる姿勢の乱れを軽減することができる。このように、本明細書開示の部品搬送方法は、ロボットアームによるピックアップが行われる位置に供給される部品の姿勢の乱れを抑制し、安定した部品の搬送を行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本明細書開示の部品搬送装置、部品搬送方法によれば、傾斜した部品待機面を滑降することにより、ロボットアームによるピックアップが行われる位置に供給される部品の姿勢の乱れを抑制し、安定した部品の搬送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は実施例の部品搬送装置の斜視図である。
【図2】図2は実施例の部品搬送装置の先端部分を拡大して示す説明図である。
【図3】図3は実施例の部品搬送装置の先端部分を下面側からみた説明図である。
【図4】図4は各部の傾斜角度を示す説明図である。
【図5】図5はバッファ部の側壁に設けられたディテントを示す説明図である。
【図6】図6(A)、(B)はラッチ部がディテントに係合される様子を示す説明図である。
【図7】図7(A)、(B)はスライダ部材を介したピックアップ部とバッファ部との連動の様子を示す説明図である。
【図8】図8はゲート部材の周辺を示す説明図である。
【図9】図9は部品搬送装置によって搬送される部品の斜視図である。
【図10】図10は部品搬送装置によって搬送される部品が組み込まれた電子装置の斜視図である。
【図11】図11(A)、(B)は部品搬送装置の動作を示す説明図である。
【図12】図12(A)、(B)は部品搬送装置の動作を示す説明図である。
【図13】図13(A)、(B)は部品搬送装置の動作を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しつつ説明する。ただし、図面中、各部の寸法、比率等は、実際のものと完全に一致するようには図示されていない場合がある。
【実施例】
【0019】
図1は、図1は実施例の部品搬送装置1の斜視図である。図2は実施例の部品搬送装置1の先端部分を拡大して示す説明図である。図3は実施例の部品搬送装置1の先端部分を下面側からみた説明図である。
【0020】
部品搬送装置1は、3つの部分を備えている。部品搬送装置1は、部品の100の流れる方向の上流側から順に、搬送部10、バッファ部30、ピックアップ部50を備えている。部品搬送装置1の最先端(最下流)に位置するピックアップ部50に搬送された部品100は、ロボット1000が備えるロボットアーム1001によってピックアップされる。
【0021】
搬送部10は、第1部品待機面11aを備える。搬送部10は、設置台2に取り付けられたフレーム部材11を備えており、このフレーム部材11の上面が第1部品待機面11aとして形成されている。第1部品待機面11aには、複数の待機部品100が連続して並べられる。具体的には、複数の待機部品が移動方向に接触した状態で積み重なる。この第1部品待機面11aの水平に対する角度は、図4に示すように第1の角度に相当するθ1である。
【0022】
搬送部10は、第1部品待機面11a上に並べられた待機部品100を押さえるカバー部材12を備える。カバー部材12は、待機部品100の浮き上がりを押さえる等、待機部品100の姿勢を保持する。このカバー部材12の下流側先端部には、下流側に向かって延びる開放カム13が設けられている。開放カム13については後に詳説する。
【0023】
搬送部10の先端部の下面側には、下流側に向かって延びるステージ部材14が設けられている。ステージ部材14は、板状の部材である。ステージ部材14には、後に詳述するスライダ部材75が装着されるレール部14aが設けられている。ステージ部材14には、後に説明する引き付けスプリング33等の各種部品が取り付けられる。
【0024】
搬送部10は、後に詳述するバッファ部30が法線方向Nに移動する際のガイドとなるガイド溝部15を備えている。
【0025】
バッファ部30は、搬送部10の下流側に配置される。バッファ部30は、第2部品待機面31aを備える。バッファ部30は、バッファ本体部31を備えており、このバッファ本体部31の上面が第2部品待機面31aとして形成されている。この第2部品待機面11aも第1の角度θ1に傾斜させて設けられている。すなわち、図4に示すように、第2部品待機面11aの水平に対する角度は、θ1である。第2部品待機面31aは、一個の部品100を待機させることができる。
【0026】
バッファ部30は、図2に示すように、ガイド突起部34を備える。ガイド突起34は、搬送部10が備えるガイド溝部15と係合して法線方向Nに移動可能とされている。バッファ部30は、法線方向Nに移動することによって、搬送部10から連続的に滑降する部品100の列を分断することができる。部品100の列を分断することにより、バッファ部30よりも下流側に位置する部品100に対する第1部品待機面11a上で待機する部品100の影響を回避することができる。このため、第1部品待機面11a上で待機する部品の数量が変化しても、バッファ部30よりも下流側への部品の搬送に与える影響が緩和される。なお、バッファ部30が法線方向に移動する態様には、バッファ部30が完全に法線方向に一致した方向に移動する態様のみならず、法線方向成分を含んだ方向へ移動する態様も含む。
【0027】
バッファ本体部31の側面31bには、図5に示すように第1ディテント31b1と第2ディテント31b2が設けられている。後に説明するラッチピン36cがこれらの第1ディテント31b1、第2ディテント31b2に係合することによって、バッファ本体部31の移動が規制される。
【0028】
バッファ本体部31の下面には、図3に示すように下面カム部32が設けられている。下面カム部32は、半球形状を備えている。下面カム部32は、2箇所設けられている。それぞれの下面カム部32の中心部には、引き付けスプリング33が収容されている。引き付けスプリング33の一端側は、バッファ本体部31に取り付けられている。引き付けスプリング33の他端側は、ステージ部材14に取り付けられている。引き付けスプリング33は、バッファ本体部31をステージ部材14側へ引き付けるように作用する。引き付けスプリング33は、コイルスプリングを採用しているが、他の弾性部材を採用することもできる。
【0029】
バッファ部30は、バッファ本体部31の側面31bと平行して設けられた第1リンク部材35を備えている。第1リンク部材35は、バッファ本体部31の両側に設けられている。第1リンク部材35の上端側には、後に説明するゲート部材80が装着されるゲート部材取付部35aが設けられている。また、第2部品待機面31a上に供給される部品100が飛び出すことを防止する飛び出し防止部35bが設けられている。
【0030】
ステージ部材14上には、ラッチ部36が設けられている。ラッチ部36は、ステージ部材14上に固定された取付ブラケット36aと、一端が取付ブラケット36aに回転自在に取り付けられたアーム部材36bを含んでいる。アーム部材36bの他端部にはラッチピン36cが設けられている。ラッチピン36cは、図6(A)に示すように第1ディテント31b1に係合したり、図6(B)に示すように第2ディテント31b2に係合したりする。また、ラッチ部36は、アーム部材36bの先端部とステージ部材14との間に配置されたラッチスプリング36dを備えている。ラッチ部36は、ラッチピン36cを第2ディテント31b2に係合させることにより、バッファ部30を法線方向Nに上昇した状態で維持することができる。なお、図6(A)、(B)において、ラッチスプリング36dは、説明の都合上、省略されている。
【0031】
ピックアップ部50は、第2部品待機面31aから供給される複数の部品を載置する部品保持面51aを備える。本実施例の部品保持面51aは、2個の部品を載置することができる。ピックアップ部50は、ピックアップ本体部51を備えており、このピックアップ本体部51の上面が部品保持面51aとして形成されている。ピックアップ部50は、バッファ部30の下流側に配置される。ピックアップ本体部51は、バッファ部30に近い側で回転軸部材52により回転可能に軸支されている。これにより、図4に示すように部品保持面51aが第1の角度θ1から第2の角度θ2との間で可変とされている。ここで、第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも小さい角度である。ピックアップ部50において、部品保持面51aの下流側端部に搬送された部品100がロボットアーム1001によってピックアップされる。ロボットアーム1001が部品をピックアップする際に、部品保持面51aの先端側(下流側)を押し下げることにより、水平に対する角度を第2の角度θ2から第1の角度θ1に変化させる。
【0032】
ピックアップ部50は、部品保持面51aの下流側端部にピックアップされる部品100が当接する突き当て部53を備える。
【0033】
ピックアップ部50は、下面側にスプリング収容孔54を備える。このスプリング収容孔54には、押し上げスプリング70が収容される。押し上げスプリング70は、ステージ部材14とピックアップ本体部51との間に配置され、ピックアップ本体部51をステージ部材14から離間する方向に移動させる力を発揮する。すなわち、押し上げスプリング70は、部品100をピックアップするときのロボットアーム1001による押し付け力から開放された状態において、部品保持面51aの水平に対する角度を第2の角度θ2に維持する。押し上げスプリング70は、弾性部材の一例であり、他の弾性部材を採用することもできる。
【0034】
ピックアップ本体部51の下面には、図3に示すように下面カム部55が設けられている。下面カム部55は、半球形状を備えている。下面カム部55は、2箇所設けられている。
【0035】
ピックアップ部50は、ピックアップ本体部51の側面51bと平行して設けられた第2リンク部材56を備えている。第2リンク部材56は、ピックアップ本体部51の両側に設けられている。第2リンク部材56の上端側には、後に説明するゲート部材80が装着される三角形のカム穴56aが設けられている。
【0036】
ピックアップ本体部51の側面51bには、ラッチ解除カム57が設けられている。ラッチ解除カム57は、回転軸部材52よりも下側、すなわち、ステージ部材14に近い側に設けられている。ラッチ解除カム57は、ピックアップ本体部51と一体に設けられており、ピックアップ本体部51とともに回転する。ラッチ解除カム57は、部品保持面51aが第1の角度θ1から第2の角度θ2へ復帰するときにラッチ部36のアーム部36bに当接する。そして、ラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合を解除する。
【0037】
部品搬送装置1は、搬送部10、バッファ部30及びピックアップ部50の動作のタイミングを調節するタイミング調節機構を備えている。タイミング調節機構は、部品保持面51aが第2の角度θ2にあるときに、第1部品待機面11aと第2部品待機面31aとを面一とする。これにより、第1部品待機面11a上の部品100を第2部品待機面31a上へ移動可能とする。また、タイミング調節機構は、ロボットアーム1001による部品ピックアップ時にロボットアーム1001が部品保持面51aを押し下げて回転させ、部品保持面51aが第1の角度θ1となるときに、バッファ部30を上昇させる。これにより、タイミング調節機構は、第2部品待機面31aと部品保持面51aとを面一として、第2部品待機面31a上の部品100を部品保持面51a上へ移動可能とする。さらに、タイミング調節機構は、部品保持面51aのロボットアーム1001による押し付け力からの開放による部品保持面51aの第2の角度θ2への復帰に遅れてバッファ部30を下降させる。
【0038】
部品搬送装置1は、初期設定として、部品保持面51aが第2の角度θ2にあるときに、第1部品待機面11aと第2部品待機面31aとが面一である状態とされている。これにより、第1部品待機面11a上の部品100は第2部品待機面31a上へ移動可能となっている。なお、第1部品待機面11aと第2部品待機面31aとは完全な面一となることが求められるものではない。第1部品待機面11a上の部品100が第2部品待機面31a上へ移動可能となっていればよい。
【0039】
部品保持面51aが第2の角度θ2から第1の角度θ1となるときに、バッファ部30を上昇させる動作は、図7(A)、(B)に示すようにスライダ部材75を介して実現される。図7(A)は、部品保持面51aが第1の角度θであるときの様子について示している。ピックアップ本体部51aは押し上げスプリング70によって上方に持ち上げられており、バッファ本体部31は、引き付けスプリング33によってステージ部材14側へ引き付けられている。このとき、レール部14a上に設置されたスライダ部材75は、下流側、すなわち、ピックアップ本体部51側に位置している。この状態から、部品保持面51aがロボットアーム1001に押され、図7(B)に示すようにピックアップ本体部51が矢示41のように回転する。すると、下面カム部55に押し出されたスライダ部材75が矢示42のようにバッファ本体部31側へ移動する。そして、スライダ部材75は、バッファ本体部31の下面に設けられた下面カム部32を押す。下面カム部32がスライダ部材75に押されると、バッファ本体部31は、矢示43のように法線方向Nに沿って上昇する。このようにして、第2部品待機面31aと部品保持面51aとは、面一となることができる。この結果、第2部品待機面31a上の部品100は部品保持面51a上へ移動することができる。なお、部品保持面51aがロボットアーム1001による押し付け力から開放されると、ピックアップ部50は、押し上げスプリング70によって押し上げられる。また、引き付けスプリング33によって引き付けられたバッファ部30の下面に設けられた下面カム部32がスライダ部材75を押し戻す。
【0040】
部品保持面51aの第2の角度θ2への復帰に遅れてバッファ部30を下降させる動作は、ラッチ部36を介して実現される。上述のように、ラッチ部36は、ラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合により、バッファ部30を法線方向Nに上昇した状態で維持することができる。ラッチ部36が備えるアーム部36bは、部品保持面51aが第1の角度θ1から第2の角度θ2へ復帰するときにラッチ解除カム57によって押されることにより、ラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合を解除する。ここで、部品保持面51aが第2の角度θ2へ復帰した後にラッチ解除カム57がラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合を解除するように設定しておく。ラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合が解除されると、バッファ本体部31が引き付けスプリング33によってステージ部材14側に引き付けられ、バッファ部30は下降する。このように、ラッチ部36により、部品保持面51aの第2の角度θ2への復帰に遅れてバッファ部30を下降させる動作が実現される。
【0041】
このように、タイミング調節機構は、下面カム部32、下面カム部55、スライダ部材75、引き付けスプリング33、押し上げスプリング70、ラッチ部36が協働して実現されている。
【0042】
部品搬送装置1は、ゲート部材80を備えている。図8は、ゲート部材80の周辺を示す説明図である。ゲート部材80は一端部にカム部81を備えている。ゲート部材80のカム部81を備えた側は、第1リンク部材35のゲート部材取付部35aに回転自在に取り付けられている。ゲート部材80の他端側は、第2リンク部材56に設けられたカム穴56aに装着されている。第1リンク部材35は、バッファ部30と一体となって動作する。また、第2リンク部材56は、ピックアップ部50と一体となって動作する。バッファ部30とピックアップ部50とは、スライダ部材75を介して連動する。このため、ゲート部材80もバッファ部30及びピックアップ部50の動きに合せて動作する。具体的に、部品保持面51aが第1の角度θ1にあるときに、ロボットアーム1001によってピックアップされた部品100に後続する部品の移動を抑止する。また、部品保持面51aの第2の角度θ2への復帰に伴って後続する部品100の最前列側への移動を許容する。
【0043】
部品保持面51aは、2個の部品100を搭載し、保持することができる。二個の部品100のうち、最前列に位置する部品100が、ロボットアーム1001にピックアップされる。最前列に位置する部品100のピックアップが完了した後に、これに後続する部品100が最前列に搬送される。ロボットアーム1001による部品100のピックアップが完了したとき、部品保持面51aは、ロボットアーム1001による押し付け力から開放される。このため、後続の部品100は、部品保持面51aが第2の角度θ2に復帰した後に最前列に搬送される状態となる。第2の角度θ2は、第1の角度θ1よりも小さいため、部品保持面51aが第2の角度θ2に復帰した後に部品保持面51aを滑降する部品100は、滑り下りる勢いが弱い。このため、部品100の姿勢維持に有利である。しかしながら、部品保持面51aが第2の角度θ2に復帰した直後は、ピックアップ本体部51の回転動作に起因する慣性力の影響を受けることが懸念される。そこで、部品保持面51aが第2の角度θ2へ復帰した後、暫くした後に後続の部品100を最前列に滑降させるべく、ゲート部材80で後続の部品100の移動を抑止する。
【0044】
バッファ部30が法線方向Nに上昇した状態となっているとき、ゲート部材80は、第1リンク部材35に取り付けられた上流側の位置が高い位置にあり、第2リンク部材56に取り付けられた下流側の位置が低い位置にある。ゲート部材80は、このように前下りの状態となって、部品保持面51aとの間隔を狭めることにより、後続の部品100の移動を抑止することができる。
【0045】
そして、部品保持面51aが第2の角度θ2に復帰し、バッファ部30が下降するときに、カム部81が、開放カム13に接触すると、ゲート部材80は、ゲート部材取付部35aを支点として回転する。この結果、ゲート部材80の第2リンク部材56に取り付けられた下流側が持ち上げられ、部品保持面51aとの間隔を広げる。これにより、後続の部品100が部品保持面51aとゲート部材80との間を通過して、最前列へ移動することができる。
【0046】
カム穴56aは、ゲート部材80のこのようなタイミングによる動作を実現する形状に調整されている。
【0047】
つぎに、本実施例の部品搬送装置1による部品搬送の一連の動作について説明する。図9は部品搬送装置1によって搬送される部品100の斜視図である。図10は部品搬送装置1によって搬送される部品100が組み込まれた電子装置200の斜視図である。部品100は、電子装置200を保護する樹脂製のカバーである。部品100は、板状部分の両端に突起部を備えた形状を有している。部品100は、自重による搬送が行われる実施例の部品搬送装置1を利用することにより、連続的に搬送される。なお、図11(A)〜図13(B)は部品搬送装置1の動作を時系列に示している。
【0048】
まず、図11(A)に示す状態について説明する。第1部品待機面11a及び第2部品待機面31aはともに水平に対する角度が第1の角度θ1とされており、第1部品待機面11aに待機した部品が第2部品待機面31aへ移動可能となっている。このとき、部品保持面51aは、ピックアップ本体部51が押し上げスプリング70により押し上げられているため、水平に対する角度が第1の角度θ1よりも小さい第2の角度θ2に保たれている。なお、バッファ部30とピックアップ部50との間に出没可能に設置された仕切板を装着してもよい。仕切板は、第2部品待機面31aから部品保持面51aへの部品の搬送タイミングを制御する。
【0049】
この状態から、ピックアップされる部品が載置された状態の部品保持面51aに部品100をピックアップするロボットアーム1001を押し付ける。そして、ピックアップ部50を回転軸部材52を支点として回転させ、部品保持面51aの水平に対する角度を第2の角度θ2から前記第1の角度θ1とする。ピックアップ部50が回転運動をすると、ピックアップ本体部51の下面に設けられた下面カム部55がスライダ部材75を押す。
【0050】
つぎに、図11(B)に示す状態について説明する。下面カム55がスライダ部材75を押すと、図7(A)(B)を参照して説明したように、下面カム部32が設けられたバッファ部30を法線方向Nに上昇させる。すなわち、部品保持面51aの水平に対する角度の第2の角度θ2から第1の角度θ1への移行に合せて、バッファ部30を上昇させる。これにより、第2部品待機面31aに待機した部品100を部品保持面51aへ移動可能とする。なお、第2部品待機面31a上に待機する部品100は、飛び出し防止部35bに押さえられ、バッファ部30の上昇時における姿勢の乱れが抑制されている。
【0051】
バッファ部30が押し上げられると、ラッチ部36のラッチピン36cが図6(A)に示すように第2ディテント31b2に係合される。これにより、バッファ部30の位置が拘束される。
【0052】
つぎに、図12(A)に示す状態について説明する。部品保持面51aが第2の角度θ2となり、バッファ部30が上昇することによって、第2部品待機面31aに待機した部品100が部品保持面51aへ移動する。このとき、ゲート部材80は、前下りの状態となっているため、第2部品待機面31aから滑降してきた部品100は、ゲート部材80に接触して停止する。このため、滑降してきた部品100の最前列に位置する部品100との接触は回避される。
【0053】
つぎに、図12(B)に示す状態について説明する。ロボットアーム1001によって最前列の部品100がピックアップされると、ロボットアーム1001による部品保持面51aの押し付けが解除される。ロボットアーム1001による部品保持面51aの押し付けの解除に伴って、部品保持面51aの水平に対する角度は、第1の角度θ1から第2の角度θ2に復帰する。この動作は、押し上げスプリング70の作用による。一方、バッファ部30は、ラッチ部36によって上昇した状態に維持されている。これに伴って、ゲート部材80の前下りの状態も維持される。この結果、部品保持面51a上に滑降してきた部品100は、依然として最前部への移動が抑止されている。
【0054】
つぎに、図13(A)に示す状態について説明する。ピックアップ部50が押し上げスプリング70によって押し上げられて回転し、部品保持面51aが第2の角度θ2へ復帰した後に、ラッチ解除カム57がアーム部36bを押し、ラッチピン36cの第2ディテント31b2への係合を解除する。すると、部品保持面51aの第2の角度θ2への復帰に遅れて、バッファ部30が引き付けスプリング33によって下降する。これにより、再び、第1部品待機面11aに待機した部品100が第2部品待機面31aへ移動可能な状態なる。
【0055】
つぎに、図13(B)に示す状態について説明する。バッファ部30が下降すると、ゲート部材80のカム部81が開放カム13に接触し、ゲート部材80を回転させる。これにより、ゲート部材80の第2リンク部材56に取り付けられた下流側が持ち上げられ、ゲート部材80と部品保持面51aとの間隔が広がる。これにより、後続の部品100が部品保持面51aとゲート部材80との間を通過して、最前列へ移動する。最前列へ搬送される部品100は、なだらかな角度である第2の角度θ2となった部品保持面51aを滑降して突き当て部53に突き当たるので、姿勢の乱れが抑制される。また、ゲート部材80は、ピックアップ部50の回転動作が完了した後に開放され、部品100を滑降させるので、部品100は、ピックアップ部50の回転動作の影響を受けることなく、安定して滑降し、姿勢を維持することができる。
【0056】
以上が部品搬送装置1の一連の動作である。部品搬送装置1は、格別な駆動部を備えることなく、一連の動作を実現することができる。すなわち、部品搬送装置1は、ロボット1000の動作を利用して、部品100の搬送動作を行うことができる。また、部品保持面51aの角度が可変であり、部品滑降時の傾斜を緩やかにすることによって突き当て部53に衝突するときの衝撃を緩和し、部品100の姿勢悪化を抑制することができる。さらに、バッファ部30とピックアップ部50とを分割して設けたため、ピックアップ部50の動作が停止した後に最前列に部品を搬送することができる。この結果、部品の供給位置を安定させ、安定した姿勢で部品を搬送することができる。また、バッファ部30とピックアップ部50の動作をタイミング調節機構で連結し、並列動作させることにより、一連の動作を短縮して行うことができる。
【0057】
以上本発明の好ましい実施例について詳述したが、本発明は係る特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【符号の説明】
【0058】
1 部品搬送装置 10 搬送部
11a 第1部品待機面 12 カバー部材
13 開放カム 14 ステージ部材
14a レール部 15 ガイド溝部
30 バッファ部 31a 第2部品待機面
31b1 第1ディテント 31b2 第2ディテント
32 下面カム部 33 引き付けスプリング
35 第1リンク部材 36 ラッチ部
N 法線方向 50 ピックアップ部
51a 部品保持面 51b 側面
52 回転軸部材 53 突き当て部
55 下面カム部 56 第2リンク部材
56a カム穴 57 ラッチ解除カム
70 押し上げスプリング 75 スライダ部材
80 ゲート部材 81 カム部
100 部品 1000 ロボット
1001 ロボットアーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の待機部品が連続して並べられ、水平に対する角度が第1の角度とされた第1部品待機面を備えた搬送部と、
前記搬送部の下流側に配置されるとともに、前記第1部品待機面から部品が搬送される第2部品待機面を備え、前記第2部品待機面の法線方向に移動することによって前記搬送部から連続的に滑降する部品の列を分断するバッファ部と、
前記第2部品待機面から供給される複数の部品を載置する部品保持面を備え、前記バッファ部の下流側において、回転可能に軸支され、前記部品保持面が前記第1の角度から前記第1の角度よりも小さい第2の角度との間で可変とされ、前記部品保持面の下流側端部にロボットアームによってピックアップされる部品が当接する突き当て部を備えるピックアップ部と、
部品をピックアップするときの前記ロボットアームによる押し付け力から開放された状態において、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第2の角度に維持する弾性部材と、
前記部品保持面が前記第2の角度にあるときに、前記第1部品待機面上の部品を前記第2部品待機面上へ移動可能とし、
ロボットアームによる部品ピックアップ時に前記ロボットアームが前記部品保持面を押し下げて回転させ、前記部品保持面が前記第1の角度となるときに、前記バッファ部を上昇させて、前記第2部品待機面上の部品を前記部品保持面上へ移動可能とし、
前記部品保持面の前記ロボットアームによる押し付け力からの開放による前記部品保持面の前記第2の角度への復帰に遅れて前記バッファ部を下降させるタイミング調節機構と、
を備える部品搬送装置。
【請求項2】
前記部品保持面が第1の角度にあるときに、前記ロボットアームによってピックアップされた部品に後続する部品の移動を抑止するともに、前記部品保持面の第2の角度への復帰に伴って前記後続する部品の最前列側への移動を許容するゲート部材をさらに備えた請求項1記載の部品搬送装置。
【請求項3】
第1部品待機面が設けられた搬送部に待機した部品を、前記搬送部の下流側に配置され第2部品待機面が設けられたバッファ部を介して、前記バッファ部の下流側に配置され、部品保持面が設けられたピックアップ部へ搬送する部品搬送方法であって、
水平に対する角度を第1の角度とした前記第1部品待機面に待機した部品を前記第2部品待機面へ移動可能とするとともに、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第1の角度よりも小さい第2の角度とする工程と、
ピックアップされる部品が載置された状態の前記部品保持面に部品をピックアップするロボットアームを押し付け、当該部品保持面の水平に対する角度を前記第2の角度から前記第1の角度とする工程と、
前記部品保持面の水平に対する角度の前記第2の角度から前記第1の角度への移行に合せて、前記バッファ部を上昇させ、前記第2部品待機面に待機した部品を前記部品保持面へ移動可能とする工程と、
前記ロボットアームによる前記部品保持面の押し付けの解除に伴って、前記部品保持面の水平に対する角度を前記第1の角度から前記第2の角度に復帰させる工程と、
前記部品保持面の前記第2の角度への復帰に遅らせて、前記バッファ部を下降させ、前記第1部品待機面に待機した部品を前記第2部品待機面へ移動可能な状態とする工程と、
を含むこと部品搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−75352(P2013−75352A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217703(P2011−217703)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】