説明

部品組立装置

【課題】 積層不良の発生を防止可能とする部品組立装置を提供することである。
【解決手段】 本発明の部品組立装置は、順次挿入される複数の部品3を積層状態に保持する保持部2と、該保持部2に対し遠近自在に設けられる係止部材6とを備え、該係止部材6が保持部2に接近状態で部品3の落下を阻止することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、部品組立装置に関し、特に、複数の部品を積層する部品組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種部品組立装置にあっては、たとえば、バルブ、ピストン、バルブストッパ等の複数の部品を積層させて仮組みするために使用されるものであり、図4に示すように、基台1に複数の保持針2を複数列に整列配置した形態のものが知られている。
【0003】
そして、この部品組立装置では、作業員が保持針2に複数の部品3を手作業にて挿入して積層させる(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2001−20991号公報(第3頁右欄第3行目から同第23行目まで,図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記した従来の部品組立装置にあっては、機能上問題があるわけではないが、以下の弊害がある。
【0005】
すなわち、従来の部品組立装置にあっては、上述のように作業者が複数の部品3を保持針2に積層させていくのであるが、所定通りの部品3が保持針2に積層されているか否かを、部品積層後に、部品3が過不足なく保持針2に挿入されることをもってして確認するとしていた。
【0006】
すなわち、あらかじめ保持針2の数に応じて必要となる部品3を用意しておき、部品積層後に部品3が余ったり、足りなかったりすることによって、いずれかの保持針2には所定通りの部品3が積層されていないことが判断されていた。
【0007】
したがって、作業途中で積層不良が生じているか否かの判断をすることは困難であった。
【0008】
そして、この積層不良が発覚した時、小さな部品3の上に大きな部品3を積層する場合や、非常に肉厚の薄い部品3を複数積層する場合は、いずれの保持針2に積層不良が生じているかの見極めは大きな負担を作業員に強いることとなり、最悪の場合、各保持針2から一端すべての部品3を取り除いて確認しなければならない事態となる。
【0009】
また、すべての部品3が各保持針2に過不足なく積層された場合であっても、各保持針2に所定通り部品3が積層されたかは、保障されているわけではないので、結局、部品積層後、各保持針2毎に確認する作業をしなくてはならない。
【0010】
そこで、本発明は上記弊害を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、積層不良の発生を防止可能とする部品組立装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明の部品組立装置は、順次挿入される複数の部品を積層状態に保持する保持部と、該保持部に対し遠近自在に設けられる係止部材とを備え、該係止部材が保持部に接近状態で部品の落下を阻止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、非常に容易な確認作業を行うのみで、積層作業を完了させることが可能となるとともに、部品の積載不良が防止される。
【0013】
すなわち、積層不良があるか否かの確認を積層作業完了後に改めて行う必要はないので、作業者の作業負担を軽減でき、積層不良が防止されることで積層作業のやり直しという言わば無駄な作業をも生じさせないのである。
【0014】
また、この部品組立装置では、上述のように、一回の積層作業で作業を完了させることができ、かつ、確認作業も容易となるので、人為的なミスを招く危険も従来装置に比較して少なくなり、積層された複数の部品からなる製品の歩留まりも向上し、さらには、無駄な作業が省かれることにより作業時間を短縮化できるので、結果的に、製品製造コストを低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図示した一実施の形態に基づいて、この発明を説明する。図1は、一実施の形態における部品組立装置の斜視図である。図2は、部品を積層させた状態における保持部の縦断面図である。図3は、部品が係止部材に下支えされた状態を示す図である。
【0016】
一実施の形態における部品組立装置は、図1に示すように、従来の部品組立装置と同様の基台1と、基台1に複数列に整列配置させた保持部たる保持針2と、保持針2の各列を挟む位置に設けた複数対の腕4と、列をなす腕4同士を腕4に対し回動可能に連結されたリンク5と、上記対をなす腕4,4間に横架された係止部材たる棒6とで構成されている。
【0017】
以下、詳細に説明すると、保持部たる保持針2は、その先端側がニードル状に形成され、その基端側は、矩形板状に形成された基台1の上端に図示したところでは螺合であるが、種々の方法で固定される。
【0018】
また、この基台1には、保持針2を複数固定することができ、図示するところでは、保持針2は、基台1上に複数列に整列されて配置されている。
【0019】
そして、この各保持針2には、たとえば、図2に示すように、ピストン、リーフバルブ、バルブストッパ等の部品3が、順次挿入されて積層されるわけであるが、ここでは、単一の保持針2に積層される複数の部品3は、図示したように、異なる部材であっても良いし、単一の部品であってもよい。
【0020】
さらに、基台1の外周側には、基台1を取り囲む矩形の枠7が嵌合され、この枠7の丁度保持針2の各列Lを挟みこむ位置、具体的には、保持針2の各列の中心線より少々ずらした位置に複数対の腕4が揺動可能に取り付けられている。
【0021】
したがって、枠7の2辺のそれぞれに複数の腕4が列Rをなして取り付けられており、また、この枠7の2辺それぞれに列Rをなす各腕4には、ヒンジ結合によりリンク5が取り付けられている。すなわち、リンク5は列Rをなす腕4の全てに回転自在に取り付けられている。
【0022】
さらに、一方のリンク5の一端は、枠7の腕4が取り付けられている辺の一端に揺動可能に取り付けられたレバー8にヒンジ(付示せず)を介して連結されている。
【0023】
そして、このレバー8を枠7に対し揺動させると、リンク5を介して腕4も揺動するように設定されるとともに、レバー8が設けられない方の列Rの各腕4へのリンク5の取り付けもレバー8が設けられている側と同様となっている。
【0024】
なお、レバー8の取付位置は、本実施の形態においては、図1中手前側となっているが、各腕4を遥動させることができればどこに設置されてもよく、いずれかの腕4を長尺に設定しておいて、この長尺の腕4をレバーとして機能させても良い。
【0025】
さらに、上記腕4のうち対をなすもの同士に係止部材たる棒6が横架されており、先程のレバー8の揺動運動がこの棒6を介してレバー8がない方の列Rの各腕4に伝達されて、枠7の上記2辺に設けられた各列Rの各腕4は、両辺で同期して揺動するようになっている。
【0026】
そして、この各腕4の揺動運動により係止部材たる棒6は、各列Lの複数の保持針2に対し接近および離脱が可能となっており、レバー8の操作のみにより係止部材たる棒6の保持部たる保持針2への遠近操作がなされるので、棒6の保持針2に対しての遠近操作が容易となる。
【0027】
なお、棒6の保持針2への最接近時には、棒6が保持針2に当接されるとしても差し支えない。また、枠7は必ずしも必要というわけではなく、腕4やレバー8を基台1の側部に直接取り付けるようにしてもよいが、基台1から枠7を取り外し可能としておくことにより、部品3の保持針2への積層後に基台1のみを移動させることができるとともに、基台1と枠7とを分離することで基台1と枠7との様々な組み合わせが可能となり、便利かつ経済的である。
【0028】
さて、部品組立装置は、上記のように構成されるのであるが、つづいて部品3の積層作業について説明する。
【0029】
まず、レバー8を操作して、係止部材たる各棒6を各列Lの保持針2に接近させ、その上から、最下方に位置すべき部品3を各保持針2に挿入する。
【0030】
すると、各保持針2に挿入された各部品3は、保持針2の途中で棒6に引っ掛かって保持針2の最下端までは落下せず、棒6に下支えされた状態でその場に留まる。
【0031】
このとき、棒6は保持針2に一方向から接近しているので、部品3をその中心から偏心した位置で下支えしている形となり、部品3は保持針2に対し図3に示すがごとくに傾斜した状態に維持されることとなる。
【0032】
したがって、部品3が極めて肉圧の薄い部材である場合や、部品3に決められた挿入方向がある場合であっても、作業者は、保持針2に対し斜め上方から部品3の側面を目視することができるので確認作業が容易となり、部品3の誤挿入、すなわち、複数挿入や誤方向挿入を、わざわざ、しゃがみこむなどして確認する必要がなくなり、作業者の積層不良の発見を容易ならしめると同時にその作業負担が軽減される。
【0033】
なお、棒6の保持針2への最接近位置の調整を行えるように、たとえば、本実施の形態の場合、レバー8の移動を任意の位置で規制するストッパ等を設けておけば、作業者が部品3の側面を目視しやすい棒6の最接近位置を都度再現することができ、作業効率が向上する。
【0034】
つづいて、作業者は、全ての保持針2に上記部品3が定められた数量で挿入されているかを確認したうえで、レバー8を操作し、各棒6を保持針2から遠ざけ、部品3を落下させる。
【0035】
さらに、その状態から、再度レバー8を操作して、棒6を保持針2に接近させてから、次ぎに積層させる部品3を各保持針2に挿入し、この次ぎに積層させる部品3が全ての保持針2に挿入されているか否かを確認する。
【0036】
このとき、棒6により下支えされている部品3は各保持針2につき必ず1つとり、一見しただけで確認することができるので、この確認作業は容易である。
【0037】
そして、全ての保持針2に当該部品3が挿入されていることを確認後、レバー8を操作して先に挿入されていた部品3の上に次ぎに挿入された部品3を積層する。
【0038】
以後、部品3の落下後は、必ず棒6を保持針2に接近させ、部品3挿入後、積層不良がないかを確認して部品3を落下させることを繰り返す。
【0039】
したがって、この非常に容易な確認作業を行うのみで、積層作業を完了させることが可能になるとともに、部品の積載不良が防止される。
【0040】
すなわち、積層不良があるか否かの確認を積層作業完了後に改めて行う必要はないので、作業者の作業負担を軽減でき、積層不良が防止されることで積層作業のやり直しや積層済部品の数え直しという言わば無駄な作業をも生じさせないのである。
【0041】
また、この部品組立装置では、上述のように、一回の積層作業で作業を完了させることができ、かつ、確認作業も容易となるので、人為的なミスを招く危険も従来装置に比較して少なくなり、積層された複数の部品3からなる製品の歩留まりも向上し、さらには、無駄な作業が省かれることにより作業時間を短縮化できるので、結果的に、製品製造コストを低減することができる。
【0042】
なお、上記したところでは、保持部を保持針2としているが、部品3がピストンやリーフバルブ等である場合には、ピストンロッドとしてもよく、この部品組立装置を仮組み以外にも使用可能である。
【0043】
また、本実施の形態においては、作業容易の観点から係止部材は棒6として、係止部材にレバー8の揺動を伝達する機能を果たさせるとしているが、保持部に遠近可能なようにしてあり、部品3の落下を阻止する限りにおいては、係止部材を他の構成としても差し支えはない。
【0044】
また、上記したところでは、部品3についてその形状を主として環状とし説明しているが、たとえば、部品3が他の形状であっても保持部に保持されること可能で、係止部材にて落下を防止することができ、かつ、部品視認性が失われない限りにおいては本発明の効果は失われない。
【0045】
以上で、本発明の実施の形態についての説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されないことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】一実施の形態における部品組立装置の斜視図である。
【図2】部品を積層させた状態における保持部の縦断面図である。
【図3】部品が係止部材に下支えされた状態を示す図である。
【図4】従来の部品組立装置の斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
1 基台
2 保持部たる保持針
3 部品
4 腕
5 リンク
6 係止部材たる棒
7 枠
8 レバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
順次挿入される複数の部品を積層状態に保持する保持部と、該保持部に対し遠近自在に設けられる係止部材とを備え、該係止部材が保持部に接近状態で部品の落下を阻止することを特徴とする部品組立装置。
【請求項2】
複数の保持部が整列されて配置され、保持部の列を挟む位置に揺動可能な一対の腕を設け、係止部材が各腕間に横架されることを特徴とする請求項1に記載の部品組立装置。
【請求項3】
複数の保持部が複数列に整列されて配置され、保持部の各列を挟む位置に揺動可能な複数対の腕を設け、列をなす腕同士を腕に対し回動可能なリンクで連結するとともに、係止部材が対となる腕間に横架されることを特徴とする請求項1に記載の部品組立装置。
【請求項4】
係止部材が保持部への接近時に部品を保持部に対し傾斜させた状態で下支えすることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の部品組立装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−959(P2006−959A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179088(P2004−179088)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】