説明

部材情報取得装置

【課題】 部材情報を取得する作業性の向上を図ると共に、各構成部材が生産設備に組付けられた状態においても部材情報を取得可能な部材情報取得装置を提供する。
【解決手段】 本発明の部材情報取得装置は、生産設備を構成する各構成部材の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と各構成部材の部材情報とを関連付けて記憶する部材情報記憶部と、指定手段によって指定された構成部材の3次元指定座標系における指定座標系位置情報を取得する部材指定装置と、生産設備に設定された3次元設備座標系に対する部材指定装置に設定された3次元指定座標系の相対位置を特定する相対位置特定手段と、特定された3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係に基づいて、指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換する変換手段と、変換された設備座標系位置情報に対する部材情報を部材情報記憶部から読み出して出力する部材情報出力手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産設備を構成する各構成部材の部材情報を取得する部材情報取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
部材情報取得装置の一例として、例えば、特許文献1に挙げられる発明が知られている。特許文献1に記載の基板の処理装置は、処理装置を構成する各構成部品に識別記号(バーコード)が付されており、各構成部品に関する部品情報を識別記号に対応させて記憶する記憶部と、構成部品の識別記号を入力するための入力部(バーコードリーダ)と、部品情報を表示する表示部と、を有している。そして、バーコードリーダでバーコードを読み取り、バーコードに対応する記憶部の部品情報を表示部に表示することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第03/007351号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の発明では、各構成部品に識別記号を付す必要があり、作業が煩雑である。また、構成部品を処理装置に組付けた状態では、識別記号を付すことができず、各構成部品の部品情報を取得することができない可能性がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、部材情報を取得する作業性の向上を図ると共に、各構成部材が生産設備に組付けられた状態においても部材情報を取得可能な部材情報取得装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に係る部材情報取得装置は、生産設備を構成する各構成部材の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と各構成部材の部材情報とを関連付けて記憶する部材情報記憶部と、指定手段によって指定された構成部材の3次元指定座標系における指定座標系位置情報を取得する部材指定装置と、生産設備に設定された3次元設備座標系に対する部材指定装置に設定された3次元指定座標系の相対位置を特定する相対位置特定手段と、特定された3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係に基づいて、指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換する変換手段と、変換された設備座標系位置情報に対する部材情報を部材情報記憶部から読み出して出力する部材情報出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0007】
請求項2に係る部材情報取得装置は、請求項1において、3次元指定座標系は、東西方向および南北方向に設定される直交2軸ならびに直交2軸と直交する1軸で構成されるグローバル座標系であり、部材指定装置は、基準点のグローバル座標系における座標位置を示す位置センサおよび構成部材に接触される指定手段の接触点と基準点とを結ぶ基準線分のグローバル座標系の各3軸に対する傾斜角度を検出する傾斜センサを有し、相対位置特定手段は、指定手段が接触することによって3次元設備座標系とグローバル座標系との相対位置関係を特定可能に生産設備に形成された相対位置特定部を有する。
【0008】
請求項3に係る部材情報取得装置は、請求項2において、位置センサはGPSセンサまたは加速度センセであり、傾斜センサはジャイロセンサである。
【0009】
請求項4に係る部材情報取得装置は、請求項1において、部材指定装置は、生産設備に形成された基準部に所定関係で固定される固定部材と、指定手段であって構成部材と接触点で接触して構成部材を指定する接触部材と、接触部材が固定部材に対して3次元指定座標系で移動可能に固定部材と接触部材との間に接続された複数の連結部材と、固定部材、連結部材および接触部材の隣接する2つの部材間の相対移動量を検出し、接触点の3次元指定座標系における座標位置を検出する検出手段と、を備え、相対位置特定手段は、生産設備に形成された基準部と、基準部に固定部材を所定関係で固定する固定手段と、を備える。
【0010】
請求項5に係る部材情報取得装置は、請求項1〜4のいずれか1項において、部材情報出力手段が出力した構成部材の名称、部材番号および図形を含む部材情報を表示手段に表示する部材情報表示手段を備える。
【0011】
請求項6に係る部材情報取得装置は、請求項1〜5のいずれか1項において、部材情報記憶部は、複数種類の生産設備について各生産設備を構成する各構成部材の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と各構成部材の部材情報とを関連付けて記憶し、生産設備の種類を特定する設備種特定手段を備える。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る部材情報取得装置によれば、部材指定装置は、指定手段によって構成部材を指定することにより構成部材の指定座標系位置情報を取得することができるので、各構成部材に識別記号を付す必要が無く、部材情報を取得する作業性が向上する。また、操作者は、実際の構成部材を視認しながら、指定手段によって構成部材を指定することができるので、構成部材の誤認識を軽減することができる。さらに、変換手段が3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係に基づいて指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換して、部材情報出力手段が各構成部材の部材情報を出力するので、各構成部材が生産設備に組付けられた状態においても部材情報を取得することができる。
【0013】
請求項2に係る部材情報取得装置によれば、相対位置特定手段は、指定手段が接触することによって3次元設備座標系とグローバル座標系との相対位置関係を特定することができるので、操作が容易であり、部材情報を取得する作業性が向上する。また、絶対座標であるグローバル座標系における指定座標系位置情報が設備座標系位置情報に変換されるので、絶対空間における各構成部材の位置情報(絶対位置)の取得が容易である。
【0014】
請求項3に係る部材情報取得装置によれば、位置センサはGPSセンサまたは加速度センセであり、傾斜センサはジャイロセンサであるので、GPSセンサ、加速度センセ、ジャイロセンサを用いたいわゆる自立測位が可能である。そのため、複数のセンサから得られる検出結果を用いて指定座標系位置情報を補正することができ、センサを単独で用いる場合と比べて、指定座標系位置情報の検出精度を向上させることができる。
【0015】
請求項4に係る部材情報取得装置によれば、部材指定装置は、固定部材、連結部材および接触部材の隣接する2つの部材間の相対移動量を検出して、接触点の3次元指定座標系における座標位置を検出する検出手段を備える。そのため、部材指定装置は、任意の3次元指定座標系を用いて構成部材の指定座標系位置情報を取得することができる。また、相対位置特定手段は、生産設備に形成された基準部と、基準部に固定部材を所定関係で固定する固定手段と、を備えるので、3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係を予め規定することができ、相対位置関係の特定が容易である。そのため、相対位置特定手段及び変換手段における演算処理を軽減することができ、部材情報の取得時間を短縮することができる。さらに、相対位置関係の特定誤差を低減することができるので、構成部材の誤認識を軽減することができる。
【0016】
請求項5に係る部材情報取得装置によれば、構成部材の部材情報が表示手段に表示されるので、部材情報取得装置の操作者は、構成部材の部材情報を視認することができ、構成部材の部材情報を容易に取得することができる。特に、部材情報表示手段は、構成部材の名称、部材番号および図形を含む部材情報を表示手段に表示することができるので、操作者は、実際の構成部材と表示手段に表示される図形とを見比べて、構成部材の発注を行うことができる。そのため、構成部材の発注間違いを防止することができる。
【0017】
請求項6に係る部材情報取得装置によれば、部材情報記憶部は、設備種特定手段を備えるので、生産設備の種類に合致した部材情報を容易に取得することができる。そのため、操作者は、生産設備の種類に合わせて部材情報記憶部に記憶される部材情報を書き換える必要がなく、作業性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係り、構成部材の部材情報を取得する方法を示す説明図である。
【図2】部材情報を取得する手順を示すフローチャートである。
【図3】部材情報取得装置の一例を示すブロック図である。
【図4】3次元指定座標系と部材指定装置との関係を模式的に示す説明図である。
【図5】3次元指定座標系と相対位置特定部との関係を模式的に示す説明図である。
【図6】3次元設備座標系と3次元指定座標系との関係を模式的に示す説明図である。
【図7】第2実施形態に係り、構成部材の部材情報を取得する方法を示す説明図である。
【図8】第2実施形態に係り、3次元指定座標系と相対位置特定部との関係を模式的に示す説明図である。
【図9】第3実施形態に係り、部材指定装置及び相対位置特定手段を模式的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。各実施形態について共通の箇所には共通の符号を付して対応させることにより重複する説明を省略する。なお、各図は概念図であり、細部構造の寸法まで規定するものではない。
【0020】
(1)第1実施形態
(1−1)概要
図1は、構成部材の部材情報を取得する方法を示す説明図である。図2は、部材情報を取得する手順を示すフローチャートである。本実施形態では、部材情報取得装置9によって生産設備100を構成する各構成部材10の部材情報を取得することができる。生産設備100は、工作機械をはじめとする産業機器の生産設備であり、例えば、部品実装機が挙げられる。部品実装機は、基板搬送装置、部品供給装置及び部品移載装置を備えている。基板搬送装置は、基板を搬送経路に沿って部品実装位置に搬入し位置決めして搬出する装置であり、部品供給装置には、複数の部品を収容する部品収容装置が複数個着脱可能に取り付けられている。部品移載装置は、部品収容装置から部品を採取して位置決めされた基板に装着する装置である。
【0021】
各装置は、種類の異なる複数の構成部材10を有している。構成部材10は、生産設備100を構成するものであれば、特に限定されるものではなく、部材単体であっても部材の集合体であっても良い。本明細書では、図1に図示するねじを例に説明するが、構成部材10は、ねじに限定されるものではない。また、図1では、説明の便宜上、構成部材10が1つ記載されているが、複数の構成部材10の部材情報を順次、取得することができる。
【0022】
部材情報取得装置9は、本体部91と、本体部91から突出する突出部911の先端部に設けられ構成部材10を指定する指定手段である触手21と、部材情報取得装置9を操作する操作部と、構成部材10の部材情報を表示する表示手段6Dと、を備えている。操作部は、設備種指示部92、原点記憶指示部93及び表示指示部94を有している。設備種指示部92は、操作者が押動することにより生産設備100の種類を選択することができる。例えば、上記の部品実装機の場合は、基板搬送装置、部品供給装置及び部品移載装置の中から選択することができる。なお、生産設備100の種類の選択は、装置毎ではなく、生産ライン(例えば、部品実装ライン)毎に行うこともできる。
【0023】
原点記憶指示部93は、生産設備100に設定された3次元設備座標系と、部材情報取得装置9が有する部材指定装置2に設定された3次元指定座標系と、の相対位置を特定する際に使用する。詳細は後述する。表示指示部94は、操作者が押動することにより構成部材10の部材情報を表示手段6Dに表示することができる。
【0024】
次に、図1及び図2に基づいて、部材情報取得装置9の操作方法について説明する。まず、設備種の選択を行う。操作者は、設備種指示部92を押動して、表示手段6Dに表示される生産設備100の中から部材情報を取得する生産設備100の種類を選択する(ステップS10)。次に、座標系の特定を行う。第1接触部311(原点FO)に触手21を接触させ、原点記憶指示部93を押動する(図1の丸数字1)。第2接触部312及び第3接触部313についても同様に触手21を接触させ、原点記憶指示部93を押動する(図1の丸数字2、3。ステップS11)。次に、構成部材10を指定する。操作者は、部材情報を取得する構成部材10に触手21を接触させ、表示指示部94を押動する(図1の丸数字4。ステップS12)。これにより、表示手段6Dに構成部材10の部材情報が表示される(ステップS13)。なお、構成部材10と触手21の接触点をCとする。
【0025】
(1−2)部材情報取得装置
図3は、部材情報取得装置の一例を示すブロック図である。部材情報取得装置9の本体部91内には、図示しないCPU及びメモリを有しており、部材情報の取得に係る各種データを演算して、演算結果をメモリに記憶することができる。また、メモリには、部材情報の取得に係るプログラムが記憶されており、部材情報取得装置9の起動の際にプログラムがメモリから読み出されて、プログラムが実行される。
【0026】
部材情報取得装置9は、部材情報記憶部1、部材指定装置2、相対位置特定手段3、変換手段4、部材情報出力手段5、部材情報表示手段6、設備種特定手段7及び通信手段8を備えている。設備種の選択は、設備種特定手段7が行い、座標系の特定は、相対位置特定手段3が行う。構成部材10の指定は、部材指定装置2が行い、部材情報の表示は、部材情報表示手段6が行う。構成部材10が指定されてから部材情報が表示されるまでの種々の演算及びデータの処理等は、部材情報記憶部1、変換手段4及び部材情報出力手段5が行う。通信手段8は、ホストサーバ8Sに対して、必要に応じて各種データ及び制御信号を送受信することができる。
【0027】
部材情報記憶部1には、生産設備100を構成する各構成部材10の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と各構成部材10の部材情報とが関連付けられて記憶されている。3次元設備座標系は、生産設備100に設定される直交座標系である。本明細書では、説明の便宜上、直交座標軸をP軸、Q軸及びR軸とする。設備座標系位置情報は、3次元設備座標系における構成部材10の位置情報であり、例えば、生産設備100の3次元CAD情報等から予め取得することができる。なお、設備座標系位置情報と各構成部材10の部材情報との関連付けは、例えば、データベースを用いることができる。
【0028】
各構成部材10の部材情報は、構成部材10の名称、部材番号および図形をはじめとする種々の情報をいう。部材情報は、これらに限定されるものではなく、この他にも例えば、図番号、コード番号、生産設備100で使用される個数、材質、寸法、規格、発注番号、発注個数、発注先等が挙げられる。なお、部材情報としての図形は、構成部材10の外観を示すものであり、例えば、図、イラスト、写真又は3次元モデリング情報等が挙げられる。
【0029】
部材指定装置2は、構成部材10の3次元指定座標系における指定座標系位置情報を取得する。3次元指定座標系は、部材指定装置2に設定される直交座標系である。本明細書では、説明の便宜上、直交座標軸をX軸、Y軸及びZ軸とする。X軸はP軸に対応しており、Y軸はQ軸に対応しており、Z軸はR軸に対応している。3次元指定座標系は、例えば、グローバル座標系を用いることができる。グローバル座標系は、東西方向および南北方向に設定される直交2軸ならびに直交2軸と直交する1軸で構成される。グローバル座標系では、直交座標軸(X軸、Y軸、Z軸)は、東西(経度)方向、南北(緯度)方向及び高さ(高度)方向に相当する。指定座標系位置情報は、3次元指定座標系における構成部材10の位置情報であり、指定手段によって指定される。
【0030】
指定手段は、構成部材10の位置を指定することができれば、その形態は特に限定されない。例えば、指定手段は、触手21を用いることができる。触手21は、圧電素子を有しており、触手21が生産設備100や構成部材10に接触すると、圧電素子に荷重が印加される。触手21は、荷重に比例した電圧を検出することによって、部材との接触を認識することができる。指定手段は、この他にも、光学的な方法や電磁気的な方法をはじめとする種々の方法によって構成部材10の位置を指定することができる。
【0031】
部材指定装置2は、位置センサ22及び傾斜センサ23を有している。位置センサ22は、部材指定装置2に設けられる基準点Sのグローバル座標系における座標位置を検出する検出器であり、例えば、GPSセンサ、加速度センセ等を用いることができる。部材指定装置2に設けられる基準点Sは、位置センサ22によって予め規定されており、位置センサ22による検出結果は、基準点Sのグローバル座標系における座標位置として得られる。傾斜センサ23は、基準線分CSのグローバル座標系の各3軸(X軸、Y軸、Z軸)に対する傾斜角度を検出する検出器であり、例えば、ジャイロセンサ等を用いることができる。基準線分CSは、触手21が構成部材10に接触する接触点Cと基準点Sとを結ぶ線分をいう。基準線分CSの長さLは、本体部91内の基準点Sから触手21までの距離であり、予め規定される。なお、GPSセンサ、加速度センセ及びジャイロセンサ等の検出器は、公知の検出器を用いることができ、位置センサ22及び傾斜センサ23は、これらに限定されるものではない。例えば、3軸タイプの地磁気センサ等を用いて、基準点Sのグローバル座標系における座標位置を検出することもできる。
【0032】
図4は、3次元指定座標系と部材指定装置との関係を模式的に示す説明図である。位置センサ22によって基準点Sのグローバル座標系における座標位置が検出される。GPSセンサを用いる場合は、基準点Sの座標位置は、経度、緯度及び高度で表される。加速度センセを用いる場合は、2点間を移動する際の部材指定装置2の加速度が検出される。検出された加速度を積分することにより、2点間の距離が算出される。
【0033】
触手21が構成部材10に接触することにより、接触点Cが指定されると、傾斜センサ23によって基準線分CSのX軸、Y軸及びZ軸に対する傾斜角度がそれぞれ検出される。同図では、X軸、Y軸及びZ軸に対する傾斜角度をそれぞれα、β及びγで表している。なお、グローバル座標系の原点をGOとする。部材指定装置2は、基準点Sのグローバル座標系における座標位置と、基準線分CSのグローバル座標系の各3軸(X軸、Y軸、Z軸)に対する傾斜角度α、β及びγと、からグローバル座標系における構成部材10の位置情報である指定座標系位置情報を取得することができる。
【0034】
相対位置特定手段3は、生産設備100に相対位置特定部31を有し、3次元設備座標系に対する3次元指定座標系の相対位置を特定する。図1に示すように、生産設備100には、相対位置特定部31が形成されており、相対位置特定部31に触手21が接触することによって、3次元設備座標系と3次元指定座標系(グローバル座標系)との相対位置関係を特定することができる。相対位置特定部31は、触手21と接触可能な第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313を有している。相対位置特定部31のうちの1つ(同図では、第1接触部311)は、3次元設備座標系の原点FOになっている。
【0035】
図5は、3次元指定座標系と相対位置特定部との関係を模式的に示す説明図である。図6は、3次元設備座標系と3次元指定座標系との関係を模式的に示す説明図である。第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313に順に触手21が接触することにより、第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313がそれぞれ指定される。指定は、操作者が原点記憶指示部93を押動することにより行う。位置センサ22及び傾斜センサ23によって、構成部材10と同様に第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313のグローバル座標系における位置情報をそれぞれ取得することができる。図5では、第1接触部311及び第2接触部312を通る線分のX軸に対する傾斜角度をδで示している。なお、Y軸及びZ軸に対する傾斜角度も同様に取得することができる。また、第2接触部312及び第3接触部313を通る線分、第1接触部311及び第3接触部313を通る線分についても同様である。
【0036】
部材情報記憶部1には、第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313の設備座標系位置情報が記憶されている。これらの設備座標系位置情報は、各構成部材10の設備座標系位置情報と同様に、例えば、生産設備100の3次元CAD情報等から予め取得することができる。例えば、第1接触部311及び第2接触部312の設備座標系位置情報から、第1接触部311及び第2接触部312を通る線分のP軸に対する傾斜角度を算出することができる。図6では、傾斜角度をθで示している。なお、Q軸及びR軸についても同様に傾斜角度を算出することができる。また、第2接触部312及び第3接触部313を通る線分、第1接触部311及び第3接触部313を通る線分についても同様に傾斜角度を算出することができる。
【0037】
図6に示すように、第1接触部311及び第2接触部312を通る線分のX軸に対する傾斜角度はδであり、P軸に対する傾斜角度はθである。つまり、P軸は、X軸に対してδ−θ分、回転している。同様に、Q軸はY軸に対して回転しており、R軸はZ軸に対して回転している。同図では、座標軸の回転方向を矢印で示している。なお、説明を簡単にするために、図6では、3次元設備座標系の原点FOと3次元指定座標系(グローバル座標系)の原点GOとを一致させて記載しているが、実際は、それぞれの原点は異なる。そのため、座標系の回転に加えて、座標系の並進(平行移動)を行うことによって、3次元設備座標系と3次元指定座標系(グローバル座標系)とを一致させることができる。本実施形態では、これらの座標系の変換を3次元設備座標系に対する3次元指定座標系(グローバル座標系)の相対位置の特定という。
【0038】
座標系の並進及び回転は、公知の座標変換を用いることができる。例えば、座標系の並進分は、3次元指定座標系(グローバル座標系)の原点GOと3次元設備座標系の原点FOとを結ぶ並進ベクトルとして表すことができる。座標系の回転分は、例えば、法線ベクトルを用いて算出することができる。この場合は、第1接触部311、第2接触部312及び第3接触部313によって形成される面について、3次元設備座標系における法線ベクトルと、3次元指定座標系(グローバル座標系)における法線ベクトルと、を算出する。そして、3次元設備座標系における法線ベクトルと、3次元指定座標系(グローバル座標系)における法線ベクトルと、のなす角を算出することにより、座標系の回転分を算出することができる。
【0039】
変換手段4は、特定された3次元設備座標系と3次元指定座標系(グローバル座標系)との相対位置関係に基づいて、指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換する。部材指定装置2によって取得された構成部材10の指定座標系位置情報は、3次元設備座標系及び3次元指定座標系(グローバル座標系)の座標系の並進分、平行移動される。そして、3次元設備座標系及び3次元指定座標系(グローバル座標系)の座標系の回転分、回転することにより、設備座標系位置情報に変換される。例えば、並進ベクトルは3行1列の行列により表すことができ、座標系の回転分である回転成分Vは、3行3列の行列により表すことができる。これらの行列演算を行うことにより、指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換することができる。
【0040】
部材情報出力手段5は、変換された設備座標系位置情報に対する部材情報を部材情報記憶部1から読み出して出力する。部材情報表示手段6は、部材情報出力手段5が出力した部材情報を表示手段6Dに表示する。表示手段6Dは、例えば、LCD等の表示器を用いることができる。本実施形態では、構成部材10の部材情報が表示手段6Dに表示されるので、部材情報取得装置9の操作者は、構成部材10の部材情報を視認することができ、構成部材10の部材情報を容易に取得することができる。特に、部材情報表示手段6は、構成部材10の名称、部材番号および図形を含む部材情報を表示手段6Dに表示することができるので、操作者は、実際の構成部材10と表示手段6Dに表示される図形とを見比べて、構成部材10の発注を行うことができる。そのため、構成部材10の発注間違いを防止することができる。
【0041】
部材情報表示手段6は、触手21で指示される近辺の構成部材10の部材情報を複数表示することができ、操作者は、その中から所望の構成部材10の部材情報を選択することができる。これにより、構成部材10の誤認識を軽減することができる。また、表示指示部94を押動する毎に表示手段6Dに表示される部材情報を変更することができ、操作者は、所望の部材情報を得ることができる。さらに、操作者が表示指示部94を数秒間押動した状態を保持すると、部材情報表示手段6は、部材情報を3次元モデリング情報として表示することができる。3次元モデリングは、3次元レーザースキャナーなどによって構成部材10の外観を点群情報として収集し、収集された点群情報を画像処理して、構成部材10の外観をリアルタイムに表示手段6Dに表示することができる。これにより、操作者は、実際の構成部材10と表示手段6Dに表示される構成部材10とを見比べながら構成部材10の選択をすることができ、操作性が向上する。また、近接する構成部材10の誤認識を軽減させることもできる。
【0042】
部材情報記憶部1には、設備種特定手段7が備えられており、生産設備100の種類を特定することができる。生産設備100の種類の特定は、既述のとおり、操作者が設備種指示部92を押動することにより行う。設備種特定手段7には、複数種類の生産設備100について、各生産設備100を構成する各構成部材10の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と各構成部材10の部材情報とが関連付けて記憶されている。設備座標系位置情報と各構成部材10の部材情報との関連付けは、例えば、データベースを用いることができる。本実施形態では、部材情報記憶部1は、設備種特定手段7を備えるので、生産設備100の種類に合致した部材情報を容易に取得することができる。そのため、操作者は、生産設備100の種類に合わせて部材情報記憶部1に記憶される部材情報を書き換える必要がなく、作業性が向上する。
【0043】
通信手段8とホストサーバ8Sとの間でネットワークが構成されており、各種データ及び制御信号が送受信可能になっている。各種データには、各構成部材10の設備座標系位置情報及び各構成部材10の部材情報が含まれる。ネットワークにおける通信手段、プロトコル等は特に限定されず、有線でネットワークを構築しても無線でネットワークを構築しても良い。例えば、無線LAN(ローカル・エリア・ネットワーク)を用いてネットワークを構築すると、各構成部材10の設備座標系位置情報及び各構成部材10の部材情報をホストサーバ8Sから容易に更新することができ、好適である。なお、ネットワークを構成しないで、例えば、公知のシリアル通信(RS−232C)等によって各種データ及び制御信号を送受信することもできる。
【0044】
本実施形態では、部材指定装置2は、触手21によって構成部材10を指定することにより、構成部材10の指定座標系位置情報を取得することができるので、各構成部材10に識別記号を付す必要が無く、部材情報を取得する作業性が向上する。また、操作者は、実際の構成部材10を視認しながら、触手21によって構成部材10を指定することができるので、構成部材10の誤認識を軽減することができる。さらに、変換手段4が3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係に基づいて指定座標系位置情報を設備座標系位置情報に変換して、部材情報出力手段5が各構成部材10の部材情報を出力するので、各構成部材10が生産設備100に組付けられた状態においても部材情報を取得することができる。
【0045】
本実施形態では、相対位置特定手段3は、触手21が接触することによって3次元設備座標系と3次元指定座標系(グローバル座標系)との相対位置関係を特定することができるので、操作が容易であり、部材情報を取得する作業性が向上する。また、絶対座標であるグローバル座標系における指定座標系位置情報が設備座標系位置情報に変換されるので、絶対空間における各構成部材10の位置情報(絶対位置)の取得が容易である。本実施形態では、位置センサ22はGPSセンサまたは加速度センセであり、傾斜センサ23はジャイロセンサであるので、GPSセンサ、加速度センセ、ジャイロセンサを用いたいわゆる自立測位が可能である。そのため、複数のセンサから得られる検出結果を用いて指定座標系位置情報を補正することができ、センサを単独で用いる場合と比べて、指定座標系位置情報の検出精度を向上させることができる。
【0046】
(2)第2実施形態
図7は、構成部材の部材情報を取得する方法を示す説明図である。図8は、3次元指定座標系と相対位置特定部との関係を模式的に示す説明図である。本実施形態は、第1実施形態と比べて、相対位置特定部31が異なる。相対位置特定部31は、触手21と係合可能な凹部を呈している。触手21が相対位置特定部31の凹部と係合することにより、触手21は、予め規定された所定方向から3次元設備座標系の原点FOと接触することができる。つまり、図8に示す線分SFOと3次元設備座標系の直交座標軸(P軸、Q軸、R軸)との傾斜角度が予め規定されている。そのため、3次元指定座標系に対する3次元設備座標系の回転成分を一義に決定することができ、3次元設備座標系に対する3次元指定座標系の相対位置の特定が容易である。
【0047】
本実施形態では、操作者は、触手21を相対位置特定部31の凹部と係合させて、原点記憶指示部93を押動する(図7の丸数字1)。そして、操作者は、部材情報を取得する構成部材10に触手21を接触させ、表示指示部94を押動する(同図の丸数字2)。これにより、表示手段6Dに構成部材10の部材情報が表示される。これ以外の操作は、第1実施形態と同様である。
【0048】
(3)第3実施形態
本実施形態は、第1実施形態及び第2実施形態と比べて、部材指定装置2及び相対位置特定手段3が異なる。図9は、部材指定装置及び相対位置特定手段を模式的に示す斜視図である。同図では、部材指定装置2及び相対位置特定手段3以外の構成は、記載が省略されているが、他の実施形態と同様の構成を有している。本実施形態では、部材指定装置2は、固定部材24、接触部材25、連結部材26、26、26及び検出手段27、27、27を備えている。
【0049】
固定部材24は、生産設備100に設けられた凹状の基準部101に着脱可能に固定されている。接触部材25は、第1実施形態及び第2実施形態における触手21であり、構成部材10と接触点Cで接触して構成部材10を指定することができる。連結部材26は、固定部材24と接触部材25との間に接続され、2関節を有するロボットアームで構成されている。これにより、3次元指定座標系において接触部材25が固定部材24に対して移動可能になっており、作業空間を広く設けることができ、他の構成部材10の裏側に回り込める等の操作性を有している。
【0050】
固定部材24に接続される連結部材26は、固定部材24に軸支されており、軸芯方向は、3次元設備座標系のR軸方向と一致している。なお、本実施形態では、連結部材26を3つ備えているが、2つ以上であれば良く、その個数は限定されない。検出手段27は、固定部材24、連結部材26および接触部材25の隣接する2つの部材間の相対移動量を検出して、接触点Cの3次元指定座標系における座標位置を検出する。検出手段27は、例えば、エンコーダ等の回転角センサを用いることができる。
【0051】
相対位置特定手段3は、生産設備100に形成された基準部101と、基準部101に固定部材24を着脱可能に固定する固定手段32と、を備えている。基準部101は、3次元設備座標系の直交座標軸(P軸、Q軸、R軸)と3次元指定座標系の直交座標軸(X軸、Y軸、Z軸)が一致するように、凹部が形成されており、固定部材24は、固定手段であるボルト32により生産設備100に固定されている。
【0052】
本実施形態では、3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係を予め規定することができるので、接触部材25(触手21)を相対位置特定部31に接触させて、原点記憶指示部93を押動する操作は不要である。操作者は、設備種の選択後に、部材情報を取得する構成部材10に接触部材25を接触させ、表示指示部94を押動する。これにより、表示手段6Dに構成部材10の部材情報が表示される。
【0053】
本実施形態では、部材指定装置2は、固定部材24、連結部材26および接触部材25の隣接する2つの部材間の相対移動量を検出して、接触点Cの3次元指定座標系における座標位置を検出する検出手段27を備える。そのため、部材指定装置2は、任意の3次元指定座標系を用いて構成部材10の指定座標系位置情報を取得することができる。また、相対位置特定手段3は、生産設備100に形成された基準部101と、基準部101に固定部材24を所定関係で固定する固定手段32と、を備えるので、3次元設備座標系と3次元指定座標系との相対位置関係を予め規定することができ、相対位置関係の特定が容易である。そのため、相対位置特定手段3及び変換手段4における演算処理を軽減することができ、部材情報の取得時間を短縮することができる。さらに、相対位置関係の特定誤差を低減することができるので、構成部材10の誤認識を軽減することができる。
【0054】
なお、3次元設備座標系の直交座標軸(P軸、Q軸、R軸)と3次元指定座標系の直交座標軸(X軸、Y軸、Z軸)の各座標軸が所定角度に配されるように、基準部101の凹部を形成することもできる。各座標軸に対する傾斜角度は、予め規定することができるので、本実施形態で既述の効果と同様の効果を得ることができる。また、基準部101の形状は、凹部に限定されるものではなく、凸部であっても、平面状であっても良い。固定手段32は、複数設けることができ、固定方法は限定されない。
【0055】
(4)その他
本発明は上記し且つ図面に示した実施形態のみに限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変更して実施することができる。例えば、部材指定装置は、モーションキャプチャ等を用いることができる。モーションキャプチャは、操作者の動作を撮像手段によって記録して解析することにより、操作者の位置や動作を認識することができる。
【符号の説明】
【0056】
100:生産設備 10:構成部材
1:部材情報記憶部
2:部材指定装置
21:触手(指定手段) 22:位置センサ 23:傾斜センサ
24:固定部材 25:接触部材 26:連結部材 27:検出手段
3:相対位置特定手段
31:相対位置特定部 32:固定手段
4:変換手段
5:部材情報出力手段
6:部材情報表示手段
7:設備種特定手段
9:部材情報取得装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生産設備を構成する各構成部材の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と前記各構成部材の部材情報とを関連付けて記憶する部材情報記憶部と、
指定手段によって指定された前記構成部材の3次元指定座標系における指定座標系位置情報を取得する部材指定装置と、
前記生産設備に設定された前記3次元設備座標系に対する前記部材指定装置に設定された前記3次元指定座標系の相対位置を特定する相対位置特定手段と、
前記特定された前記3次元設備座標系と前記3次元指定座標系との相対位置関係に基づいて、前記指定座標系位置情報を前記設備座標系位置情報に変換する変換手段と、
前記変換された設備座標系位置情報に対する前記部材情報を前記部材情報記憶部から読み出して出力する部材情報出力手段と、
を備えることを特徴とする部材情報取得装置。
【請求項2】
前記3次元指定座標系は、東西方向および南北方向に設定される直交2軸ならびに前記直交2軸と直交する1軸で構成されるグローバル座標系であり、
前記部材指定装置は、基準点の前記グローバル座標系における座標位置を示す位置センサおよび前記構成部材に接触される前記指定手段の接触点と前記基準点とを結ぶ基準線分の前記グローバル座標系の前記各3軸に対する傾斜角度を検出する傾斜センサを有し、
前記相対位置特定手段は、前記指定手段が接触することによって前記3次元設備座標系と前記グローバル座標系との相対位置関係を特定可能に前記生産設備に形成された相対位置特定部を有する請求項1に記載の部材情報取得装置。
【請求項3】
前記位置センサはGPSセンサまたは加速度センセであり、前記傾斜センサはジャイロセンサである請求項2に記載の部材情報取得装置。
【請求項4】
前記部材指定装置は、
前記生産設備に形成された基準部に所定関係で固定される固定部材と、
前記指定手段であって前記構成部材と接触点で接触して前記構成部材を指定する接触部材と、
前記接触部材が前記固定部材に対して前記3次元指定座標系で移動可能に前記固定部材と前記接触部材との間に接続された複数の連結部材と、
前記固定部材、前記連結部材および前記接触部材の隣接する2つの部材間の相対移動量を検出し、前記接触点の前記3次元指定座標系における座標位置を検出する検出手段と、を備え、
前記相対位置特定手段は、前記生産設備に形成された前記基準部と、前記基準部に前記固定部材を前記所定関係で固定する固定手段と、を備える請求項1に記載の部材情報取得装置。
【請求項5】
前記部材情報出力手段が出力した前記構成部材の名称、部材番号および図形を含む前記部材情報を表示手段に表示する部材情報表示手段を備える請求項1〜4のいずれか1項に記載の部材情報取得装置。
【請求項6】
前記部材情報記憶部は、複数種類の生産設備について各生産設備を構成する各構成部材の3次元設備座標系における設備座標系位置情報と前記各構成部材の部材情報とを関連付けて記憶し、前記生産設備の種類を特定する設備種特定手段を備える請求項1〜5のいずれか1項に記載の部材情報取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−114455(P2013−114455A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260139(P2011−260139)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】