説明

都市ガス用ガスコック

【課題】製造時の容易化をはかり、十分な冷熱や操作によるシール耐久性を実現する。
【解決手段】一方の接続継手部と他方の接続継手部とを連通する弁本体の弁体収容部に、貫通穴3aを有するボール弁体3を配置するとともに、ハンドルにより操作軸を介してボール弁体3を回転可能に構成した都市ガス用ガスコックであって、弁本体の弁体収容部の接続継手部側に、ボール弁体3に摺接する樹脂製のシールリング21をそれぞれ設け、リング状弁座シート21とボール弁体3とを所定圧で圧接させるキャップ2および締結ねじ部13を設け、リング状弁座シート21の摺接部22に、内側段部23および外側段部24を形成して、ボール弁体3に圧接される圧接面25の面積を削減した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボール弁からなる都市ガス用ガスコックに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のガスコックは、たとえば特許文献1に示されるように、球状の弁体を有するボール弁よりなるものがある。
このガスコックは、図4に示すように、一方の接続継手部51および他方の接続継手部52を有し、両接続継手部51,52を連通する連通穴53に、貫通穴54a付きボール弁体54を収納したガスコック本体55を設け、ガスコック本体55の軸穴55aに配設された操作軸56に、ボール弁体54を回転させるハンドル57を設けている。また連通口53の出入口には、ボール弁体54に摺接するリング状弁座シート58が介装され、ネジ式の止め輪59により固定されている。
【特許文献1】特開2002−71032(図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、従来のボール弁は大型の配管に使用されることが多く、ボール弁体とバルブ本体との摺接シール部には金属製リング状弁座シートが使用されている。このようにボール弁体がメタルタッチ状態では、十分なハンドルの操作トルクが必要であるため、減速ギヤを有する大型ハンドルによりボール弁体が操作されていた。
【0004】
しかし、一般家庭や業務用に使用される小型のガスコックでは、ボール弁体54の摺接シール部に樹脂製のリング状弁座シート58を採用することにより、ハンドル57の操作トルクを軽減している。
【0005】
ところで、都市ガス用に使用されるガスコックは、冷熱繰返試験や操作繰返し試験を行ってシール性能の低下を検出することが義務付けられており、このため、上記従来例では、ボール弁体54とリング状弁座シート58との摺接面積を十分に確保し、かつ十分な加圧力を得ることにより、冷熱耐久性と操作耐久性とを確保している。
【0006】
前記ガスコックは、規定によりハンドル57の操作トルクが所定値以下に制限されるため、前記止め輪59の締め代によりボール弁体54とリング状弁座シート58との加圧力を調整しているが、止め輪59の締め代の変化に対して、ハンドル57の操作トルクの変化が極めて大きく過敏に変化するため、製造時の止め輪59の締め代の調整を高精度で行う必要があった。
【0007】
本発明は上記問題点を解決して、製造時を容易化をはかり、十分なシール耐久性(冷熱耐久性と操作耐久性)を実現できる都市ガス用ガスコックを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1記載の発明は、一方の接続継手部と他方の接続継手部とを連通する弁箱の連通部に、貫通穴を有するボール弁体を配置するとともに、ハンドルにより操作軸を介して前記ボール弁体を回動可能に構成した都市ガス用ガスコックであって、前記弁箱の連通部の接続継手部側に、ボール弁体に摺接する樹脂製のリング状弁座シートをそれぞれ設け、前記リング状弁座シートとボール弁体とをねじの締付力で圧接させる加圧手段を設け、前記リング状弁座シートの摺接部の接続継手部側およびボール弁体側の少なくとも一方に段部を形成して、前記圧接面の面積を削減したものである。
【0009】
請求項2記載の発明は、リング状弁座シートの摺接部の接続継手側に外側段部を形成するとともに、ボール弁体側にそれぞれ内側段部を形成し前記外側段部および内側段部を、段部底面と、前記段部底面と圧接面との間を接続する傾斜面とでそれぞれ構成して、前記圧接面を前記傾斜面からなる山形断面の頂部に略ボール弁体接線方向に形成し、リング状弁座シートの摺接部の反対側内面に、加圧力に対する変形を許容する逃げ用面取り部を形成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、リング状弁座シートの摺接部に段部を形成して圧接面の面積を削減したので、ボール弁体に対するリング状弁座シートの摩擦抵抗を軽減することができて、加圧手段による加圧力の増大により十分なシール性能を得ることができる。また実験によると、従来のように圧接面の面積が広い場合、ねじの締め代による加圧力が増加すると、ハンドルの操作トルクが急激に増加するが、本発明のように圧接面の面積表面を小さくすることで、加圧力が増加してもハンドルの操作トルクの増大を穏かにできることが判明した。したがって、製造時に加圧手段によるねじの締め代の範囲を広く確保することができ、製造を容易化することができる。さらに十分なシール冷熱耐久性や操作耐久性を実現することができる。
【0011】
また請求項2記載の発明によれば、外側段部と内側段部とにより山形断面の頂部を圧接面とすることで、加圧力により圧接面を押圧圧縮しても、圧接面の面積の増大が少なく、ハンドルの操作トルクが過大となることがない。また逃げ用面取り部により、リング状弁座シートの弾性変形を利用して圧接面の摩擦抵抗を軽減することができ、加圧手段によるねじの締め代の範囲をより広く確保することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
[実施の形態1]
このガスコックは、図2に示すように、一方の接続継手部5Aとボール弁体3とを有する弁本体(弁箱)1と、前記弁本体1に装着されたキヤップ2と、キャップ2に設けられて他方の接続継手部5Bを形成する接続筒6と、操作軸7を介してボール弁体3を回転させる操作用のハンドル4とを具備している。
【0013】
前記弁本体1の一方の接続継手部5Aに雌ねじ部1aが形成され、また一方の接続継手部5Aと他方の接続継手部5Bとを連通する弁収納部(連通部)8に、貫通穴3aが形成されたボール弁体3が回転自在に収容されている。そして前記弁本体1に形成されたボス部9には、弁収納部8に連通するボス穴9aが設けられており、前記ボス穴9aに操作軸7がOリング11Aと耐火パッキン11Bを介して回転自在に収容されている。また操作軸7は、下端部にボール弁体3の操作凹部3bに嵌合される係合軸部7aが形成され、上端部に固定ビス12を介してハンドル4が固定されている。
【0014】
前記弁本体1の他方側に締結ねじ部(加圧手段)13を介してキャップ(加圧手段)2が装着されている。また弁収納部8の一方の接続継手部5A側と、キャップ2の連通穴2aのボール弁体3側にそれぞれ形成された円形のシール収納部14,14に、本発明に係るリング状弁座シート21,21が介装されている。そして、キヤップ2の締結ねじ部13の締付力によりリング状弁座シート21,21とボール弁体3とが互いに圧接されている。また弁収納部8の一方の接続継手部5A側で中心寄りの溝部15には、加熱により膨張する耐火パッキン(たとえば熱膨張性黒鉛が混入されたニトリルゴム製)16が介装されている。
【0015】
前記キャップ2には、小径部2bにOリング17Aおよび耐火パッキン17Bを介して回転筒6が回転自在に外嵌され、この回転筒6に雌ねじ部6aが形成されて他方の接続継手5Bが構成されている。18は回転筒6の抜け止め用止め輪である。
【0016】
リング状弁座シート21は、図1(a)(b)に示すように、樹脂製(たとえば四フッ化エチレン樹脂)で、内周面21aの内径d1は、直径Dのボール弁体3の貫通穴3aの内径と略同一であり、内周面21aから外周面21bまでの厚みTと、内側面21cから外側面21dまでの長さLの略正方形断面(たとえば約3mm×3mm)内に納まる断面形状である。21eは外周面21bと外側面21dのコーナー部に形成された面取り部である。
【0017】
そして、ボール弁体3の表面に対向されるリング状弁座シート21の摺接部22には、ボール弁体3側に内側段部23が形成されるとともに、接続継手部5B(5A)側に外側段部24がそれぞれ形成されて、圧接面25が削減されている。これにより、ボール弁体3に圧接される圧接面25の面積を削減しハンドル4の操作トルクを低減している。
【0018】
すなわち、前記内側段部23は、ボール弁体3の略接線方向(以下、接線方向と略す)の段部底面23aと、段部底面23aから圧接面25に至る傾斜面23bからなる。そしてその傾斜面22bは弁収納部8の軸心Oに略垂直な面弁収納部8の軸心Oを中心とする略円筒面に形成されている。また外側段部24は、略接線方向の段部底面24aと、段部底面24aから圧接面25に至る傾斜面24bからなり、傾斜面24bは弁収納部8の軸心Oを中心とする略円筒面に形成されている。そして、前記圧接面25が前記両傾斜面23b,24bからなる山形断面の凸部25aの頂部に弁体収納部8の軸心Oに対してθ°で傾斜する略接線方向に形成されている。
【0019】
ここで図1(b)に示すように、圧接面25の接線方向の幅Wは、仮想線で示す従来の圧接面25の幅Waに比較して1:3.5程度であり、かつリング状弁座シート21の厚みT(≒長さL)×1/4〜1/6の範囲に形成されている。ここでW>T(≒L)×1/4では、ハンドル4の初期起動トルクおよび操作トルクが過大になり、ハンドル4の操作がしにくいからであり、W<T(≒L)×1/6では、長期間の使用によりシール性能が低下しやすいためである。
【0020】
またリング状弁座シート21の摺接部22の反対側で内周面21aと外側面21dにわたって所定寸法の逃げ用の面取り部26が形成される。この面取り部26は、ボール弁体3が圧接面25に圧接された時に、樹脂の弾性変形を利用して摩擦抵抗を調整するためのものである。ここで、もし面取り部26が無く、弁収納部8あるいはキャップ2のシール収納部14,14の内面によりリング状弁座シート21の外側面21d全面が押圧されると、圧接面25における凸部25aの変形は、リング状弁座シート21の樹脂材質の圧縮特性のみで圧接されるので、加圧力の変化に対してハンドル4の操作トルクが急激に変化するおそれがある。
【0021】
上記実施の形態によれば、ボール弁体3と圧接されるリング状弁座シート21の摺接部22に、内側段部23および外側段部24を形成し、キャップ2の締結ねじ部13による締付力(締め代)で加圧される圧接面25の面積を削減したので、ボール弁体3とリング状弁座シート21との摩擦抵抗を軽減してハンドル4の操作トルクを軽減できる。これによりキャップ2の締結ねじ部13によりボール弁体3とリング状弁座シート21との加圧力を増大して、圧接面25におけるシール性を向上させ十分な冷熱耐久性と操作耐久性を実現することができる。さらに、実験によれば、キャップ2の締結ねじ部13による締付力(締め代)を変化させても、圧接面の広い従来品に比較して、ハンドル4の操作トルクの変化が少ないことが実証されている。したがって、製造時にキャップ2の組立作業時に、締結ねじ部13の締め代の許容範囲を広く確保でき、ハンドル4の操作トルクを小さくしつつシール性能を十分に確保することができる。
【0022】
また外側段部24と内側段部23とによる山形断面の凸部25aの頂部を圧接面25とすることで、キャップ2の締結ねじ部13により加圧力を増大して圧接面25を押圧圧縮することがあっても、圧接面25の面積の増大が少なく、ハンドル4の操作トルクが過大となることがない。
[実施の形態2]
この実施の形態2は、リング状弁座シート21の摺接部22の形態を変更したもので、図3を参照して説明する。なお、実施の形態1と同一部材には同一符号を付して説明を省略する。
【0023】
すなわち、摺接面22には、ボール弁体3側の内側段部23のみが形成され、山形断面の凸部25aの頂部に圧接面25が形成されている。
ここで図3(b)に示すように、圧接面25の接線方向の幅Wは、仮想線で示す従来の圧接面25の幅Waに比較して1/3.5程度であり、かつリング状弁座シート21の厚みT(≒長さL)×1/4〜1/6の範囲に形成されている。
【0024】
上記構成により、実施の形態1と同様の効果を奏することができる。
なお、上記実施の形態では、加圧手段をキャップ2と締結ねじ部13で構成したが、従来例と同様にねじ式の止め輪を使用してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係るガスコックの実施の形態1を示し、(a)はリング状弁座シートの拡大縦断面図、(b)はリング状弁座シートの拡大端面図である。
【図2】同ガスコックの縦断面図である。
【図3】本発明に係るガスコックの実施の形態2を示し、(a)はリング状弁座シートの拡大縦断面図、(b)はリング状弁座シートの拡大端面図である。
【図4】(a)は従来のガスコックを示す縦断面図、(b)は同リング状弁座シートの拡大断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 弁本体
2 キャップ
3 ボール弁体
4 ハンドル
5A 一方の接続継手部
5B 他方の接続継手部
6 接続筒
7 操作軸
8 弁体収容部
13 締結ネジ部
14 溝部
15 溝部
16 耐火パッキン
17A Oリング
17B 耐火パッキン
21 リング状弁座シート
22 摺接部
23 内側段部
23a 段部底面
23b 傾斜面
24 外側段部
24a 段部底面
24b 傾斜面
25 圧接面
26 逃げ用面取り部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方の接続継手部と他方の接続継手部とを連通する弁箱の連通穴に、貫通穴を有するボール弁体を配置するとともに、ハンドルにより操作軸を介して前記ボール弁体を回動可能に構成した都市ガス用ガスコックであって、
前記弁箱の連通穴の接続継手部側に、ボール弁体に摺接する樹脂製のリング状弁座シートをそれぞれ設け、
前記リング状弁座シートとボール弁体とをねじの締付力で圧接させる加圧手段を設け、
前記リング状弁座シート摺接部の圧接面の前記各接続継手部側およびボール弁体側の少なくとも一方に段部を形成して、前記圧接面の面積を削減した
都市ガス用ガスコック。
【請求項2】
リング状弁座シートの摺接部の接続継手側に外側段部を形成するとともに、ボール弁体側にそれぞれ内側段部を形成し、
前記外側段部および内側段部を、段部底面と、前記段部底面と圧接面との間を接続する傾斜面とでそれぞれ構成して、前記圧接面を前記傾斜面からなる山形断面の頂部に略ボール弁体接線方向に形成し、
リング状弁座シートの摺接部の反対側内面に、加圧力に対する変形を許容する逃げ用面取り部を形成した
請求項1記載の都市ガス用ガスコック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−275124(P2006−275124A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−93347(P2005−93347)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000191397)新和産業株式会社 (56)
【出願人】(000128968)株式会社オンダ製作所 (31)
【Fターム(参考)】