説明

配向ゼオライト材料および同材料を製造する方法

配向ゼオライト材料は、基材(4)上に配列された複数のゼオライト結晶(2)を含有する。結晶の各々は、基材に隣接する近位面(6)と、近位面とは反対に向き、かつ同近位面に平行な遠位面(8)とを有する。結晶の各々は、近位面と遠位面との間に延び、かつ長手結晶軸Aに平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネル(10)を有する。各チャネルは、近位面に位置する近位チャネル端(12)、および遠位面に位置する遠位チャネル端(14)を有する。各結晶は、近位チャネル端をほぼ閉塞する連結層(16)によって基材に付着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配向ゼオライト材料および同材料を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
日光は緑葉のアンテナ系で吸収され、該アンテナ系では、日光はエネルギー変換のために超分子組織化された葉緑素分子によって輸送される。例えば、有機色素分子の配列を備える人工系において、同様の光輸送を開発することは非常に望ましい。しかしながら、有機色素分子は、低濃度においてでさえ、凝集体を形成する傾向にある。これらの凝集体は、一般に電子の励起エネルギーの急速な熱緩和をもたらすことが知られている。
【0003】
以前より、ゼオライトL結晶は、超分子組織を形成する相当量の色素分子が充填される理想的なホスト系であることが知られている。ゼオライトLの主な役割は、その本質的に一次元のチャネルによって色素分子の凝集を防止することである。つい最近では、特許文献1に開示されているように、適切な閉鎖分子(closure molecules)すなわち「ストップコック(stopcock)」分子によって、これらの材料のチャネルの両端を封鎖することにより、色素を充填したゼオライトL材料の適用性および特性を大幅に改善できることが分かった。そのような閉鎖分子は長尺形状を有し、頭部と尾部とから成る。尾部は、一般的には、c軸に沿った結晶単位格子の寸法より大きな長手方向拡張部を有する。また、頭部は、チャネル幅より大きく、したがって頭部がチャネル内に貫入するのを防止する側方拡張部を有する。ゼオライトL材料のチャネルは、閉鎖分子によって、概して栓のような方法で終結される。閉鎖分子の尾部はチャネル内に貫入し、閉鎖分子の頭部はゼオライトL表面の上に突出するとともに、チャネルの端をほぼ閉塞する。
【0004】
相当量の色素分子のより高度な組織化が望ましい。これは、ゼオライト結晶を配向構造へと制御して集合させることによって行うことができる。円柱形状のゼオライトLの場合には、これは、表面上に多数の結晶を整列させることを意味し、多数の結晶の整列は、多数の一次元チャネルの整列を生じる。
【0005】
基材上におけるゼオライト単層の調製は、特許文献2において開示されている。しかしながら、この文献は、様々な形状の小さなゼオライト粒子の付着に関連したものであり、ゼオライト粒子の基材に対する整列、およびゼオライト粒子の互いに対する整列には対処していない。
【特許文献1】国際出願公開公報第WO02/36490A1号
【特許文献2】国際出願公開公報第WO01/96106A1号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、各結晶のほぼ平行なチャネルの配列が基材表面にほぼ直交して整列するように、基材に堅固に付着したゼオライト結晶の集合体を提供することを目的とする。本発明のさらなる目的は、そのような集合体を製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、配向ゼオライト材料は、基材上に配列された複数のゼオライト結晶を含む。結晶の各々は、基材に隣接する近位面と、近位面とは反対に向き、かつ同近位面に平行な遠位面とを有する。結晶の各々は、近位面と遠位面との間に延び、かつ長手結晶軸に平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネルを有する。各チャネルは、近位面に位置する近位チャネル端、および
遠位面に位置する遠位チャネル端を有する。各結晶は、近位チャネル端をほぼ閉塞する連結層によって基材に付着されている。
【0008】
本発明の別の態様によれば、配向ゼオライト材料を製造する方法は、
a)ほぼ平坦な表面を基材に与える工程と、
b)一定量のゼオライト結晶を提供する工程であって、結晶の各々は一対のほぼ平行な面を有し、結晶の各々は、2つの面の間に延び、かつ長手結晶軸に平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネルをさらに有する、工程と、
c)下記の工程、すなわち、
c1)基材表面で基材親和性連結剤の層を形成する工程と、
c2)結晶のチャネルにゼオライト親和性連結剤を挿入する工程とのうちの少なくとも1つを実施する工程と、
d)結晶と基材とを合体させることにより、基材親和性連結剤の層およびゼオライト親和性連結剤の層の少なくともいずれかからの連結層の形成を引き起こす工程であって、連結層は、基材と一対の面のうちの近位面との間に配置される、工程とを備える。
【0009】
有利な実施形態は従属請求項において定義される。
基材は、修飾されているか、または修飾されていない、ガラス、またはSiO、またはTiO、またはSnO、またはZnO、またはSi、またはAu、またはAgであり得る。この方法は、C60、またはPEI、またはGOP−TMS、またはTES−PCN、またはCP−TMS、またはBTESB、または基材の表面に同様の結合を提供することができる他の分子などの、共有結合性リンカーまたは分子リンカーを用いた基材の修飾を含み得る。本発明の一実施形態においては、アミノ修飾ゼオライト結晶を用いた。本発明の別の実施形態においては、基材と反応させるために、過剰なゼオライトL結晶を用いた。
【0010】
本発明は、単層ゼオライト結晶の開放したチャネル端に色素を挿入する方法を更に提供する。本発明は、色素を充填したゼオライト単層を、チャネル端において、外部受容体または供与体ストップコック色素に結合させる方法を更に提供する。チャネル端における供与体ストップコック色素は、結晶内部の供与体分子からの電子励起エネルギーを捕捉したり、またはチャネル内部の受容体にその電子励起エネルギーを注入したりし得る。別の観点から言えば、本発明は、上記で述べた方法によって形成された材料である。
【0011】
本発明は、励起エネルギーが一方向に輸送される系の基礎となる材料を更に提供する。したがって、本発明によって主として提供される材料は、最近観察された色素充填ゼオライトLにおける疑似一次元電子励起エネルギー輸送を利用する可能性を大いに広げる(シー.ミンコフスキー(C. Minkowski)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Angew. Chem. Int.、2005年、第44巻、p.5325)。本発明に記載する高度に組織化された強健な材料は、色素増感太陽電池およびルミネセンス太陽光集光器をも含むフォトニックデバイスを開発する、類のない可能性を提示する(ジェイ.エス.バチェルダー(J. S. Batchelder)、エイ.エイチ.ズヴァイル(A.H. Zewail)、ティ.コール(T. Cole)、Applied Optics、1979年、第18巻、p.3090)。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
添付の図面に関連して得られる本発明の様々な実施形態の以下の説明を参照することにより、上記したものやその他の本発明の特徴および目的、並びにそれらを達成する方法がより明白になるとともに、本発明自体をよりよく理解できるであろう。
【0013】
概論
図1に、配向ゼオライト材料を形成するための一般原理を示す。材料は、基材4上に配置された複数のゼオライト結晶2を含む。結晶の各々は、基材に隣接する近位面6と、近位面とは反対に向き、かつ同近位面に平行な遠位面8とを有する。結晶の各々は、近位面と遠位面との間に延び、かつ長手結晶軸Aに平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネル10を有する。各チャネルは、近位面に位置する近位チャネル端12、および遠位面に位置する遠位チャネル端14を有する。各結晶は、近位チャネル端をほぼ閉塞する連結層16によって、基材に付着される。具体的には、図1(a)は、ほぼ平坦な表面18を有する基材4を示す。表面18は、好ましくは、あらゆる望ましくない種を除去するために予め処理されている。一方、図1(b)は連結層を施した後の基材を示しており、連結層の詳細は以下でさらに検討する。図1(c)は、数個のゼオライト結晶が付着した基材と、より詳細に示した結晶とを示す。
【0014】
図1に示す工程は、基材表面と接触させられる基材親和性連結剤から連結層が形成される調製方法について述べている。用語「基材親和性(substrate−affine)」は、連結剤が基材表面に付着するための親和力を有することを意味するものとする。
【0015】
図1に示していない別法によれば、連結層は、まず、ゼオライト結晶にゼオライト親和性連結剤を充填することにより形成される。用語「ゼオライト親和性(zeolite−affine)」は、連結剤がゼオライトチャネル内に導入され得ることを意味するものとする。具体的には、ゼオライト親和性連結剤は、チャネルの端部の官能化を引き起こす種になるであろう。次の工程において、この連結剤は、ゼオライト結晶の近位面と基材表面との間に連結層を形成するように、基材表面と相互に作用する。基材表面は、基材親和性連結剤であらかじめ被覆されていてもよい。
【0016】
基材に付着したゼオライト結晶に対する場合、用語「近位」は、一般に、基材に向かって配向されている任意の部分に対して用いられるのに対して、用語「遠位」は、一般に、基材から離反するように配向されている任意の部分に用いられる。基材に接していない結晶の場合には、そのような区別はない。そのため、例えば2つの等価な結晶面の一方に対する場合は、「末端」のような用語を用いることが適切である。基材は、可撓性の物体、例えば、リボン状構造体であり得ることにも注目すべきである。
【0017】
例えば図1のように調製された配向ゼオライト材料は、次に、図2および図3に概略的に示すように、色素分子を充填され得る。図2および図3では、同等の特徴には図1と同じ参照符号を用いている。図2(a)に示される出発点は、連結層16によって基材4に付着したゼオライトL結晶2である。連結層16は、近位チャネル端12を効果的に閉塞する。遠位チャネル端14は開放している。続いて、既知の手法を用いることにより、チャネル10に色素分子20が充填され、よって図2(b)に示す状況に至る。次に、遠位チャネル端14には、閉鎖分子または「ストップコック」分子22が栓のように挿入され、よって、閉鎖分子または「ストップコック」分子22は、図2(c)に示すように、色素分子を効果的に閉じ込める。任意選択の次工程として、図2(d)に示すように、閉鎖分子22の配列上に機能層24が載置される。
【0018】
小さなゼオライト結晶を良好に集合させることは、主として、狭い粒度分布および明確な形態を有することに依存する。次に、組織化された超分子の機能材料を生じるように修飾することができる配向ゼオライトL単層を良好に集合させることは、新しい挑戦を提示する。テーブル1は、基材上のそのような単層の調製のための異なる選択肢の概要を示す。基本原理は、ゼオライトL結晶の面と基材の面と間の相互作用が、ゼオライトL結晶の外側面と基材との間の相互作用より強く、重要なことには、ゼオライト結晶間のどの相互作用より強いということである。過剰な結晶と作用させ、それらを正しい方法で基材に固
着させ、これらの条件下で過剰な物質を洗い流すことにより、所望の材料がもたらされ得る。チャネルが単層の調製中に閉鎖または損傷しさえしなければ、後続のチャネル内への色素分子の挿入およびストップコックの付加は可能であり得る。該手順は、例えば、電子の励起エネルギーが一方向のみに輸送される系に対して、励起特性を有する材料をもたらし得る。
【0019】
テーブル1:ゼオライト単層の調製のための可能な手順
【0020】
【表1】

【0021】
テーブル2:本研究に用いた分子。左:単層のゼオライトL結晶のチャネルに挿入した色素。右:単層を合成するために用いた共有結合リンカー。下:ゼオライトのチャネル端に付着させたストップコック分子であるATTO520およびCy02702
【0022】
【表2】

【0023】
ゼオライトL単層の調製
ゼオライトL単層の調製は、2種類の中型の円柱状ゼオライトL結晶、すなわち、(a)アスペクト比(すなわち直径に対する長さの比)が1である長さ1μmの結晶と、(b)アスペクト比が0.3である長さ200nmの結晶とを用いて行った。(エイ.ザバラ
ルイス(A. Zabala Ruiz)、ディ.ブリュービラー(D. Bruehwiler、ティ.バン(T. Ban)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Monatsh. Chem.、2005年、第136巻、p.77)。試薬によって、異なる化学的手順を続けた。配向ゼオライトLの単層をか焼した後に、色素を取り込ませ、チャネル端にストップコック分子を付着させることにより、単方向材料を生じた。ゼオライトL単層を合成するために共有結合リンカーとして用いた分子、ゼオライトL単層のチャネルに挿入した色素、および付着させたストップコック分子をテーブル2にまとめた。単層の安定性は、か焼の前に、トルエン中で試料を超音波処理することにより試験した。超音波処理は単層を洗浄して過剰な結晶を除く最良の方法であるので、この試験を用いた。安定性は、常に、か焼プロセスによって相当に改善された。
【0024】
配向ゼオライトL単層を得るために、異なる実験条件および試薬を試験した。成功した手順およびか焼前に得られた材料の品質に対する注釈について概説する。異なる手順の詳細は実験項において報告する。
【0025】
(1)C60:先の報告(エス.ワイ.チョウイ(S. Y. Choi)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、ワイ.エス.パーク(Y. S. Park)、ケイ.ハ、(K. Ha)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、J. A
m. Chem. Soc.、2000年、第122巻、p.5201)に基づいて、ゼオライトL単層の調製のための共有結合試薬として、C60を試験した。単層の被覆率の程度および均質性は一部の用途には許容可能であり、安定性は高い。層を損傷することなく、試料を10分間以上にわたって超音波処理することが可能であった。
【0026】
(2)GOP−TMS:このリンカーによって得られる被覆率の程度、緊密な充填の程度、および安定性は不充分である。数分の超音波処理後、基本的に全ての結晶が剥がれ落ちた。
【0027】
(3)PEI:分子リンカーとしてPEIを用いて(エイ.クラーク(A. Kulak) 、ワイ.エス.パーク(Y. S. Park)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、ワイ.エス.チユン(Y. S. Chun)、ケイ.ハ(K. Ha)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、J. Am. Chem. Soc.、2000年、第122巻、p.9308)、中位の被覆率および緊密な充填性を得た。結晶は一部の領域において互いに結合される。これは純粋な単層の形成を妨げる。しかしながら、純粋な単層はガラス表面に強固に結合され、層を損傷することなく、試料を10分間以上にわたって超音波処理することが可能であった。
【0028】
(4)TES−PCN:被覆率および緊密な充填の程度は高い。ガラス表面への結晶の結合はあまり強固ではない。試料を5分間以上にわたって超音波処理することにより、結晶の深刻な喪失を生じた。
【0029】
(5)CP−TMS:CP−TMSとの反応は、2つの工程(エス.ミントヴァ(S.
Mintova)、エス.シェーマン(S. Schoeman)、ヴィー.ヴァルチェフ(V. Valtchev)、ジェイ.ステーテ (J. Sterte)、エス.モ(S. Mo)、ティ.ベイン(T. Bein)、Adv. Mater. 、1997年、第9巻、p.585、およびジェイ.エス.リー(J. S. Lee)、ケイ.ハ(K. Ha)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、Angew. Adv. Mater.、2005年、第17巻、p.837を参照のこと)、すなわち、i)CP−TMSをガラス表面に繋留することと、ii)未修飾の(bare)ゼオライトLを、CP−TMSが繋留されたガラス板と反応させることとを備える。どちらのゼオライトLも、良好な品質の単層を生じた。ゼオライトL結晶とガラス表面に繋留された官能基との間の反応を促進する2つの異なる方法、すなわち還流および超音波処理を試験した。図4A)は、還流下で調製した試料のSEM画像を示す。充填および被覆率の程度は良好である。しかしながら、超音波処理下でゼオライト結晶を結合させた場合、図4B)に示すように、被覆率および充填の程度が双方とも著しく高い。超音波処理下で反応を実施することは、より好都合であり、またより好結果であることが判明した。超音波処理下における反応の実施に要する時間は、大幅に短い。よって、ゼオライトLを表面修飾したガラス板と反応させるこの方法を、他のすべての同等の手順、例えばGOP−TMS、TES−PCN、およびBTESBを用いる場合、に適用した。CP−TMSを介した、ゼオライトL単層とガラス表面との間の結合は強固であるものと思われ、試料を5分以上にわたって超音波処理することができた。
【0030】
(6)BTESB:非常に良好な品質の単層を生じた手順は、まずBTESBをガラス表面に繋留し、その後、超音波処理下において、未修飾のゼオライトL結晶を、BTESBが繋留されたガラス板と反応させることによるものであった。図4C)は、この方法で調製した試料のSEM画像を示す。被覆率の程度は高く、緊密な充填の程度は非常に高い。しかしながら、そのように得られたゼオライトL単層の安定性は手順(5)に従って得られたゼオライトL単層のものほど良好ではない。試料を3分間より長く超音波処理する
ことにより、結晶の大きな喪失をもたらす場合がある。
【0031】
要約すると、共有結合リンカーとしてのTES−PCN、CP−TMS、およびBTESBに関する手順は、板全体にわたって非常に高度な被覆率を有する緊密に充填されたゼオライトL単層を生じたということになる。TES−PCN/CP−TMS/BTESBを被覆したガラス板上へのゼオライトL結晶の結合は、ゼオライトL結晶のチャネル開口上の表面ヒドロキシル基による、末端のシアナート基/クロロ基/トリエトキシ基の求核置換によってそれぞれ進行するものと思われる。ゼオライト単層とガラス表面との間の結合の強さは、TES−PCNおよびBTESBを用いた場合には弱いが、CP−TMSを用いた場合には強い。末端ハロゲン化物の求核置換(ケイ.ハ(K. Ha)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、エイチ.ジェイ.リー(H. J. Lee)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、Adv. Mater.、2000年、第12巻、p.1114)は、末端シアナートまたはトリエトキシの求核置換よりも、ゼオライトL結晶とガラス表面との間にはるかに強固な結合をもたらすものと思われる。共有結合リンカーとしてC60およびPEIを伴う手順は、最も強固なガラス表面との結合を有するゼオライトL単層を生じた。C60を被覆したガラス板上へのアミノ修飾ゼオライトL結晶の結合は、C60へのアミンの付加によって進行する(ケイ.ハ(K. Ha)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、エイチ.ジェイ.リー(H. J. Lee)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、Adv. Mater.、2000年、第12巻、p.1114)。PEIを介した、GOP−TMSを被覆したガラス板上へのGOP−TMSゼオライトL結晶の結合は、PEIのアミノ基による、ガラス上およびゼオライトL表面上に繋留されたエポキシ基の求核開環によって進行する(エイ.クラーク(A. Kulak) 、ワイ.エス.パーク(Y. S. Park)、ワイ.−ジェイ.リー(Y. −J. Lee)、ワイ.エス.チユン(Y. S.
Chun)、ケイ.ハ(K. Ha)、ケイ.ビー.ヨーン(K. B. Yoon)、J. Am. Chem. Soc.、2000年、第122巻、p.9308)。
【0032】
高度な被覆率および緊密な充填を得るための重要な必要条件は、修飾したガラス表面とゼオライトL結晶を反応させる場合、相当に過剰なゼオライトL結晶を用いることである。従って、顧慮すべき基本原理は、結晶の底面と基材との間の相互作用が、好ましくは、他のどの相互作用よりも強固またははるかに強固であるということである。緊密な充填現象を説明するプロセスは表面移動である。ゼオライトL結晶と修飾されたガラス板との相互作用が、反応の初期状態においては、移動が起こり得るように充分に弱い場合、表面移動が生じて、稠密な充填を形成する。次の工程において、より強固な結合が達成される。これに基づいて、なぜ超音波処理が単層構築プロセス中に反応を促進することにおいてそれほど好結果となるのかを理解することができる。超音波処理は、迅速な表面移動によって、ゼオライトL結晶が表面上の有効な部位を迅速に見つけるのを支援する。
【0033】
色素充填ゼオライトL単層
配向ゼオライトL単層を調製する方法を有すれば、色素分子の挿入により、配向ゼオライトL単層を修飾することができる。この目的のために、有機部を焼失させ、かつガラス板に接触している側のチャネル開口をより良好に閉鎖するために、手順(5)または手順(6)に従って調製された材料をか焼した。色素の連続的な挿入は、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、エス.フーバー(S. Huber)、エイチ.マース(H. Maas)、シー.ミンコフスキー(C. Minkowski)、Angew. Chem. Int. Ed. 、2003年、第42巻、p.3732、およびエム.ポーシャール(M. Pauchard)、エイ.ドヴォー(A. Devaux)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Chem. Eur. J. 、2000年、第6巻、p.3456に記載されているのと同様の手順によって実現した。テーブル2は、これまでに単層として構成したゼオライトL結晶のチャネル
に挿入した色素の代表的なリストを示す。図5は、それぞれPyおよびOxが充填された2つのゼオライトL単層の蛍光顕微鏡画像を示す。試料からの強い発光を観察することができる。これはまた、か焼プロセス後において、ゼオライトL結晶中の細孔が依然として開放されていることも示している。
【0034】
空間的制約により、互いにすれ違う(glide past)ことができない2つの異なる色素の連続的な挿入は、効率的に電子の励起エネルギーを輸送することができるアンテナ系を調製するための基礎である。PyとOxの対は、この試験に適した選択である。これらの色素の高い蛍光量子収率および好ましい分光特性(図5aを参照)は、系が非常に効率的なフェルスター(Foerster)型の電子励起エネルギー移動を有することを可能にする。配向Ox,Py−ゼオライトL単層は、まずPy(供与体)を挿入し、その後、Ox(受容体)を挿入することによって調製した。図7(A)に示すスペクトルは、供与体の選択的な励起後に、電子的に励起されたPyからOxへの大きなエネルギー移動が生じることを示している。このエネルギー移動実験において、発光スペクトルは、Oxの吸収が非常に弱い460nmにおける励起の際に記録され、また、励起はPyの発光が弱い680nmで検出された。
【0035】
ストップコック修飾した色素充填ゼオライトL単層
ゼオライト結晶の内部を越えた拡張は、ゼオライトチャネルの入口に分子を選択的に配置することにより行われる(特許文献1を参照)。テーブル2は、ゼオライトLのチャネル入口に付着される2種類のストップコック色素を示す。ストップコックの位置は、電子励起エネルギーのトラップまたはインジェクタとしてそれらを用いることを可能にする。OxゼオライトL単層において供与体として作用するATTO520と、PyゼオライトL単層において受容体として作用するCy02702とを用いた。双方の場合において、供与体の発光と受容体の励起との間のスペクトルの重なり合いは大きい(図6を参照)。そのため、供与体の選択的な励起の際にエネルギー移動が生じ得る。図7B)および図7C)は、これを実際に観察することができることを示す。図7Bは、配向ATTO520,Ox−ゼオライトL単層のスペクトルを示す。発光スペクトルは、Oxの吸収が非常に弱い460nmでの励起の際に記録した。また、励起は、ATTO520の発光が弱い680nmで検出した。図7C)は、配向Cy02702,PyゼオライトL単層のスペクトルを示す。発光スペクトルはCy02702の吸収が非常に弱い460nmにおける励起の際に記録した。また、励起はPyの発光が弱い680nmにおいて検出した。
【0036】
実施例
材料
2つの異なる大きさ(≒1×1μmおよび0.3×1μm)のゼオライトL結晶を先に説明したように合成し、特性を測定した(エイ.ザバラ ルイス(A. Zabala Ruiz)、ディ.ブリュービラー(D. Bruehwiler)、ティ.バン(T.
Ban)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Monatsh. Chem.、2005年、第136巻、p.77)。PyアセテートおよびOxペルクロラートは、エイチ.マース(H. Maas)、エイ.カティール(A. Khatyr)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Micropor. Mesopor. Mater.、2003年、第65巻、p.233に従って合成し、精製した。ATTO520はアト−テック ゲーエムベーハー(ATTO−TECH GmbH)から購入した。Cy02702ヨウ素は、クラリアント(Clariant)(エス.ジェイ.メーソン(S. J. Mason) 、エス.バラスブラマニアム(S. Balasubramanian)、Org. Lett.、2002年、第4巻、p.4261)から得た。APS(フルカ(Fluka)、purum≧98%)、GOP−TMS(フルカ、purum≧97%)、PEI(アルドリッチ(Aldri
ch)、高分子量、無水)、TES−PCN(アルドリッチ、95%)、CP−TMS(アルドリッチ、≧97%)、BTESB(アルドリッチ、96%)。トルエン(フルカ、puriss.、absolute、over molecular sieve)、エタノール(フルカ、absolute、99.8%)、メタノール(フルカ、purum)、アセトニトリル(フルカ、puriss、99.5%、over molecular sieve)および再蒸留水。基材は、円形ガラス板(Φ=10mm、厚さ=1mm、トラボルド(TRABOLD)、スイス)であった。
【0037】
ゼオライトL単層の調製
共有結合リンカーとしてのC60
1)ゼオライトLのチャネル入口のアミノ基による官能基化は、先の報告書(エス.フーバー(S. Huber)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Angew. Chem. Int.、2004年、第43巻、p.6738)に記載されているように行った。
【0038】
2)ガラス表面へのAPSの繋留:一般的には、テフロン(登録商標)台上に支持された2枚のガラス板を、丸底シュレンクフラスコに入ったAPS(50μL)のトルエン溶液(30ml)に浸漬し、N下で1時間にわたって還流し、室温に冷まして、トルエンおよび大量のエタノールで洗浄した。APSが繋留されたガラス板を、空気中において80℃で約2時間にわたって乾燥した。
【0039】
3)C60のAPS繋留ガラス板との反応:C60(1mg)を、丸底シュレンクフラスコに入った15mLのトルエン溶液に添加した。次に、ガラス板を導入して、混合物をN下で24時間にわたって還流し、室温に冷まして、大量のクロロベンゼンで洗浄した。
【0040】
4)アミノ修飾ゼオライトLとC60被覆ガラス基板との間における反応:過剰なアミノ修飾ゼオライトL(10〜11mg)を、丸底シュレンクフラスコに入ったトルエン(15mL)溶液に添加し、15分間にわたって超音波処理した後、C60被覆ガラス基板を導入した。その混合物をN下で5時間にわたって還流し、室温に冷まして、物理吸着したゼオライトを除去するために、新たなトルエン中で3分間にわたって超音波処理した。
【0041】
分子リンカーとしてのPEI:
1)GOP−TMSのゼオライトLへの繋留:ゼオライトL(50mg)を、丸底シュレンクフラスコに入ったGOP−TMS(0.1M)のトルエン溶液(20ml)中に懸濁し、3時間にわたって還流し、室温に冷まして、GOP−TMSが繋留されたゼオライト結晶をエタノールで洗浄した。
【0042】
2)APSのガラス表面への繋留:テフロン(登録商標)の台上で支持された2枚のガラス板を、丸底シュレンクフラスコに入ったGOP−TMS(0.1M)のトルエン溶液(20ml)中に浸漬した。そのトルエン溶液を3時間にわたって還流し、室温に冷まして、次にGOP−TMSが繋留されたガラス板をトルエンで洗浄した。
【0043】
3)GOP−TMSが繋留されたガラス板へのPEIの付着:2枚のGOP−TMSが繋留されたガラス板を、PEI(700mg)のトルエン溶液(20ml)中に浸漬し、2時間にわたって還流した。熱エタノールおよび再蒸留水によって繰り返し洗浄することによって、物理吸着したPEIを除去した。
【0044】
4)アミノ修飾ゼオライトLのGOP−TMS−PEI被覆ガラス板との反応:過剰な
アミノ修飾ゼオライトL(15mg)を、丸底シュレンクフラスコに入ったトルエン(15ml)溶液に添加し、5分間にわたって超音波処理した後に、GOP−TMS−PEI被覆ガラス板を導入した。その混合物をN下で3時間にわたって還流した。室温に冷ました後に、物理吸着したゼオライトを除去するために、ゼオライトLで被覆された不透明ガラス板を、新たなトルエン中において3分間にわたって超音波処理した。
【0045】
共有結合リンカーとしてのGOP−TMS、TES−PCN、CP−TMSおよびBTESB:
1)エトキシ−メトキシシラン試薬のガラス表面への繋留:一般的には、テフロン(登録商標)台上に支持された2枚のガラス板を、丸底シュレンクフラスコに入ったエトキシ−メトキシシラン試薬(0.1M)のトルエン溶液(20ml)中に浸漬し、3時間にわたって還流した。エトキシ−メトキシシランが繋留されたガラス板を、トルエンで洗浄した。
【0046】
2a)還流下における、未修飾ゼオライトLとエトキシ−メトキシシランが繋留されたガラス板との反応:過剰なゼオライトL(10〜13mg)を丸底シュレンクフラスコに入ったトルエン溶液(10ml)に添加し、約40分間にわたって超音波処理した。エトキシ−メトキシシランが繋留されたガラス板を導入し、3時間にわたって還流した。物理吸着したゼオライトを除去するために、ゼオライトLで被覆された不透明ガラス板を新たなトルエン中で最長1分間にわたって超音波処理した。
【0047】
2b)超音波処理下における、未修飾ゼオライトLとエトキシ−メトキシシランが繋留されたガラス板との反応:過剰なゼオライトL(10〜13mg)を丸底シュレンクフラスコに入ったトルエン溶液(10ml)に添加し、約40分間にわたって超音波処理した。エトキシ−メトキシシランが繋留されたガラス板を導入し、15〜17分間にわたって超音波処理した。物理吸着したゼオライトを除去するために、ゼオライトLで被覆された不透明ガラス板を新たなトルエン中で最長1分間にわたって超音波処理した。
【0048】
ゼオライトL単層のか焼
ゼオライトL単層を閉鎖炉内に配置し、酸素雰囲気下で温度を600℃まで徐々に上昇させて、その状態を3時間にわたって維持した。か焼の後、ゼオライトL単層を0.1MのKNO溶液に30分間にわたって浸漬した。
【0049】
ゼオライトL単層の官能基化
水溶液からのイオン交換によって、カチオン色素をゼオライトLのチャネルに挿入した。か焼したゼオライトL単層を、PyまたはOxの水溶液中に導入し、70℃まで15時間にわたって加熱した。次に、ゼオライトL単層を、再蒸留水およびエタノールで、数回にわたって洗浄した。DR1およびDANSのような中性色素を、先の報告書(ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri) 、エス.フーバー(S. Huber)、エイチ.マース(H. Maas)、シー.ミンコフスキー(C. Minkowski)、Angew. Chem. Int. Ed.、2003年、第42巻、p.3732;シー.ミンコフスキー、アール.パンシュ(R. Pansu)、エム.タカノ、ジー.カルツァフェリー、Adv. Func. Mater.、2005年、early view、およびエム.ポーシャール(M. Pauchard)、エイ.ドヴォー(A. Devaux)、ジー.カルツァフェリー(G. Calzaferri)、Chem. Eur. J.、2000年、第6巻、p.3456)に記載されているように、単一アンプル法(single ampoule method)に従って気相から挿入した。反応温度および時間は、DR1については170℃で48時間、DANSについては270℃で24時間であった。
【0050】
チャネル端におけるストップコック色素の付着
チャネル端におけるATTO520の付着は、特許文献1に記載されているように、ゼオライトL単層をATTO520のアセトニトリル溶液中に、室温で24時間にわたって導入することによって行った。カチオン色素Cy02702の静電気結合については、ゼオライトL単層をCy02702のエタノール溶液中に、室温で24時間にわたって導入した。
【0051】
物性測定
SEM測定は、日立S−3000N走査電子顕微鏡によって20kVの加速電圧で行なった。試料上には3nmの金の層を付着させた。発光スペクトルおよび励起スペクトルは、空気中において、室温で、パーキン・エルマー(Perkin−Elmer) LS 50B装置によって15nmの分解能で測定した。発光顕微鏡画像については、カッパ(Kappa)CF20DCX空冷式CCDカメラを装備したオリンパスBX60顕微鏡を用いた。PyゼオライトL単層試料は、470〜490nmで励起し、蛍光は、520nmカットオフフィルタを用いることにより検出した。OxゼオライトL単層試料は、545〜580nmで励起し、蛍光は610nmカットオフフィルタを用いることにより検出した。ゼオライトL単層の品質は、ゼオライトL被覆ガラス板を新たなトルエン中に浸漬し、それらを数分間にわたって超音波槽(ブランソン(Branson) DTH−2510、130W、42kHz)に浸けることにより評価した。次いで、ガラス板は光学顕微鏡によって調査した。
【0052】
配向色素充填ゼオライト材料のさらなる用途
以下の用途は、本発明による配向ゼオライト材料によって与えられる類のない特性によるものである。例えば、特定の光吸収特性または光電子放出特性を有する一連の異なる色素分子によるゼオライトチャネルの充填のような付加的な原理が用いられるだろうことが理解される。この上述の点における基本原理は、特許文献1において概説されており、この特許文献の内容は、参照により明示的に本願に援用される。
【0053】
増感固体型太陽アンテナ
図8に色素増感太陽アンテナを形成するための工程を示す。図2(d)に示した集合体から出発し、閉鎖分子22上に付与された機能層24は、溶液または気相のいずれかから付与され得るポリマーまたはSiOのような薄い絶縁層である。続いて、図8(a)に示されるように、絶縁層の上には、例えば、リソグラフィーまたはバブルジェット(登録商標)もしくはインクジェット技術によって、n−接点が追加される。その後、図8(c)に示すように、n−接点の上には、ケイ素または半導体ポリマーのようなドープ半導体層が付与される。一般的には、半導体層の厚さは、約1マイクロメートルである。そのため、活性層全体の厚さは約2マイクロメートルである。シリコンは気相から付与され得るが、ポリマーは、通常、溶液または懸濁液から付与される。最後に、ドープ半導体層上に背面接点が付与される。図9に装置をさらに示す。アンテナ系は、透明な上部電極を通過する光を吸収し、光子エネルギーを主に長手方向のゼオライト結晶軸に沿って半導体層に輸送する。したがって、アンテナ系から半導体の伝導バンドへのエネルギー移動により、半導体には電子と正孔との対が形成される。
【0054】
発光ダイオード増感発光
このような装置の形成は、色素のHOMO−LUMO距離の大きさおよび半導体におけるバンドギャップに関して反対の順序が選択されなければならないという違いを有する以外は、図8に示した工程と同じ工程に依る。半導体のバンドギャップは、ストップコック分子上への電子励起の移動を可能にする大きさを有していなければならない。ストップコック分子に隣接する発色団は、ストップコック分子から電子エネルギーを奪うことができなければならない。
【0055】
照明管理に対する異方性放射線変換器
適切な一連の色素分子および適切な基材が用いられる場合、図8に説明したような類似の方法で形成した材料を、例えば、温室における照明管理に用いてもよい。そのような材料においては、材料の一方の側から当たる短い波長の光は、材料の他方の側で吸収され、続いて、より長い波長を有する「赤方遷移」光として放射されるであろう。再放出される発光光の波長領域は、色素分子の適切な選択によって、あらゆる特定用途の要件に適合され得る。そのような材料の最小寸法は、ゼオライト結晶の大きさに制限され、従ってサブマイクロメートルまたはマイクロメートルのオーダーである。最大寸法は実質的には無制限であり、もちろん数平方メートルであってもよい。
【0056】
分析を目的としたセンサーマトリックスとしての配向色素およびストップコック分子修飾ゼオライトL単層
その構築は図2の工程に一致する。ストップコック分子の特性は、センサーの特異性を定義する。さらに詳しい情報は、特許文献1の実施例2に提供されている。
【0057】
各色素充填ゼオライトL結晶がレーザーとして作用する配向色素修飾ゼオライトL単層配列
その構築は図2に示した工程および任意で図8(a)に示した工程に一致する。いくつかの場合においては、色素充填ゼオライト結晶の共振器特性を最適化するために、さらなる層を追加することが有利である。
【0058】
上記に記載した実施形態に対する変更はもちろん可能であることが認識されるであろう。従って、本発明は上記に記載した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】配向ゼオライト材料の調製における様々な段階を示す図。
【図2】色素を充填した配向ゼオライト材料の調製における様々な段階を示す図。
【図3】色素を充填したゼオライト材料を示す図。
【図4】A)還流下で共有結合リンカーとしてCP−TMSを用いることにより調製されたゼオライトL単層のか焼の後のSEM画像を示す図、B)超音波処理下でCP−TMSを用いることにより調製されたゼオライトL単層のか焼の後のSEM画像を示す図、C)BTESBを用いることにより調製されたゼオライトL単層のか焼の後のSEM画像を示す図であり、各例は、上列:2つの異なる倍率における1μm結晶と、下列:2つの異なる倍率における円盤状結晶との4つの画像を有する。
【図5】1つの色素が充填された単層の蛍光顕微鏡画像を示す図であって、a)Py−ゼオライトL、およびb)Ox−ゼオライトL。
【図6】石英上の配向色素−ゼオライトL層において測定された様々な色素の励起スペクトル(点線)および発光スペクトル(実線)であり、スペクトルは最大値で同じ高さに拡縮されている。a)Py−ゼオライトL(1)およびOx−ゼオライトL(2);(1)の発光スペクトルおよび励起スペクトルは460nmにおける励起および560nmにおける検出の際にそれぞれ記録されたものであり、(2)の発光スペクトルおよび励起スペクトルは、560nmにおける励起および640nmにおける検出の際にそれぞれ記録されたものである。b)ゼオライトLチャネル入口に付着したATTO520(1)およびCy02702(2)の励起スペクトルおよび発光スペクトルであって、(1)の発光スペクトルおよび励起スペクトルは、460nmにおける励起および600nmにおける検出の際にそれぞれ記録されたものであり、(2)の発光スペクトルおよび励起スペクトルは、470nmにおける励起および630nmにおける検出の際にそれぞれ記録されたものである。
【図7】ガラス板上に配向単層として配置された供与体充填ゼオライトL結晶および受容体充填ゼオライトL結晶の発光スペクトル(上側)および励起スペクトル(下側)であり、スペクトルは最大値で同じ高さに拡縮されている。(A)Ox,Py−ゼオライトL単層のスペクトル;発光スペクトルは、460nmにおけるPyの選択的な励起後に記録され、励起スペクトルは、Oxが発光する680nmで検出された。B)ATTO520,Ox−ゼオライトL単層のスペクトル;発光スペクトルは、460nmにおけるATTO520の選択的な励起後に記録され、励起スペクトルは、Oxが発光する680nmで検出された。C)Cy02702,Py−ゼオライトL単層のスペクトル;発光スペクトルは、460nmにおけるPyの選択的な励起後に記録され、励起スペクトルは、Cy02702が発光する680nmで検出された。
【図8】増感固体太陽電池に基づいた薄層太陽アンテナを形成するための工程を示す図。
【図9】薄層太陽アンテナの原理を示す図であって、(A)光子アンテナから半導体への光子エネルギーの移動を示す図、(B)色素増感太陽電池を示す図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(4)上に配置された複数のゼオライト結晶(2)を含み、前記結晶の各々は、前記基材に隣接する近位面(6)と、前記近位面とは反対に向き、かつ同近位面に平行な遠位面(8)とを有し、前記結晶の各々は、近位面と遠位面との間に延び、かつ長手結晶軸Aに平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネル(10)を有し、各チャネルは、近位面に位置する近位チャネル端(12)、および遠位面に位置する遠位チャネル端(14)を有し、各結晶は、近位チャネル端をほぼ閉塞する連結層(16)によって、基材に付着されている、配向ゼオライト材料。
【請求項2】
前記基材はガラスおよび石英のいずれかである、請求項1に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項3】
前記連結層はC60を含む、請求項1に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項4】
前記連結層は、PEI、GOP−TMS、TES−PCN、CP−TMSおよびBTESBのうちから選択される連結剤を含む、請求項1に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項5】
前記チャネルは、発光色素分子のほぼ線状の配列を収容し、前記配列は、超分子組織化に関係する特性を示す、請求項1に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項6】
長尺形状を有し、かつ頭部および尾部から成る複数の閉鎖分子をさらに含み、前記尾部は長手結晶軸に沿った結晶単位格子の寸法より大きな長手方向拡張部を有し、前記頭部は、前記チャネル幅より大きく、かつ該頭部がチャネルに貫入するのを防止する側方拡張部を有し、チャネルは、その遠位端において、閉鎖分子によって、概して栓のような方法で終結され、閉鎖分子の尾部は前記チャネルに貫入し、閉鎖分子の頭部は前記遠位面の上に突出するとともに、前記遠位チャネル端をほぼ閉塞する、請求項5に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項7】
前記遠位チャネルを閉塞する複数の頭部上に重ねられた少なくとも1つの機能層をさらに備える、請求項6に記載の配向ゼオライト材料。
【請求項8】
配向ゼオライト材料を製造する方法において、
a)ほぼ平坦な表面を基材に与える工程と、
b)一定量のゼオライト結晶を提供する工程であって、前記結晶の各々は一対のほぼ平行な面を有し、前記結晶の各々は、前記2つの面の間に延び、かつ長手結晶軸に平行なチャネル軸線と、長手結晶軸を横切るチャネル幅とを有する複数の直線状の一様なチャネルをさらに有する、工程と、
c)下記の工程、すなわち、
c1)基材表面上に基材親和性連結剤の層を形成する工程と、
c2)前記結晶のチャネルにゼオライト親和性連結剤を挿入する工程とのうちの少なくとも1つを実施する工程と、
d)前記結晶と前記基材とを合体させることにより、前記基材親和性連結剤の層および前記ゼオライト親和性連結剤の層の少なくともいずれかからの連結層の形成を引き起こす工程であって、前記連結層は基材と前記一対の面のうちの近位面との間に配置される工程と
を備える方法。
【請求項9】
前記工程c)は前記結晶および前記基材を超音波処理する工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記工程d)は、か焼工程を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも一部の工程は溶媒中において行なわれる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記チャネルに複数の色素分子を充填する工程をさらに備える、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
長尺形状を有し、かつ頭部および尾部から成る複数の閉鎖分子を加える工程をさらに備え、前記尾部は長手結晶軸に沿った結晶単位格子の寸法より大きな長手方向拡張部を有し、前記頭部は、前記チャネル幅より大きく、かつ該頭部が前記チャネルに貫入するのを防止する側方拡張部を有し、前記チャネルは、前記一対の面のうちの遠位面に位置する同チャネルの遠位端において、閉鎖分子によって、概して栓のような方法で終結され、閉鎖分子の尾部は前記チャネルに貫入し、閉鎖分子の頭部は前記遠位面の上に突出するととともに、前記遠位チャネル端をほぼ閉塞する、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
前記遠位チャネルを閉塞する複数の頭部の上に少なくとも1つの機能層を付加する工程をさらに含む、請求項12に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公表番号】特表2009−502558(P2009−502558A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−523097(P2008−523097)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/CH2006/000394
【国際公開番号】WO2007/012216
【国際公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(507413228)
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITAET BERN
【Fターム(参考)】