説明

配向剤およびこれに用いられる液晶性ポリイミド

【課題】配向性が良好で感度が高く、安定性の高い配向膜を提供することである。
【解決手段】ポリアミック酸およびこのポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミドから選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、この組成物に含まれる膜形成成分の全量を基準とする前記ポリマーの割合が50〜100重量%であり、そしてこの組成物を成膜することによって100℃から300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成することができる配向剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として液晶表示素子の製造に用いられる配向剤に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示素子は、ノートパソコンやデスクトップパソコンのモニターをはじめ、ビデオカメラのビューファインダー、投写型のディスプレイ等の様々な液晶表示装置に使われており、最近ではテレビにも用いられるようになった。さらに、光プリンターヘッド、光フーリエ変換素子、ライトバルブ等のオプトエレクトロニクス関連素子としても利用されている。従来の液晶表示素子としては、ネマティック液晶を用いた表示素子が主流であり、一方の基板近傍にある液晶の配向方向と他方の基板近傍にある液晶のそれとが90度の角度でねじれているTN(Twisted Nematic)モード、前記配向方向が通常180度以上の角度でねじれているSTN(Super Twisted Nematic)モードなどの液晶表示素子が実用化されている。そして、薄膜トランジスタを使用した、いわゆるTFT(Thin-film-transistor)モードの液晶表示素子も実用化されている。
【0003】
しかしながら、これらの液晶表示素子は、画像が適正に視認できる視野角が狭く、斜め方向から見たときに、輝度やコントラストが低下することがあり、また中間調で輝度反転を生じることがある。近年では、この視野角の問題は、光学補償フィルムを用いたTN型液晶表示素子、垂直配向と突起構造物の技術を併用したMVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード(例えば、特許文献1参照。)または横電界方式のIPS(In-Plane Switching)モード(例えば、特許文献2参照。)等により改良されている。
【0004】
液晶表示素子の技術の発展は、単にこれらの駆動方式や素子構造の改良のみならず、表示素子に使用される構成部材の改良によっても達成されている。表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は、液晶表示素子の表示品位に係わる重要な要素の一つであり、表示素子の高品質化に伴って液晶配向膜の役割が年々重要になってきている。
【0005】
このような液晶配向膜には、液晶表示素子の均一な表示特性のために液晶の分子配列を均一に制御することが必要であり、そのために基板上の液晶分子を一方向に均一に配向させ、更に基板面から一定の傾斜角(プレチルト角)を発現させることが求められる。このように、基板上の液晶分子の方向を一様に並べる液晶配向膜が、液晶表示素子の製造工程において重要かつ必要不可欠な技術となっている。
【0006】
液晶配向膜は液晶配向剤より調製される。現在主として用いられている液晶配向剤とは、ポリアミック酸または可溶性のポリイミドを有機溶剤に溶解させた溶液である。このような溶液を基板に塗布した後、加熱等の手段により成膜してポリイミド系液晶配向膜を形成する。ポリアミック酸以外の種々の液晶配向剤も検討されているが、耐熱性、耐薬品性(耐液晶性)、塗布性、液晶配向性、電気特性、光学特性、表示特性等の点から、ほとんど実用化されていない。
【0007】
工業的には、簡便で大面積の高速処理が可能なラビング法が、配向処理法として広く用いられている。ラビング法は、ナイロン、レイヨン、ポリエステル等の繊維を植毛した布を用いて液晶配向膜の表面を一方向に擦る処理であり、これによって液晶分子の一様な配向を得ることが可能になる。しかし、ラビング法による発塵、静電気の発生等の問題点が指摘されている。
【0008】
これまで、ラビング処理により配向処理を施された配向膜上における液晶の配向機構として、次の2つが提案されている。
(1)ラビング処理により発生するマイクログルーブに起因する液晶配向膜の表面形状効果
(2)ラビング処理により一軸配向した液晶配向膜とこの液晶配向膜と接する液晶単分子層との分子間相互作用
近年では(1)の表面形状効果の寄与は比較的小さく、(2)の分子間相互作用の寄与が支配的であることが確認されている。
【0009】
このようなラビング法の場合、一般的に液晶に対する大きな配向規制力(アンカリングエネルギー)をポリイミド膜に付与できることが知られている。しかしながら、この方法の場合、ラビング布に植毛された毛により膜が擦られる方向が、分子レベルで見ると均一でなく、その結果配向膜界面の液晶の配向が乱れることが問題であった。さらに布の接触により膜に生ずる傷等にも起因し、液晶表示素子を電圧無印加時に黒表示(ノーマリーブラック方式)にした時、黒レベルが理想的な場合より低下することが当業者に知られていた。
【0010】
一方、光を照射して配向処理を施す光配向法については、光分解法、光異性化法、光二量化法、光架橋法等多くの配向機構が提案されている(例えば、非特許文献1、特許文献3および特許文献4参照。)。特に光配向法はラビング法と異なり非接触の配向方法であるので、液晶の配向機構としては(2)の分子間相互作用のみが作用すると考えられる。
【0011】
光配向処理法は、ラビング法に対し配向の均一性が高く、また非接触の配向法であるため膜に傷が付かず、ラビング法に対して黒レベルを向上させやすいことが当業者に知られていた。また光配向処理法は、発塵や静電気等の液晶表示素子の製造時に不良を発生させる原因を低減でき、利点が多い。しかしながら、ラビング法に対してアンカリングエネルギーが小さく、このことは応答速度の低下や焼き付きを惹起するため改善が求められていた。
【0012】
このような光配向の欠点を克服するため、我々は例えば特許文献3に記載された方法により、ポリアミック酸からなる液晶配向剤を基板に塗布した後、光照射し、その後焼成する方法を見出した。この方法により大きなアンカリングエネルギーを有する光配向膜を得ることができるようになったが、十分なアンカリングエネルギーを有する液晶配向膜を得るためには、光照射エネルギーを大きくしなければならず、更なる改善が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特許第2947350号公報
【特許文献2】特許第2940354号公報
【特許文献3】特開2005−275364号公報
【特許文献4】特開平11−15001号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】液晶、第3巻、第4号、262ページ、1999年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、配向の均一性が高いラビング用配向膜を提供することである。また感度が良好で安定性の高い光配向膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは鋭意研究開発を進めた結果、液晶性を有し、耐熱性の高いポリイミド材料にラビングまたは光により異方性を付与した後、このポリイミドの液晶温度まで加熱を行うことによって配向性が増大することを見出し、本発明を完成させた。本発明の本質は液晶性のポリイミドを配向膜材料として用いることにある。本発明は次の[1]項で表される。
【0017】
[1] ポリアミック酸およびこのポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミドから選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、この組成物に含まれる膜形成成分の全量を基準とする前記ポリマーの割合が50〜100重量%であり、そしてこの組成物を成膜することによって100〜300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成することができる配向剤。
【発明の効果】
【0018】
本発明の配向剤を例えば液晶配向剤として用いれば、配向の均一性が高いラビング用配向膜を提供することができる。また感度が良好で安定性の高い光配向膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で用いる用語について説明する。
式(I−1)で表される化合物を化合物(I−1)と記述することがある。他の式で表される化合物についても同様に略記することがある。
化学式の定義において用いる用語「任意の」は、「位置だけでなく数においても自由に選択できること」を意味する。例えば、「任意のAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよい」という表現は、1つのAがB、C、DまたはEで置き換えられてもよいという意味と、複数のAのどれもがB、C、DおよびEのいずれか1つで置き換えられてもよいという意味とに加えて、Bで置き換えられるA、Cで置き換えられるA、Dで置き換えられるA、およびEで置き換えられるAの少なくとも2つが混在してもよいという意味をも有する。しかしながら、任意の−CH−が他の基で置き換えられてもよいとするとき、連続する複数の−CH−が同じ基で置き換えられないことを前提条件とする。また、任意の−CH−が−O−で置き換えられてもよいとするとき、結果として結合基−O−O−が生じるような置き換えは含まれない。
化学構造式において、文字(例えばA)を六角形で囲った基は環構造の基(環A)であることを意味する。
環を構成する炭素の何れか1つと明確に結合していないように表記されている置換基は、その結合位置が化学的に問題のない範囲内で自由であることを意味する。
複数の式において同じ記号が用いられている場合は、その記号で示されている環、結合基または末端基が同じ定義範囲を有することを意味するが、すべての式において同時にその定義範囲内の同じ基でなければならないことを意味しない。そのような場合は、複数の式において同じ基が選択されてもよいし、式ごとに異なる基が選択されてもよい。
【0020】
本発明は前記の[1]項と次の[2]〜[22]項で構成される。
[2] ポリアミック酸が主鎖に感光基を有するポリアミック酸である、[1]項に記載の配向剤。
【0021】
[3] 感光基が式(I)〜式(VI)で表される基の少なくとも1つである、[2]項に記載の配向剤。


(ここに、R、RおよびRは独立して芳香族の2価の基である。)
【0022】
[4] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つとテトラカルボン酸二無水物を反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。








【0023】
[5] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が式(IV−4)および式(VI−8)で表される感光基を有するテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとジアミンを反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。


【0024】
[6] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が[4]項に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つと式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。




(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Meはメチルである。)
【0025】
[7] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が[5]項に記載の式(IV−4)および式(VI−8)で表される感光基を有するテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとの混合物をジアミンと反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。


(ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)
【0026】
[8] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が[4]項に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つと式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。


(ここに、A、A、AおよびAは独立してシクロへキシレンまたはフェニレンであり;XおよびXは独立して単結合、炭素数1〜5のアルキレンまたは−O−であり;XおよびXは独立して単結合、−CH−、−CHCH−、−O−または−S−であり;Yは−CH−、−C(R11)(R12)−、−CO−または−SO−であり、R11およびR12は独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のフッ素化アルキルであり;m1、m2、m3、m4およびnは独立して0または1を表す。そして、上記のシクロヘキシレンおよびフェニレンにおいて、任意の水素は炭素数1〜4のアルキルまたはベンジルで置き換えられてもよく、これらの置換基の結合位置は任意である。但し、A、A、AおよびAのすべてが1,4−フェニレンであるとき、X、X、XおよびXはいずれも単結合ではない。)


(ここに、XおよびXは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;GおよびGは単結合、または炭素数6〜12の芳香族環および炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む2価の基であり;Rは水素、フッ素、−CN、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり;そして、X、G、XおよびGの全てが単結合である場合は、Rは炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシであり、Gが単結合でありXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、Rは水素または炭素数3〜30のアルキルであり、GおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。)


(ここに、Rは水素または炭素数1〜12のアルキルであり;環Bは任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、または任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−シクロへキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜5のアルキレンであり、そしてsは0〜3の整数であり;sが2または3であるとき、複数の環Bはすべて同じ環であってもよく、少なくとも2つの異なる環で構成されてもよく、複数のXもすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;ZおよびZは独立して単結合、−CH−、−CHCH−または−O−であり、t1およびt2は独立して0〜3の整数であり;t1が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;t2が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよい。
【0027】
[9] 主鎖に感光基を有するポリアミック酸が[4]項に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つ、[6]項に記載の式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つおよび[8]項に記載の式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、[2]項に記載の配向剤。
【0028】
[10] テトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−37)、式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つである、[4]、[6]、[8]および[9]のいずれか1項に記載の配向剤。




(ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)
【0029】
[11] ジアミンが式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、[5]項または[7]項に記載の配向剤。




(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Meはメチルである。)
【0030】
[12] ポリアミック酸が式(VII−1)〜式(VII−3)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸または式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VII−4)および式(VII−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸である、[1]項に記載の配向剤。


(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)


(ここに、Meはメチルである。)
【0031】
[13] [1]項に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜にラビングまたは光照射によって異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【0032】
[14] [2]〜[11]のいずれか1項に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜に光照射によって異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【0033】
[15] [12]項に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜にラビング異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【0034】
[16] [13]〜[15]のいずれか1項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【0035】
[17] 式(IX)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミド、またはその前駆体であるポリアミック酸:


ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;Rはジアミンの残基である。
【0036】
[18] 式(X)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸:


ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;Rはジアミンの残基である。
【0037】
[19] Rが炭素数6〜12のアルキレンであり、そしてRが式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である、[17]項または[18]項に記載のポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸。








【0038】
[20] Rが炭素数6〜12のアルキレンであり、そしてRが式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である、[17]項または[18]項に記載のポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸。


(ここに、Meはメチルである。)
【0039】
[21] 式(IX)で表される構成単位および式(XI)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸:




ここに、Rは炭素数6〜12のアルキレンであり;Rは式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基であり;R10は式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である。










(ここに、Meはメチルである。)
【0040】
[22] 式(X)で表される構成単位および式(XII)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸:




ここに、Rは炭素数6〜12のアルキレンであり;Rは式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基であり;R10は式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である。










(ここに、Meはメチルである。)
【0041】
本発明の配向剤は、ポリアミック酸およびこのポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミドから選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、この組成物に含まれる膜形成成分の全量を基準とする前記ポリマーの割合は50〜100重量%である。そしてこの組成物を成膜することによって100℃から300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成することができる。即ち、この配向剤を基板に塗布して成膜し、ラビングまたは光を照射し膜に異方性を付与した後、この膜の液晶温度範囲まで加熱することにより、配向性が増大され、高い配向性を持つ配向膜を形成できる。また、前記のポリマーを主成分として含有する配向剤を用いることにより、熱的および化学的安定性が高い膜とすることができる。
【0042】
本発明で用いるポリアミック酸をポリイミドとしたときのガラス転移点は、ポリマー主鎖が動きやすいため通常のポリイミドより小さく、液晶温度以下である。従って、このようなポリアミック酸を主成分とする本発明の配向剤では、比較的低温の焼成でもイミド化率の高い膜を得ることができる。以下の説明では、特に断らない限り、「本発明で用いるポリアミック酸」を単に「ポリアミック酸」と表記する。
【0043】
上述のように、本発明の配向膜は材料の液晶温度範囲まで加熱することによりその性能を発揮する。ラビング法で膜に異方性を付与する場合、配向剤を基板に塗布し、予備焼成によって溶媒を除去した後、200℃程度で焼成した後にラビングを行うことが、膜の削れを防ぐために一般的に行われる。しかしながら、材料の選択により膜の削れを防ぐことができれば、予備焼成後にラビングを行い、200℃程度で焼成と異方性増大のための加熱処理を同時に行っても差し支えない。
【0044】
光配向法は非接触で配向膜に異方性を付与できるため、膜削れの心配がない。即ち、光配向法は、ポリアミック酸を用い、光配向させた後に熱イミド化および加熱処理を同時に行えるので、本発明の配向膜への異方性付与方法としてより好ましい。この理由から熱イミド化の温度が液晶温度範囲内にある材料を選択することが好ましい。
【0045】
基材の種類によっては加熱処理の限界温度が制約されることがあるが、本発明の配向剤を用いることによって、100〜300℃の範囲に液晶温度範囲を有する膜を形成させることができる。このとき、使用されるネマチック液晶に対する配向膜を形成させるときは、配向の安定性を保持するため、好ましくは150〜300℃、より好ましくは180℃〜300℃の範囲に液晶温度範囲を有する材料を選択することが望ましい。
【0046】
前記の光配向法を利用するためには、本発明の配向剤は感光基を有するポリマーを含有することが好ましい。この感光基としては、光配向能を有する公知の全ての感光基を選択することができる。しかしながら、光2量化または光分解により配向能を発現する感光基を用いると、光照射条件に伴い材料の液晶温度範囲が変化してしまう可能性が高い。従って、本発明には光異性化型の感光基を用いることが好ましい。
【0047】
即ち、本発明では、下記の感光基の少なくとも1つを主鎖に有するポリマーを用いることが好ましい。


【0048】
、RおよびRは独立して芳香族の2価の基であり、その好ましい例は1,4−フェニレン、1,3−フェニレン、4,4’−ビフェニレンおよびジフェニルメタン−4,4’−ジイルである。これらの環の任意の水素はメチル、メトキシ、トリフルオロメチル、メチルオキシカルボニル、フッ素または塩素で置き換えられてもよい。そして、これらの基のうち1,4−フェニレンおよび1,3−フェニレンがより好ましく、1,4−フェニレンが最も好ましい。
【0049】
式(I)〜式(VI)で表される感光基を選択することにより、光配向性が大きく感度が高いという本発明の光配向剤の特性を最大限に発現させることが可能である。式(III)および式(V)の感光基の二重結合には、シスまたはトランスの2つの異性体が存在するが、本発明の光配向剤はこれらのどちらの異性体を用いても構わない。
【0050】
式(I)〜式(VI)で表される感光基の少なくとも1つを主鎖に有するポリアミック酸を得るためには、このような感光基を有するジアミンまたは/およびカルボン酸二無水物を原料として用いればよい。特に高い光配向性を得るために、ジアミンに感光基を有する原料を使用することが好ましい。
【0051】
このような感光基を有するジアミンおよびテトラカルボン酸二無水物の好ましい例は、化合物(I−1)〜化合物(I−3)、化合物(II−1)〜化合物(II−3)、化合物(III−1)、化合物(IV−1)〜化合物(IV−4)、化合物(V−1)、および化合物(VI−1)〜化合物(VI−8)である。なお、以下の説明では、テトラカルボン酸二無水物を酸無水物と略称することがある。


【0052】


【0053】


【0054】


【0055】
ポリアミック酸を製造するに当たっては、感光基を持たないジアミンや酸無水物を上記の化合物と併用することができる。このとき、このポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミドのTgを低下させ易くするために、ポリマーの主鎖に炭素数6〜20のアルキレンを導入できるジアミンまたは酸無水物を選択することが好ましい。Tgをより低下させるため、このアルキレンの任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい。このようなジアミンおよび酸無水物として、以下の式(VII−1)〜式(VII−5)で表させる化合物が特に好ましい。
【0056】


ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり、好ましい炭素数は6〜12である。Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。好ましいRは1つの−CH−が−O−で置き換えられてもよい炭素数6〜12のアルキレンである。そして、Rのより好ましい例は基中の−CH−に関する置き換えがない炭素数6〜12のアルキレン、即ち−C12−〜−C1224−である。
【0057】
そして、液晶性を発現し易くするために、芳香環集合体と2つのアミノ基または2つのカルボキシル基ができるだけ直列的に結合したジアミンまたは酸無水物を併用することも好ましい。このようなジアミンおよび酸無水物として以下の式(VIII−1)〜式(VIII−8)で表させる化合物が特に好ましい。
【0058】


これらの式において、Meはメチルである。
【0059】
本発明では、ここまでの説明で挙げたジアミン以外のジアミンも併用することができる。例えば、配向膜が液晶ディスプレイ用途において、ネマチック液晶組成物用の配向膜として使用される場合、電圧保持率(VHR)が高く焼き付きを起こし難いなどの特性を示す、いわゆる電気特性に優れた公知のジアミンを用いることができる。
【0060】
このような公知のジアミンの好適なものとして、式(2)で表されるジアミンを挙げることができる。


式(2)において、A、A、AおよびAは独立してシクロへキシレンまたはフェニレンであり;XおよびXは独立して単結合、炭素数1〜5のアルキレンまたは−O−であり;XおよびXは独立して単結合、−CH−、−CHCH−、−O−または−S−であり;Yは−CH−、−C(R11)(R12)−、−CO−または−SO−であり、R11およびR12は独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のフッ素化アルキルであり、好ましくは水素、メチルまたは−CFであり;m1、m2、m3、m4およびnは独立して0または1を表す。そして、上記のシクロヘキシレンおよびフェニレンにおいて、任意の水素は炭素数1〜4のアルキルまたはベンジルで置き換えられてもよく、これらの置換基の結合位置は化学的に問題のない範囲内で自由である。ただし、A、A、AおよびAが1,4−フェニレンの場合、X、X、X、およびXが単結合であることはない。
【0061】
式(2)で表されるジアミンの好ましい例を次に示す。


【0062】


【0063】


【0064】
これらのうち、高いVHRを液晶配向膜に付与し焼き付き現象を抑制する観点から、式(2−6)〜式(2−24)、式(2−36)、式(2−42)、式(2−43)または式(2−48)〜式(2−52)で表されるジアミンがより好ましく、式(2−6)、式(2−11)、式(2−12)、式(2−13)、式(2−17)、式(2−22)、式(2−23)、式(2−24)、または式(2−49)で表されるジアミンがさらに好ましい。
【0065】
本発明における前記式(2)のジアミンの使用割合は、目的とする配向性、電気特性に合わせて任意に選定できる。しかしながら、これらのジアミンの使用割合が大きいと液晶性が低下するので、この使用割合は、ポリアミック酸を合成する際に用いる全ジアミン量の内0〜30モル%の範囲であることが好ましく、0〜10モル%であることがより好ましい。
【0066】
ポリアミック酸を製造するのに好適に使用できる感光基を持たないジアミンの別の例は、式(3)または式(4)で表される側鎖基を有するジアミンである。


【0067】
式(3)において、XおよびXは独立して単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−または炭素数1〜12のアルキレンであり;GおよびGは独立して単結合、または炭素数6〜12の芳香族環および炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む2価の基であり;Rは水素、フッ素、−CN、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシを表す。ただし、X、G、XおよびGの全てが単結合である場合は、Rは炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシであり;Gが単結合であってXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、Rは水素またはアルキルであり;また、GおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。
【0068】
前記の式(3)において、2つのアミノ基はベンゼン環の炭素に結合しているが、2つのアミノ基の結合位置関係がメタまたはパラであることが好ましい。そして、2つのアミノ基はそれぞれ、Xの結合位置を1位としたときに3位と5位、または2位と5位に結合していることが好ましく、3位と5位に結合していることが特に好ましい。
【0069】


式(4)において、Rは水素または炭素数1〜12のアルキルであり;環Bは任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、または任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−シクロへキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜5のアルキレンであり、そしてsは0〜3の整数であり;sが2または3であるとき、複数の環Bはすべて同じ環であってもよく、少なくとも2つの異なる環で構成されてもよく、複数のXもすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;ZおよびZは独立して単結合、−CH−、−CHCH−または−O−であり、t1およびt2は独立して0〜3の整数であり;t1が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;t2が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよい。
【0070】
式(3)で表されるジアミンの好ましい例を次に示す。


【0071】


【0072】
式(3−1)〜式(3−25)において、R20は炭素数1〜20のアルキルまたはアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜16のアルキルである。R21は炭素数1〜20のアルキルまたはアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜10のアルキルである。R22は炭素数4〜20のアルキルであり、好ましくは炭素数6〜16のアルキルである。R23は炭素数6〜20のアルキルであり、好ましくは炭素数8〜20のアルキルである。R24は炭素数3〜20のアルキルまたはアルコキシであり、好ましくは炭素数5〜12のアルキルである。R25は炭素数1〜20のアルキルまたはアルコキシであり、好ましくは炭素数3〜10のアルキルである。
【0073】
これらのジアミンのうち、より好ましい例は、式(3−1)、式(3−2)、式(3−4)、式(3−5)および式(3−6)のそれぞれで表されるジアミンであり、さらに好ましい例は、式(3−1)および式(3−2)のそれぞれで表されるジアミンである。
【0074】
式(4)で表されるジアミンの好ましい例を次に示す。


【0075】


【0076】
式(4−1)〜式(4−16)において、R26は水素、または炭素数1〜12のアルキルまたはアルコキシであり、好ましくは炭素数4〜7のアルキルである。
【0077】
本発明における前記式(3)または式(4)の側鎖基を有するジアミンの使用割合は、目的とする配向性、電気特性、またはプレチルト角に合わせて任意に選定できる。特に2度以上のプレチルト角を発現させるためには、この使用割合を、ポリアミック酸を製造する際に用いるジアミン全量中の1〜50モル%とすることが好ましく、5〜30モル%とすることがより好ましい。しかしながら、前記(3)または(4)の側鎖基を有するジアミンの使用割合が大きいと液晶性が低下するので、必要最小限とすることが好ましい。
【0078】
前記式(3)または式(4)の側鎖基を有するジアミンの内、本発明の配向膜の持つ液晶性を保持するためには、式(3−5)、式(3−6)または式(3−10)のジアミンを選択することが好ましい。
【0079】
本発明では、上記のジアミンに加えてシロキサン系ジアミンの少なくとも1つを使用してもよい。このシロキサン系ジアミンの好ましい例として、式(15)で表されるジアミンを挙げることができる。


式(15)において、R30およびR31はそれぞれ独立して炭素数1〜3のアルキルまたはフェニルであり、R32は炭素数1〜6のアルキレン、フェニレンまたはアルキル置換されたフェニレンであり、yは1〜10の整数である。
【0080】
式(15)で表されるジアミンの具体例として、下記の化合物またはポリマーが挙げられる。


これらの式において、Meはメチルであり、式(15−2)のポリマーの分子量は850〜3000である。
【0081】
これらのシロキサン系ジアミンの添加量は、上記効果を発現しその他の特性の悪化を防ぐ目的で、ポリアミック酸を製造する際に原料として使用するジアミンの全量に対し0.5〜30モル%が好適であり、1〜10モル%がより好適である。
【0082】
配向膜の要求特性に応じ、ポリアミック酸を製造するに際して、電圧保持率(VHR)が高く焼き付きを起こし難いなどの特性を示す、いわゆる電気特性に優れた公知の酸無水物を用いることができる。
【0083】
ポリアミック酸製造の原料である酸無水物は、公知の化合物から制限なく選択することができる。酸無水物は、芳香族系(複素芳香環系を含む)の酸無水物、および脂肪族系(複素環系を含む)の酸無水物の何れの群に属するものであってもよい。ポリイミドまたはポリアミック酸は、液晶表示素子の電気特性の低下原因となりやすいエステルやエーテル結合等の酸素や硫黄を含まない構造のものが好ましい。したがって、酸無水物も酸素や硫黄を含まない構造のものが好ましい。しかし、そのような構造を有していても電気特性に悪影響を与えない範囲内の量であれば何ら問題とはならない。
【0084】
酸無水物は、式(20)で表される。


【0085】
式(20)におけるR40の好ましい例は、式(21)〜式(29)で表される4価の基である。


(Gは単結合、炭素数1〜12のアルキレン、1,4−フェニレン、または1,4−シクロヘキシレンであり、Xは独立して単結合または−CH−を表す。)


(R41、R42、R43およびR44は独立して水素、メチル、エチルまたはフェニルを表す。)


(環Dはシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。)
【0086】


(Gは単結合、−CH−、−CHCH−、−O−、−CO−、−S−、−C(CH−、または−C(CF−であり、環Dは独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。)


(R45は水素またはメチルを表す。)


(Xは独立して単結合または−CH−であり、vは1または2を表す。)
【0087】


(Xは単結合または−CH−を表す。)


(R46は水素、メチル、エチルまたはフェニルであり、環Dはシクロヘキサン環またはベンゼン環を表す。)


(w1およびw2は独立して0または1を表す。)
【0088】
上記の酸無水物の具体例として、以下の式(A−1)〜式(A−44)の化合物が挙げられる。


【0089】


【0090】


【0091】


【0092】
これらの酸無水物において、ポリアミック酸の液晶性を保つ目的には、式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)または式(A−37)の化合物を用いることが好ましい。また配向膜の光配向能を向上させる観点から、式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−30)、式(A−37)または式(A−40)の化合物を用いることが好ましく、式(A−1)、式(A−12)、式(A−14)または式(A−18)の化合物を用いることが特に好ましい。さらに、液晶配向膜のVHRを向上させるまたは着色を軽減させる観点から、式(A−14)、式(A−18)、式(A−19)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−28)、式(A−29)、式(A−30)、式(A−32)、式(A−39)、式(A−40)、式(A−41)、式(A−43)、または式(A−44)の化合物を用いることが好ましく、式(A−14)、式(A−18)、式(A−21)、または式(A−44)の化合物を用いることが特に好ましい。酸無水物はこれらに限定されることなく、本発明の目的が達成される範囲内で他の公知の化合物を用いてもよい。またこれらの酸無水物は単独で、または二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0093】
本発明では、上記のジアミンおよび酸無水物を適宜組み合わせて反応させることによりポリアミック酸を製造する。このポリアミック酸の最初の好ましい例は、感光基を有するジアミンである化合物(I−1)〜化合物(I−3)、化合物(II−1)〜化合物(II−3)、化合物(III−1)、化合物(IV−1)〜化合物(IV−3)、化合物(V−1)および化合物(VI−1)〜化合物(VI−7)の少なくとも1つと酸無水物を反応させることによって得られるポリアミック酸である。


【0094】


【0095】


【0096】


【0097】
このとき用いられる酸無水物の好ましい例は、化合物(A−1)、化合物(A−2)、化合物(A−12)、化合物(A−14)、化合物(A−18)、化合物(A−20)、化合物(A−21)、化合物(A−37)、化合物(VII−4)、化合物(VII−5)、化合物(VIII−7)および化合物(VIII−8)から選択される酸無水物である。そして、化合物(VII−4)および化合物(VII−5)が特に好ましい。


【0098】


(ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。そして、Rは−C12−〜−C1224−のいずれか1つであることが好ましい。)
【0099】
ポリアミック酸の2番目の好ましい例は、前記の感光基を有する酸無水物である式(IV−4)および式(VI−8)で表される酸無水物の少なくとも1つとジアミンを反応させることによって得られるポリアミック酸である。


【0100】
このとき用いられるジアミンの好ましい例は、式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表される化合物から選択されるジアミンである。


(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり、好ましい炭素数は6〜12である。Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。そして、Rは−C12−〜−C1224−のいずれか1つであることが好ましい。)
【0101】


(これらの式におけるMeはメチルである。)
【0102】
ポリアミック酸の3番目の好ましい例は、前記の化合物(I−1)〜化合物(I−3)、化合物(II−1)〜化合物(II−3)、化合物(III−1)、化合物(IV−1)〜化合物(IV−3)、化合物(V−1)および化合物(VI−1)〜化合物(VI−7)から選択されるジアミンの少なくとも1つと前記の化合物(VII−1)〜化合物(VII−3)および化合物(VIII−1)〜化合物(VIII−6)から選択されるジアミンの少なくとも1つとの混合物を酸無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である。この酸無水物の好ましい例は、前記の化合物(A−1)、化合物(A−2)、化合物(A−12)、化合物(A−14)、化合物(A−18)、化合物(A−20)、化合物(A−21)、化合物(A−37)、化合物(VII−4)、化合物(VII−5)、化合物(VIII−7)および化合物(VIII−8)から選択される酸無水物である。そして、感光基を有するジアミンと組み合わせるジアミンが化合物(VII−1)〜化合物(VII−3)から選択されるとき、特に好ましい酸無水物は化合物(VIII−7)または化合物(VIII−8)であり、感光基を有するジアミンと組み合わせるジアミンが化合物(VIII−1)〜化合物(VIII−6)から選択されるとき、特に好ましい酸無水物は化合物(VII−4)または化合物(VII−5)である。
【0103】
ポリアミック酸の4番目の好ましい例は、前記の(IV−4)および式(VI−8)で表される感光基を有する酸無水物の少なくとも1つと式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表される酸無水物の少なくとも1つとの混合物をジアミンと反応させることによって得られるポリアミック酸である。このジアミンの好ましい例は、前記の式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表される化合物から選択されるジアミンである。


(これらの式におけるRの意味は前記の通りである)
【0104】
ポリアミック酸の5番目の好ましい例は、前記の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つと前記の式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つとの混合物を酸無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である。この酸無水物の好ましい例は、前記の式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−37)、式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表される化合物から選択される酸無水物である。そして、化合物(VII−4)および化合物(VII−5)が特に好ましい。
【0105】
ポリアミック酸の6番目の好ましい例は、前記の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つ、前記の式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つおよび前記の式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つの混合物を酸無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である。この酸無水物の好ましい例は前記の式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−37)、式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表される化合物から選択される酸無水物である。
【0106】
ポリアミック酸の7番目の好ましい例は、式(VII−1)〜式(VII−3)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸または式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VII−4)および式(VII−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸である。


(これらの式におけるRおよびRの意味は前記の通りである。)
【0107】


(Meはメチルを意味する。)
【0108】
そして、本発明の配向剤の好ましい例は、上記の7つの好ましいポリアミック酸から選択される1つのポリアミック酸またはこれの脱水反応によって得られるポリイミドを含有する配向剤であるが、選択されるポリアミック酸は2つ以上であってもよい。さらに、本発明の効果を阻害しない範囲内であれば、本発明の配向剤は、上記の7つのポリアミック酸の少なくとも1つに加えて、上記の例以外の一般的なポリアミック酸を含有してもよい。即ち、本発明では、100℃から300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成するという条件を満たす限りは、上記のポリアミック酸に加えて主鎖に感光基を持たないポリアミック酸や100℃から300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成できないポリアミック酸などを併用することができる。このような上記の例以外のポリアミック酸を使用するとき、その割合は、配向剤中の膜形成成分全量中の50重量%未満であり、好ましくは20重量%未満である。
【0109】
本発明の配向剤は、配向膜のガラス基板への密着性を調節する観点から、有機ケイ素化合物をさらに含有していてもよい。有機ケイ素化合物の例は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤、およびジメチルポリシロキサン、ポリジメチルシロキサン、ポリジフェニルシロキサン等のシリコーンオイルである。
【0110】
この有機ケイ素化合物の配向剤への添加割合は、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限はない。しかしながら、前記有機ケイ素化合物を多く添加すると、配向膜としたとき液晶の配向不良が生ずることがある。したがって、有機ケイ素化合物を添加するとき、その濃度は配向剤に含有されるポリマー成分の合計量に対し、0.01〜5重量%の範囲であることが好ましく、特に好ましくは0.1〜3重量%の範囲である。
【0111】
本発明の配向剤は、特性の経時劣化や環境による劣化を防ぐ観点から、ポリアミック酸のカルボン酸残基と反応する官能基を2つ以上有する化合物、いわゆる架橋剤をさらに含有していてもよい。このような架橋剤の例としては、特許第3049699号公報、特開2005−275360号公報、特開平10−212484号公報等に記載されているような多官能エポキシ、イソシアネート材料等が挙げられる。
【0112】
また架橋剤自身が反応して網目構造のポリマーとなり、ポリアミック酸またはポリイミドの膜強度を向上するような架橋剤も上記と同様な目的に使用することができる。このような架橋剤としては、特開平10−310608号公報、特開2004−341030号公報等に記載されているような多官能ビニルエーテル、マレイミド、またはビスアリルナジイミド誘導体等が挙げられる。これらの架橋剤の好ましい割合は、ポリマー成分の合計量に対し0〜50重量%であり、より好ましくは0〜30重量%である。
【0113】
本発明の配向剤は、ポリアミック酸を溶解する能力を持った溶剤を含有する。かかる溶剤はポリアミック酸またはその誘導体の製造や使用において通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。これらの溶剤を例示すれば以下のとおりである。
【0114】
ポリアミック酸に対し良溶剤である非プロトン性極性有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルイミダゾリジノン、N−メチルカプロラクタム、N−メチルプロピオンアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジエチルアセトアミド(DMAc)、およびγ−ブチロラクトン(GBL)等のラクトンが挙げられる。
【0115】
上記の溶剤以外の溶剤であって、塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、乳酸アルキル、3−メチル−3−メトキシブタノール、テトラリン、イソホロン、エチレングリコールモノブチルエーテル(BCS)等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、エチレングリコールモノアルキルおよびフェニルアセテート、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、マロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、並びにこれらグリコールモノエーテル類等のエステル化合物が挙げられる。これらの中で、前記溶剤には、NMP、ジメチルイミダゾリジノン、GBL、BCS、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等を特に好ましく用いることができる。
【0116】
本発明の配向剤は、所望により各種の添加剤をさらに含有していてもよい。例えば、塗布性のさらなる向上を望むときにはかかる目的に沿った界面活性剤を、帯電防止のさらなる向上を必要とするときは帯電防止剤を適量含有していてもよい。
【0117】
本発明の配向剤中のポリアミック酸の濃度は0.1〜40重量%であることが好ましい。この配向剤を基板に塗布するときには、膜厚の調整のために、含有されているポリアミック酸を予め溶剤により希釈する操作が必要とされることがある。
【0118】
本発明配向剤における固形分濃度は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、ワニス重量に対し、好ましくは0.1〜30重量%、より好ましくは1〜10重量%である。
【0119】
本発明の配向膜は、上記の配向剤を基板に塗布して得られる膜にラビングまたは光照射により膜によって異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる。
【0120】
このとき十分な配向性を発現する観点から、以下の手順で製造されることが好ましい。
(1)前記ワニスを刷毛塗り法、浸漬法、スピンナー法、スプレー法、印刷法等により基板上に塗布する。
(2)基板上に形成された膜を50〜120℃、好ましくは80〜100℃で加熱し、溶剤を蒸発させる。
(3)光を前記膜に照射して前記膜中のポリアミック酸を配向させる。
(4)ポリアミック酸を配向させた前記膜を150〜300℃、好ましくは180〜250℃で加熱しイミド化する。
【0121】
なお、配向膜を用いた液晶表示素子において所定のプレチルト角を発現させたい場合、光を照射する際に基板に対し任意の角度から直線偏光を照射する方法や、基盤に対し垂直方向からの直線偏光照射と任意の角度からの無偏光照射とを組み合わせる方法で行うことができる。
【0122】
本発明の配向膜の製造において、前記ポリアミック酸の配向には直線偏光が用いられる。ポリアミック酸主鎖は、直線偏光の照射によって、直線偏光の偏光方向に対して垂直な方向に配向する。前記直線偏光は、前記膜中のポリアミック酸を配向させることができる光であれば特に限定されない。本発明の配向膜は低エネルギーの光照射によって膜を配向することができる。そこで前記ポリアミック酸の光配向処理における直線偏光の照射量は0.5〜10J/cm2であることが好ましい。また直線偏光の波長は300〜400nmであることが好ましい。直線偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。
【0123】
また本発明の配向膜の製造において、プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射される光は、偏光であっても無偏光であってもよい。プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射される光の照射量は0.5〜10J/cm2であることが好ましく、その波長は300〜400nmであることが好ましい。プレチルト角を発現させたい場合に前記膜に照射される光の前記膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、30〜60度であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。
【0124】
本発明の配向膜は特に大きな配向の異方性を持つことを特徴とする。このような異方性の大きさは特開2005−275364等に記載の偏光IRを用いた方法で評価する事ができる。また以下の実施例に示すようにエリプソメトリーを用いた方法によっても評価することができる。本発明の配向膜を液晶組成物用配向膜として使用した場合、より大きな膜の異方性を持つ材料が液晶組成物に対し大きな配向規制力を持つと考えられる。
【0125】
本発明の配向膜は、液晶ディスプレイ用の液晶組成物の配向用途以外に、光学補償材やその他すべての液晶材料の配向制御に用いることができる。また本発明の配向膜は大きな異方性を有するので、単独で光学補償材用途に使用することができる。
【0126】
本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の配向膜である液晶表示素子を提供する。
【0127】
前記電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0128】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサを必要に応じて用いることができる。前記液晶組成物には、特に限定されず公知の液晶組成物を用いることができる。
【0129】
本発明の配向膜は、液晶配向膜として液晶表示素子を形成したときに、公知の全ての液晶組成物に対してその特性を改善できるが、前述した方法によって製造された本発明の配向膜は、特に、ラビング処理の行いにくい大画面ディスプレイの配向欠陥改善に効果が大きい。このような大画面ディスプレイはTFTにより駆動制御されている。またこのようなTFT型液晶表示素子に使用される液晶組成物は、特許第3086228号公報、特許2635435号公報、特表平5−501735号公報、および特開平9−255956号公報に記載されている。したがって本発明の配向膜は、これらに記載された液晶組成物と組み合わせて用いるのが好ましい。
【0130】
本発明の液晶表示素子におけるプレチルト角は、例えば中央精機製液晶特性評価装置OMS−CA3型を用いて、Journal of Applied Physics, Vol.48, No.5, p.1783-1792 (1977)に記載されているクリスタルローテーション法によって測定することができる。
【0131】
本発明の液晶表示素子は、液晶表示素子の信頼性に係る電気特性において優れている。このような電気特性としては、電圧保持率およびイオン密度が挙げられる。
【0132】
電圧保持率(VHR)は、フレーム周期間に液晶表示素子に印加された電圧が液晶表示素子に保持される割合であり、液晶表示素子の表示特性を示す。本発明の液晶表示素子は、5Vおよび周波数30Hzの矩形波を用い、60℃の温度条件で測定される電圧保持率が90.0%以上であり、5Vおよび周波数0.3Hzの矩形波を用い、60℃の温度の条件で測定される電圧保持率が85.0%以上であることが、表示不良を防ぐ観点から好ましい。
【0133】
イオン密度は、液晶表示素子に電圧を掛けたときに生ずる液晶の駆動に起因する以外の過渡電流であり、液晶表示素子中の液晶に含まれるイオン性不純物の濃度の大小を示す。本発明の液晶表示素子は、イオン密度が500pC以下であることが、液晶表示素子の焼き付きを防ぐ観点から好ましい。
【実施例】
【0134】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。ピロメリット酸無水物(PMDA、化合物(A−1))、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸(CBTA、化合物(A−14))、および化合物(2−13)は市販の化合物を再結晶で精製して実験に用いた。1,8−ジアミノオクタン(DAO、化合物(VII−1−1))は市販品を蒸留して使用した。化合物(II−1)、化合物(A−21)はそれぞれ特公平5−65530号公報、および特開昭58−109479号公報に従って合成した。以下の化合物(VII−2−1)、化合物(VII−2−2)、および化合物(VII−5−1)は特開平11−160712号公報、およびBulletin de la Societe Chimique de France, 9-10, Pr. 2, 2195 (1975)に記載の方法に従って合成した。化合物(VIII−5)および化合物(VIII−6)は市販品を精製せずに実験に用いた。化合物(VIII−8)は市販品をエタノールから再結晶して実験に用いた。化合物(2−22)および化合物(3−5−1)はJournal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry, 30 (6), 1099 (1992)、特開2002−162630公報に記載の方法と同様な方法で合成した。化合物(A−21)は特開昭58−109479号公報に従って合成した。ポリマーの調製は窒素気流中で行った。
【0135】


【0136】
光照射は井内盛栄堂から販売されている250W高圧水銀灯を用い、波長300〜380nm付近の紫外線を照射した。照射は室温、空気中で行った。
【0137】
以下に実施例で用いた液晶表示素子の評価法を示す。
<配向膜のリタデーションおよび膜厚測定>
分光エリプソメータM−2000U(J.A.Woollam Co. Inc.製)を使用して求めた。本実施例の場合、膜のリタデーション値はポリマー主鎖の配向度に比例して大きくなる。すなわち大きなリタデーション値を持つものは、大きな配向度を持つ。
<UV−Visスペクトルの測定>
UV−Visスペクトル測定装置(日本分光V−660)を用い、配向膜を形成していないガラス基板をリファレンスとして測定した。
<電圧保持率>
「水嶋他、第14回液晶討論会予稿集 p78(1988)」に記載の方法で行った。測定は、波高±4.5Vの矩形波をセルに印加して行った。測定は60℃で行った。この値は、印加した電圧がフレーム周期後どの程度保持されているかを示す指標であり、この値が100%ならば全ての電荷が保持されていることを示す。
<液晶中のイオン量測定(イオン密度)>
応用物理、第65巻、第10号、1065(1996)に記載の方法に従い、東陽テクニカ社製、液晶物性測定システム6254型を用いて測定した。周波数0.01Hzの三角波を用い、±10Vの電圧範囲、温度60℃で測定した。イオン密度が大きいとイオン性不純物による焼き付き等の不具合が発生しやすい。即ちイオン密度は焼き付き発生を予測する指標となる物性値である。
<粘度>
回転粘度計(TV−22L、東機産業社製)を用い測定した。
<重量平均分子量(Mw)>
液晶配向剤におけるポリアミック酸の重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)を用いて、溶出液として0.6重量%リン酸含有DMFを用い、カラム温度50℃、ポリスチレンを標準溶液として測定した。カラムはShodex GF-7M HQ(昭和電工社製)を用いた。
<高分子液晶の確認>
基板に成膜した薄膜(膜厚約70nm)を230℃、10分焼成した後、偏光顕微鏡で観察した。なお、昇温速度は3℃/分とした。
<ガラス転移温度>
示差走査熱量測定装置(DSC)を用い測定した。昇温速度は8℃/分とした。
<セルの黒レベル確認>
作成したセルについて偏光顕微鏡観察を行ない、判定は以下の表に従った。

【0138】
[合成例1]
化合物(VII−2−3)の合成


(VII−2−2)の化合物と同様に合成した。融点;98.0−99.2℃。
【0139】
[合成例2]
化合物(VII−4−1)の合成


4−ブロモフタル酸ジエチルエステル(50g、166mmol)、1,7−オクタジイン(8.7g、82mmol)、ジクロロトリフェニルフォスフィンパラジウム(II)(290mg、0.41mmol)、およびヨウ化銅(158mmol、0.83mmol)の混合物を、窒素気流下、トリエチルアミン(200ml)中、4時間還流した。反応終了後、トルエン(500ml)および純水(500ml)を加え、抽出を行った。有機層を純水(300ml)で一回洗浄したのち、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過および溶媒を減圧留去し、目的物である1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エチニルブタン テトラエチルエステルを得た。収量42g、収率95%。この化合物は精製せずにそのまま次の反応に用いた。
【0140】
1,4−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エチニルブタン テトラエチルエステル(42g、77mmol)に5wt%Pd/C(2.1g)を加え、トルエン/エタノール混合溶媒(300ml/300ml)中、水素圧720MPaで水素添加反応を行った。反応終了後、触媒をろ別し、溶媒を減圧留去した。残さをカラムクロマトグラフィー(シリカゲル/トルエン:酢酸エチル=10:1v/v)で精製し、目的とする1,8−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)オクタン テトラエチルエステルを得た。収量43g、収率100%。
【0141】
1,8−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)オクタン テトラエチルエステル(43g、77mmol)をエタノール(250ml)に溶解し、5.7%水酸化ナトリウム水溶液(250ml)を加え、2時間還流した。反応後、溶媒を減圧留去した後、濃塩酸をpHが1になるまで加えた。生じた沈殿をろ過した後、沈殿を純水(200ml)で3回洗浄した。得られた結晶を減圧乾燥することによって1,8−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)オクタンを得た。収量31g、収率90%。
【0142】
1,8−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)オクタン(10g、23mmol)に無水酢酸(50ml)を加え、2時間還流した。無水酢酸を減圧留去した後、残さにシクロヘキサン(50ml)を加え、生じた沈殿をろ過した。得られた結晶を減圧乾燥することによって化合物(VII−4−1)を得た。収量9.2g、収率97%。融点;109.7−111.2℃。
1H NMR (500Hz, CDCl3);δ(ppm) 7.92(d,4H, J=7.80Hz)、7.70(d, 4H, J=8.1Hz)、2.82(t, 4H, J=7.65Hz)、1.3-1.7(m, 12H).
【0143】
[合成例3]
<ポリアミック酸ワニスAの調製>
化合物(II−1)(0.1818g、0.7827mmol)をN−メチル−2−ピロリドン(NMP、3.0g)に溶解し、化合物(VII−4−1)(0.3182g、0.7829mmol)を室温以下に保ちながら加えた。一晩攪拌後、NMP(3.5g)およびエチレングリコールモノブチルエーテル(BSC、3.0g)を加えてワニスAを調製した。ワニスAの粘度は49.8mPa・sであった。このワニスのポリアミック酸の重量平均分子量は74,000であり、200−300℃の範囲に液晶層が発現した。
【0144】
[合成例4〜14]
<ポリアミック酸ワニスB〜Lの調製>
表1に示す原料組成で、合成例1と同様な方法によって、ポリアミック酸のワニスB〜Lを調製し、合成例1と同様に物性を測定した。カッコ内はモル%を示す。なお、これら全てのワニスを上記の測定法に従い、液晶相を確認した所、170−250℃の範囲に液晶相が存在した。
【0145】
<表1>

【0146】
[実施例1]
サンプル瓶にワニスAを1.0g計り取り、NMP/BC=1/1(重量比)を加え1.67gとした。透明ガラス基板上に、この約3重量%のポリアミック酸溶液を滴下し、スピンナー法により塗布した(2,000rpm、15秒)。塗布後、基板を80℃で3分間加熱し、溶剤を蒸発させた後、偏光板を介して直線偏光を照射した(365nmでエネルギー約1.3J/cm2)。光照射後の基板をオーブン中で210℃、15分間加熱処理し、膜厚約100nmの配向膜Aを得た。この配向膜Aのリタデーションを測定したところ、12.9nmであった。
【0147】
[実施例2〜6]
表2に示すワニスを用い、実施例1と同様にして配向膜B〜Fを得た。リタデーションを測定した結果を実施例1の結果と共に示す。
<表2>

【0148】
[実施例7]
ワニスAの代わりにワニスAとワニスBとをそれぞれ各0.5gずつ混合したワニスMを用いた以外は、実施例1と同様な方法に従って配向膜Mを作製した。この配向膜Mのリタデーション値は30.5nmであった。
【0149】
[比較例1]
化合物(II−1)(2.6432g、11.38mmol)をNMP(35.0g)に溶解し、PMDA(1.2410g、5.690mmol)およびCBTA(1.1158g、5.690mmol)を室温以下に保ちながら加えた。室温で一晩攪拌後、NMP(35g)およびBSC(25g)を加えた。このものの粘度は120mPa・sであった。この溶液を60℃で約4時間攪拌して、粘度28.0mPa・sのワニスNを得た。このワニスのポリアミック酸の重量平均分子量は37,000であり、またガラス転移温度(Tg)は300℃を越えていた。
【0150】
ワニスNを用い、実施例1と同様にして配向膜Nを得、そのリタデーションを測定した。その結果は0.4nmであった。
【0151】
[比較例2]
化合物(II−1)の代わりに化合物(VI−1)を用い、その他は比較例1と同様にして粘度34.0mPa・sのワニスPを得た。このワニスのポリアミック酸の重量平均分子量は54,000であり、ガラス転移温度(Tg)は300℃を越えていた。
【0152】
ワニスPを用い、実施例1と同様にして配向膜Pを得、そのリタデーションを測定した。その結果は0.8nmであった。
【0153】
実施例と比較例1および2を比べると、本発明ポリマーを用いて得られる本発明の配向膜が、液晶性を持たないポリマーから製作された配向膜に比べ、少ない照射エネルギー量でも、非常に大きなリタデーション値を持つことが分かる。
【0154】
[実施例8]
ガラス基板を片面にITO電極を設けた透明ガラス基板に代えた以外は、実施例1と同様にして、膜厚約100nmの配向膜Aを得た。ITO電極上にこれらの配向膜が形成された基板2枚を、それぞれの配向膜について照射された直線偏光の偏光方向が平行になるように、かつ配向膜が形成されている面を対向させ、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚7μmの液晶セルA(液晶表示素子)を組み立てた。そして、これらのセルに下記に示す液晶組成物Aを注入した。
【0155】
<液晶組成物A>


【0156】
この液晶セルAを目視により観察したところ、液晶が流動した方向に沿って液晶が並ぶいわゆる流動配向は全く観察されなかった。偏光顕微鏡をクロスニコル状態にし、液晶セルAを回転させると明瞭な明および暗状態が観察された。この液晶セルAのプレチルト角は0.0°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.0%(30Hz)、85.0%(0.3Hz)および120pCであった。
また、この液晶セルAの黒レベルを観察したところ、小さなぶつぶつムラが観察した全領域に見られたが、良好な黒レベルであった。
【0157】
[実施例9]
使用したワニスをワニスBに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルBを作製した。この液晶セルBのプレチルト角は0.0°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、92.2%(30Hz)、76.3%(0.3Hz)および340pCであった。
また、この液晶セルBの黒レベルを観察したところ、ぶつぶつムラは観察した全領域に全く見られず、非常に良好な黒レベルであった。
【0158】
[実施例10]
使用したワニスをワニスFに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルFを作製した。この液晶セルFのプレチルト角は0.0°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.2%(30Hz)、85.3%(0.3Hz)および80pCであった。
この液晶セルFの黒レベルを観察したところ、ぶつぶつムラは観察した全領域に全く見られず、非常に良好な黒レベルであった。
【0159】
[実施例11]
使用したワニスをワニスLに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルLを作製した。これらの液晶セルLのプレチルト角は0.0°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.4%(30Hz)、88.2%(0.3Hz)および35pCであった。
また、この液晶セルLの黒レベルを観察したところ、ぶつぶつムラは観察した全領域に全く見られず、非常に良好な黒レベルであった。
【0160】
[実施例12]
使用したワニスをワニスMに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルMを作製した。これらの液晶セルMのプレチルト角は0.1°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.0%(30Hz)、82.1%(0.3Hz)および120pCであった。
また、この液晶セルMの黒レベルを観察したところ、ぶつぶつムラは観察した全領域に全く見られず、非常に良好な黒レベルであった。
【0161】
[比較例3]
使用したワニスをワニスNに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルNを作製した。この液晶セルNのプレチルト角は0.1°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.1%(30Hz)、76.0%(0.3Hz)および300pCであった。
また、この液晶セルNの黒レベルを観察したところ、大きなぶつぶつムラが観察した全領域に見られ、本発明の配向膜を用いた液晶表示素子に比べ非常に悪い黒レベルであった。
【0162】
[比較例4]
使用したワニスをワニスPに代えた以外は実施例8と同様にして、液晶セルPを作製した。この液晶セルPのプレチルト角は0.0°であった。またVHR(電圧保持率)およびイオン密度は、92.4%(30Hz)、85.3%(0.3Hz)および110pCであった。
また、この液晶セルPの黒レベルを観察したところ、大きなぶつぶつムラが観察した全領域に見られ、本発明の配向膜を用いた液晶表示素子に比べ悪い黒レベルであった。
【0163】
[実施例13]
片面にITO電極を設けた透明ガラス基板に、実施例1と同様にして、ワニスAをスピンコートし、その後基板を80℃で3分間加熱し、溶剤を蒸発させた後、オーブン中で210℃、15分間加熱焼成した。得られた膜厚約100nmのポリイミド膜をラビング処理した(押し込み;0.3mm、ステージ送り速度;60m/s、回転数;1000rpm、ラビング布;YA−18−R(レーヨン))。その後、配向膜を超純水中で5分間超音波洗浄してからオーブン中200℃で15分間乾燥した。
ITO電極上にこれらの配向膜が形成された基板2枚を、それぞれの配向膜についてラビング方向が逆平行になるように、かつ配向膜が形成されている面を対向させ、さらに対向する配向膜の間に液晶組成物を注入させるための空隙を形成して貼り合わせ、セル厚7μmの液晶セルArを組み立てた。そして、これらのセルに上記の液晶組成物Aを注入した。
【0164】
この液晶セルArのプレチルト角は0.3°であり、VHR(電圧保持率)およびイオン密度は、98.7%(30Hz)、80.2%(0.3Hz)および230pCであった。また、この液晶セルArの黒レベルを観察したところ、観察した全領域にラビングによる傷が全く見られず、更に非常に良好な黒レベルであった。
【0165】
[実施例14]
ワニスAのかわりにワニスJを用いた以外は実施例13と同様にして、セル厚7μmの液晶セルJrを組み立てた。この液晶セルJrのプレチルト角は0.5度であり、VHR(電圧保持率)およびイオン密度は、99.1%(30Hz)、87.5%(0.3Hz)および78pCであった。
また、この液晶セルJrの黒レベルを観察したところ、観察した全領域にラビングによる傷が全く見られず、更に非常に良好な黒レベルであった。
【0166】
このように、本発明の配向膜を液晶表示素子用の配向膜に応用した場合、黒レベルを大きく向上させることができる。また実用に耐えうる十分な電気特性を有していることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミック酸およびこのポリアミック酸の脱水反応によって得られるポリイミドから選択される少なくとも1つのポリマーを含有する組成物であって、この組成物に含まれる膜形成成分の全量を基準とする前記ポリマーの割合が50〜100重量%であり、そしてこの組成物を成膜することによって100℃から300℃の間に液晶温度範囲を有する膜を形成することができる配向剤。
【請求項2】
ポリアミック酸が主鎖に感光基を有するポリアミック酸である、請求項1に記載の配向剤。
【請求項3】
感光基が式(I)〜式(VI)で表される基の少なくとも1つである、請求項2に記載の配向剤。


(ここに、R、RおよびRは独立して芳香族の2価の基である。)
【請求項4】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つとテトラカルボン酸二無水物を反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。








【請求項5】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が式(IV−4)および式(VI−8)で表される感光基を有するテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとジアミンを反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。


【請求項6】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が請求項4に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つと式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。




(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Meはメチルである。)
【請求項7】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が請求項5に記載の式(IV−4)および式(VI−8)で表される感光基を有するテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つと式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つとの混合物をジアミンと反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。


(ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)
【請求項8】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が請求項4に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つと式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つとの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。


(ここに、A、A、AおよびAは独立してシクロへキシレンまたはフェニレンであり;XおよびXは独立して単結合、炭素数1〜5のアルキレンまたは−O−であり;XおよびXは独立して単結合、−CH−、−CHCH−、−O−または−S−であり;Yは−CH−、−C(R11)(R12)−、−CO−または−SO−であり、R11およびR12は独立して水素、炭素数1〜12のアルキル、または炭素数1〜12のフッ素化アルキルであり;m1、m2、m3、m4およびnは独立して0または1を表す。そして、上記のシクロヘキシレンおよびフェニレンにおいて、任意の水素は炭素数1〜4のアルキルまたはベンジルで置き換えられてもよく、これらの置換基の結合位置は任意である。但し、A、A、AおよびAのすべてが1,4−フェニレンであるとき、X、X、XおよびXはいずれも単結合ではない。)


(ここに、XおよびXは単結合、−O−、−COO−、−OCO−、−NH−、−CONH−、または炭素数1〜12のアルキレンであり;GおよびGは単結合、または炭素数6〜12の芳香族環および炭素数3〜12の脂環式環から選ばれる1〜3個の環を含む2価の基であり;Rは水素、フッ素、−CN、−OH、炭素数1〜30のアルキル、炭素数1〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数1〜30のアルコキシであり;そして、X、G、XおよびGの全てが単結合である場合は、Rは炭素数3〜30のアルキル、炭素数3〜30のフッ素化アルキルまたは炭素数3〜30のアルコキシであり、Gが単結合でありXが単結合でもなくアルキレンでもない場合は、Rは水素または炭素数3〜30のアルキルであり、GおよびGが共に単結合である場合は、X、XおよびRの合計の炭素数が3以上である。)


(ここに、Rは水素または炭素数1〜12のアルキルであり;環Bは任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−フェニレン、または任意の水素が炭素数1〜4のアルキルで置き換えられてもよい1,4−シクロへキシレンであり;Xは単結合または炭素数1〜5のアルキレンであり、そしてsは0〜3の整数であり;sが2または3であるとき、複数の環Bはすべて同じ環であってもよく、少なくとも2つの異なる環で構成されてもよく、複数のXもすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;ZおよびZは独立して単結合、−CH−、−CHCH−または−O−であり、t1およびt2は独立して0〜3の整数であり;t1が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよく;t2が2または3であるとき、複数のZはすべて同じ基であってもよく、少なくとも2つの異なる基で構成されてもよい。)
【請求項9】
主鎖に感光基を有するポリアミック酸が請求項4に記載の式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表される感光基を有するジアミンの少なくとも1つ、請求項6に記載の式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つおよび請求項8に記載の式(2)〜式(4)で表されるジアミンから選択される少なくとも1つの混合物をテトラカルボン酸二無水物と反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項2に記載の配向剤。
【請求項10】
テトラカルボン酸二無水物が式(A−1)、式(A−2)、式(A−12)、式(A−14)、式(A−18)、式(A−20)、式(A−21)、式(A−37)、式(VII−4)、式(VII−5)、式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つである、請求項4、6、8および9のいずれか1項に記載の配向剤。




(ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)
【請求項11】
ジアミンが式(VII−1)〜式(VII−3)および式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つである、請求項5または7に記載の配向剤。




(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Meはメチルである。)
【請求項12】
ポリアミック酸が式(VII−1)〜式(VII−3)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VIII−7)および式(VIII−8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸または式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンの少なくとも1つと式(VII−4)および式(VII−5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の少なくとも1つを反応させることによって得られるポリアミック酸である、請求項1に記載の配向剤。


(ここに、Rは炭素数6〜20のアルキレンであり;そして、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンである。)


(ここに、Meはメチルである。)
【請求項13】
請求項1に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜にラビングまたは光照射によって異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【請求項14】
請求項2〜11のいずれか1項に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜に光照射によって異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【請求項15】
請求項12に記載の配向剤を基板に塗布して得られる膜にラビング異方性を付与し、その後膜の液晶温度範囲まで加熱して膜の異方性を増大させることにより得られる液晶配向膜。
【請求項16】
請求項13〜15のいずれか1項に記載の液晶配向膜を有する液晶表示素子。
【請求項17】
式(IX)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミド、またはその前駆体であるポリアミック酸:


ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;Rはジアミンの残基である。
【請求項18】
式(X)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミド、またはその前駆体であるポリアミック酸:


ここに、Rは任意の−CH−が−O−、−NH−、−N(CH)−、−Si(CHOSi(CH−または−COO−で置き換えられてもよい炭素数6〜20のアルキレンであり;Rはジアミンの残基である。
【請求項19】
が炭素数6〜12のアルキレンであり、そしてRが式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である、請求項17または18に記載のポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸。








【請求項20】
が炭素数6〜12のアルキレンであり、そしてRが式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である、請求項17または18に記載のポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸。


(ここに、Meはメチルである。)
【請求項21】
式(IX)で表される構成単位および式(XI)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸:




ここに、Rは炭素数6〜12のアルキレンであり;Rは式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基であり;R10は式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である。










(ここに、Meはメチルである。)
【請求項22】
式(X)で表される構成単位および式(XII)で表される構成単位を含み、100〜300℃に液晶温度範囲を有するポリイミドまたはその前駆体であるポリアミック酸:




ここに、Rは炭素数6〜12のアルキレンであり;Rは式(I−1)〜式(I−3)、式(II−1)〜式(II−3)、式(III−1)、式(IV−1)〜式(IV−3)、式(V−1)および式(VI−1)〜式(VI−7)で表されるジアミンのいずれか1つの残基であり;R10は式(VIII−1)〜式(VIII−6)で表されるジアミンのいずれか1つの残基である。










(ここに、Meはメチルである。)

【公開番号】特開2010−197999(P2010−197999A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−290380(P2009−290380)
【出願日】平成21年12月22日(2009.12.22)
【出願人】(000002071)チッソ株式会社 (658)
【出願人】(596032100)チッソ石油化学株式会社 (309)
【Fターム(参考)】