説明

配水ブロック運用システムおよび方法

【課題】特に配水ブロックを用いた配水管理システムにおいて、滞留水の発生を抑えつつ、有効率向上を目的とする漏水診断に関する情報を効率よく提供できる配水ブロック運用システムおよび方法を提供する。
【解決手段】上水道施設の配水ブロックの運用システムに適用し、配水ブロックの配水管理システムにより収集・蓄積されるプロセスデータ(最小流量、時間、圧力など)を利用して、配水ブロックのブロック化を行う時間帯と行わない時間帯とを設け、ブロック化を行う時間帯に、漏水診断を行う演算部25を有する配水ブロック運用システムである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上水道施設の配水管理システムに関し、特に配水ブロックにおける滞留水の発生を抑えつつ、配水管路網の漏水診断機能を実現することが可能な配水ブロック運用システムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上水道施設では、浄水を需要家に給水するための配水管路施設が相当な割合を占めている。配水管は、耐久年数が約40〜45年程度であると予測されており、埋設年数の更新時期に合わせて更新されることになる。
【0003】
配水管の更新では、単に埋設年数の古い管から更新するだけでなく、いわゆる有効率(または有収率)の向上を目的とした効率的な更新が注目されている。ここで、有効率とは、配水池からの総配水量に対して有効に使用された水量(有効水量)の割合を意味する。即ち、「有効率=有効水量/総配水量」である。また、有収率とは、有効水量のうち、水道料金の収入となった水量(有収水量)の割合を意味する。即ち、「有収率=有収水量/総配水量」である。
【0004】
有効率(有収率)の向上には、配水管からの漏水を防止するための対策が必要不可欠であり、この対策として漏水を診断するための配水情報が重要である。漏水防止による有効率向上は、水循環系への負荷を低減するだけではなく、浄水と送配水段階のコスト削減効果もある。
【0005】
漏水の監視又は検出に関する先行技術としては、漏水監視機能付き水道メータ蓋および水道メータに関する提案がある(例えば、特許文献1を参照)。また、水道料金の検針作業と漏水点検を同時に行う漏水検出システムに関する提案もある(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−191139号公報
【特許文献2】特開2001−311676号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年では、配水管路施設は、配水管路網を複数の配水ブロック(所定範囲の配水管路網)に分割し、各配水ブロックの配水運転状態を監視する配水管理システムを有する。配水管理システムは、配水に関する流量や圧力のデータを収集し、異常検知や状態監視などを実行している。しかしながら、配水管理システムは、漏水防止機能により有効率向上を目的とする管理処理を行なう機能は備えていない。
【0008】
ところで、一般的に、配水管路網内の地下漏水に関しては、現場調査員が定期的に漏水調査(一次調査)を実施し、この調査の結果に基づいて漏水可能性が高い箇所を特定し、その後重点的にその箇所での詳細な漏水箇所特定(二次調査)を行なう。一次調査の段階では定期的に巡回しているだけで、どの配水ブロックを重点的に行うべきかについては考慮されていないのが現状である。また、配水ブロックを用いた配水管理システムでは、各配水ブロックの境界域において滞留水が発生し、これに伴い配水中の残留塩素が低減するという現状がある。
【0009】
このような現状を改善するためには、配水に関する流量や圧力のデータを収集している配水管理システムにおいて、有効率向上を目的とする漏水診断に関する情報を提供できることが望ましい。また、各配水ブロックの境界域において滞留水が発生しないようにできることが望ましい。
【0010】
そこで、本発明の目的は、特に配水ブロックを用いた配水管理システムにおいて、滞留水の発生を抑えつつ、漏水診断に関する情報を効率よく提供できる配水ブロック運用システムおよび方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の観点に従った配水ブロック運用システムは、浄水を供給するための配水管路網を複数の配水ブロックに分割して管理する配水管理システムに適用し、前記各配水ブロック毎の配水制御を行う配水ブロック運用システムであって、前記各配水ブロック間の配水管路に連絡バルブを有するブロック化機材を備え、一日のうちで、前記ブロック化機材の連絡バルブを閉じて前記各配水ブロック毎にブロック化する時間帯と、前記連絡バルブを開けて前記各配水ブロック毎にブロック化しない時間帯とを設ける構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、特に配水ブロックを用いた配水管理システムにおいて、滞留水の発生を抑えつつ、配水に関する流量や圧力のデータを使用して、有効率向上を目的とする漏水診断に関する情報を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に関する配水プロセス及び配水ブロック運用システムの概略を説明するための図。
【図2】同実施形態に関する配水ブロック運用システムの構成を説明するためのブロック図。
【図3】同実施形態に関する最小流量、最小流量が計測された時刻、および最小流量時の圧力の関係を示すデータの一例を示す図。
【図4】同実施形態に係る配水ブロック運用システムを適用した配水ブロック運用方法を示すフローチャート。
【図5】同実施形態に関する最小流量が計測された時刻のグラフの一例を示す図。
【図6】同実施形態に関する水使用に関する情報の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下図面を参照して、本発明の各実施形態を説明する。
【0015】
図1は、各実施形態に関する浄水を需要家に配水するための配水プロセス及び配水管理システムの概略を説明するための図である。
【0016】
図1に示すように、配水池50から配水管路網を通じて浄水を需要家に配水する配水プロセスにおいて、配水管路網は複数の配水ブロック31〜34に分割されて管理される。配水管理システムは、配水池50の出口や、各配水ブロック31〜34の入口に配置されたブロック化機材40A〜40Eを使用して、各配水ブロック31〜34への浄水の流入量を監視する。
【0017】
ここでブロック化機材とは、連絡バルブ、流量計、減圧弁から1つ以上を組み合わせて接続したものを言う。配水本管と配水ブロックとの接続に用いるブロック化機材は、流量計のみ、もしくは流量計と減圧弁の2つの組み合わせを用いる。配水本管と配水ブロックとの接続では連絡バルブは使用しない。配水ブロック同士の接続に用いるブロック化機材は、連絡バルブを必ず用いる。連絡バルブと流量計と減圧弁を組み合わせて用いても良い。また、ブロック化機材40A〜40Eを使用して、各配水ブロック31〜34への浄水の流入量を調整する。連絡バルブを有するブロック化機材40F、40Gを閉めることによって、各配水ブロック同士への浄水の流入を止めることができる。ブロック化機材40A〜40Eは、各配水ブロック31〜34への浄水の流入経路である配水管路上に設けられる。なお、連絡バルブは、電動式の開閉弁を備えているようにしてもよい。
【0018】
また、配水管理システムは、各配水ブロック31〜34に配置された圧力計41A〜41Dを使用して、各配水ブロック31〜34内の配水圧力(以下単に圧力と表記する)を監視する。配水管理システムは、後述するように、流量計を有するブロック化機材40A〜40Eにより計測された流入量、流入量に対応する時間および圧力計41A〜41Cにより計測された圧力の各計測データを収集し、例えば1分周期で記憶装置に蓄積する。即ち、各配水ブロックが連絡バルブ(例えば、電動式の開閉弁を備えている)を備えた配水管路で接続されている場合、一日のうちで、連絡バルブを閉じて各配水ブロック毎にブロック化する時間帯と、連絡バルブを開けて各配水ブロック毎にブロック化しない時間帯とを設け、一日の殆どの時間帯でブロック化しない状態とすることにより滞留水を抑えると共に、ブロック化する時間帯(配水管路を通る流水量が最小の時間帯)に漏水の検出を行うものである。
【0019】
また、計時手段であるタイマー装置(機械的またはソフトウエア的)を備え、このタイマー装置からの時刻情報に基づいて、漏水計測時間帯(最小流量となる時間帯)の開始時間(ブロック化する時間帯の開始時間)には、連絡バルブの電動式の開閉弁を閉じる制御を行うと共に、漏水計測時間帯の終了時間(ブロック化しない時間帯の開始時間)には、連絡バルブの電動式の開閉弁を開ける制御を行う。
【0020】
図2は、本実施形態に関する配水ブロック運用システムの構成を示すブロック図である。
【0021】
配水ブロック運用システムは大別して、図2に示すように、データ管理端末10と装置本体20とからなる。データ管理端末10は、キーボードやディスプレイなどの入出力装置を含むコンピュータ11及び記憶装置からなるデータベース12からなり、前述の配水管理システムにより収集されたプラントデータPDを入力してデータベース12に蓄積する。プラントデータPDには、前述した各配水ブロック31〜34毎の流入量、流入量に対応する時間、および圧力の各計測データが含まれている。また、流量および圧力の閾値を記憶しており、当該閾値に達した場合、連絡バルブの開閉を行うようにしてもよい。
【0022】
装置本体20は、コンピュータシステム(ハードウェア及びソフトウェア)から構成されており、圧力データ収集部21、最小流量収集部22、漏水量推定部23、データベース24、及び圧力−漏水量演算部(以下単に演算部と表記する)25を備えている。
【0023】
圧力データ収集部21は、データ管理端末10のデータベース12から、分単位の圧力データ100を配水ブロック31〜34毎に収集する。最小流量収集部22は、データ管理端末10のデータベース12から、時間に対応した分単位の流量データ110を配水ブロック31〜34毎に収集する。即ち、最小流量収集部22は、一日のうちの最小の流量のデータを検出し、当該最小の流量のデータが一日のうちの何時であるか(どの時間帯であるか)を検出する。最小流量収集部22は、分単位の流量データ110に基づいて、1日で最も流入流量が少ない時間を配水ブロック31〜34毎に抽出し、その時の流入流量および時間を最小流量として選定する。一方、圧力データ収集部21は、最小流量時の圧力データ120を出力する。
【0024】
さらに、漏水量推定部23は、最小流量収集部22から取得する最小流量150に基づいて、当該最小流量が漏水量として見做すべきかを判別し、漏水量推定値130を出力する。漏水量推定部23は、データベース24を参照して、水使用に関する情報(水使用に関するDB24に記憶されている)を使用して、漏水量を配水ブロック31〜34毎に推定する。データベース24には、予め水使用に関する情報として、料金水量、分水量、メータ不感水量、局事業用水量、調定減額水量などの情報が蓄積されている。
【0025】
バルブ開閉指示部26は、最小流量収集部22から取得する配水ブロック31〜34毎の最小流量の時間情報151に基づいて、バルブ開閉指示180をブロック化機材40A〜40Eに送出する。即ち、最小流量の各時間帯(例えば、最小流量の時間情報151の前後30分間)に、対応する配水ブロック31〜34にブロック化機材40A〜40Eを介して浄水が流れ込まないように、当該ブロック化機材40A〜40Eを閉じるようにバルブ開閉指示180を送出する。なお、バルブの弁の開閉が電動式ではなく、手動式の場合は、ユーザに開閉を促す表示を行うようにしてもよい。
【0026】
一方、バルブ開閉指示部26は、上述した時間帯以外の時間帯には、対応する配水ブロック31〜34にブロック化機材40A〜40Eを介して浄水を流れ込ませて滞留水の発生を抑えるために、当該ブロック化機材40A〜40Eを開けるようにバルブ開閉指示180を送出する。
【0027】
圧力−漏水量演算部25は、後述するように、上述した各時間帯において、圧力データ収集部21から出力される最小流量時の圧力データ120、及び漏水量推定部23から出力される漏水量推定値130を使用して、配水ブロック31〜34毎の圧力と漏水量との関係を示す関係式(演算式)を構築して、当該関係式に関する情報170をデータ管理端末10に出力する。
【0028】
次に、図3は、上述した配水ブロック31〜34毎の最小流量、最小流量が計測された時間、最小流量時の圧力を日ごとに収集したDB12の概念を示す図である。
【0029】
最小流量収集部22は、分単位の流量データ110に基づいて、1日で最も流入流量が少ない時間を配水ブロック31〜34毎に抽出し、その時の流入流量および時間を最小流量として選定し、図3に示すようなデータを生成してDB12に蓄積する。
【0030】
圧力データ収集部21は、最小流量時の圧力データ120として、図3に示すようなデータを生成してDB12に蓄積する。また、装置本体20は、図3に示すようなデータに基づいて、図5に示すような流量と時刻とを表したグラフを作成することができる。図5に示すように、一日のうち、最小流量が計測された時刻が3時45分だった場合、この前後30分である3時15分から4時15分までの1時間の時間帯を漏水計測時間帯として設定する。
【0031】
次に、本実施形態に関する配水ブロック運用システムおよび方法を適用した配水ブロックの制御処理について、図4のフローチャートを参照して説明する。
【0032】
まず、ブロック化機材40A〜40Eにより流量の測定が行われ、流量データ110としてDB12に蓄積される。装置本体20は、計測された流量データ110に基づいて、1日で最も流入流量が少ない時間を配水ブロック31〜34毎に抽出し、その時の流入流量および時間を最小流量として選定する(ステップS101)。
【0033】
続いて、装置本体20は、最小流量が計測された時刻の例えば前後30分間を漏水計測時間帯として設定する(ステップS102)。例えば、図3に示すように、配水ブロック31の2004年10月2日における最小流量が計測された時刻が3時45分だった場合、この前後30分である3時15分から4時15分までの1時間の時間帯を漏水計測時間帯として設定する(図5を参照)。即ち、最小流量が計測された時間の例えば前後30分間は、一日のうちで一番流入流量が少ない時間帯であると予想されるので、この時間帯に漏水の検出を行うのが望ましい。なお、配水ブロック31の最小流量が計測された時刻を、例えば、2004年10月2日から1週間計測し、平均の時刻を取るようにしてもよく、限定されるものではない。
【0034】
装置本体20は、漏水計測時間(例えば3時15分)の開始の例えば1分前であるかを判別する(ステップS103)。ステップS103で、装置本体20によって、漏水計測時間(例えば3時15分)の開始の例えば1分前であると判別された場合は(ステップS103のYES)、装置本体20のバルブ開閉指示部26は、ブロック化機材40A〜40Eのうち、配水ブロック31に浄水を供給する配水管路に設けられたブロック化機材40A(図1を参照)に、バルブ開閉指示部180としてバルブを閉じるコマンドを送信する(ステップS104)。
【0035】
ブロック化機材40Aは、バルブ開閉指示部180としてバルブを閉じるコマンドを受信した場合、バルブを(電動等で)閉じる制御を行い、バルブを閉じる制御を完了した旨の通知を装置本体20に送出する。なお、手動でバルブの開閉を行う場合は、バルブ開閉指示部180としてバルブを閉じるコマンドを受信した場合、当該コマンドを受信した旨の表示が行われる。この表示を視認した制御員等のユーザは、手動でバルブを閉める制御を行い、バルブを閉じる制御を完了した旨の通知を装置本体20に送出する。装置本体20は、バルブを閉じる制御を完了した旨の通知を受信した場合は(ステップS105のYES)、漏水計測時間帯である例えば3時15分から4時15分までの1時間の時間帯の間、待機すると共に、当該漏水計測時間帯において、ブロック化機材40Aおよび圧力計41Aによって、配水ブロック31への流入量(流量)および圧力が計測され、DB12に蓄積される(ステップS106)。
【0036】
装置本体20は、漏水計測時間帯が終了したことを判別した場合、漏水量の演算を行う(ステップS107)。漏水量の演算については、後述する。装置本体20によって漏水量の演算が終了したと判別された場合(ステップS108のYES)、装置本体20のバルブ開閉指示部26は、ブロック化機材40Aにバルブ開閉指示部180としてバルブを開けるコマンドを送信する(ステップS109)。即ち、配水ブロック31における漏水計測時間帯において、配水管路に設けられたブロック化機材40Aを閉じた状態とする。また、配水ブロック31における夫々の漏水計測時間帯以外の時間帯において、配水ブロック同士を接続するブロック化機材40Gを開けた状態とし、ブロック化機材40Gを閉じた状態における最小流量に基づいて、配水ブロック31の漏水量を算出する。なお、上述したように、DB12に流量および圧力のそれぞれの閾値を記憶しておき、当該閾値のうちいずれかの閾値(または両方の閾値)に達した場合、連絡バルブの開閉を行うようにしてもよい。また、この連絡バルブの開閉は、例えば配水地50内に設けられた装置本体20からの遠隔操作によるバルブ開閉指示に基づいて、連絡バルブ40Gの(電動式)開閉弁の操作を行うようにしてもよい。
【0037】
次に、上述した漏水量を算出する処理について説明する。
【0038】
漏水量推定部23は、最小流量収集部22から取得する単位時間毎の最小流量150及びデータベース24の水使用に関する情報を使用して、当該最小流量が漏水量として見做すべきかを判定し、漏水量推定値130を出力する(図2を参照)。ここで、例えば、蓄積されているデータが時単位であった場合、最小流量と漏水量とが等しいと考えるのは困難であるが、分単位あるいは秒単位でデータを蓄積していれば、最小流量と漏水量は限りなく等しいと考えることができる。
【0039】
また、対象とする配水ブロックの規模が大きい場合には、空き時間を捉えることが困難であるため、一定の使用量を想定して「最小流量=漏水量+夜間使用量」と定義し、過去の有収率といったデータから夜間使用量を推定しておき、その値に基づいて漏水量を仮定することも可能である。
【0040】
具体的には、漏水量推定部23は、図6に示すようなデータベース24の水使用に関する情報を使用して、例えば2ヶ月に1回、漏水量を計算し、その値から夜間使用量を推定することが可能となるため、最小流量150から漏水量130を推定することができる(図2を参照)。
【0041】
次に、演算部25は、最小流量時の圧力データ120及び漏水量推定値130を使用して、圧力と漏水量との関係を示す関係式(モデル)を構築する。各配水ブロック31〜35内の圧力と漏水量との間には、下記式(1)に示すような関係があることが、実験的に確認されている(書籍「配水管網の解析と設計」 高桑哲男著 森北出版 1978年を参照)。
【0042】
L=C(E−G)…(1)
但し、Lは漏水量[m/s]であり、Cは配水支管および給水管の延長や漏水孔の形状、面積に依存する係数であり、Eは管網節点のエネルギー位[m]であり、Gは管路中心高さ[m]であり、aは実験乗数で、例えば1.15である。
【0043】
ここで、Gは圧力計の設置場所に相当し、「E−G」は圧力計41A〜41Eの計測値に相当する。
【0044】
演算部25は、前記式(1)に示す関係式及びパラメータCを示す情報170をデータ管理端末10に出力する。データ管理端末10では、演算部25から出力される情報170に基づいて、各配水ブロック31〜34毎の漏水診断を行なうことができる。本実施形態では、データ管理端末10は、演算部25から出力される情報170(図2を参照)の中で、特にパラメータCに基づいた漏水診断を実行する。
【0045】
演算部25は、図3に示すデータを使用して、最小二乗法などの手法によりパラメータCを決定する。このパラメータCは、各配水ブロック31〜34における漏水特性を表す指標に相当する。前記式(1)から、配水ブロック内の同じ管路網であっても、圧力(E−G)が増加すれば漏水量(L)も増加する。このため、圧力の影響を除いたパラメータCの値で、配水ブロック内の漏水に関する特性を把握することが可能となる。即ち、データ管理端末10では、演算部25から出力される情報170に含まれるパラメータCに基づいて、各配水ブロック31〜35毎の漏水状態を評価することができる。
【0046】
本実施形態を用いることにより、配水ブロックを用いた配水管理システムにおいて、滞留水の発生を抑えつつ、漏水診断に関する情報を効率よく提供できる。即ち、一日のうち、各配水ブロックに流入する流量が最小になる夫々の時間帯に、各配水ブロックのブロック化(配水ブロック間を接続する配水管に設けられている連絡バルブを閉じる)を行い、夫々の漏水の検出を行うと共に、流量が最小になる時間帯以外の時間帯においては、各配水ブロックの非ブロック化(配水ブロック間を接続する配水管に設けられている連絡バルブを開ける)を行い、各配水ブロックにおける滞留水を抑えるようにすることができる。
【0047】
なお、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0048】
例えば、異なる配水本管に接続された別系統の配水ブロック同士を接続するように構成してもよい。第1の配水池および配水本管に接続された配水ブロックと、第2の配水池および配水本管に接続された配水ブロックとをブロック化部材を介して接続させることにより、より広域の配水管理システムを提供できる。
【符号の説明】
【0049】
10…データ管理端末、11…コンピュータ、12,24…データベース、20…装置本体、21…圧力データ収集部、22…最小流量収集部、23…漏水量推定部、25…圧力−漏水量演算部、26…バルブ開閉指示部、31〜34…配水ブロック、40A〜40G…ブロック化機材、41A〜41D…圧力計、50…配水池。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浄水を供給するための配水管路網を複数の配水ブロックに分割して管理する配水管理システムに適用し、前記各配水ブロック毎の配水制御を行う配水ブロック運用システムであって、
前記各配水ブロック間の配水管路に連絡バルブを有するブロック化機材を備え、
一日のうちで、前記ブロック化機材の連絡バルブを閉じて前記各配水ブロック毎にブロック化する時間帯と、前記連絡バルブを開けて前記各配水ブロック毎にブロック化しない時間帯とを設けることを特徴とする配水ブロック運用システム。
【請求項2】
浄水を供給するための配水管路網を複数の配水ブロックに分割して管理する配水管理システムに適用し、前記各配水ブロック毎の配水情報を制御する配水ブロック運用システムであって、
前記各配水ブロックに浄水を供給する前記配水管路に設けられた連絡バルブと、
前記各配水ブロックに流入される浄水の流量を計測する流量計測手段と、
前記流量計測手段から出力される流量データに基づいて、前記各配水ブロックの最小流量および該最小流量となる時間帯を夫々算出する最小流量演算手段と、
前記各配水ブロックにおける夫々の前記時間帯において該当する各配水ブロック間のブロック化機材の前記連絡バルブを閉じた状態とすると共に、前記各配水ブロックにおける夫々の前記時間帯以外の時間帯において該当する各配水ブロック間のブロック化機材の前記連絡バルブを開けた状態とする制御手段と、
前記連絡バルブを閉じた状態において前記最小流量演算手段により算出された夫々の最小流量に基づいて、前記各配水ブロックの漏水量を夫々算出する漏水量演算手段と、を備えることを特徴とする配水ブロック運用システム。
【請求項3】
前記各配水ブロックの配水による圧力を計測する圧力計測手段をさらに備え、
前記圧力計測手段により計測された圧力値及び前記漏水量演算手段により算出された漏水量を使用して、圧力と漏水量との関係を示す情報を生成することを特徴とする請求項1に記載の配水ブロック運用システム。
【請求項4】
計時手段をさらに備え、
前記連絡バルブは電動式の開閉弁を備えており、前記制御手段は、前記計時手段からの時刻情報に基づいて、前記最小流量となる時間帯の開始時刻に前記連絡バルブの電動式の開閉弁を閉じると共に、前記最小流量となる時間帯の終了時刻に前記連絡バルブの電動式の開閉弁を開けるように制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の配水ブロック運用システム。
【請求項5】
前記流量および前記圧力のそれぞれの閾値を記憶する記憶部をさらに備え、
前記閾値のいずれかの閾値に達した場合は、前記連絡バルブの開閉の操作を行うことを特徴とする請求項1または3に記載の配水ブロック運用システム。
【請求項6】
浄水を供給するための配水管路網を複数の配水ブロックに分割して管理する配水管理システムに適用し、前記各配水ブロック毎の配水制御を行う配水ブロック運用システムで用いられる配水ブロック運用方法であって、
前記配水ブロック運用システムは、前記各配水ブロックに浄水を供給する前記配水管路に連絡バルブが設けられており、
前記各配水ブロックに流入される浄水の流量を計測し、
計測された前記流量データに基づいて、前記各配水ブロックの最小流量および該最小流量となる時間帯を夫々算出し、
前記各配水ブロックにおける夫々の前記時間帯において該当する各配水ブロックに浄水を供給する前記配水管路に設けられた前記連絡バルブを閉じた状態とすると共に、前記各配水ブロックにおける夫々の前記時間帯以外の時間帯において該当する各配水ブロックに浄水を供給する前記配水管路に設けられた前記連絡バルブを開けた状態とし、
前記連絡バルブを閉じた状態において算出された前記夫々の最小流量に基づいて、前記各配水ブロックの漏水量を夫々算出することを特徴とする配水ブロック運用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−191064(P2011−191064A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54908(P2010−54908)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】