説明

配管および管端部加工方法

【課題】材料コストおよび加工コストを抑え易く、かつ雄側の配管と高い接続信頼性の下に接続し易い雌側の配管を得ること。
【解決手段】塑性加工により内径ID2が拡大した拡径部1を一端側20aに有すると共に、該拡径部の外側開口端部の塑性加工により形成されて径方向外側に張り出したフランジ部1aを有し、拡径部に雄側の配管が挿入されて該雄側の配管と接続される雌側の配管20を構成するにあたり、拡径部でのフランジ部よりも管軸方向内側にリング体5を装着する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管および管端部加工方法に関し、更に詳しくは配管継手として用いられる雌側の配管および該配管を作製する際の管端部加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの配管同士を接続する方法としては、例えば特許文献1に具体的に記載された方法が知られている。この方法では、ユニオンネジを有するブロック体を一方の配管(管体)の接続端側に溶接(ろう付け)し、ユニオンナットを有するブロック体を他方の配管(管体)の接続端側に溶接(ろう付け)し、上記のユニオンネジと上記のユニオンナットとを互いに螺合させることで2つの配管を接続する。ただし、この接続方法では各配管にブロック体を溶接(ろう付け)しなければならないので、部品点数が増えて接続のためのコストが嵩むと共に、ブロック体が接続された配管を得るまでに比較的煩雑な作業が必要となる。
【0003】
このため、素管を塑性加工して継手構造を有する配管を得、この配管と他の配管とを溶接以外の方法で直接接続するという方法も提案されている。例えば特許文献2には、素管での一端側の内径を拡大すると共に当該一端側を塑性変形させてカール状のフランジ部を形成した雌側配管(雌側構造体)に、一端側にシール材が装着された雄側配管(雄側構造体)を挿入し、これらを溶接するのではなく上記のフランジ部が挿入される長穴を有するクランプ状の接続部材で固定して接続するという方法が記載されている。この方法で用いられる雌側配管での上記一端側は、素管の端部に雌金型を固定し、雄金型に設けた所定形状の成型部を当該素管の端部からその内部に圧入するという塑性加工によって内径が拡大されている。
【0004】
【特許文献1】特開2002−22074号公報
【特許文献2】特開2004−316786号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献2に記載されている雌側配管(雌側構造体)は、素管を塑性加工することで作製されるので製造コストを抑え易いという利点を有してはいるが、素管の一端側を塑性加工することで形成されるフランジ部の強度は素管の強度に比べて低いため、薄肉の素管を用いた場合には、当該雌側配管と雄側配管とが接続された流路に水や湯等を流したときに両配管の接続箇所に掛かる管軸方向荷重によって上記のフランジ部が変形してしまうことがある。雌側配管のフランジ部の変形は、上記接続箇所からの漏水の原因となり得る。勿論、素管の肉厚を厚くすれば雌側配管でのフランジ部の変形を防止することができるが、素管の肉厚化は材料コストや加工コストの上昇をもたらす。
【0006】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、材料コストおよび加工コストを抑え易く、かつ雄側の配管と高い接続信頼性の下に接続し易い雌側の配管、および該配管を作製する際の管端部加工方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の配管は、塑性加工により内径が拡大された拡径部を一端側に有すると共に、該拡径部の外側開口端部の塑性加工により形成されて径方向外側に張り出したフランジ部を有し、拡径部に雄側の配管が挿入されて該雄側の配管と接続される雌側の配管であって、フランジ部よりも管軸方向内側で拡径部に装着されたリング体を有することを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の管端部加工方法は、素管を塑性加工して、該素管の一端側に内径が拡大された拡径部を形成すると共に該拡径部での外側開口端部に径方向外側に張り出したフランジ部を形成し、前記拡径部の外周には前記拡径部と前記フランジ部とによりリング体を固定する管端部加工方法であって、所定の形状および大きさの成型部と該成型部に連通する貫通孔とを有する雌型により、貫通孔を貫通した素管の一端側が貫通孔での成型部側の端から所定長に亘って外側に突出した状態で該素管を固定するクランプ工程と、外径が異なる複数の拡管用心金を外径が小さいものから順番に用い、該拡管用心金を素管の一端側から該素管に圧入することで素管での一端側の内径を拡大する拡管工程と、素管の一端側にリング体が装着された状態で素管の一端側から雌型にフランジ部形成用雄型を圧接して、拡径部の外側開口端部に径方向外側に張り出したフランジ部を形成すると共にリング体を拡径部とフランジ部とにより拡径部の外周に固定するフランジ部形成工程とを含むことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の配管では、拡径部の外側開口端部の塑性加工により形成されたフランジ部よりも管軸方向内側にリング体が装着されているので、該リング体がフランジ部に隣接した状態で当該配管と雄側の配管とを接続部材で固定することにより、リング体がない場合に比べて接続箇所の強度を向上させることができる。薄肉の素管を用いて本発明の配管を作製した場合でも接続箇所の強度を高めることができるので、当該接続箇所に比較的大きな管軸方向荷重が掛かっても上記フランジ部の変形を防止することができる。
【0010】
したがって、本発明によれば、材料コストおよび加工コストを抑え易い雌側の配管であって、雄側の配管と高い接続信頼性の下に接続し易い雌側の配管を得ることができる。この配管は、例えば本発明の管端部加工方法に従って素管を加工することにより得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の配管および管端部加工方法それぞれの実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
【0012】
実施の形態1.
図1は、本発明の配管の一例を概略的に示す断面図である。同図に示す配管20は銅、アルミニウム、またはステンレス鋼(鉄鋼)等により形成されて湯や水等の液体の流路となるものであり、当該配管20は、一端20a側に他の領域での内径よりも内径が大きい拡径部1を有している。拡径部1での管軸方向内側にはテーパ部10が連なっており、テーパ部10での管軸方向内側には非拡径部15が連なっている。拡径部1およびテーパ部10は素管を塑性加工することで形成されたものであり、拡径部1での内径ID1は非拡径部15での内径ID2よりも大きく、テーパ部10の内径は非拡径部15に近づくほど小さくなっている。非拡径部15での内径ID2は、素管の内径と同じである。
【0013】
また、拡径部1での外側開口端部には、塑性加工により形成されて径方向外側に張り出したフランジ部1aが位置している。そして、フランジ部1aでの管軸方向内側にはリング体5が装着されている。このリング体5はフランジ部1aに隣接配置されて、拡径部1とフランジ部1aとにより拡径部1の外周に固定されている。
【0014】
このような構成を有する配管20では、拡径部1を管継手として利用することができる。拡径部1の内径と同等の外径を有する他の配管(雄側の配管)、または拡径部1の内径と同等の外径の拡径部が形成された他の配管(雄側の配管)を拡径部1の外側開口部から該拡径部1に挿入し、例えばフランジ部1aおよびリング体5が挿入される長穴を有するクランプ状の接続部材で両配管を固定することにより、これら2つの配管を互いに接続することができる。
【0015】
図2は、図1に示した配管20と該配管20に接続された雄側の配管30の一例とを概略的に示す断面図である。図2に示す構成要素のうちで図1に示した構成要素と共通するものについては、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0016】
図2に示すように、配管20と雄側の配管30とを接続するにあたっては、まず、雄側の配管30の拡径部23の外周に形成されている凹周溝23aに予めOリング等のシール材27を装着し、当該配管30の拡径部23を配管20の拡径部1に挿入する。図示の配管30での拡径部23の外径は配管20での拡径部1の内径と同等であり、当該配管30は配管20での非拡径部15の内径と同等の内径の非拡径部25を有している。
【0017】
配管20での拡径部1の内径と配管30での拡径部23の外径が同等であることから、配管20での拡径部1に配管30での拡径部23を挿入したときには、これらの配管20,30が水密に接続される。前述の特許文献1に記載された接続方法で用いられるブロック体は不要であり、各配管20,30の溶接(ろう付け)も省略することができる。
【0018】
この後、例えばフランジ部1aおよびリング体5が挿入される長穴を有するクランプ状の接続部材(図示せず)で各配管20,30を径方向外側から挟み込んで、これらの配管20,30を固定する。このとき、フランジ部1aでの管軸方向内側にリング体5が隣接配置されて拡径部1の外周に固定されているので、リング体5がない場合に比べ、当該配管20と雄側の配管30との接続箇所の強度が向上する。薄肉の素管を用いて配管20を作製した場合でも接続箇所の強度を高めることができ、湯や水等の液体を流したときに当該接続箇所に比較的大きな管軸方向荷重が掛かってもフランジ部1aの変形を防止することができる。結果として、接続箇所からの漏水を防止することができる。
【0019】
上述のように、配管20は薄肉の素管を用いて作製することができるので、その材料コストおよび加工コストを抑え易い。また、湯や水等の液体を流したときに他の配管(雄側の配管)との接続箇所に比較的大きな管軸方向荷重が掛かってもフランジ部1aの変形がリング体5により防止されるので、雄側の配管と高い接続信頼性の下に接続し易い。なお、配管20に接続される雄側の配管は、図2に示した配管30のように拡径部23と非拡径部25とを有するものでなければならないというものではなく、拡径部を有していないもの、すなわち外径が一定のものであってもよい。
【0020】
上記の技術的効果を奏する配管20は、例えばクランプ工程と拡管工程とフランジ部形成工程とを含む本発明の管端部加工方法に従って素管の端部を加工することにより得られる。以下、図3、図4−1〜図4−6、および図5を参照して各工程の一例を詳述する。
【0021】
(クランプ工程)
図3に示すように、クランプ工程では、所定の形状および大きさを有する第1成型部41と該第1成型部41に連通する貫通孔45とを有する雌型50により、貫通孔45を貫通した素管55の一端55a側が貫通孔45での第1成型部41側の端から所定長L1に亘って第1成型部41側に突出するようにして、素管55を固定する。雌型50は、上型50aと下型50bとを有している。図示の例では、テーパ部10(図1参照)の外形寸法に対応した内形寸法を有する第2成型部43を介して、貫通孔45が第1成型部41に連通している。貫通孔45の長さL2は、素管55を安定に保持できるように当該素管55の長さや管径等に応じて適宜選定される。
【0022】
(拡管工程)
拡管工程では、外径が異なる複数の拡管用心金を外径が小さいものから順番に用い、該拡管用心金を素管の一端から該素管に圧入して、素管での一端側の内径を拡大する。この拡管工程で何種類の拡管用心金を用いるかは、素管の内径と拡径部1(図1参照)の内径とに応じて、換言すれば拡径部1を形成する際の拡管率に応じて、適宜選定される。例えば素管が銅管である場合に3種類以上の拡管用心金を用いれば、拡管率を70%以上にすることも比較的容易である。
【0023】
図4−1は、拡管工程で1番目に用いられる拡管用心金の一例を概略的に示す側面図である。同図に示す拡管用心金60は、円柱状の大径部60aと、大径部60aの一端側に形成された円柱状の小径部60bとを有しており、小径部60bの先端側には円錐台状の先端部60cが、また小径部60bと大径部60aとの間には円錐台状のテーパ部60dがそれぞれ設けられている。小径部60bの外径は素管55(図3参照)の内径と同等であり、大径部60aの外径は所望の値に選定されている。
【0024】
図4−2は、図4−1に示した拡管用心金60を素管55に圧入した状態を概略的に示す断面図である。同図に示すように、拡管用心金60を素管55に圧入すると、素管55の一端55a側での内径が拡管用心金60での大径部60aの外径にまで拡げられる。なお、図4−2および後掲の図4−3〜図4−4の各々に示す構成要素のうちで図3または図4−1に示した構成要素と共通するものについては、図3または図4−1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0025】
図4−3は、2番目の拡管用心金65を素管55に圧入した状態を概略的に示す断面図である。同図に示す拡管用心金65は、円柱状の大径部65aと、大径部65aの一端側に形成された円柱状の小径部65bとを有しており、小径部65bの先端側には円錐台状の先端部が、また小径部65bと大径部65aとの間には円錐台状のテーパ部がそれぞれ設けられている。小径部65bの外径は1番目の拡管用心金60での大径部60a(図4−2参照)の外径と同等であり、拡管用心金65での大径部65aの外径は所望の値に選定されている。この拡管用心金65を素管55に圧入することで、素管55の一端55a側での内径が拡管用心金65での大径部65aの外径にまで拡げられる。
【0026】
図4−4は、3番目の拡管用心金70を素管55に圧入した状態を概略的に示す断面図である。同図に示す拡管用心金70は、円柱状の大径部70aと、大径部70aの一端側に形成された円柱状の小径部70bとを有しており、小径部70bの先端側には円錐台状の先端部が、また小径部70bと大径部70aとの間には円錐台状のテーパ部がそれぞれ設けられている。小径部70bの外径は2番目の拡管用心金65での大径部65a(図4−3参照)の外径と同等であり、拡管用心金70での大径部70aの外径は所望の値に選定されている。この拡管用心金70を素管55に圧入することで、素管55の一端55a側での内径が拡管用心金70での大径部70bの外径にまで拡げられる。
【0027】
図4−5は、リング体5を素管55に装着した状態を概略的に示す断面図である。同図に示すリング体5の内径は配管20での拡径部1(図1参照)の外径と同等である。
【0028】
図4−6は、最後の拡管用心金75を素管55に圧入した状態を概略的に示す断面図である。同図に示す拡管用心金75は、円柱状の大径部75aと、大径部75aの一端側に形成された円錐台状の先端部75bとを有しており、大径部75aの他端側には更に大径の押圧部75cが設けられている。先端部75bの外形寸法は配管20でのテーパ部10(図1参照)の内形寸法と同等であり、大径部75aの外径は拡径部1(図1参照)の内径と同等である。
【0029】
この拡管用心金75での大径部75aと先端部75bとを合わせた長さは、先端部75bによって素管55にテーパ部10を形成するときに、押圧部75cにより素管55が管軸方向に押圧されて、所定長だけ圧縮されるように選定されている。その結果として、拡管用心金75を素管55に圧入したときには、配管20での拡径部1およびテーパ部10が形成されると共に、リング体5の外側で拡径部1の外周が径方向外側に盛り上がってリング体5が拡径部1に仮止めされる。なお、押圧部75cを有している上記の拡管用心金75は、雄型とみなすこともできる。
【0030】
(フランジ部形成工程)
フランジ部形成工程では、素管の一端側にリング体が装着された状態で素管の一端側から雌型にフランジ部形成用雄型を圧接して、拡径部の外側開口端部に径方向外側に張り出したフランジ部を形成すると共に、リング体を拡径部とフランジ部とにより拡径部の外周に固定する。本例においては、拡管工程で既にリング体を素管に装着してあるので、フランジ部形成工程では拡径部へのリング体の装着を行わない。
【0031】
図5は、フランジ部の形成に用いられるフランジ部形成用雄型の一例と該雄型を用いて素管に形成されたフランジ部とを概略的に示す断面図である。同図に示す構成要素のうちで図4−6に示した構成要素と共通するものについては、図4−6で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0032】
図5に示すフランジ部形成用雄型80は、素管55に挿入される挿入部77と、素管55の一端55a側にフランジ部1aを形成する成型部78とを有している。挿入部77の外形および大きさは、配管20でのテーパ部10の内形と拡径部1(図1参照)の内形とを合わせた形状および大きさである。また、成型部78は、フランジ部1aの外形を規定する凹部78aを有している。素管55の管軸に沿った凹部78aの深さは、フランジ部形成用雄型80を雌型50にリング体5を介して圧接させたときに、素管55の一端55a側が塑性変形して所望のフランジ部1aが形成されるように選定されている。凹部78aは、形成されるフランジ部1aの厚みおよび高さを規定する。
【0033】
したがって、素管55の一端55aを凹部78aに挿入した後にフランジ部形成用雄型80を雌型50にリング体5を介して圧接させることにより、所望のフランジ部1aを形成することができる。このとき、フランジ部1aの形成に伴ってリング体5の外側で素管55の外周が径方向外側に更に盛り上がるようにしてフランジ部1aが形成されると共に、該フランジ部1aがリング体5に圧接することから、リング体5が拡径部1とフランジ部1aとにより拡径部1の外周に固定される。この後に雌型50およびフランジ部形成用雄型80を取り外すことにより、配管20(図1参照)が得られる。
【0034】
実施の形態2.
実施の形態1で説明した管端部加工方法は、拡管工程で拡径部まで形成し、フランジ部形成工程でフランジ部の形成とリング体の固定とを行うものであったが、フランジ部形成工程において拡径部およびフランジ部の形成ならびにリング体の固定を同時に行うこともできる。
【0035】
この場合、まず、実施の形態1で説明したクランプ工程を行った後に実施の形態1で説明した拡管工程のうちの図4−5に示した段階まで行って、リング体5を素管55に装着する。この後、実施の形態1で図5を参照して説明したフランジ部形成工程を行う。すなわち、素管55の一端55aをフランジ部形成用雄型80の凹部78aに挿入し、該フランジ部形成用雄型80を雌型50にリング体5を介して圧接させて、素管55の一端55a側に拡径部1およびフランジ部1aを形成すると同時に拡径部1とフランジ部1aとによりリング体5を拡径部1の外周に固定する。この方法により素管55の端部を加工すれば、より少ない工数および金型(拡管用心金)数の下に配管20を得ることができ、結果として、その製造コストを低減することができる。
【0036】
実施の形態3.
実施の形態1,2で説明した管端部加工方法の各々は、雌型50(例えば図4−2参照)の温度を特に管理しない方法であったが、雌型50を加熱しながら素管55の一端55a側を加工すれば素管55の加工硬化を抑えることができ、結果として、大きな拡管率(例えば70%以上)を持つ拡径部1(図1参照)をより安定して形成することが容易になる。
【0037】
例えば素管55が銅管であるときには、雌型50を100〜200℃程度の一定温度に加熱することにより、加工硬化を抑えることができる。雌型50の加熱は、例えばヒータと温度調整器とを用いて行うことができる。当該雌型50の加熱は、拡管工程とフランジ部形成工程との両工程においてのみ行うようにしてもよいが、クランプ工程を含めた全工程を通じて行う方が好ましい。
【0038】
実施の形態4.
実施の形態1で説明した管端部加工方法は、素管55の端面形状を特に管理せず、そのままで塑性加工を行うものであったが、クランプ工程と拡管工程の間に、サブクランプ工程と端面整形工程を更に含めれば、素管55の一端55aに残存する切断時のバリ等を整形することができ、結果として、大きな拡管率(例えば70%以上)を持つ拡径部1(図1参照)をより安定して形成することが容易になる。
【0039】
上述した技術的効果を得るための管端部加工方法は、クランプ工程とサブクランプ工程と端面整形工程と拡管工程とフランジ部形成工程とを含む。この中でクランプ工程、拡管工程、およびフランジ部形成工程の各々は実施の形態1で説明した管端部加工方法におけるのと同様にして行われるので、ここではその図示および説明を省略する。以下、図6および図7を参照して、サブクランプ工程および端面整形工程を説明する。
【0040】
(サブクランプ工程)
サブクランプ工程では、貫通孔のみを有する副雌型により、該副雌型の端から素管の一端側が一定長に亘って外側に突出した状態で該素管を固定する。このとき、素管はクランプ工程で用いられる雌型と上記副雌型とにより固定されることになる。
【0041】
図6は、サブクランプ工程で用いられる副雌型の一例と該副雌型にて素管を固定した状態とを概略的に示す断面図である。同図に示す構成要素のうち、クランプ工程の説明で用いた図3に示す構成要素と共通するものについては、図3で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0042】
同図に示す副雌型90は上型90aと下型90bとを備え、成形部としては貫通孔85のみを有している。貫通孔85の径は素管55の外径と同等である。副雌型90は、雌型50の端から所定長L3に亘って素管55をその上下から挟み込んで、貫通孔85を貫通した素管55の一端55a側が副雌型90の端から所定長L4に亘って突出した状態で当該素管55を固定する。貫通孔85の長さL3は、素管55を安定に保持できるように当該素管55の長さや管径等に応じて適宜選定される。
【0043】
(端面整形工程)
端面成形工程では、副雌型から突出している素管の端部に該素管の一端側から端面整形用雄型を圧接して、素管の端面形状を整形する。図7は、端面整形用雄型の一例と該雄型を素管に圧接した状態とを概略的に示す断面図である。同図に示す構成要素のうちで図6に示した構成要素と共通するものについては、図6で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図7に示す端面整形用雄型95は、一端側に形成された円錐台状の先端部95aと、先端部95aに連なって該先端部95aよりも端面整形用雄型95での中央部側に形成された大径部95bと、該大径部95bに連なって形成された更に大径の押圧部95cとを有している。先端部95aの外形寸法は素管55の内形寸法未満であり、大径部95bの外径は素管55の内径と同等であり、押圧部95cの外径は素管55の外径よりも大きい。
【0045】
したがって、端面整形用雄型95の先端部95aおよび大径部95bを素管55に挿入して押圧部95cの側面を素管55の端面に圧接することで、素管55の一端55aの端面形状を整形することができる。この後に副雌型90および端面整形用雄型95を取り外し、拡管工程(図4−1〜図4−6参照)およびフランジ部形成工程(図5参照)を行い、雌型50およびフランジ部形成用雄型80を取り外すことにより、配管20(図1参照)が得られる。
【0046】
実施の形態5.
実施の形態4で説明した管端部加工方法は、クランプ工程とサブクランプ工程と端面整形工程と拡管工程とフランジ部形成工程とをこの順番で行うものであったが、サブクランプ工程と端面整形工程とを行う場合にも、実施の形態2で説明した管端部加工方法におけるように、拡径部およびフランジ部の形成ならびにリング体の固定をフランジ部形成工程で同時に行うことができる。この方法により素管の端部を加工すれば、より少ない工数および金型(拡管用心金)数の下に配管20(図1参照)を得ることができ、結果として、その製造コストを低減することができる。
【0047】
実施の形態6.
実施の形態4で説明した管端部加工方法は、クランプ工程とサブクランプ工程と端面整形工程と拡管工程とフランジ部形成工程とをこの順番で行うものであったが、クランプ工程とサブクランプ工程とを同時に行うこともできる。この場合には、図6に示した雌型50と副雌型90とにより素管55を同時に挟み込んで固定する。このようにして素管55を固定すれば、より少ない工数の下に配管20(図1参照)を得ることができ、結果として、その製造コストを低減することができる。
【0048】
実施の形態7.
実施の形態4,5,6で説明した管端部加工方法の各々は、雌型50および副雌型90(図6参照)の温度を特に管理しない方法であったが、実施の形態3で説明した管端部加工方法におけるのと同様に、雌型50および副雌型90を加熱しながら素管55の一端55a側を加工すれば、素管55の加工硬化を抑えることができる。その結果として、大きな拡管率(例えば70%以上)を持つ拡径部1(図1参照)をより安定して形成することが容易になる。副雌型90の加熱温度を雌型50の加熱温度と異ならせることも可能ではあるが、雌型50と副雌型90とが互いに同じ温度となるようにこれらを加熱する方が簡便である。副雌型90の加熱は、端面成形工程においてのみ行うようにしてもよいが、サブクランプ工程と端面整形工程の両工程で行う方が好ましい。
【0049】
実施の形態8.
図8は、本発明の配管の他の例を概略的に示す断面図である。同図に示す配管120は、拡径部1の外側開口端部を塑性加工により径方向外側へ向けることでフランジ部1bが形成されているという点を除き、実施の形態1で説明した配管20(図1参照)と同様の構成を有している。図8に示した構成要素のうちで図1に示した構成要素と共通するものについては、図1で用いた参照符号と同じ参照符号を付してその説明を省略する。
【0050】
このような構成を有する配管120では、実施の形態1で説明した配管20におけるのと同様の理由から、その材料コストおよび加工コストを抑え易い。また、フランジ部1bの変形がリング体5により防止されるので、雄側の配管と高い接続信頼性の下に接続し易い。さらには、拡径部1の外側開口端120a近傍に凹凸面がないため、拡径部1に他の配管(雄側の配管)を挿入する際に当該雄側の配管に装着されているOリング等のシール材が傷ついてしまうのを防止することができる。配管120と他の配管とを接続するにあたっては、前述の特許文献1に記載された接続方法で用いられるブロック体は不要であり、これら2つの配管の溶接(ろう付け)も省略することができる。
【0051】
上述した技術的効果を奏する配管120は、実施の形態1〜7で説明した管端部加工方法におけるのと同様の管端部加工方法によって素管を加工することで得られる。配管120を製造する際に行われる個々の工程は、実施の形態1〜7で説明した管端部加工方法におけるのと同様にして行われるので、ここではその図示および説明を省略する。
【0052】
以上、本発明の配管および管端部加工方法について実施の形態を挙げて説明したが、前述のように、本発明は上述の形態に限定されるものではない。例えば、リング体を拡径部とフランジ部とにより拡径部の外周に固定することは必須の要件ではなく、リング体はフランジ部の補強にすぎないので、例えば拡径部に摺動自在または滑動自在に装着してもよい。リング体を拡径部に固定しない場合には、本発明の配管と他の配管(雄側の配管)とを接続する際に、リング体を移動させてフランジ部に隣接させ、この状態で当該配管と雄側の配管とを接続部材、例えばリング体とフランジ部とが挿入される長穴を有するクランプ状の接続部材で固定する。
【0053】
また、配管の拡径部での拡管率が低ければ、拡径部と非拡径部との間に介在するテーパ部の長さ(管軸方向の長さ)がゼロ、すなわちテーパ部が管軸方向に対して垂直に形成されていてもよい。本発明の配管および管端部加工方法については、上述したもの以外にも種々の変形、修飾、組み合わせ等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明の配管は、水や湯等の液体を流下させなければならない種々の機器や構造物での流路形成に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の配管の一例を概略的に示す断面図である。
【図2】図1に示した配管と該配管に接続された他の配管の一例とを概略的に示す断面図である。
【図3】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われるクランプ工程で用いられる雌型の一例と該雌型にて素管を固定した状態とを概略的に示す断面図である。
【図4−1】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる拡管工程で1番目に用いられる拡管用心金の一例を概略的に示す側面図である。
【図4−2】図4−1に示した拡管用心金を素管に圧入した状態を概略的に示す断面図である。
【図4−3】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる拡管工程で2番目の拡管用心金を素管に圧入した状態を概略的に示す断面図である。
【図4−4】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる拡管工程で3番目の拡管用心金を素管に圧入した状態を概略的に示す断面図である。
【図4−5】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる拡管工程でリング体を素管に装着した状態を概略的に示す断面図である。
【図4−6】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる拡管工程で最後の拡管用心金を素管に圧入した状態を概略的に示す断面図である。
【図5】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われるフランジ部形成工程でフランジ部の形成に用いられるフランジ部形成用雄型の一例と該雄型を用いて素管に形成されたフランジ部とを概略的に示す断面図である。
【図6】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われるサブクランプ工程で用いられる副雌型の一例と該副雌型にて素管を固定した状態とを概略的に示す断面図である。
【図7】本発明の管端部加工方法により素管を加工して図1に示した配管を得る際に行われる端面整形工程で端面の整形に用いられる端面整形用雄型の一例と該雄型を素管に圧接した状態とを概略的に示す断面図である。
【図8】本発明の配管の他の例を概略的に示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 拡径部
1a,1b フランジ部
5 リング体
10 テーパ部
15 非拡径部
20,120 配管
20a,120a 配管の一端
23 他の配管の拡径部
25 他の配管の非拡径部
27 シール材
30 他の配管
41 第1成型部
43 第2成型部
45 貫通孔
50 雌型
55 素管
55a 素管の一端
60 1番目に用いられる拡管用心金
60a 大径部
60b 小径部
60c 先端部
60d テーパ部
65 2番目に用いられる拡管用心金
65a 大径部
65b 小径部
70 3番目に用いられる拡管用心金
70a 大径部
70b 小径部
75 最後に用いられる拡管用心金
75a 大径部
75b 小径部
75c 押圧部
77 フランジ部形成用雄型の挿入部
78 フランジ部形成用雄型の成型部
78a フランジ部形成用雄型の凹部
80 フランジ部形成用雄型
85 副雌型の貫通穴
90 副雌型
95 端部整形用雌型
95a 端部整形用雌型の先端部
95b 端部整形用雌型の大径部
95c 端部整形用雌型の押圧部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塑性加工により内径が拡大された拡径部を一端側に有すると共に、該拡径部の外側開口端部の塑性加工により形成されて径方向外側に張り出したフランジ部を有し、前記拡径部に雄側の配管が挿入されて該雄側の配管と接続される雌側の配管であって、
前記フランジ部よりも管軸方向内側で前記拡径部に装着されたリング体を有することを特徴とする配管。
【請求項2】
前記リング体は、前記拡径部と前記フランジ部とにより前記拡径部の外周に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の配管。
【請求項3】
素管を塑性加工して、該素管の一端側に内径が拡大された拡径部を形成すると共に該拡径部での外側開口端部に径方向外側に張り出したフランジ部を形成し、前記拡径部の外周には前記拡径部と前記フランジ部とによりリング体を固定する管端部加工方法であって、
所定の形状および大きさの成型部と該成型部に連通する貫通孔とを有する雌型により、前記貫通孔を貫通した前記素管の一端側が前記貫通孔での前記成型部側の端から所定長に亘って外側に突出した状態で該素管を固定するクランプ工程と、
外径が異なる複数の拡管用心金を外径が小さいものから順番に用い、該拡管用心金を前記素管の一端側から該素管に圧入することで前記素管での一端側の内径を拡大する拡管工程と、
前記素管の一端側にリング体が装着された状態で前記素管の一端側から前記雌型にフランジ部形成用雄型を圧接して、拡径部の外側開口端部に径方向外側に張り出したフランジ部を形成すると共に前記リング体を前記拡径部と前記フランジ部とにより前記拡径部の外周に固定するフランジ部形成工程と、
を含むことを特徴とする管端部加工方法。
【請求項4】
前記クランプ工程と前記拡管工程との間に、
貫通孔のみを有する副雌型により、該副雌型の端から前記素管の一端側が一定長に亘って外側に突出した状態で該素管を固定するサブクランプ工程と、
前記副雌型から突出している前記素管の端部に該素管の一端側から端面整形用雄型を圧接して、前記素管の端面形状を整形する端面整形工程と、
を更に含むことを特徴とする請求項3に記載の管端部加工方法。
【請求項5】
少なくとも前記拡管工程および前記フランジ部形成工程は、前記雌型を加熱した状態下で行うことを特徴とする請求項3または4に記載の管端部加工方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【図4−3】
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【図4−4】
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【図4−5】
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【図4−6】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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