説明

配管の接続部構造及び接続工法

【課題】 金属配管を差し込む管継手において、金属配管の切断端縁部の防食忘れを確実に防ぐことができる管継手を提供することを目的とする。
【解決手段】 金属配管1が差し込まれる筒部3と、筒部3の奥に形成された塩ビ製ライニング鋼管8の端縁部10を受ける環状の突き当たり段部4とを有するパッキン部材5を介した接続部構造である。施工現場搬入前に、パッキン部材5の突き当たり段部4に未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材6が付設される。そして、防食用パテ部材6が、塩ビ製ライニング鋼管8の切断端縁部11に押圧されて切断端縁部11を密封する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の接続部構造及び接続工法に関する。特には、排水用集合継手の立管接続部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、内部にコアを有する継手本体の配管差込部に雌ネジ部が形成される、雌ネジ部とコアの間にシリコンシール材を予め工場等で塗布しておき、施工現場で配管を継手本体の差込部に螺合することで、配管の先端部が継手本体の奥部とによってシール材を押圧して、配管の先端部を密封して、シール忘れを防ぐ管継手が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平5−149487号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、この管継手は、配管を螺合するのに伴って配管の先端部がシリコンシール材を継手本体の奥部に押圧するものであり、螺合するタイプではない配管、例えば、集合住宅の排水縦管の管継手には用いることができない。
そこで、本発明は、金属配管のパッキン部材を介した接続において、金属配管の切断端縁部の防食忘れを確実に防ぐことができる配管の接続部構造及び接続工法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明に係る配管の接続部構造は、金属配管が差し込まれる筒部と、筒部の奥に形成され金属配管の端縁部を受ける環状の突き当たり段部とを有するパッキン部材を介した金属配管の接続部構造であって、施工現場搬入前に、該パッキン部材の突き当たり段部に未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材が付設され、該防食用パテ部材が、金属配管の切断端縁部とパッキン部材の突き当たり段部とに押圧されて切断端縁部を密封するものである。
【0005】
また、前記突き当たり段部は、縦断面において、金属配管が差し込まれる向きと逆向きの勾配で傾斜したものである。
また、前記突き当たり段部が、パッキン部材の径方向に対して傾斜する角度をθとすると、15°≦θ≦30°である。
また、前記防食用パテ部材は断面円形に形成され、その外径を2mm〜2.5mmに設定した。
【0006】
また、本発明に係る配管の接続工法は、金属配管が差し込まれる筒部と、筒部の奥に形成され金属配管の端縁部を受ける環状の突き当たり段部とを有するパッキン部材を介して金属配管を接続する工法であって、工場でパッキン部材の突き当たり段部に、未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材を付設し、施工現場にて、金属配管を切断し、金属配管をパッキン部材内に挿入し、切断された金属配管の切断端縁部とパッキン部材の突き当たり段部とで、防食用パテ部材を押圧して切断端縁部を密封する工法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、施工現場で金属配管を接続するときに、防食処理をし忘れることが無く、確実に管端の防食を行うことができる。また、未加硫のブチルゴムから成るパテ部材は、切断端縁部の形状に係らず、確実に密封状に防食処理を行うことができる。そして、パテ部材は、未加硫のブチルゴムから形成されているので、パッキン部材に付設して時間が経過しても硬化しないため、その弾力性を長期間維持でき、十分に防食性能を発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1〜図6は本発明に係る配管の接続部構造の実施の一形態を示し、集合住宅の排水用集合管継手を示す。2は上下に配管の接続口14,15を有する排水用集合管継手本体である。接続口14,15には、鋳鉄管・ライニング鋼管等の金属配管1が差し込まれて接続される。配管の接続部構造としては、管継手の他にも、直管の端部に形成した接続部も含むものとする。
【0009】
図2は、継手本体2の立管接続口14の拡大断面図を示し、立管接続口14はパッキン部材5を受けるための受け段部13が形成されている。そして、受け段部13には、金属配管1が差し込まれるためのパッキン部材5が挿入されて、受け段部13に支持されている。パッキン部材5は、金属配管1が差し込まれる筒部3と筒部3の奥に形成され金属配管1(具体的には、塩ビライニング鋼管等)の端縁部10を受ける内鍔状の突き当たり段部4とを有する。パッキン部材5はEPDM等のゴム弾性部材から形成され、図2にはパッキン部材5が立管接続口14に一体に内蔵されたものを示した。
【0010】
そして、施工現場搬入前に、パッキン部材5の突き当たり段部4の表面に、未加硫ブチルゴムから形成された防食用パテ部材6が付設される。リング状の防食用パテ部材6は、パッキン部材5の突き当たり段部4の開口部7よりも内径側には突出しないように形成される(図3参照)。また、パテ部材6は、断面円形に形成される。
【0011】
ここで、排水用集合管継手2について述べると、差し込まれる金属配管1の直径寸法が80,100,125,150,200mmを対象とする種類がある。そして、パテ部材6の厚さ寸法(断面における直径)Tは、2〜2.5mmに形成される。
【0012】
パテ部材6の厚さ寸法Tが2mm未満であると、軸心に対して傾斜した切断端縁部11の金属配管1をパッキン部材5に差し込んだ場合に、パテ部材6を十分に押圧できない部分が発生し、確実な防食が行えない虞がある。また、2.5mmを超えると、パテ部材6が、金
属配管1に押圧された場合に、パテ部材6は大きく潰れて、内径側に大きく突出するため、流水を妨げてしまう(図4参照)。
【0013】
具体的に接続作業を説明する。施工現場において、金属配管1の端縁部10をバンドソー等の切断工具で切断すると、切断端縁部11は、金属配管1の軸心方向の法線に対し僅かに傾斜する(金属配管1の軸心方向に対する最先部11aと最後部11bとに3mm未満の差が形成される)ことが多い。被接続用の金属配管1の一例として、樹脂(塩化ビニル樹脂、ポリエチレン樹脂等)でライニングしたライニング鋼管8を接続する作業について説明する。
そして、図2,図3に示したように、ライニング鋼管8をパッキン部材5に差し込む。そして、ライニング鋼管8の自重によって、ライニング鋼管8の切断端縁部11がパテ部材6を押しつぶし、図5の状態となる。
【0014】
すると、図5に示したように、切断端縁部11の最先部11aは、パテ部材6とパッキン部材5の突き当たり段部4の両方を大きく潰す。一方、切断端縁部11の最後部11bは、パテ部材6を僅かに押し潰す程度であるが、全範囲にわたり密封状態となるので、防食を確実に行うことができる。また、漏水も防ぐことができる。しかも、未加硫のブチルゴムから形成されたパテ部材6により密封するため、強固な密封構造となる。
【0015】
また、図6のパッキン部材5は立管接続部14がパッキン部材5をボルトとナットで押圧してフランジ接続するフランジ型用であり、上述したパッキン部材内蔵一体型のパッキン部材5と同様の作用を示す。
なお、継手本体2の下側接続口15については、上側接続口14と上下逆の構成であり、上側接続口14で説明したものと同様の作用・効果を発揮する。
【0016】
次に、図7、図8は、本発明に係る金属配管の接続構造のほかの実施の形態を示し、図1〜図6とは、パッキン部材5の突き当たり段部4が傾斜面を有する点である。
具体的には、突き当たり段部4は、(配管が差し込まれる前の状態の)縦断面において、金属配管1が差し込まれる向きと逆向きの勾配で傾斜している。
そして、突き当たり段部4には、図1〜図6と同様に、未加硫ブチルゴムから形成されたリング状の防食用パテ部材6が付設される。パテ部材6は、配管が差し込まれる前の状態で、突き当たり段部4の開口部7よりも内径側には突出しないように(開口部7の面から0〜2mm程度外径へと)形成される。
【0017】
そして、図7に示したように、現場にて切断作業を行った金属配管1(ライニング鋼管8)をパッキン部材5に差し込むと、ライニング鋼管8の切断端縁部11がパテ部材6を押しつぶす。
そして、ライニング鋼管8の切断端縁部11と、上記のように傾斜した突き当たり段部4との間に空隙ができるので、パテ部材6は空隙内に押し込められながら両者によって押し潰されるため、パッキン部材5の内径側へは突出しない(図8参照)。
従って、ライニング鋼管8を接続後に、パテ部材6はパッキン部材5の開口から突出せず、流水が妨げられることがない。
【0018】
突き当たり段部4が、パッキン部材5の径方向に対して傾斜する角度をθとすると、15°≦θ≦30°である。
15°未満であると、上記空隙が小さく、パテ部材6は、押し潰されながら内側へはみ出てしまい、流水の妨げとなる。
また、30°を超えると、ライニング鋼管8の切断端縁部11が、パテ部材6を充分に押し潰すことができず、切断端縁部11にパテ部材6が密着しない部分が出来てしまい、防食できない虞がある。
【0019】
なお、上述においては、排水用集合管継手2について説明したが、これに限定されず、T字管継手やL字管継手等に用いてもよい。
また、上述したように、配管の端部に形成した接続部にパッキン部材5とパテ部材6を工場で付設して、金属配管1を接続する場合においても、集合管継手で説明した効果と同様の効果を得ることができる。
上述の発明は、特に、マンション等の現場に一定の決められた数量の継手を納入するような場合に、作業効率が向上して有効である。
【0020】
以上のように、本発明に係る配管の接続部構造は、金属配管1が差し込まれる筒部3と、筒部3の奥に形成され金属配管1の端縁部10を受ける環状の突き当たり段部4とを有するパッキン部材5を介した金属配管1の接続部構造であって、施工現場搬入前に、パッキン部材5の突き当たり段部4に未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材6が付設され、防食用パテ部材6が、金属配管1の切断端縁部11とパッキン部材5の突き当たり段部4とに押圧されて切断端縁部11を密封するものなので、施工現場で金属配管を接続するときに、防食処理をし忘れることが無く、確実に管端防食を行うことができる。また、未加硫のブチルゴムから成るパテ部材6によって金属配管1の切断端縁部11を密封するので、切断端縁部11の形状に係らず、確実に密封状に防食処理を行うことができる。そして、防食用パテ部材6は、未加硫のブチルゴムから形成されているので、パッキン部材5に付設して時間が経過しても硬化しないため、その弾力性を長期間維持でき、十分に防食性能を発揮できる。
【0021】
また、突き当たり段部4は、縦断面において、金属配管1が差し込まれる向きと逆向きの勾配で傾斜しているので、ライニング鋼管8の切断端縁部11と、傾斜した突き当たり段部4との間に空隙ができるので、パテ部材6は空隙20内に押し込められながら両者によって押し潰されるため、パッキン部材5の内径側へは突出せず、流水が妨げられることがない。
【0022】
また、突き当たり段部が、パッキン部材の径方向に対して傾斜する角度をθとすると、15°≦θ≦30°であるので、パテ部材6は、押し潰された際に内側へはみ出るのが防がれて、流水の妨げとなることがない。
かつ、パテ部材6と金属配管1の先端面とが充分に密着して、防食性能が優れた接続部構造となる。
【0023】
また、防食用パテ部材6は断面円形に形成され、その外径を2mm〜2.5mmに設定したので、軸心に対して傾いた切断端縁部11を有する金属配管1を差し込んだ場合であっても、切断端縁部11は、全周にわたってパテ部材6を十分に押圧できる。よって、防食を確実に行うことができる。また、パテ部材6は、金属配管1で押圧された場合でも、内径側に大きく突出することがないため、抵抗となるものが発生せず、流水を妨げることがない。
【0024】
また、本発明に係る配管の接続工法は、金属配管1が差し込まれる筒部3と、筒部3の奥に形成され金属配管1の端縁部10を受ける環状の突き当たり段部4とを有するパッキン部材5を介して金属配管1を接続する工法であって、工場でパッキン部材5の突き当たり段部4に、未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材6を付設し、施工現場にて、金属配管1を切断し、金属配管1をパッキン部材5内に挿入し、切断された金属配管1の切断端縁部11とパッキン部材5の突き当たり段部4とで、防食用パテ部材6を押圧して切断端縁部11を密封する工法なので、施工現場で金属配管を接続するときに、防食処理をし忘れることが無く、確実に管端防食を行うことができる。また、未加硫のブチルゴムから成るパテ部材6によって金属配管1の切断端縁部11を密封するので、切断端縁部11の形状に係らず、確実に密封状に防食処理を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】配管の接続部構造を示す正面図である。
【図2】本発明に係る配管の接続部構造の実施の一形態を示す要部断面図である。
【図3】要部拡大断面図である。
【図4】要部拡大図である。
【図5】金属配管を接続した状態を示す要部断面図である。
【図6】他のパッキン部材を示す正面図である。
【図7】本発明に係る配管の接続部構造のほかの実施の形態を示すよう部拡大断面図である。
【図8】要部拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1 金属配管
3 筒部
4(突き当たり)段部
5 パッキン部材
6 パテ部材
10 端縁部
11 端縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属配管が差し込まれる筒部と、筒部の奥に形成され金属配管の端縁部を受ける環状の突き当たり段部とを有するパッキン部材を介した金属配管の接続部構造であって、施工現場搬入前に、該パッキン部材の突き当たり段部に未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材が付設され、該防食用パテ部材が、金属配管の切断端縁部とパッキン部材の突き当たり段部とに押圧されて切断端縁部を密封することを特徴とする配管の接続部構造。
【請求項2】
前記突き当たり段部は、縦断面において、金属配管が差し込まれる向きと逆向きの勾配で傾斜した請求項1記載の配管の接続部構造。
【請求項3】
前記突き当たり段部が、パッキン部材の径方向に対して傾斜する角度をθとすると、15°≦θ≦30°である請求項2記載の配管の接続部構造。
【請求項4】
前記防食用パテ部材は断面円形に形成され、その外径を2mm〜2.5mmに設定した請求項1、2又は3記載の配管の接続部構造。
【請求項5】
金属配管が差し込まれる筒部と、筒部の奥に形成され金属配管の端縁部を受ける環状の突き当たり段部とを有するパッキン部材を介して金属配管を接続する工法であって、工場でパッキン部材の突き当たり段部に、未加硫ブチルゴムから形成されたリング状防食用パテ部材を付設し、施工現場にて、金属配管を切断し、金属配管をパッキン部材内に挿入し、切断された金属配管の切断端縁部とパッキン部材の突き当たり段部とで、防食用パテ部材を押圧して切断端縁部を密封することを特徴とする配管の接続工法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate