説明

配管の閉塞物診断方法

【課題】配管内における閉塞物の堆積を精度良く診断することができる配管の閉塞物診断方法を提供する。
【解決手段】加速度センサ2がドレン配管7の外面に取り付けられる。加速度センサ2はFFTアナライザ3を介して信号処理装置3に接続される。荷重センサ内蔵のインパクトハンマ6でドレン配管7の外面を叩いてドレン配管7を振動させる。この振動が加速度センサ2で測定されて振動信号としてFFTアナライザ3に入力される。このときのドレン配管7の打撃力が荷重センサで計測されてFFTアナライザ3に入力される。FFTアナライザ3は、振動信号及び打撃力に基づいて周波数に対する伝達関数の振幅の変化を求める。信号処理装置は、伝達関数に基づいて固有振動モードのモード減衰比を算出する。このモード減衰比に基づいてドレン配管7内の閉塞物の堆積を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の閉塞物診断方法に係り、特に、プラントのドレン配管の閉塞物診断に適用するのに好適な配管の閉塞物診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力プラント等のプラントにはドレン配管が設けられている。ドレン配管は、建屋内に配置され、高所に設置されているものもある。このドレン配管内に異物が堆積した場合にはドレン水の排出に支障が生じ、場合によってはドレン配管が堆積した異物によって完全に閉塞され、ドレン水の排出が不可能になる可能性もある。
【0003】
ドレン配管内に異物が堆積してドレン水の排出に支障が生じた場合には、作業者が、ドレン配管の、異物の堆積が予想される部分を切断して、配管内に堆積した異物を除去する。その後、配管の切断した部分に新たな配管を溶接にて接合してドレン配管を修復している。
【0004】
配管内部の目詰まりを診断する方法が、特開昭62−19756号公報及び特開平6−201364号公報に記載されている。
【0005】
特開昭62−19756号公報に記載された配管の目詰まり診断方法は、診断対象の配管(建築用配管)の外面をハンマリングしたときに配管に発生する反響音を信号処理することによって目詰まりを診断している。その反響音は、マイクロフォンによって集音され、電気信号に変換される。電気信号の信号処理が行われて反響音の減衰率が求められ、この減衰率とその配管に対する基準減衰率を比較することにより、配管に目詰まりが発生しているか否かを診断する。基準減衰率は、診断しようとする配管と同種、同形、同一寸法の新管をハンマリングしたときに生じる反響音の減衰率である。
【0006】
特開平6−201364号公報は、診断対象の配管を加振することにより目詰まりを診断している。配管の外面に接触させた加振棒を振動させて配管を加振させ、配管の振動を、振動伝達棒を介して加速度センサで検出する。加速度センサで検出された配管の振動波形と配管の正常状態(目詰まりが生じていない状態)の振動波形を比較し、配管に目詰まりが生じているか否かを診断する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭62−19756号公報
【特許文献2】特開平6−201364号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特開昭62−19756号公報に記載された、ハンマリングにより配管に発生する反響音の減衰率に基づいた配管の目詰まり診断方法、及び特開平6−201364号公報に記載された、診断対象の配管を振動する加振棒で加振させて配管の振動波形に基づいて目詰まりの診断を行う配管の目詰まり診断方法は、配管内における異物の堆積を精度良く診断することができない。
【0009】
本発明の目的は、配管内における閉塞物の堆積を精度良く診断することができる配管の閉塞物診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成する本発明の特徴は、配管を外部から叩いてこの配管を振動させて配管の振動を測定し、配管を叩いたときの打撃力を測定し、振動の測定により得られる振動信号及び測定された打撃力に基づいて配管の固有振動モードのモード減衰比を求め、このモード減衰比に基づいて配管内における閉塞物の堆積を診断することにある。
【0011】
固有振動モードのモード減衰比に基づいて配管内における閉塞物の堆積を診断するので、配管内における閉塞物の堆積を精度良く診断することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配管内における閉塞物の堆積を精度良く診断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の好適な一実施例である配管の閉塞物診断方法に用いられる配管閉塞物診断装置の構成図である。
【図2】図1に示すFFTアナライザの周波数解析で得られる伝達関数の一例を示す説明図である。
【図3】図1に示す信号処理装置でモード減衰比を求めるために実行される半値幅法の概略を示す説明図である。
【図4】配管の固有振動モードの例を示す説明図である。
【図5】配管内に閉塞物が堆積している場合及び堆積していない場合における配管の固有振動モードの次数に対する配管の固有振動数を示す説明図である。
【図6】配管内に閉塞物が堆積している場合及び堆積していない場合における配管の固有振動モードの次数に対するモード減衰比を示す説明図である。
【図7】配管の打撃点を示す説明図である。
【図8】打撃点を変えた場合における配管の固有振動モードの次数に対する配管の固有振動数を示す説明図である。
【図9】打撃点を変えた場合における配管の固有振動モードの次数に対するモード減衰比を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
発明者らは、配管内の異物(閉塞物)の堆積を精度良く診断できる診断方法について種々の検討を行った。この検討の結果、発明者らは、モード減衰比を用いることによって配管内に堆積した異物の存在を精度良く診断できることを見出した。本発明は、この新たな知見に基づいて成されたのである。なお、配管の振動振幅のピークにおける周波数に対応する固有振動モードの減衰比をモード減衰比という。
【0015】
上記の検討結果を以下に詳細に説明する。
【0016】
まず、円管である配管の固有振動モードを、図4を用いて説明する。図4において、配管の固有振動モードは、(m,n)または(m,n’)で表されている。「m」は配管の横断面におけるモード次数、「n」は配管の軸方向におけるモード次数、および「’」は配管の両端逆相モードの円環次数を示す。図4に示された配管の固有振動モードは、(1,1)モード、(2,0)モード、(2,1’)モード及び(2,2’)モードである。(1,1)モードは、横断面が円管であり(横断面が変形していない)、配管が軸方向で曲っているモードである。(2,0)モードは、横断面が変形しており(楕円形状)、配管が軸方向で変形していないモードである。(2,1’)モードは、横断面が変形しており(楕円形状であり、楕円の短軸方向及び長軸方向で変形)、配管が長手方において一端部の長軸が他端部で短軸となり一端部の短軸が他端部では長軸を示すモードである。すなわち、90度ねじれている状態である。(2,2’)モードは、横断面が(2,1’)モードと同様に変形しており(楕円形状であり、楕円の短軸方向及び長軸方向で変形)、配管が長手方においてその中央部が振れない、すなわち節となり、両端部の長軸と短軸が逆になっている、すなわち90度ずれているモードである。配管をハンマで叩いたときには、(1,1)モード(曲げモード)、(2,0)モード(円環モード)、(2,1’)モード(ねじりモード)及び(2,2’)モード(ねじりモード)が複合して現れる。
【0017】
発明者らは、軸方向の長さ300mmの円管(以下、模擬配管という)を用いて閉塞物診断の実験を行った。この実験においては、おがくずを粘土で固めて作成した模擬閉塞物を模擬配管の軸方向の中央部で内面に付着させた(図7参照)。模擬閉塞物は200gであり、粘土10に対しておがくずが1の割合で含まれている。模擬閉塞物の模擬配管の軸方向における厚みが40mmであり、模擬閉塞物の高さは円管の内径の1/2である。模擬閉塞物は模擬配管の内側の横断面積の半分を塞いでいる。この模擬配管の両端部をUボルトでそれぞれ支持し、この状態で模擬配管の軸方向の中央部を外側からハンマで叩いて配管を加振し、このときの配管の振動を測定した。測定した振動に基づいて、模擬配管の、固有振動モードの次数(以下、モード次数という)ごとの固有振動数およびモード減衰比を求めた。モード次数は、(1,1)モードでは(1,1)、(2,0)モードでは(2,0)、(2,1’)モードでは(2,1’)及び(2,2’)モードでは(2,2’)である。求められた固有振動数およびモード減衰比を図5及び図6にそれぞれ示す。
【0018】
図5は、模擬配管内に閉塞物が堆積している場合(閉塞物あり)及びそれが堆積していない場合(閉塞物なし)における模擬配管の固有振動モードの次数に対する模擬配管の固有振動数を示している。各モード次数の固有振動モードは模擬閉塞物の有無にかかわらず同じであり、また、模擬配管の固有振動数は、模擬配管内に模擬閉塞物が堆積している場合と模擬配管内に模擬閉塞物が堆積していない場合で、ほとんど差が生じていない。
【0019】
これに対して、模擬配管内に閉塞物が堆積している場合及び堆積していない場合における模擬配管の固有振動モードのモード次数に対するモード減衰比を示している図6では、模擬配管内に模擬閉塞物が堆積している場合と模擬配管内に模擬閉塞物が堆積していない場合で、模擬配管のモード減衰比が模擬配管の固有振動モードの各次数において差が生じている。すなわち、いずれの次数においても、模擬配管内に模擬閉塞物が存在する場合のモード減衰比が、模擬配管内に模擬閉塞物が存在しない場合のモード減衰比よりも大きくなっている。特に、(2,0)モードにおいて、前者のモード減衰比が後者のモード減衰比よりも非常に大きくなっている。発明者らは、図6に示す結果に基づいて、配管のモード減衰比に着目することによって、配管内の閉塞物の堆積を精度良く診断することができるという新たな知見を得た。
【0020】
発明者らは、さらに、模擬配管においてハンマの打撃点の位置、および模擬配管の長さの固有振動数及びモード減衰比への影響についても検討した。
【0021】
まず、ハンマの打撃点の位置、および模擬配管の長さの固有振動数及びモード減衰比への影響について、説明する。長さ300mmの模擬配管の内面で模擬配管の軸方向の中央部に模擬閉塞物を配置している。模擬配管の外面におけるハンマの打撃点は、図7に示すように、打撃点1、打撃点2、打撃点3及び打撃点4の4箇所に設定した。具体的には、打撃点1の位置は模擬配管の一端から35.25mmに、打撃点2の位置は模擬配管の一端から105.75mmに、打撃点3の位置は模擬配管の一端から176.25mmに、及び打撃点4の位置は模擬配管の一端から246.75mmにそれぞれ設定された。
【0022】
模擬配管外面の4つの打撃点をそれぞれハンマで叩くことによって、図8及び図9に示す結果が得られた。模擬配管の固有振動数は、打撃点の位置が変わっても、(1,1)モード、(2,0)モード、(2,1’)モード、(2,2’)モード、(3,0)モード、(3,1’)モード及び(3,2’)モードのそれぞれにおいて実質的に同じになった(図8参照)。モード減衰比も、打撃点の位置が変わっても、それぞれのモードにおいて実質的に同じになった(図9参照)。
【0023】
発明者らは、模擬配管の長さを変えて模擬配管の長さが固有振動数及びモード減衰比に与える影響を実験により確認した。長さが300mm、600mm及び900mmの、図7に示す位置に模擬閉塞物を付着させた3種類の模擬配管を準備し、これらの模擬配管の軸方向の中央部で外面をハンマで叩いた。それぞれの模擬配管において(1,1)、(2,0)、(2,1’)、(2,2’)及び(2,3’)の各モードでの固有振動数及びモード減衰比を求めた。それらのモードにおける固有振動数及びモード減衰比は、模擬配管の長さが異なっても、実質的に同じになった。
【0024】
以上の検討結果から、配管の長さ及び打撃点の位置が異なっても、配管内の閉塞物の堆積を、配管の固有振動モードでのモード減衰比に基づいて診断できることが分かった。特に、(2,0)モードは、配管の長さ及び打撃点の位置の影響を受けず、大きな値を示し、配管内における閉塞物の堆積の診断に最適である。
【0025】
特開昭62−19756号公報に記載された、ハンマリングにより配管に発生する反響音の減衰率に基づいた配管の目詰まり診断方法、及び特開平6−201364号公報に記載された、診断対象の配管を振動する加振棒で加振させて配管の振動波形に基づいて目詰まりの診断を行う配管の目詰まり診断方法では、求められた減衰率及び振動波形は、全固有振動数モード((1,1)モード、(2,0)モード、(2,1’)モード及び(2,2’)モード等)のそれぞれのモード減衰率及び振動波形が平均化された値となる。このため、特開昭62−19756号公報及び特開平6−201364号公報では、配管内における異物の堆積を精度良く診断することができない。本発明は、固有振動モードのモード減衰比に基づいて配管内における閉塞物の堆積を診断するので、配管内における閉塞物の堆積を精度良く診断することができる。
【0026】
以上の検討結果を反映した、本発明の実施例を以下に説明する。
【実施例】
【0027】
本発明の好適な一実施例である配管の閉塞物診断方法を、図1を用いて説明する。
【0028】
本実施例の配管の閉塞物診断方法に用いられる閉塞物診断装置1は、加速度センサ2、FFT(高速フーリエ変換)アナライザ(周波数分析装置)3、信号処理装置4、表示装置5及び荷重センサ(図示せず)を備えている。FFTアナライザ3が加速度センサ2及び信号処理装置4に接続される。表示装置5が信号処理装置4に接続される。荷重センサはドレン配管7を叩くインパクトハンマ6に設けられ、荷重センサからの荷重信号はFFTアナライザ3に入力される。
【0029】
原子力プラントのドレン配管7は、建屋内で側壁等にUボルト等の配管サポートを用いて設置されている。配管サポートは3〜5m間隔に配置される。
【0030】
閉塞物診断装置1を用いた配管の閉塞物診断方法を詳細に説明する。閉塞物診断対象の配管、例えば、ドレン配管7の外面に加速度センサ2を取り付ける。作業員がインパクトハンマ6でドレン配管7の外面を叩く。本実施例では、荷重センサを内蔵したインパクトハンマ6によるドレン配管7への打撃は、ドレン配管7の軸方向で所定の間隔に置かれた5箇所のそれぞれの位置において、ドレン配管7の外面の、周方向における複数点(例えば、周方向に22.5°置きに配置された16点)でそれぞれ与えられる。さらに、ドレン配管7の軸方向において所定の間隔で置かれたインパクトハンマ6による打撃によってドレン配管7が振動する。これによって生じる或る点における振動の加速度αが加速度センサ2によって測定される。振動の加速度αの測定によって加速度センサから出力された振動信号が、上記の複数の打撃点に対して、FFTアナライザ3にそれぞれ入力される。インパクトハンマ6のドレン配管7への打撃により発生する打撃力Fは、インパクトハンマ6に内蔵した荷重センサによって測定される。荷重センサによって測定された打撃力Fが、有線または無線によってFFTアナライザ3に入力される。
【0031】
FFTアナライザ3は、それぞれの振動信号の周波数分析を行い、さらに、打撃力F及び振動の加速度αに基づいてドレン配管6の軸方向の伝達関数T(=α/F)を求める。複数点の伝達関数Tが求められる。FFTアナライザ3で得られた振動信号の周波数と伝達関数Tの関係の一例を図2に示す。
【0032】
FFTアナライザ3で得られた、図2に示された振動信号の周波数と伝達関数Tの関係を表す情報(複数点分の情報)が、信号処理装置4に入力される。FFTアナライザ3が図2に示された情報を信号処理装置4に入力するのではなく、FFTアナライザ3が図2に示された情報を記憶装置に格納し、信号処理装置4が記憶装置から図2に示された情報を取り込むようにしても良い。
【0033】
信号処理装置4は、ドレン配管7の軸方向の各伝達関数を用いて、この伝達関数の振幅がピークを示す周波数において、ドレン配管7の軸方向を棒とみなす曲げ及びねじり等の固有振動モード(図4に示す配管軸方向の各変形モード)を求める。信号処理装置4は、ドレン配管7の周方向の各伝達関数を用いて、ドレン配管7の横断面の半径方向に変形する固有振動モード(図4に示す配管横断面の各変形モード)を用いる。配管軸方向の変形モード及び配管横断面の変形モードに基づいて、信号処理装置4が、ドレン配管7の各モード次数の固有振動モード(例えば、(1,1)モード、(2,0)モード及び(2,1’)モード等)を求める。
【0034】
図2に示す伝達関数の振幅のピーク(極大値)における周波数(ピーク周波数)に対応する固有振動モードの減衰比であるモード減衰比は、前述の複数点の伝達関数を用いて実験モード解析法により求めることができる。モード減衰比は、信号処理装置4で求められる。
【0035】
説明を簡単化するために、ドレン配管7の外面で1箇所に加速度センサ2を設置し、伝達関数の1つのピークを基に減衰比を求める半値幅法について説明する(図3参照)。
【0036】
伝達関数の振幅の極大値をH、伝達関数の振幅の極大値Hにおける周波数(ドレン配管7の固有振動数)をfとする。信号処理装置4は、ピークとなる周波数f付近で振幅がH/√2となる点の周波数(振動数)f及びfをそれぞれ読み取り,式(1)により減衰比ζを算出する。
【0037】
ζ=(f−f)/2f ……(1)
以上に述べた減衰比ζの算出を、図2に示す伝達関数の各ピーク周波数である固有振動数ごとに行うことによって、ドレン配管7の各固有振動モードにおけるモード減衰比が求めることができる。
【0038】
信号処理装置4で求められたドレン配管7の固有振動数、固有振動モード及びモード減衰比の各情報(便宜的に、計測固有振動数情報、計測固有振動モード情報及び計測モード減衰比情報と称する)は、表示装置5に表示される。なお、原子力プラントが建設されて原子力プラントの運転が開始される前に、閉塞物診断装置1を用いて、配管が閉塞していない状態(新品状態、又は異物を除去して修復した状態)でのドレン配管7の固有振動数、固有振動モード及びモード減衰比を予め求め、信号処理装置4のメモリ(図示せず)に記憶しておく。予めメモリに記憶された新品のドレン配管7の固有振動数、固有振動モード及びモード減衰比の各情報を、基準固有振動数情報、基準固有振動モード情報及び基準モード減衰比情報と称する。基準固有振動数情報、基準固有振動モード情報及び基準モード減衰比情報も、計測固有振動数情報、計測固有振動モード情報及び計測モード減衰比情報と併せて表示装置に表示される。作業員は、表示装置5に表示されたドレン配管7の計測固有振動モードの情報及びこの計測固有振動モードに対応する計測モード減衰比の情報と、基準固有振動モード情報及びこの基準固有振動モード情報に対応する基準モード減衰比情報を比較することによって、ドレン配管7内に閉塞物が堆積しているかを精度良く診断することができる。
【0039】
ドレン配管7の軸方向においてドレン配管7内の閉塞物の堆積を診断する場合には、加速度センサ2をドレン配管7の或る位置に設置したまま、インパクトハンマ6による打撃点をドレン配管7の軸方向に移動させることによって、ドレン配管7の軸方向の或る距離の範囲、例えば、ドレン配管7の全長に亘って、閉塞物の堆積を診断することができる。
【0040】
本実施例は、ドレン配管7の固有振動モードのモード減衰比に基づいて、ドレン配管7内における閉塞物の堆積を診断するので、その閉塞物の堆積を精度良く診断することができる。ドレン配管7内に閉塞物が堆積すると、伝達関数の振幅が変わり、これに応じてモード減衰比も変化する。また、ドレン配管7内に閉塞物が堆積したときの固有振動モードの減衰比は、ドレン配管7自体の減衰比及びドレン配管7の支持部での減衰比よりも大きくなる。このため、ドレン配管7内に閉塞物が堆積しているか否かを精度良く診断することができる。
【0041】
ドレン配管7の固有振動数及び固有振動モードを数値シミュレーションで予め求めておくことによって、ドレン配管7の振動測定点が数点あればこれらの振動測定点での測定値(打撃力F及び振動の加速度α)の平均を用いて精度の良いモード減衰比を算出することができる。
【0042】
本実施例では、振動測定点(加速度センサ2の設置位置)を固定してドレン配管の打撃点を移動させたが、逆に、その打撃点を固定して振動測定点(加速度センサ2の設置位置)を移動させても、本実施例と同様な効果が得られる。
【0043】
本実施例では,インパクトハンマに荷重センサを内蔵させているが,荷重センサがなくても振動のピーク周波数近傍で半値幅法を適用してモード減衰比を近似的に求めることができ、本実施例と同様な結果が得られる。
【0044】
本実施例では,インパクトハンマに荷重センサを内蔵させているが、荷重センサがなくても、2つの加速度センサを設け、1つの加速度センサを基準として固定し、もう1つ加速度センサを移動させることによって固有振動モードを求めることができ、本実施例と同様な結果が得られる。
【0045】
本実施例は、原子力プラントのドレン配管だけでなく、火力プラント及び化学プラント等の他のプラントのドレン配管における閉塞物の堆積の診断に適用することができる。さらに、本実施例は、プラント以外ではビルディング内に施設されている配管における閉塞物の堆積の診断にも適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明は、プラント等において閉塞物が内部に堆積する配管における閉塞物診断に適用することができる。
【符号の説明】
【0047】
1…閉塞物診断装置、2…加速度センサ、3…FFTアナライザ、4…信号処理装置、5…表示装置、6…インパクトハンマ、7…ドレン配管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
配管を外部から叩いて前記配管を振動させ、この配管の振動を測定し、前記配管を叩いたときの打撃力を測定し、前記振動の測定により得られる振動信号及び測定された前記打撃力に基づいて前記配管の固有振動モードのモード減衰比を求め、前記モード減衰比に基づいて前記配管内における閉塞物の堆積を診断することを特徴とする配管の閉塞物診断方法。
【請求項2】
前記配管を叩く打撃装置として前記打撃力を測定する荷重センサを有する打撃装置を用いる請求項1に記載の配管の閉塞物診断方法。
【請求項3】
前記測定された打撃力及び前記振動信号に基づいて求められた伝達関数及び前記振動の周波数を求め、前記伝達関数の振幅が極大と前記周波数において、前記伝達関数を用いて前記配管の固有振動モード及び前記モード減衰比を求める請求項1または2に記載の配管の閉塞物診断方法。
【請求項4】
前記固有振動モードが(2,0)モードであるときの前記モード減衰比を求める請求項1ないし3のいずれか1項に記載の配管の閉塞物診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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