説明

配管内を流れる液体を磁気処理する装置

【課題】 本発明は、市場で入手可能な比較的小さい磁石を組み合わせて用いた場合であっても磁力を顕著に増幅することができ、しかも経済性、実用性に優れた、配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、液体が流れる配管10の周囲に、第1の磁石2と;第1の磁石2と接触し、且つ、互いに接触しない位置に設置された2つの磁性体ブロック3a,3bと;2つの磁性体ブロック3a,3bの各々において、磁性体ブロック3a,3bの各々と接触し、且つ、第1の磁石2と接触しない位置であって、配管10の外周面と接触する位置に、第1の磁石2が前記磁性体ブロックと接触している部位の極性とは逆の極性が前記磁性体ブロックに接触している部位の極性となるように設置固定された2つの第2の磁石4a,4bと;からなる構造体5a,5bを、配管10を挟んで向き合うように一対、又はこれを複数対配置してなる、配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管内を流れる液体を磁気処理する装置に関し、詳しくは、小型の磁石を用いた場合でも磁力を顕著に増幅させることのできる、配管内を流れる液体を磁気処理する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水道、下水、冷却水などの水系においては、スケール(水垢)、錆などの発生により、金属製の配管の腐食、ボイラー缶の腐食、配管の閉塞、冷却水系の熱交換率の低下等の障害が起きる。
このようなスケール、錆などを抑制、除去する方法として、配管内を流れる水などの液体に磁気をあてて処理する方法が一般に行われている。この磁気処理された水が流れる水系内の配管、タンクなどの内壁では、スケール、錆などの生成が抑制され、さらに除去できることが経験則として知られている。
この現象を説明する機構として、磁気処理により液体の表面張力が減少し、また溶解しているイオンや懸濁している懸濁物の表面の電荷の状態が変化することによって、スケールが内壁に沈着し難い状態になっていることが考えられる。既に沈着しているスケールにおいても、磁気処理され水の分子集団(クラスタ)の構造が小さくなった液体中では、イオン状態の変化により剥離しやすくなり、除去されることが考えられる(例えば特許文献1,2参照)。
また、金属製の配管等における錆においては、磁気処理された液体によって赤錆(二価の酸化鉄)が黒錆(三価の酸化鉄)に変化し、内壁に形成された黒錆の酸化皮膜によって腐食が防止されることが考えられる。さらに、磁気処理された液体は配管内壁に水素イオン皮膜を形成し、特に水道水などに溶存する塩素や酸素による酸化腐食を防止することができると考えられる。
【0003】
磁気処理を行う方法としては、様々な方法や装置が挙げられるが、特許文献1、2に示されるように、永久磁石の磁力線が配管等と直交する角度で通過するような磁場を形成させ、通過する液体に磁気処理を行う方法が一般的である。
磁石の配置方法としては、磁石の単体(1個)を配管等に接触するように配置する方法や、配管等の内部を流れる液体に対して、直交する方向で配管等を挟んで向き合う位置に一対の磁石を設置する方法、さらにこれを複数対設置する方法、リング状や環状の磁石を配管等を取り囲むように設置する方法、などが考案されてきた。
また、磁石の配置方法としては、配管等の内部に設置する方法と、配管等の外部に設置する方法とがある。
ここで磁石を配管等の内部に設置した場合、液体に強力な磁場をかけることが可能であるが、配管等の流れの抵抗が大きくなり、設置作業やメンテナンス作業が困難なものとなる。
一方、磁石を配管等の外部に設置した場合、配管等への設置作業やメンテナンス作業が極めて容易となり、既に設置されている配管等へ後から設置することも容易なものとなる。しかし、この場合、配管等の太さによっては、配管等の内部に強力な磁場を形成させることが困難な場合がある。
【0004】
磁気処理による配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去する効果は、配管等の内部を流れる液体に対して、できるだけ強い磁場を形成することによって、その効果も顕著に向上する。
そこで、特許文献2では、より強い磁場を形成する方法として、導管の周りに一対又は複数対の永久磁石を設置し、さらに反対側の磁極に鉄板を重ねて設置することで、形成される磁力が強めることができることを見出している。
しかし、経済性、実用的の観点を考慮すると、実際に利用できる磁石の強度は限られたものとなり、市場で入手可能な比較的小さい磁石を用いた場合でも磁力を顕著に増幅することができる方法が求められている。
【0005】
【特許文献1】特開平10−28972号公報
【特許文献2】特許第3902277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来技術の欠点を解消し、市場で入手可能な比較的小さい磁石を組み合わせて用いた場合であっても磁力を顕著に増幅することができ、しかも経済性、実用性に優れた、配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、複数の磁石と磁性体ブロックを、特定の条件を満たす位置に配置することによって、発生する磁力を顕著に増幅できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成させるに到った。
【0008】
即ち、請求項1に係る本発明は、液体が流れる配管の周囲に、第1の磁石と;前記第1の磁石と接触し、且つ、互いに接触しない位置に設置された2つの磁性体ブロックと;前記2つの磁性体ブロックの各々において、前記磁性体ブロックの各々と接触し、且つ、前記第1の磁石と接触しない位置であって、前記配管の外周面と接触する位置に、前記第1の磁石が前記磁性体ブロックと接触している部位の極性とは逆の極性が前記磁性体ブロックに接触している部位の極性となるように設置固定された2つの第2の磁石と;からなる構造体を、前記配管を挟んで向き合うように一対、又はこれを複数対配置してなる、配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、前記構造体を一対配置してなる、請求項1に記載の配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、前記第2の磁石における前記配管の外周面と接触する部位が、前記配管の外周面の形に応じたR形状である、請求項1又は2のいずれかに記載の配管内を流れる液体を磁気処理する装置を提供するものである。
請求項4に係る本発明は、一対又は複数対の前記構造体を、前記配管を挟んで向き合うように配置したときに、前記第2の磁石が、前記配管の外周面に沿って略等間隔に配置されるように、前記磁性体ブロックに設置固定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の配管を流れる液体を磁気処理する装置を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、市場で入手可能な比較的小さい磁石を組み合わせて用いた場合であっても、磁力を顕著に増幅させることができ、強い磁力を発生することが可能な磁気処理装置を安価に提供することができる。
また、本発明によれば、本発明の装置によって磁気処理された液体を配管等に流すことによって、配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去を極めて効率よく行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の配管を流れる液体を磁気処理する装置(以下、磁気式水処理装置という場合がある。)の一態様を配管に装着した状態を示す図面であって、配管の長手方向に対する横断面図である。本発明の磁気式水処理装置1は、配管10の長手方向の軸に沿い、この軸に対して直交する方向で装着される。
【0011】
本発明の磁気式水処理装置1は、主に、第1の磁石2と、2つの磁性体ブロック3a,3bと、2つの第2の磁石4a,4bと、からなる、一対又は複数対の構造体5よりなるものであり、この構造体5を、第2の磁石4a,4bが配管10の外周面と接触するようにして、配管10を挟んで向き合うように設置している装置である。
なお、図1においては、一対の構造体5a,5bを、配管10を挟んで向き合うように配置した態様を示している。
【0012】
第1の磁石2は、永久磁石であり、用途に応じた形状のものを選択して用いることができる。この永久磁石としては、400mT以上の磁束密度を有するものを用いることが好ましい。特に、磁束密度に関しては、可能な限り大きいものを用いることが好適である。
第1の磁石2の形状としては、角形、丸形、リング形などの形状を挙げることができるが、具体的には角形のものを用いることができる。
第1の磁石2としては、上記所定の条件を満たす永久磁石であれば如何なるものでも用いることができる。特には、磁石の材質は選ばないが、安価で容易に入手できるネオジム磁石の強力なものを用いることができる。具体的には、例えば二六製作所製のN−35、N−40、N−45、N−48などが好適である。
【0013】
次に、磁性体ブロック3a,3bの形状としては、直方体状、正立方体状、長手方向の横断面が台形状の立方体など、如何なる形状のものでも用いることができるが、第1の磁石2と接触した際に、第1の磁石2との接触面積が大きくなる形状であることが望ましい。特に、図1に示すように、第2の磁石4a,4bを介して配管10の外周面と接する面が、配管10の外周面の接線方向と平行になる角度を有する面であることが望ましい。
【0014】
磁性体ブロック3a,3bの材質としては、磁性体の性質を有する材質のものであれば如何なるものを用いることができ、例えば鉄、コバルト、ステンレス、珪素鋼板類、パーマロイ、鉄鉱石、マグヘマイトなどのブロックを用いることができる。特には、鉄、コバルト、ステンレス(磁力を通さないもの、例えばSUS303タイプなどを除く)、珪素鋼板類を用いることが、磁性体としての質(磁力を伝える効率)、経済性の点で好ましい。また、異なる材質の磁性体の層を組み合わせたものであってもよい。なお、ニッケル材は、磁力を通さないため、好ましくない。
さらに、本発明における「磁性体ブロック」とは、非磁性体の材質の層と前記磁性体の材質の層を組み合わせたものをも含む概念である。例えば、非磁性体の材質のものを内側の支持体にし、表面に接する層に磁性体を成形したものなどを挙げることができる。
【0015】
なお、本発明の磁気式処理装置1の構成単位である構造体5a,5bを構成する2つの磁性体ブロック3a,3bとしては、上記所定の形状、大きさ、材質から選ばれた同一の形状、大きさ、材質の磁性体ブロックを用いることができるが、上記所定の形状、大きさ、材質から選ばれた2種類の磁性体ブロックを組み合わせて用いることもできる。
例えば、図1において、磁性体ブロック3aと、磁性体ブロック3bと、で異なる材質の磁性体を用いることもできる。
【0016】
また、第2の磁石4a,4bとしては、永久磁石が用いられ、250mT以上の磁束密度を有するものを用いることが好ましい。
第2の磁石4a,4bが有する磁束密度に関しては、可能な限り大きいものを用いることが好適である。但し、第1の磁石が有する磁束密度より小さい方が望ましい。例えば、第1の磁石が400mTの磁束密度を有する場合、第2の磁石としては、それよりも磁束密度が小さい250mTのものを用いることができる。
また、本発明において、第2の磁石4a,4bの大きさとしては、通常、前記第1の磁石2よりも「小型」のものが用いられるが、必要に応じて、前記第1の磁石2よりも第2の磁石4の方を大きくすることも可能である。
第2の磁石4a,4bの大きさは、磁性体ブロック3の大きさの0.3〜1.0倍の範囲内のものを用いることが望ましい。
第2の磁石4a,4bの形状としては、角形、丸形、リング形などの形状を挙げることができるが、好ましくは、角形のものを挙げることができる。また、さらに好ましくは、配管10の外周面と接触する部位が、配管10の外周面の形に応じたR形状であることが望ましい。このようなR形状を有することによって接触面積が増え、配管10の内部を流れる液体にかける磁場を強めることができる点で好ましい。
【0017】
第2の磁石4a,4bとしては、上記所定条件を満たす永久磁石であれば如何なるものでも用いることができる。特には、磁石の材質は選ばないが、安価で容易に入手できるネオジム磁石の強力なものを用いることができる。具体的には、例えば二六製作所製のN−35、N−40、N−45、N−48などが好適である。
【0018】
なお、本発明の磁気式処理装置1の構成単位である構造体5a,5bを構成する2つの第2の磁石4a,4bとしては、通常、上記所定の条件を満たす1種類の小型磁石を用いるが、2つの第2の磁石4a,4bとして、上記所定の条件を満たす2種類の小型磁石を用いてもよい。
例えば、図1において、磁性体ブロック3aに接触固定される第2の磁石4aと、磁性体ブロック3bに接触固定される第2の磁石4bと、で異なる強さの磁力を有するものを用いてもよい。
【0019】
本発明の磁気式処理装置1の構成単位である構造体5a,5bは、前記第1の磁石2と、2つの前記磁性体ブロック3a,3bと、2つの前記第2の磁石4a,4bと、からなるものであり、以下のような条件を満たすように設置された構造を有するものである。
即ち、まず第1の磁石2および磁性体ブロック3a,3bは、2つの磁性体ブロック3a,3bの各々が第1の磁石2と接触し、且つ、2つの磁性体ブロック3a,3bがお互いに接触しない位置に設置される。
ここで、第1の磁石2と2つの磁性体ブロック3a,3bの各々と接触する面は、磁石2のS極とN極もしくはN極とS極が、磁性体ブロック3a,3bの各々と接触するように配置することで、第1の磁石2が有する磁力を最大限に活用することができる。
なお、図1においては、第1の磁石2のN極が磁性体ブロック3aと、第1の磁石2のS極が磁性体ブロック3bと、それぞれ接触するように設置されている。
【0020】
次に、第2の磁石4a,4bは、磁性体ブロック3a,3bの各々と接触し、且つ、第1の磁石2と接触しない位置であって、配管10の外周面と接触する位置に設置される。このとき、第2の磁石は、第1の磁石2が磁性体ブロック3a,3bと接触している部位の極性とは逆の極性が磁性体ブロック3a,3bに接触している部位の極性となるように設置固定される。
例えば、図1において、第2の磁石4a,4bは、上記条件を満たす位置で、磁性体ブロック3a,3bの各々と接触するように設置固定される。
このとき、第2の磁石4aのS極は、磁性体ブロック3aと接触するように固定され、N極が配管10の外周面と接することになる。
一方、第2の磁石4bのN極は、磁性体ブロック3bと接触するように固定され、S極が配管10の外周面と接することになる。
なお、第2の磁石4a,4bを、上記と逆の極の向きで磁性体ブロック3a,3bに接触固定した場合には、構造体5が発生させる磁力が弱まってしまい好ましくない。
【0021】
構造体5(一対の構造体5のうち一方の構造体を5a,他方の構造体を5bとする)を構成する、第1の磁石2と、2つの前記磁性体ブロック3a,3bと、2つの前記第2の磁石4a,4bは、上記に記載のように組み立てられ固定されたものであるが、これらを固定する方法としては、バンドボルト締め付け、又は2分割バンドボルト締め付けにより行うことが望ましい。
構造体5a,5bを組み立てる際には、支持体、補強材としては非磁性体材質類を用いて成形したケース内に接着剤で収納することが望ましい。
【0022】
構造体5a,5bは、上記のような構造を有することで、第2の磁石4a,4bが第1の磁石2の磁力を増幅することができ、小型の第2の磁石4a,4bを用いただけにも関わらず、これらの磁石が単独では発生させることができない強力な磁力線を発生させることができる。
具体的には、構造体5a,5bが発生する磁力は、第1の磁石2の1.8〜1.9倍程度、第2の磁石4a,4bの1.9倍倍程度に増幅することができる。
例えば、図1において、第1の磁石2として400mTの磁束密度を有する永久磁石を用い、磁性体ブロック3a,3bとして、SS41タイプの鉄製のブロックを用い、第2の磁石4a,4bとして380mTの磁束密度を有する永久磁石を用いた場合、構造体5a,5bの配管10の外周面と接する第2の磁石4a,4bの表面では、730mT程度の磁束密度の磁力線が発生する。これは第1の磁石2の磁力の約1.8倍、第2の磁石4a,4bの約1.9倍の磁力に相当する。
従って、経済的、実用的な面で実際に利用できる形状の磁石を用いて構造体5a,5bの形状を組み立てることによって、市場で入手可能な比較的小さい磁石を組み合わせて用いた場合でも、強い磁力を発生させることが可能となる。
【0023】
本発明の磁気式水処理装置1において構造体5a,5bは、第2の磁石4a,4bが配管10の外周面と接触し、配管10を挟んで一対、又は複数対が向き合うように配置される構成になっている。
磁気式水処理装置1において、構造体5a,5bは、一対または複数対、好ましくは、一対〜三対配置される。なお、構造体5を三対配置した場合の本発明の磁気式水処理装置1を図3に示す。
また、構造体5a,5bは、配管10の長手方向と直交する向きで、互いに向き合う位置に配置される構成になっていることが好ましい。
配管10に対して、このように構造体5a,5bを配置することによって、配管10内を流れる液体の全体に対して、効率のよく強力な磁力処理を行うことができることから好ましい。
なお、本発明の実施形態とは異なるが、構造体5a,5bを上記のように対として配置しない場合や、構造体5aのみを単独で一個配置することもできる。しかし、これらの場合、配管10内を流れる液体の全体に対して、効率のよく強力な磁力処理をすることが難しくなるためあまり好ましくない。
【0024】
さらには、一対又は複数対の前記構造体5a,5bを、配管10を挟んで向き合うように配置したときに、第2の磁石4a,4bが、配管10の外周面に沿って略等間隔に配置されるように、磁性体ブロック3a,3bに設置固定されることが望ましい。
なお、図1においては、一対の構造体5a,5bが、配管10を挟んで向き合うように配置され、第2の磁石4a,4bが、配管10の外周面に沿って略90°間隔に配置されるように、前記磁性体ブロック3a,3bに固定されたものを示している。
このように第2の磁石4a,4bを配置することによって、配管10内を流れる液体の全体に対して、効率のよく強力な磁気処理することができ好ましい。
【0025】
配管10を挟んで向き合う一対又は複数対の構造体5a,5bは、第2の磁石4a,4bが有する磁極の向きが、左右対称となる向きで配置してもよく(向かい合う第2の磁石同士の磁極が異なる向き:図1の配置)、或いは点対象(向かい合う第2の磁石同士の磁極が同じ)となる向きで配置してもよい。好ましくは、左右対称となる向き(図1の配置)の方が効率がよい。
【0026】
磁気式水処理装置1は、一対又は複数対の構造体5a,5bを、上記の条件を満たす配置で配管10の周囲に配置したものであるが、リング状のバンドグリップや、複数に分割されたバンドグリップを、ボルトやナット等を用いて締め付け、配管10に固定してもよい。
図3は、三対配置した構造体5の周囲を、リング状のバンドグリップ11で締め付け固定した例を示している。
また、構造体5a,5bに枠体や支持体を付属させて、配管10に装着できる形状にしてもよい。
具体的には、構造体5a,5bを配管10に固定するための枠体や支持体を、構造体5の配管10と接する側と反対面に具備させることで、一対又は複数体の構造体5a,5bを配管10の周囲に、容易に装着することができる。さらに、この枠体や支持体を、隣合った枠体や支持体と連結しうる又は締め付け具やボルトなどで固定しうる構造を有するものとすることで、より容易に、配管10への装着が可能となる。さらに、この形状の場合、脱着も容易に行うことができる。
なお、上記の枠体、支持体は、非磁性体の性質を有するものであることが好ましい。
【0027】
本発明の磁気式水処理装置1によって、所定の流速で配管10内を流れる液体に強力な磁場をかけることによって、当該配管10内を流れる液体の性質を変化させ、配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去する性質を具備する液体へと変化させることができる。
また、上記効果を十分に奏することができる本発明の磁気式水処理装置1としては、磁気式水処理装置1が装着された配管10の中心部において、100mT以上、好ましくは240mT以上の磁束密度の磁力線を発生するものであることが望ましい。
なお、磁気式水処理装置1が装着された配管10の中心部において、100mTより低い磁束密度の磁力線しか発生できない場合、配管10を流れる液体を、配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去する性質を具備する液体へと変化させる十分な効果を得ることができない。
【0028】
配管10を流れる液体は、1.2〜5.0m/s前後、好ましくは1.9〜2.0m/s前後、さらに好ましくは2m/s前後の流速で流れる液体であることが望ましい。それより遅い流速で、例えば0.1m/s〜1.0m/sの範囲内においては、構造体5を複数対配置したものが好ましい。
なお、0.1m/s前後より遅い流速で流れる液体を磁力処理する場合、配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去を効率よく行うためには、同じ量の液体の処理に、より強力な磁力線による磁力処理を要することになり(より大きな磁石を要することになり)、効率および経済性の点で好ましくない。
【0029】
本発明の磁気式水処理装置1によって、磁気処理することができる配管10を流れる液体としては、水道水、下水、冷却水、田畑の灌漑用水、水耕栽培用の水、養魚場用の飼育水、水泳プールの水、浴槽の水、ボイラ供給水、工場の洗浄水などを挙げることができる。具体的には、配管内を流れる水道水、下水、冷却水を磁気処理することができる。
【0030】
本発明の磁気式水処理装置1によって磁気処理された液体を下流に流すことによって、下流にある配管やタンクなどの内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去を極めて効率よく行うことができる。
なお、その効果は、磁気式水処理装置1の磁力の大きさ依存するものであるが、例えば、配管10の外周面と接する第2の磁石4a,4bの表面に530mT程度の磁束密度の磁力線が発生する構造体5a,5bを2つ有する磁気式水処理装置1を用いて、内径19mmの配管10の内部を流速1.9〜2.0m/s前後で流れる水道水を処理した場合、30m程度下流までの配管やタンクなどの内壁のスケール、錆などの生成を抑制し、除去することが可能となる。また、当該磁気処理後に止水になった場合、数日の間その効果は持続することが期待される。
【0031】
磁気式水処理装置1によって磁気処理された、当該配管10内を流れる液体の性質の変化のうち、pH値の低下、酸化還元電位(ORP)の低下が実際の測定値の変化として検出される。
なお、「pH」は水素イオン濃度で定義づけられる酸性・アルカリ性の尺度を表す指数であり、「酸化還元電位(ORP)」はあらゆる元素、化合物の酸化力の酸化力・還元力の尺度をmVで表した数値である。
ここでpH値の低下は、水素イオン皮膜を形成する効果を示すものと考えられる。また、酸化還元電位(ORP)の低下は、酸化皮膜を形成する効果を示すものであると考えられる。
また、表面張力の低下は、配管やタンクなどの内壁を、スケールが沈着し難く、剥がれ易い状態にしている要因の一つであると考えられる。
【0032】
なお、直接的な液体の性質の変化としては検出されていないものの、本発明のスケールの生成抑制および除去を促進する要因として、磁力処理によって液体に溶解するイオン状態の変化が、関与していると考えられる。既に沈着しているスケールなどは、液体中のイオン状態の変化によって、剥離しやすくなっていることが推測される。
また、特に配管10が金属製の配管であった場合においては、磁気式水処理装置1によって磁気処理された液体は、配管内壁に水素イオン皮膜の形成を誘導し、さらに、赤錆(二価の酸化鉄)から黒錆(三価の酸化鉄)の酸化皮膜の形成を促す可能性も示唆される。本発明の磁気式水処理装置1によって処理された水が、錆の生成を抑制し、除去を促進するメカニズムの可能性があるものと考えられる。
【0033】
なお、磁気式水処理装置1を設置、固定もしくは装着して使用できる配管10としては、液体を流すため用途に設計された如何なる配管であってもよいが、好ましくは、同心円状の配管に用いることが、中を流れる液体全体に対して、効率よく強力な磁力処理を行うことができ好ましい。
また、配管10の材質としては、磁力を通さない性質を有するもの(例えばSUS303タイプなどのステンレスや、ニッケル等)を除いたものであれば、金属、塩化ビニールなど既存の液体を流す用途に用いられる如何なる材質のものに対して用いることができる。
配管10の材質として、磁力を通す性質の金属を用いる場合には、複数対の構造体5を配置した磁気式水処理装置1を用いることが望ましい。
なお、配管10が、肉厚3mmを超える厚さの鉄製のパイプである場合、同じ量の液体の処理に、より強力な磁力線による磁力処理を要することになり(より大きな磁石を要することになり)、効率および経済性の点で好ましくない。
また、配管10としては、具体的には、水道パイプ、下水道のパイプ、冷却水の導管などを挙げることができる。
【0034】
なお、磁気式水処理装置1によって処理された液体によって、スケール、錆などの生成抑制および除去が可能な使用用途としては、水道パイプ、下水道のパイプ、冷却水の導管、冷却塔、ボイラー缶の配管、ボイラー、工場の洗浄水パイプ、貯水タンク、熱交換機、クーリングタワー、チラー、受水槽、中和水槽、洗浄機、噴水、浴槽、トイレ、田畑の灌漑用水用の配管、水耕栽培用の施設、養魚場の施設、水泳プールなどに用いることができる。
【実施例】
【0035】
以下、本発明を実施例によって詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらにより何ら限定されるものではない。
【0036】
実施例1
図1に示す如き磁気式水処理装置1を用いて、水道水の配管10内を1.9〜2.0m/sの流速で流れる液体(水道水)を磁気処理した。
なお、水道水の配管10の内径は19mmであった。また、第1の磁石2は、縦25.4mm×横25.4mm×高さ12.7mmの直方体状のものであって、その磁力が、390mT(3900ガウス)の永久磁石を用いた。第2の磁石4a,4bは、縦25mm×横10mm×高さ5mmの直方体状のものであって、その磁力が、320mT(3200ガウス)の永久磁石を用いた。磁性体ブロック3a,3bとしては、縦25mm×横25mm×高さ16mmの大きさの鉄製のブロックを用いた。
上記のように、水道水の配管10の周囲に、第1の磁石2と;前記第1の磁石2と接触し、且つ、互いに接触しない位置に設置された2つの磁性体ブロック3a,3bと;前記2つの磁性体ブロックの各々において、前記磁性体ブロックの各々と接触し、且つ、前記第1の磁石2と接触しない位置であって、前記配管10の外周面と接触する位置に、前記第1の磁石2が前記磁性体ブロックと接触している部位の極性(磁性体ブロック3a側ではN極であり、磁性体ブロック3b側ではS極である。)とは逆の極性が前記磁性体ブロックに接触している部位の極性(磁性体ブロック3a側ではS極であり、磁性体ブロック3b側ではN極である。)となるように設置固定された2つの第2の磁石4a,4bと;からなる構造体5a,5bを、前記配管10を挟んで向き合うように一対配置してなる磁気式水処理装置1を用いて、水道水の配管10内を1.9〜2.0m/s前後の流速で流れる液体(水道水)を磁気処理し、配管出口の水のpH、酸化還元電位(ORP)を測定した。なお、pHの計測は、pH計測器((POK−101M(SIBATA製))を用いて行い、酸化還元電位(ORP)の測定は、POK−101M(SIBATA製)を用いて行った。通常の水道水のpH、酸化還元電位(PRP)の結果と合わせて表1に示す。
さらに、第2の磁石4a,4b表面の磁力及び配管中心部の磁力を、ガウスメーター(カネテック社製)にて測定した。結果を表1に示す。
【0037】
次に、本実施例における磁気処理の具体的な効果に関し、水色の変化および赤錆の採取重量について調べた。水色の変化については、上記の磁気式水処理装置1を装着した配管に水を供給する水道の蛇口を止めてから、48時間経過した後に水を開放した時の水色の変化を目視により観察した。
また、赤錆の採取重量については、30日間にわたり上記水道水を流し続けたときに、配管10の下流から採取できた赤錆(赤錆微粒)の重量を測定した。結果を表1に示す。
【0038】
比較例1
図2に示す如き磁気式水処理装置(即ち、第2の磁石4a,4bのない磁気式水処理装置)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして水道水の配管10内を1.9〜2.0m/s前後の流速で流れる液体(水道水)を磁気処理した。
配管出口の水のpH、表面張力の測定結果を表1に示す。また、磁性体ブロック3a,3b表面の磁力及び配管中心部の磁力を、ガウスメーター(カネテック社製)にて測定した。結果を合わせて表1に示す。
また、実施例1と同様にして、水色の変化を観察し、赤錆の採取重量を測定した。結果を表1に示す。
【0039】
【表1】

【0040】
表1が示すように、実施例1の磁気式水処理装置1を用いて磁気処理された水道水(配管10の中心部において240mTの強さの磁力処理をした場合)、磁気処理後の水道水のpHは7.08を、酸化還元電位(ORP)は275mVを示した。特に、酸化還元電位(ORP)に関しては、比較例1の磁気式水処理装置で処理された水道水(配管10の中心部において125mTの強さの磁力処理をした場合)や、未処理の水道水に比べて、低下することが観測された。
【0041】
また、実施例1の磁気式水処理装置1を用いた場合の配管10への具体的な効果として、水色の変化と赤錆の微細粒の採取重量の変化が認められた。
即ち、前記蛇口を止め48時間後に開放した時において、実施例1の磁気式水処理装置1を用いた場合では、水の色が赤錆色になっていることが観察されたが、比較例1の磁気式水処理装置を用いた場合には、水の色が薄い錆色にしかなっていないことが観察された。
また、30日間にわたり前記水道水を流し続けた時において、実施例1の磁気式水処理装置1を用いた場合では、1.8gの赤錆(赤錆微粒)が採取されたが、比較例1の磁気式水処理装置を用いた場合には、1.1gの赤錆(赤錆微粒)しか採取されなかった。
【0042】
この結果は、実施例1の磁気式水処理装置1で磁気処理された水(配管10の中心部において240mTの強さの磁力処理をした場合)が流れた配管10では、比較例1の磁気式水処理装置で処理された水道水(配管10の中心部において125mTの強さの磁力処理をした場合)に比べて、赤錆が付着しにくく、溶出および乖離しやすい状態になっていることを示している。
なお、この原因としては、酸化還元電位(ORP)の低下によって、赤錆の原因である二価の酸化鉄が、三価の酸化鉄である黒錆に変化しやすい状態になっていると考えられる。さらに、この黒錆が配管の内壁に酸化皮膜を形成している状態になっている可能性も推測される。
【0043】
実施例2
実施例1と同様に磁気処理した水道水180Lをタンクに貯水し、当該磁気処理水を貯水してから24時間後に家庭用雑排水パイプに放水した時の、側溝における臭気の発生の有無を調査した。なお、当該磁気処理水の放水前においては、側溝からは雑排水の臭気が確認された。
【0044】
この結果、当該磁気処理水の放水後において、側溝よりの雑排水の臭気が消失することが観察された。
なお、その後、当該磁気処理水の放水を停止した後においては、再び臭気が発生することが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、磁力の強い磁気処理装置を安価に提供することができ、配管等の内壁のスケール、錆などの生成抑制および除去を極めて効率よく行うことができる。
従って、本発明は、水処理の分野等で有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の磁気式水処理装置の一態様を配管に装着した状態を示す、配管の長手方向に対する横断面図である。
【図2】比較例1で用いた市販の磁気式水処理装置を配管に装着した状態を示す、配管の長手方向に対する横断面図である。
【図3】本発明の磁気式水処理装置の一態様を配管に装着した状態を示す、配管の長手方向に対する横断面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 磁気式水処理装置
2 第1の磁石
3a,3b 磁性体ブロック
4a,4b 第2の磁石
5(5a,5b) 構造体
10 配管
11 バンドグリップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が流れる配管の周囲に、第1の磁石と;前記第1の磁石と接触し、且つ、互いに接触しない位置に設置された2つの磁性体ブロックと;前記2つの磁性体ブロックの各々において、前記磁性体ブロックの各々と接触し、且つ、前記第1の磁石と接触しない位置であって、前記配管の外周面と接触する位置に、前記第1の磁石が前記磁性体ブロックと接触している部位の極性とは逆の極性が前記磁性体ブロックに接触している部位の極性となるように設置固定された2つの第2の磁石と;からなる構造体を、前記配管を挟んで向き合うように一対、又はこれを複数対配置してなる、配管内を流れる液体を磁気処理する装置。
【請求項2】
前記構造体を一対配置してなる、請求項1に記載の配管内を流れる液体を磁気処理する装置。
【請求項3】
前記第2の磁石における前記配管の外周面と接触する部位が、前記配管の外周面の形に応じたR形状である、請求項1又は2のいずれかに記載の配管内を流れる液体を磁気処理する装置。
【請求項4】
一対又は複数対の前記構造体を、前記配管を挟んで向き合うように配置したときに、前記第2の磁石が、前記配管の外周面に沿って略等間隔に配置されるように、前記磁性体ブロックに設置固定されている、請求項1〜3のいずれかに記載の配管を流れる液体を磁気処理する装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2009−66544(P2009−66544A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−238892(P2007−238892)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【特許番号】特許第4056556号(P4056556)
【特許公報発行日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【出願人】(501462941)有限会社中澤製作所 (2)
【Fターム(参考)】