説明

配管用フロアバンド

【課題】バンドが傾斜した状態でも、配管パイプを確実に固定、保持できるようにした配管用フロアバンドを提案する。
【解決手段】床面に固定可能な基台と、この基台に立設する一対のボルトと、各ボルトに螺合する下側ナットと、ボルト通しを介して前記各ボルトに挿通し、配管パイプを挟定可能な下側バンド及び上側バンドからなるバンドと、前記各ボルトに螺合して前記上側バンドを上方から締め付ける上側ナットとで構成する配管用フロアバンドであって、上記下側ナット及び上側ナットが、その上記バンドと当接する面に球面状のドーム部を有するという手段を採用した。そして、傾斜した上記下側バンド及び上側バンドに対して上記下側ナット及び上側ナットをそれぞれ締め付けることによって、上記各ナットの球面状のドーム部の球状面が、上記各バンドに設けたボルト通しの内側角部に接触するという手段を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管や排水管などの配管パイプを床面から一定高さに固定するために用いる配管用フロアバンドに関するもので、特にわずかな勾配を有する配管パイプを確実に固定、保持できるようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に、配管用フロアバンドは、床面に固定可能な基台と、この基台に所定の間隔をおいて立設する一対のボルトと、このボルトに挿通し配管パイプを上下から挟定する一対の湾曲したバンドと、前記各ボルトに螺合して上下一対のバンドを上下方向から締め付ける二対のナットとから構成される(例えば、特許文献1参照)。そして、複数のフロアバンドを所定距離を置いて床面に列設し、これらに配管パイプを固定、保持している。
【0003】
従来の配管用フロアバンドは、上記構成から、ボルトは垂直方向に立設され、これに取付けるバンド及びナットは水平状態で上下に移動可能に設けられるから、これに取付ける配管パイプも、基本的には水平状態に固定、保持されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−47542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような配管用フロアバンドを使用して配管を行う場合、実際には、水の滞留を防止するためにわずかに勾配を持たせて配管する。即ち、隣合う2つの配管用フロアバンドでは、バンドの床面からの高さが少し異なることになる。この場合、図4に示すように、パイプを挟持するバンド(イ)は、ボルト(ロ)の挿通孔に大きさの余裕があるので、配管パイプ(P)の軸方向に沿って、少し傾くことになる。一方、ボルト(ロ)は垂直方向に起立しており、バンド(イ)を押さえるナット(ハ)は水平面で上下動するから、バンド(イ)とナット(ハ)の当接面が一致せず、ナット(ハ)の一部分でしかバンドを押さえていないことになる。そのため、パイプ(P)の挟持が不安定となるので、配管ずれ等の各種障害を引き起こす要因ともなっている。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑み発明をしたものであって、この種の配管用フロアバンドにおいて、新規な形状のナットを採用することにより、バンドが傾斜した状態でも、配管パイプを確実に固定、保持できるようにした配管用フロアバンドを提案することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、床面に固定可能な基台と、この基台に立設する一対のボルトと、各ボルトに螺合する下側ナットと、ボルト通しを介して前記各ボルトに挿通し、配管パイプを挟定可能な下側バンド及び上側バンドからなるバンドと、前記各ボルトに螺合して前記上側バンドを上方から締め付ける上側ナットとで構成する配管用フロアバンドであって、上記下側ナット及び上側ナットが、その上記バンドと当接する面に球面状のドーム部を有するという手段を採用した。
【0008】
そして、傾斜した上記下側バンド及び上側バンドに対して上記下側ナット及び上側ナットをそれぞれ締め付けることによって、上記各ナットの球面状のドーム部の球状面が、上記各バンドに設けたボルト通しの内側角部に接触するという手段を採用した。
【0009】
かかる構成の配管用フロアバンドは、各ナットの球面状のドーム部がバンドと当接し、配管パイプが勾配を持って設置される場合も、バンドの傾斜に従って各ナットのドーム部の球状面がバンドのボルト通しに当接するので、確実にバンドを締め付け、配管パイプを固定、保持するものである。
【0010】
また、上記上側バンドにおいて、一方のボルト通しには長手方向に開通する切り欠きを設け、他方のボルト通しにはL字状で側方に開通する切り欠きを設けるという手段を採用した。
【0011】
これにより、上側ナットを螺着した状態でも、上側バンドを配管パイプを挟定するように設置できる。
【発明の効果】
【0012】
上記構成に係る本発明の配管用フロアバンドは、ナットのバンドとの当接面に半球状のドーム部を設けているので、バンドが勾配を持って設置される場合も、その方向きに応じてナットがバンドに当接し、バンドを締め付けて、確実に配管パイプを固定、保持できるものである。
【0013】
また、半球状のドーム部の頭頂部が、バンドに設けたボルト通しに係入するようにしたので、ドーム部の球状面と、ボルト通しの開口縁全周が互いに当接し、ナットの締め付け時に均等に締付力が作用し、安定した挟持を実現できるものである。
【0014】
さらに、上側バンドのボルト通しに切り欠きを設けたことにより、上側ナットを螺着した状態でも、上側バンドをボルトに係着することが可能となるものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る配管用フロアバンドの使用状態を示す側面図である。
【図2】バンドとナットの係合状態の説明図である。
【図3】(A)は上側バンドの斜視図、(B)は配管用フロアバンド全体の斜視図である。
【図4】従来の配管用フロアバンドの使用状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る配管用フロアバンドの好ましい実施形態を、添付した図面について説明する。図1から図3において、1は、釘やネジ(図示せず)などを固定用通孔1a、1aに挿通して床面に固定可能な基台、2、2は、この基台1に所定の間隔をおいて垂直方向に並行して立設するボルトで、それぞれの基部をナット3、3で上記基台1に固定している。
【0017】
4は、中央部分をブリッジ状に湾曲したバンドで、下側バンド4aと上側バンド4bで一対になっている。このバンド4の湾曲部分で配管パイプ(P)を挟定するものである。なお、下側バンド4aの両端部にはボルト通し5、5が穿設され、それぞれ上記ボルト2、2に挿通されている。一方、上側バンド4bにおいて、両端部のボルト通し6、6には、図3(A)に示すように切り欠き6a、6bを設けている。即ち、一方の切り欠き6aは、上側バンド4bの長手方向に開通し、他方の切り欠き6bはL字状として側方に開通している。このようにボルト通し6に切り欠き6a、6bを設けるのは、下述するナットをボルトに螺合したままで、即ち、ボルト2、2から外さないで上側バンド4bの着脱を可能とするものである。つまり、この上側バンド4bは、先ず長手方向に開通する切り欠き6aを一方のボルト2に挿通し、その挿通部分を中心に上側バンド4bを回転させることで、側方のL字状の切り欠き6bを他方のボルトに挿通し、続けて、長手方向に移動、係止させるようにすれば、ナットを逐一外さなくても下側バンド4aとの間に配管パイプを挟定することが可能となる(図3(B))。
【0018】
次に、7、7は上記ボルト2、2に螺合して上記下側バンド4aを支承する下側ナット、8、8は同じく上記ボルト2、2に螺合して上記上側バンド4bを締め付ける上側ナットである。下側ナット7は、予め、配管パイプ(P)を所望の高さに配設するため、定められた位置に螺着されている。一方、上側ナット8は、上記バンド4でパイプを挟定するため、徐々に締め付けていくものである。両ナット7、8はいずれも同じ形状を有しており、特に図2に明確に表れているように、上記下側バンド4a及び上側バンド4bと当接する面に球面状のドーム部7a、8aを形成したものである。このドーム部7a、8aの径は、上記バンド4のボルト通し5、6の径よりわずかに大きくし、そのドーム部の球状面がボルト通し5、6の内側角部に接触するようになっている。
【0019】
上記構成に係る配管用フロアバンドの使用方法は、基本的に従来と変わることはない。即ち、先ず、基台1を床面の所定位置に固定する。次に、下側ナット7、7をボルト2、2に螺合し、配管パイプの設置高さを決定する。そして、下側バンド4aのボルト通し5にボルト2を挿通し、下側ナット7、7上に下側バンド4aを架設、載置する。次に、下側バンド4aの湾曲部分に配管パイプを設置し、その上から上側バンド4bのボルト通し6にボルト2を挿通し、配管パイプを挟定する。最後に、上側ナット8、8を螺合して締め付け、配管パイプを上下のバンドで確実に、固定、保持する。この場合、上述したように上側バンド4bは、上側ナット8、8の螺合の後でもボルト2に係着可能である。そして、上側ナット8、8を締め付けるとき、下述するように、上下のナット7、8には、バンド4との当接面に球面状のドーム部7a、8aを形成しているので、このドーム部7a、8aの球状面が、バンド4のボルト通し5、6の内側角部に接触してバンド4を上下方向から締め付け、配管パイプを固定、保持できるのである。
【0020】
次に、ナット7、8の球面状のドーム部7a、8aの作用について説明する。上述したように、実際の配管時には、配管パイプ(P)は、流れを確保するため、図1に示すように、わずかに勾配を有して配管される。従って、配管パイプ(P)を挟定するバンド4は配管パイプ(P)の軸方向と並行して傾くが、ボルト2、2に対してボルト通し5、6はその直径に余裕があるため、垂直に立設するボルト2に対してわずかに傾斜した状態で挿通されることになる。即ち、バンド4は、最初は図2(A)に示すように、水平状態であるが、ナット8を締め付けていくと、配管パイプ(P)の傾きに従って、次第に傾斜していくことになる。このとき、従来の平面状のナットではこの傾きに追従することができず、図4に示したように、ナット(ハ)の一部しかバンド(イ)に接することができないので、バンド(イ)の締め付けが十分ではなかった。これに対して、本発明に係る上記ナット7、8は、ボルト通し5、6の内側角部に対して、球面状のドーム部7a、8aの球状面が接触しているので、バンド4が傾くに従って、ボルト通し5、6の内側角部がドーム部7a、8aの球状面に従って摺動し、図2(B)に示すように、バンド4が傾斜した状態でも、ボルト通し5、6の内側角部の一部または全部が上記ドーム部7a、8aと接することになる。そのため、ボルト7、8を締め付けても、バンド4との係合は一定に維持され、平均した力でバンド4を締め付けることができ、確実に配管パイプ(P)を固定、保持できるのである。
【符号の説明】
【0021】
1 基台
1a 固定用通孔
2 ボルト
3 ナット
4 バンド
4a 下側バンド
4b 上側バンド
5 ボルト通し
6 ボルト通し
6a 切り欠き
6b 切り欠き
7 下側ナット
7a ドーム部
8 上側ナット
8a ドーム部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面に固定可能な基台と、この基台に立設する一対のボルトと、各ボルトに螺合する下側ナットと、ボルト通しを介して前記各ボルトに挿通し、配管パイプを挟定可能な下側バンド及び上側バンドからなるバンドと、前記各ボルトに螺合して前記上側バンドを上方から締め付ける上側ナットとで構成する配管用フロアバンドであって、上記下側ナット及び上側ナットが、その上記バンドと当接する面に球面状のドーム部を有することを特徴とする配管用フロアバンド。
【請求項2】
傾斜した上記下側バンド及び上側バンドに対して上記下側ナット及び上側ナットをそれぞれ締め付けることによって、上記各ナットの球面状のドーム部の球状面が、上記各バンドに設けたボルト通しの内側角部に接触する請求項1記載の配管用フロアバンド。
【請求項3】
上記上側バンドにおいて、一方のボルト通しには長手方向に開通する切り欠きを設け、他方のボルト通しにはL字状で側方に開通する切り欠きを設けた請求項1又は請求項2記載の配管用フロアバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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