説明

配管用厚さ測定装置

【課題】管径の異なる多数種類の配管に対して線源と検出部とを結ぶ線が配管のほぼ中心を通るような正確な装着を実現し、使い勝手の向上および計測精度の向上を共に図るような配管用厚さ測定装置を提供する。
【解決手段】線源取付部100とセンサ取付部300とはそれぞれ二箇所のローラを介して配管10と当接させ、締結ベルト200で配管10の外周を締め付けて固定する。締結ベルト200は、凹凸面で嵌め合わせ可能に形成されており、先端部が一致していれば、配管10との接触箇所の長さが同じ長さとなり、このとき放射線は配管10の中心を経てセンサの検出部へ到達し、正確な配管10の厚さを測定できる配管用厚さ測定装置1となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の肉厚を測定するための配管用厚さ測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
配管用厚さ測定装置に係る従来技術として、例えば、特許文献1(特開平11−201744号公報,発明の名称:管の内壁付着物厚さの測定方法およびその測定装置)に記載された発明が知られている。
特許文献1には、測定対象となる測定管と交差しかつその中心を通る線上に、放射線を発する線源とこの線源からの放射線量を検出するためのセンサとを、当該測定管を挟んで対向配置し、この測定管を透過した透過放射線量をセンサで検出する構成の測定装置が記載されている。この際、線源およびセンサは特許文献1の図2に示されるような測定治具を介して測定管に装着する。同様にして、測定の基準となる対比管の透過放射線量を測定し、この透過放射線量と測定管の透過放射線量とから測定管の内壁付着物の厚さを求めている。
【0003】
【特許文献1】特開平11−201744号公報 (段落番号0027〜0031,図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の測定装置では、測定管に装着するための測定治具を用いているが、測定治具の半円状の挟持片は長さが変更できないため、ある特定の直径の測定管にしか装着できないという問題があった。また、管径が異なる多数の配管用に準備された複数種類の測定治具を使い分ける場合、線源とセンサとを別の測定治具に付け替える必要があり使い勝手も悪かった。
【0005】
また、放射線を発する線源とこの線源からの放射線量を検出するためのセンサとを、測定対象となる測定管と交差しかつその中心を通る線上に、当該測定管を挟んで対向配置する必要があるが、測定治具に線源とセンサとを付け替えるときに取付け位置がずれてしまい、測定時に線源とセンサとを結ぶ線が測定管の中心を通らなくなり、正確な測定ができないおそれがあった。特に測定管の内壁付着物の厚さを求める場合のように厳密さを考慮しなくても良い場合はともかく、例えば配管の減肉のような場合は減肉箇所からの破裂等事故につながるおそれもあるため、特に正確に求める必要があった。
【0006】
このような本発明の目的は、管径の異なる多数種類の配管に対して線源と検出部とを結ぶ線が配管のほぼ中心を通るような正確な装着を実現し、使い勝手の向上および計測精度の向上を共に図るような配管用厚さ測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の請求項1に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
二個の配管当接部および線源を有する線源取付部と、
二個の配管当接部およびセンサを有するセンサ取付部と、
一端に先端部が、また他端にベルト取付部がそれぞれ形成された一対の締結ベルトと、
線源取付部に設けられ、一対の締結ベルトのベルト取付部がそれぞれ取付けられる一対の被取付部と、
センサ取付部に設けられ、先端部を合わせた一対の締結ベルトを挟み込み、ベルト取付部からの締結ベルトの長さを両側で等しくしつつ配管に固定するベルト固定部と、
を備え、
配管への締結時に二個の配管当接部を結ぶ線の中心を通過する垂線上に配管の中心、線源およびセンサが位置するとともに、線源からの放射線が配管の中心を通過してセンサへ入射するように、線源取付部およびセンサ取付部が配管を挟んで対向して位置決めされることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の請求項2に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記の一対の締結ベルトは、先端を合わせて嵌め合わせ可能にする凹凸部が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項3に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1または請求項2に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記線源取付部および前記センサ取付部の配管当接部はともに回転可能に支持された一または複数のガイドローラであることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項4に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記ベルト固定部は、
先端を合わせた一対の締結ベルトを挟み込む一対の挟み込みローラと、
一対の挟み込みローラを回転させて締結ベルトを移動させ、配管に締結ベルトを密着させる回転部と、
一対の挟み込みローラを固定させて締結ベルトの移動を固定する固定部と、
を備えることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項5に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記線源取付部は、線源位置を移動させる線源移動ホルダを備え、かつ前記センサ取付部はセンサ位置を移動させるセンサ移動ホルダを備え、線源からの放射線をセンサへ直接入射する位置へ線源移動ホルダおよびセンサ移動ホルダを移動させて校正データを取得することを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項6に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
線源と、一定方向の放射線を通過させるコリメータと、を備える線源収容部を、コリメータの長さを変えて複数準備し、前記線源取付部に対して最適長さのコリメータを有する線源収容部を取付けることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項7に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記センサは測定装置本体と一体に設けられ、前記センサ取付部は測定装置本体を併せて保持することを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項8に係る発明の配管用厚さ測定装置は、
請求項7に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記測定装置本体は、前記線源取付部および前記センサ取付部の取付け位置を決定する基準となる位置決め部を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
以上のような本発明によれば、管径の異なる多数種類の配管に対して線源と検出部とを結ぶ線が配管のほぼ中心を通るような正確な装着を実現し、使い勝手の向上および計測精度の向上を共に図るような配管用厚さ測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
続いて、本発明を実施するための最良の形態について、図を参照しつつ説明する。図1は本形態の配管用厚さ測定装置の説明図、図2は線源取付部の説明図、図3は線源収容部の説明図であり、図3(a)は斜視外観図、図3(b)は断面図である。図4はセンサ取付部の説明図であり、図4(a)は斜視外観図、図4(b)はベルト固定部の説明図である。
【0017】
配管用厚さ測定装置1は、図1で示すように線源取付部100、締結ベルト200、センサ取付部300を備える。
線源取付部100は、図2で示すように、線源収容部110、線源移動ホルダ120、ブラケット130、配管当接部140を備える。
線源収容部110は、図3(a),(b)で示すように収容部本体111、フックフランジ112、コリメータ113、線源114、ねじ115を備える。
【0018】
収容部本体111は、線源114を内部に収容する。収容部本体111では、図3(b)のように、蓋部111a、充填部111b、中間部111c、充填部111dを備え、これらは放射線を透過させない材料、例えば鉛で形成された部材であり、線源114から放射される放射線がコリメータ113以外から放射されないようにしている。
フックフランジ112は、後述するアダプタベース124への固定に用いられる。
コリメータ113は、充填部113aにより放射線路113bが形成され、線源114から垂直方向(図では上下方向)に入射してきた放射線だけを通過させる機能を有している。このコリメータ113により放射線が指向性を有することとなる。ここで図1や図5(a)で示したような配管の径方向および接線方向による基準系で表すと、放射線の放射方向は、配管の径方向と一致する。これにより、図1で示す配管の径方向へ限定して放射線を照射する。
線源114は、先に述べたように放射線を放射する。
【0019】
このような線源収容部110では、コリメータ113の長さを変えた多数種類の線源収容部110を準備しておき、測定対象となる配管の管径に応じてコリメータ113の開口部と配管との隙間が少なくなるような線源収容部110を選択することで、放射線漏れによる外部への影響を回避することができる。
【0020】
線源移動ホルダ120は、図2で示すように、支持片121、軸部122、可動片123、アダプタベース124を、また、図3(a)で示すようにフックボルト125、ホルダ取付孔124aを備える。
支持片121は、ブラケット130に固定され、配管の接線方向に伸びる部材である。
軸部122は、支持片121の先端に取付けられ、可動片123を回転させる。軸部122は、配管の半径方向と略平行に伸びる軸である。
【0021】
可動片123は、軸部122を中心に回転し、線源収容部110を移動させる。線源収容部110は配管の径方向の線上と、管から外れた位置と、への二箇所に移動する。
アダプタベース124は、詳しくは、図2,図3(a)で示すように、ホルダ取付け孔124aを通過したねじ(図示せず)により可動片123に取付けられる。
フックボルト125は、フックフランジ112を通過した状態で締結されてアダプタベース124に線源収容部110を取付ける。フックボルト125でフックフランジ112を固定・解放することで線源収容部110を容易に交換することができる。
【0022】
ブラケット130は、図2で示すように、ブラケット本体131、切り欠き部131a、突設片131bを備える。
ブラケット本体131は、本形態では断面コ字状の部材であり、充分な厚みを持たせて堅牢な構造としている。なお、ブラケット本体131は、本形態のように断面コ字状に限定する必要はなく、支持片121を固定でき、配管当接部140を二個取付けられる構造体であればよい。
【0023】
配管当接部140は、図2で示すように、ガイドローラ141、ローラ支軸142を備える。
ガイドローラ141は、例えばゴム製のローラである。
ローラ支軸142は、ブラケット130の上下の突設片131bに渡されて一本取付けられている。さらにこのようなローラ支軸142は接線方向に並べられて二本配置されている。
一個の配管当接部140は、一本のローラ支軸142とその上下で二個のガイドローラ141が配置された構成となり、このような配管当接部140が接線方向に並べられて配置される。
【0024】
締結ベルト200は、図2,図4(a)で示すように、二種あり、一方は歯付ベルト201、着脱用フック202、先端部203(図4(a))を備える。他方は歯付ベルト201、先端部203(図4(a))、ベルト遊支部204を備える。
歯付ベルト201は一方の面に形成された歯により凹凸面が形成されているベルトである。この凹凸面は図で示すように先端部を合わせた場合(図4(a)の先端部203参照)に両側の先端が一致して嵌め込まれるように調節して形成されている。なお、この歯付ベルト201以外にも各種のスリップレスベルトなどを採用することができる。
着脱用フック202は、本発明のベルト取付部の具体例であって、本発明の被取付部を兼ねる一方のローラ支軸142に着脱されるフックであり、締結ベルト200が配管の回りを一周した状態とする。
先端部203は、図4(a)で示すように、その先端を合わせて一致させつつ凹凸面を噛合わせることで一対の締結ベルト200の取付け位置を決定できる。
ベルト遊支部204は、本発明のベルト取付部の具体例であって、本発明の被取付部を兼ねる他方のローラ支軸142に回転自在に遊支された状態で取付けられるものであり、ベルトを巻回して先端に形成した孔部である。
【0025】
続いてセンサ取付部300は、図4(a)で示すように、センサ310、センサ移動ホルダ320、ブラケット330、配管当接部340、ベルト固定部350を備え、また、図1で示すように、測定装置本体360、位置決め部370、位置表示ラベル380を備える。
センサ310は、図4(a)で示すように、円柱形状であって、その先端に検出部311が配置されている。
センサ移動ホルダ320は、支持片321、軸部322、可動片323を備える。
支持片321は、ブラケット330に固定されており、配管の接線方向に伸びる部材である。
軸部322は、支持片321の先端に取付けられ、可動片323を回転させる。軸部322は、配管の径方向と略平行な軸である。
【0026】
可動片323は、軸部322を中心に回転し、センサ310を移動させる。可動片323の移動により、センサ310の検出部311は配管の径上と、管から外れた位置と、への二箇所に移動する。
【0027】
ブラケット330は、ブラケット本体331、切り欠き部331a、突設片331bを備える。
ブラケット本体331は、本形態では断面コ字状の部材であり、充分な厚みを持たせて堅牢な構造としている。なお、ブラケット本体331は、本形態のように断面コ字状に限定する必要はなく、支持片321を固定でき、ベルト固定部350を収容し、配管当接部340を二個取付けられる構造体であればよい。
【0028】
配管当接部340は、ガイドローラ341、ローラ支軸342を備える。
ガイドローラ341は、例えばゴム製のローラである。
ローラ支軸342は、ブラケット330の上下の突設片331bに渡されて一本取付けられている。さらにこのようなローラ支軸342は接線方向に並べられて二本配置されている。
一個の配管当接部340は、一本のローラ支軸342とその上下で二個のガイドローラ341が配置された構成となり、このような配管当接部340が接線方向に並べられて配置される。
【0029】
ベルト固定部350は、案内シャフト351、挟み込みローラ352、噛み合わせギヤ353、回転ツマミ354、ロックプレート355、固定ハンドル356を備えている。
案内シャフト351は、ブラケット330の上下方向に渡されて2本設けられており、図4(b)で示すように挟み込みローラ352まで締結ベルト200を誘導する。
【0030】
挟み込みローラ352は、ブラケット330の上下方向に渡された図示しないシャフトにより回転自在に構成されており、図4(b)で示すように隣り合う一対の挟み込みローラ352により締結ベルト200を挟み込んで固定する。表面には滑り止めとなる凹凸面や粗面が形成されており締結ベルト200を滑らせないようにする。
噛み合わせギヤ353は、挟み込みローラ352と一体に構成され、隣りあう噛み合わせギヤ353と噛合っている。これにより、一方の挟み込みローラ352が移動や停止をすると、他方の挟み込みローラ352も連動して移動や停止をする。
【0031】
回転ツマミ354は、本発明の回転部の一具体例であり、一方の挟み込みローラ352を回転させて、締結ベルト200を移動させる。
ロックプレート355は、片持ち梁であり、自由端が上下に移動する。
固定ハンドル356は、本発明の固定部の一具体例であり、回転とともにロックプレート355の自由端を上下動させる部材であり、固定方向に固定ハンドル356を回転させるとロックプレート355が下降して挟み込みローラ352を押圧して回転しないように固定し、解放方向に固定ハンドル356を回転させるとロックプレート355が上昇して挟み込みローラ352を解放して回転可能とする。この固定ハンドル356は、図1のハンドル固定部356aに対して着脱自在に構成されており、締結時にのみ固定ハンドル356を取付けて固定するようにしている。
【0032】
測定装置本体360は、図1で示すように、検出部311から検出信号を入力して各種測定を行う。
位置決め部370は、図1で示すように、測定装置本体360に一体に形成されたレンズであり、図のような白抜き十字状の枠が形成されている。
位置表示ラベル380は、黒十字が図示されている。この位置決め手法については後述する。
【0033】
続いて配管用厚さ測定装置の使用方法について図を参照しつつ説明する。図5は配管用厚さ測定装置の使用の説明図であり、図5(a)は小径配管への取付けの説明図、図5(b)は校正の説明図である。図6は位置決め原理の説明図である。図7は大径配管への取付けの説明図である。ここでは、図5(a)で示すような小径の配管に設置するものとして説明する。
まず、配管に配管用厚さ測定装置1を設置するため、図2で示すように、着脱用フック202をローラ支軸142に係止して、配管の回りを覆うように配管用厚さ測定装置1を配管に仮設置する。この際、締結ベルト200は弱い力で配管を締結しているため、設置位置の変更が可能な状態である。この配管には、図1のように位置表示ラベル380が予め貼られているものとする。
【0034】
続いて、位置決め部370を介して位置表示ラベル380を見て、位置表示ラベル380の黒十字に位置決め部370の白抜き十字状の枠が一致するように位置決めされる。これによりセンサ取付部300の上下方向は配管の上下方向と略平行になる。これは放射線の放射方向が水平面内にあることを意味する。
このような状態を維持しつつ、図4(a)で示すように、回転ツマミ354を回転させると、噛合わせギヤ353により両側の挟み込みローラ352が回転して締結ベルト200を矢印A方向に移動させて、図1,図5(a)で示すように、配管に締結ベルト200を強固に密着させる。その後、固定ハンドル356を回転させて挟み込みローラ352が移動しないように固定する。
【0035】
ここで一対の締結ベルト200の先端部203(図4(a),(b)参照)を左右で同じ位置に合わせかつそれぞれの凹凸面を嵌め合わせており、図5(a)で示すように、ベルト遊支部204からベルト固定部350までの締結ベルト200の弧の長さ、および、着脱用フック202からベルト固定部350までの締結ベルト200の弧の長さは、共にL1となっている。
【0036】
例えば、図6で示すように、二個のガイドローラ141を結ぶ線aの中心を通過する垂線は配管の中心を通過し、また、二個のガイドローラ341を結ぶ線a’の中心を通過する垂線も配管の中心を通過する。ここで、ガイドローラ141からガイドローラ341までの弧の長さLは両者で同じであるため、両方の垂線は、共通のものとなり、配管の中心を通過するような垂線上にある線源収容部110の線源114からの放射線がセンサ310の検出部311へ入射することとなる。このため、線源取付部100における線源収容部110の線源114の放射方向は、配管と交差しかつその中心を通る線上にあり、センサ取付部300におけるセンサ310の検出部311もこの線上にあるため、ベルト締結を行うだけで正確な位置決めが実現されている。
【0037】
また、配管当接部140,340ではガイドローラ141,341による点接触としているので、図7で示すように大径の配管でも同様に点接触することとなり、締結ベルト200の配管への接触箇所の長さが可変なことと相まって、配管の径の大小によらずに当接させることができる。これは従来技術のような面接触の保持装置では配管の径の変化に対処できなかったことと比較しても、優れている。
配管への配管用厚さ測定装置1の設置はこのようにして行われる。
【0038】
続いて計測を行う。まず最小に校正を行う。図5(b)で示すように、線源取付部100の可動片123を回動させて線源取付部100の線源移動ホルダ120の線源位置を、また、センサ取付部300の可動片323を回動させてセンサ取付部300のセンサ移動ホルダ320のセンサ位置を、ともに移動させ、線源収容部110のコリメータ113と、センサ310の検出部311が対向した状態となってコリメータ113からの放射線が検出部311へ直接入射され、配管に影響されないバックグラウンドノイズおよび放射線による校正データを取得することができる。この際、線源収容部110から検出部311までの距離は移動に拘らず一定であり、この点で良好な校正データとすることができる。
【0039】
後は、図5(a)の状態まで戻して測定装置本体360を操作して検出開始し、検出データから校正データを減じて係数を乗じれば配管の厚さが算出され、測定装置本体360の表示部で表示することができる。本形態の配管用厚さ測定装置1では、配管の肉厚が減った場合や、配管内部に付着物が付着した場合のように厚さの増減を検出することができる。検出後は、固定ハンドル356により固定を解除し、回転ツマミ354を操作して締結ベルト200による締結を緩め、着脱用フック202をローラ支軸142から外して配管用厚さ測定装置1を配管から取り外し、検出作業は終了する。
【0040】
以上説明したような本発明による配管用厚さ測定装置1によれば、配管に対して締結ベルト200で巻き付けつつ着脱用フック202を引っ掛けて仮固定し、回転ツマミ354を回転させて締結ベルト200で配管に対して固定できるため、配管用厚さ測定装置1の設置は容易である。
また、設置時に放射線が配管の中心を通過するように位置決めが行われるため、配管厚さを正確に測定できる。
また、二個の配管当接部140および二個の配管当接部340ではともに二箇所で接するようにしているため、図5(a)や図7で示すように管径が異なるような場合でも、配管の外周に容易に設置できる。特に本形態では上下二個のガイドローラを接線方向に並べて四個配置した構成であるたため、四箇所での点接触であり、従来の弧状の接触片のように面接触ではないため、配管の管径や配管の状態(小さい凹凸があるなど)に影響されないで位置決めすることができる。
これにより配管用厚さ測定装置1は測定可能最小径から測定可能最大径までの配管に対して厚さを測定できるものとなり、利便性を向上させた。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明を実施するための最良の形態の配管用厚さ測定装置の説明図である。
【図2】線源取付部の説明図である。
【図3】線源収容部の説明図であり、図3(a)は斜視外観図、図3(b)は断面図である。
【図4】センサ取付部の説明図であり、図4(a)は斜視外観図、図4(b)はベルト固定部の説明図である。
【図5】配管用厚さ測定装置の使用の説明図であり、図5(a)は小径配管への取付けの説明図、図5(b)は校正の説明図である。
【図6】位置決め原理の説明図である。
【図7】大径配管への取付けの説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1:配管用厚さ測定装置
100:線源取付部
110:線源収容部
111:収容部本体
111a:蓋部
111b:充填部
111c:中間部
111d:充填部
112:フックフランジ
113:コリメータ
114:線源
115:ねじ
120:線源移動ホルダ
121:支持片
122:軸部
123:可動片
124:アダプタベース
124a:ホルダ取付孔
125:フックボルト
130:ブラケット
131:ブラケット本体
131a:切り欠き部
131b:突設片
140:配管当接部
141:ガイドローラ
142:ローラ支軸
200:締結ベルト
201:歯付ベルト
202:着脱用フック
203:先端部
204:ベルト遊支部
300:センサ取付部
310:センサ
311:検出部
320:センサ移動ホルダ
321:支持片
322:軸部
323:可動片
330:ブラケット
331:ブラケット本体
331a:切り欠き部
331b:突設片
340:配管当接部
341:ガイドローラ
342:ローラ支軸
350:ベルト固定部
351:案内シャフト
352:挟み込みローラ
353:噛み合わせギヤ
354:回転ツマミ
355:ロックプレート
356:固定ハンドル
360:測定装置本体
370:位置決め部
380:位置表示ラベル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二個の配管当接部および線源を有する線源取付部と、
二個の配管当接部およびセンサを有するセンサ取付部と、
一端に先端部が、また他端にベルト取付部がそれぞれ形成された一対の締結ベルトと、
線源取付部に設けられ、一対の締結ベルトのベルト取付部がそれぞれ取付けられる一対の被取付部と、
センサ取付部に設けられ、先端部を合わせた一対の締結ベルトを挟み込み、ベルト取付部からの締結ベルトの長さを両側で等しくしつつ配管に固定するベルト固定部と、
を備え、
配管への締結時に二個の配管当接部を結ぶ線の中心を通過する垂線上に配管の中心、線源およびセンサが位置するとともに、線源からの放射線が配管の中心を通過してセンサへ入射するように、線源取付部およびセンサ取付部が配管を挟んで対向して位置決めされることを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記の一対の締結ベルトは、先端を合わせて嵌め合わせ可能にする凹凸部が形成されていることを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記線源取付部および前記センサ取付部の配管当接部はともに回転可能に支持された一または複数のガイドローラであることを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記ベルト固定部は、
先端を合わせた一対の締結ベルトを挟み込む一対の挟み込みローラと、
一対の挟み込みローラを回転させて締結ベルトを移動させ、配管に締結ベルトを密着させる回転部と、
一対の挟み込みローラを固定させて締結ベルトの移動を固定する固定部と、
を備えることを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記線源取付部は、線源位置を移動させる線源移動ホルダを備え、かつ前記センサ取付部はセンサ位置を移動させるセンサ移動ホルダを備え、線源からの放射線をセンサへ直接入射する位置へ線源移動ホルダおよびセンサ移動ホルダを移動させて校正データを取得することを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
線源と、一定方向の放射線を通過させるコリメータと、を備える線源収容部を、コリメータの長さを変えて複数準備し、前記線源取付部に対して最適長さのコリメータを有する線源収容部を取付けることを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか一項に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記センサは測定装置本体と一体に設けられ、前記センサ取付部は測定装置本体を併せて保持することを特徴とする配管用厚さ測定装置。
【請求項8】
請求項7に記載の配管用厚さ測定装置において、
前記測定装置本体は、前記線源取付部および前記センサ取付部の取付け位置を決定する基準となる位置決め部を備えることを特徴とする配管用厚さ測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−2873(P2008−2873A)
【公開日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−171002(P2006−171002)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【出願人】(000222037)東北電力株式会社 (228)
【出願人】(591083244)富士電機システムズ株式会社 (1,717)
【Fターム(参考)】