説明

配管穴被覆構造

【課題】 なるべく美観を損なうことなく室外から室内により容易に配線を引き込むことが可能な構造を得る。
【解決手段】 配管穴用カバー3は、配管13を挿通させる貫通口14が形成された天板部12と、天板部12の周縁に立設された外周板部15と、を備え、外周板部15に、配管穴2を挿通させた配線4を導出する配線導出口17を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁に設けられた配管穴の開口部を覆う配管穴被覆構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光ファイバ等の配線を室外から室内に引き込む場合、壁に配線専用の穴を設け、この穴に配線を挿通するようにしていた。このとき、壁の内側および外側を被覆するカバーが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開2004−125873号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術では、壁に配線穴を設ける分、手間がかかる上、費用が嵩むという問題があった。
【0004】
また、特に、配線が光ファイバケーブルである場合には、他の金属配線等に比べると最小曲げ半径が大きいため、配線穴の開口部付近では壁に沿って折り曲げることができず、光ファイバが室内側に湾曲して突出し、見栄えが悪くなってしまう場合があった。
【0005】
そこで、本発明は、なるべく美観を損なうことなく室外から室内により容易に配線を引き込むことが可能な構造を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明にあっては、壁に設けられた配管穴の開口部を覆う配管穴用カバーを含む配管穴被覆構造であって、上記配管穴用カバーは、上記配管を挿通させる貫通口が形成された天板部と、上記天板部の周縁に立設された外周板部と、を備え、上記外周板部に、配管穴内を挿通させた配線を導出する配線導出口を設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2の発明にあっては、上記配管穴用カバーは、天板部の貫通口の周縁部から上記外周板部と同方向に立設され、配管穴または配管穴に取り付けられた部材の筒状部分の内面に嵌挿される内周板部を備え、この内周板部に、上記配線を挿通可能な挿通口を設けたことを特徴とする。
【0008】
請求項3の発明にあっては、配管穴に装着され、上記内周板部を内嵌させる筒状部分を有するブッシュを含み、上記筒状部分に、上記配線を挿通可能な第二の挿通口を設けたことを特徴とする。
【0009】
請求項4の発明にあっては、上記配管穴用カバーを複数の分割体によって構成し、少なくともいずれか一つの分割体の結合境界となる端縁に切欠を設け、その切欠によって上記貫通口が形成されるようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5の発明にあっては、上記配管穴内で配線を被覆する配線カバーを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によれば、エアコン等の配管穴内に配線を挿通したため、壁に配線専用の穴を設ける必要がなく、その分、施工の手間を省きかつ費用を安くすることができる。また、配管穴用カバーの外周板部に配線導出口を設けたため、天板部に配線導出口を設けた場合に比べて見栄えを良くすることができる。
【0012】
請求項2の発明によれば、配管穴用カバーに、配管穴または配管穴に取り付けられた部材の筒状部分の内面に嵌挿される内周板部を設けたため、配管穴用カバーをより容易に取り付けることができる。また、この内周板部に配線用の挿通口を設けたため、配管穴に挿通された配線を内周板部の外側により容易に導出することができる。
【0013】
請求項3の発明によれば、配管穴に内周板部を内嵌させる筒状部分を有するブッシュを設けたため、配管穴用カバーをさらに容易にかつより確実に取り付けることができる。また、筒状部分に配線用の第二の挿通口を設けたため、配管穴に挿通された配線を内周板部の外側により確実に導出することができる。
【0014】
請求項4の発明によれば、配管穴用カバーを複数の分割体によって構成し、分割体の結合境界となる端縁に設けた切欠によって貫通口を形成するようにしたため、配管穴に既に配管が挿通された状態でも、配管穴用カバーを容易に取り付けることができる。
【0015】
請求項5の発明によれば、上記配管穴内で配線を被覆する配線カバーを設けたため、配線の損傷を抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、壁に設けた配管穴に配管を挿通した部分の外観図(斜視図)、図2は、壁に設けた配管穴にエアコン用の配管を挿通した部分の断面図、図3は、本実施形態にかかる配管穴用カバーを示す図((a):側面図、(b):裏面からみた図)、図4は、本実施形態にかかる配管穴用のブッシュを示す図((a):正面側(室内側)から見た図、(b):側面図)、また、図5は、配管穴用カバーとブッシュとを示す斜視図である。なお、この明細書で壁とは、部屋を仕切る側壁のみを意味するものではなく、天井や床も含むものとする。ただし、図1および図2では、側壁としての壁に本実施形態にかかる配管穴被覆構造を適用した場合を例示している。また、配管としては、具体的には、例えばエアコン等の空調機器用のパイプやホース等があるが、これに限定されるものではない。
【0017】
壁1に設けられた配管穴2の室内側の開口部は、配管穴用カバー3で被覆されており、この配管穴用カバー3により、配管穴2の開口部や内部が隠蔽されている。また、この配管穴2には、光ファイバケーブル等の配線4が挿通されており、この配線4は配管穴用カバー3の外周板部15に設けた配線導出口17から室内側に導出されている。なお、配管13の挿通部分21は、断熱用のパテ(図示せず)で埋められる。
【0018】
ここで、配線4は、配管穴2(挿通部分21)内において、例えば樹脂製のチューブやモール等からなる配線カバー23で被覆し、施工時等における損傷を抑制するのが好適である。この配線カバー23は、帯状のカバー体を螺旋状に巻回したものとしたり、室内側と室外側とで分割して形成したり、あるいは長手方向に切り込みを入れておいたりして、配管13や配線4の施工時等により容易に着脱できるようにしておくのが好適である。
【0019】
配管穴2には、室外側からはフランジ付きのスリーブ6が挿入され、室内側からはカバー7が挿入され、これらスリーブ6とカバー7が配管穴2内で嵌合される。
【0020】
そして、このスリーブ6内に、室内側から筒状のブッシュ8が嵌装される。このブッシュ8は、樹脂等によって略円筒状に成形されており、軸方向の中途位置から一定幅で径方向外側に張り出すフランジ9が設けられている。このフランジ9の端面(壁1側の端面)が壁1やカバー7等(本実施形態ではカバー7)の室内側の面に当接し、これによりブッシュ8が軸方向に位置決めされる。
【0021】
また、ブッシュ8は、装着した状態で、筒状部分10a(10)が室内側に突出するようになっており、この室内側の筒状部分10aに、配線4を挿通可能な切欠11が形成されている(この切欠11が、第二の挿通口に相当する。)。このように筒状部分10aを室内側に突設させることで、配管穴用カバー3の天板部12によって配線4が押されて損傷したり断線したりするのが抑制される。
【0022】
さらに、ブッシュ8は、軸方向に沿う切り込み24で分離され、拡開できるようになっており、配管13の施行後であっても、配管13の径方向外側から囲むようにして切り込み24の端面同士を突き合わせ、配管13が筒状部分10を挿通する状態を構築することができるようにしてある。なお、ブッシュ8を複数の分割体から構成して、これらを合体させるようにしても、同様の効果が得られる。
【0023】
配管穴用カバー3は、樹脂等で成形されており、配管13を挿通する略円形の貫通口14が形成された円板状の天板部12と、天板部12の周縁から一方側(壁1側)に向けて天板部12と略垂直に立設される略円筒状の外周板部15と、貫通口14の周縁から外周板部15と同方向に立設される略円筒状の内周板部16とを有している。
【0024】
内周板部16は、室内側からブッシュ8の筒状部分10内に嵌挿され、これにより配管穴用カバー3が固定される。また、外周板部15の端部が壁1やカバー7等(本実施形態では壁1)の室内側の面に当接し、これにより配管穴用カバー3が軸方向に位置決めされる。
【0025】
また、内周板部16には、スリット状の切欠20が形成されており、この切欠20を配線4が挿通できるようにしてある(この切欠20が、第一の挿通口に相当する。)。この切欠20は、周方向に分散して(例えば上下左右に4箇所、45°おきに8箇所等)複数配置され、内周板部16の内側から外側に好適な角度で配線4を導出できるようにしてある。
【0026】
ここで、ブッシュ8に配管穴用カバー3を装着したとき、ブッシュ8の切欠11と配管穴用カバー3の切欠20とが重なるように周方向に位置合わせすれば、天板部12とフランジ9とが近接配置されても、これら切欠11と切欠20とが重なる領域を配線4を導出する挿通口として確保することができる。一方、壁1やカバー7等、被取り付け部分の形状等により、天板部12とフランジ9とがある程度離間して配置される場合には、特に周方向に位置合わせを行わなくても、配線4は少なくとも切欠20を挿通することができる。
【0027】
一方、外周板部15には、配線導出口17が形成され、この配線導出口17から、配線4が室内側に導出されるようになっている。この配線導出口17は、外周板部15の端部に切欠として形成することができる。この場合、外周板部15に、切欠の端縁となる切り込みや薄肉部等の脆弱部を設けておき、指先あるいはドライバ等の工具によって力を加えることで、当該切欠が出現するようにしてもよい。さらに、この切り込みや脆弱部を、外周板部15の周方向に分散して(例えば上下左右に4箇所、45°おきに8箇所等;図5では上下2箇所)複数配置しておけば、選択的に好適な位置のみに配線導出口17を形成し、好適な角度方向に配線4を導出できるようになる。
【0028】
さらに、本実施形態では、配管穴用カバー3を、複数の分割体を結合して構成するようにしている。具体的には、図3の(b)に示すように、正面視で略半円環状の二つの分割体3a,3bを、直線状の結合境界18に形成した半円状の切欠14a,14b同士が対向するように突き合わせ、天板部12の裏面側(壁1側)に設けた係合機構19(ピン状突起部19aとそれを嵌挿する小孔19bが形成されたアーム19c)により、結合するようにしている。これにより、配管13の施行後であっても、分割体3a,3bを配管13の径方向外側から囲むようにして突き合わせ、これらを結合させることで、配管13が貫通口14を挿通する状態を構築することができる。
【0029】
そして、この切欠14a,14bについても、当初から切り欠いておくのではなく、天板部12に連接する板状部分として構成しておき、切欠14a,14bの端縁となる部分(すなわち内周板部16の内側端縁)に切り込みや薄肉部等の脆弱部を設けておき、指先あるいはドライバ等の工具によって力を加えることで、当該切欠14a,14bが出現するようにしてもよい。
【0030】
かかる構成において、図2に示すように、室内側と室外側とを結ぶ配管13は、配管穴2に装着されたスリーブ6、カバー7、ブッシュ8、および配管穴用カバー3(の内周板部16)の内側の挿通部分21を挿通する。
【0031】
一方、配線4は、室外側からこの挿通部分21に導入され、当該挿通部分21から上記切欠20または切欠11を経由して、配管穴用カバー3の天板部12の裏面側(壁1側)の内周板部16と外周板部15とで囲まれる環状空間22内に導出され、当該環状空間22から配線導出口17を経由して、室内に導出される。この環状空間22には、配線4の余長部分を収容することができる。さらに、外周板部15と内周板部16との間隔をある程度広く(好適には配線4の構造上あるいは性能上の最小(許容)曲げ半径以上に)しておけば、この環状空間22で配線4を曲げることができ、内周板部16から環状空間22内への配線4の導出位置や方向によらず、所期の配線導出口17から所期の方向に配線4を導出することができる。
【0032】
以上説明したように、本実施形態によれば、配管穴2内に配線4を挿通させたため、壁1に配線専用の穴を設ける必要がなく、その分、施工の手間を省きかつ費用を安くすることができる。また、外周板部15に配線導出口17を設けたため、天板部12に配線導出口17を設けた場合に比べて見栄えを良くすることができる。
【0033】
また、本実施形態によれば、配管穴用カバー3に、配管穴2または配管穴2に取り付けられるブッシュ8の筒状部分10に嵌挿される内周板部16を設けたため、配管穴用カバー3をより容易に取り付けることができる。また、この内周板部16に切欠20を設けたため、配管穴2に挿通された配線4を内周板部16の外側により容易に導出することができる。
【0034】
また、本実施形態によれば、配管穴2に内周板部16を内嵌させる筒状部分10を有するブッシュ8を設けたため、配管穴用カバー3をさらに容易にかつより確実に取り付けることができる。また、筒状部分10a(10)に切欠11を設けたため、配管穴2に挿通された配線4を内周板部16の外側により確実に導出することができる。
【0035】
また、本実施形態によれば、配管穴用カバー3を複数の分割体3a,3bによって構成し、分割体3a,3bの結合境界18となる端縁に設けた切欠14a,14bによって貫通口14を形成するようにしたため、配管穴2に既に配管13が挿通された状態でも、配管穴用カバー3を容易に取り付けることができる。
【0036】
また、本実施形態によれば、配管穴2内で配線4を被覆する配線カバー23を設けたため、配線4の損傷を抑制することができる。
【0037】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に種々の改変を施すことができる。例えば、配管穴用カバーを、ブッシュを用いず、例えばねじ等で装着する場合にも、外周板部に設けた配線導出口から配線を導出することができる。また、スリーブやカバー等の構成も、上記実施形態に限定されるものではなく、種々の形態を採用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】壁に設けた配管穴に配管を挿通した部分の外観図(斜視図)。
【図2】壁に設けた配管穴にエアコン用の配管を挿通した部分の断面図。
【図3】本発明の実施形態にかかる配管穴用カバーを示す図((a):側面図、(b):裏面側(壁側)から見た図)。
【図4】本発明の実施形態にかかる配管穴用ブッシュを示す図((a):正面側(室内側)から見た図、(b):側面図)。
【図5】本発明の実施形態にかかる配管穴用カバーと配管穴用ブッシュとを示す斜視図。
【符号の説明】
【0039】
1 壁
2 配管穴
3 配管穴用カバー
3a,3b 分割体
4 配線
8 ブッシュ
10a 筒状部分
11 切欠(第二の挿通口)
12 天板部
13 配管
14 貫通口
14a,14b 切欠
15 外周板部
16 内周板部
17 配線導出口
18 結合境界
20 切欠(第一の挿通口)
23 配線カバー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁に設けられた配管穴の開口部を覆う配管穴用カバーを含む配管穴被覆構造であって、
前記配管穴用カバーは、
前記配管を挿通させる貫通口が形成された天板部と、
前記天板部の周縁に立設された外周板部と、
を備え、
前記外周板部に、配管穴内を挿通させた配線を導出する配線導出口を設けたことを特徴とする配管穴被覆構造。
【請求項2】
前記配管穴用カバーは、天板部の貫通口の周縁部から前記外周板部と同方向に立設され、配管穴または配管穴に取り付けられた部材の筒状部分の内面に嵌挿される内周板部を備え、
この内周板部に、前記配線を挿通可能な挿通口を設けたことを特徴とする請求項1に記載の配管穴被覆構造。
【請求項3】
配管穴に装着され、前記内周板部を内嵌させる筒状部分を有するブッシュを含み、
前記筒状部分に、前記配線を挿通可能な第二の挿通口を設けたことを特徴とする請求項2に記載の配管穴被覆構造。
【請求項4】
前記配管穴用カバーを複数の分割体によって構成し、
少なくともいずれか一つの分割体の結合境界となる端縁に切欠を設け、その切欠によって前記貫通口が形成されるようにしたことを特徴とする請求項1〜3のうちいずれか一つに記載の配管穴被覆構造。
【請求項5】
前記配管穴内で配線を被覆する配線カバーを設けたことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか一つに記載の配管穴被覆構造。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−118579(P2006−118579A)
【公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−306115(P2004−306115)
【出願日】平成16年10月20日(2004.10.20)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】