説明

配管貫通部の化粧材

【課題】壁面とこれを貫通する配管とが垂直ではなく、若干の傾斜が生じたとしても、かかる誤差を吸収し、壁面と配管貫通部の意匠性を確保し、見栄えを良くするワン座を提供する。
【解決手段】全体としてワン型に形成され、その中央部に配管20が貫通する丈の短い筒体2が内向き垂直に備えられ、筒体内に配管が貫通し、ワン型の縁部3が壁面30に接触して固定される化粧材であって、筒体の最小径を配管の径と合わせ、これと直角方向の径を配管の径よりもやや大きくしたものであり、具体的には、筒体の径を長円形状或いは楕円形状とし、更に筒体の内向き先端径を先細径とした配管貫通部の化粧材である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配管の壁面貫通部の意匠性を確保するための化粧材(以下、ワン座(Ring Shaped Cover)という)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配管の壁面貫通部の意匠性を確保するためワン座が広く用いられており、若干の施工誤差であれば吸収し、配管の壁面貫通部の意匠性を確保している。そして、壁面を配管が貫通する場合には、配管は壁面に対して垂直に貫通することが想定されている。即ち、通常市販されているワン座は、壁面と配管が垂直となっている場合には、その機能を発揮できる。
【0003】
図1は市販されているワン座10の一例を示す一部断面図であり、図2はその使用状態を示すが、全体としてワン型に形成され、その中央部に配管20と同じ径の丈の短い筒体11が内向き垂直に備えられ、かかる配管20をこの筒体11に嵌め込んで固定されるようになっており、ワン座10の縁部12が壁面30に接触し、貫通穴31等を隠す構造となっている。尚、図2の使用例はユニットバス用排水管に用いたものであり、ユニットバスの壁面30に貫通穴31を穿ち、平パッキン32a、32bを介して排水フランジ33とオ−バ−フロ−エルボ34が対峙し、排水フランジ33には更にアダプタ−35、PS管36が配置され、平パッキン32a、排水フランジ33、アダプタ−35を覆ってワン座10が嵌め込まれた例を示す。勿論、壁面30に対して、PS管36の先端は垂直に貫通しているものである。
【0004】
しかしながら、壁面30と配管20(上記の例ではPS管36)とが垂直とならず、若干傾きが生じてしまう場合がある。このような場合には、図3に示すようにワン座10は配管20の傾きに合わせて傾いた状態に設置されてしまうため、ワン座10の壁面30側に配管20の傾きに応じた隙間13が発生してしまい、折角の化粧材であるにもかかわらず、逆に見栄えが劣ってしまう結果となることが散見されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記したような従来技術に鑑みてなされたものであり、壁面と貫通する配管とが垂直ではなく、若干の傾斜が生じたとしても、かかる誤差を吸収し、壁面と配管貫通部の意匠性を確保し、見栄えを良くするワン座を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の要旨は、全体としてワン型に形成され、その中央部に配管が貫通する丈の短い筒体が垂直に備えられ、筒体内に配管が貫通し、ワン型の縁部が壁面に接触して固定されるワン座であって、前記筒体の最小径を配管の径と合わせ、これと直角方向の径を配管の径よりもやや大きくしたことを特徴とする配管貫通部のワン座にかかるものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明は以上の通りであって、壁面に対して配管が若干の角度を有していても、ワン座側の配管に対応する筒体の穴部に余裕があるため、かかる角度分の傾斜を吸収してしまい、ワン座の縁部全体が壁面に当接されることとなり、ワン座本来の見栄えの点で何ら劣ることがなくなったものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
従来のワン座にあって、壁面と配管とが垂直でない場合には、ワン座の縁部全周が壁面に当接するのではなく、一部に隙間ができてしまう。このため、ワン座としての機能が果たせないこととなるが、本発明のワン座においては、筒体に工夫を加えたことにより若干の傾斜があってもこれを吸収してワン座の縁部全周が壁面に接触することとなり、貫通部を完全に隠し、常に見栄えの良いワン座を提供できることとなったものである。
【0009】
本発明のワン座にあっては、具体的に言えば、筒体の径を長円形状、或いは楕円形状とするものであり、最も短径の部位を配管の径と合致させ、他の部位を貫通する配管に対してやや動きを許容したものである。
【0010】
そして、筒体の内向き先端径を細めにすることによって壁面と配管との傾斜が特に目立たなくなるという効果があり、見栄えの点で従来のものと同等となる。
【0011】
そして、ワン座は金属製であっても、或いは樹脂製であってもよく、ワン部と筒体が同一部材でも或いは別部材であっても良い。好適には、ワン型部位が硬質部材で構成され、筒体部が軟質部材で構成されたものである。筒体部が軟質である場合には、壁面と配管との勾配を更に効果的に吸収することとなる。この筒部を構成する軟質部材としては、ゴム製、塩ビ等の樹脂製がある。
【実施例】
【0012】
以下、図面をもって本発明を更に詳細に説明する。図4は本発明のワン座1の一例を示す正面図である。本発明のワン座1はABS製であって、全体としてワン座基体1aがワン型に形成され、その中央部に筒体2がワン型の内向き垂直に備えられている。かかる筒体2は図にあって左右の径Aが配管の径と同じに形成されているが、上下の径Bは配管の径よりも若干大きめに形成されて(B>A)長円形状をなしている。そして、配管20をこの筒体2中に嵌め込んで固定されるようになっており、ワン座1の縁部3が壁面30に接触し、配管20の貫通穴31等を隠す構造となっている。
【0013】
尚、この例にあっては、筒体2は内向き先端2aがその基部2bよりもやや細めになっており、この内向き先端2aの径が長円形状となっているものである。
【0014】
図5は上記のワン座1を適用した例を示す断面図であり、図5(a)は壁面30に対して配管20が垂直に配管された例であり、図5(b)は壁面30に対して配管20が上向きの傾斜(角度a)をもって貫通している例である。そして、かかる配管20に対してワン座1を適用したものであって、筒体2に配管20を嵌め込み、ワン座1を壁面30に当接したものである。筒体2には上下に内径が長円形状2aをなす筒体2が形成されているところから、配管20に上向きの傾斜(角度a)があったとしてもこの角度は楕円形状の筒体2にてその偏りが吸収されてしまい、ワン座1の円周部である縁部3が壁面30に全体的に当接されることとなる。このため、配管の傾斜が見た目では分からなくなり、勿論、ワン座1と壁面30との間に隙間等が生ぜず、見栄えのよいワン座として所期の機能を果たすこととなったものである。
【0015】
図6は本発明のワン座1の別例を示す半裁図である。この例では、筒体2の部位は塩ビ製の軟質部材にて構成するものであり、ワン座基体1aはABS樹脂にて構成したものである。両者は接着剤等任意の手段にて一体化されている。この例では配管の傾斜は更に吸収されることとなったものであり、場合によっては、筒体2が柔軟性があるため、内径を配管の径と一致させてしまい、楕円形状或いは長円形状とする必要がない場合もある。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は以上の構成を有するものであり、壁面と配管とが必ずしも垂直に貫通していなくとも隙間の生じない見栄えの良いワン座を提供できたものであり、壁面に対して貫通する配管類の全てに適用可能でありその用途は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は市販されているワン座10の一例を示す一部断面図である。
【図2】図2はその使用状態を示す図である。
【図3】図3は不具合のある使用状態を示す図である。
【図4】図4は本発明のワン座の一例を示す正面図である。
【図5】図5は図4に示すワン座を適用した例を示す断面図である。
【図6】図6は本発明のワン座の別例を示す半裁図である。
【符号の説明】
【0018】
1‥本発明のワン座、
1a‥ワン座基体、
2‥筒体、
2a‥筒体の内向き先端、
2b‥筒体の基部、
3‥ワン座の縁部、
20‥配管、
30‥壁面、
31‥貫通穴。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体としてワン型に形成され、その中央部に配管が貫通する丈の短い筒体が内向き垂直に備えられ、筒体内に配管が貫通し、ワン型の縁部が壁面に接触して固定される化粧材であって、前記筒体の最小径を配管の径と合わせ、これと直角方向の径を配管の径よりもやや大きくしたことを特徴とする配管貫通部の化粧材。
【請求項2】
筒体の径を長円形状とし、貫通する配管に対してやや動きを許容した請求項1記載の配管貫通部の化粧材。
【請求項3】
筒体の径を楕円形状とし、貫通する配管に対してやや動きを許容した請求項1記載の配管貫通部の化粧材。
【請求項4】
筒体の内向き先端径を先細径とした請求項1乃至3いずれか1記載の配管貫通部の化粧材。
【請求項5】
ワン型が硬質部材にて構成され、筒体が軟質部材にて構成された請求項1乃至4いずれか1記載の配管貫通部の化粧材。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2007−177803(P2007−177803A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−373595(P2005−373595)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】