説明

配線具及びワイヤハーネス

【課題】ワイヤハーネスにおいて、電線を予め定められた形状で保持するとともに被保護部を保護部材で覆うための部材及び作業を簡素化できること。
【解決手段】配線具10は、凹凸をなす板状に成形されたベース部1及びカバー部2を備える。ベース部1において、隔壁部12A,12Bは、配線部11から起立し、被保護部41,42が配置される保護空間90A,90Bを囲んで形成された部分である。カバー部2は、ベース部1に組み合わされベース部1の配線部11を含む領域を覆う。カバー部2は、ベース部1側へ凸状に形成されベース部1の隔壁部12A,12Bの内側に嵌り込んで隔壁部12A,12Bが形成する開口を塞ぐ蓋部24を有する。ベース部1及びカバー部2は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線を予め定められた形状で保持する配線具及びそれを備えたワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両に搭載されるワイヤハーネスは、電線に取り付けられた樹脂製の配線具を備え、電線がその配線具によって予め定められた経路に沿って保持された状態で敷設されることが多い。例えば、従来の一般的なワイヤハーネスにおいて、電線は、粘着テープ又はベルト部材などの結束材によって板状又は棒状の樹脂部材に固定される。これにより、電線は、予め定められた形状で保持される。
【0003】
また、特許文献1に示されるワイヤハーネスは、電線束を挟み込む状態で熱プレスによって固着された2つの板状の樹脂部材からなる配線具を備える。一方の樹脂部材は、平板状の基部と基部から起立するリブとからなる基体である。他方の樹脂部材は、基体のリブが挿入される貫通孔が形成され、基体に重ねられた状態で基体の基部に固着される平板状の被覆体である。
【0004】
特許文献1に示されるワイヤハーネスにおいて、電線は、基体と被覆体との間に挟み込まれ、結束材により基体の縁部に固定される。これにより、電線は、予め定められた形状で保持される。
【0005】
ところで、ワイヤハーネスには、耐久性向上、電気的な絶縁、防塵又は防水のために、周囲を覆って他の部分との接触を防ぐべき部分が存在する。以下、そのような部分のことを被保護部と称する。ワイヤハーネスにおける被保護部は、電線の一部又は電線に接続された機器を含む部分であり、例えば、電線束の端部において複数の芯線が接合された部分であるスプライス部又は電線に接続された電子基板などである。
【0006】
従来のワイヤハーネスにおいて、被保護部は、専用の保護ケースに収容される、又は熱収縮チューブもしくはコルゲートチューブなどの保護チューブが取り付けられることにより保護される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−27242号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のワイヤハーネスにおいては、電線を予め定められた形状に保持するための部材及び作業と、被保護部を覆うための部材及び作業とが個別に必要であった。さらに、電線における形状を所定の形状に保持すべき部分の途中に被保護部が存在する場合、配線具と被保護部を覆う保護具とが振動により衝突し、異音を発するという問題が生じる。
【0009】
本発明は、ワイヤハーネスにおいて、電線を予め定められた形状で保持するとともに被保護部を保護部材で覆うための部材及び作業を簡素化できることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る配線具は、電線を予め定められた形状で保持する用具であり、以下の各構成要素を備える。
(1)第1の構成要素は、凹凸をなす板状に成形された部材からなる基体である。この基体は、配線部と対の第一傾斜段差部と隔壁部と電線固定部とを有する。配線部は、電線もしくは電線に接続された機器が配置される配線空間に面する部分である。隔壁部は、配線部から起立し、配線空間のうち電線の一部もしくは電線に接続された機器を含む被保護部が配置される部分空間を囲んで形成された部分である。電線固定部は、電線が固定される部分である。
(2)第2の構成要素は、基体に組み合わされ基体における配線部を含む領域を覆う被覆体である。
【0011】
また、本発明に係る配線具において、被覆体が、凹凸をなす板状に成形された部材からなり、かつ、基体側へ凸状に形成され基体の隔壁部の内側に嵌り込んで隔壁部が形成する開口を塞ぐ蓋部を有することが考えられる。
【0012】
また、本発明に係る配線具において、基体における隔壁部の一部が、被保護部に繋がる電線の経路をなす溝状に形成されていることも考えられる。
【0013】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていることが考えられる。
【0014】
また、本発明に係る配線具において、基体及び被覆体が、平板状の樹脂部材の真空成形により得られた部材であることが考えられる。
【0015】
また、本発明は、本発明に係る配線具と、その配線具が取り付けられた電線とを備えるワイヤハーネスの発明として捉えられてもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明において、電線は、配線具を構成する基体及び被覆体の間に挟み込まれるとともに、基体における予め定められた位置に設けられた電線固定部で固定される。従って、本発明に係る配線具が取り付けられた電線において、電線固定部で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線固定部で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線の形状が配線具によって保持される。
【0017】
また、本発明において、電線に接続された電子基板又は電線の一部であるスプライス部などの被保護部は、基体における配線部及び隔壁部と被覆体とにより周囲が覆われる。これにより、被保護部は、他の部分と接触せず、保護される。
【0018】
また、本発明に係る配線具は、電線を予め定められた形状に保持する機能と、被保護部を覆う機能とを兼ね備える。即ち、被保護部を含む電線群が基体の配線部に配置され、電線の一部が基体の固定部に固定された後、被覆体が基体に組み合わされるだけで、電線の形状が保持され、被保護部が配線具の一部で覆われる。従って、本発明に係る配線具が採用されることにより、電線を予め定められた形状に保持するための部材及び作業と、被保護部を覆うための部材及び作業とが簡素化される。
【0019】
また、本発明に係る配線具において、基体の隔壁部は、凹凸をなす板状の基体の剛性を高める補強部として機能する。そのため、基体は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0020】
また、本発明において、被覆体が、基体の隔壁部の内側に嵌り込んで隔壁部が形成する開口を塞ぐ蓋部を有すれば、隔壁部の内側の空間の密閉性が高まり、被保護部がより確実に保護される。
【0021】
また、基体における隔壁部の一部が、被保護部に繋がる電線の経路をなす溝状に形成されていれば、隔壁部を跨ぐ電線の弾性によって被保護部が隔壁部内から浮き上がることが防止され、被保護部を隔壁部内へ収容する作業が容易となる。
【0022】
また、本発明において、基体及び被覆体が、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されていればなお好適である。この場合、部品点数が少なくなり、配線具を電線に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0023】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。従って、本発明において、基体及び被覆体が、平板状の部材の真空成形により得られた部材であれば、製造工数及び製造コストが低減される。なお、特許文献1に示される平板状のリブを有する基体は、平板状の部材の真空成形によって得ることはできない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る配線具10の斜視図である。
【図2】配線具10及び電線9の斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の斜視図である。
【図4】ワイヤハーネス100における第一保護空間の部分の断面図である。
【図5】ワイヤハーネス100における第二保護空間の部分の断面図である。
【図6】配線具10における電線が固定された電線結束部の正面図である。
【図7】配線具10に適用可能なコネクタ支持部及び電線の端部におけるコネクタの部分の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。以下の実施形態は、本発明を具体化した一例であり、本発明の技術的範囲を限定する事例ではない。
【0026】
<概略構成>
まず、図1から図3を参照しつつ、本発明の実施形態に係る配線具10及び本発明の実施形態に係るワイヤハーネス100の概略の構成について説明する。
【0027】
ワイヤハーネス100は、複数の電線9からなる電線群とその電線群に取り付けられた配線具10とを備える。ワイヤハーネス100は、例えば、車両における座席の下方のスペース、天井裏のスペース又はトランクルームなどに取り付けられ、周囲に存在する他の電線又は電装機器と接続される。そのため、ワイヤハーネス100が備える電線9は、絶縁電線と、その絶縁電線の端部に取り付けられたコネクタ91とからなるコネクタ付電線である。
【0028】
ワイヤハーネス100において、複数の電線9は、予め定められた形状に保持された状態で、配線具10によって一体化されている。そのため、ワイヤハーネス100は、クランプなどの固定具を用いて簡易に所定の位置に取り付け可能である。
【0029】
本実施形態において、配線具10は、板状の樹脂部材が真空成形されることにより得られる部材である。配線具10は、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、又はポリアミド(PA)などの樹脂の部材である。
【0030】
図1に示されるように、配線具10は、ベース部1と、それに重ねられるカバー部2と、ベース部1とカバー部2とに連なってそれらを一体に接続する接続部3と、により構成されている。接続部3は、弾性的に曲げ変形可能な部分である。カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされる。なお、ベース部1及びカバー部2は、それぞれ基体及び被覆体の一例である。
【0031】
図3に示されるように、配線具10は、接続部3が曲がることによって接続部3の部分で折り返し、カバー部2がベース部1に重なる。ベース部1及びカバー部2は、それらの間に電線9を挟み込む状態で固着され、これにより、配線具10は、ベース部1とカバー部2との間に挟み込まれた電線9を予め定められた形状で保持する。
【0032】
<ベース部>
配線具10を構成するベース部1は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。前述したように、本実施形態におけるベース部1は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、ベース部1は、配線部11と第一段差部12と第一枠部13とを有している。
【0033】
ベース部1を構成する配線部11は、電線9が配置される配線空間90に面する板状の部分である。配線部11は、ベース部1の底面を形成する底板部であるともいえる。
【0034】
図1から図3に示される配線部11は平板状であるが、配線部11は、複数の補強用の凸部が形成された板状であってもよい。なお、ベース部1は凹凸をなす板状であるため、ベース部1において、配線空間90側における補強用の凸部は、配線空間90側の反対側においては凹部である。但し、補強用の凸部は、後述する第一段差部12の高さよりも低い高さで形成される。
【0035】
ベース部1を構成する第一段差部12は、配線部11の外縁に沿って形成されるとともに配線部11から配線空間90の側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、配線部11の外縁は、第一段差部12の内縁に沿って形成されている。
【0036】
図1に示される例では、第一段差部12は、全体が一定の高さで形成されているが、第一段差部12が、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含むことも考えられる。
【0037】
また、配線具10において、第一段差部12の一部は、配線空間90のうち電線の一部もしくは電線に接続された機器を含む被保護部41,42が配置される部分空間である保護空間90A,90Bの四方を囲んで形成されている。
【0038】
図2に示される例では、ワイヤハーネス100は、2つの被保護部41,42を有する。一方の第一被保護部41は、電線9に接続された電子基板であり、他方の第二被保護部42は、複数の電線9の芯線が溶接によって接合された部分であるスプライス部である。従って、図1から図3に示される例では、配線具10の第一段差部12は、2箇所の保護空間90A,90B各々を囲む2つの部分を有する。
【0039】
以下、第一段差部12のうち、保護空間90A,90Bを囲んで形成された部分のことを隔壁部12A,12Bと称する。また、配線部11のうち、保護空間90A,90Bに面する部分、即ち、隔壁部12A,12Bによって区分された部分のことを保護室底板部11A,11Bと称する。なお、保護空間90A,90Bを取り囲む構造の詳細については後述する。
【0040】
ベース部1を構成する第一枠部13は、第一段差部12の外縁に沿って形成された部分であり、ベース部1の外縁部分をなす。第一枠部13は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第一枠部13は、平坦な部分と凹部とが混在する形状で形成されている。
【0041】
また、図1に示されるように、第一枠部13の一部には、電線結束部14及び仮留め用凹部16が形成されている。電線結束部14は、配線部11から第一枠部13へ亘って配置される電線9が固定される部分である。なお、電線結束部14は、電線固定部の一例である。電線結束部14及び仮留め用凹部16についての説明は後に示す。
【0042】
また、ベース部1における第一枠部13の一部には、クランプ孔17が形成されている。このクランプ孔17は、配線具10が自動車のパネルなどの支持体に取り付けられる際にクランプが通される貫通孔である。クランプが、ベース部1のクランプ孔17と支持体に形成された取付孔とに通されることにより、配線具10は、支持体に固定される。
【0043】
<カバー部>
配線具10を構成するカバー部2は、凹凸をなす板状に成形された樹脂部材からなる。このカバー部2は、ベース部1における配線部11を含む領域を覆う部材である。前述したように、本実施形態におけるカバー部2は、ベース部1とともに、平板状の樹脂部材の真空成形により得られる。図1及び図2に示されるように、カバー2は、対向壁部21と第二段差部22と第二枠部23とを有している。さらに、カバー部2は、第二枠部23の一部に形成された複数の仮留め用凸部26も有している。
【0044】
なお、以下の説明において、カバー部2の構成要素の位置又は形状が、ベース部1と関連付けて説明される場合、カバー部2がベース部1に対して重ねられて組み合わされた状態を前提としている。
【0045】
カバー部2を構成する対向壁部21は、ベース部1の配線部11に対して配線空間90を隔てて対向する部分である。対向壁部21には、本実施形態における対向壁部21は、その全体が平板状に形成されている。しかしながら、対向壁部21は、ベース部1の配線部11と同様に、複数の補強用の凸部が形成された板状であってもよい。
【0046】
カバー部2を構成する第二段差部22は、対向壁部21の外縁に沿って形成されるとともに対向壁部21からベース部1の反対側へ起立して段差を形成する部分である。換言すれば、対向壁部21の外縁は、第二段差部22の内縁に沿って形成されている。
【0047】
図1に示される例では、カバー部2における対向壁部21及び第二段差部22の全体は、ベース部1側へ凸状に形成されており、ベース部1における第一段差部12の内側に嵌り込んで第一段差部12が形成する開口を塞ぐ。また、図1に示される例では、第二段差部22は、全体が一定の高さで形成されている。しかしながら、第二段差部22が、一部に他の部分よりも高く形成された部分を含むことも考えられる。
【0048】
カバー部2を構成する第二枠部23は、第二段差部22の外縁に沿って形成された部分であり、カバー部2の外縁部分をなす。第二枠部23は、平板状に形成されることの他、平坦な部分と凹部もしくは凸部とが混在する形状で形成されることも考えられる。図1に示される例では、第二枠部23の一部に、ベース部1側へ突出する凸部が形成されている。なお、カバー部2に形成された仮留め用凸部26についての説明は後に示す。
【0049】
また、カバー部2の第二枠部23にも、クランプ孔27が形成されている。このクランプ孔27は、カバー部2がベース部1に重ねられたときにベース部1の第一枠部12に形成されたクランプ孔17と重なる。配線具10は、連通する2つのクランプ孔17,27に差し込まれたクランプによって支持体に固定される。
【0050】
<接続部>
接続部3は、直線状の溝を形成するように折り返して湾曲した板状に形成された部分である。このような形状で形成された接続部3は、それが形成する溝を開閉する方向において可撓性を有し、弾性的に曲げ変形可能に構成されている。接続部3が溝に沿って折り返されると、カバー部2が、ベース部1に対して予め定められた位置で重なる。
【0051】
<仮留め機構>
ベース部1における第一枠部13の一部には、仮留め用凹部16が形成されている。図1に示される例では、4つの仮留め用凹部16が、第一枠部13における電線結束部14の近傍と、接続部3の近傍とに形成されている。仮留め用凹部16は、カバー部2側に開口する窪みを形成する部分である。
【0052】
一方、カバー部2における第二枠部23の一部には、ベース部1の仮留め用凹部16に嵌り込む仮留め用凸部26が形成されている。図1に示される例では、4つの仮留め用凸部26が、4つの仮留め用凹部16各々に対向する位置に形成されている。
【0053】
配線具10において、ベース部1の一部に形成された仮留め用凹部16及びカバー部2の一部に形成された仮留め用凸部26は、カバー部2をベース部1に対して留める仮留め機構を構成している。
【0054】
仮留め用凸部26の側面の外形は、わずかに圧縮した状態で仮留め用凹部16の内壁面に内接する形状で形成されている。これにより、仮留め用凸部26が、仮留め用凹部16へ押し入れられると、仮留め用凸部26の側面と仮留め用凹部16の内壁面との摩擦抵抗により、カバー部2は、ベース部1の配線部11を覆う状態でベース部1に対して留められる。
【0055】
以上に示したように、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26は、凸部と凹部との嵌め合い構造により、カバー部2をベース部1に対して配線部11を覆う状態で留める仮留め機構を構成している。
【0056】
なお、図1に示される例では、仮留め用凹部16がベース部1側に設けられ、仮留め用凸部26がカバー部2側に設けられているが、その逆の構成も考えられる。即ち、仮留め用凹部16がカバー部2側に設けられ、仮留め用凸部26がベース部1側に設けられてもよい。また、ベース部1及びカバー部2の各々において、仮留め用凹部16と仮留め用凸部26とが混在してもよい。
【0057】
<ワイヤハーネス>
図2及び図3に示されるように、ワイヤハーネス100は、複数の電線9と、それら電線9を予め定められた形状に保持する配線具10とを備える。
【0058】
ワイヤハーネス100において、複数の電線9の中間部分は、ベース部1の配線部11に配置されている。また、電線9における端部のコネクタ91は、ベース部1の外側に配置され、そのコネクタ91が設けられた電線9は、ベース部1における配線部11から第一段差部12と第一枠部13における電線結束部14の部分とを通過して第一枠部13の外側へ亘って配置されている。また、その電線9は、電線結束部14に対して結束ベルト8により固定されている。
【0059】
そして、図3に示されるように、ベース部1及びカバー部2は、配線部11に配置された複数の電線9の中間部分を配線部11と対向壁部21との間に挟み込んで組み合わされた状態で固着されている。本実施の形態では、仮留め用凹部16及び仮留め用凸部26における相互に接触する部分が、超音波溶接などのスポット加熱の装置により溶着され、カバー部2がベース部1に対して固着されている。これにより、カバー部2は、ベース部1との間に複数の電線9の中間部分を挟み込んでベース部1に対して組み合わされた状態で保持されている。
【0060】
例えば、仮留め用凸部26が仮留め用凹部16に嵌め入れられたときに、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触することが考えられる。この場合、仮留め用凹部16の底面と仮留め用凸部26の頭頂面とが接触する部分に溶着部が形成される。
【0061】
<電線結束部>
次に、図6を参照しつつ、電線結束部14について説明する。図6は、電線9が固定された電線結束部14の正面図である。なお、図6において、電線9の端部は省略されて電線9の断面が示されている。
【0062】
図6に示されるように、本実施形態における電線結束部14は、第一枠部13における、電線通過部141と、電線通過部141の両側において貫通孔が形成された部分である一対のベルト通過部142とにより構成されている。電線通過部141は、第一枠部13における電線9が通る部分である。ベルト通過部142は、電線通過部141に隣接する部分である。
【0063】
ベルト通過部142は、結束ベルト8のベルト部81が貫通可能な貫通孔が形成された部分である。この貫通孔は、電線9と電線通過部141とを結束する結束ベルト8のベルト部81が通される孔である。なお、結束ベルト8は、結束材の一例であり、ベルト部81は、結束ベルト8における結束対象への巻き付け部である。
【0064】
ベルト通過部142の貫通孔は、例えば、真空成形される前の平板状の樹脂部材に対するトムソン加工などによって形成される。
【0065】
図6に示されるように、結束ベルト8は、電線9と電線通過部141とを結束した状態で保持され、電線9は、電線結束部14の電線通過部141に固定される。なお、電線結束部14は、電線固定部の一例である。
【0066】
<コネクタ支持部>
配線具10に適用可能な電線固定部の他の例としては、図7に示されるようなコネクタ支持部18も考えられる。コネクタ支持部18は、ベース部1における第一枠部13の一部に形成され、電線9の端部のコネクタ91が固定される部分である。図7は、コネクタ支持部18及びコネクタ91の斜視図である。
【0067】
ここで、コネクタ支持部18について説明する前に、コネクタ支持部18に固定されるコネクタ91の構造について説明する。
【0068】
図7に示されるように、電線9の端部のコネクタ91には、クランプなどの他の部材と連結される連結部92が形成されている。連結部92は、連結される相手側部材の一部が嵌り込む隙間を形成する平行な一対のガイドレール部921と、一対のガイドレール部921に架け渡された架設部922とを有する。
【0069】
また、架設部922におけるコネクタ91の本体の底面に対向する面には、コネクタ91の本体側に向かって突出する突起部923が形成されている。
【0070】
一対のガイドレール部921は、コネクタ91の外表面から突起し、平行に直線状に延びて形成された一対の平行な凸部を形成している。また、架設部922は、一対のガイドレール部921の間においてコネクタ91の外表面に対して間隔を空けて形成された梁部を形成している。また、突起部923は、架設部922からコネクタ91の外表面に向かって突起して形成された凸部を形成している。図7に示されるコネクタ91は、自動車に搭載されるワイヤハーネスにおいて広く用いられている。
【0071】
図7に示されるように、コネクタ支持部18は、コネクタ91の連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌り込む嵌入片181を有する。嵌入片181は、第一枠部13の縁部に形成された一対の切り込みの間の部分である。また、嵌入片181には、嵌入片181が一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられたときに、連結部92の突起部923が嵌り込む孔182が形成されている。
【0072】
嵌入片181が連結部92における一対のガイドレール部921の隙間に嵌め入れられることにより、コネクタ91は、コネクタ支持部18に固定される。即ち、コネクタ支持部18は、電線9の端部に取り付けられたコネクタ91に形成された連結部92と係り合ってコネクタ91を支持する。なお、コネクタ支持部18は、電線固定部の一例である。図7に示されるようなコネクタ支持部18が、配線具10に適用されてもよい。
【0073】
<被保護部の収容の構造>
次に、図4及び図5を参照しつつ、配線具10が被保護部41,42を保護空間90A,90Bに収容する構造の詳細について説明する。図4の断面図は、図1及び図3に示されるC−C平面における断面図である。また、図5の断面図は、図1及び図3に示されるD−D平面における断面図である。
【0074】
図4及び図5に示されるように、ベース部1において、保護室底板部11A,11Bは、電線9もしくは電線9に接続された機器が配置される配線空間90における保護空間90A,90Bに面している。また、図2、図4及び図5に示されるように、ベース部1の隔壁部12A,12Bは、保護室底板部11A,11Bから起立し、被保護部41,42が配置される保護空間90A,90Bを囲んで形成されている。
【0075】
また、カバー部2の第二段差部22の一部は、対向壁部21におけるベース部1の保護室底板部11A,11Bに対向する部分を取り囲んで形成されている。以下、対向壁部21のうち、ベース部1の保護室底板部11A,11Bに対向する部分のことを保護室天井部21A,21Bと称する。また、カバー部2の第二段差部22のうち、保護室天井部21A,21Bの外縁に沿って形成された部分のことを天井支持部22A,22Bと称する。
【0076】
また、カバー部2における保護室天井部21A,21B及び天井支持部22A,22Bの部分は、ベース部1側へ凸状に形成された蓋部24を構成している。この蓋部24は、ベース部1における隔壁部12A,12Bの内側に嵌り込んで隔壁部12A,12Bが形成する開口を塞ぐ。図4及び図5に示されるように、天井支持部22A,22Bは、隔壁部12A,12Bの内側面に沿う段差を形成している。これにより、隔壁部12A,12Bが形成する開口は、蓋部24によって高い密閉性で塞がれる。
【0077】
なお、図1に示されるように、カバー部2の蓋部24が、隔壁部12A,12Bと同様に、被保護部41,42に繋がる電線9の経路をなす溝状に形成された配線溝25を有することも考えられる。
【0078】
また、樹脂又はゴムなどのコーティング剤が、被保護部41,42が配置された隔壁部12A,12Bの内側の保護空間90A,90Bに充填されることも考えられる。これにより、被保護部41,42の防塵及び防水の効果がより高まる。
【0079】
また、図1及び図5に示されるように、隔壁部12Bの一部は、第二被保護部42に繋がる電線9の経路をなす溝状に形成されている。また、図1に示されるように、隔壁部12Aの一部も、第一被保護部41に繋がる電線9の経路をなす溝状に形成されている。以下、隔壁部12A,12Bにおける溝状に形成された部分のことを配線溝部15と称する。図1に示されるように、一方の隔壁部12Aには2つの配線溝部15が形成されており、他方の隔壁部12Bには1つの配線溝15が形成されている。
【0080】
また、図4に示されるように、配線空間90における保護空間90A,90B以外の部分には、電線9における被保護部41,42以外の部分が収容される。
【0081】
<効果>
ワイヤハーネス100において、電線9は、配線具10を構成するベース部1及びカバー部2の間に挟み込まれる。さらに、板状のベース部1において内側の配線部11から外側の第一枠部13に亘って配置された電線9は、第一枠部13における予め定められた位置に設けられた電線結束部14又はコネクタ支持部18で固定される。
【0082】
従って、配線具10が取り付けられた電線9において、電線結束部14又はコネクタ支持部18で固定された部分は一定の位置に保持され、さらに、電線結束部14又はコネクタ支持部18で固定された部分から外側に位置する部分の長さは一定の長さで保持される。即ち、電線9の端部が接続相手に対して過不足なく届くように、電線9の形状が配線具10によって保持される。また、電線9は、ベース部1及びカバー部2によって保護される。
【0083】
また、ワイヤハーネス100において、電線9に接続された電子基板又は電線9の一部であるスプライス部などの被保護部41,42は、ベース部1における保護室底板部11A,11B及び隔壁部12A,12Bとカバー部2の保護室天井部21A,21Bとにより周囲が覆われる。これにより、被保護部41,42は、他の部分と接触せず、保護される。
【0084】
また、配線具10は、電線9を予め定められた形状に保持する機能と、被保護部41,42を覆う機能とを兼ね備える。即ち、被保護部41,42を含む電線群がベース部1の配線部11に配置され、電線9の一部がベース部1の電線結束部14又はコネクタ支持部18に固定された後、カバー部2がベース部1に組み合わされるだけで、電線9の形状が保持され、被保護部41,42が配線具10の一部で覆われる。従って、配線具10が採用されることにより、電線9を予め定められた形状に保持するための部材及び作業と、被保護部41,42を覆うための部材及び作業とが簡素化される。
【0085】
また、配線具10において、ベース部1の隔壁部12A,12Bは、凹凸をなす板状のベース部1の剛性を高める補強部として機能する。そのため、ベース部1は、省スペース化及び軽量化のために厚みが比較的小さく形成されても高い剛性を確保することができる。
【0086】
また、配線具10において、カバー部2に形成された凸状の蓋部24は、ベース部1の隔壁部12A,12Bの内側に嵌り込んで隔壁部12A,12Bが形成する開口を塞ぐ。そのため、隔壁部12A,12Bの内側の保護空間90A,90Bの密閉性が高まり、被保護部41,42がより確実に保護される。
【0087】
また、樹脂又はゴムなどのコーティング剤が、被保護部41,42が配置された隔壁部12A,12Bの内側の保護空間90A,90Bに充填されれば、被保護部41,42の防塵及び防水の効果がより高まる。
【0088】
また、ベース部1における隔壁部12A,12Bに配線溝部15が形成されているため、隔壁部12A,12Bを跨ぐ電線9の弾性によって被保護部41,42が隔壁部12A,12B内から浮き上がることが防止される。これにより、被保護部41,42を隔壁部12A,12B内へ収容する作業が容易となる。
【0089】
また、配線具10において、ベース部1及びカバー部2が、曲げ変形可能な接続部3と連なって一体に形成されている。そのため、部品点数が少なくなり、配線具10を電線9に取り付けるための工数がより簡素化される。
【0090】
また、一般に、平板状の部材の真空成形により得られる部材は、樹脂の射出成形により得られる部材よりも簡易に、かつ、低コストで製造できる。配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られた部材であるため、製造工数及び製造コストが低減される。
【0091】
<その他>
以上に示された実施形態においては、ベース部1とカバー部2とは、接続部3を介して繋がって一体に形成されている。しかしながら、ベース部1とカバー部2とが別部材で構成されることも考えられる。
【0092】
また、ベース部1及びカバー部2が、樹脂の射出成形により得られる部材であることも考えられる。但し、配線具10は、上下方向(一次元方向)においてのみ凹凸をなす板状に成形された部材であり、板状の樹脂部材に対する真空成形によって容易に得られる部材である。従って、製造工数及び製造コストの面において、配線具10は、平板状の部材の真空成形により得られる部材であることが望ましい。
【符号の説明】
【0093】
1 ベース部(基体)
2 カバー部(被覆体)
3 接続部
8 結束ベルト
9 電線
10 配線具
11 配線部
11A,11B 保護室底板部
12 第一段差部
12A,12B 隔壁部
13 第一枠部
14 電線結束部
15,25 配線溝部
16 仮留め用凹部
17,27 クランプ孔
18 コネクタ支持部
21 対向壁部
21A,21B 保護室天井部
22 第二段差部
22A,22B 天井支持部
23 第二枠部
24 蓋部
26 仮留め用凸部
41,42 被保護部
81 ベルト部
90 配線空間
90A,90B 保護空間
91 コネクタ
92 コネクタの連結部
100 ワイヤハーネス
141 電線通過部
142 ベルト通過部
181 嵌入片
182 嵌入片の孔
921 ガイドレール部
922 架設部
923 突起部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を予め定められた形状で保持する配線具であって、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、前記電線もしくは前記電線に接続された機器が配置される配線空間に面する配線部と、該配線部から起立し、前記配線空間のうち前記電線の一部もしくは前記機器を含む被保護部が配置される部分空間を囲んで形成された隔壁部と、前記電線が固定される電線固定部と、を有する基体と、
前記基体に組み合わされ前記基体における前記配線部を含む領域を覆う被覆体と、を備えることを特徴とする配線具。
【請求項2】
前記被覆体は、凹凸をなす板状に成形された部材からなり、かつ、前記基体側へ凸状に形成され前記基体の前記隔壁部の内側に嵌り込んで前記隔壁部が形成する開口を塞ぐ蓋部を有する、請求項1に記載の配線具。
【請求項3】
前記基体における前記隔壁部の一部が、前記被保護部に繋がる前記電線の経路をなす溝状に形成されている、請求項1又は請求項2に記載の配線具。
【請求項4】
前記基体及び前記被覆体は、曲げ変形可能な接続部と連なって一体に形成されている、請求項1から請求項3のいずれかに記載の配線具。
【請求項5】
前記基体及び前記被覆体は、平板状の樹脂部材の真空成形により得られた部材である、請求項1から請求項4のいずれかに記載の配線具。
【請求項6】
電線と、
前記電線を予め定められた形状で保持する配線具と、を備えたワイヤハーネスであって、
前記配線具は、
凹凸をなす板状に成形された部材からなり、前記電線もしくは前記電線に接続された機器が配置される配線空間に面する配線部と、該配線部から起立し、前記配線空間のうち前記電線の一部もしくは前記機器を含む被保護部が配置される部分空間を囲んで形成された隔壁部と、前記電線が固定される電線固定部と、を有する基体と、
前記基体に組み合わされ前記基体における前記配線部を含む領域を覆う被覆体と、を備えることを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−17316(P2013−17316A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−148775(P2011−148775)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(395011665)株式会社オートネットワーク技術研究所 (2,668)
【出願人】(000183406)住友電装株式会社 (6,135)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】