説明

配線基板及び超音波プローブ

【課題】超音波プローブは、大型化やプローブ診断装置と接続するケーブルの太さの増大の防止が望まれている。
【解決手段】実施形態の超音波プローブ1は、超音波の放出及び受信を行うとともに、前記受信した超音波の信号を送信する複数の素子19を有し、これら素子19が、複数の対となる区画に区分され、且つ、対となる区画間に、他の区画が配置された圧電体10と、対の区画にそれぞれ設けられた素子に接続され、対の区画の一方に接続された素子19から送信された信号を受信する受信回路44を複数有する回路基板13と、を備える。また、超音波プローブ1は、複数の素子19に接続された第1配線板28、及び、可撓性を有して第1配線板28に接続されるとともに、素子19を区画毎に回路基板13にそれぞれ電気的に接続させる第2配線板29を有し、対の区画に接続された第2配線板29が回路基板13に隣接して接続される配線基板11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、可撓性を有し、被検体等に超音波信号を送受信する圧電体に接続される配線基板、及び、この配線基板を用いた超音波プローブに関する。
【背景技術】
【0002】
エコー画像診断に用いるプローブ診断装置に用いられ、被検体等の対象物内を画像として表示するために、対象物に対して超音波信号を送信し、その対象物内からの反射信号を受信する超音波部プローブが知られている。また、超音波プローブの圧電体から可撓性を有する電極板により電極線の引き出しを行う技術も知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、近年、超音波プローブは、三次元動画像によるリアルタイム診断が可能な二次元アレイ超音波プローブ等が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−280097号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した超音波プローブは、ヘッドに搭載される圧電素子数が多くなり、これに伴い、接続線が増加するため、大型化やプローブ診断装置と接続するケーブルの太さの増大の防止が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の配線基板は、超音波の放出及び受信を行うとともに、前記受信した超音波の信号を送信する複数の素子を有し、これら素子が、複数の対となる区画に区分され、且つ、前記対となる区画間に、他の区画が配置された圧電体と、前記対の区画にそれぞれ設けられた前記素子に接続され、前記対の区画の一方に接続された前記素子から送信された前記信号を受信する受信回路を複数有する回路基板とを接続する配線基板であって、前記複数の素子に接続された第1配線板と、可撓性を有して前記第1配線板に接続されるとともに、前記素子を前記区画毎に前記回路基板にそれぞれ電気的に接続させる第2配線板と、を備え、前記対の区画に接続された前記第2配線板が前記回路基板に隣接して接続される。
【0007】
実施形態の超音波プローブは、超音波の放出及び受信を行うとともに、前記受信した超音波の信号を送信する複数の素子を有し、これら素子が、複数の対となる区画に区分され、且つ、前記対となる区画間に、他の区画が配置された圧電体と、前記対の区画にそれぞれ設けられた前記素子に接続され、前記対の区画の一方に接続された前記素子から送信された前記信号を受信する受信回路を複数有する回路基板と、前記複数の素子に接続された第1配線板、及び、可撓性を有して前記第1配線板に接続されるとともに、前記素子を前記区画毎に前記回路基板にそれぞれ電気的に接続させる第2配線板を有し、前記対の区画に接続された前記第2配線板が前記回路基板に隣接して接続される配線基板と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係る超音波プローブの構成を示す斜視図。
【図2】同超音波プローブの要部構成を示す断面図。
【図3】同超音波プローブの要部構成を示す断面図。
【図4】同超音波プローブに用いられる圧電体の要部構成を模式的に示す断面図。
【図5】同圧電体の構成を模式的に示す平面図。
【図6】同超音波プローブ1に用いられる受信側フレキシブル配線基板の構成を分解して示す平面図。
【図7】同受信側フレキシブル配線基板の構成を示す平面図。
【図8】同超音波プローブの要部構成を模式的に示す説明図。
【図9】同超音波プローブの使用の一例を模式的に示す説明図。
【図10】他の実施形態に係る超音波プローブの構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
実施形態に係る超音波プローブ1を、図1乃至図9を用いて説明する。図1は実施形態に係る超音波プローブ1の構成を示す斜視図、図2は超音波プローブ1の図1のII−II断面の構成を模式的に示す断面図、図3は超音波プローブ1の図2中のIII−III断面の構成を模式的に示す断面図、図4は圧電体10の構成を模式的に示す断面図、図5は圧電体10の構成、具体的には圧電体10に用いられる素子19及び区画の構成を模式的に示す平面図、図6は超音波プローブ1に用いられる受信側フレキシブル配線基板22の構成を分解して示す平面図、図7は受信側フレキシブル配線基板22の構成を示す平面図、図8は圧電体10及び回路基板13の接続の一例を模式的に示す説明図、図9は超音波プローブ1の使用の一例を模式的に示す説明図である。
【0010】
本実施形態に係る超音波プローブ1は、プローブ診断装置に用いられる、所謂コンベックス型二次元アレイ超音波プローブである。超音波プローブ1が用いられるプローブ診断装置は、例えば、超音波プローブ1の駆動信号を発生させるパルサと、超音波プローブ1から送られた信号を処理する画像処理部と、当該画像処理部で画像形成された画像を表示する画像モニタと、を備えている。
【0011】
図1に示すように、超音波プローブ1は、作業者が掴む持手部3及びヘッド4を有する外郭部材2と、画像処理部と信号を送受信する接続ケーブル(以下「ケーブル」)5と、を備えている。
【0012】
ヘッド4は、その先端が曲面形状に形成されている。具体的には、ヘッド4は、その先端に設けられ、曲面形状に形成されたレンズ4aを有し、このレンズ4aから超音波が対象物に照射される。また、ヘッド4は、対象物に対して超音波の照射方向が図1中矢印Rで示すように放射状となるように形成されている。このようなヘッド4は、その内部に後述する検出部6を収納する。
【0013】
図2、図3に示すように、検出部6は、圧電体10と、フレキシブル配線基板(配線基板)11と、ベース部材12と、回路基板13と、を備えている。
【0014】
圧電体10は、ヘッド4の先端の曲面に沿って湾曲する二次元アレイ状に形成されている。具体的には、図4に示すように、圧電体10は、例えば、バッキング材16、圧電振動子17及び音響整合層18が積層され、図4中二点鎖線で示すように、この積層体がブレード等により凸面形状にダイシングされることで形成される。
【0015】
バッキング材16は、圧電振動子17を機械的に支持し、超音波パルスを短くするために、圧電振動子17を制御する機能を有している。なお、バッキング材16の厚さは、音響特性を良好に維持するために、使用する超音波の波長に対して十分な厚さに設定されている。なお、使用する超音波の波長に対して十分な厚さとは、バッキング材16の背面方向の超音波が十分に減衰される厚さであり、各構成により適宜設定可能である。
【0016】
圧電振動子17は、例えば、PZT(チタン酸ジルコン酸鉛)等の圧電セラミックスにより形成されている。圧電振動子17は、その上方及び下方にそれぞれ電極が設けられている。圧電振動子17は、パルサからの駆動信号に基き超音波を発生させ、且つ、被検体からの反射波を電気信号に変換する機能を有している。
【0017】
音響整合層18は、音速、厚み、音響インピーダンス等の物理的パラメータを調整可能に形成されている。音響整合層18は、被検体と圧電振動子17との音響インピーダンスの整合を図ることが可能に形成されている。なお、図4に示す例では、音響整合層18は、2層設ける構成を例示する。
【0018】
圧電体10は、図3乃至図5に示すように、ダイシングにより凸面形状に形成された複数の素子19を有している。これら素子19は、所謂振動子であり、超音波の放出及び受信を行うとともに、受信した超音波の信号を送信可能に形成されている。図5に示すように、素子19は、圧電体10の行方向に36個の素子19が配列され、列方向に128個の素子19が配置されている。換言すると、圧電体10は、36素子(36ch)×128素子(128ch)のマトリクスサイズであり、合計で4,608個の素子19を有している。
【0019】
また、圧電体10は、これら素子19の配列ピッチが、行方向に0.32mm、列方向に0.48mmに形成され、圧電体10の寸法は、12mm×62mm程度に形成される。
【0020】
なお、圧電体10は、図5に示すように、18素子×16素子の計288素子を一つの区画として、16区画に区分される。これら16区画を、説明の便宜上、それぞれ区画a〜区画pとして説明する。なお、図5に示すように、区画aは、行方向に1〜18の素子を有し、列方向に1〜16の素子を有する。区画bは、行方向に1〜18の素子を有し、列方向に17〜32の素子を有する。これらのように、他の区画c〜区画pに関しても、図5に示すように、順次区分される。
【0021】
また、これら区画a〜pは、それぞれ後述するように、複数の対となる区画に区分されている。また、これら対となる区画間には、他の区画が配置される。
【0022】
また、圧電体10は、素子19の超音波照射面(図2及び図3中の圧電体10の上方の主面)にそれぞれ設けられた電極(不図示)、及び、素子19の背面(図2中の圧電体10の下方の面)にそれぞれ設けられた電極19aと、備えている。
【0023】
このような圧電体10は、超音波照射面に設けられた電極が、回路基板13の後述する送信側回路基板35にフレキシブル配線基板11を介して電気的に接続される。また、圧電体10は、背面に設けられた電極19aが、回路基板13の後述する受信側回路基板36に、フレキシブル配線基板11を介して電気的に接続される。
【0024】
フレキシブル配線基板11は、送信側フレキシブル配線基板21と、受信側フレキシブル配線基板22と、を備えている。送信側フレキシブル配線基板21は、可撓性を有するポリイミド等の樹脂材料で形成される。送信側フレキシブル配線基板21は、圧電体10の超音波照射面の電極及び送信側回路基板35に接続され、圧電体10及び送信側回路基板35を電気的に接続する。
【0025】
図2、図3、図6及び図7に示すように、受信側フレキシブル配線基板22は、一対の基板部材25、25及び支持部材26により形成されている。受信側フレキシブル配線基板22は、その一方の主面(図2,3中上方、以下「上面」)に、導電粒子を有する熱硬化性樹脂等で形成された異方性導電膜(ACF)27により圧電体10が接続固定される。
【0026】
なお、基板部材25,25は、同一形状に形成され、互いに対称となるように支持部材26に配置される。また、基板部材25は、第1、第2配線板28、29及び配線部により、所謂三層構造と呼ばれる配線基板を成す。即ち、基板部材25は、その上下面に接地層を有し、この接地層間に、ポリイミド層及び接着剤層により狭持された複数の信号線が配置される。
【0027】
なお、基板部材25は、三層構造の配線基板に限定されず、所謂両面配線と呼ばれる、ポリイミド層の両面に信号線を有する構成や、シールドを有する構成、及び5層構造と呼ばれる構成であってもよい。
【0028】
説明の便宜上、一方の基板部材25を基板部材25Aとし、他方の基板部材25を基板部材25Bとして、以下説明する。
【0029】
具体的には、基板部材25Aは、支持部材26に載置される方形状の第1配線板28と、第1配線板28の側方から突出する複数の第2配線板29とを備え、第1配線板28及び第2配線板29間は複数の配線(不図示)により電気的に接続される。
【0030】
第1配線板28は、可撓性を有するポリイミド等の樹脂材料により形成され、その内部に複数の配線が形成されている。第1配線板28は、圧電体10の長手方向の一方側と略同等の長方形状に形成されている。なお、第1配線板28は、可撓性を要するため、その厚さが薄いことが望ましい。第1配線板28は、図6に示すように、その上面に、第1電極30を有している。
【0031】
なお、この基板部材25Aの第1電極30は、圧電体10の各素子19の半数、例えば、圧電体10の区分された区画a〜区画d及び区画i〜区画lの8つの区画に配置された複数の素子19が配置される領域A〜領域D及び領域I〜領域Lを有し、圧電体10の区画a〜区画d及び区画i〜区画lにそれぞれ設けられた複数の素子19の背面の電極19aとそれぞれ接続される複数の電極端子30aの集合である。なお、図6,7中、第1電極30は、一部省略し、電極端子30aは省略して模式的に示す。
【0032】
図6,7に示すように、第2配線板29は、可撓性を有するポリイミド等の樹脂材料により、第1配線板28に一体に形成されている。また、第2配線板29は、その内部に、第1配線板28内の配線と連続する複数の配線が形成されている。なお、第2配線板29は、可撓性を要するため、その厚さが薄いことが望ましい。
【0033】
第2配線板29は、第1配線板28の両側縁にそれぞれ4本突出して設けられる。第2配線板29は、区画a〜区画d及び区画i〜区画lの8つの区画にそれぞれ接続される第1電極30の領域A〜D、I〜Lに配線部を介してそれぞれ電気的に接続された第2電極31を備えている。
【0034】
なお、説明の便宜上、第1電極30のそれぞれの領域A〜D、I〜Lに接続される第2電極31には、各領域A〜D、I〜Lと同一のアルファベットを対応させて、それぞれ第2電極31a〜31d、31i〜31lとした符号を付して以下説明を行う。即ち、第2電極31aは、区画aの複数の素子19と、第2電極31bは区画bの複数の素子19と、それぞれ第1電極30の領域A、B及び配線部を介して電気的に接続される。同様に、他の第2電極31は、第2電極31の符号に付されたアルファベットと、圧電体10の各区画に付されたアルファベットと同一の区画に配置された素子19とが電気的に接続される。
【0035】
各第2配線板29は、第1配線板28の側方から突出するとともに、適宜一箇所以上で曲折して形成される。具体的には、第2配線板29は、第1配線板28が支持部材26に固定され、且つ、支持部材26及び第1配線板28が湾曲した際に、回路基板13の所定の位置に第2電極31をそれぞれ接続可能に一部曲折して形成されている。
【0036】
基板部材25Bは、基板部材25Aと同様に、支持部材26に載置される方形状の第1配線板28と、第1配線板28の側方から突出する複数の第2配線板29と、を備えている。
【0037】
なお、基板部材25Bの第1電極30は、圧電体10の各素子19の半数、例えば、圧電体10の区分された区画e〜区画h及び区画m〜区画pの8つの区画が配置される領域E〜領域H及び領域M〜領域Pを有し、圧電体10の区画e〜区画h及び区画m〜区画pにそれぞれ設けられた複数の素子19の背面の電極19aとそれぞれ接続される複数の電極端子30aの集合である。
【0038】
基板部材25Bの第2配線板29は、第1配線板28の両側縁にそれぞれ4本突出して設けられる。第2配線板29は、区画e〜区画h及び区画m〜区画pの8つの区画にそれぞれ接続される第1電極30の領域E〜H、M〜Pに配線部を介してそれぞれ電気的に接続された第2電極31を備えている。
【0039】
なお、説明の便宜上、第1電極30のそれぞれの領域E〜H、M〜Pに接続される第2電極31には、各領域E〜H、M〜Pと同一のアルファベットを対応させて、それぞれ第2電極31e〜31h、31m〜31pとした符号を付して以下説明を行う。即ち、第2電極31eは、区画eの複数の素子19と、第2電極31fは区画fの複数の素子19と、それぞれ第1電極30の領域E、F及び配線部を介して電気的に接続される。同様に、他の第2電極31は、第2電極31の符号に付されたアルファベットと、圧電体10の各区画に付されたアルファベットと同一の区画に配置された素子19とが電気的に接続される。
【0040】
また、各第2配線板29は、第1配線板28の側方から突出するとともに、適宜一部以上で曲折して形成される。具体的には、第2配線板29は、第1配線板28が支持部材26に固定され、且つ、第1配線板28が湾曲した際に、回路基板13の所定の位置に第2電極31をそれぞれ接続可能に形成されている。
【0041】
支持部材26は、例えば、可撓性を有するポリイミド等の樹脂材料により形成され、受信側フレキシブル配線基板と略同一形状の主面を有している。支持部材26は、第1配線板28,28と共に、圧電体10の湾曲と略同等の曲面により形成される。
【0042】
このように、受信側フレキシブル配線基板22は、支持部材26に一対の基板部材25A,25Bを固定支持することで形成される。また、受信側フレキシブル配線基板22は、支持部材26及び第1配線板28、28が湾曲し、基板部材25A,25Bの対応する第2配線板29が隣り合って回路基板13に設けられる。
【0043】
ベース部材12は、その上面が、ヘッド4の先端(レンズ4a)の曲面に沿って湾曲する湾曲面を有している。このベース部材12は、受信側フレキシブル配線基板22を湾曲面に固定し、且つ、受信側フレキシブル配線基板22を湾曲面に沿って湾曲させる。
【0044】
回路基板13は、2枚の送信側回路基板35と、4枚の受信側回路基板36と、を備えている。送信側回路基板35は、圧電体10の上面に設けられた電極と電気的に接続される。図3に示すように、送信側回路基板35は、送信側フレキシブル配線基板21と、異方性導電膜等により電気的に接続され、この送信側フレキシブル配線基板21を介して圧電体10と接続される。
【0045】
受信側回路基板36は、ベース基板41と、このベース基板41上に4つ設けられた第3電極42と、この第3電極42にそれぞれ接続されたスイッチング素子(以下「スイッチ」)43と、これらスイッチ43に接続された2つの受信回路44と、を備えている。
【0046】
なお、説明の便宜上、図3に示す4つの受信側回路基板36を、それぞれ、図3中左側から第1回路基板36A、第2回路基板36B、第3回路基板36C及び第4回路基板36Dとし、同様に、図8中に示す4つの受信側回路基板36についても、第1回路基板36A、第2回路基板36B、第3回路基板36C及び第4回路基板36Dとして以下説明する。
【0047】
図2に示すように、第3電極42は、第2電極31と、異方性導電膜を介して接続可能に形成されている。スイッチ43は、所謂ON−OFFスイッチであり、圧電体10の素子19から受信回路44への信号の導通(ON)及び非導通(OFF)を切り替え可能に形成されている。即ち、スイッチ43は、第2、第3電極31,42に接続された複数の素子19から受信する信号のON−OFFが切り替え可能に形成されている。
【0048】
図8に示すように、第3電極42は、圧電体10の各区画a〜pにそれぞれ設けられた複数の素子19に接続される。なお、図8中、複数の第3電極42は、それぞれ接続される第1電極30の各区画a〜pに付されたアルファベットと同一のアルファベットを図中に付し、同様に、各第3電極42を、対応する符号を付して第3電極42a〜第3電極42pとし、以下説明する。なお、図8中、第1電極30は、圧電体10に各領域A〜Pが各区画a〜pに接続されており、このため、第1電極30の符号のみ付し、各領域A〜Pの記載は省略する。
【0049】
第1回路基板36Aには、第3電極42a、第3電極42e、第3電極42c及び第3電極42gが順に設けられる。第2回路基板36Bには、第3電極42b、第3電極42f、第3電極42d及び第2電極42hが、順に設けられる。第3回路基板36Cには、第3電極42i、第3電極42m、第3電極42k及び第3電極42oが、順に設けられる。第4回路基板36Dには、第3電極42j、第3電極42n、第3電極42l及び第3電極42pが、順に設けられる。
【0050】
図8に矢印で示すように、これら第3電極42a〜42pは、各区画a〜pの各素子とそれぞれ接続される。なお、図8中実線の矢印が、受信側フレキシブル配線基板22の基板部材25Aの第2配線板29に設けられた配線部を、図8中破線の矢印が、基板部材25Bの第2配線板29に設けられた配線部を、それぞれ示している。
【0051】
受信回路44は、2つのスイッチ43に接続される。受信回路44は、接続されたスイッチ43のうち、導通となっている側からの信号を受信可能に形成されている。また、受信回路44は、ケーブル5に接続され、このケーブル5を介して画像処理部に接続される。
【0052】
具体的には、受信回路44は、接続されたスイッチ43と接続される各区画の、対応する素子19から送信された反射信号の一方を受信する。例えば、図2の受信側回路基板36の左側に示す受信回路44には、圧電体10の区画a及び区画eの複数の素子19にそれぞれに接続されたスイッチ43,43が接続される。
【0053】
当該スイッチ43,43においては、区画aの行列が(1,1)の素子19及び区画eの行列が(1,65)の素子19が、区画aの行列が(1,2)の素子19及び区画eの行列が(1,66)の素子19が、区画aの行列が(2,1)の素子19及び区画eの行列が(2,65)の素子19が、それぞれ対として接続され、他素子19も同様に対として接続される。受信回路44は、対の素子19のうちどちらか一方が、スイッチ43により導通することで、当該素子19からの反射信号を受信するとともに、他方の素子19に接続されたスイッチ43が非導通となり、受信回路44では、他方の素子19の反射信号は受信しない。
【0054】
次に、このように構成された圧電体10、受信側フレキシブル配線基板22及び受信側回路基板36の接続について図2,3,5〜8を用いて詳細を説明する。
【0055】
先ず、圧電体10の電極19aを、受信側フレキシブル配線基板22の第1電極30にそれぞれ固定する。なお、このとき、各区画a〜pに区分された各素子19の電極19aが、対応する第1電極30の領域A〜領域Pにそれぞれ設けられた第1電極30にそれぞれ接続される。なお、受信側フレキシブル配線基板22の第2電極31a〜31pは、それぞれ同一符号が付された区画a〜pのそれぞれの素子19と第1電極30及び配線部を介して接続される。
【0056】
次に、圧電体10が固定された受信側フレキシブル配線基板22を、ベース部材12に固定させることで、第1配線板28,28が湾曲し、各第2電極31a〜31pが所定の位置に隣り合うように配置される。
【0057】
具体的には、図2,7,8に示すように、第1配線板28,28の一方の側方に設けられた第2電極31a〜31hは、第2電極31aと第2電極31eが、第2電極31bと第2電極31fが、第2電極31cと第2電極31gが、第2電極31dと第2電極31hが、それぞれ隣り合うように配置される。
【0058】
また、第1配線板28,28の他方の側方に設けられた第2電極31i〜31pは、第2電極31iと第2電極31mが、第2電極31jと第2電極31nが、第2電極31kと第2電極31oが、第2電極31lと第2電極31pが、それぞれ隣り合うように配置される。
【0059】
なお、このとき、各電極31a〜31pが設けられた第2配線板29は、第1配線板28の同じ側方に設けられた一部で重なり合う。換言すると、基板部材25A及び基板部材25Bの第2配線板29、29はその一部で交差することとなる。
【0060】
次に、図2に示すように、第2電極31a〜31pを第3電極42a〜42pにそれぞれ接続する。具体的には、第1回路基板36Aに設けられた第3電極42a、42e、42c、42gは、それぞれ第2電極31a、31e、31c、31gと接続される。第2回路基板36Bに設けられた第3電極基板42b、42f、42d、42hは、それぞれ第2電極31b、31f、31d、31hと接続される。
【0061】
第3回路基板36Cに設けられた第3電極42i、42m、42k、42oは、それぞれ第2電極31i、31m、31k、31oと接続される。第4回路基板36Dに設けられた第3電極42j、42n、42l、42pは、それぞれ第2電極31j、31n、31l、31pと接続される。これにより、圧電体10の各区画a〜pに設けられた各素子19が、第3電極42a〜42pに接続される。
【0062】
次に、このような超音波プローブ1の製造方法について説明する。
先ず、圧電体10を形成する。具体的には、圧電振動子17の主面の上方及び下方にそれぞれ電極を形成する。次に、図8に示すように、圧電振動子17の上面に音響整合層18を、圧電振動子17の下面にバッキング材16を、それぞれ設ける。なお、この段階で、圧電体10は、板状に形成されている。
【0063】
次に、支持部材26上に基板部材25A及び基板部材25Bを固定し、受信側フレキシブル配線基板22を形成する。この形成した受信側フレキシブル配線基板22の上面に設けられた第1電極30,30上に、異方性導電膜27を設け、さらに、圧電体10を所定の位置に位置合わせを行う。
【0064】
なお、ここで、所定の位置とは、図7に示すように、圧電体10が配置される第1電極30,30上の領域A〜Pであり、圧電体10の区画a〜pと領域A〜Pとが対向するように、圧電体10の位置合わせを行う。圧電体10を配置後、熱圧着装置を用いて、圧電体10及び受信側フレキシブル配線基板22を熱圧着させる。
【0065】
次に、圧電体10を素子19の配列ピッチに従ってダイシングする。具体的には、受信側フレキシブル配線基板22をカッティングベースに仮固定して圧電体10を固定し、上述した素子19の配列ピッチに従って、幅50μmのブレートを用いてダイシングする。このとき、ブレードによる切り込み深さは、図3の圧電体10及び異方性導電膜27に示すように、確実に圧電体10を切断する深さ、例えば、異方性導電膜27を20μm程度まで切除する。このようなダイシング後、受信側フレキシブル配線基板22をカッティングベースから外す。
【0066】
次に、受信側フレキシブル配線基板22をベース部材12の湾曲面に固定し、第1配線板28、28を曲折させる。この第1配線板28、28の曲折により、圧電体10が凸面形状となる。また、第1配線板28,28の曲折により、第2配線板29の各第2電極31は、受信側回路基板36の各第3電極42の配置に対応してそれぞれ配置される。
【0067】
次に、受信側回路基板36の第3電極42a〜42pにそれぞれ異方性導電膜を設け、上述したように、第3電極42a〜42pにそれぞれ対応する第2配線板29の第2電極31a〜31pを熱圧着により接続する。このような工程により、圧電体10に受信側フレキシブル配線基板22が接続される。
【0068】
なお、送信側フレキシブル配線基板21は、図3に示すように、圧電体10の上方の電極に接続されるとともに、送信側回路基板35に接続される。これにより、圧電体10と送信側回路基板35とが接続される。これらの工程により、超音波プローブ1の検出部6が製造される。
【0069】
このように構成された送信側フレキシブル配線基板21を備えた超音波プローブ1は、パルサから、送信側回路基板35及び送信側フレキシブル配線基板21を介して圧電体10に送信された駆動信号に基づいて、圧電体10の各素子19が、レンズ4aを介して対象物に超音波信号を放出する。
【0070】
また、対象物からの反射信号(エコー信号)を、圧電体10で受信し、この反射信号を、受信側フレキシブル配線基板22を介して受信側回路基板36へと送信する。受信側回路基板36に送信された反射信号は、ケーブル5を介して、プローブ診断装置の画像処理部へと送信され、当該画像処理部で画像形成された画像が画像モニタにより表示される。
【0071】
また、反射信号は、受信側回路基板36により、圧電体10の列方向に配置された1〜128の素子19のうち、半分の素子19が、ケーブル5を介して画像処理部で処理されるとともに、所定の時間の経過に伴って、列方向に一素子ずつ画像処理部で処理される素子19が変化する。
【0072】
即ち、超音波プローブ1は、一対の素子19を共通接続し、且つ、スイッチ43により切り替えを行うことで、電子回路数を素子19の総数(チャンネル数)よりも小さくする、所謂ウォーキング・アパーチャーを利用して、画像処理部へと反射信号を送信する。
【0073】
具体的に説明すると、各素子19で受信した反射信号は、受信側フレキシブル配線基板22を介して、受信側回路基板36で受信する。このとき、受信側回路基板36において、受信した反射信号のうち、同一の受信回路44に接続された第3電極42、42にそれぞれ接続された対の素子19のうち、一方の素子19からの反射信号が、受信回路44により受信される。なお、他方の素子19から受信した反射信号は、当該素子19に接続されたスイッチ43が非導通に切り替わることで、受信回路44に送信されない。
【0074】
さらに詳しく説明すると、図9に示すように、先ず、時間t1の時には、素子19の行が1〜36であって、列が1〜64の素子19に対応するスイッチ43が導通し、他の素子19に対応するスイッチ43が非導通となる。これにより、各受信回路44において、行が1〜36であって、列が1〜64の計576chの素子19の反射信号が画像処理部に送信される。
【0075】
次に、時間t2において、素子19の行が1〜36であって、列が2〜65の素子19に対応するスイッチ43が導通し、他の素子19に対応するスイッチ43が非導通となる。これにより、各受信回路44において、行が1〜36であって、列が2〜65の計576chの素子19の反射信号が画像処理部に送信される。
【0076】
同様に、時間t3においては、素子19の行が1〜36であって、列が3〜66の素子19の反射信号が画像処理部に送信され、時間t4においては、素子19の行が1〜36であって、列が4〜67の素子19の反射信号が画像処理部に送信される。このように、時間の経過に伴って、反射信号を受信する素子19を列方向に変化させる。
【0077】
このように構成された超音波プローブ1によれば、圧電体10の列方向の中央から一方及び他方の対応する対の素子19を同一の受信回路44に接続し、且つ、対の素子19から送信される反射信号の一方のみをスイッチ43の切り替えにより検出する構成とした。 このように、スイッチ43の導通及び非導通を切り替えて、複数の素子19の半分の反射信号を受信回路44により受信させることで、受信回路44のチャンネル数を半分に低減させることが可能となる。これに伴って、受信回路44に接続されるケーブル5の数を低減させることが可能となる。
【0078】
また、圧電体10と受信回路44との接続は、フレキシブル配線基板11を介して行なう構成とした。フレキシブル配線基板11はその厚さが薄く、また可撓性を有するため、受信側フレキシブル配線基板22の複数の第2配線板29を互いに交差させることが可能となる。
【0079】
特に、ウォーキング・アパーチャーを利用して電子回路数を素子19の総数(チャンネル数)よりも小さくするためには、時間の経過ごとに受信回路44で受信する素子19の位置も順次移動する必要がある。このため、受信回路44に接続される一対の素子19は、圧電体10の長手方向の半分の距離離間することとなる。
【0080】
しかし、圧電体10の列方向の中央に対して一方側及び他方側の各対応する素子19が離間していても、受信側フレキシブル配線基板22により、第2配線板29を交差させることで、配線の取り回しが容易となる。これにより、各受信側回路基板36上で対応する圧電体10の各区画同士を隣接させて第3電極42に接続する際に、配線部である第2配線板29の取り回しに必要な配線の配置容積が低減する。これにより、検出部6の小型化が可能となる。
【0081】
このように、検出部6の小型化及びケーブル5の低減により、超音波プローブ1の小型化及びケーブル5の細線化が可能となる。このため、超音波プローブ1の重量の低減、及び、ケーブル5の抵抗の減少となり、結果、超音波プローブ1の操作性を向上することが可能となる。
【0082】
上述したように本実施形態の超音波プローブ1によれば、圧電体10の離間した素子19を、回路基板13の同一の受信回路44にフレキシブル配線基板11により接続し、同一受信回路44に接続された対の素子19の一方のみの反射信号を受信することで、超音波プローブ1の小型化及びケーブル5の細線化が可能となる。
【0083】
なお、本実施形態の超音波プローブ1に限定されるものではない。例えば、上述した圧電体10は、素子19を36行128列有する構成を説明したがこれに限定されず、素子19の数は適宜設定可能である。また、これに伴い、圧電体10の区画、第1電極30の領域、第2配線板29の数、受信側回路基板36及び第3電極42の数等も適宜変更可能である。
【0084】
また、上述した例では、超音波プローブ1は、その先端が曲面する構成を説明したが、これに限定されない。例えば、図10に示す本実施形態の変形例、即ち、他の実施形態に係る超音波プローブ1Aとして、そのヘッド4の先端形状が平面状に形成されていてもよい。このような超音波プローブ1Aは、平面板状に形成された圧電体10Aを有する。また、超音波プローブ1Aは、圧電体10Aだけでなく、第1配線板28(図10中、不図示)及び支持部材26(図10中、不図示)を固定するベース部材12(図10中、不図示)の先端も平面に形成され、同様に、レンズ4a(図10中、不図示)も平面に形成される。なお、超音波プローブ1Aは、圧電体10Aの各区分された素子19の区画a〜pとそれぞれ回路基板13を、フレキシブル配線基板11を介して接続される。
【0085】
このような構成の超音波プローブ1Aは、上述した超音波プローブ1と同様に、フレキシブル配線基板11の第2配線板29により、圧電体10Aの区分された各区画を各受信側回路基板36にそれぞれ接続することで、上述した超音波プローブ1と同様の効果を得ることが可能となる。
【0086】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0087】
1、1A…超音波プローブ、2…外郭部材、3…持手部、4…ヘッド、4a…レンズ、5…接続ケーブル、6…検出部、10…圧電体、10A…圧電体、11…フレキシブル配線基板(配線基板)、12…ベース部材、13…回路基板、16…バッキング材、17…圧電振動子、18…音響整合層、19…素子、21…送信側フレキシブル配線基板、22…受信側フレキシブル配線基板、25…基板部材、26…支持部材、27…異方性導電膜、28…第1配線板、29…第2配線板、30…第1電極、31…第2電極、35…送信側回路基板、36…受信側回路基板、41…ベース基板、42…第3電極、43…スイッチング素子、44…受信回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波の放出及び受信を行うとともに、前記受信した超音波の信号を送信する複数の素子を有し、これら素子が、複数の対となる区画に区分され、且つ、前記対となる区画間に、他の区画が配置された圧電体と、前記対の区画にそれぞれ設けられた前記素子に接続され、前記対の区画の一方に接続された前記素子から送信された前記信号を受信する受信回路を複数有する回路基板とを接続する配線基板であって、
前記複数の素子に接続された第1配線板と、
可撓性を有して前記第1配線板に接続されるとともに、前記素子を前記区画毎に前記回路基板にそれぞれ電気的に接続させる第2配線板と、を備え、
前記対の区画に接続された前記第2配線板が前記回路基板に隣接して接続されることを特徴とする配線基板。
【請求項2】
超音波の放出及び受信を行うとともに、前記受信した超音波の信号を送信する複数の素子を有し、これら素子が、複数の対となる区画に区分され、且つ、前記対となる区画間に、他の区画が配置された圧電体と、
前記対の区画にそれぞれ設けられた前記素子に接続され、前記対の区画の一方に接続された前記素子から送信された前記信号を受信する受信回路を複数有する回路基板と、
前記複数の素子に接続された第1配線板、及び、可撓性を有して前記第1配線板に接続されるとともに、前記素子を前記区画毎に前記回路基板にそれぞれ電気的に接続させる第2配線板を有し、前記対の区画に接続された前記第2配線板が前記回路基板に隣接して接続される配線基板と、を備えることを特徴とする超音波プローブ。
【請求項3】
前記回路基板は、前記対の区画にそれぞれ接続された前記素子と、前記受信回路との間に設けられ、前記素子から送信された前記信号の導通及び非導通を切り替えるスイッチング素子を有し、前記スイッチング素子の切り替えにより、前記対の区画の一方に接続された前記素子から送信された前記信号を受信することを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。
【請求項4】
前記配線基板は、前記複数の第2配線板の一部が少なくとも交差して、前記回路基板に接続されることを特徴とする請求項2に記載の超音波プローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−65914(P2012−65914A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214352(P2010−214352)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】