説明

配線方法及び配線部材

【課題】ケーブルの配線を容易にかつ短時間で行うことが可能な配線方法及び配線部材を提供する。
【解決手段】ドロップケーブル13を配線部材1に保持させる配線方法であって、ドロップケーブル13を保持可能な2つのリング部22を有する一対の配線リング11が間隔をあけて配設された配線箇所に対して、ドロップケーブル13を周回させて細長い輪14を形成し、この輪14の周方向の4箇所を、それぞれ、配線リング11のリング部22に設けられたケーブル挿抜部24からドロップケーブル13の横断面方向にリング部22内へ通して保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クロージャ等で扱われるケーブルの配線方法及び配線部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光ケーブルを用いたネットワークとして、加入者宅まで光ファイバを直接引き込むFTTH(Fiber To The Home)という形態が採用されている。
【0003】
FTTHでは、例えば、ケーブルの光ファイバ相互を接続すると共に、接続部と、光ファイバの余長分とを収納するための心線接続余長収納トレイを備えたクロージャが使用される。そして、このクロージャによって、通信事業者のネットワークとして加入者宅近傍に配線された数心〜数十心程度の光ケーブルから、例えば、1〜2心程度の必要本数のドロップケーブルに分岐し、ネットワークの加入者宅へ引き込んでいる(例えば、特許文献1〜3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−329848号公報
【特許文献2】特開2005−315905号公報
【特許文献3】特開2006−343579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
クロージャ内で接続されてクロージャから導出されたドロップケーブルは、クロージャに取り付けられた配線リング等の配線部材に、ある程度余長を持たせた状態で保持される。特に、クロージャの一端側から引き出されたドロップケーブルを他端側へ導く際には、一巻き分の余長を確保して配線部材に保持させることがある。
【0006】
配線部材へドロップケーブルを配線する場合の一例を、図5を参照して説明する。
図5(a)〜(c)に示す配線部材は、クロージャの両端近傍における下部に取り付けられた一対の配線リング1を有している。配線リング1は、針金2を平面視矩形状に屈曲させることによりリング部3が形成されており、リング部3が互いに平行になるようにクロージャに固定されている。配線リング1は、針金2の他端部と中間部との間に、ドロップケーブル4が挿通可能な隙間5が、それぞれ反対側に一箇所ずつ形成されている。
【0007】
上記の配線部材にドロップケーブル4を保持させるには、まず、ドロップケーブル4を周回させて細長い輪6を形成し、一方の配線リング1のリング部3内へ、その隙間5からドロップケーブル4の輪6の周方向の2箇所(6B,6A)を6B,6Aの順に入れ、輪6の一方側をリング部3内に配置させる。
【0008】
次に、図5(b)に示すように、他方の配線リング1のリング部3内へ、その隙間5からドロップケーブル4の輪6の他方側における2箇所(6C,6D)を6C,6Dの順に入れ、輪6の他方側をリング部3内に配置させる。
その後、図5(c)に示すように、風等でドロップケーブル3に張力が作用しても配線リング1から外れないように、結束バンドや接着テープ等の結束材7によってドロップケーブル4を配線リング1に結束して固定する。
【0009】
このようなドロップケーブル4の配線部材への配線は、クロージャが設置された高所等で行われるため、容易にかつ短時間で作業できることが要求されるが、上記のような作業の順番が決まっている配線作業は、作業性があまり良くなく、さらなる短時間で作業ができることが望まれる。
【0010】
本発明の目的は、ドロップケーブルの配線を容易にかつ短時間で行うことが可能な配線方法及び配線部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決することのできる本発明の配線方法は、ケーブルを配線部材に保持させる配線方法であって、
前記ケーブルを保持可能な2つのリング部を有する一対の配線リングが間隔をあけて配設された配線箇所に対して、前記ケーブルを輪状にして、この輪の周方向の4箇所を、それぞれ、前記配線リングの前記リング部に設けられたケーブル挿抜部から前記ケーブルの横断面方向に前記リング部内へ通して保持させることを特徴とする。
【0012】
本発明の配線方法において、前記ケーブルの直径よりも狭い隙間を有する前記ケーブル挿抜部に対して、前記ケーブルを通すことが好ましい。
【0013】
また、本発明の配線部材は、ケーブルを保持する配線部材であって、
間隔をあけて配設された一対の配線リングを備え、
前記配線リングは、前記ケーブルを保持可能な2つのリング部を備え、
前記リング部は、前記ケーブルを横断面方向に挿抜可能なケーブル挿抜部を有し、
前記ケーブル挿抜部を通された前記ケーブルが前記リング部に保持されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ドロップケーブルを輪状に形成し、この輪の周方向の4箇所を、それぞれ、配線リングのケーブル挿抜部からリング部内へ通して保持させるだけで、ドロップケーブルを配線することができる。これにより、高所等での作業となることが多いドロップケーブルの配線作業を容易にかつ短時間で行うことができ、作業者への負担を大幅に軽減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る配線部材の一実施形態が設けられた配線箇所を示す斜視図である。
【図2】図1の配線部材を構成する配線リングの斜視図である。
【図3】図1の配線部材を構成する配線リングを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図、(c)は正面図である。
【図4】本発明に係る配線方法による配線の手順の一実施形態を示す図であって、(a)及び(b)は、それぞれ配線箇所の斜視図である。
【図5】従来の配線方法の一例を示す図であって、(a)〜(c)は、それぞれ配線箇所の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る配線方法及び配線部材の実施の形態の例を、図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る配線部材1は、一対の配線リング11を備えている。これらの配線リング11は、クロージャ12の両端近傍における下部に取り付けられ、互いに間隔をあけた位置に配置されている。
【0017】
クロージャ12は、その内部に、多心の幹線系光ケーブルが引き込まれており、この光ケーブルの光ファイバに接続されて分岐されたドロップケーブル13がクロージャ12の一端側から導出されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、配線リング11は、針金20を屈曲させることにより形成されたものであり、固定部21と、この固定部21の両側に形成された2つのリング部22とを有している。
固定部21は、ねじ30等が挿通可能な孔部23を有しており、この孔部23にねじ30等を挿入してクロージャ12のねじ孔(図示省略)へねじ込むことにより、クロージャ12に配線リング11が固定される。
【0019】
固定部21から下方へ延在された針金20は、その下端から斜め下方へ延在された下方傾斜部20aと、下方傾斜部20aの端部から斜め上方へ延在された上方傾斜部20bと、上方傾斜部20bの端部から下方傾斜部20aと反対側の斜め下方へ延在された逆下方傾斜部20cとを形成している。そして、リング部22は、下方傾斜部20a、上方傾斜部20b及び逆下方傾斜部20cからなる平面視三角形状に形成され、その三角形の内側部分にドロップケーブル13が収容可能である。
【0020】
また、配線リング11は、針金20が逆下方傾斜部20cの端部から斜め上方へ傾斜されて下方傾斜部20aに並列に配置された並列延在部20dを有している。下方延在部20aと並列延在部20dとは、その隙間が、ドロップケーブル13の直径よりも小さく形成されている。例えば、この隙間は、0.5mm以下であり、また、下方延在部20aと並列延在部20dとが接触して隙間が0mmであってもよい。これらの下方延在部20aと並列延在部20dとの隙間部分が、ケーブル挿抜部24として形成されている。なお、この並列延在部20dの端部では、針金20が下方傾斜部20aから次第に離れる方向へ屈曲されている。
【0021】
クロージャ12から導出されたドロップケーブル13は、一周回または複数周回輪状に巻かれて細長い輪14が形成される。そして、このドロップケーブル13は、その輪14の一方側における2箇所(14A,14B)が、一方の配線リング11のそれぞれのリング部22に収容されて保持され、輪14の他方側における2箇所(14C,14D)が、他方の配線リング11のそれぞれのリング部22に収容されて保持されている。
【0022】
次に、クロージャ12の下部に取り付けられた配線部材1へドロップケーブル13を保持させる場合について説明する。
図4(a)に示すように、まず、ドロップケーブル13を輪状に周回させて細長い輪14を形成する。
次に、図4(b)に示すように、それぞれの配線リング11の一方のリング部22のケーブル挿抜部24において、ドロップケーブル13の輪14の周方向の一方側の2箇所(14A,14C)を、ケーブル挿抜部24の針金20とドロップケーブル13とが交差する向きでドロップケーブル13の横断面方向に入れ、輪14の一方側を、それぞれの配線リング11のリング部22内に配置させる。
【0023】
その後、それぞれの配線リング11の他方のリング部22のケーブル挿抜部24において、ドロップケーブル13の輪14の周方向の他方側の2箇所(14B,14D)を、ケーブル挿抜部24の針金20とドロップケーブル13とが交差する向きでドロップケーブル13の横断面方向に入れ、輪14の他方側を、それぞれの配線リング11のリング部22内に配置させる(図1参照)。輪14の14A,14B,14C,14Dをリング部22に入れる順番は問わない。
【0024】
なお、下方延在部20aと並列延在部20dとの隙間であるケーブル挿抜部24は、ドロップケーブル13の直径よりも狭く形成されているが、針金20が弾性変形して隙間が広がるので、隙間を通すドロップケーブル13が損傷することは防がれる。なお、ドロップケーブル13をリング部22へ収容させる際に、作業者がこのケーブル挿抜部24の隙間を広げてドロップケーブル13を通しても良い。
上記の作業を行うことにより、ドロップケーブル13は、配線部材1における一対の配線リング11のリング部22に保持される。
【0025】
本実施形態によれば、ドロップケーブル13を輪状に周回させて細長い輪14を形成し、この輪14の周方向の4箇所をケーブル挿抜部24からケーブル横断面方向にリング部22内へ通して保持させるだけで、ドロップケーブル13を配線することができる。これにより、高所等での作業となることが多いドロップケーブル13の配線作業を容易にかつ短時間で行うことができ、作業者への負担を大幅に軽減させることができる。
【0026】
ドロップケーブル13の直径よりも狭い隙間を有するケーブル挿抜部24にドロップケーブル13を通し、リング部22にドロップケーブル13を保持させるので、風等の外力によってリング部22からドロップケーブル13が抜け出すような不具合を防止することができる。これにより、結束バンドや接着テープなどの結束材によるドロップケーブル13の固定を不要とすることができ、配線作業のさらなる容易化及び短時間化を図ることができる。
【0027】
なお、上記実施形態では、針金20を屈曲させて平面視三角形状のリング部22を形成したが、リング部22の形状は三角形状に限定されない。例えば、針金20を湾曲させて平面視円形状のリング部22を形成しても良い。
また、上記実施形態では、ドロップケーブル13を一周回して形成した輪14を配線リング11に保持させたが、ドロップケーブル13の輪14は、一周回巻きに限らず複数周回巻いて形成しても良い。
また、配線部材1を用いて配線するケーブルは、上記のドロップケーブルに限られない。
【符号の説明】
【0028】
1:配線部材、11:配線リング、13:ドロップケーブル、14:輪、22:リング部、24:ケーブル挿抜部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルを配線部材に保持させる配線方法であって、
前記ケーブルを保持可能な2つのリング部を有する一対の配線リングが間隔をあけて配設された配線箇所に対して、前記ケーブルを輪状にして、この輪の周方向の4箇所を、それぞれ、前記配線リングの前記リング部に設けられたケーブル挿抜部から前記ケーブルの横断面方向に前記リング部内へ通して保持させることを特徴とする配線方法。
【請求項2】
請求項1に記載の配線方法であって、
前記ケーブルの直径よりも狭い隙間を有する前記ケーブル挿抜部に対して、前記ケーブルを通すことを特徴とする配線方法。
【請求項3】
ケーブルを保持する配線部材であって、
間隔をあけて配設された一対の配線リングを備え、
前記配線リングは、前記ケーブルを保持可能な2つのリング部を備え、
前記リング部は、前記ケーブルを横断面方向に挿抜可能なケーブル挿抜部を有し、
前記ケーブル挿抜部を通された前記ケーブルが前記リング部に保持されることを特徴とする配線部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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