説明

配電システム及び配電制御方法

【課題】発電装置と蓄電池とを備えた複数の電力需要家の蓄電池の各蓄電量を、少ない通信量で迅速に収集し、配電システムを複数のブロックに分けた開閉器区間を相互に接続する開閉器を制御し、開閉器区間相互で負荷融通を行い、効率的な系統運用を行う。
【解決手段】複数の電力需要家のそれぞれに備えられる蓄電池に設けられる計器メータ1a〜1dから送信されてくる蓄電池情報を収集する集約装置3a、3bと、集約された蓄電池情報を自動検針装置4を介して受信し、区分開閉器の開閉を制御することにより電力の配電を制御する配電系統制御装置とを備え、計器メータは、蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報を保持し、蓄電池に蓄積されている蓄電量を計測した結果、計測された蓄電量が保持している閾値範囲を逸脱した場合、閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む蓄電池情報を集約装置に送信する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配電システム及び配電制御方法に係り、特に、多数の電力需要家のそれぞれに、あるいは、それらの一部に再生可能エネルギーを利用する発電装置と蓄電池とを備え、それらの電力需要家に電力の配電を行う配電システム及び配電制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の電力消費場所のそれぞれに、あるいは、それらの一部に再生可能エネルギーを利用する発電装置と蓄電池とを備え、それらの電力需要家に電力の配電を行う配電システムに関する従来技術として、特許文献1等に記載された技術が知られている。この従来技術は、複数の送配電区間を相互に接続する開閉器を備えて構成される送配電システムにおいて、開閉器の両側の電圧と位相差とを計測する観測装置、蓄電装置、負荷融通制御装置、及び、これらの装置相互間で、計測情報、御情報等の情報を送受信通信手段を設け、負荷融通制御のために投入対象となる開閉器に直接関係しない送配電区間内の工場、学校、ビル、ショッピングモール、コンビニエンスストア、マンション、戸建て住宅等の電力需要家に設けられた蓄電池を含めた蓄電装置を制御して、負荷融通制御のための投入対象となる開閉器の両側の電圧と位相差とを許容範囲に抑えながら、適切かつ迅速に負荷融通制御を行うというものである。
【0003】
昨今、再生可能エネルギーを利用する発電装置を含む送配電システムとしてのスマートグリッドが話題となっている。このような送配電システムは、内部に含まれる太陽光、風力等の再生可能エネルギーを利用する発電装置が、天気や風力など自然環境に影響を受けるため不安定な発電となるため、発電装置と蓄電池とを組み合わせることにより蓄電した電力や、余剰発電した電力を有効利用することが期待されている。
【0004】
なお、一般家庭の太陽光発電システムは、蓄電池を設けていないものもあり、蓄電池を設けていても現状は非常用電源として使用できる程度の小容量である。
【0005】
一般に、配電系統を管理する電力会社は、安全で安定した系統運用を目指しているため、停電が発生しないこと、停電が発生した場合には迅速に復電することできるように系統運用を行っている。
【0006】
そして、現在、電力会社が管理する配電系統は、原子力発電所、火力発電所、水力発電所で発電した電力により必要な電力の殆どを賄っており、メガソーラ、ウインドファームといった発電方法で得た再生可能エネルギーの利用は始まったばかりである。太陽光による発電コストは、初期投資費用が高いため割高な状況であるが、太陽光発電モジュールは、小型、高効率変換の研究・開発が進められており、蓄電池は、小型・大容量化の研究・開発が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−59996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述した従来技術は、太陽光を高効率変換して発電する発電装置と大容量の蓄電池とを組み合わせた太陽光発電システムをはじめとする再生可能エネルギーを利用する発電システムが十分普及した場合、これらを利用して系統運用する際に膨大な数の蓄電池から、それらの蓄電池の個々の蓄電池が蓄積している電力量である蓄電力量(以下、単に、蓄電量という)を含む蓄電池の状態を迅速に把握することができるようにデータの収集を行わなければならず、通信情報量、計算機処理負荷が膨大となって、蓄電池の個々の蓄電量を含む蓄電池の状態を収集することが困難となるという問題点を生じてしまうことになる。
【0009】
また、現状の配電系統を制御するシステムは、メータから情報を収集する自動検針装置が、需要家が使用した電力量、売電した電力量をメータ毎に正確な値として収集することを目的としており、一般家庭に大容量の蓄電池が普及し、その数が膨大なものとなり、計測器であるメータの数が膨大となった場合、通信情報量、計算機処理負荷が膨大なものとなって系統制御で使用できる瞬時情報を即時に把握することができないという問題点を有している。
【0010】
また、膨大な数の蓄電池の情報を、通信によって短時間で把握することは、自動検針装置の専用通信ルートを利用するだけでは、セキュリティ性を確保することができるものの各蓄電池の蓄電量を把握するのに時間がかかり、即時性を要求される系統運用を行うシステムでは利用することができないという問題点も有している。
【0011】
本発明の目的は、前述したような従来技術の問題点に鑑み、発電装置と蓄電池とを備えている複数の電力需要家に電力の配電を行う配電システムに含まれる複数の蓄電池の各蓄電量を、少ない通信量で迅速に収集することを可能とし、配電システムを複数のブロックに分けて構成される開閉器区間を相互に接続する開閉器を制御して、収集された蓄電池の各蓄電量の総和に基づいて、開閉器区間相互間で負荷融通を行い、効率的な系統運用を行うことができるようにした配電システム及び配電方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば前記目的は、複数の電力需要家のそれぞれ、あるいは、複数の電力需要家の殆どが蓄電池を伴う再生可能エネルギーを利用する発電装置を備えており、前記複数の電力需要家を含むブロックによる開閉器区間の複数の相互間、及び、前記開閉器区間と配電用変電所との間を接続する区分開閉器を備え、大出力発電所からの電力を受ける前記配電用変電所を介して前記複数の電力需要家に電力の配電を行う配電システムにおいて、前記複数の電力需要家に備えられる蓄電池のそれぞれには、通信機能を有し、蓄電池の蓄電量を計測する計器メータが設けられており、前記開閉器区間の1または複数に含まれる複数の電力需要家のそれぞれに備えられる蓄電池に設けられる計器メータから送信されてくる蓄電池情報を収集する集約装置と、集約された前記蓄電池情報を自動検針装置を介して受信し、前記区分開閉器の開閉を制御することにより電力の配電を制御する配電系統制御装置とを備え、前記計器メータは、自計器メータが設けられている蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報を保持しており、自計器メータが設けられている蓄電池に蓄積されている蓄電量を計測した結果、計測された蓄電池の蓄電量が保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む蓄電池情報を集約装置に送信することにより達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、開閉器区間に含まれる複数の蓄電池の各蓄電量を少ない通信量で迅速に収集することができ、少ない計算量で開閉器区間に含まれる複数の蓄電池の総蓄電量を求めることができるので、停電発生時、ピーク負荷発生時等に、開閉器区間相互間を接続している開閉器を操作して負荷融通を行い、迅速な系統運用を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態による配電システムにおける各需要家に備えられる蓄電池の蓄電量を収集する通信網の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による配電システムにおける各需要家に電力を配電する配電網の構成例を示す図である。
【図3】計器メータの構成例を示すブロック図である。
【図4】計器メータの動作を説明するフローチャートである。
【図5】計器メータの閾値判定部での閾値判定を説明する図である。
【図6】集約装置の構成例を示すブロック図である。
【図7】集約装置の動作を説明するフローチャートである。
【図8】集約装置のポーリング判定部の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明による配電システム及び配電制御方法の実施形態を図面により詳細に説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態による配電システムにおける各需要家に備えられる蓄電池の蓄電量を収集する通信網の構成例を示す図である。
【0017】
本発明の実施形態による配電システムに含まれる工場、学校、ビル、ショッピングモール、コンビニエンスストア、マンション、戸建住宅等の電力需要家のそれぞれ、あるいは、電力需要家の殆どは、蓄電池を伴う太陽光発電、風力発電等による発電装置を備えており、蓄電池には通信機能を有し、蓄電池の蓄電量を計測することができる計器メータ1a〜1dが設けられている。そして、本発明の実施形態による配電システムは、配電システム内に含まれる多数の電力需要家を複数のブロックに分け、各ブロック内に含まれる複数の電力需要家に設けられる計器メータにより計測された各蓄電池の蓄電量の情報が纏められ、それぞれ1つの集約装置3a、3bに通信ルート2a、2bを介して送信されるように通信網が構成されている。
【0018】
図1に示す例では、複数の計器メータ1a、1bを持つ複数の電力需要家を1つのブロック、複数の計器メータ1c、1dを持つ複数の電力需要家を1つのブロックとした2つのブロックを示しており、複数の計器メータ1a、1bからの蓄電量の情報が通信ルート2aを介して集約装置3aに、複数の計器メータ1c、1dからの蓄電量の情報が通信ルート2bを介して集約装置3bに送信されるように通信網が構成されている。
【0019】
また、各ブロック対応に設けられている複数の集約装置3a、3bのそれぞれに纏められた各ブロックにおける蓄電池の蓄電量の情報は、1つの自動検針装置4に送信されて纏められる。この自動検針装置4は、LAN5等のネットワークを介して、配電系統制御装置6と接続され、配電系統制御装置6は、自動検針装置4からの各ブロックにおける蓄電池の蓄電量の情報を受け取って、後述するように、本発明の実施形態の配電システムにおける配電制御を行う。
【0020】
なお、図1には、前述したように2つのブロックを示しているが、ブロック数は任意であり、さらに多くてもよく、1つのブロックに含まれる電力需要家の数も任意である。また、本発明の実施形態は、図1に示すシステムにおいて、複数の集約装置3a、3b、及び、複数のブロックを含む通信網と同様な通信網の複数を自動検針装置4に接続してもよく、さらに、LAN5に複数の自動検針装置を接続し、それらの自動検針装置のそれぞれに、前述したと同様な複数の集約装置3a、3b、及び、複数のブロックを含む通信網を接続してもよい。
【0021】
図2は本発明の一実施形態による配電システムにおける各需要家に電力を配電する配電網の構成例を示す図である。
【0022】
図2に示す本発明の実施形態による配電システムにおける配電網は、複数の開閉器区間、図2に示す例では4つの開閉器区間24a〜24dが、それらの開閉器区間の相互間、及び、開閉器区間と変電所との間を接続する区分開閉器22a〜22d、23a、23bと、通常の大出力発電所からの電力を受ける配電用変電所に備えられた配電線フィーダ遮断器21a、21bとにより、図示のように接続されて構成されている。開閉器区間24a〜24dのそれぞれは、複数の電力需要家を含んでおり、複数の電力需要家のそれぞれ、あるいは、それらの複数の電力需要家の殆どは、図1により説明したように蓄電池を伴う発電装置を備えている。
【0023】
そして、図2に示す配電システムにおける配電網は、図1に示した配電系統制御装置6により制御され、通常運用時、配電線フィーダ遮断器21aと21bとにより系統運用されており、区分開閉器23a、23bは、切状態で運用されており、その他の区分開閉器22a〜22dは、入状態で運用されている。また、これら区分開閉器22a〜22d、23a、23bは、自開閉器の両側の電圧、及び、それらの位相差を計測する計測機能も有し、かつ、通信機能をも有している。配電系統制御装置6は、各開閉器の両側の電圧及びそれらの位相差を得ることができ、また、各開閉器の開閉を制御することができる。
【0024】
前述したように構成される本発明の実施形態は、計器メータ1a〜1d−集約装置3a、3b−自動検針装置4の間の通信に、既設の自動検針システムの無線あるいは有線による通信ルートを使用することとし、自動検針装置4が備えられていない場合、集約装置3a、3bから配電系統制御装置6に直接通信を行うこととしてもよい。
【0025】
図3は計器メータの構成例を示すブロック図である。計器メータ1a〜1dは、図3に示すように、集約装置3aまたは3bとの間で情報の送受信を行う通信部31と、予め配電系統制御装置6から自動検針装置4、集約装置3aまたは3bを介して送信されてくる自計器メータが設けられている蓄電池35に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報を保持している閾値設定部32と、自計器メータが設けられている蓄電池35に蓄積されている蓄電量を計測する測定部34と、測定部34により計測された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したか否かを判定し、蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、その旨の情報を蓄電池情報として集約装置3aまたは3bに送信するように通信部31に指示する閾値判定部33とを備えて構成されている。
【0026】
前述したように構成される計器メータ1a〜1dは、既存の計器メータに本発明の実施形態で必要な機能を併合して構成してもよいし、本発明の実施形態で必要な機能を持つ機器メータを独立に構成し、既存の計器メータと共に設置されてもよい。また、前述した閾値設定部32に保持されている蓄電池35に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報は、計器メータ1a〜1dが備えられている蓄電池35の最大蓄電量、発電装置の発電能力、過去の蓄電量のデータ値等の情報に基づいて、配電系統制御装置6が算出したものである。
【0027】
図4は計器メータの動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。このフローによる処理は、タイマにより一定時間(数秒程度)毎に繰り返し起動される処理である。
【0028】
(1)処理が開始されると、測定部34は、計器メータに接続された蓄電池35の蓄電量を測定し、閾値判定部33は、測定部34で測定された蓄電量の値が、閾値設定部32に設定されている閾値の範囲(上下限)を逸脱しているか否かを判定する(ステップS41、S42)。
【0029】
(2)ステップS42の判定で、測定部34で測定された蓄電量の値が、閾値設定部32に設定されている閾値の範囲(上下限)を逸脱していた場合、閾値判定部33は、通信部31に対して、集約装置3に向けて測定された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したことを示す情報として、上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む情報を蓄電池情報として送信するように指示する(ステップS43)。
【0030】
(3)ステップS43の処理の後、あるいは、ステップS42の判定で、測定部34で測定された蓄電量の値が、閾値設定部32に設定されている閾値の範囲(上下限)を逸脱していなかった場合、ここでの処理を終了し、この処理が次に起動されるのを待つ。
【0031】
前述したフローにおけるステップS43の処理において、蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したことを示す上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを蓄電池情報として送信するとしているが、これらの情報に代わって、計測された蓄電池35の蓄電量の情報そのものを蓄電池情報として送信するようにしてもよい。
【0032】
図5は計器メータの閾値判定部33での閾値判定を説明する図である。
【0033】
前述ですでに説明したように、閾値設定部32には蓄電池35に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報が保持されているが、この情報は、図5に示している例では、例えば、閾値範囲51a〜51cの何れか1つの情報である。すなわち、閾値範囲51a〜51cの情報のそれぞれは、閾値範囲51aが、閾値53b〜53aの間の範囲、閾値範囲51bが、閾値53c〜53bの間の範囲、閾値範囲51cが、閾値53d〜53cの間の範囲であることを示すものである。
【0034】
いま、閾値設定部32には蓄電池35に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報として、閾値範囲51bの値が保持されているものとする。そして、図4に示すフローの動作で、ある時刻に計測された蓄電池の蓄電量の値が52aであり、次の時刻に計測された蓄電池の蓄電量の値が52bであったとする。この場合、いずれの蓄電量52a、52bも、閾値設定部32に保持されている閾値範囲51bを逸脱していないので、閾値判定部33は、通信部31に対して、集約装置3に向けて情報を送信させる指示を行うことはない。
【0035】
また、ある時刻に計測された蓄電池の蓄電量の値が52cまたは52dであったとする。この場合、いずれの蓄電量52c、52dも、閾値設定部32に保持されている閾値範囲51bを逸脱しているので、閾値判定部33は、通信部31に対して、集約装置3に向けて測定された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したことを示す上下の閾値を持つ閾値範囲51bの情報と上下の閾値53b、53cのどちら側の方向に逸脱したかの情報とを蓄電池情報として送信するように指示する。
【0036】
前述したような蓄電池情報の送信に際し、閾値判定部33は、閾値の情報の他に、自計器メータを特定するID、自計器メータが所属する開閉器区間24を特定する番号(以下、開閉器区間番号という)、電圧等の制御に関わる情報をも送信するように指示する。開閉器区間番号は、配電系統制御装置6からの閾値範囲の設定と同時に、配電系統制御装置6から閾値設定部32に設定されてもよい。また、配電系統制御装置6から閾値設定部32に設定された閾値範囲の情報は、図5に示す例では、3段階であるとして示しているが、何段階とするかは任意である。
【0037】
前述したように、本発明の実施形態では、計測された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に設定されている閾値範囲を逸脱したときに、その旨の情報を送信するとしているので、集約装置3a、3bとの間の通信量を少なくすることができる。但し、前述した閾値範囲の情報の段階数を多く設定する、すなわち、1つ1つの閾値範囲の幅を小さく設定すると、小さな蓄電力量の変動で通信が発生し、通信量が増加してしまうことになるので、閾値設定部32に設定された閾値範囲の段階数をむやみに多くすることは得策ではない。
【0038】
図6は集約装置の構成例を示すブロック図である。集約装置3a、3bは、図6に示すように、計器メータ1a〜1d、自動検針装置4との間で情報の送受信を行う通信部61と、予め配電系統制御装置6から自動検針装置4を介して送信されてくる自集約装置が集約すべき計器メータが設けられている蓄電池35の全てに普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量の閾値範囲の情報(1つの集約装置が、1つの開閉器区間に対応して設けられているとは限らず、1つの集約装置が、複数の開閉器区間と対応して設けられていることもあり、いずれの場合にも、ここでの蓄電量の閾値範囲の情報は、自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量である)を保持している閾値設定部62と、自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池35に蓄積されている合計の蓄電量、更新日時、その蓄電池に設けられた計器メータがその蓄電池の蓄電量が設定されたその蓄電池の蓄電量の閾値範囲を逸脱したとして送信してきた情報等を格納するデータベース65と、自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池35に計器メータから送信されてきた情報に基づいて算出した、自集約装置が集約すべき対象となる全ての蓄電池35の蓄電量の総計が閾値設定部62に保持されている閾値範囲を逸脱したか否かを判定し、蓄電量が閾値設定部62に保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、その旨の情報を自動検針装置4に送信するように通信部61に指示する閾値判定部63と、データベース65から最終更新日時が古い、すなわち、一定期間以上、情報を送信してきていない計器メータを抽出し、通信部61を介してその計器メータにポーリングを行うポーリング判定部64とを備えて構成されている。
【0039】
前述したように構成される集約装置3a、3bは、既存の中継局や親局に併合して設けられてもよいし、本発明の実施形態で必要な機能を持つ集約装置を独立に構成して設けてもよい。また、前述した閾値設定部62に保持されている自集約装置が集約すべき計器メータが設けられている蓄電池35の全てに普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量の閾値範囲の情報は、自集約装置が集約すべき各蓄電池35の最大蓄電量、発電装置の発電能力、過去の蓄電量のデータ値等の情報に基づいて、配電系統制御装置6が算出したものである。
【0040】
図7は集約装置の動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。このフローによる処理は、タイマにより一定時間(数ミリ秒程度)毎に繰り返し起動される、あるいは、常時繰り返し実行される処理である。
【0041】
(1)集約装置の通信部61は、計器メータからその計器メータで測定された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したことを示す上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかを示す情報とを含む蓄電池情報の受信を監視する(ステップS71)。
【0042】
(2)ステップS71の監視で、蓄電池情報を受信することができた場合、通信部61は、データベース65内に、受信した蓄電池情報に含まれる計器メータを特定するIDに基づいて、計器メータに対応する蓄電池毎の蓄電量の閾値範囲の情報と、上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報と、時刻情報とを更新格納する(ステップS72)。
【0043】
(3)次に、閾値判定部63は、データベース65内に格納される蓄電池情報に基づいた情報が更新される毎に、計器メータに対応する蓄電池毎の蓄電量が閾値範囲の上下のどちら側の方向に逸脱したかの情報を加減算(上側への逸脱時1を加算、下側への逸脱時1を減算)しており、その結果により閾値設定部62に格納されている自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量である閾値を逸脱したか否かを判定する(ステップS73)。
【0044】
前述した閾値判定部63での処理は、図5に説明した場合と基本的に同様な考え方で行うこともでき、この場合、図5に示す閾値53a〜53dは、自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全蓄電池の総蓄電量の閾値である。そして、ステップS73の判定の処理は、蓄電池毎の蓄電量が閾値範囲の上下のどちら側の方向に逸脱したかを加減算した結果が、閾値範囲の上側に所定回数以上逸脱した状態となったとき、閾値設定部に格納されている自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量である閾値設定部62内に保持されている閾値から上方に越えたと判定し、加減算した結果が、閾値範囲の下側に所定回数以上逸脱した状態となったとき、閾値設定部62内に保持されている閾値から下方に下回ったと判定し、また、加減算した結果が、上下どちらの側への逸脱も所定回数以下であった場合、閾値設定部62内に保持されている閾値から逸脱していないと判定する処理である。なお、ステップS71の監視の結果、受信される蓄電池情報が、各蓄電池の蓄電量そのものである場合、自集約装置の管理下にある各蓄電池からの蓄電量を総計した結果と閾値設定部62に格納されている蓄電量の閾値とを比較して、前述の判断を行えばよい。
【0045】
(4)ステップS73の判定で、閾値設定部62内に保持されている閾値から逸脱していないと判定された場合、なにもせずにここでの処理を終了し、全蓄電池の総蓄電量が閾値範囲から逸脱したと判定された場合、通信部61は、全蓄電池の総蓄電量の閾値と、閾値範囲の上下のどちら側の方向に逸脱したかを示す情報とを自動検針装置4に送信してここでの処理を終了する。なお、自動検針装置4に送信する情報としては、前述の他に、開閉器区間番号や制御に関わる情報も含まれる(ステップS74)。
【0046】
図8は集約装置のポーリング判定部の動作を説明するフローチャートであり、次に、これについて説明する。このフローによる処理は、予め定められた一定時間毎に起動されて実行される処理であり、図7に示して説明したフローでの処理に続いて実行されてもよい。また、この一定時間は、集約装置が管理している蓄電池の総数、各蓄電池に設けられる計器メータが蓄電池の蓄電量を計測して集約装置に送信してくる周期の時間によって、例えば、数分、数十分程度に定められていてもよい。
【0047】
集約装置は、図7に示すフローのステップS71の処理で説明したように、計器メータで測定された蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を逸脱したことを示す上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかを示す情報とを含む蓄電池情報を受信するが、計器メータが故障となった場合、あるいは、蓄電池35の蓄電量が閾値設定部32に保持されている閾値範囲を長時間に渡って逸脱しなかった場合、データベース65内のデータが長時間に渡って更新されないことになり、蓄電量に変化がなく計器メータ1から送信がないのか、故障なのかを判別することができないことになる。
【0048】
本発明の実施形態では、ポーリング判定部64が一定時間データベース65内の情報を更新していない計器メータを抽出し、その計器メータに対してポーリングを行うことにより、蓄電量に変化がなく計器メータ1から送信がないのか、故障なのかを判別するようにしており、以下、図8に示すフローを参照してポーリング判定部64の動作を説明する。
【0049】
(1)ポーリング判定部64は、処理を開始すると、当該集約装置3のデータベース65から最終更新日時が古い計器メータ1を抽出し、抽出した計器メータ1にポーリングを行って蓄電池情報の送信を要求する(ステップS81、S82)。
【0050】
(2)ステップS82でのポーリングに対して、計器メータからの結果応答の有無や前回受信情報との差から計器メータ1から送信がないのか、異常があるのかを判断し、異常があると判断された場合、異常がある旨を自動検針装置4に通知して、ここでの処理を終了する(ステップS83、S84)。
【0051】
(3)ポーリング判定部64は、ステップS82でのポーリングに対して、計器メータから蓄電池情報を送信してきた場合、異常ではない、すなわち、正常であると判断した場合、図7に示して説明したフローによる処理を実行させて、ここでの処理を終了する(ステップS83)。
【0052】
自動検針装置4は、集約装置3から受信した情報を配電系統制御装置6にLAN5を介して送信する。この結果、配電系統制御装置6は、開閉器区間24a〜24d毎の全蓄電池の蓄電量の合計値や、系統に存在する区分開閉器23a、23bから得られるそれらの開閉器の両側の電圧や位相差等の情報を取得することができる。そして、配電系統制御装置6は、開閉器区間24a〜24d毎の全蓄電池の蓄電量の合計値や、系統に存在する区分開閉器23a、23bから得られる前述の電圧や位相差等の情報を用いて、障害の発生時に区分開閉器を制御することにより、各開閉器区間内の保持されている蓄電池の蓄電量を開閉器区間相互で融通する、各開閉器区間内で、区間内にある蓄電池の蓄電量を需要家相互間で融通する等により、障害の影響範囲を最小限とするように制御を行うことができる。
【0053】
例えば、図2の開閉器22c、23bで囲まれる開閉器区間24cに十分な蓄電量が存在し、配電線フィーダ遮断器21bの電源側系統には通常運用時系統と開閉器区間24aにしか融通する電力がない状態で、配電線フィーダ遮断器21aと開閉器22aの間で配電線事故が発生した場合、開閉器22aの切操作、開閉器22cの切操作、開閉器23aの入操作を実施することにより、開閉器区間24cが停電(配電線フィーダ遮断器21aの電源側系統からの給電停止)したままとなるが、他の開閉器区間に対しては給電を行うことができるようにし、開閉器区間24c内では、区間内にある蓄電池の蓄電量を需要家相互間で融通させるようにすることができる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前述した本発明の実施形態は、本発明をわかりやすく説明するために例示したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【0055】
前述した本発明の実施形態によれば、開閉器区間に含まれる複数の蓄電池の各蓄電量を少ない通信量で迅速に収集することができ、少ない計算量で開閉器区間に含まれる複数の蓄電池の総蓄電量を求めることができるので、停電発生時、ピーク負荷発生時等に、開閉器区間相互間を接続している開閉器を操作して負荷融通を行い、迅速な系統運用を行うことができるばかりではなく、CO ガスの排出量の削減、配電制御における省エネルギー化を図ることができる。
【符号の説明】
【0056】
1a〜1d 計器メータ
2a、2b 集約装置と蓄電池との間の通信ルート
3a、3b 集約装置
4 自動検針装置
5 LAN
6 配電系統制御装置
21a、21b 配電線フィーダ遮断器
22a〜22d、23a、23b 区分開閉器
24a〜24d 開閉器区間
31、61 通信部
32、62 閾値設定部
33、63 閾値判定部
34 測定部
35 蓄電池
64 ポーリング判定部
65 データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電力需要家のそれぞれ、あるいは、複数の電力需要家の殆どが蓄電池を伴う再生可能エネルギーを利用する発電装置を備えており、前記複数の電力需要家を含むブロックによる開閉器区間の複数の相互間、及び、前記開閉器区間と配電用変電所との間を接続する区分開閉器を備え、大出力発電所からの電力を受ける前記配電用変電所を介して前記複数の電力需要家に電力の配電を行う配電システムにおいて、
前記複数の電力需要家に備えられる蓄電池のそれぞれには、通信機能を有し、蓄電池の蓄電量を計測する計器メータが設けられており、
前記開閉器区間の1または複数に含まれる複数の電力需要家のそれぞれに備えられる蓄電池に設けられる計器メータから送信されてくる蓄電池情報を収集する集約装置と、集約された前記蓄電池情報を自動検針装置を介して受信し、前記区分開閉器の開閉を制御することにより電力の配電を制御する配電系統制御装置とを備え、
前記計器メータは、自計器メータが設けられている蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報を保持しており、自計器メータが設けられている蓄電池に蓄積されている蓄電量を計測した結果、計測された蓄電池の蓄電量が保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む蓄電池情報を集約装置に送信することを特徴とする配電システム。
【請求項2】
前記集約装置は、自集約装置が集約すべき計器メータが設けられている蓄電池の全てに普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量の閾値範囲の情報を保持しており、前記計器メータから送信された蓄電池情報を受信し、前記自集約装置が集約すべき計器メータが設けられている蓄電池の蓄電量を合計し、その合計値が保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む蓄電池情報を自動検針装置を介して前記配電系統制御装置に送信することを特徴とする請求項1記載の配電システム。
【請求項3】
前記集約装置は、自集約装置が集約すべき対象となる1または複数の開閉器区間内に含まれる全ての蓄電池に蓄積されている合計の蓄電量、更新日時、その蓄電池に設けられた計器メータが送信してきた蓄電池情報を格納するデータベースを有し、概データベースから最終更新日時が古い計器メータを抽出し、抽出した計器メータにポーリングを行って蓄電池情報の送信を行わせることを特徴とする請求項1記載の配電システム。
【請求項4】
前記計器メータに保持されている蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報は、蓄電池の最大蓄電量、発電装置の発電能力、過去の蓄電量のデータ値等の情報に基づいて、前記配電系統制御装置が算出したものであることを特徴とする請求項1記載の配電システム。
【請求項5】
前記集約装置に保持されている集約装置が集約すべき計器メータが設けられている蓄電池の全てに普段蓄積されているべき蓄電量を合計した蓄電量の閾値範囲の情報は、集約すべき各蓄電池の最大蓄電量の合計値、各発電装置の発電能力の合計値、過去の蓄電量のデータ値等の情報に基づいて、配電系統制御装置が算出したものであることを特徴とする請求項2記載の配電システム。
【請求項6】
前記配電系統制御装置は、前記集約装置から前記自動検針装置を介して送信されてきた前記蓄電池情報、前記区分開閉器から取得した区分開閉器の両側の電圧及びそれらの位相差等の情報に基づいて、停電時、ピーク負荷発生時に、前記区分開閉器を開閉操作して負荷融通を行い、迅速な系統運用を行うことを特徴とする請求項1記載の配電システム。
【請求項7】
複数の電力需要家のそれぞれ、あるいは、複数の電力需要家の殆どが蓄電池を伴う再生可能エネルギーを利用する発電装置を備えており、前記複数の電力需要家を含むブロックによる開閉器区間の複数の相互間、及び、前記開閉器区間と配電用変電所との間を接続する区分開閉器を備え、大出力発電所からの電力を受ける前記配電用変電所を介して前記複数の電力需要家に電力の配電を行う配電システムにおける配電制御方法において、
前記配電システムの前記複数の電力需要家に備えられる蓄電池のそれぞれには、通信機能を有し、蓄電池の蓄電量を計測する計器メータが設けられており、
前記配電システムは、前記開閉器区間の1または複数に含まれる複数の電力需要家のそれぞれに備えられる蓄電池に設けられる計器メータから送信されてくる蓄電池情報を収集する集約装置と、集約された前記蓄電池情報を自動検針装置を介して受信し、前記区分開閉器の開閉を制御することにより電力の配電を制御する配電系統制御装置とを備え、
前記計器メータは、自計器メータが設けられている蓄電池に普段蓄積されているべき蓄電量の閾値範囲の情報を保持しており、自計器メータが設けられている蓄電池に蓄積されている蓄電量を計測した結果、計測された蓄電池の蓄電量が保持されている閾値範囲を逸脱した場合に、上下の閾値を持つ閾値範囲の情報と上下の閾値のどちら側の方向に逸脱したかの情報とを含む蓄電池情報を集約装置に送信することを特徴とする配電制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−55130(P2012−55130A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−197575(P2010−197575)
【出願日】平成22年9月3日(2010.9.3)
【出願人】(000153443)株式会社日立情報制御ソリューションズ (359)
【Fターム(参考)】