説明

酢酸臭を大幅に軽減させた、氷酢酸と天然塩による植物活性組成物

【課題】植物にストレスを与え病気を引き起こす、ウイルス、細菌、カビ(真菌)等に対して、十分な不活化効果を与えると同時に、植物根付近の根圏微生物相を活性化させ植物の発育に良い環境をつくり、悪臭を除去し、人間やペットが誤って口にしてしまっても致命的にならず、かつ製造方法が極めて単純で安価な、抗菌性植物活性剤を提供すること。
【解決手段】梅干しの酢酸抽出成分に天然塩を添加した抗菌性植物活性剤である。この抗菌性植物活性剤は、抗菌性のある植物を氷酢酸に漬け込みエキスを抽出した後に水と天然塩を加えて攪拌し作製する。構成する成分が、いずれも自然界から得られ最終的に自然界に帰るという、エコロジーな抗菌性植物活性剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物の栽培に関して、極めて安全であると共に自然界にも優しく、且つ植物の成長に有害なウイルス、細菌及びカビ(真菌)の胞子等に対して不活化作用を持しつつ、酢酸臭を大幅に軽減させた酢酸を主要成分とする抗菌性植物活性剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建物を密閉して常温で気体の状態で作用させて殺菌する薬剤の燻蒸剤として、クロルピクリン、酸化エチレン、臭化メチルなどを含有したものが有効であるとして広く使用されている。また、人体に対してより優しい天然物から作製される抗菌組成物としては、木酢液や竹酢液が良く知られている(例えば、特許文献1参照)。また、土壌改良や植物の育成効果を上げるために、粉末、粒状、液状の化学肥料や有機肥料もよく知られている。さらに、果物と糖類とを混合して発酵させた植物発酵酵素や、アニオン性水溶性高分子化合物と金属塩と水とを含有してなる植物育成用ゲルや、ショウガ科植物の月桃の葉精油を1重量%と天然クロレラエキス0.5重量%を混合したものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−015722号公報
【特許文献2】特開2001−302426号公報
【特許文献3】特開2000−166380号公報
【特許文献4】特開2000−007515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の燻蒸剤として一般に使用されている、クロルピクリン、酸化エチレン、臭化メチルなどを含有したサ殺虫、殺菌組成物は、人体に対する有害であり、その蒸気を吸引すると中毒災害を引き起こすため、ビニールハウス内で人の世話の必要な植物の栽培には、防護服や防毒マスクの使用が必要となるので、ホウレンソウや小松菜などの野菜や、イチゴなどの果物の栽培にはあまり適していない。また、これらの成分は土壌中の微生物、特に植物の根圏微生物相の他給栄養生物のバランスを破壊する可能性を否定することは出来ない。また、天然物から作られる木酢液や竹酢液は、一般的に化学的に合成される抗菌組成物よりも、人体に対する安全性は比較的高いものの、作製方法によっては必ずしも安全とは言えず、ベンズピレンのような有害な成分が含有していることでも知られている。さらに、木酢液や竹酢液を用いて広範囲の人の生活空間を抗菌したいと考えても、それらの臭気に満ちた空間は、とても人が心地良く生活できる環境とは言えない。加えて、上述の各抗菌組成物は製造が複雑なため非常に高価であり、植物の栽培において、ウイルス、細菌、カビ(真菌)の胞子嚢の不活化に対して、広範囲の生活空間を日常的に抗菌するには無理がある。粉末、粒状、液状の化学肥料や有機肥料は、植物の栽培に効果はあるものの、硝酸態窒素や塩類などが残留しやすく、土壌の特に根圏微生物相のバランスを壊しやすく、連作障害が生じることが多い。また、醗酵酵素や沖縄の月桃のような植物エキスは、抗菌性を有しながら土壌微生物を活性化させる植物の効果は弱く、病気から植物を守るほどの力はない。金属塩の作物に対する肥糧効果は期待できるものの、病気を引き起こす細菌やウイルスに対して除菌効果を期待する事はほとんど出来ない。しかし、植物にとって理想の環境は無農薬で土壌環境を良好に保ち地下部分の根圏微生物のように植物の成長に有益な微生物群の活性化を同時に、且つ植物に有害な影響を与える細菌やウイルス及び飛散しているカビの胞子から植物の茎や葉を守ることにより植物の成長に最も良い環境であることが知られている。
【0005】
従って、本発明の目的は、植物の成長によい環境を作ることであり、植物に有害なウイルス、細菌、カビ(真菌)に対して、不活化効果を与えると同時に、植物の生育に有益な土壌菌の活性化を示す、人間やペットが誤って口にしてしまっても致命的な危険を伴わず、広範囲の生活空間に放出しても人に不快感を与えず、かつ製造方法が極めて単純な安価な地上及び植物を取り巻く空間の微生物の不活化及び地下の植物根と根圏微生物の活性化を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、本発明者らは、まず安全性の観点と人に不快感を与えないとの観点から、原料を人が飲食可能な植物に絞り、何百通りもの組合せで、ウイルスや細菌よりも強力なカビ(真菌)を用いて、まず、地上部の抗菌作用の大きさについて各種試験を実施した。その結果、梅干しを氷酢酸で抽出した抽出液とニガリもしくは海水から水分を蒸発させて得られる海洋ミネラルとクエン酸を加えることにより、密閉空間及び開放空間の近隣箇所においてカビ(真菌)の胞子嚢や細菌を不活化させ、地下の根圏微生物を逆に活性化させることができることがわかった。しかし、その空間は酢酸の臭いが強く人が心地よく過ごすことが出来ない。すなわち、本願発明にかかる植物活性剤をカビ(真菌)に直接接触させるか、またはカビ(真菌)の近隣に置くことにより、カビ(真菌)の発芽管の出現を抑えることができることが判明した。圃場においては、本願発明にかかる植物活性剤を寒天で固めたものを小松菜の種を埋めた場所のすぐ横に置き、透明のプラスチックドームで風を遮断したところ、本願発明にかかる寒天を置かないものとの間に大きな違いが生じた。この寒天を置いたもののすぐ近くの小松菜の種の発芽時期はこの寒天を置かないものよりも早く、発芽数の割合も多かった。また、根の発育に関しては、本願発明にかかる寒天を近くに置いた小松菜の根は、この寒天を近くに置かなかった小松菜の根よりも成長が早かった。このことから、本願発明にかかる寒天から気化したガスの成長に適した環境を作り、植物活性効果があることが理解できる。
【0007】
ここで、特に重要なことは、抗菌成分を有する梅干しを酢酸で抽出した抽出液とカルシウム、マグネシウム、カリウムなどを豊富に含有する天然塩を使用することである。これらのミネラル成分や酢酸成分は、ウイルスや細菌や真菌に吸着、浸透し、蓄積し、結果として、細胞膜の膨化と膜流動性の増加、それにつづきナトリウムイオンやカルシイオンなどの流入、つまりイオンの透過性の亢進、その結果としてのpH勾配と膜電位の喪失、膜障害に基づく細胞壁の含成阻害と抗生成分の変化などによるもとと思われる除菌効果を示す。また、酢酸とミネラルの豊富な天然塩と抗菌性を持つ植物の成分の相乗効果により、ウイルス、細菌、真菌の耐性化を防ぐ効果も期待できる。また、地下においては、地上部と異なり、植物の栽培に不足しがちなマグネシウムや、窒素やリンと同様に、植物体内における含有率の高いカリウム、植物の風味を高めるカルシウムなどは、イオン化しプラスに帯電しているため、地下部に生息する根圏微生物の菌体表層部にくっつけたまま、根の表面に近づき、根の呼吸によって生じた根の表面の水素イオンと交換され根の表面に付着しやがて植物に吸収され、その間に、根圏微生物は植物根から分泌された炭水化物、有機酸、アミノ酸などの物質を貰いうけ、そのかわりに肥料成分と微生物の分泌物であるアミノ酸やビタミン類などを根に与えているが、本願発明品により土壌表面にミネラルを散布する事により、この根圏微生物と植物根との互いに栄養素を交換する働きが活発になり、結果として根圏微生物は増殖し植物根の成長も促進される事が予想される。また、補酵素Aと結合した状態で、ほとんど全ての生命形態において代謝と生合成のプロセスにおける中核を担っている脂肪酸の一種である酢酸は、植物根や根圏微生物を活性化させる作用があるので、根圏微生物と植物根の作り出す根圏微生物相の活発な働きを促進し、結果として植物周辺の土壌を団粒化させ、スポンジ状に膨れ上がってくるような良好な土壌構造が可能になり、排気と通気もよく、水分保持力も大きくなり、土壌の暖衝能および塩基置換容量が大きくなる。こうした総合的な作用によって根の活力が維持され、植物にとってより適した土壌環境や空間環境が作り出され、さらに植物の成長は促進されることとなる。また、本願発明品にかかわる水溶液が気化する時に、様々な悪臭成分と結合し消臭効果も高めるため、植物の栽培をする作業員のストレスを軽減させることが出来る。
【0008】
本発明の一つの観点に係る植物活性組成物は、少なくとも、オレアノール酸を含む、梅干し実など、人の飲食に共される抗菌性植物のグループから選択されており、抗菌性植物の酢酸抽出成分3重量%から25重量%にニガリもしくは海水から水分を蒸発させて得られる海洋ミネラルを添加したものである。酢酸に抗菌性植物の様々な成分と数種のミネラルを含ませることにより、酢酸とミネラルの作り出す抗菌力と植物の持つ抗菌力の相乗効果が生まれ、カビ(真菌)しいては様々なウイルス、細菌等に対する不活化作用を高めると同時に、周囲の悪臭成分に対しても反応し悪臭を低減させ人を心地良くさせる事を期待する事が出来きる。また、塩化カリウムを酢酸抽出成分と同量加えることにより酢酸臭も大幅に軽減させることが出来る。
【0009】
本発明の植物活性組成物は液体のまま用いる場合、超音波を利用した機器を用いて加湿器やマイクロミスト発生器を用いて周囲にまくことが出来る。また、高分子吸収材や寒天などで固めて使用する事も出来、その場合それらの添加量は、寒天の場合、0.6重量%から3重量%が適量で、これよりも少ないとゲル状の抗菌剤にならないし、これよりも多くても凝固状態に変化は見られない。高分子吸収剤の場合は、5重量%から10重量%が適量である。
【発明の効果】
【0010】
本願発明にかかる植物活性組成物は、ほぼ60重量%〜90重量%以上が水で、残りは人が飲食可能な植物の酢酸抽出液と食品添加物であるので、子供などが万一誤って飲んでしまっても、人体にほとんど有害な影響を与えることがなく、従来の植物の除菌及び活性剤に比較して極めて安全である。また、本願発明に係る植物活性組成物は、超音波を利用した、加湿器やマイクロミストの機器を用いることにより、ビニールハウスでの植物の栽培に効率的に用いることが出来る。また、本願発明に係る植物活性組成物は、ゲル状態にすることにより転倒しても零れ難い上、植物活性成分をゲルから徐々に自然放出する構造のため、室内であれば、植木鉢やプランターなどの上に置くだけで安全に使用でき、電気的な装置が使用できない、湿気の強い場所、電源のない場所、火気厳禁の場所などでも手間をかけることなく使用できる。さらに、植物活性組成物の固形物の形状や容器の形状を様々に変更して、ゲルと大気との接触面積を調整することによって、リビングやキッチンなどの広い空間からトイレや浴室などの比較的狭い空間まで、場所を選ばずに植物を置けるところであれば使用できる。
【0011】
さらに、本発明に係る植物活性組成物は、原料が安価である上、浸漬、攪拌、混合、加熱などの簡単な操作で作製できるので、従来の植物活性組成物に比較して極めて安価に製造することができる。また、原料としても、酢酸と天然塩及び梅干しと食品添加物成分のみを使用しているため、そのまま廃棄しても自然に帰るため、極めて地球に優しいエコロジーな製品である。
【0012】
いずれの例でも、取扱の便宜上、植物活性組成物は寒天に含ませて使用したが、原液のまま使用する事も出来る。
【0013】
なお、以下の実施例で使用した植物の酢酸抽出液の作り方について、梅干しを例に取って説明する。この抽出液の作り方は、梅干しを氷酢酸とともにガラス容器に5時間以上漬け込む。ここで重要なことは、ここで使用する梅干しは、熟した梅の実をよく洗い、その後、梅の実の全体が完全につかるほどの量の水に一晩浸し、その後、梅の実をざる等にあけ水を切る。その後、梅の実を一つ一つタオルなどで拭き取り、ヘタの部分を取り除く。その後、それらの梅の実を、梅の実の15重量%から50重量%の天然塩と交互に入れ、その後、桶の内側よりわずかに小さい落とし蓋を梅の実に乗せ、その上に桶に入れた梅の実の2倍の重量のおもりをのせ、風通しの良い涼しい所に約1カ月ほど保管し、天気の良い日に梅の実を桶から出し2日から3日天日に干す。通常は真夏の晴れた日に天日干しにするが乾燥機などを用いることも可能であるが、梅干しの原料として熟した梅の実と天然塩のみでつくられた梅干しを使用すること及び梅干しを漬け込んだ酢酸が琥珀色になったものを使用する事である。その後、天然塩、塩化カリウム、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸を水で完全に溶解してから、梅干しを漬け込みおわった酢酸と混ぜ65℃まで全体をよく拡散しながら加熱しているが、加温温度を決して65℃以上にしないようにする。加温温度を65℃以上にした場合には、梅干しの抗菌成分が分解し揮発してなくなってしまう恐れがあるからである。
【実施例】
【0014】
本発明を実施例、試験例により更に詳しく説明するが、本発明がこれらによって限定されるものではない。
(抗菌組成物実施例)
下記、表1に従って、本発明の実施例1について説明する。直径78mm、高さ51mmの円柱形の容積は244cmのプラスチック容器内に、検体2gと食パンとカビの生えたゆずの皮50gを入れ密閉してゆずの皮から食パンへのカビの転移を肉眼で観察した。いずれも検体と食パンを入れた時の容器内の温度は30℃で、湿度は85%であり、この容器内で実施例1、比較例1〜2の抗菌組成物を得た。尚、培養期間と食パン表面の菌の発育の評価は、1が全く菌が発育していない。2が10%以下の発育、3が10〜30%以下の発育、4が30〜60%以下の発育、5が60%以上の完全発育を表している。なお、表1に示す配合は全て重量%である。
【0015】
実施例1と比較例1と2を比べることにより、本願発明にかかわる寒天から揮発するガスに菌を不活化させる作用があることが分かる。
【実施例2】
【0016】
下記、表2に従って本発明の実施例2について説明する。実施例2は、小松菜の種を60粒づつを地下3cmのところにまとめて埋め、一方に、本願発明にかかわるゲルを種を埋めた位置から5cm離れた所に置き20日後に観察したものである。なお、風の影響を受けないようにするために全体をプラスチックドームで覆いその中で試験を行った。実験中の20日間の気温は、明け方が最低約0℃で、日中が最高20℃で、平均約10℃であった。
【0017】
実施例2はら、本願発明にかかわる寒天から揮発するガスにより小松菜の種の発芽が早まり、また種から発生する根の成長を促進する事が理解できた。
【0018】
【表1】

【0019】
【表2】

【0020】
上述の試験以外にも数十通りの試験を重ねた結果から、梅干しの酢酸抽出液を1重量%以上、天然塩1重量%以上、クエン酸1重量%以上の割合で含ませることにより、カビ(真菌)に対して十分な抗菌効果をもたらすことがわかったが、抗菌効果としては、この濃度が高いほど良い。酢酸濃度が高くなっても、天然塩に含まれる塩化カリウムを追加して加えることにより大幅に酢酸特有の臭いを抑えることが出来、人に嫌悪感を与える臭いを抑えることが出来る。また、塩化カリウムやクエン酸塩などを加えることでph調整ができ、phを5.5から6.5に合わせて貴金属に対しても安全な範囲に保つことも出来る。
【0021】
カビ(真菌)は各種ウイルスよりもサイズが大きく、細胞組織としても強力であることから、また、これまで各種研究機関で試験を行った結果によれば、カビ(真菌)に効果のある抗菌組成物は、ウイルスに対しても同様の効果を示したことから、本願発明に係る抗菌組成物は、各種のウイルスや、それに対して開発された各種ワクチンに対して耐性を持ってしまったウイルスに対しても有効であると推測される。
【産業上の利用の可能性】
【0022】
人体、ペット、植物に対し極めて安全な抗菌成分を揮発させる組成物であるため、様々な場所での使用が予想できます。特に、ビニールハウス栽培の野菜やバラなどの園芸用の植物の栽培時に好適に用いることが出来るものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
梅の熟した果実を塩漬けした梅干しを酢酸濃度が30重量%以上の水溶液か氷酢酸に漬け込み抽出して得られる前記植物の有効成分を含有する抽出液又は抽出エキスと、ニガリもしくは海水から水分を蒸発させて得られる海洋ミネラルとを含むことからなる抗菌性植物活性剤
【請求項2】
請求項1記載の抗菌性植物活性剤に、さらに1重量%から40重量%のリンゴ酸を添加した混合物
【請求項3】
請求項1乃至2に記載の抗菌性植物活性剤に、さらに1重量%から40重量%の塩化カリウムを添加した混合物
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の抗菌性植物活性剤に、さらに1重量%から40重量%のクエン酸又はクエン酸塩を添加した混合物

【公開番号】特開2011−201844(P2011−201844A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90846(P2010−90846)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(510101055)
【Fターム(参考)】