説明

酸化ジルコニウム、酸化セリウム、および酸化イットリウム含有触媒組成物、および排ガス処理におけるこの使用

本発明は、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、および酸化イットリウムを、3%から15%の酸化セリウム割合、および以下の条件に相当する酸化イットリウム割合、即ち酸化セリウム割合が12%超から15%以内の場合、最大で6%;酸化セリウム割合が7%超から12%以内の場合、最大で10%;酸化セリウムの割合が3から7%以内の場合、最大で30%:残りは酸化ジルコニウム、で含む組成物に関する。組成物は場合により、ランタン、ネオジム、およびプラセオジムから選択される希土類金属の酸化物を含むことができる。組成物は、乗物からの排ガスを処理するのに用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジルコニウム、セリウム、イットリウム、および場合により他の希土類金属の酸化物を基礎とする組成物、この調製方法、および触媒反応でのこの使用、特に自動車排ガスの処理での使用に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、内燃機関からの排ガスの処理(自動車再燃焼触媒反応)に、「多機能」触媒が用いられている。「多機能」という用語は、酸化、詳細には排ガスに存在する一酸化炭素および炭化水素の酸化のみならず、還元、詳細にはこうした排ガスに同じく存在する窒素酸化物の還元も行なうことができる触媒(「3機能」触媒)を意味するものとする。酸化ジルコニウムおよび酸化セリウムは、今日、この種の触媒の特に重要で有益な2つの構成成分であるように思われる。より詳細には、これらの酸化物または構成成分に要求される品質は、これらの被還元性である。「被還元性」という用語は、本明細書において、これ以降、還元雰囲気の影響下、および所定の温度で、構成成分中のセリウム(IV)がセリウム(III)に変換され得る水準であることを意味するものとする。この被還元性は、例えば、所定温度範囲内での水素消費量により、測定することができる。これは、還元または酸化される性質を有するセリウムによるものである。この被還元性は、もちろん、出来るだけ高くなければならない。
【0003】
また、この被還元性は安定していることが重要である、即ち、製品が高温にされされた後であっても効果を維持するのに十分なぐらい、被還元性はこの値を高く保つことが重要である。
【0004】
従って、このような被還元性の性質をもつ製品が必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の主題は、この必要性を満たすことができる組成物の開発である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的で、本発明の組成物は、第一の実施形態によると、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物を基礎とし、次の重量割合であることを特徴とする。即ち、酸化セリウムの割合は3から15%、酸化イットリウムの割合は次の条件、即ち酸化セリウムの割合が12%超から15%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約6%であり、酸化セリウムの割合が7%超から12%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約10%であり、酸化セリウムの割合が3から7%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約30%であり、また、残りは酸化ジルコニウム、である。
【0007】
別の実施形態によると、本発明の組成物は、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物を基礎とし、さらに、ランタン、ネオジム、およびプラセオジムから選択される少なくとも1つの希土類金属の酸化物を含み、この組成物の酸化物は以下の重量割合で存在する。即ち、酸化セリウムの割合は3%から15%、酸化セリウムの割合が12%超から15%以内の場合、希土類金属の酸化物の割合は最大で約10%、酸化セリウムの割合が7%超から12%以内の場合、希土類金属の酸化物の割合は最大で約18%、酸化セリウムの割合が3から7%以内の場合、酸化イットリウムと希土類金属の酸化物の合計割合は最大で約30%であり、また、酸化イットリウムの割合は、上記で第一の実施形態について定義したとおりであり、残部は酸化ジルコニウムである。
【発明の効果】
【0008】
以下でわかるとおり、本発明の組成物は、1000℃で高い被還元性を示し、詳細には少なくともこの90%を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の他の特徴、詳細、および利点は、以下の説明および様々な例を読むことでより完全に明らかになるだろう。ただしこれらの例は、具体的ではあるが本発明を例示することを意図するもので制限するものではない。
【0010】
以下の記載において、「比表面積」という用語は、雑誌「The Journal of the American Chemical Society、60、309 (1938)」に記載されるブルナウア・エメット・テラー(Brunauer−Emmett−Teller)法から定められたASTM規格D3663−78に従って窒素吸着により測定されたBET比表面積を意味するものとする。
【0011】
また、表面積の値を測定する前の焼成は、空気中での焼成である。
【0012】
含有量は、特に記載がない限り、酸化物の重量として与えられる。酸化セリウムは、酸化セリウム(IV)の形であり、その他の希土類金属の酸化物は、Lnの形である(Lnは希土類金属を表す。)が、ただしプラセオジムは例外でPr11の形で表される。
【0013】
以下の記載において、特に記載がない限り、所定の値の範囲において限界を示す値はこの範囲に含まれるものとする。
【0014】
本発明による組成物は、まず第一に、この構成成分の性質で特徴づけられる。
【0015】
上記に示すとおり、第一の実施形態によると、組成物は、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物のみを基礎とするか、または本質的にはこれらの3種の酸化物からなる。従って、この組成物が、場合により他の元素を、詳細には痕跡物質または不純物の形で含んでいてもよいが、ただし、組成物の被還元性またはことによるとこの比表面積に影響を及ぼし得るものは含まないということが理解される。
【0016】
第二の実施形態によると、本発明の組成物はさらに、ランタン、ネオジム、またはプラセオジムがそうであり得る少なくとも1つの別の希土類金属の酸化物を含む。ここにおいて、これらの別の希土類金属を互いに組合せることが、もちろん本発明の範囲内にあることを強調しなければならない。特に挙げられるのは、ランタンとネオジムの組合せである。便宜的に1種類の希土類金属を参照して以下に記載するが、この記載は上記の希土類金属の組合せにも適用されるものと理解されるべきである。
【0017】
本発明の組成物は、これらの様々な酸化物の含有量によっても特徴づけられる。より詳細には、本発明の組成物は、酸化セリウムの含有量によって特徴づけられるが、この含有量は3から15%というようにかなり低い。15%を超える酸化セリウム含有量は、被還元性の低下を招く可能性があり、含有量が少なすぎると組成物の触媒性質に有害な可能性がある。
【0018】
酸化イットリウムの含有量は、酸化セリウム含有量によって決まる。全体としては、この酸化イットリウム含有量は、酸化セリウム含有量が増加するにつれて減少する。このことは、第二の実施形態による組成物について、イットリウム酸化物および希土類金属の酸化物の合計含有量にも当てはまる。酸化イットリウム最大含有量またはイットリウム酸化物とその他の希土類金属の酸化物の最大含有量は、上記に記載されているが、これら酸化物が過剰である場合、ここでも組成物の被還元性の低下を招く可能性がある。
【0019】
酸化イットリウムの最小含有量は、概して少なくとも3%、より詳細には少なくとも5%である。
【0020】
その他希土類金属の最小含有量は、ネオジムおよびプラセオジムの場合、概して少なくとも1%、好ましくは少なくとも2%である。
【0021】
本発明の組成物は、有利なことに被還元性を高い度合いで示す。
【0022】
被還元性の度合いは、少なくとも90%、より詳細には少なくとも94%であり得る。また、100%という度合いも達成し得る。本明細書の被還元性の度合いは、定常条件下、空気中1000℃で4時間焼成した組成物で測定される。
【0023】
組成物の被還元性は、この水素消費の測定で求められ、100℃から800℃で測定される。水素消費量の測定は、以下で詳述する条件で、アルゴン希釈した水素を用いた昇温還元法により行なわれる。被還元性の度合いは、還元されたセリウムの百分率で表し、従って、本方法により消費され測定された1/2molのHは、1molの還元されたCe(IV)に相当することが理解される。
【0024】
本発明の組成物の被還元性の性質はまた、組成物が、かなり低い温度、詳細には最大で550℃、より詳細には最大で530℃で、最大被還元性温度を示し得る点でも有利である。この温度は、本明細書では、1000℃で4時間焼成されてもいる組成物に与えられる。この最大温度は、水素の吸着が最大であり、言い換えるなら、セリウム(IV)が還元されてセリウム(III)になるのが最大である温度に相当する。実際、この温度は、組成物の被還元性およびその結果生じる組成物の有効性が最大である温度を反映する。本発明の場合、組成物は、このように、既知の製品のものよりも概して低い温度範囲で有効である。既知の製品については、この最大温度は550℃を超えることが多い。
【0025】
最大被還元性温度は、それゆえ、水素吸着能を温度の関数として測定することにより求められる。この温度は、水素の吸着が最大であり、言い換えるなら、セリウム(IV)が還元されてセリウム(III)になるのが最大である温度に相当する。
【0026】
本発明の組成物は、そのうえ、高温での焼成後であっても、高い比表面積を有する。
【0027】
従って、第一の実施形態の場合、本発明の組成物は、1000℃で4時間焼成後に、少なくとも30m/g、好ましくは少なくとも35m/g、より好ましくは少なくとも40m/gの比表面積を有し得る。上限約50m/gまでの範囲の表面積値を達成し得る。
【0028】
第二の実施形態の場合、別の希土類金属の酸化物をさらに含む組成物は、1000℃で4時間焼成後に、少なくとも40m/g、好ましくは少なくとも45m/g、より好ましくは少なくとも50m/gの比表面積を有し得る。上限約60m/gまでの範囲の表面積値を達成し得る。
【0029】
本発明の第一の実施形態の組成物はまた、1100℃で4時間焼成後に、少なくとも10m/gの比表面積を有し得る。この比表面積についてさらに、少なくとも15m/g、より詳細には少なくとも20m/gであり得る。一方で、同様な焼成条件下、本発明の第二の実施形態の組成物は、少なくとも20m/g、詳細には少なくとも25m/g、より詳細には少なくとも30m/gの表面積を有し得る。
【0030】
1200℃で10時間焼成後、本発明の組成物の比表面積は、少なくとも2m/g、より詳細には少なくとも4m/g、さらにより詳細には少なくとも5m/gであり得る。
【0031】
本発明の組成物は、特定の結晶学的性質を有し得る。
【0032】
従って、特定の実施形態によると、本発明の組成物は、立方対称性または二次対称性の主要相を示す。この場合、単一の希土類金属酸化物のピーク特性は観測されず、単一の希土類金属酸化物のピーク特性は、混合した酸化物の結晶母体での、セリウム以外の希土類金属元素が組込まれたピーク特性に作用するといえるかもしれない。
【0033】
別の特定の実施形態によると、本発明の組成物は、セリウム、イットリウム、およびその他希土類金属元素が酸化ジルコニウム中に含まれている純粋な固溶体の形で提供され得る。
【0034】
この場合、本発明の組成物のX線回折図は、立方系または二次系の結晶になった酸化ジルコニウムのものに相当する単独相が存在することを明らかにし、従って、セリウム、イットリウム、および希土類金属元素が酸化ジルコニウムの結晶格子に組込まれている、つまり真の固溶体となっていることを反映する。イットリウム含有量が高いと、概して立方相となりやすい。この固溶体の実施形態は、1100℃もの高温で4時間焼成を受けた組成物に当てはまる。このことは、こうした条件下での焼成後、相分離、即ち他の相の出現が観測されないことを意味する。
【0035】
最後に、別の特定の実施形態によると、本発明の組成物は、イットリウムおよび場合により希土類金属の1種を含む組成物について、イットリウムおよび希土類金属の濃度に勾配がある粒子の形となり得る。この場合、粒子は、イットリウムの多い領域、および場合によりその他希土類金属が多い領域を示す。
【0036】
本発明の組成物の調製方法をここで説明する。
【0037】
第一の実施形態によると、本発明による方法は、以下の段階、即ち、
(a)塩基性化合物と、ジルコニウム化合物、セリウム化合物、イットリウム化合物、および場合によりその他希土類金属の化合物とを、液体媒体中で混合して、これにより析出物を得る段階、
(b)液体媒体中、析出物を加熱する段階、
(c)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびに脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択される添加剤を前段階で得られる析出物に加える段階、
(d)こうして得られる析出物を焼成する段階、を含む。
【0038】
段階(a)は、液体媒体中で行なわれるが、液体媒体は好ましくは水である。
【0039】
ジルコニウム化合物、セリウム化合物、イットリウム化合物、および場合によりその他希土類金属の化合物は、このような希土類金属化合物を含む組成物を調製する場合、好ましくは溶解性化合物である。このような化合物は、詳細には、これらの元素の塩であってよい。このような化合物を、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、塩化物、およびセリウム(IV)アンモニウム硝酸塩から選択され得る。
【0040】
従って、例として、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、および塩化ジルコニウムを挙げることができる。最も一般的に用いられるのは、硝酸ジルコニウムである。セリウム(IV)塩について、詳細には、例えば、硝酸塩およびセリウム(IV)アンモニウム硝酸塩、を挙げることもでき、本明細書ではこれらが特に適している。好ましくはセリウム硝酸塩が用いられる。純度が少なくとも99.5%、より詳細には少なくとも99.9%である塩を用いることが有利である。硝酸セリウム(IV)塩水溶液は、例えば、過酸化水素水の存在下、セリウム(III)塩、例えば、硝酸セリウム(III)、の溶液をアンモニア水溶液と反応させる従来法で調製された酸化セリウム(IV)水和物を、硝酸と反応させることにより得ることができる。
【0041】
最後に、元素がセリウムIII型である化合物を使用する場合、方法の工程において、酸化剤、例えば、過酸化水素水、を含めることが好ましいことを、強調しなければならない。この酸化剤を、段階(a)の間、詳細にはこの終了時に、反応溶媒への添加に使用してよい。
【0042】
ジルコニウムまたはセリウムの開始化合物としてゾルを用いることも可能である。「ゾル」という用語は、コロイドの大きさ、即ち約1nmから約500nmの大きさの、ジルコニウム化合物またはセリウム化合物を基礎とする微細な固体粒子で構成される任意の系を示し、この化合物は概して、水性液相に懸濁したジルコニウム酸化物および/もしくはこの酸化水和物またはセリウム酸化物および/もしくはこの酸化水和物である。さらに、この粒子は場合により結合または吸着イオンの残部として、例えば、硝酸塩、酢酸塩、塩化物、およびアンモニウムなどを含むことができる。このようなゾルでは、ジルコニウムまたはセリウムは、完全にコロイドの形であるか、またはイオンの形とコロイドの形とが同時に存在するかのいずれかで見られることを強調しなければならない。
【0043】
塩基性化合物として、水酸化物型の製品を用いてもよい。例として、アルカリ金属の水酸化物またはアルカリ土類金属の水酸化物を挙げることができる。第二級、第三級、または第四級アミンを用いることもできる。しかしながら、アミンおよび水性アンモニアはアルカリ金属またはアルカリ土類金属カチオンによる汚染の危険性を減らすという限りにおいて、アミンおよび水性アンモニアが好ましいだろう。塩基性化合物は、より詳細には、溶液の形で用いてもよい。
【0044】
上記元素の化合物および塩基性化合物は、調製することを望む組成物の生成に十分な量で用いられる。
【0045】
段階(a)は、例えば、元から固体である化合物で開始し、続いてこれを容器に入った水に入れるか、またはこれらの化合物の溶液で直接開始し、次いでこの溶液を任意の順序で混合することにより行なうことができる。
【0046】
ジルコニウム化合物、セリウム化合物、イットリウム化合物、およびその他希土類金属の化合物と、塩基性化合物との接触操作は、任意のやり方で、例えば、上記元素の化合物の混合物をあらかじめ形成し、これを塩基性化合物の溶液に加えることにより行なうことができる。この代替形は、本発明の組成物を純粋な立方相の形で得る目的で、好ましい。この接触操作は、好ましくは、撹拌しながら行なわれる。この接触操作は、好ましくは、室温で行なわれる。
【0047】
別の代替形によると、段階(a)は2工程で行なわれる。これは、イットリウム化合物および/または、適切であるならば、その他希土類金属の化合物を調製方法に用いてもよく、第2の工程の反応で、ジルコニウム化合物およびセリウム化合物に関して析出が生じ得ることを意味すると理解される。この代替形は、より詳細には上記の特定の実施形態による組成物、即ちイットリウムおよび場合により希土類金属について濃度勾配を示す組成物を得ることを可能にする。
【0048】
従って、第1の工程で、ジルコニウム化合物とセリウム化合物と塩基性化合物の一部または全部とを混合する。ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、およびその他希土類金属の酸化物を基礎とする組成物を調製する場合、ここでは、イットリウム化合物または希土類金属化合物を用いてもよい。
【0049】
第2の工程では、塩基性化合物が上記で全部は使用されていなかったならば、残りの分を、第1の工程後得られる媒体を用いて、イットリウム化合物と混合する。ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、およびその他希土類金属の酸化物を基礎とする組成物を調製する場合、第2の工程では、イットリウム化合物およびその他希土類金属化合物のいずれも段階(a)の第1の工程で用いられていなかったならば、両者を用い、これらの2種の化合物のうち段階(a)の第1の工程に用いられてないものがあればこれを用いる。
【0050】
段階(a)が完了すると、析出物が反応媒体に懸濁した状態で得られる。
【0051】
本方法の次の段階(b)は、この析出物をこの媒体中で加熱する段階である。
【0052】
この加熱は、塩基性化合物と反応させて得られる反応媒体、または反応媒体から析出物を分離し、場合により析出物を洗浄して水に再懸濁させて得られる懸濁液で直接行なってもよい。媒体を加熱する温度は、少なくとも100℃、より詳細には少なくとも130℃である。この温度は、例えば、100℃から160℃であってよい。加熱操作は、液体媒体を密閉空間(オートクレーブ型の密封容器)に導入して行なうことができる。従って、上記に与えられる温度条件下、水性媒体中で、例として、密封容器内の圧力は1bar(10Pa)超から165Bar(1.65×10Pa)、好ましくは5Bar(5×10Pa)から165Bar(1.65×10Pa)で変動可能であると明記することができる。加熱はまた、開放容器中で、約100℃の温度で行なってもよい。
【0053】
加熱は、空気中、または不活性気体雰囲気、好ましくは窒素下のいずれかで行なってもよい。
【0054】
加熱時間は、広い範囲内で、例えば、1から48時間、好ましくは2から24時間で変動し得る。温度の上昇も同様にある速度で行なわれるが、この速度は重要ではなく、従って媒体を、例えば、30分から4時間加熱することにより設定した反応温度に到達させることが可能である。これらの値は、完全に例示として与えるものである。
【0055】
加熱操作を複数回行なうことが可能である。従って、加熱段階および場合により洗浄操作後に得られる析出物を、水に再懸濁させ、こうして得られる媒体に次いで別の加熱操作を行なってもよい。この別の加熱操作は、最初の加熱操作についてすでに記載されたものと同様な条件下で行なわれる。
【0056】
本方法の次の段階(c)は、前段階から得られる析出物に、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、ならびにカルボン酸およびこの塩、ならびに脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択される添加剤を加えることからなる。
【0057】
この添加剤に関して、WO98/45212の教示を参照することができ、この文書に記載される界面活性剤を使用してもよい。
【0058】
アニオン型の界面活性剤として、エトキシカルボン酸、エトキシ化脂肪酸、サルコシネート、リン酸エステル、アルコール硫酸塩、アルコール硫酸エステル塩、および硫酸化アルカノールアミドエトキシレート等の硫酸塩、ならびにスルホコハク酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、およびアルキルナフタレンスルホン酸塩等のスルホン酸塩を挙げることができる。
【0059】
非イオン性界面活性剤として、アセチレン系界面活性剤、アルコールエトキシレート、アルカノールアミド、アミンオキシド、エトキシ化アルカノールアミド、長鎖エトキシ化アミン、エチレンオキシド/プロピレンオキシド共重合体、ソルビタン誘導体、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール、ポリグリセリルエステルおよびこのエトキシ化誘導体、アルキルアミン、アルキルイミダゾリン、エトキシ化油、およびアルキルフェノールエトキシレートを挙げることができる。詳細には、Igepal(登録商標)、Dowanol(登録商標)、Rhodamox(登録商標)、およびAlkamide(登録商標)の商品名で販売されている製品を挙げることができる。
【0060】
カルボン酸に関しては、詳細には、脂肪族モノカルボン酸または脂肪族ジカルボン酸を使用することができ、これらの中でも、より詳細には飽和酸を使用することができる。脂肪酸、より詳細には飽和脂肪酸を使用してもよい。従って、詳細には、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、およびパルミチン酸を挙げることができる。ジカルボン酸として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、およびセバシン酸を挙げることができる。
【0061】
カルボン酸の塩、詳細にはアンモニウム塩も用いることができる。
【0062】
より詳細には、例として、ラウリン酸およびラウリン酸アンモニウムを挙げることができる。
【0063】
最後に、脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択されるものを用いることができる。
【0064】
「脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の製品」という用語は、鎖末端にCH−COOH基を有するエトキシ化またはプロポキシ化脂肪アルコールからなる製品を意味するものとする。
【0065】
こうした製品は以下の式に相当するものが可能であり、
−O−(CR−CR−O)−CH−COOH
式中、Rは、飽和または不飽和炭素鎖を表し、この長さは概して最大で22個の炭素原子、好ましくは少なくとも12個の炭素原子であり、R、R、R、およびRは、同一であって水素を表すか、またはRがCH基を表して、R、R、およびRが水素であってよく、nは、ゼロ以外の整数で、上限50までの範囲、より詳細には5から15であってよく、これらの数値も含まれる。界面活性剤は、上記の式の製品の混合物(式中、Rはそれぞれ飽和または不飽和であってよい。)、または−CH−CH−O−基および−CH(CH)−CH−O−基の両方を含む製品の混合物で構成され得ることを指摘しなければならない。
【0066】
界面活性剤は、2通りのやり方で加えてもよい。界面活性剤は、前の加熱段階(b)で得られる析出物懸濁液に直接加えてもよい。界面活性剤はまた、加熱を行なった媒体から任意の既知手段により析出物を分離した後、この固体析出物に加えてもよい。
【0067】
界面活性剤の使用量は、酸化物として計算した組成物の重量に関して添加剤の重量%で表して、一般に5から100%、より詳細には15から60%である。
【0068】
本発明の別の有益な代替形によると、方法の最終段階(焼成工程)を行なう前に、析出物が生じた懸濁液の媒体から析出物を分離した後にこれを洗浄する。この洗浄操作は、水、好ましくは塩基性pHの水、例えば、アンモニア水溶液で行ってもよい。
【0069】
本発明による方法の最終段階において、回収した析出物を続いて焼成する。この焼成により、形成した生成物を結晶化させることができ、また、焼成は本発明による組成物のためのその後の操作温度に従って調整および/または選択してもよい。この調整および/または選択は、用いた焼成温度が高くなるほど、生成物の比表面積は低下するという事実を考慮しながら行なわれる。そうした焼成は、概して、空気中で行なわれるが、例えば、不活性ガスまたは制御された雰囲気(酸化雰囲気または還元雰囲気)下で行なわれる焼成が排除されないことは明らかである。
【0070】
実際には、焼成温度は、概して、500から1000℃の値の範囲に制限される。
【0071】
ここから本発明の第二の実施形態による組成物の調製方法を説明する。
【0072】
この方法は、以下の段階を含む。即ち、(a’)ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物のみを基礎とする組成物を調製する場合は、イットリウム化合物の一部を、また、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、および希土類金属の酸化物を基礎とする組成物の調製の場合は、イットリウム化合物とその他希土類金属化合物の少なくとも1種の一部を、液体媒体中に、塩基性化合物の少なくとも一部、およびジルコニウム化合物およびセリウム化合物の少なくとも一部と混合して、析出物を得る段階、
(b’)この析出物を、液体媒体中、加熱する段階、
(c’)段階(b)終了後、塩基性化合物の残部、およびもし適切ならば、イットリウム化合物またはイットリウム化合物とその他希土類金属化合物の少なくとも1種の残部を、液体媒体に加える段階、
(d’)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびに脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択される添加剤を、前段階で得られる析出物に加える段階、
(e’)こうして得られる析出物を焼成する段階、を含む。
【0073】
この第二の形の方法により、また、上記の特定の実施形態による組成物、即ちイットリウムおよび場合により希土類金属に濃度勾配がある組成物をより具体的に得ることができる。
【0074】
この方法は、イットリウムおよびその他希土類金属の導入の仕方において、第一の形による方法と本質的に異なる。これは、1番目の段階(a’)では、イットリウム化合物および/または希土類金属化合物の一部のみが用いられ、この全部が用いられるのではないからであり、塩基性化合物も、この段階ではこの全部または一部のみのいずれかで用いられることになるからである。残部は、イットリウム化合物および/またはその他希土類金属化合物の残部を析出させる目的で、その後、加熱段階(b’)終了後に、導入する。塩基性化合物が段階(a’)で全部用いられなかった場合、塩基性化合物の残りも、この時点で導入される。化合物の導入順序は、調製したいと願う組成物および所望の特性に従って、完全に調整し得る。例えば、段階(a’)で、イットリウム化合物全部と希土類金属の一部のみとを導入する、またはこの逆、または、また2種の化合物の一部のみを導入し残部を段階(c’)で導入することも可能である。
【0075】
この違いとは別に、第一の実施形態により方法の説明で記載されたこと、詳細には析出段階(a)、加熱段階(b)、添加剤の添加段階(c)および焼成段階(d)について記載されたことは、同様に第二の実施形態でも、特に対応する段階(a’)、(b’)、(d’)、および(e’)に適用されることが理解されるだろう。
【0076】
本発明は、また、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、および場合によりランタン、ネオジム、およびプラセオジムから選択される希土類金属の酸化物を基礎とし、これらの様々な元素の酸化物を本明細書で示される割合で含み、上記に記載されている段階(a’)、(b’)、(c’)、(d’)、および(e’)を含む方法により得ることができる組成物も包含することを、強調しなければならない。
【0077】
上記のとおり、または上記の方法で得られるとおりの本発明の組成物は、粉末状で提供されるが、様々な大きさの顆粒、球、筒、または蜂の巣状で提供する目的で、場合により成形してもよい。
【0078】
本発明の組成物は、触媒または触媒支持体として用い得る。従って、本発明は、本発明の組成物を含む触媒系にも関する。このような系について、本発明の組成物は、触媒反応の分野で通常用いられる任意の支持体、即ち詳細には熱的に不活性な支持体に、担持させることができる。この支持体は、アルミナ、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウム、シリカ、スピネル、ゼオライト、ケイ酸塩、結晶性のリン酸シリコアルミニウム(silicoaluminum)、および結晶性のリン酸アルミニウムから選択し得る。
【0079】
組成物は、また、これらの組成物を基礎とし触媒性を持つ被覆剤(ウォッシュコート)を、例えば、金属またはセラミックモノリスの基板上に有する、触媒系で用いることもできる。被覆剤はまた、これ自身が、上記のような型の支持体を含んでもよい。この被覆剤は、組成物を支持体と混合して懸濁液を形成することで得られ、懸濁液は続いて基板に蒸着させることができる。
【0080】
こうした触媒系、より詳細には本発明の組成物は、非常に多くの用途がある。つまり、触媒系は、様々な反応、例えば、脱水、水硫化(hydrosulfurization)、水素化脱窒、脱硫、水素化脱硫、脱水ハロゲン化、改質、水蒸気改質、クラッキング、水素化分解、水素化、脱水素化、異性化、不均化、オキシ塩素化、炭化水素または他の有機化合物の脱水素環化、酸化および/または還元反応、クラウス反応、内燃機関からの排ガスの処理、脱金属、メタン化反応、転化反応、またはディーゼルエンジンまたは希薄燃焼条件下で操作するガソリンエンジンなどの内燃機関から排出される煤の触媒酸化等の触媒反応に特によく適しており、また有用である。最後に、本発明の触媒系および組成物は、酸化媒体中であっても、NOトラップとして、またはNO化合物の減少を促進するために用いることができる。
【0081】
こうした触媒反応での使用の場合、本発明の組成物は、貴金属と併用される。つまり、本発明の組成物は貴金属の支持体として作用する。貴金属の性質、およびこれを支持体組成物へ組込むための技法は、当業者に既知である。例えば、貴金属は、白金、ロジウム、パラジウム、またはイリジウムがあり、これらは、詳細には、含浸により組成物に組込んでもよい。
【0082】
記載した用途の中で、内燃機関からの排ガスの処理(自動車再燃焼触媒反応)が、特に有益な用途である。このため、本発明は、内燃機関からの排ガスを処理する方法にも関連し、この方法は、触媒として、上記の触媒系または本発明による上記のとおりの組成物を用いることを特徴とする。
【0083】
ここから実施例を記載する。
【0084】
以下の実施例において、被還元性の度合いは、以下の条件下で測定する。
(被還元性の度合い)
セリウムの被還元性の度合いは、Micromeritics Autochem II装置で、昇温還元法を行なって測定する。この装置は、本発明による組成物の水素消費を温度の関数として測定し、そこからセリウムの還元の度合いを推定することができる。
【0085】
より詳細には、還元ガスとして水素を、アルゴン中10体積%濃度で、30ml/分の流速で用いる。実験プロトコルは、試料200mgを用意した容器に計り入れるところから始まる。続いて、底に石英綿が入った石英セルに試料を入れる。試料を測定装置の炉に配置する。温度プログラムは以下のとおりである。
【0086】
酸化:Oを5体積%含むHe下、上昇勾配20℃/分で、温度を400℃まで上昇させる
30分間の定常相、次いで50℃への下降勾配
10分間の定常相
還元:Hを10体積%含む空気中、上昇勾配10℃/分で、温度を800℃まで上昇させる
10分間の定常相
900℃で10分間、Ar下でフラッシュしてから、試料の酸化を行ない周辺温度に戻す
このプログラムの間、試料温度を、試料の高さに設置された熱電対で測定する。還元相の間の水素消費は、セルの排出口で熱伝導度検出器(TCD)を用いて測定される、ガス流の熱伝導度の変化を較正することで推定する。
【0087】
セリウムの還元の度合いは、100℃から800℃で測定される水素消費から計算する。
【0088】
(実施例1)
この実施例は、ジルコニウム83%、セリウム5%、ランタン2%、イットリウム5%、およびネオジム5%を含む組成物に関する。これらの割合は、酸化物ZrO、CeO、La、Y、およびNdの重量%として表したものである。
【0089】
硝酸ジルコニウム313ml(266g/l、ZrOとして)、硝酸セリウム19.7ml、硝酸ランタン4.4ml(456g/l、Laとして)、硝酸イットリウム13.1ml(382g/l、Yとして)、および硝酸ネオジム9.5ml(524g/l、Ndとして)を、撹拌したビーカーに入れる。続いて、この混合物に蒸留水を加え、硝酸塩溶液1Lとする。
【0090】
アンモニア水溶液203ml(12mol/l)を、撹拌した反応器に入れ、続いて、溶液に蒸留水を加え、全体積を1Lとする。
【0091】
撹拌を続けながら、硝酸塩溶液を反応器に入れる。
【0092】
得られる溶液を、撹拌器を備えたステンレス鋼オートクレーブに入れる。撹拌しながら、媒体温度を、2時間150℃にする。
【0093】
こうして得られる懸濁液に、ラウリン酸33gを加える。懸濁液を1時間撹拌する。
【0094】
次いで、懸濁液をブフナーロートでろ過し、次いで、ろ過した析出物に、アンモニア水溶液を、ろ過した母液水の1倍体積の割合で加える。得られる生成物を、続いて、定常条件下、4時間、700℃にする。
【0095】
(実施例2から12)
以下において、特に記載されない限り、手順は実施例1と同様である。実施例8については、硝酸ネオジムを含む希釈溶液Bと、その他の構成要素全てを含む希釈溶液Aとで、方法を開始する。アンモニア水溶液に溶液Aを加えてから溶液Bを加え、次いで1つにまとめた混合液を実施例1のとおりに加熱する。実施例9については、溶液Bは硝酸イットリウムを含む。実施例10については、溶液Bは硝酸イットリウムと硝酸ネオジムを含む。実施例6については、硝酸プラセオジム溶液は、Pr11濃度が500g/lである。
【0096】
これら実施例の組成物の調製で用いた様々な反応体溶液の体積を、以下の表1に示す。これらの調製の結果得られる様々な組成物の酸化物の含有量を、表2に示す。同じくこれらの組成物の表面積値を表3に、1000℃で4時間焼成後の被還元性質を表4に示す。
【0097】
これらの酸化物について、上記に示した方法に従って被還元性の度合いを測定する間に描きだされる被還元性プロファイルは、低温のピークを示すが、これは、低温で還元され得るセリウムの画分をこれらの酸化物が有していることを意味する。従って、最初の還元が生じる温度は、150から230℃にある。このピークに対応する面積は、被還元性曲線に囲まれる全面積の3から15%に等しい。これは、被還元性を100%としたときに、低温で還元され得るセリウムの画分が、セリウム全体の3から15%であることを意味する。
【0098】
こうしたピークが、酸化物表面に存在する、被還元性測定の間に行なわれる処理の間に還元される不純物によるものであることもあるので、これらのピークが、そうではないことをはっきりと確認する目的で、試料を、空気中800℃でin situで予備焼成を行った後、被還元性測定を行なった。この前処理により、試料の表面に存在する不純物を全て除去することができる。前処理後も低温ピークは存在し、即ち、この現象が確かにセリウムの還元に相当するものであることを意味する。
【0099】
これらの結果は、本発明の組成物が、酸化/還元の性質を低温から、詳細には150℃から230℃の範囲の温度から示し始めることを示す。
【0100】
【表1】

【0101】
【表2】

【0102】
【表3】

【0103】
【表4】

【0104】
(実施例13および14)
ZrOとCeOとYとNdでそれぞれ75対10対5対10の比である組成物に関して酸化物を2つ調製する。実施例13は、実施例1の手順に従って行なう。実施例14については、硝酸ネオジムと硝酸イットリウムを含む希釈溶液Bと、その他の構成成分全てを含む希釈溶液Aとで、プロセスを開始する。アンモニア水溶液に溶液Aを加えてから溶液Bを加え、次いで1つにまとめた混合液を実施例1のとおりに加熱する。
【0105】
希釈硝酸を用いた浸出試験により、これら2通りの方法により調製した酸化物の表面におけるイットリウム含有量を比較することができる。この試験は以下のやり方で行なう。即ち、酸化物1gを、硝酸0.1mol/L溶液10mlに撹拌しながら分散させる。40℃で2時間撹拌後、懸濁液をろ過する。ICP法によりろ液を分析することで、回収されたイットリウム量を求めることができる。回収されたイットリウムの割合を求めるために、測定された値をそれぞれ酸化物試料に存在するイットリウム量で割る。実施例13および14で得られた結果を以下の表5に示す。
【0106】
【表5】

【0107】
試料に存在する結晶相を特性決定するため、X線回折分析を行なう。この分析は、粉末で、X’Celerator型の多チャンネル検出器およびKβ/Kαモノクロメーターを備えたPanalytical回折計を用いて行なう。データは、20分間に2θ=20から2θ=100°でステップ幅0.017mmで測定する。試料は全て、立方対称性または二次対称性の固溶体の特徴を示す相が非常に優勢な形で存在する。特に、希土類金属酸化物単独での存在は検出されず、希土類金属(La、Y、Ndおよび/またはPr)がCe−Zr母結晶に組込まれていることを反映する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物を基礎とし、この重量割合は、
酸化セリウムの割合が3から15%、
酸化イットリウムの割合が、以下の条件に合うもの、即ち
酸化セリウムの割合が12%超から15%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約6%、
酸化セリウムの割合が7%超から12%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約10%、
酸化セリウムの割合が3から7%以内の場合、酸化イットリウムの割合は最大で約30%、および、
残りが酸化ジルコニウム、
であることを特徴とする組成物。
【請求項2】
ランタン、ネオジム、およびプラセオジムから選択される希土類金属の酸化物の少なくとも1種を、以下の重量割合、即ち、
酸化セリウムの割合が12%超から15%以内の場合、その他希土類金属の酸化物の割合が最大で約10%、
酸化セリウムの割合が7%超から12%以内の場合、その他希土類金属の酸化物の割合が最大で約18%、
酸化セリウムの割合が3から7%以内の場合、酸化イットリウムおよびその他希土類金属の酸化物の合計割合が最大で約30%である、
重量割合で、さらに含むことを特徴とする、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
イットリウムの含有量は、少なくとも3%、より詳細には少なくとも5%であることを特徴とする、請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
1000℃で4時間焼成した組成物で測定して、少なくとも90%の被還元性の度合いを示すことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項5】
1000℃で4時間焼成した組成物で測定して、少なくとも94%の被還元性の度合いを示すことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項6】
最高で550℃、より詳細には最高で530℃で、最大被還元性温度を有することを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項7】
イットリウムおよびその他希土類金属について濃度勾配を示す粒子の形であることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
以下の段階、即ち、
(a)塩基性化合物と、ジルコニウム化合物と、セリウム化合物と、イットリウム化合物と、場合によりその他希土類金属の化合物とを、液体媒体中で混合して、これにより析出物を得る段階と、
(b)液体媒体中、析出物を加熱する段階と、
(c)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびに脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択される添加剤を、前段階で得られる析出物に加える段階と、
(d)こうして得られる析出物を焼成する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項9】
段階(a)は2工程で行なわれ、まず、第1の工程で、ジルコニウム化合物と、セリウム化合物と、塩基性化合物の一部または全部と、場合により、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、およびその他希土類金属の酸化物を基礎とする組成物を調製する場合に、イットリウム化合物およびその他希土類金属化合物の少なくとも1種とを混合し、
続いて、第2の工程では、塩基性化合物が残っているならばこの残りの分と、イットリウム化合物と、場合により、ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、およびその他希土類金属の酸化物を基礎とする組成物を調製する場合には、未使用で残っているイットリウム化合物またはその他希土類金属化合物かこの両方とを混合することを特徴する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
以下の段階、即ち、
(a’)ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、およびイットリウム酸化物のみを基礎とする組成物を調製する場合、イットリウム化合物の一部を、
ジルコニウム酸化物、セリウム酸化物、イットリウム酸化物、およびその他希土類金属の酸化物を基礎とする組成物の調製の場合は、イットリウム化合物とその他希土類金属化合物の少なくとも1種の一部を、
液体媒体中に、塩基性化合物の少なくとも一部、およびジルコニウム化合物およびセリウム化合物の少なくとも一部と混合して、析出物を得る段階と、
(b’)この析出物を、液体媒体中で、加熱する段階と、
(c’)段階(b)終了後、塩基性化合物の残部があるならばこれと、イットリウム化合物の残部またはイットリウム化合物とその他希土類金属化合物の少なくとも1種の残部を、液体媒体に加える段階と、
(d’)アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、ポリエチレングリコール、カルボン酸およびこの塩、ならびに脂肪アルコールのカルボキシメチル化エトキシレート型の界面活性剤から選択される添加剤を、前段階で得られる析出物に加える段階と、
(e’)こうして得られる析出物を焼成する段階と、
を含むことを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物の調製方法。
【請求項11】
ジルコニウム化合物、セリウム化合物、イットリウム化合物、および希土類金属の化合物として、硝酸塩、硫酸塩、酢酸塩、および塩化物から選択される化合物が使用されることを特徴とする、請求項8から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
段階(b)または(b’)の析出物の加熱は、少なくとも100℃の温度で行なわれることを特徴とする、請求項8から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
析出物を、段階(d)または(d’)終了後に、および焼成前に、洗浄することを特徴とする、請求項8から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を含むことを特徴とする、触媒系。
【請求項15】
触媒または触媒支持体として、請求項14に記載の触媒系または請求項1から7のいずれか一項に記載の組成物を使用することを特徴とする、内燃機関からの排ガスを処理する方法。

【公表番号】特表2011−520745(P2011−520745A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−505483(P2011−505483)
【出願日】平成21年4月21日(2009.4.21)
【国際出願番号】PCT/EP2009/054715
【国際公開番号】WO2009/130202
【国際公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【出願人】(508183151)ロデイア・オペラシヨン (70)
【Fターム(参考)】