説明

酸化セリウム微粒子の製造方法

【課題】廃液中に窒素系化合物を含有することのない、酸化セリウム微粒子を製造する方法を提供する。
【解決手段】(I)硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物とを、酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対するアルカリ金属の水酸化物のモル数の割合が1〜10となる範囲で混合し、50〜98℃に加温・熟成した後、冷却して、沈殿物を得る工程、(II)工程(I)で得られた沈殿物を乾燥し、結晶子径5〜50nmの酸化セリウム微粒子を得る工程、を有する酸化セリウム微粒子の製造方法とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化セリウム微粒子の製造方法に関し、より詳しくは、窒素系化合物を含有する廃液なしに酸化セリウム微粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化セリウム微粒子は、従来から、触媒担体、研磨材又はガラス添加剤として使用されている。例えば、磁気記録媒体用基板、半導体ウエハ、光学レンズ、プリズム、ミラー等の製造において、ガラス、カーボン、およびセラミックス等の材料の表面を研磨する研磨材として、酸化セリウム微粒子が使用されている。
【0003】
酸化セリウム微粒子の製造方法は種々検討がなされており、例えば、特許文献1には、セリウム(IV)の塩の水溶液を酸性媒体中で加水分解し、得られた沈殿をろ過し、洗浄し、所望によりそれを乾燥し、続いて300〜600℃で焼成することにより酸化第二セリウムを製造する方法が開示されている。前記特許文献1の方法により、測定温度350〜450℃において少なくとも85±5m/g以上の比表面積を有する酸化第二セリウムを得ることができる。
【0004】
また、特許文献2には、セリウム塩水溶液と硫酸イオン含有水溶液を反応させることにより塩基性硫酸第二セリウム塩を沈澱させ、得られた沈澱をろ過し、洗浄し、所望により乾燥し、続いて300〜500℃で焼成することにより酸化第二セリウムを製造する方法が開示されている。前記特許文献2の方法により、測定温度350〜500℃において85±5m/g以上の比表面積を有する酸化第二セリウムを得ることができる。
【0005】
そして、特許文献3には、上記のような微細な酸化第二セリウムを製造するための中間生成物及びその製造方法が開示されている。その中間生成物は一般式Ce(OH)x(NO)y・pCeO・nHO(式中、xはx=4−yとなるような数であり、yは0.35〜1.5であり、pは0以上2.0以下であり、nは0以上約20以下である。)で表されるセリウム(IV)化合物であり、その製造方法は、セリウム(IV)塩水溶液を酸性媒体で加水分解し、得られた沈殿物を分離し、場合によって熱処理することからなる。その中間生成物はX線回折ではCeOと同じ形を示すが、燃焼損失が20%ある。また、その中間生成物は焼成後に比表面積の大きい酸化セリウムが生成する。
【0006】
特許文献4には、粒径を揃えるために、硫酸セリウム水溶液とアンモニア水溶液とを、アンモニアの当量数がセリウムの当量数以上であり、反応媒体のpHが6より大であるように連続的に同時混合し、得られた沈殿物を濾取し、乾燥し、600〜1200℃で焼成し、得られた酸化物をジェットミル粉砕する諸工程からなる製造方法が提案されている。
【0007】
さらに、特許文献5には、硝酸第一セリウムの水溶液と塩基とを、pHが5〜10となる量比で攪拌混合し、続いて70〜100℃に急速加熱し、その温度で熟成することを特徴とする粒径が10〜80nmの酸化セリウム単結晶からなる酸化セリウム超微粒子の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平3−24478号公報
【特許文献2】特公平3−24411号公報
【特許文献3】特開昭62−275021号公報
【特許文献4】特公昭63−27389号公報
【特許文献5】特開平9−142840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の酸化セリウム微粒子の製造方法では、その製造工程において、窒素含有溶媒を用いて処理を行うため、窒素系化合物を含有した廃液がでる可能性がある。窒素系化合物は水質汚濁防止法による規制物質であり、環境へ影響を与えるものであるため、窒素系化合物を除去する処理が必要である。
そこで、本発明は、廃液中に窒素系化合物を含有することのない、酸化セリウム微粒子を製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定のセリウム塩を特定の塩基性化合物とその酸化セリウム換算に対するモル比が特定の範囲となるように混合することで廃液中に窒素系化合物を排出することなく酸化セリウム微粒子を製造できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の課題は下記(1)〜(3)の手段により達成される。
(1)(I)硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物とを、酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対するアルカリ金属の水酸化物のモル数の割合が1〜10となる範囲で混合し、50〜98℃に加温・熟成した後、冷却して、沈殿物を得る工程、(II)工程(I)で得られた沈殿物を乾燥し、結晶子径5〜50nmの酸化セリウム微粒子を得る工程、を有することを特徴とする酸化セリウム微粒子の製造方法。
(2)前記工程(I)が、前記得られた沈殿物を洗浄する工程を含むことを特徴とする上記(1)に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。
(3)前記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る酸化セリウム微粒子の製造方法により、酸化セリウムの単結晶を得ることができる。また、この製造方法によれば、製造工程で生じる廃液に窒素化合物を含むことがなく、窒素化合物の除去処理を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1の方法により製造された酸化セリウム微粒子のTEM像の写真である。
【図2】実施例1の方法により製造された酸化セリウム微粒子をX線解析した特性図である。
【図3】実施例2の方法により製造された酸化セリウム微粒子のTEM像の写真である。
【図4】実施例2の方法により製造された酸化セリウム微粒子をX線解析した特性図である。
【図5】実施例3の方法により製造された酸化セリウム微粒子のTEM像の写真である。
【図6】実施例3の方法により製造された酸化セリウム微粒子をX線解析した特性図である。
【図7】実施例4の方法により製造された酸化セリウム微粒子のTEM像の写真である。
【図8】実施例4の方法により製造された酸化セリウム微粒子をX線解析した特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の酸化セリウム微粒子の製造方法について詳細に説明する。
本発明の酸化セリウム微粒子の製造方法は、(I)硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物とを、酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対するアルカリ金属の水酸化物のモル数の割合が1〜10となる範囲で混合し、50〜98℃に加温・熟成した後、冷却して、沈殿物を得る工程、(II)工程(I)で得られた沈殿物を乾燥し、結晶子径5〜50nmの酸化セリウム微粒子を得る工程、を有している。
【0015】
<工程(I)>
本発明にかかる酸化セリウム微粒子の製造方法では、出発原料として、硫酸セリウム又は塩化セリウムを用いる。これは、排液中に窒素系化合物を流出させないためである。硫酸セリウム又は塩化セリウムを用いることで、窒素化合物の除去処理を必要としない。
【0016】
硫酸セリウムと塩化セリウムは水系溶媒に溶解して、硫酸セリウム水溶液、塩化セリウム水溶液として使用する。水系溶媒としては、例えば、イオン交換水、蒸留水、精製水、等が挙げられる。
硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液の濃度としては、水溶液中、酸化セリウムが0.05〜1mol/Lとなるように調整すればよく、0.1〜0.5mol/Lがより好ましく、0.1〜0.3mol/Lが特に好ましい。水溶液中の酸化セリウムの濃度が0.1mol/L以上であれば、収率よく生産できるため好ましく、1mol/L以下であれば、シャープな粒度分布となるため好ましい。
【0017】
アルカリ金属の水酸化物としては、水酸化ナトリウム(NaOH)、水酸化カリウム(KOH)又は水酸化リチウム(LiOH)などが好適に使用される。このうち、特に水酸化ナトリウムの使用が推奨される。アルカリ金属の水酸化物は、1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。尚、コストの観点から、水酸化ナトリウムを用いることが好ましい。
【0018】
アルカリ金属の水酸化物は、硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液との溶解性を高めるため、あらかじめ水系溶媒に溶解して用いることが好ましい。
アルカリ金属の水酸化物の水溶液の濃度としては、水溶液中、アルカリ金属の水酸化物が0.05〜1mol/Lとなるように調整すればよく、0.1〜0.5mol/Lがより好ましく、0.1〜0.3mol/Lが特に好ましい。水溶液中の塩基性酸化物の濃度が0.1mol/L以上であれば、収率よく生産できるため好ましく、1mol/L以下であれば、シャープな粒度分布となるため好ましい。
【0019】
前記硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物は、酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対するアルカリ金属又の水酸化物のモル数の割合が1〜10となる範囲で混合することが好ましく、1〜5がより好ましく、1〜1.5が特に好ましい。酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対してアルカリ金属の水酸化物のモル数が1以上であると、高収率となり好ましく、アルカリ金属の水酸化物のモル数が10以下であると、後工程での洗浄回数が軽減できるため好ましい。
【0020】
尚、硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物との混合液は、pH値がpH3〜10となるようにすることが好ましく、pH4〜7がより好ましく、pH4〜6が特に好ましい。pH値がpH3以上であると、結晶度が高くなるため好ましく、pH10以下であると、後工程での洗浄回数が軽減となるため好ましい。
上記pHの範囲となるように、適宜、pHコントローラー等を用いて調整すればよい。
【0021】
前記硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液と前記アルカリ金属の水酸化物の水溶液とを混合し、加温して熟成させる。
硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物の水溶液の混合液を加温する温度としては、前記混合液が沸騰しない温度であれば特に限定されないが、50〜98℃程度が好ましく、70〜93℃がより好ましく、90〜93℃が特に好ましい。加温する温度が50℃以上であると、結晶度が高くなるため好ましい。
混合液の熟成方法としては、特に限定されないが、液温を前記温度範囲に維持した状態で、攪拌下で、所定時間熟成させる方法、ポンプにより循環させる方法等が挙げられる。
混合液の熟成時間としては、特に限定されないが、3〜24時間程度であり、3〜12時間が好ましく、4〜8時間がより好ましく、5〜6時間が特に好ましい。熟成時間が3時間以上であると、高収率となるため好ましく、24時間以下であると、結晶度が高く好ましい。
【0022】
尚、本発明において、硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液を50〜98℃に加温しておき、その後にアルカリ金属の水酸化物の水溶液を添加してもよい。
【0023】
前記加温・熟成の後、混合液を冷却して沈殿物を得る。
混合液は、60℃以下、好ましくは50℃以下、特に好ましくは30℃以下に冷却し、6時間以上、好ましくは8時間以上、特に好ましくは12時間以上静置することで、混合液中の酸化セリウム微粒子が沈殿し、沈殿物が得られる。当該沈殿物は白色沈殿であり、酸化セリウム微粒子が含有されている。
また、シャープレス等を用いて遠心分離により沈殿物を回収してもよい。
【0024】
<工程(II)>
次に、前記工程(I)で得られた酸化セリウム微粒子を含む沈殿物を乾燥する。すなわち、上澄みを除去し、沈殿物を回収し、乾燥して、粉末状の酸化セリウム微粒子を得る。
沈殿物の乾燥方法としては特に制限はないが、例えば、沈殿物を容器に入れて加熱、乾燥させる方法、スプレードライヤーで乾燥させる方法、真空乾燥機で乾燥させる等が挙げられる。
乾燥温度としては、80〜200℃が好ましく、80〜150℃がより好ましく、80〜120℃が特に好ましい。乾燥温度が80℃以上であると乾燥温度が低いため、生産効率が上がり、また150℃以下であると一部粒子間の脱水結合による粒子の結合が防止できるため好ましい。
乾燥時間としては、8〜24時間が好ましく、8〜16時間がより好ましく、8〜12時間が特に好ましい。乾燥時間が8時間以上であると乾燥が充分終了する。
次に、前記工程(I)で得られた酸化セリウム微粒子を含む沈殿物をイオン交換水で希釈し、NaOH、KOH等でpHをアルカリ性に調整した後に酸化セリウム微粒子を分散させる。
分散方法としては特に制限はないが、例えば、サンドミル分散機、超音波分散機等が挙げられる。
酸化セリウム微粒子の濃度としては、5%〜20%が好ましく、7〜20%がより好ましく、7〜15%が特に好ましい。濃度が5%以上であると各種用途に用いる場合に利便性があり、20%以下であると粒子の安定性を維持できるため好ましい。
pHが8以上であると酸化セリウムの表面−OH基の解離が充分であり、分散に必要な表面チャージが得られる。pHが11以下であると過剰なイオンの含有を防止でき、分散性を維持することができる。
【0025】
本発明の製造方法により得られる酸化セリウム微粒子は、平均結晶子径が5〜50nmの酸化セリウム微粒子であり、その平均粒子径は5〜50nmの範囲となる。尚、得られた酸化セリウム微粒子を超音波、サンドミル等の再分散処理を行うことで、所望の粒子径を有する酸化セリウム微粒子を得ることができる。
【0026】
本発明において、前記工程(I)で得られた沈殿物を洗浄する工程を行ってもよい。
沈殿物を洗浄する方法としては、遠心分離機によるデカンテーション法又は限外濾過膜法等を挙げることができる。洗浄工程を1回乃至は複数回行うことで不純物が除去され、より純度の高い酸化セリウム微粒子を得ることができる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0028】
実施例および比較例において採用した測定方法と分析方法は次の通りである。
[結晶子径測定]
酸化セリウム微粒子の結晶子径は、X線回折装置(商品名:RINT1400,理学電気株式会社製)を用いて、X線回折法により、2θ=25.3°のピークの半値幅を測定し、Debye-Schrrerの式により計算によって求めた。
【0029】
[pH測定]
試料50mlを入れたセルを、25℃の温度に保たれた恒温槽中で、pH4、7および9の標準液で校正が完了したpHメータ(商品名:F−22,株式会社堀場製作所製)のガラス電極を挿入して測定した。
【0030】
(実施例1)
硫酸セリウム(III)八水和物10.4g及び蒸留水489.7gを5L容器に入れて攪拌(200rpm)し、溶解した。
引き続き攪拌しながら温度を93℃に昇温し、1.0%水酸化ナトリウム水溶液348gの全量を一度に加え、攪拌しながら温度93℃で6時間維持した。
次に30℃以下に冷却したところ、白色沈殿が得られた。この溶液のpHは10.0であった。
この溶液を遠心分離装置を用いて、14000rpmで10分間処理した後、上澄み液を除去した。白色沈殿に蒸留水800gを加え、更に遠心分離装置で、14000rpmで10分間処理した。この操作を合計3回行って、沈殿物を洗浄した。
得られた沈殿物を透過型電子顕微鏡(TEM 倍率25万倍)で観察した。その結果を図1に示す。図1により、平均粒子径13nmの単分散粒子であることがわかる。
そして、80℃の乾燥機で12時間乾燥させることにより白色粉末5.2gを得た。この白色粉末をX線回折した結果、酸化セリウムであった。半値幅から求めた結晶子径は13.4nmである。結果を表1および図2に示す。
TEM写真およびX線回析から求めた結晶子径より、単結晶の粒子が得られたことがわかる。
【0031】
(実施例2)
硫酸セリウム(III)八水和物10.4g及び蒸留水489.6gを5L容器に入れて攪拌(200rpm)し、溶解した。
引き続き攪拌しながら温度を93℃に昇温し、1.0%水酸化ナトリウム水溶液280gの全量を一度に加え、攪拌しながら温度93℃で6時間維持した。
次に30℃以下に冷却したところ、白色沈殿が得られた。この溶液のpHは5.0だった。
この溶液を遠心分離装置を用いて、14000rpmで10分間処理した後、上澄み液を除去し、蒸留水800gを加え、更に遠心分離装置で、14000rpmで10分間処理した。この操作を合計3回行って、沈殿物を洗浄した。
得られた沈殿物を透過型電子顕微鏡(TEM 倍率25万倍)で観察した。その結果を図3に示す。図3により、平均粒子径16nmの単分散粒子であることがわかる。
そして、80℃の乾燥機で12時間乾燥させることにより白色粉末4.5gを得た。この白色粉末をX線回折した結果、酸化セリウムであった。半値幅から求めた結晶子径は16.5nmである。結果を表1および図4に示す。
TEM写真およびX線回析から求めた結晶子径より、単結晶の粒子が得られたことがわかる。
【0032】
(実施例3)
塩化セリウム(III)七水和物10.8g及び蒸留水489.2gを5L容器に入れて攪拌(200rpm)し、溶解した。
引き続き攪拌しながら温度を93℃に昇温し、1.0%水酸化ナトリウム水溶液359gの全量を一度に加え、攪拌しながら温度93℃で6時間維持した。
次に30℃以下に冷却したところ、白色沈殿が得られた。この溶液のpHは11.0だった。
この溶液を遠心分離装置を用いて、14000rpmで10分間処理した後、上澄み液を除去し、蒸留水800gを加え、更に遠心分離装置で、14000rpmで10分間処理した。この操作を合計3回行って、沈殿物を洗浄した。
得られた沈殿物を透過型電子顕微鏡(TEM 倍率10万倍)で観察した。その結果を図5に示す。図5により、一次粒径8〜15nm程度の粒子がつながって、長さ100〜300nm程度、太さ30〜50nm程度の鎖状粒子が形成されているのがわかる。そして、80℃の乾燥機で12時間乾燥させることにより白色粉末5.4gを得た。この白色粉末をX線回折した結果、酸化セリウムであった。半値幅から求めた結晶子径は9.6nmであった。結果を表1および図6に示す。
TEM写真およびX線回析から求めた結晶子径より、多結晶の粒子が得られたことがわかる。
【0033】
(実施例4)
塩化セリウム(III)七水和物10.8g及び蒸留水489.2gを5L容器に入れて攪拌(200rpm)し、溶解した。
引き続き攪拌しながら温度を93℃に昇温し、1.0%水酸化ナトリウム水溶液280gの全量を一度に加え、攪拌しながら温度93℃で6時間維持した。
次に30℃以下に冷却したところ、白色沈殿が得られた。この溶液のpHは3.1だった。
この溶液を遠心分離装置を用いて、14000rpmで10分間処理した後、上澄み液を除去し、蒸留水800gを加え、更に遠心分離装置で、14000rpmで10分間処理した。この操作を合計3回行って、沈殿物を洗浄した。
得られた沈殿物を透過型電子顕微鏡(TEM 倍率25万倍)で観察した。その結果を図7に示す。図7により、平均粒子径20nmの単分散粒子であることがわかる。
そして、120℃の乾燥機で12時間乾燥させることにより白色粉末3.5gを得た。この白色粉末をX線回折した結果、酸化セリウムであった。半値幅から求めた結晶子径は19.7nmである。結果を表1および図8に示す。
TEM写真およびX線回析から求めた結晶子径より、単結晶の粒子が得られたことがわかる。
【0034】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の製造方法によれば、廃液中に窒素系化合物を含有することがないため、除去処理を行う必要がなく、従って、排水処理コストの低減に有用である。また、得られた酸化セリウム微粒子は、半導体基板、配線基板などの半導体ウエハ、ガラス製ハードディスク、アルミナ製ハードディスク用の研磨砥粒などに利用できる。さらに、紫外線吸収剤、ガスセンサー、固体酸化物燃料電池用の電極材料、さらにゼオライト表面に酸化セリウム微粒子を吸着させることにより、自動車用NOx浄化触媒として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I)硫酸セリウム水溶液又は塩化セリウム水溶液とアルカリ金属の水酸化物とを、酸化セリウム(CeO)換算のモル数に対するアルカリ金属の水酸化物のモル数の割合が1〜10となる範囲で混合し、50〜98℃に加温・熟成した後、冷却して、沈殿物を得る工程、
(II)工程(I)で得られた沈殿物を乾燥し、結晶子径5〜50nmの酸化セリウム微粒子を得る工程、
を有することを特徴とする酸化セリウム微粒子の製造方法。
【請求項2】
前記工程(I)が、前記得られた沈殿物を洗浄する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ金属の水酸化物が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムから選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の酸化セリウム微粒子の製造方法。

【図2】
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【図4】
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【図6】
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【図8】
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【図1】
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【図3】
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【図5】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−132107(P2011−132107A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−295561(P2009−295561)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(000190024)日揮触媒化成株式会社 (458)
【Fターム(参考)】