説明

酸化チタンのマーク付け方法

【課題】酸化チタン膜に容易かつ確実にマークを付けることができるマーク付け方法を提供する。
【解決手段】本酸化チタン膜のマーク付け方法は、酸化チタン膜を形成する酸化チタンに酸素欠陥を生じさせて、酸化チタン膜にマークを付することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光触媒脱臭装置の光触媒等として用いるのに適する酸化チタンにマークを付するマーク付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、光触媒フィルタと光源を組み合わせた光触媒脱臭装置が実用化され、光触媒フィルタには、基材となるセラミックフォームに、光触媒として作用する酸化チタンを担持して用いている。
【0003】
しかし、三次元網目の不規則な構造を有するセラミックフォームは、凹凸が激しく、印字することは困難であり、また、酸化チタンを担持したセラミックフォームにおいて、基材のセラミックフォームが例えば、アルミナのように白色である場合、酸化チタンが担持されていても、担持されていないものと目視では、区別はできず、両者は混同しやすかった(特許文献1)。
【0004】
そこで、酸化チタン担持品と非担持品を区別するために、セラミックフォームの側面などに、ラベルを貼る方法や油性ペンなどでマークを付ける方法などが用いられている。
【0005】
しかしながら、このような方法では、光触媒の酸化力により、劣化する可能性がある。また、セラミックフォームのメンテナンスの時に、洗浄または焼成するため、マークがわからなくなってしまい、セラミックフォームの個別識別管理(トレーサビリティー)は品質管理上、困難であった。
【0006】
そのため、酸化チタンに容易かつ確実にマークを設けることができるマーク付け方法が要望されている。
【0007】
なお、レーザ光を用いて部材内部にマーク付けする提案がある(特許文献2)。
【特許文献1】特開2006−26507号公報
【特許文献2】特開平11−156564号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上述した事情を考慮してなされたもので、酸化チタン膜に容易かつ確実にマークを付けることができるマーク付け方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するため、本発明に係る酸化チタン膜のマーク付け方法は、酸化チタン膜を形成する酸化チタンに酸素欠陥を生じさせて、酸化チタン膜にマークを付することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る酸化チタン膜のマーク付け方法によれば、酸化チタン膜に容易かつ確実にマークを付することができる酸化チタン膜のマーク付け方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の一実施形態に係る酸化チタン膜のマーク付け方法について添付図面を参照して説明する。
【0012】
図1は本発明の一実施形態に係る酸化チタン膜のマーク付け方法の概念図である。
【0013】
本発明に係る酸化チタン膜のマーク付け方法は、酸化チタン膜を形成する酸化チタンに酸素欠陥を生じさせて、酸化チタン膜にマークを付する方法であり、酸化チタン膜を形成する酸化チタンに適宜の方法により、酸素欠陥を生じさせる。
【0014】
例えば、図1に示すように、白色の酸化チタン膜1が担持されたセラミックフォームと白色のアルミナフォーム2を用意する。
【0015】
この酸化チタン膜担持セラミックフォームの製造は、例えば、アルミナ原料粉末を溶媒に分散させてスラリーを調製し、このスラリーをウレタンフォームに浸透させて、骨格表面にスラリー層を形成させた後、焼成してウレタンを焼き抜き、セラミックフォームを得るか、スラリーに架橋重合性樹脂を混合撹拌し、泡状として架橋させた後、焼成し、セラミックフォームを得、さらに、このアルミナからなるセラミックフォームを、例えば、アナターゼ型酸化チタンと、炭素、水素、窒素、硫黄から選ばれた少なくとも2種類がドープされているアナターゼ型酸化チタンとの混合物からなる酸化チタン微粒子が含まれるスラリーに浸漬等して、セラミックフォーム表面に酸化チタン微粒子を配置し、熱処理する。
【0016】
このようにして用意された酸化チタン膜1の側面にレーザ光を照射し、酸化チタン膜1の側面に酸素欠陥Mを生じさせる。
【0017】
この酸素欠陥は五酸化三チタン(Ti)、三酸化二チタン(Ti)、あるいは、酸化チタン(TiO)となり、この結果生ずるTiO2-Xは、黒に近い色になる。
【0018】
従って、酸化チタンが担持されたフォームはマークを付することができるが、担持されていないフォームは、酸化チタンが無いため、マークを付することができない。これにより、容易かつ確実に酸化チタン膜にマークを付することができ、このマークを目視で識別して酸化チタン膜担持品と非担持品を容易に区別できる。
【0019】
上記酸素欠陥を生じさせる方法は、化学的またはプラズマ装置の利用あるいはレーザ光照射などいずれの方法でもよく、特に、レーザ光の照射によれば、酸化チタン膜の多小の凹凸面に対しても有効であり、三次元網目の不規則な構造に対しても有効である。マークは単なるマークのほか判別可能な文字、数字あるいはバーコードなどの識別子であってもよく、レーザ光によれば、これら文字、数字あるいはバーコードなども容易に付することができる。
【0020】
本実施形態によれば、酸化チタン膜に黒に近い色に変色させたマークを付すことにより、白色のアルミナフォームに白色の酸化チタンが担持された担持品と未担持品の目視による識別が可能となり、さらに、酸素欠陥は洗浄や焼成では、ほとんど変化しないため、半永久的にマークが付された状態が保たれるため、酸化チタン担持品に個別の番号を付することにより、酸化チタン担持品の個別識別管理を確立できる。また、レーザでマークすれば、セラミックフォーム表面に形成されたような酸化チタン膜に対しても文字など明瞭なマークを形成することができ、膜の有無のみならず、製品履歴の管理などにも利用できる。
【実施例】
【0021】
図1に示すような本発明に係る酸化チタン膜のマーク付け方法を用いて、アルミナフォームに担持された酸化チタン膜にCOレーザ出力30Wを照射し、マークの有無を調べる(実施例)。また、図2に示すように、酸化チタンを担持しない未担持品のアルミナフォームに同様のレーザ光を照射して、マークの有無を調べる(比較例)。
【0022】
結果を図3および図4に示す。図3からもわかるように、実施例の酸化チタン担持品では、黒いマークが付されている。これに対して、図4からもわかるように、比較例の未担持品にはマークが付されていない。これらマークの有無は、レーザ光の照射により結晶欠陥を生じる二酸化チタン膜の有無による。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係る酸化チタン膜のマーク付け方法の概念図。
【図2】レーザ光を用いたマーク付け方法の比較例の概念図。
【図3】本発明の一実施形態に係る酸化チタン膜のマーク付け方法の試験結果図。
【図4】レーザ光を用いたマーク付け方法の比較例の試験結果図。
【符号の説明】
【0024】
1 酸化チタン膜
2 セラミックフォーム
M 酸素欠陥

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化チタン膜を形成する酸化チタンに酸素欠陥を生じさせて、酸化チタン膜にマークを付することを特徴とする酸化チタン膜のマーク付け方法。
【請求項2】
酸化チタン膜にレーザ光を照射して、酸化チタン膜を形成する酸化チタンに酸素欠陥を生じさせ、マークを付することを特徴とする酸化チタン膜のマーク付け方法。
【請求項3】
前記レーザ光は酸化チタンを担持したフォームの表面に照射されることを特徴とする請求項1または2に記載の酸化チタン膜のマーク付け方法。
【請求項4】
前記酸化チタン膜はセラミックフォームに担持されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の酸化チタン膜のマーク付け方法。
【請求項5】
前記セラミックフォームはアルミナであることを特徴とする請求項4に記載の酸化チタン膜のマーク付け方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−24572(P2008−24572A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−202090(P2006−202090)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(507182807)コバレントマテリアル株式会社 (506)
【Fターム(参考)】