説明

酸化金属材料からの金属の回収

【課題】酸化金属材料からターゲット金属を回収するためのプロセスを提供する。
【解決手段】酸化金属材料からターゲット金属を回収するためのプロセスは、浸出段階において、溶液中にターゲット金属を浸出させるために酸性ハロゲン化物水溶液を用いて酸化金属材料を浸出させ、前記浸出溶液が、金属ハロゲン化物を含む溶液に硫酸を添加することにより生成されるステップと、前記溶液を、前記浸出段階から、前記金属ハロゲン化物が溶液中に維持されるのに前記ターゲット金属が前記溶液から回収されるターゲット金属回収段階に送るステップと、前記溶液の中の前記金属ハロゲン化物とともに前記溶液を前記ターゲット金属回収段階から前記浸出段階に戻すステップとを含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
酸化金属材料からの金属の回収のためのプロセスが開示される。用語「酸化金属材料(oxidised metalliferous material)は、ラテライト材料、電気アーク炉(EAF)ダスト及び残留物、電解亜鉛プラント残留物、酸化亜鉛及び亜鉛フェライト、針鉄鉱、三酸化砒素などを含む。ラテライト材料は、ニッケル、コバルト及び随意的に他の金属ラテライトなど、典型的にはラテライト鉱石である。
【背景技術】
【0002】
ラテライトなどの酸化金属材料は、難溶性(refractory)の特性を有し得る。このため、精錬プロセスは、前記材料からニッケル及びコバルトなどの金属を回収するために使用されていた。しかしながら、精錬プロセスの厳しい環境の影響により、いくつかの酸化金属材料のための湿式冶金回収プロセスの開発をもたらした。
【0003】
ラテライト鉱石からニッケル及び/又はコバルトなどの金属の回収のための周知の湿式冶金プロセスは、主として加圧酸浸出、典型的には高圧で硫酸を用いる加圧酸浸出を伴っていた。硫酸は、その豊富さ、コスト及び周知の化学的性質のために用いられる。米国特許第6261527号は、大気圧に関係してラテライト鉱石からニッケル及び/又はコバルトの回収のための湿式冶金プロセスを開示しているが、それはまだ、硫酸浸出を用いている。
【0004】
近年、硫酸浸出とは対称的に塩化物酸浸出に基づいたプロセスが提案されている。塩化物浸出媒質(chloride leaching medium)は、強力な浸出物(lixiviant)である一方、それは、腐食性であり、耐塩化物性の装置を必要とする。塩化物媒質はまた、高い酸消費を有し、鉄及びマグネシウム、両金属は一般にラテライトに存在するが、該金属の浸出の制御が困難であるので避けられている。
【0005】
チェスバーリソーシーズ社(company Chesbar Resources)(現在ジャガーニッケル社(Jaguar Nickel Inc.)として知られている)が、2003年5月18−20日に、西オーストラリア州、パースでのALTA 2002会議(ニッケル/コバルト−9セッション)において論文を発表した。“PALを超えた:チェスバーオプション、AAL(Beyond PAL: The Chesbar Option, AAL)”と題する論文は、ニッケルラテライト鉱石の大気での塩化物酸浸出のためのプロセスを概説した。そのプロセスは現在、国際公報第2004/101833号に開示されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
チェスバープロセスは、熱加水分解段階の使用を必要としており、プロセス液から浸出への再循環のガスとしてHClを再生し、またニッケル/コバルト沈殿段階で使用する酸化マグネシウムを再生する。しかしながら、HClガスは、取り扱いが難しく非常に腐食性である。加えて、熱加水分解段階は、吸熱反応であり、かなりのエネルギーの入力を必要とし、それ故に高い資本及び運転コストをともに有する。
【0007】
ハロゲン化物をベースとしたプロセスは、熱加水分解段階と必要とせず、また酸浸出段階のための腐食性ガスの回収を必要としない、ニッケル、コバルト、銅、貴金属、マグネシウムなどの金属を有する酸化金属材料からの回収のために用いられる場合に利点を有するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の態様では、酸化金属材料からターゲット金属(target metal)を回収するためのプロセスであって、浸出段階において、溶液中にターゲット金属を浸出させるために酸性ハロゲン化物水溶液を用いて酸化金属材料を浸出させ、前記浸出溶液が、金属ハロゲン化物を含む溶液に硫酸を添加することにより生成されるステップと、前記溶液を、前記浸出段階から、前記金属ハロゲン化物が溶液中に維持されるのに前記ターゲット金属が前記溶液から回収されるターゲット金属回収段階に送るステップと、前記溶液の中の前記金属ハロゲン化物とともに前記溶液を前記ターゲット金属回収段階から前記浸出段階に戻すステップと、を含むプロセスが提供される。
【0009】
従って、前記プロセスは、硫酸浸出を用いるのではなく酸性ハロゲン化物水溶液を生成させる。得られたハロゲン化物をベースとした浸出プロセスは、典型的には大気圧で運転される。(例えばオートクレーブ浸出を使用して)高い浸出圧力を用いることが可能であるが、これは、浸出される酸化金属材料や、より急速なターゲット金属抽出が必要であるかどうかに依存する。
【0010】
更に、酸性ハロゲン化物水溶液を生成させるために硫酸を添加することは発熱を伴い、それ故に従来技術の熱加水分解段階を排除することができる。プロセスのこの部分はまた、従来技術のように塩化水素ガスの再生利用を回避する。従って、硫酸の添加及び酸性ハロゲン化物水溶液の生成は、典型的には硫酸を製造するコストを十分に超え、資本及び運転コストにおいて実質的な節約を提供することができる。
【0011】
しかしながら、電解亜鉛プラント残留物の処理などの適用においては、硫酸は、電解亜鉛プラントプロセスの副産物であり、そのため、その酸は次に、前記残留物の処理のためのプロセスにおいて経済的に利用することができる。
【0012】
硫酸プラントが、現在のプロセスに加えて硫酸を製造するために用いられる場合、そのようなプラントは、その後にプロセス溶液を加熱するために使用することができる(例えば発熱反応の結果として)大量の余分な熱を生じさせ、資本及び運転コストにおいて更なる節約を提供する。
【0013】
処理される酸化金属材料に応じて、ターゲット金属は、ニッケル、コバルト、亜鉛、銅、砒素、鉄、マグネシウム、金、銀、白金などの貴金属などを含み得る。
【0014】
通常、金属ハロゲン化物溶液のために選択される金属は、ターゲット金属の浸出又は沈殿物としてその回収を妨げないものである。浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸(hydrohalous acid)が金属硫酸塩の沈殿とともに形成するように、前記酸の硫酸アニオンとともに沈殿を形成する金属が選択され得る。これに関連して、前記金属は、金属硫酸塩沈殿が硫酸カルシウムであるようにカルシウムであってもよく、硫酸カルシウムは、その後に売れる副産物を形成することができる。しかしながら、ナトリウムは、ハロゲン化物がハロゲン化ナトリウム塩から得られる溶液金属として存在することができる。また、前記材料が(例えばMg抽出を抑制するために)高レベルのマグネシウムを含む場合、塩化マグネシウムがまた使用され得る。
【0015】
通常及び便宜上、多量の低コストなNaClなどの塩化物のためにまた、金属ハロゲン化物溶液のハロゲン化物が塩化物である。従って、従来技術のように塩化水素ガスを形成して添加する、あるいは再生利用する必要がなく、塩酸は、連続的に硫酸塩とともに溶液金属沈殿物として形成されるであろう。このことは、塩化水素ガスと関連した処理の問題や危険を回避する。
しかしながら、例えば、前記金属材料が貴金属を含む場合、臭化物又はヨウ化物などの他のハロゲン化物を用いることができる。これに関連して、臭化物錯体は塩化物より強く、そのため溶液中に貴金属を安定化させることができるので、NaBrがまた、その次にその溶液に添加されてもよい。
【0016】
酸化金属材料の種類に応じて、前記浸出段階は、向流(counter-current)の形態において運転する第1及び第2浸出段階を有し、それにより、前記酸化金属材料が、前記溶液と接触させ溶液中にターゲット金属を浸出させるために前記第1浸出段階に加えられ、前記第1浸出段階からの前記溶液が、第1に浸出された固体から分離され前記ターゲット金属回収段階に送られ、前記第1に浸出された固体が、前記浸出溶液と混合されるために前記第2浸出段階に送られ、前記第2浸出段階からの前記溶液が、第2に浸出された固体から分離され前記第1浸出段階に送られ、前記第2に浸出された固体が、残留物として捨てられる。
【0017】
二段階の浸出プロセスを用いることにより、1つ若しくは複数のターゲット金属を、第1浸出段階において酸化金属材料から部分的に浸出させることができ、第1の固体をハイドロハロス酸と接触させることにより、第2浸出段階において溶液中にさらに浸出させることができる。その次に、第2浸出段階から浸出された1つ若しくは複数のターゲット金属を、第1浸出段階に前記溶液とともに戻すことができ、その後、第1浸出段階からの分離された溶液とともにターゲット金属回収段階に送ることができる。
【0018】
更に、第1浸出段階からの固体が第2浸出段階に送られる場合、それらは、実質的には、固体中に残存するターゲット金属の一部が次に、その後の回収のために溶液の中に浸出されるように、(例えば、第1浸出段階における酸性溶液に比べて)比較的高い酸性の溶液と接触させられる。
【0019】
1つの形態では、浸出溶液は、硫酸が金属ハロゲン化物を含む溶液に添加される別々のハイドロハロス酸生成段階において生成され、この浸出溶液は次に、第1に浸出された固体と混合するために第2浸出段階に供給される。この段階は、金属硫酸沈殿を形成し、浸出溶液から容易に分離することを可能にし、金属硫酸塩は、比較的高純度であり得る。例えば、金属ハロゲン化物溶液の金属は、浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸が金属硫酸塩の沈殿とともに形成し、金属硫酸塩沈殿が、ハイドロハロス酸生成段階から(例えば、硫酸カルシウムなどの売れる副産物としての)固体残留物の流れとして除去されるように、硫酸の硫酸アニオンとともに沈殿を形成するものであってもよい。
【0020】
また、第2浸出段階から第1浸出段階に送られる前記溶液の一部は、ハイドロハロス酸生成段階にそらすことができ、それにより、金属ハロゲン化物を含む溶液を容易に提供し、その後に、浸出溶液の残りが、添加される硫酸の溶液から埋め合わせられる。
【0021】
別の形態では、硫酸は、第2浸出段階に直接に添加され得る。また、金属ハロゲン化物溶液の金属は、浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸が、金属硫酸塩の沈殿とともに形成し、金属硫酸塩沈殿が次に、第2に浸出された固体とともに除去され残留物として捨てられるように、硫酸の硫酸アニオンとともに形成するものであってもよい。
【0022】
通常、ターゲット金属回収段階は、ターゲット金属の沈殿が、その溶液に沈殿剤を添加することにより形成される沈殿段階を含む。これは、前記ターゲット金属又は各ターゲット金属を除去する簡素で好都合な方法である。酸化金属材料が2つ以上のターゲット金属を含む場合、それぞれの沈殿段階は、それ故に各ターゲット金属のために設けることができる。これらの段階は、プロセスにおいて連続して配置され得る。
【0023】
また、沈殿剤のアニオンは、ターゲット金属の沈殿をもたらすことができる一方、沈殿剤はまた、金属ハロゲン化物溶液の金属を導入するために使用され得る(例えば、沈殿剤カチオンがカルシウムであってもよい)。従って、沈殿剤の添加により、溶液中に前記金属を所望の濃度に維持することができ、前記金属は、プロセスのバランスを保つために、ハイドロハロス酸が形成される場合、後で金属硫酸塩沈殿物として除去される。
【0024】
酸化金属材料は、2つ以上のターゲット金属を含んでいてもよく、それぞれの沈殿段階は、各ターゲット金属のために設けられる。
【0025】
例えば、酸化金属材料が鉄を含む場合、その鉄の一部は、浸出段階において溶液中に浸出され、浸出された鉄の少なくとも一部は次に、沈殿剤として炭酸カルシウムの添加を通じて酸化鉄として鉄沈殿段階において沈殿させることができる。かかる場合には、酸化金属材料は、浸出された鉄が赤鉄鉱まで酸化されるように浸出段階において十分な滞留時間が与えられ得る。
【0026】
さらに、鉄沈殿段階では、炭酸カルシウムの添加により、溶液のpHが増加し、鉄を酸化鉄として沈殿させる。
【0027】
ターゲット金属が銅を含む場合、貴金属は、沈殿剤として炭酸カルシウムを添加することにより銅沈殿段階において沈殿させることができる。
【0028】
ターゲット金属が貴金属を含む場合、貴金属は、沈殿剤としてNaSHを添加することにより貴金属沈殿段階において沈殿させることができる。
【0029】
ターゲット金属がニッケル及び/又はコバルトを含む場合、ニッケル及び/又はコバルトは、沈殿剤として水酸化カルシウムを添加することによりニッケル/コバルト沈殿段階において沈殿させることができる。
【0030】
ターゲット金属がマグネシウムを含む場合、マグネシウムは、沈殿剤として水酸化カルシウムを添加することによりマグネシウム沈殿段階において沈殿させることができる。
【0031】
これらの場合の両方において、水酸化カルシウムは消石灰であり得る。
【0032】
別の配置において、ターゲット金属回収段階は、電解回収段階を含み、それにより、浸出段階からの溶液が、電着により金属回収のための1つ若しくはそれ以上の電解セルに送られる。酸化金属材料が2つ以上のターゲット金属を含む場合、それぞれの電解回収段階は、各ターゲット金属のために設けることができ、例えば、プロセスにおいて連続して配置される。
【0033】
複数のターゲット金属を含む金属材料にとって、プロセスに直列又は並列に配置した沈殿及び電解回収段階の組合せがまた、用いられ得る。
【0034】
別々のハイドロハロス酸生成段階を使用しないプロセスの変形において、鉄が金属材料に存在する場合、すべての鉄が浸出段階において酸化鉄(赤鉄鉱)として沈殿するように鉄の酸化を最大にするために、Cu/Cu2+酸化対としての銅の添加の有無に関わらず、空気を第1及び第2浸出段階に加えることができる。
【0035】
第2浸出段階から浸出された固体と溶液とは、通常、分離段階において分離され、その溶液は、第1浸出段階に再循環され、その固体は、浸出残留物として捨てられる。
【0036】
1つのオプションにおいて、前記沈殿段階又は各沈殿段階の後に固体から分離された溶液は、第1浸出段階に直接に戻され得る。別の配置において、前記沈殿段階又は各沈殿段階の後に固体から分離された溶液は、分離された固体を洗浄するために第2の浸出後に先ず分離段階に送られ、その後に第1浸出段階に再循環される溶液と再結合される。この洗浄は、ターゲット金属の回復を最大にするのに役立ち得る。
【0037】
通常、酸化金属材料は、浸出段階において10時間以上の滞留時間を有し、そのため、鉄などの金属は、浸出され、(例えば赤鉄鉱まで)十分に酸化される。このことは、捨てられる残留物が、処理される場合に、環境のためにより安定した安全な形態にあることを保証する。
【0038】
硫酸が、0から1の範囲にあるpHと600mV(Ag/AgCl参照)の溶液Ehとを達成するために、第2浸出段階に添加され得る。浸出段階において前記溶液は、85から110℃の範囲にある温度を有し得る。
【0039】
金属ハロゲン化物溶液中のハロゲン化物が塩化物である場合、全塩化物濃度が6から8Mの範囲であってもよく、金属ハロゲン化物溶液中の金属がカルシウムである場合、少なくとも30g/lのCaClが、浸出段階において維持され得る。
【0040】
第2の態様においては、酸化金属材料からターゲット金属を浸出させるためのプロセスであって、硫酸から生成され溶液中にターゲット金属を浸出させるために使用される酸性ハロゲン化物水溶液を、それを通じて向流的に送り、硫酸から生成される前記酸が前記第2段階に添加され、前記酸化金属材料が、前記第1浸出段階に供給され、前記第2浸出段階からの溶液に残留する酸の再循環と接触され、前記材料を浸出させ、第1に浸出された固体を製造し、前記第1に浸出された固体が、前記残留酸の再循環溶液を製造する一方、前記固体を更に浸出させるために前記添加された酸との接触のために前記第2浸出段階に送られるのに、前記溶液は、前記第1に浸出された固体から分離され、ターゲット金属回収に送られる、第1及び第2浸出段階とを含むプロセスが提供される。
【0041】
硫酸から生成される酸は、それに添加される前に第2浸出段階から別々の段階において生成され得る、又は第2浸出段階において生成され得る。
【0042】
第2の態様のプロセスは、酸化金属材料が、特に高レベルで鉄を含む特定の用途を見出す。従って、鉄の一部が、第1浸出段階において溶液中に浸出され、浸出された鉄の一部はその後、除去され得る(例えば、酸化鉄、典型的には赤鉄鉱として沈殿される)。酸化鉄(例えば赤鉄鉱)沈殿は、例えば、第2浸出段階にその固体とともに送ることができ、その後に、第2浸出段階からの浸出残留物とともに廃棄に送る。
【0043】
第2の態様のプロセスは、その他の点において第1の態様のために規定されるものであってもよい。
【0044】
この開示はまた、第1及び第2の態様のプロセスにより製造されるあらゆる金属に及んでいる。
【0045】
概要に規定されるようなプロセスに入りうる他のあらゆる形態にもかかわらず、プロセスの特定の形態を、単に例として添付図面を参照して次に説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
図1のプロセス
図1は、ラテライト鉱石のための第1の回収プロセスを表しており、溶液の再循環とともに、精製(例えば沈殿)プロセスに連結される浸出プロセスを有している。図1の回収プロセスは、他の酸化金属材料から1つ若しくはそれ以上のターゲット金属の回収に一般化することができる。
【0047】
浸出プロセスにおいて、ラテライト鉱石10(また、予め準備されたラテライト精鉱であってもよい)が、12において破砕され、粉砕され、その後に第1浸出段階14と第2浸出段階16とを有する随意の二段階向流型浸出プロセスに供給される。第1浸出段階と第2浸出段階とはともに大気圧で運転する。向流型の二段階浸出は、単一段階の浸出に比べるとHSO消費に利点を有するがより複雑である。また、どちらの浸出段階も、(例えば、資本及び運転コストを増大させるが、HSO消費を最小にしターゲット金属抽出効率を増加させるために)オートクレーブを使用し、より高い圧力(従って、より高い温度)で運転するオプションを有する。
【0048】
単一段階の浸出は、簡素化及びコストのために使用することができるが、使用される実際の形態は、金属材料供給物の組成に依存する。供給物の変形においては、HSO消費量の利点の程度が変わり、二段階の形態が必要であっても必要でなくてもよい。
【0049】
酸性塩化カルシウム水溶液が浸出段階16に送られ、その溶液は、0−1の範囲にあるpHを有している。このpHは、ニッケル、コバルト及び貴金属などのターゲット金属を溶液中に浸出させるのに十分なレベルで硫酸を添加することにより達成される。前記溶液は、濃縮段階18を経由して浸出段階14から受け入れられる既に部分的に浸出されたラテライト残留固体を浸出させる。
【0050】
浸出段階16において、前記溶液は、温度が85から110℃の範囲にあり、Ehが(Ag/AgClに対して)〜600mVに制御され、全塩化物濃度が6から8Mの範囲にある。しかし、浸出のために必要な溶液は、金属材料の鉱物、特に、鉱石中に含まれる酸を消費するものの種類及び量に依存する。例えば、ラテライト鉱石においては、最低30g/lのCaClが、ジャロサイト(jarosite)の形成を抑制し次々に赤鉄鉱として鉄沈殿を最適化するために浸出液に維持される。前記溶液の滞留時間は、十分な鉄の酸化を達成するために、また溶液中にターゲット金属を放つために、典型的には10時間以上である。
【0051】
随意的に、空気が、赤鉄鉱まで鉄の変化を最大にするために前記溶液にスパージ(sparge)されてもよく、銅が、以下に記述されるように酸化をさらに促進させるために添加されてもよい。
【0052】
高い浸出溶液温度(例えば200℃まで及びその近く)が必要である場合、そのときオートクレーブ内の浸出を用いることができる。
【0053】
浸出された固体と溶液とのスラリーは次に、段階16から、残留固体が濾過され分離される濾過段階20に送られ、前記固体は、隙間のターゲット金属を回収するために、精製プロセス(随意的に追加の水洗が用いられる)からのCaCl再循環流れ22によって洗浄される。洗浄された固体は廃棄されるが、前記溶液と流れ22と(あらゆる水洗と)は併せられ、第1浸出段階14に再循環される。
【0054】
酸を減損した再循環(acid depleted recycle)はそのとき、より高いpH(その差は1若しくはそれ以上であってもよい)を有し、鉱石10の予備浸出のために使用される。酸を減損した再循環は、後述するように、典型的には針鉄鉱(α−FeOOH)及びアカガナイト(akagenite)(β−FeOOH)から赤鉄鉱(Fe)まで、溶液中に鉄の一部を浸出させる。また、滞留時間は、10時間又はそれ以上であり、pH及びEhは別として、段階14における溶液パラメータは、上述の段階16と同様である。部分的に浸出された固体と溶液とは次に、濃縮段階18に送られ、そこで、澄んだオーバーフロー液が精製プロセスに送られ、固体アンダーフローが第2浸出段階16に送られる。
【0055】
精製プロセスにおいて、澄んだオーバーフロー液は、第1に鉄除去段階24に送られ、そこで、(後述するように)赤鉄鉱(Fe)を形成して沈殿させるために、炭酸カルシウムを添加する。赤鉄鉱は、分離段階26において濾過して取り除かれる。
【0056】
随意的に、銅が、酸化を高めるために浸出プロセスに使用される場合、その銅は次に、炭酸カルシウムを添加することにより銅沈殿段階28においてその溶液から除去され、分離段階30において濾過して取り除かれる。銅残留物は、再生利用され得る、あるいは再循環32として再使用のために浸出プロセスに戻し再循環され得る。
【0057】
前記溶液は次に、(後述するように)貴金属を沈殿させるためにNaSHを添加する貴金属回収段階34に送られる。貴金属は、分離段階36において濾過して取り除かれ、精錬などによって回収される。
【0058】
次に、前記溶液は、ニッケル及びコバルトを沈澱させるために消石灰(Ca(OH))を添加するニッケル/コバルト回収段階38に送られる。ニッケル及びコバルトは、分離段階40において濾過して取り除かれ、その後に回収される。その鉱石中のあらゆる鉛(Pb)はまた、この段階において回収することができる。
【0059】
最後に、マグネシウムがその鉱石中に存在する場合、前記溶液は、また(後述するように)マグネシウムを沈殿させるために消石灰(Ca(OH))を添加するマグネシウム回収段階42に送ることができる。マグネシウムは、随意的に前記溶液にまだ存在するその他の金属とともに、その後に分離段階44において濾過して取り除かれ回収される。
【0060】
得られた精製溶液(CaCl再循環溶液22)はそれから、浸出プロセスに戻される。
【0061】
図2のプロセス
図2は、第2の別の回収プロセスを表しており、図1のものと類似した又は同様のプロセス段階を表すのに、同様の参照数字を使用する。図2の回収プロセスはまた、ラテライト供給物のために表されているが、他の酸化金属材料から1つ若しくはそれ以上のターゲット金属の回収に一般化することができる。
【0062】
図2の回収プロセスはまた、2段階浸出プロセスを備えており、第1浸出段階から分離された溶液はまた、ターゲット金属回収段階(例えば、沈殿及び/又は電解回収)に送られるが、ターゲット金属回収段階からの溶液再循環は、第1浸出段階に向けられる。
【0063】
2段階浸出プロセスにおいて、破砕され粉砕された(記載される金属濃度を有する)ラテライト供給物10が、第1浸出段階14に供給され、その後に第2浸出段階16に供給される。第1浸出段階と第2浸出段階とはともに大気圧で運転する。また、どちらの浸出段階も、オートクレーブを使用して、より高い圧力(及び温度)で運転するオプションを有する。
【0064】
図1のプロセスと異なるように、図2のプロセスは、酸性塩化物溶液が生成される別酸生成段階17を有している。これに関連して、HSO溶液が、浸出再循環(「流れ9」)の一部である、そらされた流れ19とともに段階17に加えられる。流れ9は、そらされた流れ19がHSO溶液と接触する場合に、酸性塩化物(HCl)溶液と(売れる副産物として、段階17において分離される)硫酸カルシウム沈殿とを生成することができるように、塩化カルシウム水溶液を含む。
【0065】
酸性塩化物(HCl)溶液は、浸出段階16に送られ、その溶液は、ニッケル、コバルト、鉄、マグネシウム、貴金属などのターゲット金属を溶液中に十分に浸出させるために0−1の範囲にあるpHを有する。その酸性溶液は、固体/液体分離段階18を経て浸出段階14から受け取られる部分的に浸出された残留固体を浸出させる(「流れ8」)。
【0066】
浸出段階16において、その溶液は、温度が85から110℃の範囲にあり、他のパラメータは、図1のプロセスのために記述されたものと同様である。
【0067】
浸出された固体と溶液とのスラリーは次に、段階16から、別の固体/液体分離段階20に送られ、そこで、残留固体は分離され捨てられ、一方、溶液の一部(「流れ5」)は、第1浸出段階14に再循環される。
【0068】
また、この酸を減損した再循環は、典型的には溶液中に供給物内のある程度の鉄を浸出させ、段階14における溶液パラメータは、図1のプロセスのために記述されたものと同様である。
【0069】
部分的に浸出された固体と溶液とは、(「流れ7」として)固体/液体分離段階18に送られ、そこで、澄んだオーバーフロー液(「流れ6」)がターゲット金属回収に送られ、固体アンダーフロー(「流れ8」)が、第2浸出段階16に送られる。
【0070】
ターゲット金属回収において、澄んだオーバーフロー液は、第1に鉄沈殿段階24に送られ、そこでは、赤鉄鉱(Fe)を形成し沈殿させるために、炭酸カルシウムを添加する。赤鉄鉱は、分離段階26において分離される(例えば、濾過される)。
【0071】
前記溶液の一部(「流れ3」)は、第1浸出段階14に再循環され、その残りは、ニッケル/コバルト除去段階38に送られる。段階38において、ニッケル及びコバルトを沈殿させるために消石灰(Ca(OH))を添加し、その後に、その後の回収のために分離段階40において分離される(例えば、濾過される)。
【0072】
前記溶液の一部(「流れ2」)はまた、第1浸出段階14に再循環され、一方、その残りの溶液は、供給物に存在するマグネシウムを分離させるために、マグネシウム除去段階42に送られる。段階42においてまた、消石灰(Ca(OH))がマグネシウムを沈殿させるために添加される。マグネシウムは、その後に、その後の回収のために分離段階44において分離される(例えば、濾過される)。段階44から分離された溶液(「流れ1」)は、(流れ4として、流れ2及び3と併せられ)第1浸出段階14に再循環される。
【0073】
実施例
限定するものではないが、上述のプロセスの実施例を次に提供する。
【0074】
実施例1
第1のプロセスは、以下においてインテック酸化金属材料プロセス(Intec Oxidised Metalliferous Materials Process)(IOMMP)と呼ぶが、ニッケルの回収についてのハロゲン化物をベースとした代替法として開発され、ラテライト堆積物からの副産物と関連している。以前は、そのような堆積物の開発は、一般に加圧酸浸出法(PAL)又は高圧酸浸出法(HPAL)を目的としていた。
【0075】
IOMMPは、PAL及びHPALにおける従来の硫酸塩媒質とは対照的に、塩化物媒質を用いる。塩化物媒質の主な利点は、浸出のためのHCl及び液精製のためのMgOを回収するために熱加水分解に依存することなく、大気圧でその浸出を運転することができることである。
【0076】
IOMMPは、浸出のためのHSOと精製のためのカルシウムをベースとしたアルカリとの投入に基づいており、熱加水分解の必要がない。IOMMPプロセスはまた、用いられるハロゲン化塩の種類に制約されなかった。この点について、NaClは、よりコスト効率の良い塩化物イオン源であり、一方、NaBrは、貴金属(Au、Ag、Ptなど)の錯化を高めるのに使用することが可能であった。
【0077】
IOMMP浸出における条件は、赤鉄鉱沈殿まで伝導性であることであった。特に、その温度は、85から110℃の範囲にあり、pHが0−1であり、滞留時間が10時間以上であり、Ehが(Ag/AgClに対して)〜600mVであり、全塩化物が6から8Mの範囲にあった。
【0078】
化学的性質
次に、図1及び2の浸出及びターゲット金属回収の2つの主要な回路を参照する。
【0079】
浸出
浸出形態及び条件は、以下による:
・供給材料の鉱物
・酸消費量と金属抽出の関係
【0080】
図1及び2の向流型二段階浸出は、単一段階の浸出に比べるとHSO消費量に利点を有することが観察された。
【0081】
浸出のための溶液は、材料の鉱物、特に含まれる酸を消費するものの種類及び量に依存した。ジャロサイトの形成を抑制し、次々に赤鉄鉱として鉄沈殿を最適化するために、最低30g/lのCaClを浸出液に維持した。
【0082】
好ましい塩化物源は、低コストのためNaClであるが、高レベルのMgが含まれる供給材料の場合、そのときにはHSO需要を最小にするために、MgClを、Mg抽出を抑制するのに使用した。実際のHSO需要は、コストと抽出される金属の価値との折衷案であった。
【0083】
入ってくる浸出液のCaClのレベルは、以下のメカニズム:
SO+CaCl→CaSO+2HCl(浸出液に酸添加) (1)
2HCl+MO→HO+MCl(金属酸化物浸出) (2)
MCl+CaO→CaCl+MO(精製) (3)
に従って、HSO需要と等量であった。
【0084】
従って、浸出される全金属が高くなるにつれて、浸出液への酸と精製におけるアルカリとの添加が増加するため、CaClのバックグラウンドがより大きくなった。
【0085】
高レベルの貴金属が供給物に存在するバックグラウンド溶液にNaBrを添加するオプションがある。臭化物は、溶液中に貴金属イオンを安定化させる能力に関して、塩化物より強力な錯体であることが観察された。
【0086】
浸出液の重要な態様は、赤鉄鉱(Fe)として鉄の排除を最大にすることであった。塩化物媒質において針鉄鉱(α−FeOOH)及びアカゲナイト(β−FeOOH)の形成が示され、時間とともに、FeOOHは、以下の反応:
2FeOOH→Fe+HO (4)
に従って、赤鉄鉱まで脱水が行われた。
【0087】
赤鉄鉱は、生成されるイオン酸化物の主要な形態であり、これは、10時間を超える高い滞留時間と、85℃を超える比較的高い温度と、塩化物媒質の乾燥効果と、連続浸出における種粒子の有効性とによって起こる。
【0088】
前記プロセスの別の重要な態様は、HSO、ひいてはCaCOの消費量を最低にすることであった。これは、上述の脱水反応(4)を通して達せられた。赤鉄鉱(Fe)は、ラテライト及び他の供給材料に見出される針鉄鉱又は他の種々の形態より、著しくより安定な形態のイオン酸化物であった。針鉄鉱を通して赤鉄鉱への鉄鉱物の変換は、以下の反応:
(鉄鉱物)+6H →2Fe3++3HO (5)
2Fe3++3HO→Fe+6H (6)
(鉄鉱物)→Fe (7)
によって実証されるように酸の純消費を示さなかった。
【0089】
酸消費量は、この経路によって非常に大幅に低減され、その結果、プロセスの経済的側面が大幅に改良された。
【0090】
FeOが、以下の反応:
4FeO+O→2Fe (8)
によりFeに酸化されるようにあらゆる低減された種が酸化されることを保証することによって、鉄沈殿を最大にするために、浸出液に空気を添加することが可能であった。
【0091】
空気の添加割合は、Ehを(Ag/AgClに対して)〜600mVに維持するように制御した。さらに、Cu/Cu2+酸化対は、酸素の取り込みにおいてFe2+/Fe3+対より効率的であったので溶液中に銅を添加する可能性が存在した。
【0092】
浸出液から生成される残留物は、間隙の溶液から有価金属イオンを置換するために、第1に精製回路からのブライン(brain)を用いて洗浄される。その後に、向流の洗浄形態が、洗浄水を最小にするために使用され、その洗浄水は、最終的には熱の入力を通じてその液から蒸発する必要がある。
【0093】
ターゲット金属回収
図1における金属回収は、通常、CaCO及びCa(OH)のカルシウムをベースとしたアルカリを使用する沈殿に基づいていた。沈殿への代替案は、電解回収又は溶媒抽出あるいはイオン交換であり、そこで、種々の金属カチオンが前記プロセスにおいて抽出され、その溶液を酸(H)で満たす。金属回収ステップの選択は、低減される酸需要と、生成される製品の、場合によるとより高い価値とに対する、プロセスステップのコストと増加する複雑さとの間のトレードオフであった。
【0094】
アルカリ沈殿経路において、鉄は、第1に、以下の反応:
2Fe3++3CaCO→Fe+3CO+3Ca2+ (9)
に従って、石灰石を添加してpH2において沈殿させた。
【0095】
その後に、(添加される又は存在する)銅は、以下の反応:
4CuCl+3CaCO+3HO→2Cu(OH)Cl+3CO+3CaCl (10)
に従って、石灰石を添加してpH3〜4において沈殿させた。
【0096】
貴金属の抽出は、NaSHの添加を介する必要があり、その後に、以下の反応:
2++Ca(OH)→MO+Ca2++HO (11)
に従って、消石灰を添加して残留ベース金属イオンを沈殿させた。
【0097】
ニッケル及びコバルト除去段階において、ニッケルおよびコバルトは、消石灰を添加することにより沈殿させた。最終的な除去段階において、マグネシウムは、以下の反応:
Mg2++Ca(OH)→MgO+Ca2++HO (12)
に従って、消石灰を添加することにより沈殿させた。
【0098】
残留濃CaCl液は、浸出液に戻した。
【0099】
実施例2
亜鉛フェライト浸出試験
金属の抽出効率を決定するために、電解亜鉛プラントからの亜鉛フェライト残留物の試料において浸出試験を行った。
【0100】
50Kgの(湿潤)亜鉛フェライト試料は、第1浸出段階のためのプロセス条件に適合させるように調合されたブラインに200g/Lの密度でスラリー化した。
【0101】
前記ブラインは、以下の主成分を有していた:

【0102】
前記溶液の金属濃度を時間とともに測定した。その結果を以下の表に示す。

【0103】
第1浸出段階
第1浸出段階模擬実験からの浸出残留物を濾過し、水で洗浄して分析した。その結果を以下の表に示す。

【0104】
上の表を見て分かるように、実質的にすべての銀及び鉛が抽出され、一方、亜鉛は30%だけ抽出された。
【0105】
第1浸出段階模擬実験からの浸出残留物を、その次に、プロセスの作業工程図(図1及び2)に従う第2浸出段階模擬実験への供給物として使用した。その残留物は、プロセスの作業工程図に従って準備された250リットルのブラインでスラリー化し、硫酸を時間とともに添加した。その結果を以下の表に示す。

【0106】
第2浸出段階
合計30kgの硫酸を44時間の期間にわたって添加し、(乾燥)亜鉛フェライト残留物の添加の割合330kg/t、490kg/t及び650kg/tに相当する3つの別々の投与を行った。その浸出残留物を少量、各酸の添加の直前に集め、亜鉛について分析した。その結果を、第2浸出段階試験についての亜鉛抽出と第1及び第2の両方の浸出段階についての累積抽出とともに、以下の表に示す。

【0107】
これらの結果から、高い亜鉛抽出は、酸の添加割合が490kg/tにおいて達成することができることが分かる。
【0108】
第2浸出段階試験からの全浸出残留物を濾過し、水で洗浄して、その後に金属の範囲について分析した。その結果を、(明瞭に比較するために第1浸出段階の結果を含め)以下の表に示す。

【0109】
これらの結果から、Ag、Cu、Pb及びZnにおける抽出効率は、97%若しくはそれ以上で非常に高く、金属の価値を回復するために亜鉛フェライト残留物を処理する前記プロセスの可能性を明らかに実証したことが分かる。
【0110】
実施例3
EAFダスト浸出試験
EAFダストの試料において一連の浸出試験を行った。これらの材料の種類は、電気アーク炉において高温で形成される他のより単純な金属酸化物の量を変えることとともに、主として難溶性亜鉛フェライトから構成されることに注目した。
【0111】
第1段階の浸出
以下の組成を有し臭化物をベースとしたブライン4リットルに240gのEAFダストを有するスラリーを準備することによって、第1段階の浸出の有効性を試験した。

【0112】
前記溶液の金属濃度を時間とともに測定した。その結果を以下の表に示す。

【0113】
第1段階の浸出模擬実験からの浸出残留物を濾過し、水で洗浄して分析した。その結果を、以下の表に示す。

【0114】
EAFダストの浸出から浸出残出物の中への鉄の沈殿は、酸消費の結果であった。実質的にすべての銀及び銅が、83%の亜鉛とともに浸出した。多少の鉛が、その溶液から沈殿するように見えた。それは、濾過中にその溶液を冷却した結果として生じてもよい。第1段階の浸出における高い金属回収のため、この残留物は、第2段階の浸出によって処理する必要がなかった。
【0115】
臭化物を含まない系において、以下を含むブラインに密度100g/LのEAFダストを有するスラリーを準備することによって、第1段階の浸出の有効性を試験した:

【0116】
第1段階の浸出模擬実験からの浸出残留物を濾過し、水で洗浄して分析した。その結果を、以下の表に示す:


【0117】
次に、その残留物を第2段階浸出試験のための供給物として使用した。
【0118】
第2段階の浸出
第2段階の浸出は、500kg/t等量のHSOを使用して行った。硫酸を、第1段階の浸出に使用したものと同様の組成のブラインと反応させ、CaSO.0.5HO及びHClを生じた。その後の溶液は、第1段階の浸出の残留物に加えた。
【0119】
第2段階の浸出模擬実験からの浸出残留物を濾過し、水で洗浄して分析した。その結果を、以下の表に示す:

【0120】
第2段階の浸出の別の研究が、165g/LであるCaClだけを含むブラインを用いて行われた。CaSOの沈殿及びHClの生成を引き起こすHSOの添加によって、酸性ブラインを調製した。密度が100g/LであるEAFダストのスラリーを調製し、供給物に対して200kg/t及び550kg/t等量のHSOを、上記スラリーに添加して2時間反応させた。その残留物を濾過し、水で洗浄して分析した。その結果を、以下の表に示す:


【0121】
2つの残留物における金属濃度間の差は、浸出の逐次的性質を強調した。銅含有相は少量の酸で浸出され、一方、銀及び鉛は、より難溶性の亜鉛相と会合しており、抽出のためにさらに多くの酸を必要とした。鉛及び亜鉛をより多く抽出するには、2時間を超える所定の反応時間が予想された。それにもかかわらず、これらの結果より、第2段階の浸出環境において純粋にCaClブラインを使用する実行可能性が実証された。
【0122】
実施例4
酸生成試験
第2段階の浸出は、HClの形態をした酸の添加を必要とした。これは、以下のようにCaClが豊富なブラインに対するHSOの反応:
SO+CaCl→2HCl+CaSO.xH
によって生成された。
【0123】
この実施例は、沈殿物の含水量と純度とに対する温度とブライン組成の効果を概説した。
【0124】
CaClだけを含むブライン
165g/LのCaClを含む溶液を、50℃及び95℃に加熱した。10gのHSOを、その溶液に添加し、1時間混合した。その残留物を濾過し、水及びエタノールで洗浄し、50℃で乾燥した。その分析を、石膏及びバッサナイト(bassanite)鉱物の理想カルシウム及び硫黄含有量とともに以下の表において比較した:


【0125】
これらの結果より、その形成温度が沈殿物に存在する結晶水の量を制御することを明らかに実証した。X線回折データにより、これらの鉱物の形成を確認した。
【0126】
CaClの他に別の金属ハロゲン化物を含むブライン
ニッケルラテライト試料の第2段階の浸出から得られるブラインを使用して、HClの生成を試験した。1Lのブラインを100℃に加熱し、80gのHSOを添加し、その溶液を1時間混合した。その試料を、50℃で乾燥する前に、濾過し、水及びエタノールで洗浄した。その化学成分分析を、初めのブライン成分とともに以下の表に示す:


【0127】
(図3に示すX線回折によって確認されるような)高純度のバッサナイト沈殿により、HClの生成は、CaClが豊富な溶液にHSOを添加することによって、その沈殿に対して金属を失うことなく生ずることを確認した。このことは、非常に重要であり、その沈殿物を売ることができる、あるいは金属不純物において不利益を被ることなく廃棄のために送ることができることを示した。さらに、その鉱物の含水量を、反応の温度によって制御することができる。
【0128】
実施例5
精錬炉及び焙焼炉の廃棄貯蔵物からの三酸化砒素が、実施例2から4に記載されるものと同様の第1段階タイプの浸出を使用して、安全に廃棄するように砒酸鉄に変換された。
【0129】
三酸化砒素を含むスラリーは、(例えば、ラテライトや磁硫鉄鉱などの鉄を浸出し得る源から)溶解した第1鉄イオンを有する(実施例4に記載されるように調製されるHCl酸で)酸性化した塩化物をベースとしたブラインにおいて調製した。そのスラリーを撹拌し、90−95℃において2時間空気を用いてスパージし、結晶性の砒酸鉄沈澱を回収した。その関係式は以下の通りであった:
As+6H→2As3++3HO (1)
2As3++O+6HO→2HAsO (2)
2HAsO+2Fe3+→2FeAsO+6H (3)
2Fe+1.5O+6H→2Fe3++3HO (4)
As+2Fe+2.5O→2FeAsO (5)
【0130】
多数のプロセスの実施形態を記述しているが、ここに記述したプロセスは、他の多数の形態で具体化できることが認識されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】ラテライト鉱石から金属を回収するための第1のプロセスを示す作業工程図である。
【図2】ラテライト鉱石から金属を回収するための第2のプロセスを示す作業工程図である。
【図3】バッサナイト沈殿についてのX線回折プロットである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化金属材料からターゲット金属を回収するためのプロセスであって、
浸出段階において、溶液中にターゲット金属を浸出させるために酸性ハロゲン化物水溶液を用いて酸化金属材料を浸出させ、前記浸出溶液が、金属ハロゲン化物を含む溶液に硫酸を添加することにより生成されるステップと、
前記溶液を、前記浸出段階から、前記金属ハロゲン化物が溶液中に維持されるのに前記ターゲット金属が前記溶液から回収されるターゲット金属回収段階に送るステップと、
前記溶液の中の前記金属ハロゲン化物とともに前記溶液を前記ターゲット金属回収段階から前記浸出段階に戻すステップと、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記金属ハロゲン化物溶液の前記金属は、前記浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸が前記金属硫酸塩の沈殿とともに形成するように、前記硫酸の前記硫酸アニオンとともに沈殿を形成するものである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記金属ハロゲン化物溶液の前記金属は、前記金属硫酸塩沈殿が硫酸カルシウムであるようにカルシウムである、請求項2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記金属ハロゲン化物溶液の前記ハロゲン化物が塩化物である、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項5】
前記酸化金属材料が1つ若しくは複数の貴金属を有する場合、そのとき前記金属ハロゲン化物溶液の前記ハロゲン化物が塩化物及び臭化物を含む、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項6】
前記浸出段階は、向流の形態において運転する第1及び第2浸出段階を有し、
前記酸化金属材料が、前記溶液と接触させ溶液中にターゲット金属を浸出させるために前記第1浸出段階に加えられ、
前記第1浸出段階からの前記溶液が、第1に浸出された固体から分離され前記ターゲット金属回収段階に送られ、
前記第1に浸出された固体が、前記浸出溶液と混合されるために前記第2浸出段階に送られ、
前記第2浸出段階からの前記溶液が、第2に浸出された固体から分離され前記第1浸出段階に送られ、前記第2に浸出された固体が、残留物として捨てられる、
前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項7】
前記浸出溶液は、前記硫酸が前記金属ハロゲン化物を含む前記溶液に添加される別々のハイドロハロス酸生成段階において生成され、この浸出溶液は次に、前記第1に浸出された固体と混合するために前記第2浸出段階に供給される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項8】
前記第2浸出段階から前記第1浸出段階に送られる溶液の一部は、前記浸出溶液の残りが、添加された前記硫酸の溶液を含んだ状態で、前記金属ハロゲン化物を含む前記溶液を供給するために前記ハイドロハロス酸生成段階にそらされる、請求項7に記載のプロセス。
【請求項9】
前記金属ハロゲン化物溶液の前記金属は、前記浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸が前記金属硫酸塩の沈殿とともに形成し、前記金属硫酸塩沈殿が前記ハイドロハロス酸生成段階から固体残留物の流れとして除去されるように、前記硫酸の前記硫酸アニオンとともに沈殿を形成するものである、請求項7又は8に記載のプロセス。
【請求項10】
前記硫酸が、前記第2浸出段階に直接に添加される、請求項6に記載のプロセス。
【請求項11】
前記金属ハロゲン化物溶液の前記金属は、前記浸出溶液の生成とともに、ハイドロハロス酸が前記金属硫酸塩の沈殿とともに形成し、前記金属硫酸塩沈殿が、前記第2に浸出された固体とともに除去され残留物として捨てられるように、前記硫酸の前記硫酸アニオンとともに沈殿を形成するものである、請求項10に記載のプロセス。
【請求項12】
前記ターゲット金属回収段階は、前記ターゲット金属の沈殿が前記溶液に沈殿剤を添加することにより形成される沈殿段階を含む、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項13】
前記沈殿剤は、前記金属ハロゲン化物溶液の前記金属である金属を含むことができ、前記沈殿剤の添加によって、溶液中に前記金属を所望の濃度に維持することができる、請求項12に記載のプロセス。
【請求項14】
前記酸化金属材料が、2つ以上のターゲット金属を含み、それぞれの沈殿段階が、各ターゲット金属のために設けられる、請求項12又は13に記載のプロセス。
【請求項15】
前記酸化金属材料が、鉄を含み、それにより、前記鉄の一部が前記浸出段階において溶液中に浸出され、前記浸出された鉄の少なくとも一部が次に、前記沈殿剤としての炭酸カルシウムの添加を通じて、酸化鉄として鉄沈殿段階において沈殿される、請求項12〜14の何れか一に記載のプロセス。
【請求項16】
前記酸化金属材料は、浸出された鉄が赤鉄鉱まで酸化され得るように、前記浸出段階において十分な滞留時間を有する、請求項15に記載のプロセス。
【請求項17】
前記ターゲット金属が銅を含む場合、前記貴金属は、前記沈殿剤として炭酸カルシウムを添加することにより銅沈殿段階において沈殿される、請求項12〜16の何れか一に記載のプロセス。
【請求項18】
前記ターゲット金属が貴金属を含む場合、前記貴金属は、前記沈殿剤としてNaSHを添加することにより貴金属沈殿段階において沈殿される、請求項12〜17の何れか一に記載のプロセス。
【請求項19】
前記ターゲット金属がニッケル及び/又はコバルトを含む場合、前記ニッケル及び/又はコバルトは、前記沈殿剤として水酸化カルシウムを添加することによりニッケル/コバルト沈殿段階において沈殿される、請求項12〜18の何れか一に記載のプロセス。
【請求項20】
前記ターゲット金属がマグネシウムを含む場合、前記マグネシウムは、前記沈殿剤として水酸化カルシウムを添加することによりマグネシウム沈殿段階において沈殿される、請求項12〜19の何れか一に記載のプロセス。
【請求項21】
前記水酸化カルシウムが消石灰である、請求項19又は20に記載のプロセス。
【請求項22】
前記ターゲット金属回収段階が、電解回収段階を含み、それにより、前記浸出段階からの前記溶液が、電着により金属回収のための1つ若しくはそれ以上の電解セルに送られる、請求項1〜11の何れか一に記載のプロセス。
【請求項23】
前記酸化金属材料が、2つ以上のターゲット金属を含み、それぞれの電解回収段階が、各ターゲット金属のために設けられる、請求項22に記載のプロセス。
【請求項24】
前記硫酸が、0から1の範囲にあるpHと−600mVの溶液Ehとを達成するために前記浸出段階に添加される、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項25】
前記浸出段階において前記溶液の温度が、85−95℃の範囲である、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項26】
前記ハロゲン化物が塩化物である場合、全塩化物濃度が6から8Mの範囲である、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項27】
前記ハロゲン化物が塩化物であり前記溶液金属がカルシウムである場合、少なくとも30g/lのCaClが、前記浸出段階において維持される、前記請求項の何れか一に記載のプロセス。
【請求項28】
酸化金属材料からターゲット金属を浸出させるためのプロセスであって、
硫酸から生成され溶液中にターゲット金属を浸出させるために使用される酸性ハロゲン化物水溶液を、それを通じて向流的に送り、
硫酸から生成される前記酸が前記第2段階に添加され、前記酸化金属材料が、前記第1浸出段階に供給され、前記第2浸出段階からの溶液に残留する酸の再循環と接触され、前記材料を浸出させ、第1に浸出された固体を製造し、
前記第1に浸出された固体が、前記残留酸の再循環溶液を製造する一方、前記固体をさらに浸出させるために前記添加された酸との接触のために前記第2浸出段階に送られるのに、前記溶液は、前記第1に浸出された固体から分離され、ターゲット金属回収に送られ得る、第1及び第2浸出段階を含む、プロセス。
【請求項29】
硫酸から生成される前記酸は、添加される前に前記第2浸出段階から別々の段階において生成される、又は前記第2浸出段階において生成される、請求項28に記載のプロセス。
【請求項30】
前記酸化金属材料は、鉄の一部が前記第1浸出段階において溶液中に浸出され、酸化鉄として沈殿されるように鉄を含み、前記酸化鉄沈殿は、前記第2浸出段階に前記固体とともに送られる、請求項28又は29に記載のプロセス。
【請求項31】
前記請求項1〜27の何れか一項に記載の浸出プロセスである、請求項28〜30の何れか一に記載のプロセス。
【請求項32】
前記請求項の何れか一項に記載のプロセスによって回収されるターゲット金属。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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【公表番号】特表2007−530778(P2007−530778A)
【公表日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−504214(P2007−504214)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【国際出願番号】PCT/AU2005/000426
【国際公開番号】WO2005/093107
【国際公開日】平成17年10月6日(2005.10.6)
【出願人】(505146032)インテック・リミテッド (3)
【氏名又は名称原語表記】INTEC LTD
【Fターム(参考)】