説明

酸反応性歯科用フィラー、組成物、および方法

酸反応性歯科用フィラー、並びに、このようなフィラーの製造方法および使用方法を開示する。酸反応性歯科用フィラーは、3価金属、酸素、フッ素、アルカリ土類金属、および任意にケイ素を含む。酸反応性歯科用フィラーは、好ましくはナノ構造化されている、例えば、ナノ粒子の形態である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
酸反応性フィラーは、歯科用組成物に広く使用されてきた。酸反応性フィラーとしては、例えば、金属酸化物、金属塩、およびガラスが挙げられる。酸反応性ガラスの一例には、既知のフッ化物放出材料である、フルオロアルミノシリケート(FAS)ガラスがある。FASガラス粒子は、典型的には溶融法で調製されるが、溶融法では使用可能な粒径が有効に制限され、典型的には粒子の平均サイズは少なくとも0.5マイクロメートルになる。
【0002】
酸反応性フィラーを硬化性樹脂中に分散させて歯科用組成物(例えば、歯科ペースト)を形成する用途では、組成物中の酸反応性フィラーの反応性は、一般に酸反応性フィラーの使用可能な表面積によって制限される。従って、所望の反応性レベルを有する組成物が得られるように、高充填量の(例えば、50重量%を超える)酸反応性フィラーを使用することが多い。しかし、高充填量の酸反応性フィラーは、組成物中に更なるフィラー(例えば、非酸反応性フィラー)を混入させる融通性を制限することがある。
【0003】
そのため、改善された特性(例えば、表面積がより大きいことを含む)を有する酸反応性歯科用フィラーが依然として必要とされている。
【0004】
【特許文献1】米国特許第4,209,434号明細書
【特許文献2】米国特許第4,872,936号明細書
【特許文献3】EP323 120 B1号明細書
【特許文献4】米国特許第5,130,347号明細書
【特許文献5】米国特許出願第10/729,497号明細書
【特許文献6】米国特許第4,259,075号明細書
【特許文献7】米国特許第4,499,251号明細書
【特許文献8】米国特許第4,537,940号明細書
【特許文献9】米国特許第4,539,382号明細書
【特許文献10】米国特許第5,530,038号明細書
【特許文献11】米国特許第6,458,868号明細書
【特許文献12】欧州特許出願公開EP712,622号明細書
【特許文献13】EP1,051,961号明細書
【特許文献14】米国特許第4,652,274号明細書
【特許文献15】米国特許第4,642,126号明細書
【特許文献16】国際公開第00/38619号パンフレット
【特許文献17】国際公開第01/92271号パンフレット
【特許文献18】国際公開第01/07444号パンフレット
【特許文献19】国際公開第00/42092号パンフレット
【特許文献20】米国特許第5,076,844号明細書
【特許文献21】米国特許第4,356,296号明細書
【特許文献22】EP−0 373 384号明細書
【特許文献23】EP−0 201 031号明細書
【特許文献24】EP−0 201 778号明細書
【特許文献25】米国特許第5,545,676号明細書
【特許文献26】米国特許出願公開第2003/0166737号明細書
【特許文献27】米国特許第4,298,738号明細書
【特許文献28】米国特許第4,324,744号明細書
【特許文献29】米国特許第4,385,109号明細書
【特許文献30】米国特許第4,710,523号明細書
【特許文献31】米国特許第4,737,593号明細書
【特許文献32】米国特許第6,251,963号明細書
【特許文献33】欧州特許出願第0 173 567 A2号明細書
【特許文献34】米国特許第4,772,530号明細書
【特許文献35】米国特許第4,954,414号明細書
【特許文献36】米国特許第4,874,450号明細書
【特許文献37】米国特許第5,055,372号明細書
【特許文献38】米国特許第5,057,393号明細書
【特許文献39】米国特許出願公開2003/0166740号明細書
【特許文献40】米国特許出願公開2003/0195273号明細書
【特許文献41】米国特許第5,501,727号明細書
【特許文献42】米国特許第5,154,762号明細書
【特許文献43】米国特許第4,695,251号明細書
【特許文献44】米国特許第4,503,169号明細書
【特許文献45】米国特許第6,387,981号明細書
【特許文献46】米国特許第6,572,693号明細書
【特許文献47】国際公開第01/30305号パンフレット
【特許文献48】国際公開第01/30306号パンフレット
【特許文献49】国際公開第01/30307号パンフレット
【特許文献50】国際公開第03/063804号パンフレット
【特許文献51】米国特許第4,871,786号明細書
【特許文献52】米国特許第5,925,715号明細書
【特許文献53】米国特許第5,037,579号明細書
【特許文献54】米国特許第5,980,697号明細書
【特許文献55】米国特許第5,694,701号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、本発明は、歯科用フィラーである組成物、並びに、このような歯科用フィラーの製造方法および使用方法を提供する。一実施形態では、歯科用フィラーは、酸反応性、非溶融であり、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含むオキシフルオライド材料を含む。好ましくは、3価金属としては、アルミニウムおよび/またはランタンが挙げられ、より好ましい実施形態では、3価金属はアルミニウムである。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料は、任意にケイ素および/または重金属を含む。好ましくはオキシフルオライドの少なくとも一部は、ナノ構造化されている。
【0006】
別の実施形態では、歯科用フィラーは、酸反応性であり、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含むオキシフルオライド材料を含むが、但し、オキシフルオライド材料は、ケイ素、3価金属、アルカリ土類金属および更なる任意のカチオンの総モル数を基準にして、ケイ素を25モル%以下、好ましくは20モル%以下含むことを条件とする。
【0007】
別の態様では、本発明は、歯科用組成物、並びに、歯科用組成物の製造方法および使用方法を提供し、ここで、歯科用組成物は、本発明の歯科用フィラーおよび硬化性樹脂(例えば、重合性エチレン性不飽和化合物および/または酸)を含む。歯科用組成物は、一剤型(single−part)歯科用組成物であってもまたは多剤型(multi−part)歯科用組成物であってもよい。このような歯科用組成物は、本発明の歯科用フィラーの他に、更なる酸反応性または非酸反応性フィラー(例えば、ナノフィラーを含む)を含むことができる。本発明の歯科用組成物を硬化させて、例えば、歯冠、充填材、ミルブランク、歯科矯正装置、および補綴物を含む歯科用物品を作製することができる。
【0008】
好ましくは、樹脂中に本発明の酸反応性フィラーを混入させることにより、例えば、強度、滑沢性、滑沢性保持、フッ化物放出、耐摩耗性、審美性、およびX線不透過性を含む1つ以上の特性の改善を示す歯科用組成物(例えば、歯科用修復材)を調製することができる。
【0009】
定義
本明細書で使用する時、「非溶融」材料は、材料が融解状態から形成されなかったことを意味する。非溶融材料は、例えば、化学合成、沈殿、およびこれらの組み合わせを含む方法で形成され得る。
【0010】
本明細書で使用する時、「歯科用フィラー」は、口腔環境で使用するのに好適な粒子材料である。歯科用フィラーの平均粒径は、一般に、100マイクロメートル以下である。
【0011】
本明細書で使用する時、「ペースト」の用語は、液体中に分散された固体の柔軟で粘稠な塊を指す。
【0012】
本明細書で使用する時、「非溶融」の用語は、溶融法で調製されなかった材料を指す。
【0013】
本明細書で使用する時、「酸反応性」歯科用フィラーは、酸性構成成分の存在下で化学反応するフィラーである。
【0014】
本明細書で使用する時、「アルカリ土類金属」は、Be、Mg、Ca、Sr、およびBaからなる群から選択される元素である。
【0015】
本明細書で使用する時、オキシフルオライドは、酸素原子とフッ素原子が同じ原子(例えば、アルミニウムオキシフルオライド中のアルミニウム)に結合している材料である。一般に、フッ素原子の少なくとも50%が、オキシフルオライド材料中の酸素原子を有する原子に結合している。
【0016】
本明細書で使用する時、「ナノ構造化」材料は、少なくとも1つの寸法が平均200ナノメートル以下の形態の材料(例えば、ナノサイズの粒子)を指す。従って、ナノ構造化材料は、例えば、下記に定義されるナノ粒子;ナノ粒子の凝集体;粒子上にコーティングされた材料であって、コーティングの平均厚さが200ナノメートル以下のもの;粒子凝集体にコーティングされた材料であって、コーティングの平均厚さが200ナノメートル以下のもの;平均気孔サイズが200ナノメートル以下の多孔質構造体中に含浸された材料;および、これらの組み合わせを含む材料を指す。多孔質構造体としては、例えば、多孔質粒子、多孔質の粒子凝集体、多孔質コーティング、および、これらの組み合わせが挙げられる。
【0017】
本明細書で使用する時、「ナノ粒子」は「ナノサイズの粒子」と同義に使用され、平均サイズが200ナノメートル以下の粒子を指す。本明細書で球状粒子について使用する時、「サイズ」は、粒子の直径を指す。本明細書で非球状粒子について使用する時、「サイズ」は、粒子の最長寸法を指す。
【0018】
本明細書で使用する時、「集合(agglomerated)」は、通常、電荷または極性によって一緒に保持される一次粒子の弱い結合を表す。集合粒子は、典型的には、例えば、集合粒子が液体中に分散する時に受ける剪断力によって、より小さい実体に解砕され得る。
【0019】
一般に、「凝集(aggregated)」および「凝集体(aggregates)」は、例えば、残留化学処理、共有化学結合、またはイオン化学結合によって一緒に結合していることが多い一次粒子の強い結合を表す。凝集体をより小さい実体に更に解砕するのは達成が非常に困難である。典型的には、凝集粒子は、例えば、凝集粒子が液体中に分散する時に受ける剪断力などによって、より小さい実体に解砕されない。
【0020】
本明細書で使用する時、「凝集シリカ」は、例えば、残留化学処理、共有化学結合、またはイオン化学結合によって一緒に結合されることが多い一次シリカ粒子の結合を表す。凝集シリカをより小さい実体に完全に解砕するのは、達成が困難な場合があるが、限定的なまたは不完全な解砕は、例えば、凝集シリカが液体中に分散する時に受ける剪断力を含む条件下で観察される場合がある。本明細書で使用する時、「シリカクラスタ」または「シリカ−ジルコニアクラスタ」は、相当量の凝集一次シリカまたはジルコニア粒子が緩く結合している凝集シリカまたはシリカ−ジルコニアを指す。「緩い結合」は、シリカクラスタまたはシリカ−ジルコニアクラスタ中に存在する粒子間の結合の性質を指す。典型的には、粒子は、粒子を集塊させる比較的弱い分子間力によって結合される。好ましくは、歯科材料用の硬化性樹脂中に分散される時、分散プロセス中に幾つかのクラスタがより小さい構造体に破壊されても、クラスタの多くは、そのままの状態を留める。従って、シリカクラスタおよびシリカジルコニアクラスタは、典型的には、「緩く結合した凝集シリカ」または「緩く結合した凝集シリカ−ジルコニア」と称される。本出願中に開示されるクラスタは、好ましくは、ほぼ球状であり、好ましくは完全には緻密化されていない。本明細書で使用する時、「完全に緻密化」の用語は、B.E.T.窒素法(試料と接触する気体からのN2分子の吸着に基づく)などの標準的な分析法で検出可能な開放気孔率が実質的にない、理論密度に近い粒子を説明する。このような測定によって、サンプルの単位重量当たりの表面積(例えば、m2/g)に関するデータが得られ、これを、同じサイズの完全な微小球の塊の単位重量当たりの表面積と比較して、開放気孔率を検出することができる。本明細書で使用する時、「完全には緻密化していない」の用語は、理論密度より小さい、従って、気孔率を有する粒子を説明する。開放気孔率を有する多孔質粒子(例えば、一次粒子のクラスタ)では、測定される表面積は、同じサイズの固体粒子について計算される表面積より大きい。このような測定は、ニューヨーク州ショセット(Syossett,N.Y.)のクワンタクローム社(Quantachrome Corporation)によって製造されるクワンタソーブ(Quantasorb)装置で行われてもよい。密度測定は、空気、ヘリウムまたは水比重瓶を使用して行われてもよい。
【0021】
本明細書で使用する時、「粒径」は、粒子の最長寸法(例えば、直径)を指す。
【0022】
本出願に開示されるシリカクラスタは、乾燥、および任意に熱処理および/または仮焼を含むプロセスで製造されてもよい。熱処理前の表面積と比較した熱処理後の表面積の比は、好ましくは50%より大きく、より好ましくは80%より大きい。好ましくは、加熱後の表面積の変化は、10%以下、より好ましくは5%以下である。
【0023】
本明細書で使用する時、「貯蔵安定性のある」組成物は、室温で少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年の貯蔵寿命を有する組成物を指す。接着剤組成物の貯蔵寿命は、典型的には、時間の経った組成物が歯科構造表面に結合されるとき、時間の経った組成物が許容できる結合強度を提供するかを決定することにより測定される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本発明は、酸反応性オキシフルオライド材料を含む歯科用フィラー、並びに歯科用フィラーの製造方法および使用方法を提供する。本明細書で使用する時、オキシフルオライドは、酸素原子とフッ素原子が同じ原子(例えば、アルミニウムオキシフルオライド中のアルミニウム)に結合している材料である。幾つかの実施形態ではフッ素原子の少なくとも50%、場合によっては少なくとも70%、他の実施形態では少なくとも80%が、オキシフルオライド材料中の酸素原子を有する原子、またはオキシフルオライド材料中の酸素原子に配位されている原子に、結合しているかまたは配位されている。一剤型歯科用組成物および多剤型歯科用組成物は、本発明の歯科用フィラーの他に、硬化性樹脂および/または硬化性ポリ酸を含むことができる。このような歯科用組成物は、例えば、歯科用接着剤、人工歯冠、前歯用充填材(anterior fillings)、後方歯用充填材(posterior fillings)、鋳造材料、キャビティライナー、セメント、コーティング組成物、ミルブランク、歯科矯正装置、歯科矯正用接着剤、修復材、補綴物、およびシーラントとして有用である。
【0025】
酸反応性オキシフルオライド材料を含む歯科用フィラー
本発明は、歯科用フィラーである酸反応性オキシフルオライド材料を含む組成物を提供する。オキシフルオライド材料は、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含む。好ましくは、3価金属は、アルミニウム、ランタンまたはこれらの組み合わせである。より好ましくは、3価金属はアルミニウムである。好ましくは、アルカリ土類金属は、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、またはこれらの組み合わせである。本発明の幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料は、更に、ケイ素および/または重金属(例えば、ジルコニウム、ランタン、ニオブ、イットリウム、またはタンタル)を含んでもよく、より具体的には、その酸化物、フッ化物および/またはオキシフルオライドを含んでもよい。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料は、オキシフルオライド材料中のケイ素、3価金属、アルカリ土類金属および更なる任意のカチオンの総モル数を基準にして、ケイ素を25モル%以下、好ましくは20モル%以下含む。他の実施形態では、オキシフルオライド材料は、非溶融である。
【0026】
オキシフルオライド材料中の3価金属対アルカリ土類金属のモル比は、化学的および構造的特性(例えば、酸反応性、および、酸反応性フィラーとポリ酸との硬化反応における効率を含む)に影響を与え得る。例えば、アルカリ土類金属含量を増加させると、その結果、酸反応性を向上させることができる。しかし、幾つかの実施形態では、比較的均質なオキシフルオライド構造の形成を促進するのに十分な3価金属含量が好ましい。3価金属の含量を増加させると、ポリ酸を硬化させる際のオキシフルオライド材料の効率を向上させることができ、それによって、当業者は、ある一定の歯科用組成物中における従来のFASフィラーの使用をなくすか、または低減することができる。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料中の3価金属対アルカリ土類金属のモル比は、少なくとも50:50、他の実施形態では少なくとも70:30である。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料中の3価金属対アルカリ土類金属のモル比は、95:5以下、他の実施形態では90:10以下である。
【0027】
オキシフルオライド材料中の酸素対フッ素の比は、フィラーの物理的特性および反応性に影響を与え得る。典型的には、オキシフルオライド材料のフッ化物含量を増加させると、その結果、沈殿したフィラーは表面積が減少し、一次粒径が増大し、酸反応性が減少する。しかし、ある一定の歯科用組成物からのフッ化物放出を提供するのに十分なフッ素含量が望ましく、典型的には、最適な反応性を得るには幾らかのフッ素が必要である。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料中の酸素対フッ素のモル比は、少なくとも50:50、場合によっては少なくとも60:40、他の実施形態では少なくとも65:35である。幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料中の酸素対フッ素のモル比は、95:5以下、場合によっては90:10以下、他の実施形態では、85:15以下である。
【0028】
本発明の幾つかの実施形態では、オキシフルオライド材料の少なくとも一部がナノ構造化されている。このようなナノ構造化材料としては、例えば、ナノ粒子、粒子上のコーティング、粒子凝集体上のコーティング、多孔質構造体中の含浸物、およびこれらの組み合わせの形態のオキシフルオライド材料が挙げられる。オキシフルオライド材料の好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%がナノ構造化されている。
【0029】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ構造化オキシフルオライド材料の少なくとも一部は、凝集または非凝集ナノ粒子の形態とすることができる。このような実施形態では、オキシフルオライド材料の好ましくは少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、最も好ましくは少なくとも98重量%がナノ粒子の形態である。好ましくは、ナノ粒子の平均サイズは、100ナノメートル以下、より好ましくは50nm以下、更により好ましくは20nm以下である。
【0030】
オキシフルオライド材料がナノ粒子の形態である実施形態では、オキシフルオライド材料の表面積は、好ましくは1グラム当たり少なくとも10平方メートル(m2/g)、より好ましくは少なくとも25m2/g、最も好ましくは少なくとも50m2/gである。
【0031】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ構造化オキシフルオライド材料は、粒子(例えば、ナノ粒子)上のコーティングの形態とすることができる。好適な粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化イットリウム、酸化ランタン、並びに、例えば、ジルコン酸塩またはチタン酸塩ペロブスカイトを含む複合金属酸化物)、ガラス粒子(例えば、歯科用ガラス)、非酸化物粒子(例えば、フッ化イットリウムなどのコロイド状金属フッ化物)、および、これらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
従来のサイズのフィラー粒子、ナノ粒子および凝集体上にコーティングを有利に形成することができる。好適な従来の粒子の平均サイズは、典型的には少なくとも0.5マイクロメートルであり、少なくとも1マイクロメートルであることが多い。好適な従来の粒子の平均サイズは、典型的には50マイクロメートル以下であり、10マイクロメートル以下であることが多い。
【0033】
平均コーティング厚さは、典型的には少なくとも20ナノメートルであり、少なくとも50ナノメートルであることが多い。平均コーティング厚さは、典型的には1000ナノメートル以下であり、500ナノメートル以下であることが多い。
【0034】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ構造化オキシフルオライド材料は、粒子の凝集体(例えば、ナノ粒子の凝集体)上のコーティングの形態とすることができる。好適な粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化イットリウム、酸化ランタン、並びに、例えば、ジルコン酸塩またはチタン酸塩ペロブスカイトを含む複合金属酸化物)、ガラス粒子(例えば、歯科用ガラス)、非酸化物粒子(例えば、フッ化イットリウムなどのコロイド状金属フッ化物)、および、これらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
好適な凝集体は、サイズが従来のフィラーに類似していてもよい(例えば、幾つかの実施形態では少なくとも1マイクロメートル、他の実施形態では10マイクロメートル以下)。従来のフィラーより小さい粒子(例えば、ナノフィラー)の有用な凝集体のサイズは、幾つかの実施形態では、典型的には少なくとも50ナノメートル、他の実施形態では1マイクロメートル以下である。平均コーティング厚さは、幾つかの実施形態では、典型的には少なくとも20ナノメートルであり、他の実施形態では凝集体サイズの半分以下であることが多い。
【0036】
本発明の幾つかの実施形態では、ナノ構造化オキシフルオライド材料は、多孔質構造体中の含浸物の形態(例えば、多孔質粒子、多孔質の粒子凝集体、多孔質コーティング、またはこれらの組み合わせ)とすることができる。多孔質構造体が多孔質粒子を含む実施形態では、多孔質粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(例えば、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化イットリウム、酸化ランタン、および、例えば、ジルコン酸塩またはチタン酸塩ペロブスカイトを含む複合金属酸化物)、ガラス粒子(例えば、歯科用ガラス)、非酸化物粒子(例えば、フッ化イットリウムなどのコロイド状金属フッ化物)、並びに、これらの組み合わせが挙げられる。多孔質構造体が、多孔質の粒子凝集体を含む実施形態では、粒子は好ましくはナノ粒子である。好ましくは、平均気孔サイズは、少なくとも20ナノメートル、より好ましくは少なくとも50ナノメートルである。好ましくは、平均気孔サイズは、10マイクロメートル以下、より好ましくは1000ナノメートル以下である。
【0037】
粒子とコーティングを組み合わせて本発明の歯科用フィラーを提供することができる。例えば、従来のフィラー粒子上に多孔質コーティングを形成し、本発明のオキシフルオライド材料を含浸させることができる。このような構造体としては、例えば、コロイダルシリカコーティングを有する歯科用ガラスが挙げられる。
【0038】
本発明の歯科用フィラーは、酸反応性オキシフルオライド材料を含む。好ましくは、酸反応性オキシフルオライド材料は、酸性材料(例えば、有機酸、無機酸、モノマー酸、オリゴマー酸、およびポリマー酸)、好ましくは本明細書に記載のポリ酸と反応することができる。典型的には、本発明の歯科用フィラーは、ポリ(メタ)アクリル酸またはホスホン酸などの歯科用組成物中に使用される様々な酸に曝されると、表面が著しく腐食されるかまたは溶解する。腐食されたまたは溶解したフィラーは周囲液体またはマトリックス中にフッ化物イオンを放出する。アイオノマーを硬化させるのに有用な多価カチオンも放出される。典型的には、酸反応性フッ化物材料が歯科用組成物中に通常使用される酸と接触するとき、体温で、または体温付近で著しい表面腐食または溶解が起こる。
【0039】
歯科用フィラーの調製
本発明は、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含む酸反応性オキシフルオライド材料を含む歯科用フィラーの調製方法を提供する。
【0040】
一実施形態では、本方法は、第1の液体組成物と第2の液体組成物を組み合わせること、組み合わせられた液体からオキシフルオライド材料を分離(例えば、濾過)することを含む。第1の液体組成物は、3価金属の供給源とアルカリ土類金属の供給源を含む。第2の液体組成物は、フッ素の供給源と任意にケイ素の供給源を含む。
【0041】
好ましくは、3価金属は、アルミニウム、ランタンまたはこれらの組み合わせである。より好ましくは、3価金属はアルミニウムである。好ましくは、液体組成物の少なくとも1つは、酸素の供給源として水酸化物の供給源を更に含む。
【0042】
任意に、第1の液体組成物または第2の液体組成物の少なくとも1つは、水を含んでもよい。典型的には、液体組成物の少なくとも1つは、pHが7より大きい、場合によってはpHが9より大きい水性組成物である。
【0043】
第1の液体組成物は、3価金属の供給源を含む。3価金属の供給源としては、例えば、3価金属の塩およびアルコキシドが挙げられる。例えば、好適な塩としては、硝酸ランタンおよびその塩基性塩またはオキシ塩、カルボン酸ランタンおよびその塩基性塩またはオキシ塩、ハロゲン化ランタンおよびその塩基性塩またはオキシ塩、硝酸アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、カルボン酸アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、ハロゲン化アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。好適なアルコキシドとしては、例えば、ランタンイソプロポキシド、ランタンsec−ブトキシド、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
3価金属塩の濃度は、完全な溶解を容易に促進するほど十分に低くなければならない。微細な沈殿物を促進するために、より希薄な溶液が有用な場合がある。多くの実施形態で、アニオン溶液の容積は、全反応容積のかなりの部分である。典型的には、第1の液体組成物中の3価金属供給源の濃度は、少なくとも0.1モル濃度、他の実施形態では2.5モル濃度以下である。
【0045】
第1の液体組成物は、アルカリ土類金属の供給源も含む。アルカリ土類金属の好適な供給源としては、例えば、硝酸ストロンチウム、カルボン酸ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム、硝酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、ハロゲン化カルシウムおよびこれらの組み合わせが挙げられる。典型的には、第1の液体組成物中のアルカリ土類金属供給源の濃度は少なくとも0.1モル濃度、他の実施形態では2.5モル濃度以下である。
【0046】
反応生成物中の3価カチオン対2価カチオンのモル比は、典型的には、沈殿前の組み合わせられたカチオン溶液中におけるものとほぼ同じである。多くの実施形態では、溶液中における好ましい比は、フィラー中における好ましい比と同じである。
【0047】
第2の液体組成物は、フッ素の供給源を含む。好適なフッ素の供給源としては、例えば、フッ化アンモニウム、二フッ化水素アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸およびその塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。希薄溶液は、微細な粒子の沈殿を促進する傾向があり、一方、濃縮溶液では、沈殿したフィラーの分離および回収が容易になり得る。典型的には、フッ素濃度は少なくとも0.1モル濃度であり、幾つかの実施形態では1リットル当たり5モル以下である。
【0048】
任意に、第1の液体組成物または第2の液体組成物の少なくとも1つは、酸素の供給源として水酸化物の供給源を含むことができる。好適な水酸化物供給源としては、例えば、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、および、これらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
第2の液体組成物(即ち、フッ素含有液体)の量は、フィラーの所望のフッ化物含量が得られる量である。第2の液体中にフッ化物と水酸化物の両方が存在するとき、典型的には、化学量論的に2〜3倍多い量(例えば、3価アルミニウム1モルにつき、フッ化物と水酸化物を組み合わせたもの9モルは、化学量論的量の3倍である)を使用して、第1の液体組成物中のカチオンとの完全な反応およびその沈殿を確実にする。フィラー中のフッ素含量は、F:OH比によって決定され、単に第2の液体中のFの総量ではない。フィラー中のF:Oの比は、必ずしも溶液中のF:OHの比に等しくなく、特定のカチオン溶液の反応化学に依存する。当業者は、本明細書に記載の実施例の指針により、所望のフッ素含量を得るのに必要な、溶液中における比を容易に決定することができる。
【0050】
任意に、第2の液体組成物は、ケイ素の供給源を含む。ケイ素の好適な供給源としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸およびその塩、シリコンアルコキシド、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0051】
存在する場合、第2の液体組成物中のケイ素供給源の濃度は、前述のフッ化物および水酸化物の濃度に概ね類似する。ケイ素の有用な濃度は、典型的には、第1の液体組成物中の2価原子および3価原子の数に対するケイ素原子の所望の数を提供するのに十分である。
【0052】
ケイ素が存在する幾つかの実施形態では、好ましくはケイ素供給源は、オキシフルオライド材料中のケイ素、3価金属、アルカリ土類金属、および更なる任意のカチオンの総モル数を基準にして、ケイ素を25モル%以下、より好ましくはケイ素を20モル%以下含む、オキシフルオライド材料を提供するのに十分な量で存在する。
【0053】
好ましくは、第1および第2の液体組成物を、効率的な攪拌(例えば、高速攪拌)を含む条件下で組み合わせる。例えば、第2の液体組成物を収容する容器に高速攪拌しながら第1の液体組成物を添加することができる。典型的には、沈殿は迅速であるが、完全に反応することを確実にするため、(例えば、幾つかの実施形態では10分間以上、他の実施形態では60分間以上)攪拌し続けることができる。
【0054】
典型的には、室温で、または室温付近で反応を実施することができるが、ある一定の実施形態では、必要に応じてそれより高いまたは低い温度を使用することができる。
【0055】
組み合わせられた液体から、例えば、濾過、遠心分離、沈降、デカンテーション、および、これらの組み合わせを含む当該技術分野で既知の方法によりオキシフルオライド材料を分離してもよい。好ましくは、オキシフルオライド材料を濾過する。分離時に、任意に、オキシフルオライドを、例えば、水、アルコール、および、これらの組み合わせを含む好適な液体を使用して洗浄することができる。
【0056】
本方法は、任意に、分離されたオキシフルオライド材料を350℃以下、より好ましくは250℃以下、最も好ましくは150℃以下の温度で乾燥させることを含む。好適な乾燥方法は当該技術分野で既知であり、例えば、熱風乾燥(例えば、オーブン乾燥)が挙げられる。
【0057】
好ましくは、本方法は、例えば、沈殿物、粒子上のコーティング、粒子凝集体上のコーティング、多孔質構造体中に含浸された材料、またはこれらの組み合わせの形態のオキシフルオライド材料を提供する。分離後または乾燥後、任意に、オキシフルオライド材料を液体媒体(例えば、水を含む媒体)中に再分散させることができる。乾燥または分離された材料をミル粉砕することによって、歯科用組成物中に分散させるのに特に有用なオキシフルオライド材料を形成することができる。ミル粉砕は、水または他の液体中で行うことができるか、または、歯科用樹脂または他の成分の存在下で行うことができる。
【0058】
ボールミル粉砕、アトライターまたは流体エネルギーミル、およびジェットミル等を含む、セラミック粒子または無機粒子のミル粉砕に関して当該技術分野で既知の方法が、本発明のオキシフルオライド材料のミル粉砕に好適である。水を含む歯科用組成物では、組成物中に分散させるのに好ましいオキシフルオライド材料の形態は、湿潤ケーキまたは可塑性固体を形成するのに十分な水を含む、分離されたオキシフルオライド材料である。これらの形態のオキシフルオライド材料は、典型的には、分離されたオキシフルオライド材料が決して完全に乾燥されないとき、分散させるのに、より好都合である。例えば、沈殿および洗浄後、濾過、遠心分離、またはフィルタープレスによって分離された湿潤オキシフルオライド材料は、水を約40〜70重量%含む可能性があり、湿潤オキシフルオライド材料をこの形態で歯科用組成物に添加することができる。
【0059】
或いは、洗浄した沈殿物を乾燥させる場合、乾燥沈殿物を水中でミル粉砕させた後、濾過、フィルタープレス、または遠心分離により分離し、分散性湿潤オキシフルオライド材料を形成することによって、同様に分散可能な湿潤ケーキまたは可塑性の塊を形成することができる。
【0060】
水中で洗浄またはミル粉砕した後、オキシフルオライド材料を粒子上にコーティングする、粒子凝集体上にコーティングする、多孔質構造体中に含浸させる、またはこれらの組み合わせを行うことができる。
【0061】
別の実施形態では、本方法は、多孔質構造体(例えば、多孔質粒子、多孔質の粒子凝集体、およびこれらの組み合わせ)を提供すること;第1の液体組成物を多孔質構造体中に含浸させること;および、第2の液体組成物を多孔質構造体中に含浸させ、酸反応性オキシフルオライド材料を含浸させた多孔質構造体を提供することを含む。第1の液体組成物は、3価金属の供給源とアルカリ土類金属の供給源を含む。3価金属は、好ましくは、アルミニウム、ランタン、またはこれらの組み合わせである。より好ましくは、3価金属はアルミニウムである。第2の液体組成物は、フッ素の供給源、および、任意に、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、または、これらの組み合わせを含む。第2の液体組成物は、任意にケイ素の供給源を更に含んでもよい。好ましくは、第1または第2の液体組成物の少なくとも1つは、水を更に含む。第1の液体組成物の含浸は、第2の液体組成物の含浸の前、その間、またはその後に実施することができる。
【0062】
任意に、本発明は、酸反応性オキシフルオライド材料を含浸させた多孔質構造体を350℃以下、より好ましくは250℃以下、最も好ましくは150℃以下の温度で乾燥させることを更に含む。
【0063】

本発明で使用する酸は、無機酸または有機酸とすることができ、有機酸の場合、モノマー、オリゴマー、またはポリマー(例えば、後述のポリ酸)とすることができる。酸は、重合性であってもまたは非重合性であってもよい。必要に応じて、酸自体の代わりに、酸無水物、酸ハロゲン化物(ルイス酸などの無機酸ハロゲン化物(例えば、塩化第二鉄)および有機酸ハロゲン化物を含む)、またはエステルなどの酸の前駆体を使用し、その場(in situ)で所望の酸を生成することができる。好適な酸としては、鉱酸、カルボン酸、スルホン酸、アルキルスルホン酸、アリールスルホン酸、およびホスホン酸が挙げられる。酸は液体または固体材料とすることができる。
【0064】
好適な無機酸としては、HBr、HCl、HNO3、硫酸、リン酸、およびホスホン酸が挙げられる。好適な有機酸としては、酢酸、2−クロロプロピオン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、ブロモ酢酸、10−カンファーキノンスルホン酸、10−カンファースルホン酸、クロロ酢酸、シトラコン酸、クエン酸、ジブロモ酢酸、ジクロロ酢酸、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸のジHEMAエステル、2,4−ジニトロフェノール、蟻酸、フマル酸、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、マレイン酸、2−ナフタレンスルホン酸、シュウ酸、p−ニトロフェノール、フェノール、ジブチルホスファイト、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジ−(2−エチルヘキシル)ホスファイト、ヒドロキシエチルメタクリレートモノホスフェート、グリセリルジメタクリレートホスフェート、グリセリル−2−ホスフェート、グリセリルリン酸、メタクリロキシエチルホスフェート、ペンタエリトリトールトリアクリレートモノホスフェート、ペンタエリトリトールトリメタクリレートモノホスフェート、ピバル酸、プロピオン酸、トルエンスルホン酸、トリブロモ酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、および、トリヒドロキシ安息香酸が挙げられる。必要に応じて、このような酸の混合物を使用することができる。
【0065】
ポリ酸
本発明の歯科用組成物は少なくとも1種類のポリ酸を含んでもよく、ポリ酸は、非硬化型若しくは非重合性のポリ酸、または、硬化型若しくは重合性のポリ酸(例えば、樹脂強化ポリ酸)であってもよい。ポリ酸は完全に水溶性である必要はないが、他の水性構成成分と組み合わせられるとき、あまり沈降しないように少なくとも十分に水混和性でなければならない。好適なポリ酸は、(特許文献1)(ウィルソン(Wilson)ら)、2段62行目〜3段6行目に列挙されている。ポリ酸は、良好な貯蔵性、操作性、および混合性を提供するのに十分な分子量を有していなければならない。好ましい重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィーを使用し、ポリスチレン標準に対して値を求めると、5,000〜100,000である。
【0066】
一実施形態では、ポリ酸は、硬化型または重合性樹脂である。即ち、それは、少なくとも1つのエチレン性不飽和基を含有する。好適なエチレン性不飽和ポリ酸は、(特許文献2)(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))、例えば、3段および4段、並びに、(特許文献3)(ミトラ(Mitra))、例えば、3頁55行目〜5頁8行目に記載されている。好ましくは、酸性基とエチレン性不飽和基の数は、歯科用組成物中における適切な特性バランスを提供するように調整される。酸性基の10%〜30%がエチレン性不飽和基で置換されたポリ酸が好ましい。
【0067】
他の実施形態では、ポリ酸は、例えば、酸反応性フィラーおよび水の存在下で硬化可能であるが、エチレン性不飽和基を含有しない。即ち、それは、不飽和酸のオリゴマーまたはポリマーである。好ましくは、不飽和酸は、炭素、硫黄、リン、またはホウ素のオキシ酸(即ち、酸素含有酸)である。より好ましくは、それは炭素のオキシ酸である。このようなポリ酸としては、例えば、不飽和モノ−、ジ−またはトリカルボン酸のホモポリマーおよびコポリマーなどのポリアルケン酸が挙げられる。好ましいポリアルケン酸は、不飽和脂肪族カルボン酸、例えば、アクリル酸、2−クロロアクリル酸、3−クロロアクリル酸、2−ブロモアクリル酸、3−ブロモアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、グルタコン酸、アコニット酸、シトラコン酸、メサコン酸、フマル酸、およびチグリン酸の単独重合および共重合によって調製され得る。不飽和脂肪族カルボン酸と共重合できる好適なモノマーとしては、例えば、アクリルアミド、アクリロニトリル、塩化ビニル、塩化アリル、酢酸ビニル、および2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどの不飽和脂肪族化合物が挙げられる。必要に応じて、三元以上の共重合体を使用してもよい。アクリル酸のホモポリマーおよびコポリマーが特に好ましい。ポリアルケン酸は、重合していないモノマーを実質的に含まないものでなければならない。
【0068】
酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物
本発明の歯科用組成物は、酸官能性を有する少なくとも1種類のエチレン性不飽和化合物を含んでもよい。
【0069】
本明細書で使用する時、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物は、エチレン性不飽和および酸および/または酸前駆体官能性を有するモノマー、オリゴマー、およびポリマーを含むことを意味する。酸前駆体官能性としては、例えば、酸無水物、酸ハロゲン化物、およびピロリン酸塩が挙げられる。好ましくは、不飽和酸は、炭素、硫黄、リン、またはホウ素のオキシ酸(即ち、酸素含有酸)である。
【0070】
酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリセロールホスフェートモノメタクリレート、グリセロールホスフェートジメタクリレート、ヒドロキシエチルメタクリレートホスフェート、クエン酸ジまたはトリメタクリレート、ポリ(メタ)アクリル化オリゴマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリマレイン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリ(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリカルボキシル−ポリホスホン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリクロロリン酸、ポリ(メタ)アクリル化ポリスルホネート、およびポリ(メタ)アクリル化ポリホウ酸等のα,β−不飽和酸化合物が挙げられ、硬化性樹脂系中の構成成分として使用されてもよい。本発明のある一定の好ましい組成物は、少なくとも1つのP−OH部分を有する酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を含む。
【0071】
これらの化合物のある一定のものは、例えば、イソシアナトアルキル(メタ)アクリレートとカルボン酸との反応生成物として得られる。酸官能性構成成分とエチレン性不飽和構成成分の両方を有する更なるこの種の化合物は、(特許文献2)(エンゲルブレヒト(Engelbrecht))および(特許文献4)(ミトラ(Mitra))に記載されている。エチレン性不飽和部分と酸部分の両方を含有するこのような様々な化合物を使用することができる。必要に応じて、このような化合物の混合物を使用することができる。
【0072】
酸官能性を有する更なるエチレン性不飽和化合物としては、例えば、重合性ビスホスホン酸、例えば、2003年12月5日に提出された(特許文献5)に開示されているもの;AA:ITA:IEM(例えば、(特許文献4)(ミトラ(Mitra))の実施例11に記載されているようにAA:ITAコポリマーを、コポリマーの酸基の一部をペンダントのメタクリレート基に転換するのに十分な2−イソシアナトエチルメタクリレートと反応させることによって製造される、ペンダントのメタクリレートを有するアクリル酸:イタコン酸のコポリマー);並びに、(特許文献6)(山内(Yamauchi)ら)、(特許文献7)(小村(Omura)ら)、(特許文献8)(小村(Omura)ら)、(特許文献9)(小村(Omura)ら)、(特許文献10)(山本(Yamamoto)ら)、(特許文献11)(岡田(Okada)ら)、および(特許文献12)(株式会社トクヤマ(Tokuyama Corp.))および(特許文献13)(株式会社クラレ(Kuraray Co.,Ltd.))に列挙されているものが挙げられる。
【0073】
好ましくは、本発明の組成物は、無充填組成物の総重量を基準にして、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも3重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%含む。好ましくは、本発明の組成物は、無充填組成物の総重量を基準にして、酸官能性を有するエチレン性不飽和化合物を80重量%以下、より好ましくは70重量%以下、最も好ましくは60重量%以下含む。
【0074】
硬化性樹脂
本発明の歯科用組成物は、硬化性樹脂を含むことができる。一般に、これらの樹脂は、好ましくは、硬化されてポリマーネットワークを形成できる熱硬化性材料であり、例えば、アクリレート官能性材料、メタクリレート官能性材料、エポキシ官能性材料、ビニル官能性材料、およびこれらの混合物が挙げられる。好ましくは、硬化性樹脂は、1種類以上のマトリックス形成オリゴマー、モノマー、ポリマーまたはこれらのブレンドから製造される。
【0075】
本出願に開示される歯科用組成物が歯科用コンポジットである好ましい実施形態では、使用するのに好適な重合性材料としては、それらを口腔環境での使用に好適にするのに十分な強度、加水分解安定性、および非毒性を有する硬化性有機材料が挙げられる。このような材料の例としては、アクリレート、メタクリレート、ウレタン、カルバモイルイソシアヌレート、エポキシ、並びに、これらの混合物および誘導体が挙げられる。
【0076】
好ましい硬化性材料の1部類としては、フリーラジカル活性官能基を有する材料が挙げられる。このような材料の例としては、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するモノマー、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するオリゴマー、1つ以上のエチレン性不飽和基を有するポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
フリーラジカル活性材料。フリーラジカル活性官能基を有する硬化性樹脂の部類で、本発明に使用するのに好適な材料は、少なくとも1つのエチレン性不飽和結合を含有し、付加重合を経ることができる。このようなフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、アリルアクリレート、グリセロールトリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、1,2,4−ブタントリオールトリメタクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、ペンタエリトリトールテトラ(メタ)アクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ビス[1−(2−アクリロキシ)]−p−エトキシフェニルジメチルメタン、ビス[1−(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシ)]−p−プロポキシフェニルジメチルメタン、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、およびトリスヒドロキシエチル−イソシアヌレートトリメタクリレートなどのモノ−、ジ−、またはポリ−(メタ)アクリレート(即ち、アクリレートおよびメタクリレート);(メタ)アクリルアミド、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、およびジアセトン(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリルアミド(即ち、アクリルアミドおよびメタクリルアミド);ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエチレングリコールのビス(メタ)アクリレート(好ましくは分子量200〜500のもの);(特許文献14)(ベッチャー(Boettcher)ら)中のものなどのアクリル化モノマーの共重合性混合物;(特許文献15)(ザドー(Zador)ら)に記載のものなどのアクリル化オリゴマー;並びに、スチレン、ジアリルフタレート、ジビニルスクシネート、ジビニルアジペート、およびジビニルフタレートなどのビニル化合物が挙げられる。他の好適なフリーラジカル重合性化合物としては、例えば、(特許文献16)(グッゲンバーガー(Guggenberger)ら)、(特許文献17)(ワインマン(Weinmann)ら)、(特許文献18)(グッゲンバーガー(Guggenberger)ら)、(特許文献19)(グッゲンバーガー(Guggenberger)ら)に開示されているシロキサン官能性(メタ)アクリレート、および、例えば、(特許文献20)(フォック(Fock)ら)、(特許文献21)(グリフィス(Griffith)ら)、(特許文献22)(ヴァーゲンクネヒト(Wagenknecht)ら)、(特許文献23)(ライナーズ(Reiners)ら)、および、(特許文献24)(ライナーズ(Reiners)ら)に開示されているフルオロポリマー官能性(メタ)アクリレートが挙げられる。必要に応じて、2種類以上のフリーラジカル重合性化合物の混合物を使用することができる。
【0078】
重合性構成成分は、また、単一の分子中にヒドロキシル基とフリーラジカル活性官能基を含有してもよい。このような材料の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよび2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート;グリセロールモノ−またはジ−(メタ)アクリレート;トリメチロールプロパンモノ−またはジ−(メタ)アクリレート;ペンタエリトリトールモノ−、ジ−、およびトリ−(メタ)アクリレート;ソルビトールモノ−、ジ−、トリ−、テトラ−、またはペンタ−(メタ)アクリレート;および、2,2−ビス[4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロキシプロポキシ)フェニル]プロパン(bisGMA)が挙げられる。好適なエチレン性不飽和化合物は、また、ミズーリ州セントルイス、シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich,St.Louis,MO)およびマサチューセッツ州モールデン、ローム・テック社(Rohm Tech.Inc.,Malden,MA)などの様々な商業的供給元から入手可能である。必要に応じて、エチレン性不飽和化合物の混合物を使用することができる。
【0079】
フリーラジカル開始系。フリーラジカル重合(例えば、硬化)では、開始系を、放射線、熱、またはレドックス/自己硬化(auto−cure)化学反応により重合を開始する系から選択することができる。フリーラジカル活性官能基の重合を開始できる開始剤の部類としては、任意に光増感剤または促進剤と組み合わせられるフリーラジカル発生光開始剤が挙げられる。このような開始剤は、典型的には、200〜800nmの波長を有する光エネルギーに露光されるとフリーラジカルを発生させ、付加重合させることができる。
【0080】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な光開始剤(即ち、1種類以上の化合物を含む光開始剤系)としては、二元系および三元系が挙げられる。典型的な三元光開始剤系としては、(特許文献25)(パラツォット(Palazzotto)ら)に記載のヨードニウム塩、光増感剤、および電子供与体化合物が挙げられる。好ましいヨードニウム塩は、ジアリールヨードニウム塩(例えば、ジフェニルヨードニウムクロライド、ジフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、およびジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート)である。好ましい光増感剤は、400nm〜520nm(好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内で幾らかの光を吸収するモノケトンおよびジケトンである。より好ましい化合物は、400nm〜520nm(更により好ましくは、450nm〜500nm)の範囲内で幾らかの光吸収を有するα−ジケトンである。好ましい化合物は、カンファーキノン、ベンジル、フリル、3,3,6,6−テトラメチルシクロヘキサンジオン、フェナントラキノン、および他の環状α−ジケトンである。最も好ましいのはカンファーキノンである。好ましい電子供与体化合物としては、置換アミン(例えば、エチルジメチルアミノベンゾエート)が挙げられる。カチオン重合性樹脂を光重合させるのに有用な、他の好適な三元光開始剤系は、例えば、(特許文献26)(デデ(Dede)ら)に記載されている。
【0081】
フリーラジカル光重合性組成物を重合させるのに好適な他の光開始剤としては、典型的には380nm〜1200nmの機能波長範囲を有するホスフィンオキサイドの部類が挙げられる。380nm〜450nmの機能波長範囲を有する好ましいホスフィンオキサイドフリーラジカル開始剤は、(特許文献27)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献28)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献29)(レヒトケン(Lechtken)ら)、(特許文献30)(レヒトケン(Lechtken)ら)、および(特許文献31)(エルリッヒ(Ellrich)ら)、(特許文献32)(コーラー(Kohler)ら)、および(特許文献33)(イン(Ying))に記載されているものなどのアシルおよびビスアシルホスフィンオキサイドである。
【0082】
380nm〜450nmより高い波長範囲で照射されるとき、フリーラジカル開始できる市販のホスフィンオキサイド光開始剤としては、例えば、イルガキュア(IRGACURE)819の商品名でニューヨーク州タリータウン、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals,Tarrytown,NY)から入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド;CGI 403の商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能なビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−(2,4,4−トリメチルペンチル)ホスフィンオキサイド;イルガキュア(IRGACURE)1700の商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能なビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量で25:75の混合物;ダロキュア(DAROCUR)4265の商品名でチバ・スペシャルティ・ケミカルズ(Ciba Specialty Chemicals)から入手可能なビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイドと2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンとの重量で1:1の混合物;および、ルシリン(LUCIRIN)LR8893Xの商品名でノースカロライナ州シャーロット、BASF社(BASF Corp.,Charlotte,NC)から入手可能なエチル−2,4,6−トリメチルベンジルフェニルホスフィネートが挙げられる。
【0083】
典型的には、ホスフィンオキサイド開始剤は、光重合性組成物中に触媒として有効な量(例えば、組成物の総重量を基準にして0.1重量%〜5重量%)で存在する。
【0084】
第三級アミン還元剤をアシルホスフィンオキサイドと組み合わせて使用してもよい。本発明に有用な例示的な第三級アミンとしては、エチル−4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンゾエートおよびN,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートが挙げられる。アミン還元剤は、存在する場合、光重合性組成物中に組成物の総重量を基準にして0.1重量%〜5.0重量%の量で存在する。他の開始剤の有用な量は当業者に周知である。
【0085】
本発明の歯科材料に、代わりに使用することができる別のフリーラジカル開始剤系としては、ホウ酸アニオンと相補的カチオン色素を含む、イオン色素対イオン錯体開始剤の部類が挙げられる。ホウ酸塩光開始剤は、例えば、(特許文献34)(ゴットショーク(Gottschalk)ら)、(特許文献35)(アデア(Adair)ら)、(特許文献36)(ゴットショーク(Gottschalk))、(特許文献37)(シャンクリン(Shanklin)ら)、および(特許文献38)(シャンクリン(Shanklin)ら)に記載されている。
【0086】
本発明の硬化性樹脂は、重合性構成成分(例えば、エチレン性不飽和重合性構成成分)と、酸化剤および還元剤を含むレドックス剤とを含むレドックス硬化系を含むことができる。本発明で有用な、好適な重合性構成成分とレドックス剤は、(特許文献39)(ミトラ(Mitra)ら)、および(特許文献40)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されている。
【0087】
還元剤と酸化剤は、互いに反応するかまたはさもなければ協働して、樹脂系(例えば、エチレン性不飽和構成成分)の重合を開始できるフリーラジカルを生成しなければならない。この種の硬化は暗反応である、即ち、光の存在に依存せず、光がなくても進行できる。還元剤と酸化剤は、好ましくは、典型的な歯科条件でそれらの貯蔵と使用が可能になるように十分な貯蔵安定性があり、望ましくない着色が起こらない。それらは、重合性組成物の他の構成成分中に容易に溶解できる(且つ、重合性組成物の他の構成成分からの分離を妨げる)ように、樹脂系と十分な混和性がなければならない(且つ、好ましくは水溶性でなければならない)。
【0088】
有用な還元剤としては、例えば、(特許文献41)(ワン(Wang)ら)に記載のアスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、およびアスコルビン酸金属錯体化合物;アミン、とりわけ、4−t−ブチルジメチルアニリンなどの第三級アミン;p−トルエンスルフィン酸塩およびベンゼンスルフィン酸塩などの芳香族スルフィン酸塩;1−エチル−2−チオ尿素、テトラエチルチオ尿素、テトラメチルチオ尿素、1,1−ジブチルチオ尿素、および1,3−ジブチルチオ尿素などのチオ尿素;並びに、これらの混合物が挙げられる。他の副次的な還元剤としては、塩化コバルト(II)、塩化第一鉄、硫酸第一鉄、ヒドラジン、(酸化剤の選択に応じて)ヒドロキシルアミン、亜ジチオン酸アニオンまたは亜硫酸アニオンの塩、およびこれらの組み合わせを挙げてもよい。好ましくは、還元剤はアミンである。
【0089】
また、好適な酸化剤は当業者に周知であり、例えば、過硫酸およびその塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、セシウム塩、およびアルキルアンモニウム塩など)が挙げられる。更なる酸化剤としては、例えば、過酸化物(ベンゾイルパーオキサイドなど)、ハイドロパーオキサイド(クミルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、およびアミルハイドロパーオキサイドなど)、並びに、遷移金属の塩(塩化コバルト(III)および塩化第二鉄、硫酸セリウム(IV)など)、過ホウ酸およびその塩、過マンガン酸およびその塩、過リン酸およびその塩、並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0090】
2種類以上の酸化剤または2種類以上の還元剤を使用することが望ましい場合がある。また、レドックス硬化の速度を加速するため、少量の遷移金属化合物を添加してもよい。幾つかの実施形態では、例えば、(特許文献40)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように、硬化性組成物の安定性を向上させるため、副次的なイオン塩を含むことが好ましい場合がある。
【0091】
還元剤と酸化剤は、適切なフリーラジカル反応速度を可能にするのに十分な量で存在する。フィラーを除く重合性組成物の成分を全て組み合わせ、硬化した塊が得られるかどうかを観察することによってこれを評価することができる。
【0092】
好ましくは、還元剤は、硬化性組成物の構成成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.1重量%の量で存在する。好ましくは、還元剤は、重合性組成物の構成成分の総重量(水を含む)を基準にして、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0093】
好ましくは、酸化剤は、重合性組成物の構成成分の総重量(水を含む)を基準にして、少なくとも0.01重量%、より好ましくは少なくとも0.10重量%の量で存在する。好ましくは、酸化剤は、硬化性組成物の構成成分の総重量(水を含む)を基準にして、10重量%以下、より好ましくは5重量%以下の量で存在する。
【0094】
例えば、(特許文献42)(ミトラ(Mitra)ら)に記載されているように還元剤または酸化剤をマイクロカプセル化することができる。これによって、一般に、重合性組成物の貯蔵安定性が向上し、必要に応じて、還元剤と酸化剤を一緒に包装することができる。例えば、封入剤を適切に選択することによって、酸化剤と還元剤を酸官能性構成成分および任意選択的なフィラーと組み合わせ、貯蔵安定な状態に保つことができる。同様に、非水溶性封入剤を適切に選択することによって、還元剤と酸化剤をFASガラスおよび水と組み合わせ、貯蔵安定な状態に維持することができる。
【0095】
別の代替では、熱を使用してフリーラジカル活性基の硬化または重合を開始させてもよい。本発明の歯科材料に好適な熱源の例としては、誘導、対流、および放射が挙げられる。熱源は、通常の条件または高圧で少なくとも40℃、且つ150℃以下の温度を発生できなければならない。この手順は口腔環境の外側で起こる材料の重合を開始させるのに好ましい。
【0096】
硬化性樹脂中のフリーラジカル活性官能基の重合を開始させることができる更に別の代替の部類の開始剤は、フリーラジカルを発生させる熱開始剤を含むものである。例としては、過酸化物(例えば、ベンゾイルパーオキサイドおよびラウリルパーオキサイド)およびアゾ化合物(例えば、2,2−アゾビス−イソブチロニトリル(AIBN))が挙げられる。
【0097】
光開始剤化合物は、好ましくは、本出願に開示される歯科用組成物中に、樹脂系のキュアまたは硬化を開始させるかまたはその速度を向上させるのに有効な量で提供される。有用な光重合性組成物は、安全な光条件で前述の構成成分を単に混和するだけで調製される。この混合物を調製するとき、必要に応じて好適な不活性溶媒を使用してもよい。本発明の組成物の構成成分とあまり反応しない溶媒を使用してもよい。好適な溶媒の例としては、例えば、アセトン、ジクロロメタン、およびアセトニトリルが挙げられる。
【0098】
他のフィラー
酸反応性オキシフルオライド材料を含む歯科用フィラーの他に、本発明の組成物は、任意に他の1種類以上のフィラーを含有することもできる。このようなフィラーは、歯科修復組成物中に現在使用されているフィラー等の、歯科用途に使用される組成物中に混入させるのに好適な様々な材料のうちの1種類以上から選択されてもよい。
【0099】
他のフィラーは、好ましくは微粉砕されている。フィラーは、単峰型または多峰型(例えば、双峰型)の粒径分布を有してもよい。好ましくは、他のフィラーの最大粒径(粒子の最大寸法、典型的には直径)は、5マイクロメートル未満、より好ましくは0.5マイクロメートル未満、最も好ましくは0.1マイクロメートル未満である。好ましくは、フィラーの平均粒径は0.1マイクロメートル未満であり、より好ましくは0.075マイクロメートル未満である。
【0100】
他のフィラーは、無機材料とすることができる。これはまた、組成物の樹脂構成成分に不溶性で、任意に無機フィラーが充填されている架橋された有機材料とすることもできる。いかなる場合でも、フィラーは無毒であり、口内で使用するのに好適でなければならない。フィラーは、X線不透過性またはX線透過性とすることができる。典型的には、フィラーは水に実質的に不溶性である。
【0101】
好適な無機フィラーの例は、以下に限定されないが、石英;窒化物(例えば、窒化ケイ素);例えば、Zr、Sr、Ce、Sb、Sn、Ba、ZnおよびAlに由来するガラス;長石;ホウケイ酸ガラス;カオリン;タルク;チタニア;(特許文献43)(ランドクレーフ(Randklev))に記載されているものなどの低モース硬度のフィラー;および、サブミクロンシリカ粒子(例えば、ドイツ、ハナウ、デグサ社(Degussa AG,Hanau,Germany)から「OX50」、「130」、「150」および「200」シリカを含むエーロシル(AEROSIL)の商品名で入手可能なもの、並びにイリノイ州タスコラ、キャボット社(Cabot Corp.,Tuscola,IL)製のCAB−O−SIL M5シリカなどの熱分解法シリカ)を含む、天然材料または合成材料である。好適な有機フィラー粒子の例としては、充填または無充填の微粉状ポリカーボネート、およびポリエポキシド等が挙げられる。
【0102】
好適な非酸反応性フィラー粒子は、石英、サブミクロンシリカ、および、(特許文献44)(ランドクレーフ(Randklev))に記載されている種類の非ガラス質微粒子である。有機材料および無機材料から製造されるコンビネーションフィラーと同様に、これらの非酸反応性フィラーの混合物も想到される。
【0103】
また、フィラーと樹脂との結合を向上させるため、フィラー粒子の表面をカップリング剤で処理することもできる。好適なカップリング剤の使用には、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、およびγ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0104】
他の好適なフィラーは、(特許文献45)(チャン(Zhang)ら)および(特許文献46)(ウー(Wu)ら)、並びに、(特許文献47)(チャン(Zhang)ら)、(特許文献48)(ウィンディッシュ(Windisch)ら)、(特許文献49)(チャン(Zhang)ら)および(特許文献50)(ウー(Wu)ら)に開示されている。これらの参考文献に記載のフィラー構成成分は、ナノサイズのシリカ粒子、並びに、イットリウム、ストロンチウム、バリウム、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、タングステン、ビスマス、モリブデン、スズ、亜鉛、ランタニド元素(即ち、57〜71の範囲の原子番号(57と71を含む)を有する元素)およびセリウムの酸化物などの金属酸化物並びにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0105】
他のフィラー(例えば、歯科修復組成物)を含む本発明の幾つかの実施形態では、組成物は、好ましくは、組成物の総重量を基準にして、他のフィラーを少なくとも1重量%、より好ましくは少なくとも2重量%、最も好ましくは少なくとも5重量%含む。このような実施形態では、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、他のフィラーを40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、最も好ましくは15重量%以下含む。
【0106】
本発明の他の実施形態(例えば、組成物が歯科修復材または歯科矯正用接着剤であり、他のフィラーが組成物中の全フィラーの大部分である)では、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、他のフィラーを、好ましくは少なくとも40重量%、より好ましくは少なくとも45重量%、最も好ましくは少なくとも50重量%含む。このような実施形態では、本発明の組成物は、組成物の総重量を基準にして、他のフィラーを90重量%以下、より好ましくは80重量%以下、更により好ましくは70重量%以下、最も好ましくは50重量%以下含む。
【0107】
他の添加剤
本発明の歯科用組成物は、任意に、例えば、着色剤、香味料、抗微生物剤、香料、安定剤、粘度調整剤、並びに、無機および有機フッ化物放出材料(例えば、FASガラスおよび(特許文献51)(エースン(Aasen)ら)に記載されているものなどの有機フッ化物供給源)を含む、口腔環境で使用するのに好適な添加剤を含んでもよい。例えば、好適な添加剤としては蛍光および/または乳光を付与する試剤が挙げられる。
【0108】
フィラーの混入
本出願に開示されているフィラーを任意の好適な手段で硬化性樹脂および/またはポリ酸中に混入させ、歯科用組成物を形成してもよい。酸反応性歯科用フィラーを粉末として添加してもよい。或いは、酸反応性歯科用フィラーを別のフィラー(例えば、酸反応性フィラー、非酸反応性フィラー、ナノサイズのフィラー)および/または任意選択的な添加剤と組み合わせて、硬化性樹脂またはポリ酸に粉末として添加できる材料を提供してもよい。或いは、酸反応性歯科用フィラーを液体添加剤と組み合わせて、硬化性樹脂またはポリ酸に分散体として添加してもよい。更に、湿潤酸反応性歯科用フィラーを本明細書の実施例に記載の樹脂と組み合わせることができる。
【0109】
歯科用組成物
一実施形態では、本発明の歯科用フィラーを硬化性樹脂中に混入させ、前述の有用な歯科用組成物を提供することができる。幾つかの用途では、歯科用組成物は、好ましくはペーストの形態である。本発明の歯科用組成物は、化学硬化型、熱硬化型または光硬化型の組成物とすることができる。光硬化型材料は、適切な開始剤系を有していなければならない。化学硬化型材料は、自己硬化(例えば、レドックス開始剤による)とすることができる。或いは、組成物を自己硬化と光硬化の組み合わせで硬化させることができる。本発明の歯科用組成物は、一剤型歯科用組成物であってもまたは多剤型歯科用組成物であってもよい。好ましくは、組成物は、貯蔵安定性のある組成物である、即ち、少なくとも1年、好ましくは少なくとも2年の室温貯蔵寿命安定性を有する。
【0110】
他の実施形態では、本出願に開示されている歯科用組成物は、樹脂中に配置される酸反応性オキシフルオライド材料を含む歯科用フィラーを含む。使用されるフィラーの量は組成物の種類および所望の特性に依存する。
【0111】
他の実施形態では、本発明の歯科用フィラーは、典型的には、ポリ酸、酸反応性フィラー、および水を含む、従来のグラスアイオノマー;および、典型的には、ポリ酸、酸反応性フィラー、硬化性樹脂(即ち、重合性構成成分)および水を含む、樹脂強化グラスアイオノマーなどのアイオノマー型組成物に有用である。典型的には酸反応性フィラーとして使用される従来のFASガラスフィラーを一部または完全に代替するものとして、本発明の歯科用フィラーを使用することができる。
【0112】
好ましくは、本発明の歯科用フィラーは表面積が大きく、比較的少量で使用され得るが、それでもなお、より高充填量の従来のFASガラスに匹敵するフッ化物放出とアイオノマーの硬化を提供する。本発明の歯科用フィラーは比較的少量で使用されるため、X線不透過性フィラー、指標合致フィラー(indexed matched fillers)および/またはナノフィラーなどの更なる所望のフィラーをより多く含むアイオノマーおよび/またはフッ化物放出歯科用組成物の配合が可能になる。幾つかの実施形態では、このような組成物は、本発明の歯科用フィラーを15重量%未満、または、他の実施形態では10%重量未満、または、更に他の実施形態では5重量%未満有することができる。幾つかの実施形態では、このような組成物中の歯科用フィラーは、比較的低充填量であるにもかかわらず、歯科用組成物1グラム当たり少なくとも2平方メートル、他の実施形態では少なくとも5平方メートル、更に他の実施形態では少なくとも10平方メートルのフィラー表面積を提供することができる。
【0113】
本発明の歯科用組成物は、任意に、本発明の歯科用フィラーの他に、更なるフィラーを比較的多く含むことができる。幾つかの実施形態では、歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量を基準にして、本発明の歯科用フィラーを10重量%以下含むが、更なるフィラーも少なくとも40重量%、他の実施形態では少なくとも50重量%、更に他の実施形態では少なくとも60重量%含む。
【0114】
比較的少量の本発明の歯科用フィラー(例えば、ナノ構造化オキシフルオライド材料、特に、主に本発明のナノサイズのフィラー)および更なるナノサイズのフィラーをどちらも使用することにより、主にまたは本質的に完全にナノフィラーを含むフィラー系を有する歯科用組成物を配合することができる。幾つかの実施形態では、総フィラー含量はナノフィラーを少なくとも75%、他の実施形態ではナノフィラーを少なくとも90%含む。
【0115】
他の実施形態では、歯科用組成物は、より高充填量の本発明の歯科用フィラーを含む。好ましくは、歯科用組成物は、歯科用組成物の総重量を基準にして、本発明の歯科用フィラーを75重量%以下、より好ましくは70重量%以下含む。
【0116】
更に他の実施形態では、歯科用組成物は、好ましくは、歯科用組成物の総重量を基準にして、本発明の歯科用フィラーを少なくとも2重量%、より好ましくは少なくとも5重量%含む。
【0117】
本出願に開示される歯科用組成物は、例えば、歯科用接着剤、人工歯冠、前歯用または後方歯用充填材、キャビティライナー、セメント、コーティング、ミルブランク、歯科矯正装置、歯科矯正用接着剤、修復材、補綴物、およびシーラントとして使用することができる。好ましい態様では、歯科用組成物は歯科修復材である。本発明の歯科修復材は、直接口内に配置され、その場(in situ)でキュア(硬化)され得るか、或いは、口外で補綴物に加工された後、口内の所定の位置に接着されてもよい。
【0118】
好ましくは、本発明は、下記に詳述する所望の特性(例えば、高い直径引張強度、高い圧縮強度、および高い接着強さ)のバランスを提供するように硬化され得ると同時に、優れた操作性とレオロジー特性(例えば、25℃で5日貯蔵した後、実質的に沈降がない)を保持する歯科用組成物を提供する。好ましくは、歯科用組成物は、当業者が周知の手順を使用して操作するとき、非粘着性である。
【0119】
多剤型歯科用組成物
一実施形態では、本発明は、多剤型(例えば、二剤型以上)の歯科用組成物を提供する。各剤は独立して、例えば、粉末、液体、またはペーストであってもよい。このような多剤型歯科系としては、例えば、酸反応性フィラーと硬化性樹脂を含む組成物、並びに、酸反応性フィラー、ポリ酸、および任意選択的な硬化性樹脂(即ち、重合性構成成分)を含むアイオノマー組成物が挙げられる。本明細書に記載されるように、本発明の酸反応性フィラーは、このような組成物中に典型的に含まれるFASガラスフィラーの全部または一部を代替することができる。
【0120】
例えば、二剤型アイオノマー系は、酸反応性フィラーを含むA剤と、ポリ酸を含むB剤を含むことができる。A剤とB剤を組み合わせて混合アイオノマー組成物を形成することができる。A剤の粘度は、ブルックフィールド(Brookfield)粘度計を使用し、換算係数32,000のT−Dスピンドルを使用して室温または室温(通常25℃)付近で測定するとき、典型的には50,000センチポアズ(cps)より大きく、好ましくは150,000〜300,000cpsである。典型的には、歯科医は、使用直前に2剤を混合する。2剤を混合する時、酸塩基硬化反応が始まる。好ましくは、混合物は、(特許文献52)(ミトラ(Mitra))に定義される操作時間が、少なくとも30秒であり、より好ましくは少なくとも60秒である。任意に、重合性成分が存在する場合、その後の重合性成分の硬化を硬化剤および/または光によって促進することができる。A剤とB剤を配合するのに使用される各構成成分を本明細書に詳細に説明する。重合性構成成分および開始剤構成成分などのある一定の構成成分は、下記に更に説明するように、A剤とB剤のどちらか、またはA剤とB剤の両方に存在してもよい。ポリ酸と重合性構成成分は同じであっても、または異なってもよい。
【0121】
一実施形態では、本発明中に開示される歯科用フィラーを、アイオノマー組成物のA剤に使用してもよい。A剤は、任意に重合性構成成分を含んでもよい。アイオノマー組成物のA剤に使用されるとき、組成物は、組成物のA剤の総重量を基準にして、本発明の歯科用フィラーを好ましくは少なくとも5重量%、より好ましくは少なくとも10重量%、最も好ましくは少なくとも15重量%含む。アイオノマー組成物のA剤に使用されるとき、組成物は、組成物のA剤の総重量を基準にして、本発明の歯科用フィラーを好ましくは85重量%以下、より好ましくは82重量%以下、最も好ましくは80重量%以下含む。
【0122】
歯科用組成物中のポリ酸の量は、硬化性重合性樹脂の一部であってもまたは非重合性硬化性ポリ酸の一部であっても、所望の特性バランスを提供するのに十分でなければならない。B剤は、B剤の総重量を基準にして、好ましくはポリ酸を少なくとも5重量%、より好ましくはポリ酸を少なくとも10重量%含む。B剤は、B剤の総重量を基準にして、好ましくはポリ酸を70重量%以下、より好ましくはポリ酸を60重量%以下含む。
【0123】
A剤および/またはB剤は、任意に水を含有してもよく、水は、販売時に製品中に存在していてもよく、または使用直前に歯科医によって添加されてもよい。水は、蒸留水、脱イオン(DI)水、または水道水とすることができ、脱イオン水が好ましい。使用直前に、歯科用組成物全体は、好ましくは水を少なくとも1重量%、より好ましくは水を少なくとも3重量%、最も好ましくは水を少なくとも5重量%含む。使用直前に、歯科用組成物全体は、好ましくは水を35重量%以下、より好ましくは水を25重量%以下含む。一般に、使用される水の量は、歯科用組成物に十分な操作性および混合特性を提供し、且つ酸反応性歯科用フィラーポリ酸反応におけるイオンの輸送を可能にするのに十分でなければならない。水と本発明のフィラーが両方ともA剤に含まれるとき、フィラーの水性ペーストまたは硬い粘土状の形態をA剤の配合物に使用することができる。
【0124】
任意に、本発明の多剤型歯科系は、例えば、ナノフィラーを含む、更なる非酸反応性フィラーまたは酸反応性フィラーを含むことができる。
【0125】
幾つかの実施形態では、本発明の二剤型組成物を、第1のバレルと第2のバレルを有するデュアルバレルシリンジに入れて提供することができ、ここで、A剤は第1のバレル内に存在し、B剤は第2のバレル内に存在する。他の実施形態では、本発明の二剤型歯科用組成物を、単位用量カプセルに入れて提供することができる。幾つかの実施形態では、スタチックミキサを使用し、多剤型歯科系の各剤を一緒に混合することができる。
【0126】
硬化した歯科用組成物
本出願に開示される歯科用組成物は、硬化性樹脂(例えば、重合性構成成分)に配合される本発明の歯科用フィラーを含み、未硬化の状態でとりわけ望ましい操作性(例えば、レオロジー特性)を有し、硬化した状態で高強度を有する。
【0127】
圧縮強度(CS)および直径引張強度(DTS)などの機械的測定によって強度を特徴付けることができる。咀嚼が歯科再建、置換、および修復に及ぼす力のため、歯科材料の圧縮強度が高いことが有利である。直径引張強度は、材料中に引張応力を生じさせる圧縮力に耐える歯科材料の能力を示す。各強度測定の試験を実施例に後述する。
【0128】
本出願に開示される歯科用組成物は、硬化したとき、好ましくは少なくとも60MPaの圧縮強度、より好ましくは少なくとも80MPaの圧縮強度、最も好ましくは少なくとも90MPaの圧縮強度を有する。本発明の硬化した歯科用組成物は、好ましくは少なくとも10MPa、より好ましくは少なくとも15MPa、最も好ましくは少なくとも20MPaの直径引張強度を有する。
【0129】
歯科用物品
本発明の歯科用組成物を硬化させて、例えば、歯科用物品(例えば、歯冠、充填材、ミルブランク、および補綴物)および歯科矯正装置を形成してもよい。硬化性樹脂および本発明の歯科用フィラーを含む歯科用組成物の好ましい使用方法では、組成物は歯表面付近または歯表面に配置され、続いて組成物のトポグラフィーを変更するように歯科医または技巧室によって操作され、続いて組成物を硬化させてもよい。これらの工程は逐次的に、または異なる順番で進めることができる。例えば、歯科用組成物がミルブランクまたは補綴物である好ましい実施形態では、硬化工程は、一般に、組成物のトポグラフィーを変更する前に完了される。例えば、手持ち式の機器を使用する彫刻または手動操作を含む様々な方法で、または、補綴物およびミルブランクの場合には機械若しくはコンピュータ支援装置(例えば、CAD/CAMミリングマシーン)で組成物のトポグラフィーの変更を達成することができる。任意に、仕上げ工程を実施して歯科用物品の研磨、仕上げ、またはコーティング塗布を行うことができる。
【0130】
以下の実施例で本発明の目的および利点を更に例示するが、これらの実施例に列挙される特定の材料およびその量、並びに、他の条件および詳細は、本発明を不当に限定するものと見なされるべきではない。別途指示されない限り、部およびパーセンテージは全て、重量を基準にし、水は全て脱イオン水であり、分子量は全て重量平均分子量である。
【実施例】
【0131】
試験方法
表面積決定
表面積は、沈殿粉末の「一次粒径」に関連する。一次粒径は、沈殿中に形成する小さく個々に核形成された粒子を指す。一次粒子は集合してより大きい粒子を形成することができ、個々に分散可能であっても、または個々に分散可能でなくてもよい。均一で球状の緻密な一次粒子、およびそれから作られる集合体または構造体の表面積(S)は約3m/ρrであり、ここで、mは質量、rは一次粒子の半径、ρは密度であり、S/mは比表面積である。従って、r=3m/ρSである。
【0132】
マイクロメリティクス・ジェミニ・表面積分析装置(Micromeritics Gemini Surface Area Analyzer)およびマイクロメリティクス・フロー・プレップ・脱ガス装置(Micromeritics Flow Prep outgassing unit)(ジョージア州ノークロス、マイクロメリティクス(Micromeritics,Norcross,GA))を使用してフィラー粉末の比表面積(単位重量当たりの表面積)を決定した。粉末試料の重量を測定した後、ガラス試料管に入れた。粉末試料と、ガラス試料管および栓の両方の重量を測定し、記録した。粉末試料をガラス試料管に入れ、重量を測定し、記録した。脱ガス装置内のプローブへの窒素流を出した後、ガラス試料管の底部に静かに流した。ガラス試料管の上部に栓を緩く挿入し、管をプレップ・脱ガス装置の加熱ゾーンに入れた。次いで、試料を250℃で1時間、脱ガスさせた。次いで、管を加熱ゾーンから取り出して冷却棚に置き、5分間冷却させた。次いで、ガラス管から栓とプローブを取り外した。次いで、栓をガラス管の上部に直ぐに嵌め直した。次いで、管と栓の重量を測定し、その重量をガラス管と栓だけの初期重量から引いた。次に、脱ガスした粉末が入っているガラス管を表面積分析装置に立てて入れた。次いで、ジュワー瓶に液体窒素を充填し、表面積分析装置に入れた。次いで、分析装置に取り付けられた真空ポンプのスイッチを入れた。次いで、ジェミニ(Gemini)コントロールボックスを使用して、粉末重量、飽和圧力、真空排気速度、日付、および時間を入力した。次いで、入力ボタンを押すことにより、分析を開始した。数サイクルの分析を行い、プログラムで表面積測定値を計算した。
【0133】
粒径決定
粒径分析装置による平均粒径。コウルターLS230粒径分析装置(Coulter LS 230 Particle Size Analyzer)(フロリダ州ハイアレア、コウルター社(Coulter Corporation,Hialeah,FL))を使用して、粒径(クラスタサイズを含む)分布(容積パーセントを基準にする)を決定した。分析装置に偏光散乱強度差法(PIDS)ソフトウェアを装備した。フィラー試料300mgを、フィラーを全て濡らすのに十分なマイクロ(MICRO)−90界面活性剤(ニューヨーク州バーノンヒルズ、コール−パーマー(Cole−Parmer,Vernon Hills,NY))と一緒にガラスバイアル瓶に添加した。カルゴン溶液(フッ化ナトリウム0.20g、ピロリン酸ナトリウム4.00g、ヘキサメタリン酸ナトリウム40.00g、マイクロ(MICRO)−90界面活性剤8.00g、およびDI水3948mlを完全に混合することにより作製される)のアリコート30mlを添加し、得られた混合物を15分間振盪し、プローブソニケータ(モデルW−225ソニケータ、ニューヨーク州ファーミングデイル、ヒートシステムズ−ウルトラソニックス(Model W−225 Sonicator,Heat Systems−Ultrasonics,Farmingdale,NY))で6分間、出力制御ノブ設定9で超音波処理した。コウルターLS230粒子キャラクタリゼーション・ソフトウェア・バージョン3.01(Coulter LS 230 Particle Characterization Software Version 3.01)を使用して粒子分析を行った。試験条件は、運転長さ90秒、待機長さ0秒であり、PIDSの読みが45%〜55%になるまで、試験試料を試料オリフィスに滴下添加した。1試料当たり3組のデータを平均し、平均粒径または平均クラスタサイズを得た。
【0134】
TEM(透過型電子顕微鏡)による平均粒径:カーボン安定化フォルムバール支持体(ペンシルバニア州ウエストチェスター、ストラクチャ・プローブ社の一事業部、SPIサプライズ(SPI Supplies,a division of Structure Probe,Inc.,West Chester,PA))を有する200メッシュ銅グリッド上に厚さ約80nmの試料を配置した。ジオル(JEOL) 200CX装置(日本、昭島の日本電子株式会社(JEOL,Ltd.,of Akishima,Japan)、ジオルUSA社(JEOL USA,Inc.,)により販売)を使用して200Kvで透過型電子顕微鏡写真(TEM)を撮った。約50〜100粒子の母集団サイズを測定し、平均粒径を決定した。
【0135】
フッ化物放出試験方法
以下の手順で、フィラー粉末試料から放出されるフッ化物の量を決定した。ディスク形(厚さ1mm×直径20mm)のペースト試料を、それらをビジルクス(VISILUX)2キュアリングライト(ミネソタ州セントポール、3M社(3M Company,St.Paul,MN))からの照明に60秒間露光させることによって硬化させた。次いで、硬化したディスクの重量を測定し、プラスチックバイアル瓶内のDI水25mlに添加した。次いで、このバイアル瓶を37℃のオーブンに24時間入れた。次いで、オーブンからバイアル瓶を取り出し、水溶液10mlをTISAB(DI水、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸、およびCDTA(1,2−シクロヘキサンジアミン四酢酸)を含有する全イオン強度調整緩衝溶液(マサチューセッツ州ベヴァリー、サーモ・オリオン(Thermo Orion,Beverly,MA))10mlに添加した。磁気攪拌子を加え、攪拌機上で混合した。1、2、5、10、50および100ppmのオリオン・イオンプラス(Orion IonPlus)標準液(マサチューセッツ州ボストン、オリオン(Orion,Boston,MA))を使用して、オリオン・フルオライド・コンビネーション(Orion Fluoride Combination)電極モデル96−09を較正した。較正後、攪拌している水/TISAB溶液に電極を入れ、値(ppm単位)を測定した。ディスク試料(25ml)に最初に使用した水の総量とディスク試料の個々の重量を考慮して、フッ化物放出を計算した。この計算は、μgF/gの単位となり、3つの複製の平均を表した。
【0136】
総フッ化物含量試験方法
以下の手順で、フィラー粉末試料中に存在するフッ化物の総量を決定した。試料中に存在するフッ化物を全て放出するように試料を酢酸溶液中に完全に溶解させたこと以外、前記のフッ化物放出試験方法に記載されているように、フィラー粉末試料のフッ化物放出を分析した。その結果はフッ化物重量パーセントとして報告され、3つの複製の平均を表した。
【0137】
硬化効率試験方法
以下の手順でフィラー粉末試料の硬化効率を決定した。VBCP(43部)、HEMA(22.6部)、および水(34.4部)の組み合わせを予備混合し、均質化することによって、試験樹脂を調製した。フィラー粉末試料(様々な量)を試験樹脂(0.5g)に添加し、得られた混合物をミキシングパッド上で均質になるまでスパチュラで混合した後、テフロン(TEFLON)型を使用して直径約2cm、厚さ1mmのディスク形の試料に形成した。得られたディスク試料を一定間隔をあけて検査し、以下の尺度を使用して硬化の程度を評価した:
0−−混合時の状態から変化なし
1−−粘度増加−−依然として液体または流動性でペースト状
2−−一部固体、粘着性
3−−固体であるが、柔軟で弱粘着性
4−−完全に固体、僅かな柔軟性
5−−完全に硬化、脆性
様々な総硬化時間における硬化の定量的な程度を表す数字(0〜5)を記録した。
【0138】
エナメル質または象牙質に対する接着の試験方法
以下の手順で、所与の試験試料のエナメル質または象牙質に対する接着強度を評価した。
【0139】
歯の準備。各試験試料について、類似の年齢と外観を有する5本の牛の歯を円形のアクリルディスクの中に部分的に埋入した。象牙質またはエナメル質を露出させるため、宝石研磨ホイールに取り付けられた、紙を支持体とするグレード120の炭化ケイ素研磨材を使用して、各歯の露出部分を平坦に、且つアクリルディスクに平行に研削した。この間、および、その後の研削および研磨工程の間、歯を水で連続的に洗浄した。紙を支持体とするグレード600の炭化ケイ素研磨材を宝石研磨ホイールに取り付けることにより、歯を更に研削し、研磨した。研磨された歯を脱イオン水中に貯蔵し、研磨後2時間以内に試験に使用した。研磨した歯を水から取り出し、拭き取って乾燥させた。
【0140】
歯への適用:直径5mmの穴のある予め作製された厚さ2mmのテフロン(TEFLON)シートの型にプラスチックリングをライニングし、試験試料が(硬化後に)それから離型するようにした。予め研削/研磨することによって準備した、拭き取って乾燥させた歯に型をクリップで留めた。ペーストAおよびペーストB試験試料の重量を測定し、25秒間一緒に混合して、混合ペースト試験試料を得た後、それをスパチュラで型に入れた。混合ペースト試験試料に僅かに圧力を加えて、それが型/歯交差点にあることを確実にした。型を全て充填した後、サンプルをXL 3000歯科用キュアリングライト(3M社(3M Company))からの放射線に60秒間、露光させた。次いで、試料を、相対湿度97%および37℃に設定された湿度室に15分間入れた。次いで、試料を湿度室から取り出し、アセンブリからクリップを取り除いた。次いで、得られた歯を型がまだ取り付けられている状態で、37℃に設定されたオーブン内の37℃の脱イオン水に24時間入れた。
【0141】
接着強度試験。インストロン(Instron)試験機(インストロン4505、マサチューセッツ州カントン、インストロン社(Instron 4505,Instron Corp.Canton,MA))のジョーに締め付けられるホルダにアセンブリ(前述)を、研磨された歯の表面が引張方向に平行な向きになるようにして取り付けることにより、硬化した試験試料の接着強度を評価した。試験前に試料の型を取り外した。研磨された歯の表面に隣接するボタン試料の周囲に、歯科矯正用ワイヤ(直径0.44mm)のループを配置した。歯科矯正用ワイヤの端部をインストロン(Instron)装置の引張ジョーで締め付け、5mm/分のクロスヘッド速度で引っ張り、それによって接着を剪断応力下に置いた。結合が破壊した時の力(キログラム(kg)単位)を記録し、この数字を、ボタンの既知の表面積を使用して単位面積当たりの力(kg/cm2またはMPaの単位)に変換した。報告するエナメル質に対する接着または象牙質に対する接着の値はそれぞれ、5つの複製の平均を表す。
【0142】
圧縮強度(CS)試験方法
まず、内径4mm、長さ4cmのガラス管に試験試料を注入することによって圧縮強度を評価した。ガラス管の端部にシリコーン栓を差し込んだ。充填された管に5分間、0.275メガパスカル(MPa)の圧力をかけ、XL1500キュアリングライト(3M社(3M Company))で60秒間、照射した。次いで、管試料を37℃の水容器に24時間、入れた。管を7mmの長さに切断し、ガラス管から試料を押出した。ISO標準7489に従い、毎分1ミリメートル(mm/分)のクロスヘッド速度で運転されるインストロン(INSTRON)万能試験機(マサチューセッツ州カントン、インストロン社(Instron Corp.Canton,MA))を使用して圧縮強度を決定した。結果を5つの複製の平均として報告した。
【0143】
直径引張強度(DTS)試験方法
前述のCS手順を使用して直径引張強度を測定したが、使用する試料を2mmの長さに切断した。結果を5つの複製の平均として報告した。
【0144】
曲げ強度(FS)試験方法
まず、内径1mmの正方形のガラス管に試験試料を注入することにより曲げ強度を評価した。正方形の管にXL1500キュアリングライト(3M社(3M Company))で30秒間照射した後、180°回転させて更に30秒間照射した。正方形の管から試料を取り出し、37℃の水に1日間入れた。前述のCS手順を使用して曲げ強度を測定した。結果を5つの複製の平均として報告した。
【0145】
視感不透過性(visual opacity)(マクベス値)試験方法
ディスク形(厚さ1mm×直径20mm)のペースト試料を、それらをビジルクス(VISILUX)2キュアリングライト(3M社(3M Company))からの照明に60秒間露光させることによって硬化させた。マクベス(ニューヨーク州ニューバーグ、マクベス)(MacBeth(MacBeth,Newburgh,NY))から入手可能な可視光フィルタを装備したマクベス(MacBeth)透過濃度計モデルTD−903を使用して、ディスクの厚みを通る光の透過度を測定することにより、硬化した試料の光の正透過を測定した。マクベス値が低いほど、材料の視感不透過性が低く、半透明性が大きいことを示す。報告した値は3つの測定の平均である。
【0146】
X線不透過性(マクベス値)試験方法
視感不透過性測定で使用したのと同じディスク形の試料を、X線不透過性測定を行うのに使用した。1枚のX線フィルムを、厚さ6.394mmの1枚の鉛のシート上に配置した。次に、X線フィルム上に試料とアルミニウム階段光学くさびを配置した。次いで、試料、アルミニウム階段光学くさび、およびフィルムにX線を62kVで400mmの標的フィルム距離で照射した。次いで、エア・テクニクス・ペリ−プロ(Air Techniques Peri−Pro)X線フィルム現像液(ニューヨーク州ヒックスビル、エア・テクニクス(Air Techniques,Hicksville,NY))を使用してフィルムを現像した。次いで、マクベス(MacBeth)透過濃度計モデルTD−903を使用して、現像したフィルムを測定した。次いで、測定値をアルミニウム階段測定に対してプロットし、各アルミニウム階段の厚さと比較して計算した。
【0147】
滑沢性保持(歯ブラシ磨耗/光沢)試験
滑沢性保持:硬化した試料の滑沢性保持を以下の方法で決定した。正方形の形状のペースト試料(長さ20mm×幅9mm×厚さ3mm)をビジルクス(VISILUX)2装置で60秒間硬化させた。両面接着テープ(スコッチブランドテープ、コアシリーズ2−1300、ミネソタ州セントポール(Scotch Brand Tape,Core series 2−1300,St.Paul,MN))で試料をホルダに取り付け、下記のチャートに示されるように逐次的に実施される以下の一連の工程に従って研磨した。オートメット2研磨ヘッド(AUTOMET 2 Polishing Head)を有するビューラー・エコメット4ポリッシャ(Buehler ECOMET 4 Polisher)を時計回りの回転で使用した。
【0148】
【表1】

【0149】
マイクロ−トリ−グロス光沢計(micro−tri−gloss instrument)(メリーランド州コロンビア、BYKガードナー(BYK Gardner,Columbia,MD))を使用して、研磨後および歯磨き後の試料表面から鏡面反射された光の光電測定を収集した。60°のジオメトリでなされる測定に関するASTM D 523−89(1994年、再認可)鏡面光沢の標準試験方法に記載されている手順に従ったが、以下の変更をした。研磨後の初期光沢(GI)は、初期試料について測定した。歯磨き2000サイクル後の最終光沢(GF)は、最終試料について測定した。次式を用いてΔGの値を計算した:ΔG=(GF)−(GI)。初期および最終の読みの他に、歯磨き500ストローク、1000ストローク、および1500ストロークにおける光沢測定を読み取った。オーラルB40中サイズ・ストレート歯ブラシ(ORAL B 40 medium Straight toothbrush)(カリフォルニア州ベルモント、オーラルBラボラトリーズ(Oral B Laboratories,Belmont,CA.))を用い、クレスト・レギュラー・フレーバー(CREST Regular Flavor)(オハイオ州シンシナチ、プロクター・アンド・ギャンブル(Proctor&Gamble,Cincinnati,OH))歯磨き粉を使用して各試料を磨いた。一人の操作者が、歯磨きの力の程度の力を使用して全ての試料を磨いた。同じ歯ブラシを用いて各試料を磨いた。歯磨き1サイクルは、前方へ1ストロークおよび後方へ1ストロークであった。
【0150】
【表2】


【0151】
出発材料の調製
DiHEMA−P(HEMAホスフェートとテトラHEMAピロホスフェートの混合物)
ガス入口のある還流冷却器、攪拌機、およびガス出口のある滴下漏斗を嵌めた1リットルの三口丸底フラスコに、POCl376.7g、およびTHF500mlを投入した。HEMA130.5g、トリエチルアミン(TMA)101.5g、およびTHF87gの溶液を滴下漏斗に入れた。フラスコを氷−水−塩の浴で約−5℃に冷却した。攪拌しながら溶液を25分間にわたって滴下添加し、その間、温度を0℃〜−5℃に維持した。混合物を3時間攪拌し、温度を室温まで上昇させた。フラスコにTHFを更に200ml添加して攪拌を容易にした。滴下漏斗に、THF50ml中、TEA51gおよび水6.8gの溶液を添加した。氷−水−塩の浴でフラスコを0〜5℃に冷却した後、16分間、溶液を滴下添加した。混合物を室温に達せしめ、18時間攪拌した。混合物を濾過して沈殿した塩を除去し、真空中でTHFを除去した。生成物(168g)は薄いオレンジ色の液体であり、1H、13C、および31P−NMRにより、モノ−、ジ−、およびトリ−HEMAホスフェートとテトラHEMAピロホスフェートの混合物であることが特徴付けられた。
【0152】
フィラーA(シラン処理されたナノサイズのシリカ粒子)
乾燥粉末の形態のシラン処理されたナノサイズの非凝集シリカ粒子を以下の手順に従って調製した。ナルコ(Nalco)2329シリカゾル(400.82g)を1クォートの広口瓶に投入した。メトキシ−2−プロパノール(250.28g)およびA174(6.15g)を一緒に混合し、約5分間、攪拌しながらシリカゾルに添加した。広口瓶を密封し、80℃に16時間加熱した。得られた白色の分散体を、(特許文献54)(コルブ(Kolb)ら)および(特許文献55)(ヒュールズマン(Huelsman)ら)に記載の手順に従い、分散体コーティング厚さ約35ミル(0.9mm)および滞留時間1.6分(加熱盤(heating platen)温度143℃および凝縮盤(condensing platen)温度21℃)でギャップ乾燥法を使用して乾燥させ、フィラーAと称される微細な自由流動性白色粉末を得た。フィラーAの公称粒径は、出発のナルコ(Nalco)シリカゾル中におけるものと同じ、即ち、約75ナノメートル(nm)であると見なされた。
【0153】
フィラーB(シラン処理されたシリカクラスタ)
シリカクラスタとして緩く凝集した、シラン処理されたナノサイズのシリカ粒子を以下の手順に従って自由流動性の乾燥粉末の形態で調製した。ナルコ(Nalco)2329シリカゾル(1.0kg)を、91cmのニロ・スプレー・ドライヤー(Niro Spray Drier)(メリーランド州コロンビア、ニロ・モービル・マイナー・スプレー・ドライヤー(Niro MOBILE MINOR Spray Drier,Columbia,MD))を使用し、入口温度325℃および出口温度120℃で噴霧乾燥させた。得られた乾燥固体の試料330gを5.5リットルのボールミルに添加し、16時間ボールミル粉砕し、白色粉末を得、これは、本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従って、平均サイズ5マイクロメートルのシリカクラスタからなることが決定された。シリカクラスタを構成する一次シリカ粒子は、出発のナルコ(Nalco)2329シリカゾル中におけるものと同じサイズである、即ち、公称粒径約75ナノメートルであると見なされた。
【0154】
白色粉末の試料100gを磁気攪拌子で2分間攪拌することにより脱イオン水(300g)と完全に混合した。得られた均質な混合物を水酸化アンモニウムでpH8.5に調整した。A174(3.5g)を添加し、磁気攪拌子を使用して内容物を120分間完全に混合し、得られた混合物を最終pH8.25に調整した。次いで、混合物を、ブッチ(Buchi)スプレー・ドライヤー(ブッチ/ブリンクマン・ミニ・スプレー・ドライヤー、モデル190、ニューヨーク州ウエストベリー、ブリンクマン・インスツルメンツ社(Buchi/Brinkman Mini Spray Drier,Model 190,Brinkmann Instruments,Inc.,Westbury,NY))を使用し、入口温度200℃および出口温度85℃で噴霧乾燥させた。得られた微細な自由流動性のシラン処理された(S/T)白色粉末をフィラーBと称した。
【0155】
フィラーC(シラン処理されたシリカ−ジルコニアクラスタ)
実質的に非晶質のクラスタとして緩く凝集した、シラン処理されたナノサイズのシリカおよびジルコニア粒子を以下の手順に従って乾燥粉末の形態で調製した。ナルコ(Nalco)1042シリカゾル5.0kg部分を、希硝酸を使用してpH2.5に調整した。pH調整されたゾルを、酢酸ジルコニル(2.95kg)にゆっくりと添加し、得られた混合物を1時間攪拌した。次いで、この混合物を、91cmのニロ・スプレー・ドライヤー(Niro Spray Drier)(メリーランド州コロンビア、ニロ・モービル・マイナー・スプレー・ドライヤー(Niro MOBILE MINOR Spray Drier,Columbia,MD))を使用し、入口温度325℃および出口温度120℃で噴霧乾燥させた。得られた固体を550℃で4時間熱処理(仮焼)した。仮焼された固体を160時間、ボールミル粉砕して白色粉末を得、これは本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従って平均サイズ2マイクロメートルのシリカクラスタからなることが決定された。
【0156】
白色粉末の試料20gを磁気攪拌子で2分間攪拌することにより脱イオン(DI)水(40g)と完全に混合した。得られた均質な混合物を水酸化アンモニウムでpH8.5に調整した。A174(1.7g)を添加し、磁気攪拌子を使用して内容物を120分間完全に混合し、得られた混合物を最終pH8.25に調整した。次いで、混合物を、ブッチ(Buchi)スプレー・ドライヤー(ブッチ/ブリンクマン・ミニ・スプレー・ドライヤー、モデル190、ニューヨーク州ウエストベリー、ブリンクマン・インスツルメンツ社(Buchi/Brinkman Mini Spray Drier,Model 190,Brinkmann Instruments,Inc.,Westbury,NY))を使用し、入口温度200℃および出口温度85℃で噴霧乾燥させた。得られた微細な自由流動性の白色粉末をフィラーCと称した。
【0157】
フィラーD(シラン処理されたナノサイズのジルコニア粒子)
ジルコニアゾル(800.0g;ジルコニア184g)およびMEEAA(72.08g)を1リットルの丸底フラスコに投入した。ロータリーエバポレータで水と酸を除去して粉末(291.36g)を得、これを強制空気オーブン(90℃)内で更に乾燥させて乾燥粉末(282.49g)を得た。脱イオン(DI)水(501.0g)を添加し、粉末を再分散させた。得られた分散体を2リットルのビーカーに投入し、続いて、攪拌しながら1−メトキシ−2−プロパノール(783g;シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))、シルクエスト(SILQUEST)A−174(83.7g)およびシルクエスト(SILQUEST)A−1230(56.3g)を添加した。得られた混合物を室温で30分攪拌した後、クォート広口瓶2つに分け入れ、密封した。広口瓶を90℃に4時間加熱し、内容物をロータリーエバポレータで濃縮して液体濃縮物(621g)を得た。
【0158】
DI水(2400g)および濃アンモニア/水(80.0g;29%NH3)を4リットルのビーカーに投入し、続いて、約5分にわたって液体濃縮物を添加し、白色沈殿物を得た。真空濾過により沈殿物を回収し、DI水で洗浄した。得られた湿潤ケーキを1−メトキシ−2−プロパノール(661g)中に分散させ、ジルコニア15.33重量%を含有する分散体を得た。シラン処理されたナノジルコニアフィラーをフィラーDと称した。
【0159】
フィラーDの一次粒径および凝集粒径は、出発ジルコニアゾル中におけるのと同じ、即ち、それぞれ約5ナノメートルおよび50〜60ナノメートルであると見なされた。
【0160】
実施例1〜18
酸反応性オキシフルオライドナノ構造化材料を含む歯科用フィラー
実施例1
アルミニウム−ストロンチウム−オキシフルオライド材料
2モル濃度の硝酸アルミニウムDI水溶液(80ml)を2モル濃度の硝酸ストロンチウムDI水溶液(20ml)に添加し、「カチオン」溶液を得た。2モル濃度の水酸化アンモニウムDI水溶液(720ml)を2モル濃度のフッ化アンモニウムDI水溶液(180ml)に添加し、「アニオン」溶液を得た。高速攪拌しながら「アニオン」溶液に「カチオン」溶液を迅速に添加した。得られた白色の沈殿粉末を、真空ブフナー濾過を使用して粗い濾紙上に捕集し、DI水で洗浄した。得られた水で濡れた固体材料(「湿潤ケーキ」)を実施例1と称した。出発化合物は全てシグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich)から入手した。
【0161】
実施例2〜6
熱処理されたアルミニウム−ストロンチウム−オキシフルオライド材料
カチオン溶液とアニオン溶液の量を変えたこと以外、実施例1に記載されているようにオキシフルオライド材料を製造した。実施例2〜6の出発溶液容積の量を表1Aに記載する。沈殿物を100℃で一晩乾燥させ、250℃で1時間加熱し、乳鉢と乳棒で粉砕し、150メッシュの篩に通し、実施例2〜6と称される白色粉末を得た。フィラー粉末の計算されるカチオンとアニオンのモル比、フッ化物含量、および表面積を、本明細書に記載の試験方法に従って決定したが、その結果を表1Cに記載する。本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従って、熱処理された沈殿物(実施例3)で粒径分析を実施し、7.35マイクロメートルであると計算された。
【0162】
実施例7〜10
熱処理されたアルミニウム−ストロンチウム−ケイ素−オキシフルオライド材料
シリカを含むように、手順に以下の変更をして、実施例1に記載されているようにオキシフルオライド材料を製造した。14重量%の水酸化ナトリウムおよび27重量%のシリカ(シグマ−アルドリッチ(Sigma−Aldrich))を含有するケイ酸ナトリウム水溶液(SS溶液)をDI水で希釈し、1リットル当たり水酸化ナトリウム2モルおよびシリカ2モルを含有するケイ酸ナトリウム溶液を形成した。例えば、シリカ27gおよび水酸化ナトリウム14gを含有する市販のSS溶液100gは、シリカ0.45モルおよび水酸化ナトリウム0.45モルを有する。2モル濃度のケイ酸ナトリウム溶液を調製するために、SS溶液をDI水で最終溶液容積225mlに希釈した。
【0163】
表1Bに「塩基溶液」の見出しで示されるように、水酸化アンモニウム溶液の一部の代わりに2モル濃度のケイ酸ナトリウムを使用したこと以外、実施例2〜6について記載したように沈殿反応を実施した。表1Bは、実施例7〜10に使用される各溶液の量を示した。実施例2〜6について前述したように沈殿物を乾燥させ、加熱し、粉砕した。フィラー粉末(実施例7〜10)の計算されるカチオンとアニオンのモル比、およびフッ化物含量を、本明細書に記載の試験方法に従って決定し、その結果を表1Cに記載した。
【0164】
比較のため、表1Cは、溶融法から調製された従来のFAS(フルオロアルミノシリケート)ガラス材料(比較例CE−1、CE−2、およびCE−3)のフッ化物含量値も記載する。表1Cは、参照値として2つの仮定的な組成物について計算されたフッ化物含量も記載する。示されるように、酸素が全て水酸基として存在し、Fがアニオンの半分を構成する「80/20モル%Al/Sr」Al−Sr−O−F材料のフッ化物含量は、29.6%のF含量を有する。同じカチオン組成の純粋なフッ化化合物は、Fが60.4重量%である。表1Cのフィラー試料は、11.5〜50重量%の範囲のフッ化物含量を有する。
【0165】
【表3】

【0166】
【表4】

【0167】
【表5】

【0168】

実施例11
酸反応性オキシフルオライド材料を含有する多孔質の粒子凝集体
(シリカナノ粒子の「クラスタ」)
以下の手順に従って、酸反応性オキシフルオライドフィラー材料をナノサイズのシリカ粒子のクラスタ上にコーティングしたまたはその中に含浸させた。実施例1について記載したように「カチオン」溶液と「アニオン」溶液を調製した。フィラーB(7g;S/Tシリカクラスタ)を「アニオン」溶液に添加し、得られる溶液を10分間攪拌した。次いで、高速攪拌しながら「アニオン」溶液に「カチオン」溶液を添加した。得られた白色の沈殿粉末を実施例2〜6について記載したように捕集、乾燥、加熱、粉砕し、篩にかけて、実施例11のフィラーと称される白色粉末を得た。実施例11のフィラーの「クラスタ」対酸反応性オキシフルオライド材料の重量比は、約1:2であった。
【0169】
実施例12
酸反応性オキシフルオライド材料を含有する多孔質の粒子凝集体
(シリカ−ジルコニアナノ粒子の「クラスタ」)
以下の手順に従って、酸反応性オキシフルオライドフィラー材料をナノサイズのシリカ−ジルコニア粒子のクラスタ上にコーティングしたまたはその中に含浸させた。実施例1について記載したように「カチオン」溶液と「アニオン」溶液を調製した。フィラーC(7g;S/Tシリカ−ジルコニアクラスタ)を「アニオン」溶液に添加し、得られる溶液を10分間攪拌した。次いで、高速攪拌しながら「アニオン」溶液に「カチオン」溶液を添加した。得られた白色の沈殿粉末を実施例2〜6について記載したように捕集、乾燥、加熱、粉砕し、篩にかけて、実施例12のフィラーと称される白色粉末を得た。実施例12のフィラーの「クラスタ」対酸反応性オキシフルオライド材料の重量比は、約1:2であった。
【0170】
実施例13
ボールミル粉砕されたオキシフルオライド材料
酸反応性オキシフルオライド材料を実施例1に記載したように調製した。沈殿、濾過、および洗浄後、水で濡れた沈殿物を250℃で1時間加熱した。次いで、熱処理された沈殿物をDI水に添加し、25重量%の懸濁液を形成した。この懸濁液を、1/4インチのアルミナ媒体を使用して72時間ボールミル粉砕した。得られたミル粉砕された懸濁液を捕集し、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離管から湿潤ケーキを取り出し、粗い(硬質)濾紙のシート間でハンドプレスすることにより更に脱水して50重量%の水の濃度にし、実施例13と称される硬い粘土状の塊を得た。粘土状の材料の一部は、ペーストA組成物の樹脂構成成分中に容易に分散可能であった(表4A参照)。本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従い、ボールミル粉砕された懸濁液について粒径分析を実施し、1.31マイクロメートルであると計算された。
【0171】
実施例14A
アトライターミル粉砕されたオキシフルオライド材料
実施例1に記載したように酸反応性オキシフルオライド材料を調製した後、実験室用アトライターミル(Attritor Mill)(オハイオ州アクロン、ユニオン・プロセス、モデル101(Union Process,Model 01,Akron,Ohio))を使用することによりミル粉砕した。沈殿、濾過、および洗浄後、水で濡れた沈殿物を250℃で1時間加熱した。ミル粉砕の準備の際、熱処理された沈殿物をDI水に添加し、10重量%の懸濁液を形成した。この懸濁液を、2mmのZrO2媒体を使用して100%出力で1時間、アトライターミル粉砕した。得られたミル粉砕された懸濁液を捕集し、10,000rpmで10分間遠心分離した。遠心分離管から湿潤ケーキを取り出し、粗い(硬質)濾紙のシート間でハンドプレスすることにより更に脱水して50重量%の水の濃度にし、実施例14Aと称される硬い粘土状の塊を得た。粘土状の材料の一部は、ペーストA組成物の樹脂構成成分中に容易に分散可能であった(表4B参照)。本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従い、アトライターミル粉砕された懸濁液について粒径分析を実施し、0.871マイクロメートルであると計算された。
【0172】
実施例14B
最適化されたアトライターミルで粉砕されたオキシフルオライド材料
実施例1に記載したように酸反応性オキシフルオライド材料を調製した後、実験室用アトライターミル(Attritor Mill)(ユニオン・プロセス、モデル101(Union Process,Model 01))を使用することによりミル粉砕した。沈殿、濾過、および洗浄後、水で濡れた沈殿物を250℃で1時間加熱した。ミル粉砕の準備の際、熱処理された沈殿物をDI水に添加し、10重量%の懸濁液を形成した。この懸濁液を、0.5mmと2mmのZrO2媒体を25/75の比で使用して2時間、100%出力でアトライターミル粉砕した。得られたミル粉砕された懸濁液を捕集し、9,600rpmで6分間遠心分離した。遠心分離管から湿潤ケーキを取り出し、粗い(硬質)濾紙のシート間でハンドプレスすることにより更に脱水して50重量%の水の濃度にし、実施例14Bと称される硬い粘土状の塊を得た。粘土状の材料の一部は、ペーストA組成物の樹脂成分中に容易に分散可能であった(表4C参照)。本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従い、最適化されたアトライターミルで粉砕された懸濁液について粒径分析を実施し、0.163マイクロメートルであると計算された。
【0173】
実施例15
非乾燥オキシフルオライド材料
実施例1に記載したように酸反応性オキシフルオライド材料を調製した。次いで、非乾燥沈殿物を9,600rpmで6分間遠心分離した。遠心分離管から湿潤ケーキを取り出し、粗い(硬質)濾紙のシート間でハンドプレスすることにより更に脱水して50重量%の水の濃度にし、実施例15と称される硬い粘土状の塊を得た。粘土状の材料の一部は、ペーストA組成物の樹脂構成成分中に容易に分散可能であった(表4C参照)。
【0174】
実施例16〜18
他の金属イオンを含有するオキシフルオライド材料
実施例1に記載したように酸反応性オキシフルオライド材料を調製したが、La、YおよびCaのようなイオンを含むように、組成の代替を行った。実施例14Bに記載のミル粉砕/遠心分離/脱水プロセスに従って更に処理を行い、実施例16〜18と称される硬い粘土状の塊を得た。溶液の量を下記の表2に示す。粘土状の材料(実施例16〜18)の一部は、ペーストA組成物の樹脂構成成分中に容易に分散可能であった(表4C参照)。本明細書に記載の粒径分析装置試験方法による平均粒径に従い、実施例16の最適化されたアトライターミル粉砕された懸濁液について粒径分析を実施し、0.2マイクロメートルであると計算された。
【0175】
【表6】

【0176】
評価および結果−オキシフルオライド材料
オキシフルオライド材料硬化効率の評価
粉砕および篩い分け工程なしでオキシフルオライドフィラー材料(実施例3、7、および11)を調製し、試験樹脂と組み合わせ、本明細書に記載の試験方法に従って硬化効率を評価した。結果を表3Aに記載し、従来のガラスフィラー(比較例CE−1〜CE−3)の硬化結果と比較する。4つの数字の組は、1時間後、1日後、2日後、および3日後の定性的な硬化の程度(0〜5の尺度に基づく、試験方法参照)に関する硬化効率を表す。
【0177】
【表7】

【0178】
同様に、粉砕および篩い分け(150メッシュ)をして実施例3の追加のオキシフルオライドフィラー材料を調製し、前述の段落に記載されている硬化効率を評価をした。粉砕および篩い分けをして調製した実施例3の結果と実施例16〜18(最適化されたアトライターミルで粉砕された試料)の結果を表3Bに記載する。これらの試料では、4つの数字の組は、1時間後、3時間後、5時間後、および7時間後の定性的な硬化の程度(0〜5の尺度に基づく、試験方法参照)に関する硬化効率を表す。
【0179】
【表8】

【0180】
表3Aおよび表3Bのデータを比較すると、粉砕および篩い分けをして調製された実施例3では、粉砕および篩い分けなしの実施例3と比較して硬化時間が激減したことが分かる。前者は、わずか20%の充填量(1:4の比)の時、1〜4時間で顕著な硬化を示したが、後者は完全に硬化するのに3日かかった。実施例16〜18(ミル粉砕された試料)も3時間で完全に硬化した。粉砕および篩い分けをして調製された実施例3の完全な硬化は、33%の充填量(1:2の比)では1時間で観察されるが、それに対して粉砕および篩い分けなしの実施例3は、1日である。
【0181】
従って、表3Aと表3Bのデータを比較すると、沈殿した酸反応性オキシフルオライドフィラー材料(粉砕またはミル粉砕後)は、粉砕またはミル粉砕されなかった従来の溶融加工されたガラスフィラーまたはオキシフルオライド材料と比較して高い硬化効率を有することが分かる。従って、表面積の大きいフィラーによって付与される高い硬化効率を得るには、少なくともある程度の分散を必要とすることが結論付けられる。オキシフルオライド材料の粗い熱処理された顆粒は、従来のガラスに類似の硬化効率を示した。粗い顆粒(即ち、集合体)を単に粉砕して篩い分け(150メッシュ)するだけで、酸反応性オキシフルオライドフィラー材料の硬化効率が著しく向上した。(Alの替わりに)Laカチオン若しくはYカチオン、または(Srの替わりに)Caカチオンを有するミル粉砕された酸反応性オキシフルオライドフィラー材料も高い硬化効率を示す。
【0182】
実施例19
二剤型組成物
第1のペースト組成物(ペーストA1〜A20)
実施例13に記載したように酸反応性オキシフルオライドフィラー材料を調製した。得られた50重量%の水を含む粘土状の材料を、後述の第1のペースト組成物A1〜A5に配合した。
【0183】
また、実施例14Aに記載したように酸反応性オキシフルオライドフィラー材料を調製した。得られた50重量%の水を含む粘土状の材料を、後述の第1のペースト組成物A6〜A13に配合した。
【0184】
また、実施例14Bに記載したように酸反応性オキシフルオライドフィラー材料を調製した。得られた50重量%の水を含む粘土状の材料を、後述の第1のペースト組成物A14〜A15、A17〜A18、およびA20に配合した。同様に、実施例15のフィラー材料を調製して第1のペースト組成物A16に配合し、実施例16のフィラー材料を調製して第1のペースト組成物A19に配合した。
【0185】
表4A、4B、および4Cに列挙されている成分(重量部として示されている)を組み合わせることにより、第1のペースト組成物(ペーストA1〜A20)を調製した。正確な量のHEMA、DMAPEおよびATUの重量を測定した後、30秒間高速混合するにより、組成物を調製した。次に、次の成分CPQおよびEDMABを添加し、続いて30秒間高速混合した。次に、PEGDMAを添加し、30秒間高速混合した。この時、ナノサイズの酸反応性フィラー(実施例1)およびDI水(実施例13〜16に記載したように、「粘土」状に一緒に処理される)を添加した。得られた混合物を手動で混合し、均質になるまで高速混合した。最後の工程では、任意選択的な非酸反応性フィラー構成成分(例えば、フィラーA〜フィラーD)を添加し、更に1分、またはペーストが均質になるまで高速混合した。ペーストA1〜A5の組成を表4Aに記載し、ペーストA6〜A13の組成を表4Bに記載し、ペーストA14〜A20の組成を表4Cに記載する。
【0186】
【表9】

【0187】
【表10】

【0188】
【表11】

【0189】
第2のペースト組成物(ペーストB1〜B21)
表5A、5Bおよび5Cに列挙される成分(重量部で示される)を組み合わせることにより、第2のペースト組成物(ペーストB1〜B21)を調製した。HEMA中にVBCPを溶解させた後、DPIPF6を添加し、30秒間高速攪拌することにより調製した。ペースト組成物B1〜B4では、Di−HEMA−P、GDMA/Bis−GMA(一緒に予備混合される)、およびエベクリル(Ebecryl)1830を添加し、続いて60秒間高速攪拌した。ペースト組成物B5〜B21では、Di−HEMA−P、BisGMA/UDMA/TEGDMA/BisEMA6(一緒に予備混合される)、およびエベクリル(Ebecryl)1830を添加し、続いて60秒間高速攪拌した。次に、KPSを添加し、続いて60秒間高速攪拌した。次いで、ペーストを30秒間高速攪拌した。最後の工程では、任意選択的な非反応性フィラー構成成分(例えば、フィラーA〜フィラーC)を添加し、更に1分、またはペーストが均質になるまで高速混合する。ペーストB1〜B5の組成物を表5Aに記載し、ペーストB6〜B14の組成物を表5Bに記載し、ペーストB15〜B21の組成物を表5Cに記載する。
【0190】
【表12】

【0191】
【表13】

【0192】
【表14】

【0193】
評価および結果―ペースト−ペースト組成物
硬化したペースト−ペースト組成物の評価
一定の重量の新しく調製された第1のペースト組成物(ペーストA)を、一定の重量の新しく調製された第2のペースト組成物(ペーストB)と一緒に25秒間スパチュラで混練することによって、ペースト−ペースト組み合わせ組成物を調製した。得られた組成物を試験試料と称し、本明細書に記載の試験方法に従い、以下の試験:圧縮強度(CS)、直径強度(DTS)、曲げ強度(FS)、象牙質に対する接着(DA)、エナメル質に対する接着(EA)、視感不透過性(VO)、X線不透過性(RO)、滑沢性保持、およびフッ化物放出の1つ以上について評価した。使用されるペーストの量およびその後の試験結果を表6A(実験1〜8)、表6B(実験9〜19)および表6C(実験20〜26)、並びに表に続く本文中に報告する。
【0194】
【表15】

【0195】
【表16】

【0196】
【表17】

【0197】
表6A〜表6Cに記載されているデータから、本発明の酸反応性オキシフルオライドフィラー材料を含有する硬化したペースト−ペースト組成物は、高い機械的強度(CS値、DTS値およびFS値が高いことによって証明される)と、良好〜優れた視覚的審美性(視感不透過性の値が低いことによって証明される)を示すことが分かる。
【0198】
表6B〜表6Cに記載されているデータから、ナノサイズのジルコニアフィラーを酸反応性オキシフルオライドフィラー材料と組み合わせて使用すると、視覚的審美性を失うことなく良好なX線不透過性を有する硬化した組成物が得られることが分かる。
【0199】
硬化した組成物のうちの2つについてフッ化物放出を測定し、実験17では29日後に1,100μgF/g、180日後に1,992μgF/gであり、実験19では29日後に745μgF/gであることが分かった。
【0200】
硬化した組成物(実験23)の1つについて滑沢性保持を測定し、歯磨き2000ストローク後に80%より大きいことが分かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシフルオライド材料を含む組成物であって、
前記オキシフルオライド材料が、酸反応性、非溶融であり、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含み、
前記組成物が歯科用フィラーである、
組成物。
【請求項2】
前記3価金属が、アルミニウム、ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
オキシフルオライド材料を含む組成物であって、
前記オキシフルオライド材料が、酸反応性、非溶融であり、アルミニウム、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含み、
前記組成物が歯科用フィラーである、
組成物。
【請求項4】
前記オキシフルオライド材料の少なくとも90重量%がナノ構造化されている、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
前記オキシフルオライド材料の少なくとも90重量%がナノ粒子の形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記ナノ粒子が凝集していない、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記ナノ粒子が凝集している、請求項5に記載の組成物。
【請求項8】
前記ナノ粒子の平均サイズが100ナノメートル以下である、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記オキシフルオライド材料が粒子上のコーティングの形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項10】
前記粒子がナノ粒子である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記粒子が金属酸化物を含む、請求項9に記載の組成物。
【請求項12】
前記金属酸化物がシリカである、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
前記オキシフルオライド材料が粒子凝集体上のコーティングの形態である、請求項4に記載の組成物。
【請求項14】
前記粒子がナノ粒子を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記粒子が金属酸化物を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
前記金属酸化物がシリカである、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記オキシフルオライド材料が多孔質構造体中に含浸されている、請求項4に記載の組成物。
【請求項18】
前記多孔質構造体が多孔質粒子を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記多孔質粒子が金属酸化物を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記金属酸化物がシリカである、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記多孔質構造体が多孔質の粒子凝集体を含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項22】
前記粒子がナノ粒子である、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記粒子が金属酸化物を含む、請求項21に記載の組成物。
【請求項24】
前記金属酸化物がシリカである、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記多孔質構造体が多孔質コーティングを含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項26】
前記オキシフルオライド材料がケイ素を更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項27】
前記オキシフルオライド材料が重金属を更に含む、請求項3に記載の組成物。
【請求項28】
前記重金属がジルコニウムである、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
前記オキシフルオライド材料中のアルミニウム対アルカリ土類金属のモル比が、少なくとも50:50、且つ95:5以下である、請求項3に記載の組成物。
【請求項30】
前記オキシフルオライド材料中の酸素対フッ素のモル比が、少なくとも50:50、且つ95:5以下である、請求項3に記載の組成物。
【請求項31】
前記アルカリ土類金属が、ストロンチウム、カルシウム、バリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項3に記載の組成物。
【請求項32】
オキシフルオライド材料を含む組成物であって、
前記オキシフルオライド材料が、酸反応性であり、3価金属、酸素、フッ素、およびアルカリ土類金属を含み、但し、前記オキシフルオライド材料は、ケイ素、前記3価金属、前記アルカリ土類金属、および更なる任意のカチオンの総モル数を基準にして、ケイ素を25モル%以下含むことを条件とし、
前記材料が歯科用フィラーである、
組成物。
【請求項33】
前記3価金属が、アルミニウム、ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
前記3価金属がアルミニウムである、請求項32に記載の組成物。
【請求項35】
前記オキシフルオライド材料が、ケイ素、アルミニウム、および前記アルカリ土類金属の総モル数を基準にして、ケイ素を20モル%以下含むことを条件とする、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
3価金属の供給源およびアルカリ土類金属の供給源を含む第1の液体組成物を、フッ素の供給源を含む第2の液体組成物と組み合わせて、酸反応性オキシフルオライド材料を提供する工程であって、前記オキシフルオライド材料が、前記3価金属、酸素、フッ素、および前記アルカリ土類金属を含む工程、および
前記組み合わせられた液体組成物から前記オキシフルオライド材料を分離し、歯科用フィラーを提供する工程、
を含む方法で調製される歯科用フィラー。
【請求項37】
前記3価金属が、アルミニウム、ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項36に記載の歯科用フィラー。
【請求項38】
前記3価金属がアルミニウムである、請求項36に記載の歯科用フィラー。
【請求項39】
3価金属の供給源およびアルカリ土類金属の供給源を含む第1の液体組成物を、フッ素の供給源を含む第2の液体組成物と組み合わせて、酸反応性オキシフルオライド材料を提供する工程であって、前記オキシフルオライド材料が、前記3価金属、酸素、フッ素、および前記アルカリ土類金属を含む工程、および
前記組み合わせられた液体組成物から前記オキシフルオライド材料を分離し、歯科用フィラーを提供する工程、
を含む、歯科用フィラーの調製方法。
【請求項40】
前記3価金属が、アルミニウム、ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
アルミニウムの供給源およびアルカリ土類金属の供給源を含む第1の液体組成物を、フッ素の供給源を含む第2の液体組成物と組み合わせて、酸反応性オキシフルオライド材料を提供する工程であって、前記オキシフルオライド材料が、アルミニウム、酸素、フッ素、および前記アルカリ土類金属を含む工程、および
前記組み合わせられた液体組成物から前記オキシフルオライド材料を分離し、歯科用フィラーを提供する工程、
を含む、歯科用フィラーの調製方法。
【請求項42】
前記オキシフルオライド材料がナノ構造化されている、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記液体組成物の少なくとも1つが、酸素の供給源として水酸化物の供給源を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
前記水酸化物の供給源が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記液体組成物の少なくとも1つは、pHが7より大きい水性組成物である、請求項41に記載の方法。
【請求項46】
前記分離されたオキシフルオライド材料を350℃以下の温度で乾燥させる工程を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
乾燥させる工程が250℃以下の温度である、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
乾燥させる工程が150℃以下の温度である、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
組み合わせる工程が、沈殿物、粒子上のコーティング、粒子凝集体上のコーティング、多孔質構造体中に含浸された材料、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される形態のオキシフルオライド材料を提供する、請求項41に記載の方法。
【請求項50】
前記オキシフルオライド材料を分離する工程が、前記オキシフルオライド材料を濾過することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項51】
前記アルミニウムの供給源が、硝酸アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、カルボン酸アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、ハロゲン化アルミニウムおよびその塩基性塩またはオキシ塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項52】
前記アルミニウムの供給源がアルミニウムアルコキシドを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項53】
前記アルミニウムアルコキシドが、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記フッ素の供給源が、フッ化アンモニウム、二フッ化水素アンモニウム、ヘキサフルオロケイ酸およびその塩、並びにこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の方法。
【請求項55】
前記アルカリ土類金属の供給源が、硝酸ストロンチウム、カルボン酸ストロンチウム、ハロゲン化ストロンチウム、硝酸カルシウム、カルボン酸カルシウム、ハロゲン化カルシウム、およびこれらの組み合わせを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項56】
前記第2の液体組成物が、ケイ素の供給源を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項57】
前記ケイ素の供給源が、ケイ酸ナトリウム、ヘキサフルオロケイ酸およびその塩、シリコンアルコキシド、並びにこれらの組み合わせを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記第1の液体組成物と第2の液体組成物の少なくとも1つが水を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項59】
前記分離されたオキシフルオライド材料を液体媒体中に分散させる工程を更に含む、請求項41に記載の方法。
【請求項60】
前記液体媒体が水を含む、請求項59に記載の方法。
【請求項61】
前記分散されたオキシフルオライド材料を粒子上にコーティングする工程、前記分散されたオキシフルオライド材料を粒子凝集体上にコーティングする工程、前記分散されたオキシフルオライド材料を多孔質構造体中に含浸させる工程、またはこれらの組み合わせを更に含む、請求項59に記載の方法。
【請求項62】
多孔質構造体を提供する工程、
3価金属の供給源およびアルカリ土類金属の供給源を含む第1の液体組成物を前記多孔質構造体中に含浸させる工程、および
フッ素の供給源を含む第2の液体組成物を前記多孔質構造体中に含浸させ、酸反応性オキシフルオライド材料を含浸させた多孔質構造体を提供する工程であって、前記酸反応性オキシフルオライド材料が前記3価金属、酸素、フッ素、および前記アルカリ土類金属を含む工程、
を含む、歯科用フィラーの調製方法。
【請求項63】
前記3価金属が、アルミニウム、ランタン、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
多孔質構造体を提供する工程、
アルミニウムの供給源およびアルカリ土類金属の供給源を含む第1の液体組成物を前記多孔質構造体中に含浸させる工程、および
フッ素の供給源を含む第2の液体組成物を前記多孔質構造体中に含浸させ、酸反応性オキシフルオライド材料を含浸させた多孔質構造体を提供する工程であって、前記酸反応性オキシフルオライド材料がアルミニウム、酸素、フッ素、および前記アルカリ土類金属を含む工程、
を含む、歯科用フィラーの調製方法。
【請求項65】
前記酸反応性オキシフルオライド材料を含浸させた多孔質構造体を350℃以下の温度で乾燥させる工程を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記第1の液体組成物を含浸させる工程が、前記第2の液体組成物を含浸させる工程の前に実施される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
前記第1の液体組成物を含浸させる工程が、前記第2の液体組成物を含浸させる工程の後に実施される、請求項64に記載の方法。
【請求項68】
前記第2の液体組成物が、水酸化アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される構成成分を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項69】
前記第2の液体組成物がケイ素の供給源を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項70】
前記第1の液体組成物と前記第2の液体組成物の少なくとも1つが、水を更に含む、請求項64に記載の方法。
【請求項71】
前記多孔質構造体が、多孔質粒子、多孔質の粒子凝集体、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項72】
硬化性樹脂および請求項1に記載の歯科用フィラーを含む、歯科用組成物。
【請求項73】
硬化性樹脂および請求項3に記載の歯科用フィラーを含む、歯科用組成物。
【請求項74】
前記硬化性樹脂が重合性エチレン性不飽和化合物を含む、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項75】
前記硬化性樹脂が酸を更に含む、請求項74に記載の歯科用組成物。
【請求項76】
前記組成物が一剤型歯科用組成物の形態である、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項77】
前記組成物が多剤型歯科用組成物の形態である、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項78】
前記多剤型組成物が第1剤と第2剤を含み、各剤が独立して、液体、ペースト、ゲルまたは粉末からなる群から選択される、請求項77に記載の歯科用組成物。
【請求項79】
前記多剤型組成物が、ペースト−ペースト組成物、ペースト−液体組成物、ペースト−粉末組成物、および粉末−液体組成物からなる群から選択される、請求項77に記載の歯科用組成物。
【請求項80】
前記組成物が、歯科用接着剤、キャビティライナー、セメント、コーティング、歯科矯正用接着剤、修復材、シーラント、およびこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項81】
前記オキシフルオライド材料の少なくとも90重量%がナノ構造化されている、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項82】
非酸反応性フィラーを更に含む、請求項81に記載の歯科用組成物。
【請求項83】
前記歯科用組成物中の全フィラーの少なくとも75重量%が、ナノフィラーである、請求項82に記載の歯科用組成物。
【請求項84】
前記歯科用組成物中の全フィラーの少なくとも90重量%が、ナノフィラーである、請求項82に記載の歯科用組成物。
【請求項85】
前記組成物がペーストの形態である、請求項73に記載の歯科用組成物。
【請求項86】
硬化性樹脂および請求項32に記載の歯科用フィラーを含む、歯科用組成物。
【請求項87】
前記組成物がペーストの形態である、請求項86に記載の歯科用組成物。
【請求項88】
請求項1に記載の歯科用フィラーを15重量%以下含む歯科用組成物であって、但し、前記歯科用フィラーが前記歯科用組成物1グラム当たり少なくとも2平方メートルの表面積を提供することを条件とする、歯科用組成物。
【請求項89】
歯科用組成物の総重量を基準にして、請求項1に記載の歯科用フィラーを10重量%以下、および
歯科用組成物の総重量を基準にして、更なるフィラーを少なくとも40重量%、
含む歯科用組成物。
【請求項90】
請求項1に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせる工程を含む、歯科用組成物の調製方法。
【請求項91】
請求項3に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせる工程を含む、歯科用組成物の調製方法。
【請求項92】
請求項32に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせる工程を含む、歯科用組成物の調製方法。
【請求項93】
請求項1に記載の歯科用フィラー、
ポリ酸、および
水、
を含む、歯科用組成物。
【請求項94】
請求項3に記載の歯科用フィラー、
ポリ酸、および
水、
を含む、歯科用組成物。
【請求項95】
請求項1に記載の歯科用フィラーを含むA剤、および
ポリ酸を含むB剤、
を含む、多剤型歯科用組成物。
【請求項96】
請求項3に記載の歯科用フィラーを含むA剤、および
ポリ酸を含むB剤、
を含む、多剤型歯科用組成物。
【請求項97】
前記オキシフルオライド材料の少なくとも90重量%がナノ構造化されている、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項98】
A剤またはB剤の少なくとも1つが、更なる酸反応性フィラーを更に含む、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項99】
A剤またはB剤の少なくとも1つが、液体またはペーストの形態である、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項100】
A剤とB剤が単位用量カプセルで提供される、請求項99に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項101】
A剤とB剤がそれぞれ独立して液体またはペーストの形態である、請求項99に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項102】
第1のバレルと第2のバレルを有するデュアルバレルシリンジを更に含み、前記A剤が前記第1のバレル内に存在し、前記B剤が前記第2のバレル内に存在する、請求項101に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項103】
A剤とB剤がスタチックミキサ内で混合され得る、請求項101に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項104】
A剤またはB剤の少なくとも1つに水が更に存在する、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項105】
A剤またはB剤の少なくとも1つに重合性構成成分が更に存在する、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項106】
前記ポリ酸と前記重合性構成成分が同じである、請求項105に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項107】
前記ポリ酸と前記重合性構成成分が異なる、請求項105に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項108】
A剤またはB剤の少なくとも1つに非酸反応性歯科用フィラーが更に存在する、請求項96に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項109】
前記非酸反応性歯科用フィラーの少なくとも90重量%がナノ粒子の形態である、請求項108に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項110】
前記非酸反応性歯科用フィラーが金属酸化物を含む、請求項108に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項111】
前記金属酸化物がシリカである、請求項110に記載の多剤型歯科用組成物。
【請求項112】
請求項32に記載の酸反応性歯科用フィラーを含むA剤、および
少なくとも1種類のポリ酸を含むB剤、
を含む多剤型歯科用組成物。
【請求項113】
一定量のA剤と一定量のB剤を混合し、歯科用組成物を形成する工程、および
前記歯科用組成物を表面に塗布する工程、
を含む、請求項95に記載の多剤型歯科用組成物の使用方法。
【請求項114】
請求項1に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせて歯科用組成物を形成する工程、および
前記組成物を硬化させ、歯冠、充填材、ミルブランク、歯科矯正装置および補綴物からなる群から選択される歯科用物品に加工する工程、
を含む歯科用物品の作製方法。
【請求項115】
請求項3に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせて歯科用組成物を形成する工程、および
前記組成物を硬化させ、歯冠、充填材、ミルブランク、歯科矯正装置および補綴物からなる群から選択される歯科用物品に加工する工程、
を含む歯科用物品の作製方法。
【請求項116】
請求項32に記載の歯科用フィラーと硬化性樹脂を組み合わせて歯科用組成物を形成する工程、および
前記組成物を硬化させ、歯冠、充填材、ミルブランク、歯科矯正装置および補綴物からなる群から選択される歯科用物品に加工する工程、
を含む歯科用物品の作製方法。

【公表番号】特表2007−538074(P2007−538074A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527217(P2007−527217)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【国際出願番号】PCT/US2005/010569
【国際公開番号】WO2005/117808
【国際公開日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】