説明

酸性水中油型乳化食品およびその製造方法

【課題】 酸性水中油型乳化食品において、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離を抑えた酸性水中油型乳化食品およびその製造方法を提供する。
【解決手段】 澱粉、およびゼラチンを含有する酸性水中油型乳化食品であって、当該澱粉が非糊化状態で分散されてなることを特徴とする酸性水中油型乳化食品。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離を抑えた酸性水中油型乳化食品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸性水中油型乳化食品とは、pHを4.6以下にすることで常温流通を可能にした乳化食品であり、代表的なものとして、マヨネーズ様食品などの半固体状ドレッシング、乳化液状ドレッシングなどが挙げられる。
【0003】
マヨネーズなどの酸性水中油型乳化食品は、サラダにかける、または野菜と和えるなどの用途が一般的であるが、近年その用途が拡大している。特に、パンとの相性は良く、ソーセージやコーンと一緒にマヨネーズをのせて焼成したパン、マヨネーズと野菜を挟んだサンドイッチなど、パンのメニュー拡充のためには欠かせない調味料となっている。
【0004】
しかしながら、従来のマヨネーズは、パンなどの食品に塗布し焼成した際、マヨネーズが分離し、マヨネーズの存在感が薄れるという問題があった。これらの問題を解決するため、少なくとも乳清蛋白質と卵白とを含む乳化剤を使用し、それぞれの配合量を特定範囲に規定した、耐熱性を有した水中油型乳化食品の製造方法が知られている(特許文献1)しかしながら、これらの水中油型乳化食品は、パンに塗布し焼成した際、分離はしないものの、水中油型乳化食品がパンから剥れやすいとの問題があった。
【0005】
また、パン等と共に焼成する酸性水中油型乳化食品として、食用油脂、卵黄、卵白、醸造酢、調味料等を主材とするマヨネーズ原料に、α化されていない小麦粉を添加し、攪拌して均一に混合したパン等と共に焼成するトッピング材が知られている(特許文献2)。しかしながら、これらのトッピング材は、パンに塗布し焼成した際、保存により油分離を起こしやすいとの問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平11−318354号公報
【特許文献2】特開2001−204375号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明の目的は、酸性水中油型乳化食品において、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離を抑えた酸性水中油型乳化食品およびその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は、上記目的を達成すべく酸性水中油型乳化食品に使用されている様々な配合原料、及び製造工程について鋭意研究を重ねた。その結果、澱粉、およびゼラチンを配合し、当該澱粉が非糊化状態で分散されてなる酸性水中油型乳化食品は、意外にも食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離が抑えられることを見出し本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
(1)澱粉、およびゼラチンを含有する酸性水中油型乳化食品であって、前記澱粉が非糊化状態で分散されてなる酸性水中油型乳化食品、
(2)ゼラチンが加熱溶解性を有するゼラチンである(1)の酸性水中油型乳化食品、
(3)ゼラチンが非溶解状態で分散されてなる(1)または(2)の酸性水中油型乳化食品、
(4)澱粉の配合量が製品に対し0.1〜3%である(1)乃至(3)のいずれかの酸性水中油型乳化食品、
(5)ゼラチンの配合量が製品に対し0.1〜3%である(1)乃至(4)のいずれかの酸性水中油型乳化食品、
(6)澱粉、およびゼラチンを含有する酸性水中油型乳化食品の製造方法であって、製造工程において前記澱粉、またはゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく製造する酸性水中油型乳化食品の製造方法、
である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、酸性水中油型乳化食品において、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離を抑えた酸性水中油型乳化食品およびその製造方法を提供することが出来る。したがって、酸性水中油型乳化食品を焼成して使用するパンなどの食品において、酸性水中油型乳化食品の剥れによる商品価値の低下を防ぐことができ、酸性水中油型乳化食品の更なる需要拡大が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0012】
本発明において酸性水中油型乳化食品とは、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が維持され、pHを4.6以下に調整した酸性乳化食品である。例えば、マヨネーズ様食品、酸性乳化液状ドレッシング、具材入り酸性乳化液状食品などが挙げられる。
【0013】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、澱粉を含有し、当該澱粉が非糊化状態で分散されてなることを特徴とし、これにより酸性水中油型乳化食品は、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れが抑えられたものとなる。一方、あらかじめ糊化した澱粉を用いた酸性水中油型乳化食品、または、非糊化状態の澱粉を用いた場合であっても、加熱により澱粉が糊化した状態で分散されてなる酸性水中油型乳化食品は、食品に塗布し焼成した際、食品から剥れやすいものとなるためである。
【0014】
本発明で用いる澱粉としては、食用として供されるものであれば特に限定するものではないが、例えば、市販の馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、これらの澱粉を架橋などの処理を施した加工澱粉、澱粉分解物などが挙げられ、本発明ではこれらの1種または2種以上を用いるとよい。
【0015】
また、本発明において非糊化状態とは、澱粉の一部または全部が糊化していない状態のことをいい、この状態の澱粉が略均一に分散していることをいう。このように澱粉を非糊化状態で略均一に分散させるためには、酸性水中油型乳化食品の製造工程において、澱粉を60℃以上の温度で加熱することなく製造することが必要となる。
【0016】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、前述した澱粉に加え、ゼラチンを使用することを特徴とする。これにより酸性水中油型乳化食品は、食品に塗布し焼成した後の食品からの剥れと保存時の油分離が抑えられたものとなる。
【0017】
ゼラチンは、動物の皮膚や骨などの結合組織の主成分であるコラーゲンを加熱し、抽出したものであり、蛋白質を主成分とする混合物ある。本発明で用いるゼラチンとしては、食用として供されるものであれば特に限定するものではないが、例えば、市販のブタゼラチン、ウシゼラチン、または魚ゼラチンなどが挙げられ、本発明ではこれらの1種または2種以上を用いるとよい。
【0018】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品に配合されるゼラチンは加熱溶解性を有するものであることが好ましい。常温溶解性のゼラチンを用いた酸性水中油型乳化食品に比べ、焼成時の剥れ防止効果と保存時の油分離抑制効果が得られ易いためである。本発明において加熱溶解性のゼラチンとは、常温(15〜25℃)で水と混同攪拌しても、その一部または全部が溶解しない性質を有するゼラチンのことをいい、当該性質を有するものであれば特に限定するものではない。具体的には、溶解温度が40℃以下に規定されている常温溶解性のゼラチン以外のゼラチンを用いればよい。
【0019】
さらに、本発明の酸性水中油型乳化食品に配合されるゼラチンは非溶解状態で分散されてなることが好ましい。加熱溶解性のゼラチンを加熱により溶解して用いた酸性水中油型乳化食品は、焼成時の剥れ防止効果と保存時の油分離抑制効果が得難い傾向となるためである。本発明において非溶解状態とは、ゼラチンの一部または全部が水に溶解せず、この状態のゼラチンが酸性水中油型乳化食品中に略均一に分散していることをいう。このように加熱溶解性を有するゼラチンを非溶解状態で略均一に分散させるためには、酸性水中油型乳化食品の製造工程において、ゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく製造することが必要となる。
【0020】
酸性水中油型乳化食品に対する澱粉の含有量は、製品に対し0.1〜3%が好ましく、0.3〜3%がより好ましい。澱粉の含有量が、前記値より少ないと、たとえゼラチンを併用したとしても、酸性水中油型乳化食品の焼成後の剥れ防止効果が得難い傾向となり好ましくない。また、澱粉の含有量が前記値より多くても、含有量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
【0021】
酸性水中油型乳化食品に対するゼラチンの含有量は、製品に対し0.1〜3%が好ましく、0.3〜3%がより好ましい。ゼラチンの含有量が、前記値より少ないと、たとえ前述した澱粉を併用したとしても、酸性水中油型乳化食品の焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果が得難い傾向となり好ましくない。また、ゼラチンの含有量が前記値より多くても、含有量に応じた効果が期待し難く経済的でない。
【0022】
本発明の酸性水中油型乳化食品の粘度は、本発明の焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果を奏し易いものとするため、品温5℃のときの測定値で、50〜500Pa・sが好ましく、100〜400Pa・sがより好ましい。なお、粘度は、BH形粘度計を用いローター:No.6、回転数:2rpmの条件で測定し、2回転後の示度により算出した値である。
【0023】
本発明の酸性水中油型乳化食品は、上述の澱粉、ゼラチンを配合する他に、本発明の効果を損なわない範囲で酸性水中油型乳化食品に通常用いられている各種原料を適宜選択し含有させることができる。例えば、菜種油、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、大豆油、パーム油、魚油、卵黄油などの動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリドなどのように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂などの食用油脂、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム、アラビアガム、サイリュームシードガムなどのガム質、デキストリン、デキストリンアルコール、オリゴ糖、オリゴ糖アルコールなどの糖類、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁などの酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖などの各種調味料、卵黄、全卵、液卵白、レシチン、リゾレシチン、ラクトアルブミン、カゼインナトリウム、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉などの乳化材、アスコルビン酸又はその塩、ビタミンEなどの酸化防止剤、各種エキス、からし粉、胡椒などの香辛料、各種蛋白質やこれらの分解物、ダイス状のゆで卵、きゅうりのピクルス、タマネギ、パセリなどのみじん切りにした野菜などが挙げられる。
【0024】
本発明の酸性水中油型乳化食品の製造方法は、製造工程において澱粉、またはゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく、好ましくは50℃以上の温度で加熱することなく製造することを特徴とする。製造工程のいずれかの段階で澱粉、またはゼラチンが前記値よりも高い温度で加熱されると、澱粉が糊化状態に、またゼラチンが溶解状態になりやすくなるなり、酸性水中油型乳化食品の焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果が得難いためである。
【0025】
また、本発明の酸性水中油型乳化食品の製造方法は、上述の澱粉、およびゼラチンを配合し、製造工程において澱粉、またはゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく製造すること以外は、酸性水中油型乳化食品の常法に則り製造すればよく、例えば、上述の澱粉、及びゼラチンを含む水相原料を均一に混合し、ミキサー等で攪拌させながら、油相原料を注加して粗乳化し、次にコロイドミル、高圧ホモゲナイザーなどで仕上げ乳化をした後、ボトル容器やガラス容器などに充填密封する方法などにより製造すればよい。
【0026】
以下、本発明の酸性水中油型乳化食品について、実施例、比較例、及び試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0027】
[実施例1]
<マヨネーズ様食品の製造方法>
下記に示す配合割合でマヨネーズ様食品を製した。つまり、食酢、生卵黄、食塩、澱粉、ゼラチン(加熱溶解性)、グルタミン酸ソーダ、清水をミキサーに入れ、攪拌混合し、水相部を調製した。次いで、水相部を攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化し、更に高速で攪拌して仕上げ乳化を施した。次に、得られた乳化物を容量300gの三層のラミネート容器に充填することにより本発明品のマヨネーズ様食品を製した。なお、得られたマヨネーズ様食品は、製品に対し澱粉を1%、ゼラチンを1%含有するものであり、澱粉が非糊化状態で分散されているものである。また、得られたマヨネーズ様食品の粘度は140Pa・sであった。
【0028】
<マヨネーズ様食品の配合割合>
(油相)
植物油 40%
(水相)
食酢(酸度10%) 10%
生卵黄 10%
食塩 3%
澱粉 1%
ゼラチン(加熱溶解性) 1%
グルタミン酸ソーダ 0.3%
清水 残余
―――――――――――――――――――――――
合計 100%
【0029】
得られたマヨネーズ様食品を食パンに塗布し、オーブンで焼成(200℃、10分間)したところ、焼成後のマヨネーズ様食品はパンから剥れにくいものであった。また、得られたマヨネーズ様食品を冷蔵(5℃)で3ヶ月保存し、保存後のマヨネーズ様食品を目視で観察したところ、油分離は確認されなかった。
【0030】
[比較例1]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、配合原料の澱粉を糊化澱粉に置き換えた以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は210Pa・sであった。
【0031】
得られたマヨネーズ様食品を実施例1と同様の方法で焼成したところ、マヨネーズ様食品はパンから剥れやすかった。
【0032】
[比較例2]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、澱粉と清水を混合し、60℃まで加熱することで、澱粉を十分に糊化させた後、他の水相原料を混合した以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は240Pa・sであった。
【0033】
得られたマヨネーズ様食品を実施例1と同様の方法で焼成したところ、マヨネーズ様食品はパンから剥れやすかった。
【0034】
[実施例2]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、配合原料のゼラチン(加熱溶解性)をゼラチン(常温溶解性)に置き換えた以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は190Pa・sであった。
【0035】
[実施例3]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、調製した水相部を45℃まで加熱した後、水相部を攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化した以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は160Pa・sであった。
【0036】
[実施例4]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、調製した水相部を55℃まで加熱した後、水相部を攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化した以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は190Pa・sであった。
【0037】
[比較例3]
実施例1のマヨネーズ様食品の調製において、調製した水相部を60℃まで加熱した後、水相部を攪拌しながら植物油を徐々に添加して粗乳化した以外は実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。得られたマヨネーズ様食品の粘度は220Pa・sであった。
【0038】
[試験例1]
酸性水中油型乳化食品に用いるゼラチンの種類、及び酸性水中油型乳化食品の製造工程における加熱処理の有無、および加熱温度による、酸性水中油型乳化食品の焼成後の剥れやすさ、および保存時の油分離への影響を調べた。具体的には、実施例1乃至4、および比較例3で得られたマヨネーズ様食品を実施例1と同様の方法で焼成し、焼成後のマヨネーズ様食品の剥れやすさを下記の評価基準で評価した。また、得られたマヨネーズ様食品を15℃で3週間保存し、目視で観察することで、保存時のマヨネーズ様食品の油分離を下記の評価基準で評価した。なお、本発明において、15℃で1週間の保存は、冷蔵(5℃)で1ヶ月間の保存に相当する。
【0039】
「焼成後のマヨネーズ様食品の剥れやすさ」の評価
ランク:基準
○:マヨネーズ様食品がパンから剥れにくい。
△:マヨネーズ様食品がややパンから剥れやすいが問題のない程度である。
×:マヨネーズ様食品がパンから剥れやすい。
【0040】
「保存時のマヨネーズ様食品の油分離」の評価
ランク:基準
○:マヨネーズ様食品が油分離していない。
△:マヨネーズ様食品がやや油分離しているが問題のない程度である。
×:マヨネーズ様食品が油分離している。
【0041】
【表1】

【0042】
表1より、ゼラチン(加熱溶解性)に代えて、ゼラチン(常温溶解性)を用いたマヨネーズ様食品(実施例2)、およびマヨネーズ様食品の製造工程においてゼラチン(加熱溶解性)に55℃の加熱がされたマヨネーズ様食品(実施例4)は、焼成後のマヨネーズ様食品がやや剥れやすく、また、保存によって、やや油分離していた。また、ゼラチン(加熱溶解性)に60℃の加熱がされたマヨネーズ様食品(比較例3)は焼成後のマヨネーズ食品が剥れやすく、また、保存によって、油分離していた。このことにより、製造工程においてゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく製造された酸性水中油型乳化食品は、焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果に優れていることが理解される。また、加熱溶解性ゼラチンを用い、ゼラチンが非溶解状態で分散されてなる酸性水中油型乳化食品は、焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果により優れていることが理解される。
【0043】
[試験例2]
澱粉、およびゼラチンの含有量の違いによる、酸性水中油型乳化食品の焼成後の剥れやすさ、および保存時の油分離への影響を調べた。具体的には、実施例1において、澱粉、及びゼラチンの含有量を表3に示す割合に変更した以外は、実施例1と同様の方法でマヨネーズ様食品を製した。次いで、得られたマヨネーズ様食品を実施例1と同様の方法で焼成し、焼成後のマヨネーズ様食品の剥れやすさを評価した。また、得られたマヨネーズ様食品を15℃で3週間保存し、目視で観察することで、保存時のマヨネーズ様食品の油分離を評価した。なお、焼成後のマヨネーズ様食品の剥れやすさ、および保存時のマヨネーズ様食品の油分離の評価基準は試験例1と同様とする。
【0044】
【表2】

【0045】
表2より、澱粉の含有量が、製品に対し0.1〜3%であり、かつゼラチンの含有量が、製品に対し0.1〜3%である酸性水中油型乳化食品(No.2〜4、No.7〜9)は、焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果において優れていることが理解され、特に、澱粉の含有量が、製品に対し0.3〜3%であり、かつゼラチンの含有量が、製品に対し0.3〜3%である酸性水中油型乳化食品(No.3、4、8、9)は、焼成後の剥れ防止効果、および保存時の油分離抑制効果において、より優れていることが理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
澱粉、およびゼラチンを含有する酸性水中油型乳化食品であって、前記澱粉が非糊化状態で分散されてなることを特徴とする酸性水中油型乳化食品。
【請求項2】
ゼラチンが加熱溶解性を有するゼラチンである請求項1記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項3】
ゼラチンが非溶解状態で分散されてなる請求項1または2に記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項4】
澱粉の配合量が製品に対し0.1〜3%である請求項1乃至3のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項5】
ゼラチンの配合量が製品に対し0.1〜3%である請求項1乃至4のいずれかに記載の酸性水中油型乳化食品。
【請求項6】
澱粉、およびゼラチンを含有する酸性水中油型乳化食品の製造方法であって、製造工程において前記澱粉、またはゼラチンを60℃以上の温度で加熱することなく製造することを特徴とする酸性水中油型乳化食品の製造方法。