説明

酸性液状調味料

【課題】ユズの香りが保管後においても安定な酸性液状調味料を提供する。
【解決手段】柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を4〜600部配合することを特徴とする酸性液状調味料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユズの香りが保管後においても安定な酸性液状調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポン酢等は、柑橘類の香りを添加する目的で、ユズ、スダチ、カボス、レモン、ダイダイ、オレンジ、グレープフルーツ等の柑橘オイルを配合している。特に、ユズの香りを有する酸性液状調味料は、ユズ特有のスッキリとした爽やかな香りが広く親しまれており、人気の高いものである。
【0003】
しかしながら、工業的に大量生産された酸性液状調味料と手作り品とは色々な面で大きく異なる。例えば、工業的に大量生産された酸性液状調味料は、殺菌を目的とする加熱処理が施され、製造から喫食するまでの保管期間が長いこと等が挙げられる。そのため、工業的に製する酸性液状調味料にユズを配合した場合、喫食時には配合したユズの香りを十分に感じられなくなってしまうという問題があった。
【0004】
柑橘の香りを保持した酸性液状調味料の製造方法として、例えば、特開2009−142194号公報(特許文献1)には、醤油、柑橘果汁といった調味料原料と共にチアミン化合物を配合した保存用容器入りの液体調味料の製造方法が記載されている。しかしながら、これらの方法では、食品添加物であるチアミン化合物自体の臭気が感じられる場合があり、柑橘の香りを十分に保持することはできず、消費者の要望を満足できるものではなかった。
【0005】
【特許文献1】特開2009−142194号公報
【0006】
そこで、本発明は、ユズの香りが保管後においても安定な酸性液状調味料を提供するものである。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、酸性液状調味料に、酢酸発酵させてなるユズ酢と柑橘オイルを特定比率で配合するならば、意外にも、ユズの香りが保管後においても安定となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、
(1)柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を4〜600部配合する酸性液状調味料、
(2)酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を1〜20%配合する(1)の酸性液状調味料、
である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ユズの香りを有した酸性液状調味料を提供できることから、更なる需要の拡大が期待される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下本発明を詳細に説明する。なお、本発明において「%」は「質量%」を意味する。
【0011】
本発明の酸性液状調味料は、柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を4〜600部配合することで、例えば加熱処理や数ヵ月の保管期間を経たとしてもユズの香りが保管後においても安定となることを特徴とする。
【0012】
ユズ酢は、広辞苑(第6版)によると、広義にはユズの果実を搾った汁を指す場合がある。本発明に用いるユズ酢とは、ユズ及びアルコールを原料として酢酸発酵させてなる醸造酢のことであり、本発明では、これを「酢酸発酵させてなるユズ酢」と呼ぶ。
【0013】
酢酸発酵に用いるユズ原料の形態は、特に限定されず、生、凍結解凍したもの、ペースト状のもの、ジュース状にしたもの等を用いることができる。また、これらのユズ原料には、必要に応じて、選別洗浄、剥皮、切断、微細化、破砕、粉砕、搾汁、濃縮、加熱等の処理を施すことでき、好ましくはユズ原料に由来する脂質をユズ酢全体の0.05〜1%、より好ましくは0.1〜0.3%に調整することで、発酵風味に優れたユズ酢が得られ、結果、ユズの香りが保管後においても安定な保管後においても安定となり好ましい。
【0014】
本発明のユズ酢に用いる酢酸発酵の方法としては、公知の酢酸発酵技術を用いることができる。例えば、静置発酵法、通気発酵法(深部発酵法とも呼ばれる)等の一般的な発酵方法を用いて行えばよい。
【0015】
ゆず酢の酢酸発酵に用いる酢酸菌としては、公知の酢酸菌を用いることができる。例えば、アセトバクター(Acetobacter)属に属する酢酸菌が良く、アセトバクター・パスツリアヌス(Acetobacter
pasteurianus)やアセトバクター・アセチ(Acetobacter
aceti)等が好ましい。
【0016】
本発明に用いる酢酸発酵させてなるユズ酢の配合量は、製品全体に対し、酢酸酸度5%換算で、好ましくは1〜30%、より好ましくは2〜10%である。酢酸発酵させてなるユズ酢の配合量が前記範囲より少ないと、柑橘オイルを併用したとしても、ユズの香りが保管後においても安定となり難い。前記範囲より多いと、酢酸発酵させてなるユズ酢中の酢酸に由来する酸味が強くなり過ぎ、ユズの香りが得られ難い。
【0017】
本発明に用いる柑橘オイルとは、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、ライム、キーライム、レモン、カボス、ベルガモット、マンダリン、タンジェリン等の柑橘の果皮から圧搾法や水蒸気蒸留法等の抽出方法により抽出したオイルであり、市販されているもの等いずれのものを用いてもよいが、特に、ユズ、レモンが好ましく、ユズがより好ましい。
【0018】
本発明に用いる柑橘オイルの配合量は、酢酸発酵させてなるユズ酢と併用した際に本発明の相乗効果を発揮すればよく、具体的には、0.001〜2%配合すればよい。
【0019】
本発明に用いる酢酸発酵させてなるユズ酢と柑橘オイルの配合比率は、柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)4〜600部であり、20〜280部が好ましい。ユズ酢の配合比率が前記範囲より少ないと、ユズの香りが保管後においても安定となり難い。前記範囲より多いと、酢酸発酵させてなるユズ酢中の酢酸に由来する酸味が強くなり過ぎ、ユズの香りが得られ難い。
【0020】
本発明の酸性液状調味料は、常温流通を可能ならしめるためにpH5以下に調整される。このような酸性液状調味料としては、例えば、食用油脂が油滴として水相中に略均一に分散して水中油型の乳化状態が維持されたマヨネーズ、マヨネーズ類、乳化ドレッシング等の酸性水中油型乳化液状調味料、あるいは水相部の上に柑橘オイルを含む油相部が積層された、いわゆるセパレートタイプの調味料である酸性分離液状調味料等が挙げられる。上記酸性液状調味料のうち、特に酸性分離液状調味料は、喫食時、柑橘オイルが油相部に局在するためユズの香りを感じ易く好ましい。
【0021】
本発明の酸性液状調味料に用いる食用油脂としては、食用として供されるものであればいずれのものでも良いが、風味のクセの少ない大豆油、菜種油を用いることが好ましく、大豆油がより好ましい。大豆油、菜種油以外には、例えば、コーン油、綿実油、サフラワー油、オリーブ油、紅花油、パーム油、ゴマ油、魚油、卵黄油等の動植物油及びこれらの精製油、並びにMCT(中鎖脂肪酸トリグリセリド)、ジグリセリド等のように化学的あるいは酵素的処理を施して得られる油脂等が挙げられる。
【0022】
また、酸性液状調味料に対する食用油脂の配合量は、特に限定されないが、製品に対し0.5〜80%が好ましく、2〜40%がより好ましい。食用油脂の配合量が前記範囲より少ないと、ユズの香りを奏さない場合がある。前記範囲より多いと、口当たりが重くなり、ユズの香りを十分に付与できない場合がある。
【0023】
本発明の酸性液状調味料には、上述した酢酸発酵させてなるユズ酢及び柑橘オイル以外に本発明の効果を損なわない範囲で各種原料を適宜選択し配合することができる。例えば、食酢、クエン酸、乳酸、レモン果汁等の酸味材、グルタミン酸ナトリウム、食塩、砂糖、みりん、醤油等の調味料、馬鈴薯澱粉、コーンスターチ、タピオカ澱粉、小麦澱粉、米澱粉、アルファ化澱粉、架橋処理澱粉及び湿熱処理澱粉等の澱粉類、キサンタンガム、タマリンドシードガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム等のガム類、卵黄、ホスホリパーゼA処理卵黄、全卵、卵白、レシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、オクテニルコハク酸化澱粉等の乳化材、動植物のエキス類、各種蛋白質、蛋白質分解物、芥子、胡椒等の香辛料、香料、保存等が挙げられる。
【0024】
また、本発明の酸性液状調味料の製造方法は、酢酸発酵させてなるユズ酢を食酢等の酸味材の一部あるいは全部として用い、柑橘オイルを特定比率配合する他は、常法に則り製造すれば良い。
【0025】
以下、本発明の酸性液状調味料について、実施例、比較例並びに試験例に基づき具体的に説明する。なお、本発明は、これらに限定するものではない。
【実施例】
【0026】
[実施例1]
下記表1の配合表に準じ、まず水相部原料、油相部原料をそれぞれ均一に混合した。そして、水相部を80℃、5分間加熱後、250mL容量のPET容器に168g充填し、さらに、残りの油相部である大豆油とレモンオイルの混合油72gを水相部に積層後、密栓し、本発明の酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を製した。得られた酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)は、品温25℃で3ヵ月保管後に下記評価基準に従い官能評価を行ったところ、ユズの香りが保管後においても安定していた。なお、得られた酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)は、柑橘オイル(レモンオイル)1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)100部を配合していた。
【0027】
[評価基準]
A:ユズの香りが、製造直後とほぼ同程度保持されている
B:ユズの香りが、僅かに減少しているが問題無い程度である
C:ユズの香りが、減少し製品の品位を損ねている
【0028】
[表1]

【0029】
[比較例1]
酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%)を抜き、エタノール酢(酢酸酸度5%)の配合量を26%に変更した以外は、実施例1に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製し、実施例1と同様に評価したところ、ユズの香りが保管後において劣化していた。
【0030】
[比較例2]
酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%)をユズ果汁に置換えた以外は、実施例1に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製し、実施例1と同様に評価したところ、ユズの香りが保管後においても劣化していた。
【0031】
[比較例3]
柑橘オイル(レモンオイル)を抜き大豆油に変更した以外は、実施例1に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製し、実施例1と同様に評価したところ、ユズの香りが保管後においても劣化していた。
【0032】
[試験例1]
酢酸発酵させてなるユズ酢と柑橘オイルの配合比率が、本発明に及ぼす影響を確認するため、表2の配合表に従って配合量を変更し、それ以外は実施例1に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製した。なお、酢酸発酵させてなるユズ酢の配合量の増減はエタノール酢で調整し、柑橘オイル(レモンオイル)の配合量の増減は大豆油で調整した。
【0033】
[表2]

【0034】
試験例1の結果、柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を4〜600部配合した場合、ユズの香りの経時的な安定性が確認され、特に、20〜280部配合した場合により高い効果が確認され好ましかった(No.2〜4)。一方、4部未満の場合又は600部を超える場合は、ユズの香りが、減少し製品の品位を損ねた(No.1、5)。
【0035】
[実施例2]
柑橘オイル(レモンオイル)を柑橘オイル(ユズオイル)に置き換えた以外は、実施例1に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製し、実施例1と同様に評価した。その結果、ユズの香りが実施例1より保管後においても安定となり好ましかった。
【0036】
[実施例3]
酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%、脂質0.3%)を酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%、脂質0.5%)に置換えた以外は、実施例2に準じて酸性液状調味料(酸性分離液状調味料)を調製し、実施例1と同様に評価した結果、ユズの香りが保管後においても安定となった。また、実施例2の方がより安定となり好ましかった。
【0037】
[実施例4]
下記表3の配合表に準じ、まず水相部の原料をミキサーで均一混合後、当該水相部を攪拌させながら大豆油とユズオイルの混合油を徐々に注加して粗乳化物を製した。次いで、得られた粗乳化物をコロイドミルで仕上げ乳化後、300mL容量の透明三層ラミネートの可撓性容器に300mLを充填密封し、酸性液状調味料(酸性水中油型乳化調味料)を製した。なお、得られた酸性液状調味料(酸性水中油型乳化調味料)は、柑橘オイル(ユズオイル)1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)33部を配合していた。
【0038】
[表3]

【0039】
得られた酸性液状調味料(酸性水中油型乳化調味料)は、実施例1と同様に評価したところ、ユズの香りが保管後においても安定となり好ましかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柑橘オイル1部に対し、酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を4〜600部配合することを特徴とする酸性液状調味料。
【請求項2】
酢酸発酵させてなるユズ酢(酢酸酸度5%換算)を1〜20%配合する請求項1記載の酸性液状調味料。