説明

酸素インジケーター

【課題】室温での使用に加え、高温滅菌処理のような、包装体が過酷な条件下で使用された場合でも、長期にわたり還元色の色調を維持可能な酸素インジケーターを安価に提供する。
【解決手段】基材に塗布された酸素インジケーター用インキの少なくとも片側に、耐熱性樹脂をコーティング剤として塗布、あるいは積層させ、また、耐熱性樹脂のコーティング剤が、環状オレフィンコポリマーまたは、環状オレフィンコポリマーとポリオレフィン樹脂とのブレンドポリマーを溶解させたコーティング剤であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、食品や医薬品を長期間保存するための酸素吸収剤による脱酸素状態が保持されていることを検知する酸素インジケーターに関する。さらに詳しくは、通常の室温使用に加え、高温下での長期間保存や滅菌処理時にも色素が内容物側へ溶出、あるいは色調異常となることのない酸素インジケーターに関する。
【背景技術】
【0002】
酸素はその反応性の高さから食品や医薬品を酸化し、製品の有効成分を変性、劣化させることが知られている。このため、多くの食品、医薬品は酸素吸収剤を包装体内に共存させることにより酸化を防止しているが、その際、酸素吸収剤の能力や包装体のピンホール、シール不良などによる酸素の進入を検知するために酸素インジケーターが包装体内に同時に投入されている。
【0003】
現在、酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂等の組み合わせを変えた何種類かの酸素インジケーターが上市されている。多くの酸素インジケーターは酸化還元色素が還元型と酸化型とで異なる色調を呈する性質を利用したものである。酸化還元色素に注目すると、特にメチレンブルーを用いたものが多く、このメチレンブルーを用いた酸素インジケーターは、脱酸素下では還元剤の働きによって還元型、すなわち無色を呈し、大気下では酸素により酸化され、青色を呈する。
【0004】
印刷型の酸素インジケーターは、メチレンブルーを含むチアジン系色素を酸化還元色素とした場合、色素そのものの染色性が強く、フィルムを透過して内容物側へ移行し、製品を汚染するといった問題を抱えている。また、内側だけでなく、酸素バリアフィルムの外側へも浸透することで、色素が酸素バリアのない部分にまで到達し、色調異常を引き起こす。これは、包装体を高温下で長期間保存、あるいは滅菌処理を施す場合に限らず、室温条件下で使用する場合も同様である。特に保存試験などの際、酸素バリアフィルムにストレスがかかり、その結果、バリア層にクラックが入るなどした場合にその傾向が著しい。
【0005】
内側への色素溶出は、低溶出シーラント:LLDPE/COC/LLDPEやPP/COC/PPを使用すれば、完全に防止することが可能である。しかしながら、この方法はインジケーター塗工部以外の不必要な部分にまで高価な環状オレフィンコポリマーを含む多層シーラントを積層させるため、コスト面では極端に不利となる。
【0006】
このような問題に対処するには、酸素インジケーターを移行防止用の包装体で包み、それを内容物が充填される外装体に同時に封入する手法が取られてきた。しかしながら、この方法も一連の作業が煩雑で、印刷型の酸素インジケーターよりもコストが余分にかかるといった新たな問題が発生する。
【0007】
なお、これまでにもインキ成分や接着剤成分の移行や溶出の防止を目的とした特許はいくつか見受けられるが、環状オレフィンおよびその開環重合体またはその水素添加体をコーティング剤にして用いた例はない。環状オレフィンコポリマーを多層フィルムの中間層に配置し、高温滅菌処理にも対応可能な低溶出包装体としているものには、下記特許文献1などが挙げられる。
【特許文献1】特開2001−162724号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は係わる従来技術の欠点に鑑みてなされたもので、室温での使用に加え、高温滅菌処理のような、包装体が過酷な条件下で使用された場合でも、長期にわたり還元色の色調を維持可能な酸素インジケーターを安価に提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するものであり、請求項1の発明は、基材に塗布された酸素インジケーター用インキの少なくとも片側に、耐熱性樹脂をコーティング剤として塗布、あるいは積層させたことを特徴とする酸素インジケーターである。
【0010】
請求項2の発明は、耐熱性樹脂のガラス転移点が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の酸素インジケーターである。
【0011】
請求項3の発明は、耐熱性樹脂のコーティング剤が、環状オレフィンコポリマーまたは、環状オレフィンコポリマーとポリオレフィン樹脂とのブレンドポリマーを溶解させたコーティング剤であることを特徴とする請求項1または2記載の酸素インジケーターである。
【0012】
請求項4の発明は、耐熱性樹脂のコーティング剤が、環状オレフィンの開環重合体またはその水素添加体、またはそれらとポリオレフィン樹脂とのブレンドポリマーを溶解させたコーティング剤であることを特徴とする請求項1または2記載の酸素インジケーターである。
【0013】
請求項5の発明は、上記酸素インジケーターを構成するインキ成分のうち、酸化還元色素がチアジン系色素であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の酸素インジケーターである。
【0014】
請求項6の発明は、酸化還元色素であるチアジン系色素がメチレンブルーであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の酸素インジケーターである。
【0015】
請求項7の発明は、包装材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の酸素インジケーターである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1の発明によれば、耐熱性樹脂を塗布、あるいは積層させることで、酸素インジケーター用インキに含まれる移行成分の溶出を食い止めることができる。さらに、有機溶剤に溶解させたコーティング剤は、その塗工部を必要な部分にのみ限定することができるため、コスト低減を図ることも可能である。
【0017】
請求項2の発明によれば、耐熱性樹脂のガラス転移点が100℃以上の場合、包装体が滅菌処理などの高温下に晒された場合でも、インキ中の移行成分の溶出を抑制することができる。
【0018】
請求項3および4の発明によれば、環状オレフィンコポリマーおよびその開環重合体、またはその水素添加体を含むコーティング剤を使用すると、酸素インジケーターは完全な還元色を維持することが可能である。
【0019】
請求項5および6の発明によれば、フェノチアジン環を有する酸化還元色素は還元型での溶出が顕著であることが確認されている。ゆえに、メチレンブルーなどのチアジン系色素を酸化還元色素に使用した場合、環状オレフィンコポリマーおよびその開環重合体、またはその水素添加体を含むコーティング剤の溶出防止効果が特に大きいと期待される。
【0020】
請求項7の発明によれば、本発明の酸素インジケーター付き包装体は、酸素バリアフィルムにクラックなどの欠陥が生じた場合や、高温下の長期間保存、あるいは高温滅菌処理後もインジケーター機能を維持し、包装体内部の酸素検知を容易に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の酸素インジケーターは、すくなくとも酸化還元色素、還元剤、バインダー樹脂、及び溶媒からなる酸素インジケーター用インキの少なくとも片側に、環状オレフィンを含むコーティング剤を積層させて、インキ成分の溶出を防止する。これにより内容物を汚染、あるいは色調異常を解決することが可能となる。以下に本発明を実施するための最良の形態について具体的に説明する。
【0022】
本発明に使用される酸化還元色素は、酸化状態と還元状態で異なる色調を呈する色素であれば、特に制限はなく、いずれの公知な色素も使用することができる。具体的にはメチレンブルーの他、ニューメチレンブルー、トルイジンブルー、チオニンアセテート、ニュートラルレッド、インジゴカルミン、インジゴスルフォン酸カリウム塩、サフラニンT、フェノサフラニン、カプリブルー、ナイルブルー、ジフェニルアミン、ジフェニルアミンスルホン酸、キシレンシアノール、ニトロジフェニルアミン、フェロイン、ニトロフェロイン、N−フェニルアントラニル酸などが使用できる。特にフェノチアジン環を有するチアジン系色素は、還元型での溶出が顕著であり、本発明の大きな効果を期待することができる。
【0023】
本発明に使用される還元剤は、色素を還元するのに充分な能力を有していれば、いずれも使用可能である。具体的には、アスコルビン酸の他にエリソルビン酸やその塩、アスコルビン酸塩、D-アラビノース、D-エリスロース、D-ガラクトース、D-キシロース、D-グルコース、D-マンノース、D-フラクトース、D-ラクトースなどの還元糖、第一スズ塩、第一鉄塩等の金属塩などが使用できる。また、滅菌処理など高温で使用する場合には、熱により分解する物質は還元能力を失活し、色調を維持できないなどの不具合を抱えるため、好ましくない。係る還元剤として好ましいのは、具体的にはローズマリー抽出物の他、トコフェロール、ケルセチンやアントシアニン、茶カテキン等のポリフェノール、没食子酸誘導体、コーヒー酸やフェルラ酸、グルタチオンなどのアミノ酸、β‐カロチンやリコピンなどのカロテノイド類である。また、N−メチルジエタノールアミンなどヒドロキシル基を有するアミノアルコール類の一部も好適に使用することができる。酸化還元色素と還元剤の組み合わせを選択することは非常に重要であり、使用環境を充分に考慮する必要がある。また、その使用量は上記色素1重量部に対して、1〜100重量部であることが好ましい。
【0024】
バインダー樹脂は、酸化還元色素、還元剤、溶媒を支持体上に固着するために用いられる。インキ化する際に適当なバインダー樹脂としては、具体的にはエチルセルロース、ヒドロキシルエチルセルロース、セルロースアセテートなどのセルロース誘導体やブチラール樹脂、アセタール樹脂、親水基を導入したポリエステル樹脂、その他にアクリル樹脂、ウレタン−ウレア樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。
【0025】
上記バインダー樹脂は、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチルに代表される有機系溶剤、水、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールに代表される水系溶剤に溶解あるいは分散させて使用される。これら溶剤は単独でも、また複数の溶剤を混合してもよい。
【0026】
溶出防止と色調維持のために積層される耐熱性樹脂としては、ガラス転移点が高いアク
リル樹脂やウレタン樹脂、ポリエステル樹脂に加え、環状オレフィンコポリマーや、その開環重合体、あるいはその水素添加体に低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂をブレンドしたブレンドポリマーである。これらを有機溶剤に溶解させてコーティング剤とすればよい。
【0027】
本発明に用いた環状オレフィンコポリマーの環状オレフィン成分としては、例えばシクロペンテンまたはその誘導体、シクロヘキセンまたはその誘導体、シクロヘプテンまたはその誘導体、シクロオクテンまたはその誘導体、シクロノネンまたはその誘導体、シクロデセンまたはその誘導体、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンまたはその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンまたはその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,10.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4ヘキサデセンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16 ]−5−エイコセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンまたはその誘導体、ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[7.8.0.13,6.02,7.110,17.011,16.112,15]−4−エイコセンまたはその誘導体、ノナシクロ[9.10.1.14,7.03,8.02,10.012,21.113,20.014,19.115,19]−5−ペンタセコンまたはその誘導体等を挙げることができ、これらから1成分でも2成分以上でもα−オレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、ブテン、1−ヘキセンや4−メチル−1−ペンテン等との共重合体を環状オレフィンコポリマーとして挙げることができる。
【0028】
さらに、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンまたはその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンまたはその誘導体、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセンまたはその誘導体、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,10.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4ヘキサデセンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセンまたはその誘導体、トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンまたはその誘導体、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4,10−ペンタデカジエンまたはその誘導体、ペンタシクロ[4.7.0.12,5.08,13.19,12]−3−ペンタデセンまたはその誘導体、ヘプタシクロ[7.8.0.13,6.02,7.110,17.011,16.112,15]−4−エイコセンまたはその誘導体、ノナシクロ[9.10.1.14,7.03,8.02,10.012,21.113,20.014,19.115,19]−5−ペンタセコンまたはその誘導体等の開環物及びその水素添加物も環状オレフィン成分として挙げることができ、これら1成分でも2成分以上を用いて、α−オレフィン、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセンや4−メチル−1−ペンテン等との共重合体を環状オレフィンコポリマーとして用いることが可能である。
【0029】
環状オレフィンコポリマー層の成分において、共重合させているエチレン成分等α−オレフィン成分に由来する構造単位は、40〜95モル%の範囲、環状オレフィン成分に由来する構造単位は、通常5〜60モル%の範囲が適当であり、開環重合体や開環共重合体の場合は環状オレフィン成分に由来する構造単位は化学量論的には25〜50モル%となり、上記範囲に含まれる。ガラス転移温度で言えば60〜160℃が望まれるが、押出し製膜適性とレトルトなどの高温滅菌処理に耐えうることを考慮すると、好ましくは100〜140℃である。
【0030】
上記環状オレフィンコポリマー層を構成するブレンドポリマーを溶解させる有機溶剤としては、メチルイソブチルケトンなどのケトン系、THFなどのエーテル系、トルエンやキシレンなどの芳香族系、シクロヘキサンやn−へキサン、n−オクタンなどの炭化水素系など各種溶剤を使用することができる。
特に環状オレフィンの化学構造上、室温で溶解しやすいのはシクロヘキサンである。
【0031】
塗布したコーティング剤の膜厚は、乾燥後0.5μmから3.0μm程度であることが好ましい。膜厚がこれより薄いと色素の溶出防止効果を発現しない。他方、膜厚が厚過ぎる場合は基材との密着に不具合を生じる。
【0032】
基材としては、インキ組成物と反応せず、しかも試薬の呈色性を阻害しないものであれば特に制限はなく、いずれも使用可能であるが、具体的には、紙、合成紙、不織布、または合成樹脂フィルムなどが用いられる。特に、厚さ12μm程度のPETやONyフィルムを印刷基材として用いる、あるいはこのPETやONyフィルムにバリア層として酸化珪素や酸化アルミニウム等のセラミックを蒸着したものや、アルミニウム箔を積層したものが酸素バリアフィルムとして一般的に使用されている。
【0033】
本発明に係る環状オレフィンや、その開環重合体あるいはその水素添加体をベースとしたコーティング剤は、その化学構造式中に官能基を有していないことから、印刷基材や酸素バリアフィルムと密着しにくい。これを改善する目的で、印刷基材や酸素バリアフィルムには、コロナ処理やプラズマ処理、フレーム処理、イオンボンバード処理などの表面処理を施すことが望ましい。
【0034】
インキや本発明に係るのコーティング剤を塗布するにあたっては印刷、コーティング法などが用いられる。印刷方法は凸版印刷法、凹版印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法などが利用でき、またコーティング法としては、ロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ベタコーティングなどが用いられる。
【0035】
酸素インジケーター用インキ組成物中には、必要に応じて界面活性剤や分散剤、消泡剤、さらには酸化還元色素以外に別途、着色剤などを添加してもよい。インキ中にこれらを添加することにより、インキの安定性や速乾性、視認性を向上させることができる。また、上記酸素インジケーター用インキ組成物は2液型に調整してもよい。すなわち、すくなくとも色素とバインダー樹脂からなるA液と還元剤とバインダー樹脂からなるB液を印刷直前に混合して使用することにより、インキの保存安定性を向上させることができる。さらには支持体との密着強度改善やさらなる色素の退色防止を目的に、インキ組成物の上下に本発明のコーティング剤とは異なるアンカーコート層やオーバーコート層を設けることができる。使用できるコーティング剤としては、酸素を透過し、かつ支持体との密着性が良いもの、また紫外線吸収材料を含有するものなどで酸素インジケーターの発色を妨げないものであれば特に制限はなく、いずれも使用することができる。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例について、具体的に説明する。本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
<実施例1>
・通常仕様酸素インジケーター用インキ組成物
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・2.4重量部
アスコルビン酸・・・・・・・・・・・・・・6.0重量部
アセタール樹脂・・・・・・・・・・・・・33.7重量部
メタノール・・・・・・・・・・・・・・・38.6重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・19.3重量部
・包装材料
酸素バリアフィルム/PET/コーティング剤/酸素インジケーター用インキ/LLDPE
上記インキ組成物をペイントコンディショナーなどで微細分散させることにより、インキ組成物を得た。コロナ処理を施したPETフィルム 12μm上に200線、30μmのグラビア版で環状オレフィンを含むコーティング剤を印刷し塗布した。塗布したコーティング剤上にインキ組成物を積層させて室温で12時間乾燥させた。上記印刷物の上下にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とシーラントフィルム(LLDPE)を積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。層構成は、上記包装材料となる。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
LLDPE・・・・・直鎖状低密度ポリエチレン
コーティング剤・・・・トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンの開環重合体の水素添加体を溶解させた5%シクロヘキサン溶液。
【0038】
<実施例2>
・通常仕様酸素インジケーター用インキ組成物
実施例1と同様
・包装材料
酸素バリアフィルム/PET/コーティング剤/酸素インジケーター/コーティング剤/LLDPE
実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。コロナ処理を施したPETフィルム 12μm上に200線、30μmのグラビア版で環状オレフィンを含むコーティング剤を印刷、塗布した。塗布したコーティング剤上にインキ組成物を積層させて、さらにその上からコーティング剤を再度積層させ、室温で12時間乾燥させた。上記印刷物の上下にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とシーラントフィルム(LLDPE)を積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。層構成は、上記包装材料となる。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
LLDPE・・・・・直鎖状低密度ポリエチレン
コーティング剤・・・・トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンの開環重合体の水素添加体を溶解させた5%シクロヘキサン溶液。
【0039】
<実施例3>
・通常仕様酸素インジケーター用インキ組成物
実施例1と同様
・包装材料
酸素バリアフィルム/PET/酸素インジケーター/LLDPE
実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。これをPET 12μmのコロナ処理面上に200線、30μmのグラビア版で2度刷りし、室温で12時間乾燥させた。上記印刷物の上下にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とシーラントフィルム(LLDPE)を積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。層構成は、上記包装材料となる。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
LLDPE・・・・・直鎖状低密度ポリエチレン。
【0040】
<実施例4>
・滅菌仕様酸素インジケーター用インキ組成物
メチレンブルー・・・・・・・・・・・・・・1.8重量部
ローズマリー抽出物・・・・・・・・・・・・7.2重量部
水性アクリル樹脂・・・・・・・・・・・・・5.0重量部
イソプロピルアルコール・・・・・・・・・43.0重量部
水・・・・・・・・・・・・・・・・・・・43.0重量部
・包装材料
酸素バリアフィルム/コーティング剤/酸素インジケーター/ONy/CPP
実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。これをONyフィルム 15μmのコロナ処理面上に200線、30μmのグラビア版で2度刷りした。塗布したインキ組成物上に環状オレフィンコポリマーを含むコーティング剤を積層させて、室温で12時間乾燥させた。上記印刷物の上下にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とシーラントフィルム(CPP)を積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
PP・・・・・ホモタイプポリプロピレン
コーティング剤・・・・トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンの開環重合体の水素添加体を溶解させた5%シクロヘキサン溶液。
【0041】
<実施例5>
・酸素インジケーター
実施例1と同様
・包装材料
酸素バリアフィルム/コーティング剤/酸素インジケーター/コーティング剤/ONy/CPP
実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。コロナ処理を施したONyフィルム 15μm上に200線、30μmのグラビア版で環状オレフィンを含むコーティング剤を塗布した。塗布したコーティング剤上にインキ組成物を積層させて、さらにその上からコーティング剤を再度積層させ、室温で12時間乾燥させた。上記印刷物の上下にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とシーラントフィルム(CPP)を積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。層構成は、上記包装材料となる。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
PP・・・・・ホモタイプポリプロピレン
コーティング剤・・・・トリシクロ[4.3.0.12,5]−3,7−デカジエンの開環重合体の水素添加体を溶解させた5%シクロヘキサン溶液。
【0042】
<実施例6>
・酸素インジケーター
実施例1と同様
・包装材料
酸素バリアフィルム/酸素インジケーター/ONy/CPP
実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。これをONy15μmのコロナ処理面上に200線、30μmのグラビア版で2度刷りし、室温で12時間乾燥させた。上記印刷物にウレタン系2液硬化型接着剤を使用し、ドライラミネート法によりPET上下にそれぞれ酸素バリアフィルム(アルミナを蒸着したPET)とCPP 60μmを積層させて、本発明の酸素インジケーターを含有する包装材料を得た。層構成は、上記包装材料となる。この包装材料を製袋して、酸素吸収剤(凸版印刷(株)製、「鮮度保持剤F」)を入れた後、窒素置換して密封した。
【0043】
[試験1]保存試験
実施例1から6の評価サンプルを還元色とした。実施例1から3については、1週間室温放置とし、実施例4から6については、30分間121℃加熱した減菌処理としてそれぞれ還元色とした。したがって処理前は青色であったサンプルを、透明とした。その後、温度−湿度を、25℃−free(湿度は放置)・40℃−75%・60℃−free・60℃−75%の環境下に保存し、色調の変化を観察した。結果を表1に示す。
【0044】
なお表中、○、△、×は、それぞれ、色調の変化なし(透明)、一部変化した、すべて変化した、という試験結果を表す。
【0045】
【表1】

[試験2]溶出試験
実施例1から6の評価サンプルに蒸留水200mlを充填し、インジケーターの色調が試験1と同様にして還元色となるように調整した。60℃−75%の環境下に2週間放置して、色素の溶出状況を確認した。結果を表2に示す。
【0046】
なお表中、○、×は、それぞれ、溶出なし、溶出した、という試験結果を表す。また、色素の溶出は、HPLCによる分析による。
【0047】
【表2】

[試験1]保存試験より、通常仕様酸素インジケーターの場合、実施例3のように本発明のコーティング剤を塗布、あるいは積層しない場合は、バリア基材にクラックなどの欠陥が生じた場合、一部酸化色への変色が確認される。実施例1および2のようにコーティング剤を使用すると、バリア基材側への色素溶出は抑えることが可能である。インキの滲みはバインダー樹脂が耐熱性を有していないことによる。
【0048】
[試験1]保存試験より、滅菌仕様酸素インジケーターの場合、実施例6のように本発明のコーティング剤を塗布、あるいは積層しない場合は、滅菌処理の高温で色素がバリア基材の全面に溶出してしまう。実施例4および5のようにコーティング剤を使用すると、バリア基材側への色素溶出は抑えることが可能である。
【0049】
[試験2]溶出試験より、インキ組成物の上下に本発明のコーティング剤を設けた場合、充填した蒸留水へ色素が溶出することはない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に塗布された酸素インジケーター用インキの少なくとも片側に、耐熱性樹脂をコーティング剤として塗布、あるいは積層させたことを特徴とする酸素インジケーター。
【請求項2】
耐熱性樹脂のガラス転移点が100℃以上であることを特徴とする請求項1記載の酸素インジケーター。
【請求項3】
耐熱性樹脂のコーティング剤が、環状オレフィンコポリマーまたは、環状オレフィンコポリマーとポリオレフィン樹脂とのブレンドポリマーを溶解させたコーティング剤であることを特徴とする請求項1または2記載の酸素インジケーター。
【請求項4】
耐熱性樹脂のコーティング剤が、環状オレフィンの開環重合体またはその水素添加体、またはそれらとポリオレフィン樹脂とのブレンドポリマーを溶解させたコーティング剤であることを特徴とする請求項1または2記載の酸素インジケーター。
【請求項5】
上記酸素インジケーターを構成するインキ成分のうち、酸化還元色素がチアジン系色素であることを特徴とする請求項1〜4いずれか1項記載の酸素インジケーター。
【請求項6】
酸化還元色素であるチアジン系色素がメチレンブルーであることを特徴とする請求項1〜5いずれか1項記載の酸素インジケーター。
【請求項7】
包装材料として用いられることを特徴とする請求項1〜6いずれか1項記載の酸素インジケーター。

【公開番号】特開2008−32599(P2008−32599A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−207768(P2006−207768)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】