説明

酸素濃縮装置

【課題】酸素濃縮装置の運転開始から、酸素濃度が十分に高い酸素濃縮ガスを供給できるまでの時間を短縮できる酸素濃縮装置を提供すること。
【解決手段】酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤が充填された吸着筒23、25と、前記吸着筒23、25に加圧空気を供給するコンプレッサ11と、前記コンプレッサ11の回転数を、インバータ14を用いたフィードバック制御により制御する制御部77と、 を備え、前記吸着筒23、25にて空気から酸素濃縮ガスを生成する圧力変動吸着型の酸素濃縮装置1であって、前記制御部77は、前記フィードバック制御の1サイクルにおける前記インバータ14の制御値の増減幅を、前記コンプレッサ11の回転数と予め設定された目標回転数との差に応じて変動させることを特徴とする酸素濃縮装置1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、酸素より窒素を優先的に吸着する吸着剤を用いて生成した高濃度の酸素(酸素濃縮ガス)を患者等に供給する圧力変動吸着型の酸素濃縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、呼吸器系疾患の最も効果的な治療法の一つとして、酸素吸入療法が知られている。この酸素吸入療法とは、酸素ガス或いは酸素濃縮ガスを患者に供給する方法であり、その供給源として、最近では、空気中から酸素濃縮ガスを直接分離できる酸素濃縮装置が開発されている。
【0003】
かかる酸素濃縮装置としては、例えば窒素又は酸素を選択吸着して得られる吸着剤を用いた吸着型酸素濃縮装置が知られており、この吸着型酸素濃縮装置としては、コンプレッサを用いた圧力変動吸着型酸素濃縮装置が使用されている。
【0004】
この酸素濃縮装置においては、コンプレッサを駆動するモータの回転数を、インバータを用いてフィードバック制御する技術が知られている。例えば、酸素濃縮装置のコンプレッサのモータとしてDCブラシレスモータを用い、このDCブラシレスモータの回転数を検出して、その回転数が所定の目標回転数となるように、インバータの制御値を増減させる技術が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−263441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の酸素濃縮装置では、酸素濃縮装置の運転開始から、コンプレッサの回転数が目標回転数に達するまでの間は、酸素濃縮ガスにおける酸素濃度を十分に高くすることができなかった。
【0007】
従来の酸素濃縮装置は、コンプレッサの回転数の制御において、常に、インバータの制御値をフィードバック制御の1サイクルごとに1ポイントずつしか増減させないため、コンプレッサの回転数が目標回転数に到達するまでに要する時間が長かったためである。特に、低温時や、酸素濃縮装置に供給する電力が定格値を下回っているとき等は、一層長時間を要した。その結果、酸素濃縮装置の運転開始から、酸素濃度が十分に高い酸素濃縮ガスを供給できるまでの時間が長くなるという問題があった。
【0008】
本発明は以上の点に鑑みなされたものであり、酸素濃縮装置の運転開始から、酸素濃度が十分に高い酸素濃縮ガスを供給できるまでの時間を短縮できる酸素濃縮装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するためになされた本発明は、酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤が充填された吸着筒と、前記吸着筒に加圧空気を供給するコンプレッサと、前記コンプレッサの回転数を、インバータを用いたフィードバック制御により制御する制御部と、を備え、前記吸着筒にて空気から酸素濃縮ガスを生成する圧力変動吸着型の酸素濃縮装置であって、前記制御部は、前記フィードバック制御の1サイクルにおける前記インバータの制御値の増減幅を、前記コンプレッサの回転数と予め設定された目標回転数との差に応じて変動させることを特徴とする。
【0010】
本発明では、フィードバック制御の1サイクルにおけるインバータの制御値の増減幅を、コンプレッサの回転数(すなわちモータの回転数)と予め設定された目標回転数との差(以下では差Δとする)に応じて変動させる。そのことにより、差Δが大きい場合は、制御値の増減幅が大きくなり、制御値が早期に大きく変動するので、酸素濃縮装置の運転開始から、コンプレッサの回転数が目標回転数に達するまでの時間を短く、且つその時間のばらつきを低減することができる。その結果、酸素濃縮装置の運転開始から、供給する酸素濃縮ガスにおける酸素濃度が予定の濃度に達するまでの時間を短縮し、且つその時間のばらつきを低減できる。
【0011】
特に、低温時や、酸素濃縮装置に供給する電力が定格値を下回っているとき等、コンプレッサの回転数が上がりにくいときに、上述した本発明の効果が顕著となる。また、コンプレッサの個体差がある場合でも、酸素濃縮装置の運転開始から、コンプレッサの回転数が目標回転数に達するまでの時間を短く、且つその時間のばらつきを低減できる。
【0012】
また、本発明では、差Δが小さい場合、フィードバック制御の1サイクルにおけるインバータの制御値の増減幅を小さくするので、制御値の増減が緩やかになる。その結果として、制御値の増減が過度に大きくなり、実際の回転数が目標回転数を通り越して変化してしまうようなことが起こり難い。
【0013】
前記増減幅の設定方法としては、例えば、以下のようなものがある。
(a)差Δが所定の閾値より大きい場合は、差Δが閾値以下である場合よりも、増減幅を大きくする。
(b)差Δが大きいほど、増減幅を大きくする。この場合、例えば、図5(a)に示すように、差Δに応じて、増減幅を階段状に変化させることができる。また、図5(b)に示すように、増減幅を、差Δの大きさに比例させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】酸素濃縮装置1の基本構成を表す説明図である。
【図2】酸素濃縮装置1の制御系を表す説明図である。
【図3】電子制御装置77がコンプレッサ11の回転数を制御する処理を表すフローチャートである。
【図4】電子制御装置77がコンプレッサ11の回転数を制御する処理を表すフローチャートである。
【図5】(a)及び(b)はそれぞれ、差Δと制御値の増減幅との関係を規定したマップを表す説明図である。
【図6】試験1において酸素濃縮装置1が供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度を示すグラフである。
【図7】試験1において酸素濃縮装置Rが供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度を示すグラフである。
【図8】試験2において酸素濃縮装置1が供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度を示すグラフである。
【図9】試験2において酸素濃縮装置Rが供給する酸素濃縮ガスの酸素濃度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態を説明する。
(第1実施形態)
本実施形態では、空気中から窒素吸着剤(以下吸着剤とする)を用いて窒素を吸着して除去することにより酸素を濃縮し、この高濃度の酸素を含む酸素濃縮ガスを患者に対して供給する圧力変動吸着型の医療用酸素濃縮装置(以下、酸素濃縮装置1とする)を例に挙げる。
【0016】
1.酸素濃縮装置1の概略構成
酸素濃縮装置1の概略構成を図1に基づいて説明する。図1に示す様に、酸素濃縮装置1において、空気取入口3及び防塵フィルタ5を介して周囲の空気が導入され、導入された空気は、吸気フィルタ7及び吸気マフラ9を介してコンプレッサ11に吸入される。
【0017】
コンプレッサ11は、モータ13の回転により、吸入空気を圧縮して高圧空気を生成する。モータ13は、インバータ14に接続されており、そのインバータ14は図示しない商用電源に接続されている。インバータ14は、後述する電子制御装置77から出力される制御値に応じて、モータ13の回転数(すなわちコンプレッサ11の回転数)を制御する。また、インバータ14は、モータ13の回転数を検出し、その検出結果を電子制御装置77に送信する。
【0018】
なお、この回転数の検出は以下のように行う。モータ13はブラシレスモータであり、その回転子の回転位置を検出する磁気センサ(図示略)を備えている。磁気センサの出力は、インバータ14に入力される。インバータ14は、磁気センサの出力をモータ13の回転数信号に変換し、電子制御装置77に送信する。
【0019】
コンプレッサ11により生成された高圧空気は、チェック弁15、17、供給弁(第1供給弁19、第2供給弁21)を介して、一対の吸着筒(第1吸着筒23、第2吸着筒25)に供給される。
【0020】
供給弁19、21から吸着筒23、25に至る高圧空気の供給経路には、それぞれ排気弁(第1排気弁27、第2排気弁29)が接続されており、排気弁27、29の開弁時には、各吸着筒23、25を大気に開放できる。
【0021】
吸着筒23、25には、空気中の窒素を優先的に吸着して酸素を分離するゼオライト系の吸着剤が充填されている。そして、排気弁27、29が閉弁状態にあるとき、チェック弁15、17及び供給弁19、21を介して、コンプレッサ11から高圧空気が供給されると、その空気中から窒素を吸着して酸素濃縮ガスを生成し、酸素濃縮ガスを、チェック弁31、33を介して製品タンク35側に送出する。
【0022】
なお、吸着筒23、25からチェック弁31、33に至る酸素濃縮ガスの吐出経路には、両吸着筒23、25の吐出側を連通する連通路37が設けられ、その連通路37には、オリフィス39、41を介して電磁弁からなるパージ弁43が設けられている。
【0023】
また、製品タンク35の下流側には、酸素濃縮ガスの圧力を調節する圧力調整器45が設けられ、圧力調整器45で調圧された酸素濃縮ガスは、流量設定器47によって流量が設定された後に、加湿器49まで送られ、加湿器49にて加湿された後、排出口51を介して、外部に排出される。
【0024】
更に、酸素濃縮ガスの排出経路には、酸素濃縮ガスの酸素濃度を検出する酸素センサ53が設けられている。
また、酸素濃縮装置1は、各部を制御する電子制御装置77を備えている。電子制御装置77の動作については後述する。
【0025】
2.酸素濃縮装置1の制御系
酸素濃縮装置1の制御系を、図2に基づいて説明する。酸素濃縮装置1は、流量設定器47における流量設定を検出するポテンショメータ101、酸素濃縮ガスの流量を検出する流量センサ103、上述した酸素センサ53、酸素濃縮装置1の雰囲気温度を検出する温度センサ107、コンプレッサ11の圧力を検出する圧力センサ109、及び電子制御装置77を備える。
【0026】
電子制御装置77は、入力部78、出力部79、周知のマイクロコンピュータ(マイコン)80、各種のデータを記憶するメモリ(例えばEEPROM)81を備えている。メモリ81に記憶されているデータには、コンプレッサ11の目標回転数が含まれる。ポテンショメータ101、流量センサ103、酸素センサ53、温度センサ107、圧力センサ109、及びインバータ14(以下、これらをセンサ類と総称する)の出力は、電子制御装置77の入力部78に送られる。なお、インバータ14の出力は、上述したように、モータ13の回転数信号である。
【0027】
電子制御装置77のマイコン80は、センサ類から入力した結果に基づき、供給弁19、21、排気弁27、29、パージ弁43、コンプレッサ11(特にモータ13)等を制御する。制御信号は、出力部79を介して、供給弁19、21、排気弁27、29、パージ弁43、コンプレッサ11に出力される。供給弁19、21、排気弁27、29、パージ弁43の制御は、周知のものと同様であるから、説明を省略する。コンプレッサ11の制御については後述する。
【0028】
3.コンプレッサ11の制御方法
電子制御装置77がコンプレッサ11の回転数(モータ13の回転数)を制御する処理を図3のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、インバータ14を用いたフィードバック制御であり、図3に示す処理がフィードバック制御の1サイクルである。この処理は、酸素濃縮装置1の電源がONであるとき、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0029】
ステップ10では、インバータ14で検出したコンプレッサ11の回転数から、電子制御装置77のメモリに予め記憶されている目標回転数を差し引いた差Δを算出する。
ステップ20では、コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数と一致しているか(すなわち差Δが0であるか)否かを判断する。一致していない場合はステップ30に進む。一方、一致している場合は本処理を終了する。
【0030】
ステップ30では、前記ステップ10で算出した差Δが、所定の閾値以下であるか否かを判断する。差Δが閾値より大きい場合はステップ40に進み、差Δが閾値以下である場合はステップ50に進む。
【0031】
ステップ40では、インバータ14の制御値における、フィードバック制御の1サイクルあたりの増減幅を値Aとする。
ステップ50では、インバータ14の制御値における、フィードバック制御の1サイクルあたりの増減幅を値Bとする。ここで、値Bは値Aよりも小さい値である。
【0032】
ステップ60では、インバータ14の制御値を、前記ステップ10で算出した差Δの正負に応じて増減する。すなわち、差Δが負の値である(コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数よりも小さい)場合は、インバータ14の制御値を所定の増減幅だけ増加させる。一方、差Δが正の値である(コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数よりも大きい)場合は、インバータ14の制御値を所定の増減幅だけ減少させる。
【0033】
ここで、本ステップにおける制御値の増減幅は、直前のステップ40、又は直前のステップ50で設定した値である。従って、前記ステップ40で増減幅を値Aとした場合は、値Aの分だけ、制御値を増減する。一方、前記ステップ50で増減幅を値Bとした場合は、値Bの分だけ、制御値を増減する。
【0034】
4.酸素濃縮装置1が奏する効果
電子制御装置77は、差Δが大きい場合、インバータ14の制御値の増減幅を大きくする。そのことにより、制御値が早期に大きく変動するので、酸素濃縮装置1の運転開始から、コンプレッサ11の回転数が目標回転数に達するまでの時間を短く、且つその時間のばらつきを低減できる。その結果、酸素濃縮装置1の運転開始から、供給する酸素濃縮ガスにおける酸素濃度が予定の濃度に達するまでの時間を短縮し、且つその時間のばらつきを低減できる。
【0035】
特に、低温時や、酸素濃縮装置1に供給する電力が定格値を下回っているとき等、コンプレッサ11の回転数が上がりにくいときに、その効果が顕著となる。また、コンプレッサ11の個体差がある場合でも、酸素濃縮装置1の運転開始から、コンプレッサ11の回転数が目標回転数に達するまでの時間を短く、且つその時間のばらつきを低減できる。
【0036】
さらに、酸素濃縮装置1の運転中に、供給電力が変動し、酸素濃縮ガスにおける酸素濃度が予定の濃度からずれた場合でも、酸素濃度を早期に、予定の濃度に戻すことができる。
【0037】
また、電子制御装置77は、差Δが小さい場合、制御値の増減幅を小さくするので、制御値の増減が緩やかになる。その結果として、制御値の増減が過度に大きくなり、実際の回転数が目標回転数を通り越して変化してしまうようなことが起こり難い。
【0038】
5.酸素濃縮装置1が奏する効果を実証するための試験
酸素濃縮装置1が奏する効果を、以下の試験により実証した。
(1)試験1
本実施形態の酸素濃縮装置1が供給する酸素濃縮ガスにおける酸素濃度を、酸素濃縮装置1の起動時から、継続的に測定した。試験1は、供給電圧が100Vの場合と、85Vの場合とでそれぞれ行った。その結果を図6に示す。
【0039】
なお、この試験1で用いた酸素濃縮装置1では、上述した閾値を50rpmとした。また、差Δが50rpmを超えた場合の制御値の増減幅(値A)を10とし、差Δが50rpm以下である場合の制御値の増減幅(値B)を1とした。
【0040】
比較例として、基本的な構成及び作用は酸素濃縮装置1と同様であるが、差Δによらず、制御値の増減幅を常に1とした酸素濃縮装置Rについても、同様の試験を行った。その結果を図7に示す。
【0041】
図6に示すように、酸素濃縮装置1は、供給電圧が100V、85Vのいずれの場合でも、酸素濃縮ガスにおける酸素濃度が早期に安定した。それに対し、酸素濃縮装置Rでは、図7に示すように、特に供給電圧が85Vの場合、酸素濃縮ガスにおける酸素濃度が安定するまでに、非常に長時間を要した。
(2)試験2
酸素濃縮装置1に供給する電圧を、当初は100Vとし、その後、90Vに下げ、その後さらに100Vに戻した。この一連の過程における酸素濃縮ガスの酸素濃度を継続的に測定した。その結果を図8に示す。酸素濃縮装置Rについても同様の試験を行った。その結果を図9に示す。
【0042】
なお、この試験2でも、酸素濃縮装置1における閾値を50rpmとした。また、差Δが50rpmを超えた場合の制御値の増減幅(値A)を10とし、差Δが50rpm以下である場合の制御値の増減幅(値B)を1とした。
【0043】
図8に示すように、酸素濃縮装置1は、供給電圧の変化により酸素濃度が一時的に変動しても、その後酸素濃度は早期に安定した、それに対し、酸素濃縮装置Rでは、図9に示すように、供給電圧の変化により酸素濃度が変動してから、酸素濃度が安定するまでに非常に長時間を要した。
(第2実施形態)
本実施形態の酸素濃縮装置1は、基本的な構成及び動作において前記実施形態1と同様であるが、コンプレッサ11の制御方法において、一部相違する。以下では、相違する部分を中心に説明し、前記実施形態1と同様の部分の説明は省略乃至簡略化する。
【0044】
1.コンプレッサ11の制御方法
電子制御装置77がコンプレッサ11の回転数を制御する処理を図4のフローチャートに基づいて説明する。この処理は、インバータ14を用いたフィードバック制御である。そして、図4に示す処理がフィードバック制御の1サイクルである。この処理は、酸素濃縮装置1の電源がONであるとき、所定時間ごとに繰り返し実行される。
【0045】
ステップ110では、インバータ14で検出したコンプレッサ11の回転数から、電子制御装置77のメモリに予め記憶されている目標回転数を差し引いた差Δを算出する。
ステップ120では、コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数と一致しているか(すなわち差Δが0であるか)否かを判断する。一致していない場合はステップ130に進む。一方、一致している場合は本処理を終了する。
【0046】
ステップ130では、前記ステップ110で算出した差Δに応じて、インバータ14の制御値における、フィードバック制御の1サイクルあたりの増減幅を設定する。具体的には、以下のようにする。電子制御装置77のメモリは、図5(a)に示すような、差Δと増減幅との関係を規定するマップを記憶している。このマップでは、差Δが大きくなるにつれて、階段状に増減幅が大きくなる。そして、前記ステップ110で算出した差Δをこのマップに当てはめて、増減幅を設定する。なお、使用するマップは、図5(b)に示すものであってもよい。このマップでは、差Δに比例して、増減幅が大きくなる。
【0047】
ステップ140では、インバータ14の制御値を、前記ステップ110で算出した差Δの正負に応じて増減する。すなわち、差Δが負の値である(コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数よりも小さい)場合は、インバータ14の制御値を所定の増減幅だけ増加させる。一方、差Δが正の値である(コンプレッサ11の実際の回転数が目標回転数よりも大きい)場合は、インバータ14の制御値を所定の増減幅だけ減少させる。
【0048】
ここで、本ステップにおける制御値の増減幅は、直前のステップ130で設定した値とする。
2.酸素濃縮装置1が奏する効果
本実施形態の酸素濃縮装置1も、前記第1実施形態の場合と略同様の効果を奏することができる。
【0049】
尚、本発明は前記実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施しうることはいうまでもない。
例えば、前記第1実施形態において、制御値の増減幅の設定に用いる閾値は、酸素濃縮装置1の状態に応じて可変としてもよい。例えば、その閾値を、流量設定器47における流量設定に応じて可変とすることができる。具体的には、流量設定が所定の値以上である場合は、閾値を低い値αとして、流量設定が前記所定の値未満である場合は、閾値を前記値αよりも高い値βとすることができる。設定流量が多い場合は、コンプレッサ11の回転数が目標回転数に到達するまでの時間が一層長くなるが、上記のように、閾値を低くし、制御値の増減幅を大きくなり易くすることで、コンプレッサ11の回転数を早期に上昇させ、目標回転数に達するまでの時間を短縮できる。
【符号の説明】
【0050】
1・・・酸素濃縮装置、3・・・空気取入口、5・・・防塵フィルタ、
7・・・吸気フィルタ、9・・・吸気マフラ、11・・・コンプレッサ、
13・・・モータ、14・・・インバータ、15・・・チェック弁、
19・・・第1供給弁、21・・・第2供給弁、23・・・第1吸着筒、
25・・・第2吸着筒、27・・・第1排気弁、29・・・第2排気弁、
31・・・チェック弁、35・・・製品タンク、37・・・連通路、
39・・・オリフィス、43・・・パージ弁、45・・・圧力調整器、
47・・・流量設定器、49・・・加湿器、51・・・排出口、53・・・酸素センサ、
77・・・電子制御装置、78・・・入力部、79・・・出力部、80・・・マイコン、81・・・メモリ、101・・・ポテンショメータ、103・・・流量センサ、
107・・・温度センサ、109・・・圧力センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素よりも窒素を選択的に吸着する吸着剤が充填された吸着筒と、
前記吸着筒に加圧空気を供給するコンプレッサと、
前記コンプレッサの回転数を、インバータを用いたフィードバック制御により制御する制御部と、
を備え、前記吸着筒にて空気から酸素濃縮ガスを生成する圧力変動吸着型の酸素濃縮装置であって、
前記制御部は、前記フィードバック制御の1サイクルにおける前記インバータの制御値の増減幅を、前記コンプレッサの回転数と予め設定された目標回転数との差に応じて変動させることを特徴とする酸素濃縮装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記差が所定の閾値より大きい場合は、前記差が前記閾値以下である場合よりも、前記増減幅を大きくすることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記差が大きいほど、前記増減幅を大きくすることを特徴とする請求項1記載の酸素濃縮装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−226383(P2011−226383A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−97018(P2010−97018)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【出願人】(000004547)日本特殊陶業株式会社 (2,912)
【Fターム(参考)】