説明

酸素燃焼に適した水蒸気を生成するための方法および装置

本発明は、燃焼室(31)、水加熱器(33)および気化器(38、40)を有する酸素燃焼に適したボイラー(30)であって、燃焼室(31)が少なくとも部分的に水加熱器(33)を有しているボイラーに関する。さらに本発明は、高温水の生成をともなう酸素燃焼の方法であって、低温水を酸素燃焼の火炎によって加熱された流体へと加熱する段階を有している方法に関する。本発明の方法は、本発明の装置において好都合に実施される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の主題は、酸素燃焼(すなわち、酸素または酸素リッチな空気を酸化剤として化石燃料の燃焼)に適した水蒸気を生成する方法である。さらに、本発明の主題は、その方法を実施するための装置である。
【背景技術】
【0002】
現時点において、酸素による燃焼すなわち酸素燃焼は、化石燃料の使用を続けつつ大気中へのCOの排出を抑制するために想定される最も魅力的な方法の1つである。実際、これらの燃料を空気で燃焼させた場合、燃焼空気中の窒素でCOがかなり希釈されて形成されることになり、これがCO抑制上のかなりの重荷(ballast)になる。一般に、COが燃焼生成物のわずか10〜15%にしか相当しない。COの再注入が、大気中への排出を抑制するために現在考えられている技術の1つである。その結果、空気での燃焼においては、COの分離または捕捉に必要なエネルギー用に0.3〜0.5トンの追加のCO(燃料の種類による)を要し、それを生成するのに1トンの再注入COが必要である。効率は、約50%である。酸素での燃焼においては、酸素の生成量が明らかに上述のように排気ガスを分離するために必要とされるよりも少量のCOを生成する範囲において、効率が約30〜50%向上する。このように、酸素燃焼の場合には、燃焼によって生成された水蒸気の凝縮の後では、COは一般的には、排気ガスの約90%に相当し、残りの部分が、酸化剤として使用した酸素に含まれていた残留の窒素およびアルゴンからなり、燃料および燃焼時に生成されるほかの気体(NO、SO)の完全な燃焼を達成するために、過剰の酸素が導入される。このようにして、凝縮不可能な気体のすべてまたは一部を分離した後の95%以上の純度を有するCOを、容易に再注入することができる。
【0003】
純粋な酸素またはきわめて酸素リッチな空気によって燃焼を行うことで生じる主な問題は、きわめて高い火炎温度にある。この高い火炎温度は、標準的な空気中での燃焼において通常は約2000℃であるのに対し、実際のところ、3000℃を超える。
【0004】
このきわめて高い火炎温度により、従来からのボイラーの動作とは比較にならない高放射熱流になる。実際、従来からのボイラーでは、燃焼室が管によって囲まれており、これらの管によって水の気化および/または過熱が行われている。熱の流れが大き過ぎると、管から水が存在しなくなるという状態が生じうる。高温の壁面に接している流体は、もはや水蒸気でしかなく、その熱容量が水の熱容量よりもはるかに小さいことは明白であり、したがって冷却効率が低下することは明らかである。このような状態は、急な過熱による管の破壊につながる。この現象は、この技術分野において「ドライアウト(dry out)」または「バーンアウト(burn out)」という呼び名でも知られている。
【0005】
第1の解決手段は、生成されたCOで火炎ガスを希釈することにある。しかしながら、このような再循環は、かなりの設備を必要とする。したがって、COの再循環のない解決手段が求められる。
【0006】
「ドライアウト」現象は、受け取る熱の流れおよび混合物中の水蒸気の割合(水蒸気がより多く存在するほど、ドライアウトの条件に近づく)の関数である。壁に吸収されなければならない熱の流れの制御は、きわめて困難である。これらの熱の流れを制御するための解決手段として、管の壁面を耐火材料で覆うことである。しかしながら、この解決手段は、燃焼室の熱交換表面積の効率を大きく低下させるとともに、設置コストを上昇させる。
【0007】
さらには、この「ドライアウト」現象を回避するために、原子力産業において高圧水が使用されていることは知られており、この高圧が、管/シェル(shell)の界面のレベルでの沸騰を防止している。しかしながら、ここではそれが、比較的低いシェル温度において、温度の差に比例する法則に従う伝導現象(管側における)が支配する問題である。
【0008】
別個の観点で、火炎ボイラーの場合には、それは、絶対温度の4乗に比例し、放射率および吸収率が関係するステファン‐ボルツマンの法則に従う放射現象が支配する問題である。さらに、2000℃における標準的な燃焼から3000℃における酸素燃焼への移行は、1000℃の温度差、すなわち約50%高い温度になる。したがって、放射熱での差は4倍以上である。したがって、酸素燃焼の場合に壁によって受け取られる表面エネルギ密度は、1000kW/mを容易に超える。
【0009】
米国特許第6619041号公報に、再循環なしの酸素燃焼のボイラー、およびその構成設備が記載されている。記載されているボイラーは、水予熱器を、炉内にではなく、「低温」の燃焼排気部分に有している。
【0010】
酸素燃焼に関する他のいかなる特許も、水予熱器を炉内に設置することを開示していない。
【0011】
したがって、本発明を説明または示唆するものは、技術水準には一切存在していない。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、水および蒸気(低温流体)に対する燃焼生成物(高温流体)の全体としての循環を、従来からのボイラーと比べて反対にするという考え方に基づいている。
【0013】
本発明は、燃焼室、水予熱器および気化器とを有している酸素燃焼に適したボイラーであって、前記燃焼室が少なくとも部分的に前記水予熱器で構成されているボイラーを提供する。
【0014】
1つの実施形態によれば、前記燃焼室が完全に前記予熱器で構成されている。
【0015】
1つの実施形態によれば、前記予熱器が、2〜3のピッチに従った個々の管からなる第1の束を有している。
【0016】
1つの実施形態によれば、前記予熱器が、内側に溝が付けられた管からなる第1の束を有している。
【0017】
第1の変形例によれば、前記気化器が放射気化器である。
【0018】
第2の変形例によれば、前記気化器が放射気化器および対流気化器を含んでいる。
【0019】
第3の変形例によれば、前記気化器が対流気化器である。
【0020】
1つの実施形態によれば、管の第2の束を有している放射気化器が、前記燃焼室内において、管の第1の束を有している予熱器の周囲に同心状に配置されている。
【0021】
1つの実施形態によれば、前記ボイラーが、前記予熱器によって水が供給され、前記気化器に水を供給し、前記気化器によって蒸気が供給される水/蒸気分離フラスコをさらに有している。
【0022】
1つの実施形態によれば、前記水予熱器が、前記燃焼室内に配置されている。
【0023】
1つの実施形態によれば、前記水予熱器が、前記燃焼室の燃焼生成物の流れに対して対向流で動作する。
【0024】
さらに本発明は、酸素燃焼によって高温水を生成するための方法であって、酸素燃焼の火炎によって低温水を予熱して高温水(予熱済み流体)を生成する段階を含んでいる方法を提供する。
【0025】
1つの実施形態によれば、この方法は、前記生成した予熱済み流体を気化させる段階をさらに含んでいる。
【0026】
第1の変形例によれば、前記予熱済み流体を気化させる段階が、放射によって実行される。
【0027】
第2の変形例によれば、前記予熱済み流体を気化させる段階が、対流によって実行される。
【0028】
第3の変形例によれば、前記予熱済み流体を気化させる段階が、放射および対流によって実行される。
【0029】
1つの実施形態によれば、前記酸素燃焼の火炎によって低温水を予熱する段階が、燃焼生成物の流れに対して対向流によって実行される。
【0030】
1つの実施形態によれば、前記酸素燃焼の火炎の温度が、2000〜3300℃の間、好ましくは2500〜3000℃の間である。
【0031】
1つの実施形態によれば、前記低温水の温度が105〜170℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である。
【0032】
1つの実施形態によれば、前記予熱済み流体が、水/蒸気の質量比が、100/0から50/50まで、好ましくは100/0から70/30まで、好都合には95/5から80/20まで変化する水と蒸気を有している。
【0033】
1つの実施形態によれば、前記予熱済み流体の温度が170〜600℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である。
【0034】
1つの実施形態によれば、生成される蒸気の温度が170〜600℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である。
【0035】
1つの実施形態によれば、この方法が、生成された蒸気を過熱する段階をさらに含んでいる。
【0036】
1つの実施形態によれば、水予熱段階の後の燃焼排気の温度が、1200〜600℃である。
【0037】
1つの実施形態によれば、気化段階の後の燃焼排気の温度が、250〜150℃である。
【0038】
本発明による方法は、本発明による装置において好都合に実施される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
図1を参照すると、低温となった燃焼ガスに接触する水予熱器11、気化器12および過熱器13を有する従来からのボイラー10が示されており、これらの構成要素が、この順番で燃焼室14内に位置する火炎に向かって配置されている。これにより、熱交換の収率が最大となり、対向流または並行流が、最小の温度差の流体の間に生じる。過熱器は、最大600℃を超える範囲の温度の水蒸気を生成する。
【0040】
図2を参照すると、酸素燃焼に適した本発明によるボイラーが示されている。本発明においては、低温の流体が、最も高温の燃焼生成物に接触する。用語「酸素燃焼」は、22体積%を超える値を有する酸素リッチな空気を酸化剤とする燃焼を包含する。燃焼室内で管に放射される熱の流れは、200〜3000kW/mの間でさまざまな値を有し、好ましくは300〜1000kW/mの間でさまざまな値を有する。
【0041】
例えば、ガス、オイル、種々のオイル残渣(特には、重残渣)、または石炭など、任意の燃料を使用することができる。
【0042】
本発明は、多数の分野において使用される。化石エネルギーからの発電に使用することができ、もはやCOの排出によって悩まされることがない。例えばいわゆる蒸気補助重力排液(SAGD)法による沈殿物への蒸気の注入による生産の活性化(蒸気による重油フィールドの活性化)の仕組みにおいて、重油の生産に使用することができる。本発明は、重油フィールドの活性化のための高圧蒸気の生成に、特に適している。実際、蒸気の圧力が高いほど、より多くのエンタルピーが気化の前の水の予熱のために供給され、その分、気化のための熱がより少なくなる。これにより、高い蒸気圧力にすることができ、燃焼室が水の加熱にのみ使用される。
【0043】
また、油井戸をきれいにするため、あるいは石油回収増進(EOR)法の仕組みにおいて、油井戸へとCOが再注入される場合にも使用することができる。石油生産の下流の工程で、本発明は種々の油製品に使用されるであろう。
【0044】
広くには、本発明によるボイラーは、燃焼室内に位置する予熱器と、予熱器の下流に位置する気化器とを有している。用語「下流」および「上流」は、燃焼生成物の流れの方向に対して(すなわち換言すれば、ボイラーにおける温度勾配に対して)示している。低温の水が予熱器に進入し、予熱済み流体が予熱器から出る。予熱器からの出口において流体の水/蒸気の質量比は100/0〜50/50、好ましくは100/0〜70/30、好都合には95/5〜80/20の間でさまざまな値であってよい。必要であれば、過熱器を、特には発電の場合の過熱水蒸気の生成のために配置することができる。
【0045】
図2に示した実施形態においては、ボイラー20が、燃焼室21と、燃焼室の壁面に沿って備えられた予熱器22とを有している。予熱器22を出る流体は、気体部分と液体部分を分離するフラスコへと送られる。液体部分は、やはり燃焼室内に部分的に位置する気化器23へと送られる。流体が、このいわゆる1次気化器23において気化する。生成される水蒸気の量が充分でない場合には、フラスコに接続された2次気化器24を並列に使用することも可能である。この2次気化器24は、基本的には放射によって伝えられる熱を吸収する1次気化器23と異なり、高温ガスの対流によって伝えられる熱の大部分を吸収する。予熱器が、すでに蒸気割合が充分に高い流体を生み出す場合には、2次気化器24のみを使用して水蒸気を生成することもできる。過熱器(図示されていない)が必要とされる場合には、通常は2次気化器のレベルに配置され、すなわち2次気化器のすぐ上流または2次気化器と同じレベルに配置され、あるいは随意により1次気化器の下流に配置される。
【0046】
図3を参照すると、本発明の1つの実施形態によれば、ボイラーは1つ以上の火炎を下方に向けて垂直に配置されている。ボイラー30が燃焼室31を有しており、燃焼室31に、例えばガスまたは重油製品の供給源32からこれらの供給を受けるバーナーが備え付けられている。燃焼室の火炎の温度は、例えば約2000〜3000℃である。予熱器33が、燃焼室31に接続されている。この予熱器33へと、パイプ34を介して低温水が供給される。一例として、低温水は、約180barの圧力のもとで約136℃の温度にある。一般に、本発明において使用される低温水の特性は、以下の範囲に位置ある。すなわち、105〜170℃の間の温度、および8〜500barの間の圧力である。
【0047】
予熱済み流体は、パイプ35を介して予熱器33から出るが、約180barの圧力のもとで約337℃の温度にある。一般に、本発明において使用される加熱後の流体の特性は、以下の範囲にある。すなわち、170〜600℃の間の温度、および8〜500barの間の圧力である。
【0048】
加熱された流体は、水/蒸気分離フラスコ36へと送られる。フラスコ36の底部の水は、パイプ37を介して1次気化器38へと送られる。この気化器38において水蒸気が生成され、パイプ39を介して1次気化器38から出て、フラスコ36へと送られる。この水蒸気は、約180barの圧力のもとで約357℃の温度にある。一般に、本発明において生成される蒸気の特性は、以下の範囲にある。すなわち、170〜600℃の間の温度、および8〜500barの間の圧力である。
【0049】
燃焼室31からの出口において、すなわち1次気化器38からの出口において、ガスの温度は約1000℃〜1300℃である。1次気化器のレベルにおいて生成される水蒸気の量をさらに増加させるため、より低い出口温度を達成することが可能である。この温度の選択は、同じ蒸気の生成を達成するために必要な1次および2次気化器の追加の熱交換表面積を比較検討し、経済的な最適条件によって決定される。
【0050】
しかしながら、前記の経済的最適条件の理由により、放射領域からの出口を1000℃〜1300℃という温度に設定すると、基本的に対流によって加熱される2次気化器40を使用して、生成される水蒸気の量を増やすことができる。フラスコ36の底部の水が、パイプ41を介して2次気化器40へと送られる。この2次気化器40において水蒸気が生成され、パイプ42を介して2次気化器40から出て、フラスコ36へと送られる。この水蒸気は、約180barの圧力のもとで約357℃の温度にある。燃焼排気ガスは、最終的に煙道43を介してボイラーから出る。
【0051】
随意により、排気ガスを燃焼の際に形成された水から特には凝縮によって分離するために、分離器44を設けることができる。その結果、実質的に乾燥したCOガスの流れが、パイプ45を介して取り出される。
【0052】
以下で、本発明によるボイラーの特定の構成要素、すなわち水予熱器、1次の放射気化器、2次の対流気化器、および過熱器をさらに詳しく説明する。
【0053】
水予熱器
すでに述べたように、燃焼室は、基本的には、水予熱器によって構成されており、さらに詳しくは、燃焼領域の周囲が水予熱器によって構成されている。この水予熱器は、一般的には、好ましくは外側が滑らかな真っ直ぐな管を有している。好都合には、これらの管は、互いに独立している。管の外径をd、管の軸の間の中心距離をpとすると、管の「ピッチ」である比p/dを得ることができる。このピッチは、例えば2〜3である。これらの管の内側は、溝付き(「波形」)であっても、滑らかであってもよく、あるいは1つの変形例としては、挿入物により滑らかであってもよい。これらの管が、断面が円形または矩形であってよい燃焼室の全周に配置される。これらの管へと低温水が、集合部(collector)から底部を介して供給される。高温水は、上部から取り出される。これにより、生じうる局所的な気化によって流体の全体的な移動が妨げられることがない。この予熱器を構成している管は、それらの厚さを抑え、さらには/あるいは内部の熱伝達係数を向上させるため、好ましくは直径が小さい。並行流動作も可能であるが、その場合にはバーナーが床面に配置される。バーナーを側方に配置することもできる。
【0054】
水気化部は、2つの別個の気化器を有しており、すなわち1次の放射気化器および他方の2次の対流気化器を有している。
【0055】
1次の放射気化器
放射気化器は、バーナーが燃焼室の上部に位置している場合には、水予熱器の直ぐ下方に位置し、バーナーが燃焼室の底部に位置している場合には、水予熱器の直ぐ上方に位置する。この気化器は、外側が滑らかであって、内側が溝付きまたは滑らかである真っ直ぐな管を有している。この気化器に、フラスコから来る高温水が、充分な大きさに設計された下向きの水配管および集合部を介して供給される。これらの管において生成された水蒸気が、この気化器からの上部出口の付近に位置する集合部を介して、フラスコへと戻される。水‐蒸気の乳濁液(emulsion)の循環は、自然の循環によって生じることができ、随意により強制再循環によって生じさせることができる。
【0056】
並行流動作も可能である。管の直径は、特には、熱の流れの良好な吸収と乳濁液の充分な循環との間の最適化によって選択される。水予熱器と放射気化器とからなる集合部は、燃焼室からの出口における燃焼排気の温度が1000〜1300℃の間に位置するように、設計されている。これら2つの熱交換器のそれぞれへと伝達されるエネルギー量の配分は、ボイラーの蒸気圧力の関数である。
【0057】
2次の対流気化器
補完的な気化が、燃焼室の下流に位置した対流熱交換器にて実行される。この気化器の管の束に、フラスコからの高温水が、放射気化器への供給を行う水配管とは別個の下向きの水配管を介して供給され、あるいは一変形例として、同じ配管を介して供給される。この気化器の管の束は、垂直であっても、あるいは水平に対して斜めであってもよく、この場合には、水‐蒸気の乳濁液の循環が自然であることができる。あるいはこの気化器の管の束が、水平な管を備えてもよく、その場合には、循環が別個独立のポンプによって、あるいは随意により1次の放射気化器への供給を行うポンプと同じポンプによって、強制的に行われる。燃焼生成物の質および実質的に無塵埃であれば、最も低温の管の外側にブレードを備えることができる。1000〜1300℃の間の温度でこの気化器へと進入できる燃焼排気は、例えば気化温度を上回ること10〜20℃の温度まで冷却される。
【0058】
過熱器
過熱器(図示されていない)は、一般的には、対流気化器の前またはこの対流気化器の管の最初の列の後に配置される。この過熱器は、2つまたは3つの管の束を含むことができる。これらの束のそれぞれの間において、水を注入する過熱抑制装置によって、過熱蒸気の温度を制御することができる。
【0059】
図4Aを参照すると、従来からのボイラーの燃焼室の断面が示されている。外側の(防水の)囲い51と、水‐蒸気の乳濁液が循環する管52a、52bなどとを有しており、管52a、52bなどがブレード53a、53bなどによって互いに接続され、防水の囲いを形成している。この場合、これらの管が標準的な気化器を形成している。
【0060】
図4Bを参照すると、本発明の1つの実施形態によるボイラーの燃焼室の断面が示されている。耐火材料で被覆された防水の外側の囲い51を有している。低温水の循環のための管54a、54bなどが、例えば炉の方向かつ炉の周囲に同心状に配置されている。この場合には、これらの管54a、54bなどが予熱器を形成している。この配置構成によれば、これらの管が、それらの全表面にわたって熱の流れを受け取ることができ、火炎と反対側の表面は、耐火壁によって再放射された熱放射を受け取る。
【0061】
この予熱器の下方において、1次気化器を、耐火壁を管の背後に位置させつつ予熱器と同様の要領で設計でき、あるいは遮蔽を形成するとともに燃焼室の防水を保証する互いに一体の長手方向のブレードを備える管によって、より従来の要領で設計することができる。
【0062】
図4Bにおいては、燃焼室が一例として、防水の外側の囲い51と、ブレード53a、53bなどによって互いに接続されて防水の囲いを形成する管52a、52bなどとを有している。この場合には、これらの管52a、52bなどが、気化器を形成している。他の低温水の循環管54a、54bなどが、例えば炉の方向かつ炉の周囲に同心状に配置されている。この場合には、これらの管54a、54bなどが、予熱器を形成している。この変形例は、熱の流れが依然として限られている場合に特に適している。この設計によれば、特には蒸気の割合がすでに高い領域において、気化器の管への直接の熱放射を抑えることが可能になる。
【0063】
さらに、この変形例によれば、水予熱器として機能する追加の管を、すでに気化器の管の束が備えられている既存の燃焼室に挿入すればよく、特定のボイラーをより低いコストで本発明のボイラーへと改造することができる。
【0064】
そのような改造は、該当のボイラーが元々は空気を酸化剤とする燃焼のために構成されていて、壁の表面積が比較的大きいので、有利である。
【0065】
本発明は、従来からのボイラーと比べて次の利点を有する。大気が供給されるボイラーと比べた場合、純粋な酸素での燃焼は、窒素の重荷を顕著に減少させ、COの収集を容易にする。
【0066】
この窒素の重荷の減少により、次の利点がある。火炎によって直接放射される流れが増加し、燃焼排気によって放射される流れが増加する。直接放射流の効果は、燃焼温度が高くなることに起因し、燃焼排気の放射流は、気体層の厚さが同じであればCO+HOの濃度が高くなるほど燃焼排気の放射エネルギが増すことによる(実際、3原子の気体は、2原子の気体と異なり放射エネルギが高い)。したがって、熱交換に必要とされる表面積が顕著に小さくなる。生成される燃焼排気量が減少する。この減少は、対流熱交換の減少につながり、結果として対流熱交換器の表面積の低減につながる。
【0067】
本発明による酸素燃焼ボイラーは、同様の出力および収率であれば、大気を使用するボイラーの燃焼室よりも燃焼室が小さく、明らかに対流の管の束は顕著に少なくなる。したがって、コストおよび重量が低減され、これらの特徴のうちの重量低減は、沖合への設置の場合に最も重要である。
【0068】
酸素が供給されるCOの再循環付きのボイラーと比べた場合、酸素燃焼による高い温度レベルで生じる問題を解決するため、1つの解決手段は、ボイラーの下流から来るCOを再循環することによって火炎を希釈することにある。
【0069】
これにより、燃焼領域から直接放射される熱の流れが、より小さくなる。しかしながら、燃焼室の表面積が大気を使用するボイラーの表面積と同程度の大きさになるため、コンパクトの利点は失われてしまう。
【0070】
燃焼排気またはCOの再循環には、比較的大きな再循環・ネットワークが必要であり、再循環用のブロアのための追加のエネルギー消費をともなう。いかなる種類の再循環でも、常に、本発明にはない欠点になる。再循環される燃焼排気がボイラーからの出口から直接取り出される場合、再循環がボイラーの熱の収率に影響を及ぼさない反面、再循環される気体の温度および量ゆえに、追加のエネルギー消費が大きくなる。さらに、再循環される流体の温度が露点温度に近い場合、硫黄の腐食作用に注意しなければならない。COが冷却および酸凝縮物との分離の後に取り出される場合、温度が明らかにより低く、凝縮が低い温度で生じるため追加のエネルギー消費は少なくなるが、ボイラーの収率が、このCOをボイラー出口温度まで加熱することによって悪化する。
【0071】
本発明による方法は、加圧して実施することが可能であり(加圧された燃焼室を備えるボイラー)、これは、生成されたCOの再注入が望まれる場合に利点となる。
【0072】
本発明は、上述の実施の形態には限られず、当業者であれば容易に考えることができる多数の変形を技術的範囲とする。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】従来からのボイラーにおける流体の循環の概略図である。
【図2】本発明のボイラーにおける流体の循環を示す概略図である。
【図3】本発明の1つの実施形態によるボイラーにおける流体の循環を示している。
【図4A】従来技術のボイラーの部分断面図である。
【図4B】本発明の他の実施形態のボイラーの部分断面図である。
【符号の説明】
【0074】
20、30 酸素燃焼に適したボイラー
21、31 燃焼室
22,33 水予熱器
23、24、38、40 気化器
52a、52b 管
53a、53b 独立の管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼室(21、31)、水予熱器(22、33)および気化器(23、24、38、40)とを有している酸素燃焼に適したボイラー(20、30)であって、
前記燃焼室(21、31)が少なくとも部分的に前記水予熱器(22、33)で構成されているボイラー。
【請求項2】
請求項1において、前記燃焼室が完全に前記予熱器で構成されているボイラー。
【請求項3】
請求項1または2において、前記予熱器(33)が、2〜3のピッチに従った複数の個々に独立した管(53a、53b)からなる第1の束を有しているボイラー。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか一項において、前記予熱器(33)が、内側に溝が付けられた管(53a、53b)からなる第1の束を有しているボイラー。
【請求項5】
請求項1〜4の何れか一項において、前記気化器が放射気化器であるボイラー。
【請求項6】
請求項1〜4の何れか一項において、前記気化器が放射気化器および対流気化器を有するボイラー。
【請求項7】
請求項1〜4の何れか一項において、前記気化器が対流気化器であるボイラー。
【請求項8】
請求項5または6において、管(52a、52b)の第2の束を有している前記放射気化器(38)が、前記燃焼室内において、管(54a、54b)の前記第1の束を有している予熱器(33)の周囲に同心状に配置されているボイラー。
【請求項9】
請求項1〜8の何れか一項において、前記予熱器によって水が供給され、前記気化器へと水を供給し、前記気化器によって蒸気が供給される水/蒸気分離フラスコをさらに有しているボイラー。
【請求項10】
請求項1〜9の何れか一項において、前記水予熱器(22、33)が、前記燃焼室(21、31)内に配置されているボイラー。
【請求項11】
請求項1〜10の何れか一項において、前記水予熱器(22、33)が、前記燃焼室(21、31)の燃焼生成物に対して対向流で動作するボイラー。
【請求項12】
請求項1〜11の何れか一項において、さらに過熱器を有しているボイラー。
【請求項13】
酸素燃焼によって高温水を生成するための方法であって、
酸素燃焼の火炎によって低温水を予熱して高温水を生成する段階を含んでいる方法。
【請求項14】
請求項13において、
前記生成した予熱済み流体を気化させる段階
をさらに有する方法。
【請求項15】
請求項14において、前記予熱済み流体を気化させる段階が、放射によって実行される方法。
【請求項16】
請求項14において、前記予熱済み流体を気化させる段階が、対流によって実行される方法。
【請求項17】
請求項14において、前記予熱済み流体を気化させる段階が、放射および対流によって実行される方法。
【請求項18】
請求項13〜17の何れか一項において、前記酸素燃焼の火炎によって低温水を予熱する段階が、対向流によって実行される方法。
【請求項19】
請求項13〜18の何れか一項において、前記酸素燃焼の火炎の温度が、2000〜3300℃の間、好ましくは2500〜3000℃の間である方法。
【請求項20】
請求項13〜18の何れか一項において、前記低温水の温度が105〜170℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である方法。
【請求項21】
請求項13〜20の何れか一項において、前記予熱済み流体の温度が170〜600℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である方法。
【請求項22】
請求項13〜21の何れか一項において、前記予熱済み流体が、水/蒸気の質量比が、100/0から50/50まで、好ましくは100/0から70/30まで、好都合には95/5から80/20まで変化する水と蒸気を有している方法。
【請求項23】
請求項14〜22の何れか一項において、生成される蒸気の温度が170〜600℃の間であり、その圧力が8〜500barの間である方法。
【請求項24】
請求項14〜23の何れか一項において、生成された蒸気を過熱する段階をさらに含んでいる方法。
【請求項25】
請求項13〜24の何れか一項において、前記水予熱段階の後の燃焼排気の温度が1200〜600℃である方法。
【請求項26】
請求項13〜25の何れか一項において、前記気化段階の後の燃焼排気の温度が250〜150℃である方法。
【請求項27】
請求項13〜26の何れか一項において、請求項1〜12の何れか一項に記載の装置において実行される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【公表番号】特表2008−506088(P2008−506088A)
【公表日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519840(P2007−519840)
【出願日】平成17年7月6日(2005.7.6)
【国際出願番号】PCT/FR2005/001745
【国際公開番号】WO2006/016042
【国際公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【出願人】(505036674)トータル・フランス (39)
【氏名又は名称原語表記】TOTAL FRANCE
【Fターム(参考)】