説明

重合体共役物オピオイドアンタゴニスト

【課題】オピオイドの鎮痛効果を妨害することなく、オピオイドにより誘発される副作用(例えば、便秘)を少なくするかなくすこと。
【解決手段】本発明は、オピオイドアンタゴニストの重合体共役物を提供し、これは、オピオイドアンタゴニストに共有結合した重合体(例えば、ポリ(エチレングリコール))を含有する。この重合体とオピオイドアンタゴニストとの間の連鎖は、好ましくは、加水分解安定性である。本発明はまた、本発明の重合体共役物を投与することにより、オピオイドアンタゴニストの使用に伴う1つまたはそれ以上の副作用(例えば、便秘、悪心またはそう痒症)を治療する方法を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、生体活性分子の水溶性重合体共役物に関し、特に、オピオイドアンタゴニスト(例えば、ナロキソン)の水溶性重合体共役物および関連した製薬組成物およびそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
アヘンの天然および合成アルカロイド(すなわち、オピオイド)は、激しい痛みを治療する鎮痛薬として、有用である。オピオイドは、以下の3種類の内因性オピオイドレセプタを標的にする:μ−レセプタ、δ−レセプタおよびκ−レセプタ。多くのオピオイド(例えば、モルヒネ)は、μ−レセプタアゴニストであり、これらは、脳および中枢神経系(CNS)でオピオイドレセプタを活性化することによる非常に有効な鎮痛化合物である。しかしながら、オピオイドレセプタは、CNSに限定されず、身体全体の他の組織でも見られ得る。CNSの外側に位置しているこれらのレセプタは、末梢レセプタと呼ばれている。オピオイドの使用に付随した多くの副作用は、末梢レセプタの活性化により、引き起こされる。例えば、オピオイドアゴニストを投与すると、腸壁にある多数のレセプタに対するオピオイドアゴニストの作用が原因で、しばしば、腸機能障害を引き起こす。具体的には、オピオイドは、一般に、悪心および嘔吐だけでなく、動物における推進力のある正常な胃腸機能の阻害(これにより、便秘のような副作用が生じる)を引き起こすことが知られている。
【0003】
オピオイドにより誘発される副作用は、短期および長期の両方の痛み管理のためにオピオイド鎮痛薬を投与している患者には、重大な問題である。例えば、毎年、250,000人以上の末期癌患者は、鎮痛のためにオピオイド(例えば、モルヒネ)を服用しているが、これらの患者のうちの約半数は、ひどい便秘を経験している。多くの状況では、不快感があまりに大きいので、患者は、便秘を避けるために、鎮痛を控えることを選択している。この問題を検討する目的で、オピオイドにより誘発される副作用を阻止するのに使用するために、血液脳関門を容易には通過しない特定のオピオイドアンタゴニスト化合物が試験されている。例えば、末梢μ−オピオイドアンタゴニスト化合物であるメチルナルトレキソンおよび関連化合物は、オピオイドにより誘発される副作用を緩和するのに使用することが示唆されている。例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3および特許文献4(これらは、オピオイドにより誘発されるそう痒症、悪心および/または嘔吐を抑制する際に、メチルナルトレキソンおよび関連化合物を使用することを記述している)を参照。しかしながら、メチルナルトレキソンは、実験的薬剤であり、市販されていない。残念なことに、現在利用できるオピオイドアンタゴニストの殆ど(例えば、第三級オピオイドアンタゴニストであるナロキソン)は、小分子であり、これらは、腸に付随した末梢レセプタでアンタゴニスト活性を有するだけでなく、それらが血液脳関門を通過するので、CNSレセプタでもアンタゴニスト活性を有する。結果的に、多くのオピオイドアンタゴニストは、オピオイドベースの鎮痛薬の投与により起こる痛みの緩和を妨害する。それゆえ、現在では、オピオイド鎮痛剤を受けている患者は、厄介な激しい副作用(例えば、便秘)に苦しむか、鎮痛効果が不十分となるかの困難な選択に直面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第5,972,954号明細書
【特許文献2】米国特許第5,102,887号明細書
【特許文献3】米国特許第4,861,781号明細書
【特許文献4】米国特許第4,719,215号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
それゆえ、当該技術分野において、既存の化合物を改良または改善する代替化合物または手法(これは、高用量で投与したときでさえ、オピオイドの鎮痛効果を妨害することなく、オピオイドにより誘発される副作用(例えば、便秘)を少なくするかなくすことができる)が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の要旨)
本発明は、鎮痛作用を無効にし影響を与えることなく、オピオイドにより誘発される副作用(例えば、便秘)を治療するように設計された水溶性重合体変性オピオイドアンタゴニスト化合物の開発に基づいている。
【0007】
1局面では、本発明は、重合体共役物を提供し、該重合体共役物は、水溶性非ペプチド重合体を含有し、該水溶性非ペプチド重合体は、オピオイドアンタゴニストに共有結合されている。
【0008】
オピオイドアンタゴニストに共有結合するのに適当な重合体には、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィン性アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、およびそれらの共重合体、三元共重合体および混合物が挙げられる。本発明の1実施態様では、前記重合体は、ポリエチレングリコールである。代替実施態様では、前記重合体は、ポリアクリル酸である。
【0009】
本発明の共役物の重合体部分は、直鎖(例えば、メトキシPEG)、分枝またはフォーク形であり得る。本発明の特定の実施態様(ここで、この重合体は、直鎖である)では、この共役物は、ヘテロ二官能性またはホモ二官能性重合体を取り込み得る。ヘテロ二官能性重合体の共役物は、その重合体の一端がオピオイドアンタゴニストに結合し他端が異なる部分で官能化されたものである。ホモ二官能性重合体の共役物は、直鎖重合体の各末端が典型的には同じ連鎖でオピオイドアンタゴニストに結合した構造を有する。
【0010】
代表的なオピオイドアンタゴニストには、ブプレノルフィン、シクラゾシン、シクロルファン、ナロキソン、N−メチルナロキソン、ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、ナルメフェン、6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソン、レバロルファン、ナルブフィン、ナルトレンドール、ナルトリンドール、ナロルフィン、ノルビナルトルフィミン、オキシロルファン、ペンタゾシン、ピペリジン−N−アルキルカルボキシレートオピオイドアンタゴニスト、およびオピオイドアンタゴニストポリペプチドが挙げられる。特に好ましいオピオイドアンタゴニストは、ナロキソンまたはその誘導体(例えば、6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソン)である。
【0011】
さらに他の実施態様では、前記重合体共役物は、加水分解安定性連鎖を介して、前記オピオイドアンタゴニストに共有結合されている。前記加水分解安定性連鎖には、アミド、アミン、カーバメート、エーテル、チオエーテルおよび尿素ベースの連鎖が挙げられる。
【0012】
本発明の1実施態様では、前記重合体の分子量は、約5,000ダルトン(Da)未満である。
【0013】
さらに他の実施態様では、前記重合体の分子量は、約2,000Da未満である。
【0014】
さらにより好ましい実施態様では、前記重合体の分子量は、約1,000Da未満である。
【0015】
さらに他の実施態様では、前記重合体の分子量は、約800Da未満である。
【0016】
他の局面では、本発明は、薬学的に受容可能な担体と組み合わせて上記重合体共役物を含有する製薬組成物を包含する。
【0017】
さらに他の局面によれば、本発明は、オピオイドアンタゴニストに共有結合した水溶性非ペプチド重合体の共役物を投与することにより、オピオイド投与の少なくとも1つの副作用(特に、胃腸系に伴う副作用(例えば、悪心および便秘))を治療する方法を提供する。
【0018】
前記方法の1実施態様では、前記共役物は、好ましくは、オピオイドアゴニストと共同して投与され、このことは、該共役物が、該オピオイドアゴニストと同時にまたは該オピオイドアゴニストの投与前または投与後の短時間で投与されることを意味する。該方法のさらに他の実施態様では、該共役物は、経口投与される。
【0019】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)
以下を含有する製薬組成物:
重合体共役物であって、該重合体共役物は、水溶性非ペプチド重合体を含有し、該水溶性非ペプチド重合体は、オピオイドアンタゴニストに共有結合されている;および
薬学的に受容可能な担体。
(項目2)
前記重合体が、ポリ(アルキレングリコール)、ポリ(オキシエチル化ポリオール)、ポリ(オレフィン性アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)、ポリ(アクリル酸)、カルボキシメチルセルロース、ヒアルロン酸、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ならびにそれらの共重合体、三元共重合体および混合物からなる群から選択される、項目1に記載の製薬組成物。
(項目3)
前記重合体が、ポリ(エチレングリコール)である、項目1に記載の製薬組成物。
(項目4)
前記重合体が、ポリ(アクリル酸)である、項目1に記載の製薬組成物。
(項目5)
前記オピオイドアンタゴニストが、ブプレノルフィン、シクラゾシン、シクロルファン、ナロキソン、6−アミノ−ナロキソン、N−メチルナロキソン、ナルトレキソン、6−アミノ−ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、ナルメフェン、レバロルファン、ナルブフィン、ナルトレンドール、ナルトリンドール、ナロルフィン、ノルビナルトルフィミン、オキシロルファン、ペンタゾシン、ピペリジン−N−アルキルカルボキシレートオピオイドアンタゴニスト、およびオピオイドアンタゴニストポリペプチドからなる群から選択される、項目1に記載の製薬組成物。
(項目6)
前記水溶性非ペプチド重合体が、加水分解安定性連鎖を介して、前記オピオイドアンタゴニストに共有結合されている、項目1に記載の製薬組成物。
(項目7)
前記加水分解安定性連鎖が、アミド、アミン、カーバメート、スルフィド、エーテル、チオエーテルおよび尿素からなる群から選択される、項目6に記載の製薬組成物。
(項目8)
前記重合体の分子量が、約2,000Da未満である、項目1に記載の製薬組成物。
(項目9)
前記重合体の分子量が、約1,000Da未満である、項目1に記載の製薬組成物。
(項目10)
前記重合体の分子量が、約800Da未満である、項目1に記載の製薬組成物。
(項目11)
前記重合体共役物が、以下の構造を有する、項目1に記載の製薬組成物:
【化1】

ここで、
ポリは、水溶性非ペプチド重合体である;
Xは、加水分解安定性連鎖である;
Yは、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、置換C1〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、置換C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、置換C2〜C6アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環からなる群から選択される;
Zは、HまたはOHである;そして
点線は、任意の二重結合を示す、
製薬組成物。
(項目12)
Yが、アリル、(シクロブチル)メチルおよび(シクロプロピル)メチルからなる群から選択される、項目11に記載の製薬組成物。
(項目13)
Xが、−NH−(CHR−O−または−NH−C(O)−(CHR−O−であり、
mが、1〜12であり、そして
各Rが、別個に、HまたはC1〜C6アルキルである、項目11に記載の製薬組成物。
(項目14)
前記重合体共役物が、以下の構造を有する、項目1に記載の製薬組成物:
【化2】


ここで、
ポリは、水溶性非ペプチド重合体である;
Xは、加水分解安定性連鎖である;
Yは、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、置換C1〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、置換C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、置換C2〜C6アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環からなる群から選択される;
Zは、HまたはOHである;
点線は、任意の二重結合を示す;そして
およびRは、それぞれ別個に、水素またはOHであるか、あるいは一緒になって、=CHまたは=Oを形成する
製薬組成物。
(項目15)
Yが、アリル、(シクロブチル)メチルおよび(シクロプロピル)メチルからなる群から選択される、項目14に記載の製薬組成物。
(項目16)
Xが、ヘテロ原子である、項目14に記載の製薬組成物。
(項目17)
さらに、オピオイドアゴニストを含有する、項目1に記載の製薬組成物。
(項目18)
前記オピオイドアゴニストが、アルフェンタニル、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、シクラゾシン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルヒネ、ナルブフィン、ノスカピン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベリン、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、テバインおよびトラマドールからなる群から選択される、項目17に記載の製薬組成物。
(項目19)
哺乳動物にオピオイドアゴニストを投与することにより生じる副作用を治療する方法であって、該方法は、該哺乳動物に、治療有効量の重合体共役物を投与する工程を包含し、該重合体共役物は、水溶性非ペプチド重合体を含有し、該水溶性非ペプチド重合体は、オピオイドアンタゴニストに共有結合されている、
方法。
(項目20)
前記副作用が、悪心、便秘およびそう痒症からなる群から選択される、項目19に記載の方法。
(項目21)
前記重合体共役物が、経口投与される、項目19に記載の方法。
(項目22)
前記重合体共役物が、前記オピオイドアゴニストと共同して投与される、項目19に記載の方法。
(項目23)
前記重合体共役物および前記オピオイドアゴニストが、短回投薬単位で処方される、項目22に記載の方法。
(項目24)
水溶性非ペプチド重合体を含有する重合体共役物であって、該水溶性非ペプチド重合体は、オピオイドアンタゴニストに共有結合されており、ここで、該水溶性非ペプチド重合体は、約2,000Da未満の分子量を有する、重合体共役物。
(項目25)
前記重合体が、ポリ(エチレングリコール)である、項目24に記載の重合体共役物。
(項目26)
前記重合体が、直鎖または分枝である、項目24に記載の重合体共役物。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(発明の詳細な説明)
さて、本発明は、以下でさらに詳細に記述する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具体化され得、本明細書中で述べた実施態様に限定されるとは解釈すべきではない;むしろ、これらの実施態様は、本開示が徹底的で完全であり本発明の範囲を当業者に十分に伝えるように、提供されている。
【0021】
(I.定義)
本明細書中で使用する以下の用語は、指示した意味を有する。
【0022】
本明細書および添付の請求の範囲で使用する単数形「a」、「an」、「the」は、特に明記しない限り、複数の指示物を含む。
【0023】
「官能基」、「活性部分」、「反応部位」、「化学反応基」および「化学反応部分」との用語は、当該技術分野で使用され、本明細書中では、ある分子の別個の限定できる部分または単位を意味する。これらの用語は、化学分野において、ある程度、同義であり、本明細書中では、ある機能または活性を果たし他の分子と反応性である分子部分を意味するように使用される。「活性」との用語は、官能基と併用するとき、反応するのに強力な触媒または非常に非実用的な反応条件を必要とする基(すなわち、「非反応性」または「不活性」基)とは対照的に、他の分子上の求電子基または求核基と容易に反応する官能基を含むと解釈される。例えば、当該技術分野で理解できるように、「活性エステル」との用語なら、求核基(例えば、アミン)と容易に反応するエステルを含む。代表的な活性エステルには、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたは1−ベンゾトリアゾリルエステルが挙げられる。典型的には、活性エステルは、水性媒体中にて、数分足らずで、アミンと反応するのに対して、ある種のエステル(例えば、メチルエステルまたはエチルエステル)は、求核基と反応するのに、強力な触媒が必要である。本明細書中で使用する「官能基」との用語は、保護官能基を含む。
【0024】
「保護官能基」または「保護基(protecting group)」もしくは「保護基(protective group)」「との用語は、ある反応条件下にて分子内の特定の化学的に反応性の官能基の反応を防止または阻止する部分(すなわち、保護基)の存在を意味する。この保護基は、保護する化学反応基だけでなく使用する反応条件および分子内の追加反応基または保護基(もしあれば)の存在に依存して、変わる。当該技術分野で公知の他の保護基は、Greene,T.W.ら、PROTECTIVE GROUPS IN ORGANIC SYNTHESIS,3版、John Wiley &
Sons,New York,NY(1999)で見出すことができる。
【0025】
「連鎖」または「リンカー」(L)との用語は、本明細書中にて、好ましくは、生体活性剤(例えば、オピオイドアンタゴニスト)上に存在している1個以上の共有結合、相互接続部分(例えば、2個の重合体セグメントまたは重合体末端)および反応性官能基により、連結するのに使用される原子または原子の集合体を意味する。本発明のリンカーは、加水分解安定性であり得るか、または生理学的に加水分解可能または酵素分解可能な連鎖を含み得る。
【0026】
「生理学的に加水分解可能」または「加水分解的に分解可能」な結合とは、生理学的条件下にて水と反応する(すなわち、加水分解される)弱い結合である。pH8、25℃で、約30分間未満の加水分解半減期を有する結合が好ましい。ある結合が水中で加水分解する傾向は、2個の中心原子を接続する連鎖の一般的な形式だけでなく、これらの中心原子に結合する置換基に依存している。適当な加水分解不安定または分解性の連鎖には、カルボン酸エステル、リン酸エステル、無水物、アセタール、ケタール、アシルオキシアルキルエーテル、イミン、オルトエステル、ペプチドおよびオリゴヌクレオチドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
「加水分解安定性」連鎖または「加水分解安定性」結合とは、水中で実質的に安定な(すなわち、生理学的条件下にて、長時間にわたって、任意の適当な範囲まで、加水分解を受けない)化学結合(典型的には、共有結合)を意味する。加水分解安定性連鎖の例には、以下が挙げられるが、これらに限定されない:炭素−炭素結合(例えば、脂肪族鎖にあるもの)、エーテル、アミド、ウレタンなど。一般に、加水分解安定性連鎖は、生理学的条件下にて、1日あたり、約1〜2%の加水分解速度を示すものである。代表的な化学結合の加水分解速度は、殆どの標準的な化学教本で見られる。
【0028】
「酵素的に不安定性」または分解性の連鎖とは、1種以上の酵素により分解できる連鎖である。
【0029】
「重合体骨格」との用語は、その重合体を形成する繰り返しモノマー単位の共有結合鎖を意味する。重合体および重合体骨格との用語は、本明細書中にて、交換可能に使用される。例えば、PEGの重合骨格は、−CHCHO−(CHCHO)−CHCHであり、ここで、nは、典型的には、約2〜約4000の範囲である。理解できるように、この重合体骨格は、その重合体骨格に沿って間隔を開けて配置された末端官能基またはペンダント官能化側鎖に共有結合され得る。
【0030】
「反応性重合体」との用語は、少なくとも1個の反応性官能基を有する重合体を意味する。
【0031】
特に明記しない限り、分子量は、本明細書中では、数平均分子量(Mn)として表わされ、これは、以下で定義される:
【0032】
【化3】

ここで、Niは、分子量Miを有する重合体分子の数(またはこれらの分子のモル数)である。
【0033】
「アルキル」、「アルケニル」および「アルキニル」との用語は、鎖長が典型的には約1個〜約12個の炭素原子(好ましくは、1個〜約6個の炭素原子)の範囲である炭化水素鎖を意味し、これには、直鎖および分枝鎖が含まれる。
【0034】
「シクロアルキル」とは、飽和または不飽和の環状炭化水素鎖を意味し、これには、架橋、縮合またはスピロ環式化合物が含まれ、これらは、好ましくは、3個〜約12個の炭素原子、さらに好ましくは、3個〜約8個の炭素原子を含有する。
【0035】
「置換アルキル」、「置換アルケニル」、「置換アルキニル」または「置換シクロアルキル」との用語は、例えば、以下の(それらに限定されないが)1種またはそれ以上の非妨害置換基で置換されたアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、またはシクロアルキル基を意味する:C3〜C8シクロアルキル(シクロプロピル、シクロブチルなど);アセチレン;シアノ;アルコキシ(例えば、メトキシ、エトキシなど);低級アルカノイルオキシ(例えば、アセトキシ);ヒドロキシ;カルボキシ;アミノ;低級アルキルアミノ(例えば、メチルアミノ);ケトン;ハロ(例えば、クロロまたはブロモ);フェニル;置換フェニルなど。
【0036】
「アルコキシ」とは、−O−R基を意味し、ここで、Rは、アルキルまたは置換アルキル、好ましくは、C1〜C6アルキル(例えば、メトキシまたはエトキシ)を意味する。
【0037】
「アリール」とは、1個またはそれ以上の芳香環を意味し、これらは、それぞれ、5個または6個の核炭素原子を有する。複数のアリール環は、ナフチルのように縮合され得るか、またはビフェニルのように非縮合であり得る。アリール環はまた、1個またはそれ以上の環状炭化水素環、ヘテロアリール環または複素環式環で縮合され得るか、非縮合であり得る。
【0038】
「置換アリール」とは、置換基として1個またはそれ以上の非妨害基を有するアリールである。フェニル環での置換について、これらの置換基は、任意の配向であり得る(すなわち、オルト、メタまたはパラ)。
【0039】
「ヘテロアリール」とは、1個〜4個のヘテロ原子(好ましくは、N、OもしくはSまたはそれらの組合せ)を含有するアリール基であり、そのヘテロアリール基は、必要に応じて、炭素原子または窒素原子において、C1〜6アルキル、−CF、フェニル、ベンジルまたはチエニルで置換されるか、そのヘテロアリール基にある炭素原子は、酸素原子と一緒になって、カルボニル基を形成するか、そのヘテロアリール基は、必要に応じて、フェニル環で縮合される。ヘテロアリール環はまた、1個またはそれ以上の環状炭化水素、複素環式環、アリールまたはヘテロアリール環と縮合され得る。ヘテロアリールには、1個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール(例えば、チオフェン、ピロール、フラン);1,2−位置または1,3−位置に2個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール(例えば、オキサゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、プリン);3個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール(例えば、トリアゾール、チアジアゾール);3個のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール;1個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、ピリジン、キノリン、イソキノリン、フェナントリン(phenanthrine)、5,6−シクロヘプテノピリジン);2個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、ピリダジン、シンノリン、フタラジン、ピラジン、ピリミジン、キナゾリン);3個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリール(例えば、1,3,5−トリアジン);および4個のヘテロ原子を有する6員ヘテロアリールが挙げられるが、これらに限定されない。
【0040】
「置換ヘテロアリール」とは、置換基として1個またはそれ以上の非妨害基を有するヘテロアリールである。
【0041】
「複素環」または「複素環式」とは、5〜12個の原子(好ましくは、5〜7個の原子)を有する1個またはそれ以上の環であって、これは、不飽和特性または芳香族特性を備えているか備えておらず、その少なくとも1個の環原子は、炭素ではない。好ましいヘテロ原子には、イオウ、酸素および窒素が挙げられる。複数の環は、キノリンまたはベンゾフランのように縮合され得る。
【0042】
「置換複素環」とは、非妨害置換基から形成された1個またはそれ以上の側鎖を有する複素環である。
【0043】
「非妨害置換基」とは、分子内で存在しているとき、その分子内に含まれている他の官能基と典型的には非反応性である基である。
【0044】
適切な非妨害置換基またはラジカルには、ハロ、C1〜C10アルキル、C2〜C10アルケニル、C2〜C10アルキニル、C1〜C10アルコキシ、C7〜C12アラルキル、C7〜C12アルカリール、C3〜C10シクロアルキル、C3〜C10シクロアルケニル、フェニル、置換フェニル、トルオイル、キシレニル、ビフェニル、C2〜C12アルコキシアルキル、C7〜C12アルコキシアリール、C7〜C12アリールオキシアルキル、C6〜C12オキシアリール、C1〜C6アルキルスルフィニル、C1〜C10アルキルスルホニル、−(CH−O−(C1〜C10アルキル)(ここで、mは、1〜8である)、アリール、置換アリール、置換アルコキシ、フルオロアルキル、複素環ラジカル、置換複素環ラジカル、ニトロアルキル、−NO、−CN、−NRC(O)−(C1−C10アルキル)、−C(O)−(C1−C10アルキル)、C2−C10チオアルキル、−C(O)O−(C1−C10アルキル)、−OH、−SO、=S、−COOH、−NR、カルボニル、−C(O)−(C1−C10アルキル)−CF、−C(O)−CF、−C(O)NR、−(C1−C10アルキル)−S−(C6−C12アリール)、−C(O)−(C6−C12アリール)、−(CH−O−(CH−O−(C1−C10アルキル)(ここで、各mは、1〜8である)、−C(O)NR、−C(S)NR、−SONR、−NRC(O)NR、−NRC(S)NR、それらの塩などが挙げられるが、これらに限定されない。本明細書中で使用する各Rは、H、アルキルまたは置換アルキル、アリールまたは置換アリール、アラルキル、またはアルカリールである。
【0045】
「ヘテロ原子」とは、炭化水素類似化合物中の任意の非炭素原子を意味する。例には、酸素、イオウ、窒素、リン、砒素、ケイ素、セレン、テルル、スズおよびホウ素が挙げられる。
【0046】
「薬剤」、「生体活性分子」、「生体活性部分」または「生体活性剤」との用語は、本明細書中で使用するとき、生物有機体のいずれかの物理的特性または生化学的特性に影響を与えることができる任意の物質を意味し、これらには、ウイルス、細菌、真菌、植物、動物およびヒトが挙げられるが、これらに限定されない。特に、本明細書中で使用する生体活性分子には、ヒトまたは他の動物における病気の診断、治療改善、治療または予防を目的としている任意の物質であるか、そうでなければ、ヒトまたは動物の物理的または精神的健康を高める任意の物質を含む。生体活性分子の例には、ペプチド、タンパク質、酵素、低分子薬剤、染料、脂質、ヌクレオシド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、細胞、ウイルス、リポソーム、微粒子およびミセルが挙げられるが、これらに限定されない。本発明で使用するのに適切な生体活性剤のクラスには、抗生物質、殺真菌剤、抗菌剤、抗炎症剤、抗腫瘍剤、心血管剤、抗不安剤、ホルモン、成長因子、ステロイド剤などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0047】
「ポリオレフィン性アルコール」とは、ポリオレフィン骨格を含む重合体(例えば、ポリエチレン)であって、その重合体骨格には、複数のペンダント水酸基が結合しているものを意味する。代表的なポリオレフィン性アルコールは、ポリビニルアルコールである。
【0048】
本明細書中で使用する「非ペプチド性」とは、ペプチド連鎖を実質的に含まない重合体骨格をいう。しかしながら、この重合体骨格は、その骨格の長さに沿って間隔を開けて配置された少数のペプチド連鎖(例えば、約50個のモノマー単位あたり、約1個以下のペプチド連鎖)を含み得る。
【0049】
「ポリペプチド」とは、一連のアミノ酸残基(典型的には、少なくとも約10〜20個の残基)を含む任意の分子であって、そのα炭素骨格に沿ってアミノ連鎖(これはまた、ペプチド連鎖とも呼ばれている)を介して連結されたものを意味する。ある場合には、これらの用語は、本明細書中では、同義に使用され得るが、ポリペプチドは、典型的には、約10,000Daまでの分子量を有するペプチドであるのに対して、上記分子量を有するペプチドは、通例、タンパク質と呼ばれている。これらのペプチド側鎖の変性は、グリコシル化、ヒドロキシル化などと共に、存在し得る。さらに、このポリペプチドには、他の非ペプチド分子(脂質および薬剤低分子を含めて)が結合され得る。
【0050】
「残基」とは、1個またはそれ以上の分子と反応した後に残留している分子の一部を意味する。例えば、本発明の重合体共役物中のオピオイドアンタゴニスト残基は、重合体骨格との共有結合に続いて残留しているオピオイドアンタゴニストの一部である。
【0051】
「オリゴマー」とは、2個〜約10個のモノマー単位、好ましくは、2個〜約5個のモノマー単位を含む短いモノマー鎖をいう。
【0052】
「共役物」との用語は、分子(例えば、生体活性分子(例えば、オピオイドアンタゴニスト))が反応性重合体分子(好ましくは、ポリ(エチレングリコール))と共有結合した結果として形成された実体を意味すると解釈される。
【0053】
本発明の重合体の文脈において「二官能性」とは、同一または異なり得る2個の反応性官能基を有する重合体を意味する。
【0054】
本発明の重合体の文脈において「多官能性」とは、そこに3個またはそれ以上の官能基が結合した重合体を意味し、この場合、それらの官能基は、同一または異なり得る。本発明の多官能性重合体は、典型的には、約3〜100個の官能基、または3〜50個の官能基、または3〜25個の官能基、または3〜15個の官能基、または3〜10個の官能基を含むか、あるいはその重合体骨格に結合した3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の官能基を含有する。
【0055】
(II.オピオイドアンタゴニストの重合体共役物)
上で一般的に記述したように、本発明の重合体共役物は、オピオイドアンタゴニストに共有結合した水溶性非ペプチド重合体を含有する。本発明の重合体共役物は、オピオイドアンタゴニスト投与の1つまたはそれ以上の副作用(例えば、悪心、そう痒症または便秘)を治療するのに有用である。本発明の共役物は、典型的には、その共役物がi)腸内での重合体共役物の局在化濃度を高め、そして腸壁にあるオピオイドレセプタとの結合を促進するように任意の適切な程度まで内壁を通って血流に入らず、そして/またはii)血液脳関門を通ってCNSに入らないか、いずれかであるように選択された分子量を有する重合体を含有する。本発明の1つの特徴によれば、投与すると、この重合体共役物は、胃腸系に保持され、そして腸で直接作用するか、CNSの少なくとも外側で作用し、オピオイドアンタゴニストがオピオイド化合物の鎮痛効果を妨害する可能性を少なくする。このようにして、本発明の重合体共役物は、そのオピオイドの鎮痛効果に悪影響を与えることなく、末梢レセプタと選択的に反応することにより、オピオイド使用の一般的な副作用を治療できる。
【0056】
そこで、本質的には、この重合体のオピオイドアンタゴニストへの結合により、未変性オピオイドアンタゴニストと比較して、その共役物の腸障壁輸送(例えば、血液循環に入る)および血液脳関門輸送の両方に対する抵抗を高めることができ、それにより、(i)そのオピオイドアンタゴニストがオピオイドによって与えられる鎮痛を妨害しないようにし、そして(ii)未変性オピオイドアンタゴニストの有効性を改善する。
【0057】
腸壁内でオピオイドがオピオイドレセプタと相互作用することから生じるオピオイド誘発性便秘の最も有効な治療には、その重合体共役物が腸壁を通って血流に入る貫通を防止するか少なくとも著しく低下させる重合体分子量を選択することが好ましい。好ましくは、この重合体の分子量は、その重合体共役物が腸壁の粘膜に貫通するのを妨害しないように、選択される。理解できるように、この粘膜は、潜在的に有害な抗原および細菌に対する一次腸障壁であり、約2mm厚の粘液層を分泌し、そしてこの層で被覆された上皮細胞を含み、この粘膜層は、細胞膜に密接に付着している。この粘液は、上皮細胞表面を潤滑し、胃内容物による機械的な損傷を防止する。いかなる特定の理論にも束縛されないものの、粘膜への貫通は、本発明の重合体共役物と腸壁内の末梢オピオイドレセプタとの相互作用を促進すると考えられている。それゆえ、本発明の共役物は、好ましくは、以下のような因子のバランスをとるように設計される:(i)そのオピオイドアンタゴニストのアンタゴニスト活性を維持すること;(ii)腸から血流へと相当な程度まで横断することなく、腸の粘膜障壁を貫通すること;および(iii)もし、全身循環で存在しているなら、任意の相当な程度まで血液脳関門を通過できないこと。
【0058】
典型的には、本発明の重合体共役物の重合体部分の数平均分子量は、約5,000 ダルトン(Da)未満、さらに好ましくは、約2,000Da未満である。本発明のなおさらに好ましい実施態様では、この重合体は、約1,000Da以下、または約800Da以下の分子量を有する。さて、この共役物の重合体部分の分子量範囲に目を向けると、その分子量範囲は、一般に、約100Da〜約2,000Da、好ましくは、約100Da〜約1,000Da、さらに好ましくは、約100Da〜約800Da、または約100Da〜約500Daである。約100Da、約200Da、約300Da、約400Da、約500Da、約550Da、約600Da、約700Da、約800Da、約900Daおよび約1,000Daの数平均分子量を有する重合体骨格が、特に好ましい。本発明の重合体は、本質的に親水性であり、それにより、得られる共役物に親水性を与え、それらが相当な程度まで血液脳関門を通過できないようにする。
【0059】
このオピオイドアンタゴニスト化合物のアンタゴニスト活性が不活性化されるのを少なくするため、およびその共役物の重合体骨格部分の全分子量を好ましい範囲内で保つために、時には、そのオピオイドアンタゴニスト分子に単一重合体骨格だけを結合することが好ましいか、または、もし、分枝重合体を使用するなら、上記の好ましい分子量範囲の下限で重合体を使用するのが好ましい。あるいは、所望の活性バランスおよび貫通特性を達成するために、2個のオピオイドアンタゴニストを結合した直鎖またはフォーク形の重合体が使用され得る。
【0060】
この重合体骨格とオピオイドアンタゴニストとの間の連鎖は、好ましくは、患者への投与に続いてオピオイドアンタゴニストが重合体から放出されないように、加水分解安定性である。このオピオイドアンタゴニストがインビボ放出されると、放出されたオピオイドアンタゴニストがCNS内を通過することが原因で、そのオピオイド化合物の鎮痛効果の損失を引き起こす。このオピオイドアンタゴニストと重合体とを連結する代表的な連鎖には、エーテル連鎖、アミド連鎖、ウレタン(これはまた、カーバメートとしても知られている)連鎖、アミン連鎖、チオエーテル(これはまた、スルフィドとしても知られている)連鎖および尿素(これはまた、カルバミドとしても知られている)連鎖が挙げられる。使用される特定の連鎖および連鎖化学作用は、被験体のオピオイドアンタゴニスト、重合体との結合または適切な結合部位への変換のいずれかに利用できる分子内の官能基、分子内での追加官能基の存在などに依存しており、本明細書中で提示した指針に基づいて、当業者により容易に決定できる。
【0061】
本発明の重合体共役物は、少なくとも測定可能な程度のオピオイドアンタゴニスト比活性を維持している。すなわち、本発明による重合体共役物は、どこでも、未変性の親オピオイドアンタゴニスト化合物の比活性の約1%〜約100%またはそれ以上を有する。このような活性は、特定のオピオイドアンタゴニスト親化合物の公知活性に依存して、適切なインビボまたはインビトロモデルを使用して、決定され得る。例えば、本発明の重合体共役物のアンタゴニスト活性のレベルを評価するには、ホットプレートまたはテールフリック鎮痛アッセイが使用できる。(例えば、Tulunayら、J Pharmacol
Exp Ther 1974;190:395−400;Takahashi,ら、Gen Pharmacol 1987;18(2):201−3;Fishmanら、Pharmacology 1975;13(6):513−9を参照)。一般に、本発明の重合体共役物は、適切なモデル(例えば、当該技術分野で周知のもの)で測定したとき、未変性の親オピオイドアンタゴニストの少なくとも約2%、5%、10%、15%、25%、30%、40%、50%、60%、80%、90%またはそれ以上の比活性を有する。好ましくは、本発明の共役物は、未変性の親化合物のオピオイドアンタゴニスト活性の少なくとも50%以上を維持する。
【0062】
この親オピオイドアンタゴニスト化合物のオピオイドアンタゴニスト活性の少なくとも一部を維持することに加えて、本発明の重合体共役物はまた、CNS内のオピオイドレセプタに対して実質的に活性がないことを示す一方、胃腸組織内の末梢オピオイドレセプタに対して高いレベルの活性を示す。本明細書中で使用する場合、「CNS活性が実質的にない」との用語は、本発明の重合体共役物がオピオイドアゴニストの鎮痛効果(これは、例えば、上述のようなテールフリックまたはホットプレート鎮痛アッセイを使用して、測定できる)を約25%未満しか低下させないことを意味する。好ましい実施態様では、本発明の重合体共役物は、オピオイドアゴニストの鎮痛効果を、約20%未満、さらに好ましくは、約15%未満、さらには、約10%未満または約5%未満しか低下させない。約0%の鎮痛効果低下(すなわち、鎮痛が低下しない)は、最も好ましい。
【0063】
本発明の重合体共役物は、典型的には、水溶性非ペプチド重合体(例えば、ポリ(エチレングリコール))を含有し、これは、オピオイドアンタゴニストに共有結合され、そして以下で示す一般構造を有する。
【0064】
【化4】

ここで、
ポリは、水溶性非ペプチド重合体である;
Xは、連鎖、好ましくは、加水分解安定性連鎖(これは、該重合体を該オピオイドアンタゴニストに共有結合する)である;そして
は、該オピオイドアンタゴニストである。
【0065】
好ましい1実施態様では、式Iの共役物は、以下の構造を有する:
【0066】
【化5】

ここで、
Yは、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル、C3〜C6シクロアルキル、置換C1〜C6シクロアルキル、C2〜C6アルケニル、置換C2〜C6アルケニル、C2〜C6アルキニル、置換C2〜C6アルキニル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、複素環および置換複素環である;
Zは、HまたはOHである;
点線は、任意の二重結合を示す;そして
Xおよびポリは、上で定義したとおりである。
【0067】
他の実施態様では、式Iの共役物は、以下の構造を有する:
【0068】
【化6】

ここで、
およびRは、それぞれ別個に、水素またはOHであるか、または一緒になって、=CHまたは=Oを形成する;そして
X、Y、Z、点線およびポリは、上で定義したとおりである。
【0069】
式Iaまたは式Ibのいずれかでは、好ましいY基には、C1〜C6アルキル、置換C1〜C6アルキル(例えば、C1〜C6シクロアルキルで置換したC1〜C6アルキル)、C2〜C6アルケニル(例えば、アリル)、置換C2〜C6アルケニル(例えば、クロロアリル)、C2〜C6アルキニル(例えば、プロパルギル)、置換C2〜C6アルキニル、C3〜C6シクロアルキルおよびC3〜C6シクロアルキルが挙げられる。
【0070】
分かるように、使用される特定のY、Z、RおよびR基は、本発明の重合体共役物を形成するのに使用される特定のオピオイドアンタゴニストに依存している。好ましいオピオイドアンタゴニストには、ナロキソンまたはその誘導体(すなわち、Y=アリル、Z=OH、RおよびRは、一緒になって、=Oを形成し、任意の二重結合なし)、ナルブフィンまたはその誘導体(すなわち、Y=(シクロブチル)メチル、Z=OH、R=H、R=OH、任意の二重結合なし)、ナルメフェンまたはその誘導体(すなわち、Y=(シクロプロピル)メチル、Z=OH、RおよびRは、一緒になって、=CHを形成し、任意の二重結合なし)、ナルトレキソンまたはその誘導体(すなわち、Y=(シクロプロピル)メチル、Z=OH、RおよびRは、一緒になって、=Oを形成し、任意の二重結合なし)、およびナロルフィンおよびその誘導体(Y=アリル、Z=H、R=H、R=OH、任意の二重結合あり)が挙げられる。
【0071】
本発明の重合体共役物は、そのままで、または薬学的に受容可能な塩の形態で投与され得、本明細書中での本発明の重合体共役物の任意の言及は、薬学的に受容可能な塩を含むと解釈される。この重合体共役物の塩は、もし使用するなら、薬理学的および薬学的の両方に受容可能であるべきであるが、非薬学的に受容可能な塩は、遊離の活性化合物またはその薬学的に受容可能な塩を調製するのに便利に使用され得、本発明の範囲から除外されない。このような薬理学的および薬学的に受容可能な塩は、文献で詳述された標準方法を使用して、この重合体共役物を有機酸または無機酸と反応させることにより、調製できる。有用な塩の例には、以下の酸から調製されたものが挙げられるが、これらに限定されない:塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、マレイン酸、酢酸、サリチル酸、p−トルエンスルホン酸、酒石酸、クエン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、マロン酸、コハク酸、ナフタレン−2−スルホン酸およびベンゼンスルホン酸など。また、薬学的に受容可能な塩は、カルボン酸基のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩またはカルシウム塩)として、調製できる。
【0072】
(A.重合体骨格)
一般に、この共役物の水溶性非ペプチド重合体部分は、非毒性で生体適合性であるべきであり、このことは、その重合体が害を引き起こすことなく組織または有機体と共存できることを意味する。重合体共役物と呼ぶとき、その重合体は、多数の水溶性非ペプチド重合体(例えば、本発明で使用するのに適当であるとして本明細書中で記述したもの)のいずれかであり得ることが理解される。好ましくは、この重合体骨格は、ポリ(エチレングリコール)(PEG)である。PEGとの用語は、多数の外形または形状のいずれかのポリ(エチレングリコール)を含み、これには、直鎖形状(例えば、アルコキシPEGまたは二官能性PEG)、分枝またはマルチアーム形状(例えば、フォーク形PEGまたはポリオールコアに結合したPEG)、ペンダント型PEGまたはそれ程好ましくないが、その中に分解性連鎖を備えたPEGが挙げられ、これらは、以下でさらに詳細に記述する。
【0073】
その最も簡単な形状では、PEGは、次式を有する:
【0074】
【化7】

ここで、nは、約2〜約45、典型的には、約2〜約20である。
【0075】
上記のように、末端キャップ化重合体は、少なくとも1個の末端を比較的に不活性の基(例えば、アルコキシ基)でキャップ化した重合体を意味するが、本発明の重合体として、使用できる。例えば、メトキシ−PEG−OHまたはmPEGは、要約すると、その重合体の1末端がメトキシ基であるのに対して他の末端は水酸基(これは、即座の化学変性を受ける)の形状のPEGである。mPEGの構造は、以下で示す。
【0076】
【化8】

ここで、nは上記のとおりである。
【0077】
このPEG重合体としては、マルチアームまたは分枝PEG分子(例えば、米国特許第5,932,462号(その内容は、その全体が本明細書中で参考として援用されている)で記述されたもの)もまた、使用できる。一般的に言えば、マルチアームまたは分枝重合体は、中心分枝点(例えば、以下の構造のC;これは、介在接続原子を介して、オピオイドアンタゴニストのような1個の活性部分に直接または間接のいずれかで共有結合している)から伸長している2個またはそれ以上の重合体「アーム」を有する。例えば、代表的な分枝PEG重合体は、以下の構造を有することができる:
【0078】
【化9】

ここで、
ポリおよびポリは、PEG骨格(例えば、メトキシポリ(エチレングリコール))である;
R”は、非反応性部分(例えば、H、メチルまたはPEG骨格)である;そして
PおよびQは、非反応性連鎖である。好ましい実施態様では、この分枝PEGポリマーは、メトキシポリ(エチレングリコール)二置換リシンである。
【0079】
このPEG重合体は、あるいは、フォーク形PEGを含有し得る。一般的に言えば、フォーク形構造を有する重合体は、その重合体内の加水分解安定性分枝点から伸長している共有結合を介して2個またはそれ以上の活性剤に結合した重合体鎖を有することにより、特徴付けられる。フォーク形PEGの一例は、PEG−YCHZで表わされ、ここで、Yは、連結基であり、そしてZは、オピオイドアンタゴニストに共有結合するための活性化末端基(例えば、アルデヒド基)であって、これは、規定長の原子鎖により、CHに連結される。国際出願第PCT/US99/05333(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)は、本発明で使用できる種々のフォーク形PEG構造を開示している。そのZ官能基を分枝炭素原子に連結する原子鎖は、テザー基として働き、例えば、アルキル鎖、エーテル鎖、エステル鎖、アミド鎖およびそれらの組合せを含有し得る。
【0080】
このPEG重合体は、反応基(例えば、カルボキシル)を有するペンダントPEG分子を含有し得、これは、そのPEG鎖の末端ではなくむしろPEG骨格の長さに沿って共有結合されている。これらのペンダント反応基は、直接または結合部分(例えば、アルキレン基)を介して、このPEG骨格に結合できる。
【0081】
上記形状のPEGに加えて、この重合体はまた、その重合体骨格内の1個またはそれ以上の弱いまたは分解性連鎖で調製でき、これには、上記重合体のいずれかが挙げられるが、この実施態様は、本発明の共役物には、やや好ましくない。例えば、PEGは、加水分解を受ける重合体骨格内のエステル連鎖で調製できる。以下で示すように、この加水分解により、この重合体は、低分子量の断片に開裂する:
【0082】
【化10】

他の加水分解的に分解性の連鎖(これらは、重合体骨格内の分解性連鎖として有用である)には、カーボネート連鎖;イミン連鎖(これらは、例えば、アミンおよびアルデヒドの反応から生じる(例えば、Ouchiら、Polymer Preprints,38(1):582−3(1997)(その内容は、本明細書中で参考として援用されている)を参照));リン酸エステル連鎖(これは、例えば、アルコールとホスフェート基とを反応させることにより、形成される);ヒドラゾン連鎖(これらは、典型的には、ヒドラジドとアルデヒドとを反応させることにより、形成される);アセタール連鎖(これには、典型的には、アルデヒドとアルコールとの間の反応により、形成される);オルトエステル連鎖(これらは、例えば、ホルメートとアルコールとの間の反応により、形成される);ペプチド連鎖(これらは、アミン基(これは、例えば、重合体(例えば、PEG)の末端にある)とペプチドのカルボキシル基とにより、形成される);およびオリゴヌクレオチド連鎖(これは、例えば、ホスホラミダイト基(これは、例えば、重合体の末端にある)とオリゴヌクレオチドの5’水酸基とにより、形成される)が挙げられる。
【0083】
ポリ(エチレングリコール)またはPEGとの用語は、PEGの上式の全てを表わすか含むことは、当業者により理解される。
【0084】
先に述べたように、本発明に従って共役物を形成するのに、水溶性非ペプチド重合体である種々の一官能性、二官能性または多官能性重合体のいずれもまた、使用できる。その重合体骨格は、直鎖であり得るか、または上記形状(例えば、分枝、フォーク形など)のいずれかであり得る。適切な重合体の例には、他のポリ(アルキレングリコール)、エチレングリコールとプロピレングリコールとの共重合体、ポリ(オレフィン性アルコール)、ポリ(ビニルピロリドン)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリルアミド)、ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(サッカライド)、ポリ(α−ヒドロキシ酸)、ポリ(アクリル酸)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリホスファゼン、ポリオキサゾリン、ポリ(N−アクリロイルモルホリン)(例えば、米国特許第5,629,384号(その内容は、本明細書中でその全体が参考として援用されている)で記述されたもの)、およびそれらの共重合体、三元共重合体および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。PEGに加えて、ポリ(アクリル酸)は、粘膜に付着する公知特性を有するので、好ましい重合体であり、これは、共役したアンタゴニストを膜表面レセプタに結合するのに有利であり得る。
【0085】
(B.重合体骨格とオピオイドアンタゴニストとの間の連鎖)
このオピオイドアンタゴニストと重合体骨格(すなわち、式IのX)との間の連鎖は、その重合体の反応性官能基とオピオイドアンタゴニスト分子上の官能基との反応から生じる。その特定の連鎖は、使用する官能基の構造に依存しており、典型的には、そのオピオイドアンタゴニスト分子に含有される官能基により支配される。例えば、アミド連鎖は、末端カルボン酸基を有する重合体またはその活性エステルと、アミン基を有するオピオイドアンタゴニストとの反応により、形成できる。あるいは、スルフィド連鎖は、チオール基で終わる重合体と水酸基を有するオピオイドアンタゴニストとの反応により、形成できる。他の実施態様では、アミン連鎖は、アミノ末端重合体と水酸基を有するオピオイドアンタゴニストとの反応により、形成できる。使用される特定のカップリング化学作用は、そのオピオイドアンタゴニストの構造、オピオイドアンタゴニスト内の複数の官能基の潜在的存在、保護/脱保護工程の必要性、その分子の化学安定性などに依存しており、当業者により容易に決定される。本発明の重合体共役物を調製するのに有用な例証的な結合の化学的性質は、例えば、Wong,S.H.,(1991),「Chemistry of Protein Conjugation and Crosslinking」、CRC Press,Boca Raton,FLおよびBrinkley,M.(1992)「A Brief Survey of Methods for Preparing Protein Conjugates with Dyes,Haptens,and Crosslinking Reagent」、in Bioconjug.Chem.,3,2013で見られる。
【0086】
この連鎖は、好ましくは、患者に投与した後にオピオイドアンタゴニストの放出を防止するために、加水分解安定性であり、それにより、そのアンタゴニストが腸障壁を通って血流に入る可能性を少なくする。一旦、血流内に入ると、アンタゴニストが血液脳関門を通ってオピオイドの鎮痛効果に否定的な影響を与える可能性が高くなり、これは、もちろん、特定のオピオイドアンタゴニストに依存している。代表的な加水分解安定性連鎖としては、アミド、アミン、カーバメート、エーテル、チオエーテルおよび尿素が挙げられる。
【0087】
全体的なX連鎖は、その重合体とオピオイドアンタゴニスト分子との間の任意の連鎖を含むと解釈され、これは、1個〜約20個の原子、好ましくは、1個〜約10個の原子の全長を有する。
【0088】
上式では、X連鎖は、好ましくは、第二級アミンまたはアミド連鎖である。式Iaの1実施態様では、Xは、式−NH−(CHR−O−または−NH−C(O)−(CHR−O−を有し、ここで、mは、1〜12、好ましくは、1〜4(すなちわ、1、2、3または4)であり、そして各Rは、別個に、HまたはC1〜C6アルキル(例えば、メチルまたはエチル)である。上記式Ibでは、X連鎖は、好ましくは、ヘテロ原子(例えば、エーテルまたはチオエーテル連鎖(すなわち、X=OまたはS))である。
【0089】
(C.オピオイドアンタゴニスト)
上で定義した「オピオイドアンタゴニスト」は、1種またはそれ以上のオピオイドレセプタ型でオピオイドアゴニストの作用を遮断する任意の分子であり、これには、いわゆる「アゴニスト−アンタゴニスト」分子が含まれ、これは、1オピオイドレセプタ型に対してアンタゴニストとして作用し、そして他のレセプタ型に対してアゴニストとして作用する(例えば、ナロルフィンまたはペンタゾシン)。このオピオイドアンタゴニストは、好ましくは、任意のオピオイドレセプタ型に対してアゴニスト活性を示さず、好ましくは、μ−レセプタに対してアンタゴニスト活性を示す。多くのオピオイドアンタゴニストは、構造的に、そのN17位置により大きい炭化水素基が結合していること以外は、最も近いアゴニスト類似物と似ている。例えば、ナロルフィンは、構造的に、モルヒネのN17メチル基をアリル基で置き換えたこと以外は、モルヒネと同じである。適当なオピオイドアンタゴニストには、ブプレノルフィン、シクラゾシン、シクロルファン、ナロキソン、N−メチルナロキソン、ナルトレキソン、N−メチルナルトレキソン、ナルメフェン、6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソン、レバロルファン、ナルブフィン、ナルトレンドール、ナルトリンドール、ナロルフィン、ノルビナルトルフィミン、オキシロルファン、ペンタゾシン、ピペリジン−N−アルキルカルボキシレートオピオイドアンタゴニスト(例えば、米国特許第5,159,081号;同第5,250,542号;同第5,270,328号;および同第5,434,171号(これらの全ての内容は、本明細書中で参考として援用されている)で開示されたもの)、オピオイドアンタゴニストポリペプチド(例えば、R.J.Knapp,L.K.Vaughn,and H.I.Yamamura in 「The Pharmacology of Opioid Peptides」、L.F.Tseng編,15頁,Harwood Academic Publishers,(1995)で記述されたもの)、ならびにそれらの誘導体および混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0090】
(D.オピオイドアンタゴニストの重合体共役物を形成する方法)
本発明の重合体共役物は、活性化重合体(例えば、活性化PEG)を生体活性剤に共有結合する公知技術を使用して、形成できる(例えば、POLY(ETHYLENE GLYCOL)CHEMISTRY AND BIOLOGICAL APPLICATIONS,American Chemical Society,Washington,DC(1997)を参照)。その一般方法は、オピオイドアンタゴニスト分子の官能基と反応するのに適当な官能基を有する反応性重合体を選択すること、およびその反応性重合体とオピオイドアンタゴニストとを溶液中で反応させて共有結合した共役物を形成することを包含する。
【0091】
この重合体の官能基の選択は、一部には、オピオイドアンタゴニスト分子の官能基に依存している。この重合体の官能基は、好ましくは、オピオイドアンタゴニストと重合体との間で加水分解安定性結合を形成するように、選択される。オピオイドアンタゴニスト分子とカップリングするのに適当な本発明の重合体は、典型的には、末端官能基(例えば、以下のもの)を有する:N−スクシンイミジルカーボネート(例えば、米国特許第5,281,698号、同第5,468,478号を参照)、アミン(例えば、Buckmannら、Makromol.Chem.182:1379(1981),Zalipskyら、Eur.Polym.J.19:1177(1983)を参照)、ヒドラジン(例えば、Andreszら、Makromol.Chem.179:301(1978)を参照)、スクシンイミジルプロピオネートおよびスクシンイミジルブタノエート(例えば、Olsonら、in Poly(ethylene glycol) Chemistry & Biological Applications,pp 170〜181,Harris & Zalipsky著、ACS,Washington,DC,1997を参照;また、米国特許第5,672,662号を参照)、スクシンイミジルスクシネート(例えば、Abuchowskiら、Cancer Biochem.Biophys.7:175(1984)およびJoppichら、Maromol.Chem.180:1381(1979)を参照)、スクシンイミジルエステル(例えば、米国特許第4,670,417号を参照)、ベンゾトリアゾールカーボネート(例えば、米国特許第5,650,234号を参照)、グリシジルエーテル(例えば、Pithaら、Eur.J.Biochem.94:11(1979)、Ellingら、Biotech.Appl.Biochem.13:354(1991)を参照)、オキシカルボニルイミダゾール(例えば、Beauchampら、Anal.Biochem.131:25(1983)、Tondelliら、J.Controlled Release 1:251(1985)を参照)、p−ニトロフェニルカーボネート(例えば、Veroneseら、Appl.Biochem.Biotech.,11:141(1985);およびSartoreら、Appl.Biochem.Biotech.,27:45(1991)を参照)、アルデヒド(例えば、Harrisら、J.Polym.Sci.Chem.Ed.22:341(1984)、米国特許第5,824,784号、米国特許第5,252,714号を参照)、マレイミド(例えば、Goodsonら、Bio/Technology 8:343(1990)、Romaniら、in Chemistry of
Peptides and Proteins 2:29(1984)、およびKogan, Synthetic Comm.22:2417(1992)を参照)、またはオルトピリジル−ジスルフィド(例えば、Woghirenら、Bioconj.Chem.4:314(1993)を参照)、アクリロイル(例えば、Sawhneyら、Macromolecules,26:581(1993)を参照)、ビニルスルホン(例えば、米国特許第5,900,461号を参照)。上記参考文献の全内容は、本明細書中で参考として援用されている。
【0092】
実施例1〜4で例示した特定の実施態様では、ナロキソンまたはナルトレキソンのケトン基は、Jiangら(J.Med.Chem.,1977,20:1100〜1102)で記述された方法を使用して、還元アミノ化を受けて、ナロキソンまたはナルトレキソンのアミノ誘導体を形成する。このアミノ誘導体は、次いで、(i)還元剤の存在下にて、アルデヒド末端重合体と反応されて、第二級アミノ結合を形成するか、または(ii)活性エステル末端重合体と反応されて、アミド結合を形成する。
【0093】
その重合体共役物生成物は、この種の生体活性共役物の当該技術分野で公知の方法を使用して、精製され収集され得る。典型的には、この重合体共役物は、沈殿に続いて濾過し乾燥することにより、単離される。
【0094】
(E.代表的な共役物構造)
さて、本発明の共役物のさらに特定の構造実施態様を記述するが、これらの全ては、上記式Iの構造に含まれると解釈される。以下で示す特定の構造は、例示的な構造としてのみ提示されており、本発明の範囲を限定することは意図していない。
【0095】
本発明の直鎖重合体の実施態様は、構造的に、以下で示すように表わすことができる:
【0096】
【化11】

ここで、ポリは、水溶性非ペプチド重合体骨格であり、Rは、キャップ化基または官能基であり、そしてXおよびAは、上で定義したとおりである。好ましい実施態様では、Rは、メトキシであり、ポリは、ポリ(エチレングリコール)であり、Xは、加水分解安定性結合(例えば、アミド、アミン、カーバメート、スルフィド、エーテル、チオエーテルまたは尿素)であり、そしてAは、上記式IaまたはIbで示した構造を有する。
【0097】
このR基は、比較的に不活性な基(例えば、アルコキシ(例えば、メトキシまたはエトキシ)、アルキル、ベンジル、アリールまたはアリールオキシ(例えば、ベンジルオキシ)であり得る。あるいは、このR基は、生体活性分子(例えば、他のオピオイドアンタゴニスト)上の官能基と容易に反応できる官能基であり得る。代表的な官能基には、ヒドロキシル、活性エステル(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルエステルまたは1−ベンゾトリアゾリル(benzotriazolyl)エステル)、活性カーボネート(例えば、N−ヒドロキシスクシンイミジルカーボネートおよび1−ベンゾトリアゾリル(benzotriazolyl)カーボネート)、アセタール、アルデヒド、アルデヒド水和物、アルケニル、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、活性スルホン、アミン、ヒドラジン、チオール、カルボン酸、イソシアネート、イソチオシアネート、マレイミド、ビニルスルホン、ジチオピリジン、ビニルピリジン、ヨードアセトアミド、エポキシド、グリオキサール、ジオン、メシレート、トシレートまたはトレシレートが挙げられる。
【0098】
式Vのホモ二官能性実施態様では、Rは、構造−X−Aを有し、ここで、XおよびAは、上で定義したとおりである。
【0099】
本発明の重合体共役物のマルチアーム実施態様の一例は、以下の構造を有する:
【0100】
【化12】

ここで、各ポリは、水溶性非ペプチド重合体骨格であり、R’は、中心コア分子であり、yは、約3〜約100、好ましくは、3〜約25であり、そしてXおよびAは、上で定義したとおりである。コア部分R’は、ポリオール、ポリアミン、およびアルコール基とアミン基との組合せを有する分子からなる群から選択される分子の残基である。中心コア分子の具体的な例には、グリセロール、グリセロールオリゴマー、ペンタエリスリトール、ソルビトールおよびリジンが挙げられる。
【0101】
この中心コア分子は、好ましくは、重合体の結合に利用できる少なくとも3個の水酸基を有するポリオールの残基である。「ポリオール」とは、複数の利用できる水酸基を含む分子である。所望数の重合体アームに依存して、このポリオールは、典型的には、3個〜約25個の水酸基を含有する。このポリオールは、本発明から逸脱することなく、他の保護または未保護官能基を含有し得る。水酸基間の間隔は、ポリオールごとに変わるものの、典型的には、各水酸基間にて、1個〜約20個、好ましくは、1個〜約5個の原子(例えば、炭素原子)が存在している。好ましいポリオールには、グリセロール、還元糖(例えば、ソルビトール)、ペンタエリスリトールおよびグリセロールオリゴマー(例えば、ヘキサグリセロール)が挙げられる。ヒドロキシプロピル−p−シクロデキストリン(これは、21個の利用可能な水酸基を有する)を使用して、21個のアームの重合体が合成できる。選択される特定のポリオールは、これらの重合体アームに結合するのに必要な水酸基の所望数に依存している。この特定の実施態様では、この共役物中の重合体アームの数が多くなるにつれて、それらの重合体アームの各々のモノマーサブユニットの分子量または数は、好ましくは、本発明に従って、共役物に好ましい分子量範囲内で保つために、少なくなる。
【0102】
(III.本発明の重合体共役物を含有する製薬組成物)
本発明は、獣医学用またはヒト医用の両方のための製薬処方物または組成物を提供し、これらは、1種またはそれ以上の薬学的に受容可能な担体、および必要に応じて、任意の他の治療成分、安定剤などと共に、1種またはそれ以上の本発明の重合体共役物またはそれらの薬学的に受容可能な塩を含有する。これらの担体は、その処方物の他の成分と適合性でありそれを受ける人に過度に有害ではないという意味で、薬学的に受容可能でなければならない。本発明の組成物はまた、高分子賦形剤/添加剤または担体、例えば、ポリビニルピロリドン、誘導体化セルロース(例えば、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびヒドロキシプロピルメチルセルロース)、Ficolls(高分子糖)、ヒドロキシエチルデンプン(HES)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン(例えば、2−ヒドロキシプロピル−β−シクロデキストリン)およびスルホブチルエーテル−β−シクロデキストリン)、ポリエチレングリコールおよびペクチンが挙げられ得る。これらの組成物は、さらに、希釈剤、緩衝剤、結合剤、崩壊剤、増粘剤、潤滑剤、防腐剤(酸化防止剤を含めて)、香料、味覚マスキング剤、無機塩(例えば、塩化ナトリウム)、抗菌剤(例えば、塩化ベンザルコニウム)、甘味料、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、ポリソルベート(例えば、「TWEEN 20」および「TWEEN 80」)、およびプルロニックス(例えば、F68およびF88、BASF製))、ソルビタンエステル、脂質(例えば、リン脂質(例えば、レシチンおよび他のホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン)、脂肪酸および脂肪エステル、ステロイド(例えば、コレステロール))、およびキレート化剤(例えば、EDTA、亜鉛および他のこのような適当なカチオン)を含有し得る。本発明に従う組成物で使用するのに適当な他の製薬賦形剤および/または添加剤は、「Remington:The Science & Practice of Pharmacy」、19版、Williams & Williams,(1995)およびthe 「Physician’s Desk Reference」、52版、Medical Economics,Montvale,NJ(1998)、および「Handbook of Pharmaceutical
Excipients」、3版、A.H.Kibbe編,Pharmaceutical Press,2000に載っている。
【0103】
本発明の共役物は、経口投与、直腸投与、局所投与、経鼻投与、眼内投与または非経口投与(腹腔注射、静脈注射、皮下注射または筋肉注射を含めて)に適当なものを含めた組成物で、処方され得る。これらの組成物は、好都合なことに、単位投薬形状で提示され得、薬学の技術分野で周知の方法のいずれかにより、調製され得る。全ての方法は、その活性剤または化合物(すなわち、この重合体共役物)を1種またはそれ以上の補助成分を構成する担体と会合させる工程を包含する。一般に、これらの組成物は、この活性化合物を液状担体と会合して溶液または懸濁液を形成することにより、あるいは、この活性化合物を、固形の、必要に応じて微粒子生成物を形成するのに適当な処方成分物と会合することにより、次いで、もし保証されるなら、この生成物を所望の送達形状に成形することにより、調製される。本発明の固形処方物は、微粒子のとき、典型的には、約1ナノメータ〜約500ミクロンの範囲の大きさの粒子を含有する。一般に、静脈投与することを意図する固形処方物では、粒子は、典型的には、直径約1nm〜約10ミクロンの範囲である。
【0104】
この処方物中の重合体共役物の量は、使用する特定のオピオイドアンタゴニスト、共役形状でのその活性、この共役物の分子量、および他の要因(例えば、投薬形状、標的患者集団、および他の要件)に依存して変わり、一般に、当業者により容易に決定される。この処方物中の共役物の量は、オピオイドアンタゴニストに関連した治療効果(例えば、オピオイド使用の1つまたはそれ以上の副作用(例えば、悪寒、便秘またはそう痒症))の少なくとも1つを達成するために、それを必要としている患者に、オピオイドアンタゴニストの治療有効量を送達するのに必要な量である。実際には、これは、特定の共役物、その活性、治療する病気の重症度、患者集団、その処方物の安定性などに依存して、広く変わる。組成物は、一般に、約1重量%〜約99重量%の共役物、典型的には、約2重量%〜約95重量%の共役物、さらに典型的には、約5重量%〜約85重量%の共役物を含有し、また、その組成物中に含有される賦形剤/添加剤の相対量にも依存している。さらに具体的には、この組成物は、典型的には、共役物の以下の割合の少なくとも約1つを含有する:2重量%、5重量%、10重量%、20重量%、30重量%、40重量%、50重量%、60重量%、またはそれ以上。
【0105】
経口投与に適当な本発明の組成物は、個別の単位(例えば、カプセル剤、カシュ剤、錠剤、薬用ドロップなど;各々は、粉末または顆粒として、所定量の活性剤を含有する);または水性液体または非水性液体中の懸濁液(例えば、シロップ、エリキシル剤、乳濁液、ドラフトなど)として、提供され得る。
【0106】
錠剤は、必要に応じて、1種またはそれ以上の補助成分と共に、圧縮または成形により、製造され得る。圧縮錠剤は、適当な機械にて、自由流動形態の活性化合物(例えば、粉末または顆粒であって、これは、必要に応じて、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、不活性希釈剤、界面活性剤または分散剤と混合される)を圧縮することにより、調製され得る。適当な担体と共に構成された成形錠剤は、適当な機械で成形することにより、製造され得る。
【0107】
シロップは、この活性化合物を糖(例えば、スクロース)の濃縮水溶液(そこには、任意の補助成分も加えられ得る)に加えることにより、製造され得る。このような補助成分には、香味料、適当な防腐剤、その糖の結晶化を遅らせる試薬、および任意の他の成分の溶解性を高める試薬(例えば、多価アルコール(例えば、グリセロールまたはソルビトール))が挙げられ得る。
【0108】
非経口投与に適当な処方物は、好都合には、この共役物の無菌水性調製物を含有し、これは、受容者の血液と等張性であるように処方できる。
【0109】
スプレー式点鼻薬処方物は、防腐剤および等張剤と共に、この活性剤の精製水溶液を含有する。このような処方物は、好ましくは、鼻粘膜と適合性のpHおよび等張状態に調節される。
【0110】
直腸投与用の処方物は、適当な担体(例えば、ココアバターまたは水素化脂肪または水素化脂肪カルボン酸)と共に、座剤として調製され得る。
【0111】
眼科処方物は、そのpHおよび等張性因子が好ましくは目に調和するように調節されること以外は、スプレー式点鼻薬と類似の方法により、調製される。
【0112】
局所処方物は、1種またはそれ以上の媒体(例えば、鉱油、石油、ポリヒドロキシアルコール、または局所処方物に使用される他の基剤)に溶解または懸濁された活性化合物を含有する。上で述べたような他の補助成分の添加が、望まれ得る。
【0113】
製薬処方物もまた提供され、これらは、吸入により、エアロゾルとして投与するのに適当である。これらの処方物は、所望の重合体共役物またはそれらの塩の溶液または懸濁液を含有する。所望の処方物は、小さいチャンバに入れられて、噴霧される。噴霧は、圧縮空気または超音波エネルギーにより達成され、この共役物またはその塩を含有する複数の液滴または固形粒子が形成され得る。
【0114】
(IV.重合体共役物を使用する方法)
本発明の重合体共役物は、任意の動物(特に、哺乳動物(ヒトを含めて))におけるオピオイドアンタゴニストに応答性の任意の状態を治療するのに使用できる。治療するのに好ましい状態には、オピオイド鎮痛薬の使用に付随した任意の副作用(例えば、悪寒、便秘またはそう痒症)がある。あるいは、本発明の重合体共役物は、オピオイドの副作用を防止するために、予防的に使用できる。この治療方法は、哺乳動物に、上記オピオイドアンタゴニストの重合体共役物を含有する組成物または処方の治療有効量を投与する工程を包含する。任意の特定の共役物の治療有効投薬量は、共役物ごと、患者ごとに、ある程度変わり、患者の状態、使用される特定のオピオイドアンタゴニストの活性、および送達経路のような因子に依存している。理解できるように、もし、オピオイドアンタゴニストの重合体共役物が、非共役の親分子と比較して、低いアンタゴニスト活性を有するなら、低い活性を相殺するために、より高い用量が使用できる。一般的な提案として、約0.5〜約100mg/体重1kg、好ましくは、約1.0〜約20mg/kgの投薬量は、治療有効性を有する。他の薬学的に活性な薬剤と共同して投与される場合、この重合体共役物のさらに少ない量でも、治療に有効であり得る。
【0115】
この重合体共役物は、1日1回または数回で投与され得る。その治療の持続時間は、1日1回で、2〜3週間であり得、数ヶ月から数年も継続され得る。その毎日用量は、個々の投薬単位または数回の少量投薬単位の形態で単一用量により、または細分した投薬量を特定間隔で複数回投与することにより、投与できる。
【0116】
この重合体共役物は、このオピオイドアゴニストと共同して投与でき(このことは、その重合体共役物とオピオイドアゴニストとが同時に投与されるという意味である)、またはオピオイドアゴニストおよび重合体共役物は、任意の順序で、短時間内に両方が投与される。好ましくは、このオピオイドアゴニストおよび重合体共役物は、同時にまたは約1時間以内に、さらに好ましくは、約30分以内に、さらにより好ましくは、約15分以内に、(任意の順序で)投与される。当該技術分野で認められるように、もし、このオピオイドアゴニストおよび重合体共役物が共同して投与されるなら、これらの2種の治療剤は、同じ処方(すなわち、同じ投薬単位)で投与できる。
【0117】
経口送達は、オピオイドアゴニストおよび本発明の重合体共役物の両方に好ましい投与経路である。しかしながら、両方の治療剤は、他の経路を使用して送達でき、各治療剤に対して、異なる投与経路が使用できる。例えば、オピオイドアゴニストは、静脈内で送達でき、また、本発明の重合体共役物は、経口的に送達できる。
【0118】
本明細書中で使用する「オピオイドアゴニスト」との用語は、1種以上のオピオイドレセプタ型を活性化する任意の天然または合成のアヘンアルカロイドであり、これには、部分アゴニスト(すなわち、全部のオピオイドレセプタ型に対して活性を示すわけではない化合物)およびアゴニスト−アンタゴニスト(すなわち、1レセプタ型ではアゴニスト活性を示し別のレセプタ型ではアンタゴニスト活性を示す化合物)が含まれる。このオピオイドアゴニストは、天然アルカロイド(例えば、ペナンスレン(例えば、モルヒネ)またはベンジルイソキノリン(例えば、パパベリン))、半合成誘導体(例えば、ヒドロモルホン)、または任意の種々のクラスの合成誘導体のいずれか(例えば、フェニルピペリジン、ベンズモルファン、プリオピオンアニリドおよびモルフィナン)であり得る。代表的なオピオイドアゴニストには、アルフェンタニル、ブレマゾシン、ブプレノルフィン、ブトルファノール、コデイン、シクラゾシン、デゾシン、ジアセチルモルヒネ(すなわち、ヘロイン)、ジヒドロコデイン、フェンタニル、ヒドロコドン、ヒドロモルホン、レボルファノール、メペリジン(ペチジン)、メサドン、モルヒネ、ナルブフィン、ノスカピン、オキシコドン、オキシモルホン、パパベリン、ペンタゾシン、ペチジン、フェナゾシン、プロピラム、プロポキシフェン、スフェンタニル、テバインおよびトラマドールが挙げられる。好ましくは、このオピオイドアゴニストは、モルヒネ、コデイン、オキシコドン、ヒドロコドン、ジヒドロコデイン、プロポキシフェン、フェンタニルおよびトラマドールからなる群から選択される。
【実施例】
【0119】
(V.実施例)
以下の実施例は、本発明を例示するために示されているが、本発明の限定とみなすべきではない。例えば、これらの実施例において、本発明を例示するために、mPEGが使用されているものの、他の形状のPEGおよび類似の重合体は、本発明を実施する際に有用であり、上述のように、本発明に包含される。
【0120】
添付の実施例で言及している全てのPEG試薬は、Shearwater Corporation of Huntsville,ALから入手できる。全てのHNMRデータは、Bruker製の300または400MHzのNMR分光器で作成した。
【0121】
実施例1〜4は、重合体骨格としてPEGを使用し、オピオイドアンタゴニストとして6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソンを使用して、重合体共役物を形成する方法を説明する。実施例1および3は、この重合体骨格とオピオイドアンタゴニストとの間における加水分解安定性の第二級アミン連鎖の形成を説明する。実施例2および4は、この重合体骨格とオピオイドアンタゴニストとの間における加水分解安定性のアミド連鎖の形成を説明する。6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソンは、2種のエピマー(αおよびβ)の混合物として存在していることを記しておく。両方のエピマーは、活性であると考えられ、従って、2種のエピマーの混合物が使用できる。しかしながら、以下で例示していないものの、これらの2種のエピマーは、当該技術分野で公知の分離方法を使用して、分離できる。
【0122】
(実施例1)
(6−mPEG(550Da)−NH−6−デスオキソ−ナロキソン(6−エピマーの混合物)の調製)
(A.6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソン(6−アミノエピマーの混合物)の合成)
【0123】
【化13】

ナロキソンを、Jiangら(J.Med.Chem.,20:1100〜1102,1977)の方法と類似の方法により、還元アミノ化にかけた。ナロキソン(7.4g)および酢酸アンモニウム(15.4g)の混合物(これは、メタノール(50mL)に溶解した)に、窒素下にて、NaCNBH(1.4g)の含メタノール溶液(40mL)を加えた。得られた溶液を、濃HClでpH7.0に調節し、20時間攪拌し、そして濃HClを加えてpH1に酸性化した。溶媒を除去して残留物を水に溶解した後、その水溶液をクロロホルムで抽出して、水不溶性物質を除去し、次いで、NaCOで、pH9.0に調節した。その混合物はNaClで飽和し、そしてCHClで抽出した。そのCHCl相をNaSOで乾燥し、そして乾燥状態まで蒸発させた。その油性残留物をメタノール60mlに溶解し、濃HClでpH1.0まで酸性化し、そして4℃で、一晩放置した。乾燥状態まで溶媒を蒸発させ、その残留物を減圧下にて乾燥した。
【0124】
収量:7.13g。Hnmr(DMSO−d6):δ6.56ppmおよびδ6.52ppm(各1H、二重項、芳香族H)、δ5.83ppm(1Hマルチ、オレフィンH)、δ5.18ppm(2Hマルチ、オレフィンH)、δ5.01ppm(1H一重項)、δ4.76ppm(1H一重項)。
【0125】
(B.6−mPEG(550Da)−NH−6−デスオキソ−ナロキソン(6−エピマーの混合物)の調製))
【0126】
【化14】

mPEG−550−アルデヒド(Shearwater Corporation、M.W.550Da、2.0g、3.3mmol)および6−NH−ナロキソン・2HCI(1.6g、4.0mmol)(工程Aから得た;脱イオン水(25mL)に溶解した)の混合物に、アルゴン下にて、NaCNBH(0.15g、2.4mmol)の水溶液(20mL)を加えた。得られた溶液を、室温で、アルゴン下にて、一晩(18時間)攪拌した。次いで、この溶液をDI水(350mL)で希釈し、濃HClでpH1まで酸性化し、そしてCHCl(3×150mL)で洗浄して、未結合PEGを除去した。その水相に、NaHPO(6.0g、42mmol、約100mM)を加え、そのpHをNaOHで6.0に調節し、得られた溶液をCHCl(3×200mL)で抽出した。そのCHCl抽出物を合わせ、pH6.5のリン酸緩衝液(100mM、3×200mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、減圧下にて蒸発させ、そして減圧中で2日間乾燥した。淡黄色液体(1.3g、1.4mmol、収率42%)として、純粋な共役物を得た。
【0127】
HNMR(CDCl):δ6.51〜6.74(2H、多重項、ナロキソンの芳香族プロトン;5.72〜5.85(1H、多重項、ナロキソンのオレフィンプロトン);5.16(2H、三重項、ナロキソンのオレフィンプロトン);4.76および4.46(1H、二重項、αおよびβナロキソンのCプロトン);3.64(約57H、多重項、PEG);3.38(3H、一重項、PEGのメトキシプロトン);1.34〜3.12(20H、多重項、ナロキソンおよびPEGのプロトン)ppm。
【0128】
(実施例2)
(6−mPEG(550Da)−CONH−6−デスオキソ−ナロキソン(6−エピマーの混合物)の調製)
【0129】
【化15】

mPEG(550)N−スクシンイミジルプロピオネート(Shearwater Corporation、4.0g、5.5mmol)および6−アミノ−6−デスオキソ−ナロキソン(2.0g、6.1mmol)(実施例1の工程Aから得た)を、アルゴン下にて、CHCl(50mL)に溶解した。この溶液を、室温で、アルゴン下にて、一晩(20時間)攪拌した。CHCl(250mL)を加え、その溶液を、pH1のHCl溶液(3×200mL)で抽出した。合わせた水性抽出物をCHCl(3×200mL)で抽出した。このCHCl抽出物を合わせ、pH5.5のリン酸緩衝溶液(50mM、3×200mL)で洗浄し、無水NaSOで乾燥し、そして濾過した。ロータリーエバポレーターで全ての溶媒を除去し、得られた生成物を、減圧中にて、2日間乾燥して、無色液体として、純粋なm−PEG−550−CONH−ナロキソン共役物を得た(3.5g、3.7mmol、収率66%)。
【0130】
HNMR(CDCl):δ7.12および6.88(1H、二重項、αおよびβ共役物のNHCO);6.50〜6.71(2H、多重項、ナロキソンの芳香族プロトン);5.72〜5.87(1H、多重項、ナロキソンのオレフィンプロトン);5.17(2H、三重項、ナロキソンのオレフィンプロトン);4.58および4.40(1H、二重項、αおよびβナロキソンのCプロトン);3.64(約54H、多重項、PEG);3.38(3H、一重項、PEGのメトキシプロトン);0.83〜3.13(14H、多重項、ナロキソンのプロトン)ppm。
【0131】
(実施例3)
(mPEG(2000Da)−6−デスオキソ−ナロキソンの合成)
【0132】
【化16】

6−アミノ−6−デスオキソナロキソン・2HCl(0.6g)(実施例1の工程Aから得た)およびmPEG(2000Da)−プロピオンアルデヒド(6.0g)(これは、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.5)に溶解した)の混合物に、NaCNBHのリン酸緩衝溶液(pH6.5、5ml)を加えた。得られた溶液を、室温で、アルゴン下にて、一晩攪拌した。その反応混合物を500mlまで希釈し、NaClで飽和し、そしてジクロロメタンで抽出した。抽出したジクロロメタンをNaSOで乾燥し、蒸発させ、そしてエチルエーテルで沈殿させた。その生成物を、減圧下にて、一晩乾燥した。収量:5.63g GPC:約25%の共役物。
【0133】
その混合物生成物を、Poros 50HS樹脂(100ml)を使用するカチオン交換クロマトグラフィーで精製した。この混合物を脱イオン水200mlに溶解し、そしてカチオン交換カラム(3.5×28cm)にロードした。カラムを脱イオン水500mlで洗浄した後、1N NaCl溶液(500ml)を使用して、このカラムを溶出した。DCMで抽出し、蒸発させ、そしてEtOで沈殿させた後、所望の共役物が得られた。収量:約1.38g。
【0134】
この共役物を、逆相HPLCクロマトグラフィー(Betasil C18カラム、Keystone Scientific)で、さらに精製した。
【0135】
(実施例4)
(mPEG(2000Da)−6−デスオキソ−ナロキソンの合成)
【0136】
【化17】

mPEG(2000Da)−N−スクシンイミジルプロピオネート(5.0g)をジクロロメタン50mlに溶解した。この溶液に、6−アミノ−ナロキソン・2HCl(実施例1の工程Aから得た)1.88gおよびトリエチルアミン1.4mlを加えた。得られた溶液を、室温で、アルゴン下にて、一晩攪拌した。その反応混合物を濾過し、その濾液を蒸発させ、そしてイソプロパノール/ジエチルエーテルで沈殿した。この生成物を減圧下で一晩乾燥した。次いで、それを脱イオン水500mlに再溶解し、1N NaOHでpH9.0に調節し、NaClで飽和し、ジエチルエーテルで洗浄し、最後に、ジクロロメタンで抽出した。抽出したジクロロメタンをNaSOで乾燥し、減圧下にて溶媒を除去し、その生成物をEtOから沈殿させた。この生成物を、減圧下にて、一晩乾燥した。
【0137】
収量:3.6g.Hnmr(DMSO−d6):δ8.08ppmおよび7.53ppm(1H、二重項、アミドのH)、δ6.60〜5.45ppm(2H多重項、芳香族H)、δ5.83ppm(1H多重項、オレフィンのH)、δ5.25〜5.12ppm(2H多重項、オレフィンのH)、δ4.76ppm(1H一重項)。GPC:約97%の共役。HPLC:遊離のアミノ−ナロキソンがないことが明らかとなった。
【0138】
本発明に関係している当業者には、前記で提示された教示の利点を伴って、本発明の多く改良および他の実施態様が想起される。従って、本発明は、開示された特定の実施態様には限定されず、改良および他の実施態様は、添付の請求の範囲の範囲内に含まれると解釈されると理解できるはずである。本明細書中では、特定の用語が使用されているものの、それらは、一般的で説明的な意味で使用されており、限定する目的ではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【公開番号】特開2009−167214(P2009−167214A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−111653(P2009−111653)
【出願日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【分割の表示】特願2003−535793(P2003−535793)の分割
【原出願日】平成14年10月18日(2002.10.18)
【出願人】(500321438)ネクター セラピューティックス エイエル,コーポレイション (18)
【Fターム(参考)】