説明

重合体微粒子粉末の製造方法

【課題】本発明の目的は、ビニル系単量体の逆相懸濁重合によって、粒径の揃った数μm〜数十μmオーダーの粒子径を有する高品質の重合体微粒子を、粒子同士の凝集などを生ずることなく、良好な分散安定性を維持しながら、粉体流動性に優れた重合体微粒子粉末を生産性良く製造する方法を提供することである。
【解決手段】分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤の含有量が10000質量ppm以下である重合体微粒子粉末を得ることを特徴とする重合体微粒子粉末の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体微粒子粉末の製造方法に関する。より詳細には、本発明はビニル系単量体を逆相懸濁重合によって得られた、粒径の揃った、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の粒径を有する高品質の重合体微粒子から、分散安定剤の含有量が少なく、粉体流動安定性に優れた重合体微粒子粉末を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ミクロンサイズの球状重合体微粒子は、化粧品添加剤、各種化学物質の担持体、スペーサー、クロマトグラフィー用のカラム充填剤、光拡散剤、多孔質化剤、軽量化剤、ブロッキング防止剤、記録紙用表面改質剤などに利用されている。
その中でも、親水性の架橋重合体微粒子は、含水ゲル微粒子として利用でき、化粧品添加剤、担持体、多孔質化剤、軽量化剤、記録紙用表面改質剤として有用である。
【0003】
ビニル系単量体の逆相懸濁重合によって重合体粒子を製造することは従来から行われており、還元剤と酸化剤を重合開始剤に用いて、比較的低温から重合を開始するレドックス逆相懸濁重合も知られている。この方法によれば、反応器に仕込んだビニル系単量体のほぼ全量をごく短時間で重合させて重合体微粒子を得るものであり、ビニル系単量体を含む水滴が所望の滴径および滴径分布に達した時点で一気に粒子化させることができるため、粒度分布の狭い重合体微粒子を簡単な設備で再現性良く得ることができる。
上記の方法では、油相を構成する有機溶剤としてシクロヘキサンやn−ヘプタンなどの低極性溶剤が好適に使用されることから、この低極性溶剤に低温で溶解する分散安定剤を選択する必要がある。そして、低温で低極性溶剤に溶解するような分散安定剤は一般に常温で液状となる性質を持ち、かつ懸濁重合には多量(一般に、製造される樹脂量に対して数%)の分散安定剤が必要になることから、製造した重合体微粒子の油中分散液を脱溶剤、乾燥して重合体微粒子粉末とした際に、分散安定剤が多量に残っていると、重合体微粒子同士を粘着させ、粉体流動性を著しく悪化させる。粉体流動性が悪化すると、粉末の篩分効率が低下したり、あるいは全く篩分できなくなり、異物やゲル塊が含まれていても除去することができず、製品の品質に影響を与える。更に、他の粉体と混合して使用する場合にもドライブレンド性が悪化し、均一な製品を作ることができなくなるという問題がある。
しかしながら、これまでのところ、上記レドックス逆相懸濁重合で得られた粒度分布の狭い重合体微粒子から、効率的に分散安定剤を除去する方法は知られておらず、したがって、粉体流動性を十分満足する重合体微粒子粉末は得られていない。
【0004】
【特許文献1】特開平1−213307号公報
【特許文献2】特許平5−222107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の吸水性重合体微粒子から分散安定剤を効率的に除去することにより、粉体流動性に優れた重合体微粒子粉末を得ることができる、重合体微粒子粉末の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意検討を重ねてきた。特に、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用して、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の吸水性重合体微粒子を製造した後に、使用した分散安定剤を如何にして除去するかを検討した結果、重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤が効率的に除去できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、上記課題を解決するための本発明は、以下に記載するものである。
第1発明は、分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤の含有量が10000質量ppm以下である重合体微粒子粉末を得ることを特徴とする重合体微粒子粉末の製造方法である。
第2発明は、分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤の含有量が4000質量ppm以下である重合体微粒子粉末を得ることを特徴とする重合体微粒子粉末の製造方法である。
第3発明は、油相を分別除去中あるいは分別除去後に吸油性微粒子を加えることを特徴とする第1発明または第2発明に記載の重合体微粒子粉末の製造方法である。
【0008】
第4発明は、逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、0.5mol%以上の架橋密度を有する重合体微粒子である第1発明〜第3発明のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法である。
第5発明は、逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、水で飽和膨潤した状態において150μm以上の粒子径を有する粒子の割合が1.0質量%以下である重合体微粒子である第1発明〜第4発明のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法である。
第6発明は、逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、5〜50倍の吸水倍率を有し、水で飽和膨潤した状態における平均粒子径が5〜70μmであり、かつ水による飽和膨潤状態において150μm以上の粒径を示す粒子の割合が0.3質量%以下の重合体微粒子である第1発明〜第4発明のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、重合体微粒子粉末の粒径が揃った、高品質の球状の親水性の重合体微粒子を、極めて高い分散安定性、重合安定性を維持しながら、重合時や重合後に重合体粒子の凝集、塊化、重合装置、篩への付着などを生ずることなく生産性良く製造することができる。そして、本発明の製造方法では、多官能ビニル系単量体を多量に用いて架橋度の高い親水性架橋重合体微粒子を製造する場合であっても、重合体粒子の凝集、塊化、重合装置への付着などを生ずることなく、粒径の揃った高品質の架橋重合体微粒子粉末を生産性よく製造することができる。さらに、分散安定剤を効率よく除去することができ、特に製造スケールを大きくした場合においても、高生産性を維持しながら重合体微粒子粉末を製造することができる。これによって得られる重合体微粒子粉末は粉体流動性に優れ、乾式篩の通過性が良好であるため、充填作業の作業の効率が大きく向上する。また、他の粉体と混合して使用する場合には高いドライブレンド性を示し、より均一な製品を製造することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の「ビニル系単量体の逆相懸濁重合」は、油相を分散媒とし水相を分散質とする逆相懸濁重合を意味する。一般的には、親水性ビニル系単量体を用いて逆相懸濁重合する場合は、油相(疎水性有機溶媒よりなる分散媒)中に水相(親水性ビニル系単量体の水溶液)が水滴状に懸濁したW/O型の逆相懸濁重合で重合体微粒子を製造する。
本発明のビニル系単量体の逆相懸濁重合は、分散安定剤の存在下、酸化剤と還元剤を使用してビニル系単量体の逆相懸濁重合を行うものである。
【0011】
本発明の製造方法として好ましい方法は、分散安定剤と疎水性有機溶媒により調製した油相を仕込んだ反応液に、予めビニル系単量体(およびその中和物)と水を攪拌して均一に溶解させて調製した単量体混合物を仕込み、還元剤と酸化剤を供給することで重合を開始させる。そして、得られた重合体微粒子の油中分散液から共沸脱水により粒子内の水分を除去し、次いで油相の分別除去、脱溶剤および乾燥を行うことで、粉体流動性に優れた重合体微粒子の乾燥粉末を得る。
【0012】
本発明の逆相懸濁重合に用いるビニル系単量体としては、ラジカル重合性の親水性ビニル系単量体であればいずれでもよく、特に制限されない。例えば、カルボキシル基、アミノ基、リン酸基、スルホン酸基、アミド基、水酸基、4級アンモニウム基などの親水性基を有する親水性ビニル系単量体を使用することができる。これらの中でもカルボキシル基、スルホン酸基およびアミド基を有する親水性ビニル系単量体が、親水性が高く、吸水性能、保水性能に優れた重合体微粒子が得られるために好ましい。
【0013】
親水性ビニル系単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、シクロヘキサンジカルボン酸などのカルボキシル基を有するビニル系単量体またはそれらの(部分)アルカリ中和物;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基を有するビニル系単量体またはそれらの(部分)酸中和物、もしくは(部分)4級化物;N−ビニルピロリドン、アクリロイルモルホリン;アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、アシッドホスホオキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどのリン酸基を有するビニル系単量体またはそれらの(部分)アルカリ中和物;2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、アリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルホスホン酸、ビニルホスホン酸などのスルホン酸基またはホスホン酸基を有するビニル系単量体またはそれらの(部分)アルカリ中和物;(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−アルコキシメチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピルなどのノニオン性親水性単量体を挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0014】
これらの中でも、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミドおよび2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸の1種または2種以上を用いて逆相懸濁重合を行うことが、重合性に優れる点、および得られた重合体微粒子が吸水特性に優れる点から好ましく、特に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
【0015】
また、本発明では、逆相懸濁重合を行うに当たり、ビニル系単量体として、上記した単官能の親水性ビニル系単量体のうちの1種または2種以上と共に、ラジカル重合性の不飽和基を2個以上有する多官能ビニル系単量体を使用することができる。
したがって、本発明でいう「ビニル系単量体」は、単官能ビニル系単量体および多官能ビニル系単量体の総称である。
【0016】
多官能ビニル系単量体としては、上記親水性ビニル系単量体とラジカル重合可能な基を2個以上有するビニル系単量体であればいずれでもよく、具体例として、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイド変性物のトリ(メタ)アクリレートなどのポリオール類のジまたはトリ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミドなどのビスアミド類、ジビニルベンゼン、アリル(メタ)アクリレートなどを挙げることができ、これらの1種または2種以上を用いることができる。
【0017】
これらの中でも、多官能ビニル系単量体としてはポリエチレングリコールジアクリレート、メチレンビスアクリルアミドが、ベースをなす親水性ビニル系単量体および水の混合液に対する溶解度に優れ、高架橋密度を得るために使用量を多くする際に有利であり好ましく用いられ、特に好ましくはポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである。
【0018】
上記多官能ビニル系単量体の使用割合は、使用するビニル系単量体の種類、得られる重合体微粒子の用途などに応じて異なり得るが、重合体微粒子に架橋特性が必要な場合には、使用される単官能ビニル系単量体の合計100モルに対して0.1〜100モルであることが好ましく、0.2〜50モルであることがより好ましく、0.5〜10モルであることが更に好ましい。
【0019】
本発明の逆相懸濁重合における油相(分散媒)をなす疎水性有機溶媒として、例えば、炭素数6以上の脂肪族炭化水素溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素溶媒、オクタメチルシクロテトラシロキサンなどのシリコーン系溶媒などを用いることができ、特にヘキサン、シクロヘキサン、およびn−ヘプタンが、ビニル系単量体および水の溶解度が小さく、かつ重合後に除去することが容易であることから好ましく用いられる。
【0020】
本発明の逆相懸濁重合では、親水性ビニル系単量体(およびその中和塩)は水に溶解し水溶液にして重合系に加えるとよい。重合系に加える、親水性ビニル系単量体を溶解した水溶液中における親水性ビニル系単量体の濃度は、5〜80質量%、特に20〜60質量%であることが、逆相懸濁重合が円滑に行われ、かつ生産性も良好であることから好ましい。
逆相懸濁重合に用いる親水性ビニル系単量体が、カルボキシル基やスルホン酸基などの酸性基を有するビニル系単量体である場合は、親水性ビニル系単量体を水に加えた後、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液などのアルカリ水溶液でビニル系単量体中の酸性基を中和すると、親水性ビニル系単量体を良好に溶解した水溶液を調製することができる。
【0021】
本発明の製造方法において、分散安定剤は必須成分である。
分散安定剤の具体例としては、マクロモノマー型分散安定剤、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。
これらの中でも、マクロモノマー型分散安定剤および40℃以下でシクロヘキサンやn−ヘプタンなどの低極性溶剤に溶解するものが好適に使用できる。具体例として、HLBが3〜8のソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ソルビトール脂肪酸エステルなどが挙げられるが、特に常温で液状のものが好ましく、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタントリオレエートおよびソルビタンセスキオレエートなどが挙げられる。
上記以外のものは、重合反応を開始する前に析出するなどして、分散安定化能が低下する場合があり、好ましくない。
【0022】
前記分散安定剤は分散媒(油相)をなす疎水性有機溶媒中に溶解、もしくは均一分散させて重合系に加えることが好ましい。
分散安定剤の使用量は、良好な分散安定性を維持しながら、粒径の揃った親水性重合体微粒子を得るために、ビニル系単量体の合計100質量部に対して、0.1〜50質量部であることが好ましく、0.2〜20質量部であることがより好ましく、0.5〜10質量部であることが更に好ましい。分散安定剤の使用量が少なすぎると、重合系でのビニル系単量体および生成した重合体微粒子の分散安定性が不良になり、生成した重合体微粒子同士の凝集、沈降、粒径のばらつきが生じ易くなる。一方、分散安定剤の使用量が多すぎると、副生微粒子(1μm以下)の生成量が多くなる場合がある。
【0023】
さらに、本発明の逆相懸濁重合では、重合系における油相(分散媒):水相(分散質)の質量比が99:1〜20:80、特に95:5〜30:70になるようにして重合を行うことが、生産性と重合時の分散安定性、および重合体微粒子の粒子径制御が両立できる点から好ましい。
【0024】
本発明の逆相懸濁重合は撹拌下に行うことが好ましく、攪拌翼やバッフルを設置した反応槽で反応を行うことが好ましい。攪拌翼としては、アンカー翼およびパドル翼が好ましく、特にパドル翼が好ましい。一般的に懸濁重合は攪拌動力に左右され、攪拌動力が低いと目標とする粒子径の重合体微粒子が得られないか、あるいはモノマー水溶液滴同士の合一を抑えることができず、きれいな球状微粒子が得られない、あるいは凝集粒子が多数発生するなどの問題が起こることがある。
本発明における反応槽における単位体積当たりの攪拌動力は0.5kw/m以上であることが好ましく、特に好ましくは、1.0kw/m以上である。
【0025】
本発明の逆相懸濁重合では、重合開始剤として酸化剤と還元剤を使用するレドックス系開始剤を使用する。レドックス反応は低温での重合開始が可能であり、重合反応液中のビニル系単量体濃度を高くすること、また重合速度を大きくすることが可能となるため、生産性、および生成重合体の分子量を高くすることが可能となる。
【0026】
前記レドックス重合開始剤に使用する酸化剤としては、過酸化水素、過硫酸アンモニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルヒドロパーオキサイド、t−ヘキシルヒドロパーオキサイド、ジ−t−アミルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、などの有機過酸化物が挙げられる。
【0027】
前記レドックス重合開始剤に使用する還元剤としては、既知の還元剤が使用できるが、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ハイドロサルファイトナトリウムが好ましく、特に好ましくはハイドロサルファイトナトリウムである。
これらの還元剤は空気と接触することによって徐々に失活するため、所望の重合開始タイミングの数分前に水に溶解し、添加することが好ましい。
【0028】
重合開始剤の使用量は、使用するビニル系単量体の種類、得られる重合体微粒子の粒径や分子量などに応じて調整することができるが、ビニル系単量体の合計量100モルに対して、酸化剤の使用量は0.001〜0.15モルであることが好ましく、特に好ましくは0.003〜0.07モルである。
また、酸化剤と還元剤の比率は特に限定されないが、モル比率で酸化剤:還元剤が1.0:0.25〜15.0であることが好ましく、特に好ましくは1.0:1.0〜10.0である。
上記範囲を外れると、単量体の反応率が低下したり、粒子を構成する重合体の鎖長が短くなったり、重量終了後も触媒が残存するなどによって、凝集物が発生するなどの不具合が生じる恐れがある。
【0029】
本発明における逆相懸濁重合は、重合を開始する際の反応液の温度は0〜40℃とするのが好ましく、5〜30℃とするのがより好ましく、10〜25℃とするのが特に好ましい。反応開始温度が0℃より低い場合は重合設備や反応溶液の凍結が問題となり、また冷却に必要なコストが多大なものとなる。一方、反応開始温度が40℃を超える場合は、安全面から、供給する単量体の量を減少させる必要があり、生産コストが多大なものとなる。
【0030】
本発明の製造方法において、得られる重合体微粒子の水飽和膨潤時の平均粒子径は100μm以下であり、5〜70μmであることがより好ましい。平均粒子径が100μmを超える場合は、大粒子により外観不良や手触り感の悪化、配合した材料の強度低下などの問題が発生する恐れがある。なお、重合体微粒子の大きさが小さくなるほど、連続相と分散相の界面面積が大きくなるため、分散安定剤の安定化効果がより必要となる。
【0031】
重合体微粒子は架橋されていることが好ましく、前述したように多官能ビニル単量体を共重合することにより微粒子を構成する重合体を架橋構造とすることができる。
なお、官能基を有するビニル単量体を逆相懸濁重合した後、架橋剤を反応させて架橋度を調整することも可能である。例として、カルボキシル基を有する単量体の重合体微粒子をエチレングリコールジグリシジルエーテルにより架橋する方法が挙げられる。
その他、多価金属イオンを介したイオン結合性架橋、放射線の照射等の方法により架橋した共有結合性架橋など公知の方法で重合体を架橋することができる。
【0032】
上記の架橋方法で得られる重合体微粒子が、0.5mol%以上の架橋密度を有する重合体微粒子である場合、先に記載したような各種用途においてその特性を発揮することが出来るため、0.5mol%以上の架橋密度を有する重合体微粒子であることが好ましい。
【0033】
本発明では、逆相懸濁重合により重合体微粒子の分散液を得た後、油相の分別除去を含む工程を行うことにより粉末流動性に優れる重合体微粒子の乾燥粉末を得ることができる。
重合体微粒子の乾燥粉末は、共沸脱水によって粒子内の水を除去した上で脱溶剤、乾燥させて粉末化させるのが一般的であるが、本発明は油相の分別除去により分散安定剤を除去することに特徴がある。
油相の分別除去は一般的な方法を適用でき、例えば、濾過、遠心分離、デカンテーションおよび膜分離などが挙げられ、油相の分別除去は共沸脱水以降の工程、特に脱水率70%以上の状態において行うのが好ましい。粒子が含有する水の量が多すぎる場合、油相および分散安定剤を除去した段階で粒子同士が凝集する場合があり、好ましくない。
また、一度油相を分別除去した後に、溶剤を追加して攪拌し、再度油相を分別することによって分散安定剤を更に除去することができる。更に高い粉体流動性を得たい場合は、この操作を繰り返し行っても良い。
油相の分別除去にあたって、必要に応じて重合体微粒子の油中分散液の温度を調整してもよい。温度を調整することで分散安定剤の油相への溶解度が上昇し、除去しやすくなる場合がある。また、温度を調整することで濾過速度が上昇する場合がある。分散液の温度は20〜95℃とするのが好ましく、25〜80℃とするのがより好ましい。
油相分別除去の工程において、除去する油相の量は油中分散液中の油相総量の40〜90質量%とするのが好ましく、より好ましくは50〜85質量%であり、さらに好ましくは60〜80質量%である。40質量%より少ないと分散安定剤の除去が充分ではなく、90質量%を超える場合は除去するのに長時間を要するため、生産性が低下して好ましくない。
【0034】
さらに、油相の分別除去中あるいは分別除去後に吸油性微粒子を加えることが好ましい。吸油性微粒子としては、アマニ油に対し100ml/100g以上の吸油性を示す多孔質微粒子および中空微粒子が好適に使用できる。具体例として、シリカ、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、リン酸カルシウムなどから成る無機多孔質微粒子、および中空微粒子、あるいはナイロン、ビニル系単量体の架橋(共)重合体、澱粉、セルロースなどの有機多孔質微粒子、および中空微粒子などが挙げられる。これらの中で特に好ましいのは多孔質のシリカ微粒子、およびビニル系単量体の架橋(共)重合体微粒子であり、特に好ましいのは多孔質シリカ微粒子である。
油相の分別除去後に吸油性微粒子を加える場合、吸油性微粒子を添加する時期としては脱溶剤を行う前あるいは脱溶剤中の段階が好ましい。脱溶剤を行う前に添加する場合は、重合工程で添加しても良いし、共沸脱水工程や油相分別工程で添加しても良い。脱溶剤が完了した後に添加した場合は、合成した重合体微粒子と吸油性微粒子とがうまく混合されないか、または吸油性微粒子内にうまく分散安定剤が吸収されなくなるため、好ましくない。
【0035】
本発明の製造方法において、水で飽和膨潤した状態における平均粒子径が100μm以下であり、かつ水で飽和膨潤した状態において150μm以上の粒径を示す粒子の割合が1.0質量%以下である重合体微粒子が円滑に製造できる。このような重合体微粒子粉末は各種用途においてその特性を著しく発揮することが出来る。
さらに、5〜50倍の吸水倍率を有し、水で飽和膨潤した状態での平均粒子径が5〜70μmであり、かつ水で飽和膨潤した状態において150μm以上の粒径を示す粒子の割合が0.3質量%以下である重合体微粒子も製造することが可能であり、この重合体は各種用途においてその極めて優れた特性を発現する重合体微粒子粉末となる。
さらに、本発明の製造方法で得られる重合体微粒子粉末に含有される分散安定剤の量は、重合体微粒子粉末に対して、10000質量ppm以下であり、特に4000質量ppm以下であることが好ましい。分散安定剤の含有量が10000質量ppmを超える重合体微粒子粉末は、粉体流動性あるいは他の粉体とのブレンド性に劣るため、各種用途において、その機能を十分に発現できない。
【0036】
ここで、本明細書における重合体微粒子の吸水倍率、水による飽和膨潤状態での平均粒径、水による飽和膨潤状態における150μm以上の粒径を有する粒子の割合は、以下の実施例の項に記載する方法で測定または求めた値をいう。
【実施例】
【0037】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。以下の記載において「部」は質量部を意味し、「%」は質量%を意味する。
【0038】
製造例1:重合体微粒子TR−1の製造
重合反応には、ピッチドパドル型攪拌翼および2本垂直バッフルからなる撹拌機構を有し、さらに温度計、還流冷却器、窒素導入管を備えた反応器を用いた。なお窒素導入管は反応器の外でふたつに分岐しており、一方からは窒素を、もう一方からはポンプを用いて重合触媒を供給できるようになっている。また、窒素導入管は攪拌翼上端とほぼ同じ高さの反応器壁面に接続されている。
反応器内に分散安定剤としてラウリルメタクリレート75部とアクリル酸25部との共重合体(以下、UM−1と呼称)1.4部、およびソルビタンモノオレエート(花王製レオドールAO−10)2.0部を加えた。ここに重合溶媒としてn−ヘプタン165.5部を加え、溶液の温度を40℃に維持しながら攪拌混合して油相調整した。油相は、40℃で30分間攪拌した後20℃まで冷却した。
一方、別の容器にてAA100.0部、アロニックスM−243(東亞合成製、ポリエチレングリコールジアクリレート、平均分子量425)11.8部(単官能単量体に対して2.0mol%に相当)、およびイオン交換水88.1部を仕込み、攪拌、均一溶解させた。さらに混合液の温度を40℃以下に保つように冷却しながら、25%アンモニア水70.8部をゆっくり加えて中和し単量体混合液を得た。
【0039】
攪拌翼を所定の回転速度に設定した後、調製した単量体混合液のうち、重量で40%分(108.3部)を反応器内に仕込み、単量体混合液が油相に分散した分散液を調整した。この時、反応器内温は20℃に保持した。また分散液に窒素を吹き込むことで反応器内の酸素を除去した。単量体混合物の仕込みから1時間40分経過した時点で、ハイドロサルファイトナトリウム(Na)0.037部とイオン交換水1.21部の水溶液を反応器上部に設けられた投入口から添加した。その3分後、パークミルH80(日本油脂製、クメンハイドロパーオキサイドの80%溶液)0.016部をn−ヘプタン1.71部で希釈した溶液を、窒素導入管を通じてポンプで供給した。なお供給は30秒間で行った。供給開始時点から直ちに反応器内温が上昇し、重合が開始したことが確認された。内温の上昇は約5分でピークに達し、その温度は65.8℃であった。
反応液を冷却し温度を20℃とした後、調製した単量体混合液の残り60%分(162.5部)を反応液に加え、分散させた。単量体混合物の仕込みから30分経過した時点で攪拌機の回転数を1.5倍に上げ、直ちにハイドロサルファイトNa0.05部とイオン交換水1.75部の水溶液を反応器上部に設けられた投入口から添加した。その3分後、パークミルH80(日本油脂製、クメンハイドロパーオキサイドの80%溶液)0.023部をn−ヘプタン1.71部で希釈した溶液を、窒素導入管を通じてポンプで供給した。なお供給は45秒間で行った。供給開始時点から直ちに反応器内温が上昇し、重合が開始したことが確認された。内温の上昇は約5分間でピークに達し、その温度は65.7℃であった。その後、反応液を室温まで冷却し、重合体微粒子TR−1の油中分散液を得た。
この油中分散液について、レーザー回折/散乱式粒度分布計を用いてn−ヘプタン中での粒度分布測定を行った(重合体微粒子の分析条件(3)参照、粒子は水膨潤させず、測定時の循環分散媒としてソルビタンモノオレエートを1%含むn−ヘプタンを使用)。得られた粒度分布は単一ピークであり、粒子径は18.1μmであった。粒度分布を図1に示す。
【0040】
更にTR−1をオイルバスにて加熱し、粒子内に含まれる水とヘプタンとを共沸させることによって脱水率95%まで脱水し、TR−1の脱水後油中分散液を得た。また、このTR−1の脱水後油中分散液をデジタルマイクロスコープ(ハイロックス製、KH−3000)にて倍率420倍で観察したところ、10〜20μm付近を中心とした分布を有する球状微粒子群が確認された。写真を図2に示す。
【0041】
実施例1:重合体微粒子粉末P−1の製造
ブフナーロートと吸引濾過ビン、及びアスピレータで構成される吸引濾過設備を準備した。TR−1の脱水後油中分散液250gを50℃に加温し、攪拌して良く分散させ、上記設備を用いて速やかに吸引濾過を行った。吸引濾過によって得られた濾液の重量は81.7gであった。
ブフナーロートに得られたケーキを全量取り出してカップに入れ、そこに濾液と同重量のn−ヘプタンを加えて50℃に加温しながら攪拌し、良く分散させた後、再度吸引濾過を行った。同様の操作をもう一度行い、油相の除去操作を合計3回行った。その後、ブフナーロートに得られたケーキを全量取り出してフラスコに入れ、多孔質シリカ微粒子(AGCエスアイテック製、サンスフェアH−51)0.72gを加えて30分間攪拌混合した後、110℃で加熱攪拌および減圧しながら脱溶剤を行い、重合体微粒子粉末P−1を得た。重合体微粒子粉末P−1は白色で粒の細かい、サラサラした粉末であった。
重合体微粒子粉末P−1について吸水倍率(重合体微粒子の分析条件(2)、参照)を測定した結果、19.2倍であった。乾燥サンプルを大過剰のイオン交換水に分散し飽和膨潤させた後、倍率420倍で観察したところ、30〜40μm付近を中心とした分布を有する球状微粒子群が確認された。写真を図3に示す。
【0042】
また、水飽和膨潤させた重合体微粒子P−1について、レーザー回折/散乱式粒度分布計を用いて粒度分布測定(重合体微粒子の分析条件(3)、参照)を行った。得られた粒度分布は単一ピークであり、水飽和膨潤粒子径は43.6μmであった。重合体微粒子P−1は吸水性能を有し、かつ吸水膨潤時にも球状を保ち、水中で一次分散することが確認された。
更に、得られた重合体微粒子粉末P−1の100gを、径20cm、目開き150μmの篩を用いて篩分した。なお、タッピングボールとして径1.3cm、重量5.5gのアルミナボールを2個使用し、振動篩機(三田村理研製、MRK−RETAC)で2分間振動を与え、篩の通過量(g)を測定した。測定の結果、2分間での篩の通過量は99.8gであった。
更に、重合体微粒子粉末P−1に含まれる分散安定剤の量を測定した。重合体微粒子粉末P−1を10g採取してガラスビンに入れ、これにイソプロパノール25gを加え、25℃の水浴に漬けて30分間攪拌した。30分後、遠心分離(4000rpm、20分間)によってこの分散液からイソプロパノール相のみを取り出した。取り出したイソプロパノール相の重量を測定した後、別のガラスビンに入れ、90℃で2時間加熱してイソプロパノールを穏やかに除去し、更に150℃で1時間加熱した。これを室温まで冷却し、得られた不揮発分の重量を測定すると共に、不揮発分に含まれるUM−1およびソルビタンモノオレエートをH−NMR測定により定量した。測定結果から、重合体微粒子粉末P−1に含まれる分散安定剤の量は1532ppmと計算された。結果を表1に示す。
【0043】
実施例2:重合体微粒子粉末P−2の製造
多孔質シリカ微粒子を使用しなかった以外は実施例1と同様の操作で処理を行い、重合体微粒子粉末P−2を得た。重合体微粒子粉末P−2は白色で粒の細かい、サラサラした粉末であった。得られた重合体微粒子粉末P−2について、実施例1と同様に篩の通過量および分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0044】
実施例3:重合体微粒子粉末P−3の製造
実施例1と同様に、TR−1の脱水後油中分散液250gを50℃に加温し、攪拌して良く分散させ、速やかに吸引濾過を行った。ブフナーロートに得られたケーキを全量取り出してカップに入れ、そこに濾液と同重量のn−ヘプタンを加えて50℃に加温しながら攪拌し、良く分散させた後、再度吸引濾過を行った。油相の除去操作はこの2回のみとして、ブフナーロートに得られたケーキを全量取り出してフラスコに入れ、110℃で加熱攪拌および減圧しながら脱溶剤を行い、重合体微粒子粉末P−3を得た。得られた重合体微粒子粉末P−3について、実施例1と同様に篩の通過量および分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0045】
実施例4:重合体微粒子粉末P−4の製造
多孔質シリカ微粒子を使用しなかった以外は実施例3と同様の操作で処理を行い、重合体微粒子粉末P−4を得た。得られた重合体微粒子粉末P−4について、実施例1と同様に篩の通過量および分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0046】
実施例5:重合体微粒子粉末P−5の製造
油相の分別除去を行う際の分散液の温度を25℃とした以外は実施例4と同様の操作で処理を行い、重合体微粒子粉末P−5を得た。得られた重合体微粒子粉末P−5について、実施例1と同様に篩の通過量および分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0047】
実施例6:重合体微粒子粉末P−6の製造
実施例1と同様に、TR−1の脱水後油中分散液250gを50℃に加温し、攪拌して良く分散させ、速やかに吸引濾過を行った。油相の除去操作はこの1回のみとしてブフナーロートに得られたケーキを全量取り出してフラスコに入れ、110℃で加熱攪拌および減圧しながら脱溶剤を行い、重合体微粒子粉末P−6を得た。得られた重合体微粒子粉末P−6について、実施例1と同様に篩の通過量および分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0048】
比較例1:重合体微粒子粉末P−7の製造
TR−1の脱水後油中分散液250gをフラスコに入れ、110℃で加熱攪拌及び減圧しながら脱溶剤を行い、重合体微粒子粉末P−7を得た。得られた重合体微粒子粉末P−7はP−1などと比較して付着性が強く、手で握ると塊となる性状を示した。
得られた重合体微粒子粉末P−7について、実施例1と同様に篩の通過量を測定したが、大部分が振動によって団子状となるか、或いはタッピングボールに押し潰されて篩目を塞ぐなどして、殆ど通過しなかった。重合体微粒子粉末P−7についても、実施例1と同様に分散安定剤の含有量を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
上記実施例における、重合体微粒子の分析条件(1)〜(4)は以下に記載のとおりである。
(1)固形分
測定サンプル約1gを秤量(a)し、次いで、無風乾燥機150℃、60分間乾燥後の残分を測定(b)し、以下の式より算出した。測定には秤量ビンを使用した。その他の操作については、JIS K 0067−1992(化学製品の減量及び残分試験方法)に準拠した。
固形分(%)=(b/a)×100
【0051】
(2)吸水倍率
吸水倍率は以下の方法によって測定した。測定装置を図4に示す。
測定装置は図4における<1>〜<3>から構成される。
<1> 空気抜きするための枝管が付いたビュレット1、ピンチコック2、シリコンチューブ3およびポリテトラフルオロエチレンチューブ4から成る。
<2> ロート5の上に底面に多数の穴が空いた支柱円筒8、さらにその上に装置用濾紙10が設置されている。
<3> 重合体微粒子の試料6は2枚の試料固定用濾紙7に挟まれ、試料固定用濾紙は粘着テープ9によって固定される。なお、使用する濾紙は全てADVANTEC No.2 内径55mmである。
<1>と<2>とはシリコンチューブ3によって繋がれる。
また、ロート5および支柱円筒8は、ビュレット1に対する高さが固定されており、ビュレット枝管の内部に設置されたポリテトラフルオロエチレンチューブ4の下端と支柱円筒8の底面とが同じ高さになる様に設定されている(図3中の点線)。
【0052】
測定方法について以下に説明する。
<1>にあるピンチコック2を外し、ビュレット1の上部からシリコンチューブ3を通してイオン交換水を入れ、ビュレット1から装置用濾紙10までイオン交換水12で満たされた状態とする。次いで、ピンチコック2を閉じ、ビュレット枝管にゴム栓で接続されたポリテトラフルオロエチレンチューブ4から空気を除去する。こうして、ビュレット1から装置用濾紙10までイオン交換水12が連続的に供給される状態とする。
次に、装置用濾紙10からにじみ出た余分なイオン交換水12を除去した後、ビュレット1の目盛りの読み(a)を記録する。
測定試料の乾燥粉末0.1〜0.2gを秤量し、<3>にある様に、試料固定用濾紙7の中央部に均一に置く。もう1枚の濾紙でサンプルを挟み、粘着テープ9で2枚の濾紙を留め、サンプルを固定する。サンプルが固定された濾紙を<2>に示される装置用濾紙10上に載置する。
次に、装置用濾紙10上に蓋11を載置した時点から、30分間経過した後のビュレット1の目盛りの読み(b)を記録する。
測定試料の吸水量と2枚の試料固定用濾紙7の吸水量の合計(c)は(a−b)で求められる。同様の操作により、吸水性ポリマー試料を含まない、2枚の濾紙7のみの吸水量を測定する(d)。
上記操作を行い、吸水倍率を以下の式より計算した。なお、計算に使用する固形分は、(1)の方法により測定した値を使用した。
【0053】
【化1】

【0054】
(3)水膨潤粒子径
測定サンプル0.02gにイオン交換水20mlを加え、十分に振り混ぜて、サンプルを均一分散させた。また粒子を水飽和膨潤状態とするために、30分以上分散させた分散液について、レーザー回折散乱式粒度分布計(日機装製、MT−3000)を用いて、超音波1分照射後に粒度分布測定を行った。測定時の循環分散媒にはイオン交換水を使用し、分散体の屈折率は1.53とした。測定により得られた体積基準での粒度分布よりメジアン径(μm)を計算し、水膨潤粒子径とした。
【0055】
(4)水膨潤粒子径が150μm以上の粒子量の測定(湿式ふるい残渣法)
JIS K 0069−1992(化学製品のふるい分け試験方法)に準拠して測定した。
固形分として50gに相当するサンプルを計り取り、同量のエタノールを加えて良くほぐした後、3.0lのイオン交換水に、攪拌下ゆっくり注ぎ、30分間攪拌してサンプルの水膨潤分散液を調整する。次いで、均一分散していることを確認した後、分散液を径70mm、目開き150μmの篩に注いで通過させ、ふるい上の残渣を篩からこぼれないように注意して十分な量の水で洗う。次いで、測定後の篩を、通風乾燥機150℃、30分で乾燥した後、デシケータ内で放冷し、乾燥後のふるい重量(ふるい+残渣重量)を測定する。
下記式により計算される、湿式ふるい残渣(%)を水膨潤粒子径が150μm以上の粒子量とした。上記以外の操作はJIS K 0069−1992(化学製品のふるい分け試験方法)に準拠した。
【0056】
【化2】

【0057】
以上の結果より、本発明の製造方法により得られる重合体微粒子の粉末は篩分効率がよく、篩目付着もないため、極めて粉末流動性に優れることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明の製造方法によれば、従来の方法と比較して格段に重合体微粒子粉末の粒径が揃った、高品質の球状の親水性の重合体微粒子を、極めて高い分散安定性、重合安定性を維持しながら、重合時や重合後に重合体粒子の凝集、塊化、重合装置への付着などを生ずることなく生産性良く製造することができ、重合体微粒子粉末にする段階で分散安定剤剤の含有量が少なくなるため、粉体流動性に優れた重合体微粒子を製造することができる。
したがって、本発明で得られる重合体微粒子の粉末は、化粧品添加剤、担持体、多孔質化剤、軽量化剤、記録紙用表面改質剤として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】重合体微粒子粉末TR−1の粒度分布(油中分散液)
【図2】重合体微粒子粉末TR−1のマイクロスコープ写真(脱水後、油中分散液)
【図3】重合体微粒子粉末TR−1水中分散液のマイクロスコープ写真
【図4】重合体微粒子の吸水倍率の測定に用いる装置を示す図である。
【符号の説明】
【0060】
1 ビュレット
2 ピンチコック
3 シリコーンチューブ
4 ポリテトラフルオロエチレンチューブ
5 ロート
6 試料(重合体微粒子)
7 試料(重合体微粒子)固定用濾紙
8 支柱円筒
9 粘着テープ
10 装置用濾紙
11 蓋
12 イオン交換水


【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤の含有量が10000質量ppm以下である重合体微粒子粉末を得ることを特徴とする重合体微粒子粉末の製造方法。
【請求項2】
分散安定剤の存在下、重合開始剤として還元剤と酸化剤を使用し、ビニル系単量体を逆相懸濁重合させて得られた、水飽和膨潤時の平均粒子径が100μm以下の重合体微粒子の油中分散液から油相を分別除去することにより、分散安定剤の含有量が4000質量ppm以下である重合体微粒子粉末を得ることを特徴とする重合体微粒子粉末の製造方法。
【請求項3】
油相の分別除去中あるいは分別除去後に吸油性微粒子を加えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の重合体微粒子粉末の製造方法。
【請求項4】
逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、0.5mol%以上の架橋密度を有する重合体微粒子である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法。
【請求項5】
逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、水で飽和膨潤した状態において150μm以上の粒子径を有する粒子の割合が1.0質量%以下である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法。
【請求項6】
逆相懸濁重合により製造される重合体微粒子が、5〜50倍の吸水倍率を有し、水で飽和膨潤した状態における平均粒子径が5〜70μmであり、かつ水による飽和膨潤状態において150μm以上の粒径を示す粒子の割合が0.3質量%以下の重合体微粒子である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の重合体微粒子粉末の製造方法。

























【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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