説明

重合反応装置及びそれを用いた重合体の製造方法

【課題】 運転時に反応混合物中の単量体及びその重合物が軸封軸受け部に付着することを抑制できる重合反応装置を提供すること。
【解決手段】 単量体を含む原料混合物の重合反応を行う重合反応槽10と、該重合反応槽10内で原料混合物の攪拌を行う、回転可能なシャフト20に取り付けられた攪拌翼22と、シャフト20を支持する軸封軸受け部30と、を備える重合反応装置であって、軸封軸受け部30は、軸シール部(A)32、該軸シール部(A)32と重合反応槽10との間に形成された空隙部34、該空隙部34と重合反応槽10との間に設けられた軸シール部(B)38、及び、空隙部34に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口36から構成される軸封部40を有し、且つ、液体導入口36から導入される液体が、空隙部34から重合反応槽10内に排出されるように構成されている、重合反応装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合体を製造する際に使用する重合反応装置及びそれを用いた重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(メタ)アクリル系重合体等の重合体の製造には、単量体類や重合開始剤などを連続的に重合反応槽に加えて重合させる連続塊状重合法や連続溶液重合法が採用されている。このうち、連続塊状重合法では、溶媒や分散剤などを使用せずに、均一相で重合反応を実行することから、不純物の混入が少ない重合体が得られるという利点がある。しかし、反応系の粘性が極めて高いことから、反応系の除熱、重合温度の制御などに注意が必要である。一方、連続溶液重合法では、不純物の混入が少ない重合体が得られるとともに、反応系の粘性が低いため連続塊状重合法の問題を少なくできるという利点があるが、溶媒を使用するために生産性が低下するという問題がある。
【0003】
また、特許文献1には、連続塊状重合法によるメタクリル系重合体の製造方法として、完全混合型反応槽を用い、反応槽内に実質的に気相部分のない満液状態で重合反応を行う方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7−126308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
こうした重合体の製造に用いられる重合反応装置においては、重合反応槽の内部に、シャフトに取り付けられた攪拌翼が配置され、これによって単量体類や重合開始剤などを含む原料混合物を攪拌し、重合反応が行われる。ここで、シャフトの一端部は駆動装置に取り付けられており、駆動装置から回転駆動力がシャフトに伝達されることで、シャフト及び攪拌翼が回転する。また、シャフトは、駆動装置と重合反応槽との間の軸封軸受け部により支持されている。この軸封軸受け部において、シャフトの周囲には、重合反応槽内の反応混合物が駆動装置に到達しないように軸シール部が設けられている。
【0006】
しかしながら、上述した重合反応装置を用いて重合反応を連続して行った場合、上記軸封軸受け部に反応混合物中の単量体やその重合物が付着し、シャフト及び攪拌翼の回転不良が生じて重合反応を行うことが困難になるという問題がある。
【0007】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、運転時に反応混合物中の単量体及びその重合物が軸封軸受け部に付着することを抑制できる重合反応装置、及び、それを用いた重合体の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、単量体を含む原料混合物の重合反応を行う重合反応槽と、該重合反応槽内で上記原料混合物の攪拌を行う、回転可能なシャフトに取り付けられた攪拌翼と、上記シャフトを支持する軸封軸受け部と、を備える重合反応装置であって、上記軸封軸受け部は、軸シール部(A)、該軸シール部(A)と上記重合反応槽との間に形成された空隙部、該空隙部と上記重合反応槽との間に設けられた軸シール部(B)、及び、上記空隙部に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口から構成される軸封部を有し、且つ、上記液体導入口から導入される上記液体が、上記空隙部から上記重合反応槽内に排出されるように構成されている、重合反応装置を提供する。
【0009】
従来の重合反応装置では、重合反応を長期間連続して行うと、重合反応装置内の軸封軸受け部付近に反応混合物中の単量体やその重合物等が付着し、シャフト及び攪拌翼の回転不良を引き起こすという問題があった。こうした問題は、重合反応槽内に気相部が存在する状態で重合反応を行う際に軸封軸受け部が重合反応槽内の反応混合物と接触する位置に設けられている場合や、重合反応槽内に実質的に気相部分のない満液状態で重合反応を行う場合に、反応混合物が軸封軸受け部に到達しやすくなるために特に顕著であった。本発明の重合反応装置では、軸封軸受け部内の軸シール部(A)と重合反応槽との間の空隙部に液体を導入するための液体導入口が設けられており、導入された液体は、軸封軸受け部の内壁面とシャフトとの間の隙間を通って重合反応槽内へ排出されることとなる。そのため、軸封軸受け部から重合反応槽へ向けた液体の流れが形成され、軸封軸受け部近傍に反応混合物中の単量体が到達し難くなる。加えて、重合反応槽内へ導入される液体は重合禁止剤を含むため、軸封軸受け部近傍での単量体の重合反応も抑制される。さらに、軸シール部(B)が設けられているため、重合反応槽内の反応混合物が逆流して軸封軸受け部に入り込むことが抑制される。軸封軸受け部が、上記軸シール部(A)、上記空隙部、上記液体導入口、及び、上記軸シール部(B)から構成される軸封部を有し、且つ、上記液体導入口から導入される上記液体が、上記空隙部から上記重合反応槽内に排出されるように構成されることにより、単量体及びその重合物の軸封軸受け部近傍への付着が十分に抑制され、長期間の運転を連続して行った場合であっても、シャフト及び攪拌翼の回転不良を十分に抑制することが可能となる。
【0010】
本発明の重合反応装置において、上記軸シール部(A)はメカニカルシールにより形成されていることが好ましい。これにより、高温下においても軸シール部(A)の劣化がなく、長期間の連続運転を安定して行うことができる。
【0011】
本発明の重合反応装置において、上記軸シール部(B)はリップシールにより形成されていることが好ましい。これにより、重合反応槽内の反応混合物が逆流して軸封軸受け部に入り込むことがより十分に抑制される。
【0012】
本発明はまた、上記本発明の重合反応装置を用いて重合体を製造する方法であって、上記重合禁止剤を含有する上記液体を上記液体導入口から上記空隙部に導入しながら、上記単量体を含む上記原料混合物を上記重合反応槽内に連続的に供給し、重合反応を行う工程を有する、重合体の製造方法を提供する。
【0013】
かかる重合体の製造方法によれば、上記本発明の重合反応装置を用い、重合禁止剤を含有する液体を液体導入口から導入しながら重合反応を行うことにより、軸封軸受け部近傍に単量体やその重合物等が付着することを十分に抑制でき、シャフト及び攪拌翼の回転不良等の問題が生じることなく長期間にわたって連続して重合体を製造することができる。
【0014】
また、本発明の重合体の製造方法において、上記液体導入口から導入する上記液体は、上記重合禁止剤を上記単量体に溶解させた液体であることが好ましい。かかる液体においては、原料混合物に含まれる単量体と同一成分である単量体が、重合禁止剤を溶解する溶媒として使用されている。そのため、他の溶媒を用いた場合と比較して、得られる重合体中に不純物が混入することを抑制することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、運転時に反応混合物中の単量体及びその重合物が軸封軸受け部に付着することを抑制でき、シャフト及び攪拌翼の回転不良の問題が生じることなく長期間にわたって連続運転が可能な重合反応装置、及び、それを用いた重合体の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の好適な実施形態に係る重合反応装置の概略構成図である。
【図2】本発明の好適な実施形態に係る重合反応装置の軸封軸受け部の部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0018】
図1は、本発明の好適な実施形態に係る重合反応装置の概略構成図である。図1に示すように、重合反応装置100は、単量体を含む原料混合物の重合反応を行う重合反応槽10と、該重合反応槽10内で原料混合物の攪拌を行う、回転可能なシャフト20に取り付けられた攪拌翼22と、シャフト20を支持する軸封軸受け部30と、を備えている。また、重合反応装置100には、重合反応槽10内に原料を供給するための原料供給口12と、重合反応によって生成した重合体を含む液状(シロップ状)の重合体組成物を重合反応槽10外に排出するための重合体組成物排出口14とが設けられている。更に、重合反応装置100には、重合反応槽10の外壁面の温度を調節するためのジャケット16が設置されている。
【0019】
図2は、本発明の好適な実施形態に係る重合反応装置の軸封軸受け部の部分断面図である。図2に示すように、軸封軸受け部30は、軸シール部(A)32、該軸シール部(A)32と重合反応槽10との間に形成された空隙部34、該空隙部34と重合反応槽10との間に設けられた軸シール部(B)38、及び、該空隙部34に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口36から構成される軸封部40を有している。空隙部34内に導入された重合禁止剤を含有する液体は、空隙部34から重合反応槽10内へ排出されることとなる。本実施形態においては、空隙部34と重合反応槽10との間に軸シール部(B)38が設けられている。軸シール部(B)38としては、リップシール、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)ブッシュ等が挙げられ、中でも、リップシールが好ましい。軸シール部(B)38としては、PTFE製のものが好ましい。PTFE製の軸シール部(B)38を使用することにより、単量体等に対する耐薬品性を高めることができ、かつ軸ブレしてもシール性を良好に保つことができるので、長時間の運転を連続して行った場合であっても、シール効果を持続させることができる。また、軸シール部(A)32の上方(重合反応槽10とは反対側の方向)には、シャフト20を回転駆動させるための駆動装置(図示せず)が設けられている。
【0020】
軸シール部(A)32は、公知の軸シールの形態で形成されていればよいが、空隙部34に導入された液体の影響でシール不良等の問題が生じ難いことから、図2に示したように、メカニカルシールにより形成されていることが好ましい。なお、メカニカルシールの形式は特に限定されず、公知の形式のメカニカルシールを用いることができる。例えば、図2に示すように、メカニカルシールは、シャフト20側に固定された回転環32aと、軸封軸受け部本体(ケーシング)側に固定された固定環32bとを有し、スプリング(図示せず)等により回転環32aと固定環32bとが一定の力で押し付けられて密着するように構成されている。また、回転環32aと固定環32bとの接触面の摩擦を低減するために、メカニカルシールの内部にはメカニカルシール液32cが充填されている。図2では、回転環32aと固定環32bとの組み合わせを二組有するメカニカルシール、すなわちダブルメカニカルシールによる構成が示されている。メカニカルシール液32cは、通常、メカニカルシール液投入口(図示せず)からポンプ等を使用して連続的に供給され、メカニカルシール液排出口(図示せず)から連続的に排出される。メカニカルシール液は、循環供給されるのが好ましい。充填圧力は、重合反応装置100のサイズや重合条件等によって適宜設定されるが、空隙部34に導入される液体の圧力よりも高く設定する。
【0021】
メカニカルシール液32cとしては、公知のメカニカルシール液を特に制限なく用いることができる。具体的には、例えば、アジピン酸エステル、フタル酸エステル、ジイソ酪酸エステル、アセチル化グリセライド等が挙げられる。アジピン酸エステルとしては、例えば、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)、アジピン酸ジイソノニル、アジピン酸ジイソデシル等が挙げられる。フタル酸エステルとしては、例えば、フタル酸ビス(2−エチルヘキシル)、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル等が挙げられる。ジイソ酪酸エステルとしては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールジイソブチラート等が挙げられる。アセチル化グリセライドとしては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンジアセトモノステアレート、グリセリンジアセトモノオレート、グリセリンジアセトモノリノレート、グリセリンジアセトモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンジアセトモノミリステート、グリセリンジアセトモノパルミテート、グリセリンジアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトモノステアレート、グリセリンモノアセトモノミリステート、グリセリンモノアセトモノパルミネート、グリセリンモノアセトモノリシノレート、グリセリンモノアセトモノ12−ヒドロキシステアレート、グリセリンモノアセトモノベヘネート、グリセリンモノアセトモノオレート、グリセリンモノアセトモノラウレート、グリセリンモノアセトジオレート、グリセリンモノアセトジリシノレート、グリセリンモノアセトジカプリレート、グリセリンモノアセトジラウレート、グリセリンモノアセトジステアレート等が挙げられる。中でも、アジピン酸エステル、ジイソ酪酸エステルが好ましく、アジピン酸エステルが特に好ましい。アジピン酸エステルは、重合体として(メタ)アクリル系重合体、特にポリメタクリル酸メチル(PMMA)を製造する場合において、反応混合物中に混入しても単量体の重合反応を促進せず、また、得られる重合体の着色を引き起こす等の悪影響が生じ難いといった利点がある。
【0022】
回転環32a及び固定環32bの材質は特に限定されず、公知の材質で構成されていればよい。回転環32a及び固定環32bの材質としては、例えば、カーボン、シリコーンカーバイド、超硬合金、酸化クロムコーティング等が挙げられる。
【0023】
なお、軸シール部(A)32は、メカニカルシールの他、グランドパッキン、ウィルソンシール、オイルシール、ラビリンスシール、Oリングシール、ベローズシール等によって形成することもできる。
【0024】
液体導入口36から空隙部34に導入する液体は、重合禁止剤を含有する液体であり、反応混合物中の単量体の重合反応を促進しない溶媒に重合禁止剤を溶解させた液体であることが好ましい。上記溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、デカリン、酢酸ブチル、酢酸ペンチル等の有機溶媒、及び、原料混合物中に含まれるものと同様の単量体が挙げられ、中でも原料混合物中に含まれるものと同様の単量体が好適に用いられる。上記単量体は、通常、液状である。上記単量体を溶媒として用いた場合、得られる重合体中に不純物が混入することを抑制することができる。なお、上記液体が重合禁止剤を含有しているため、上記液体においても溶媒である単量体の重合反応が抑制される。
【0025】
重合禁止剤としては、例えば、ハイドロキノン、ハイロドキノンモノメチルエーテル、tert−ブチルカテコール、4−メトキシ−1−ナフトール、1,4−ナフトキノン、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノール、フェノチアジン、ベンゾフェノチアジン、ジニトロベンゼン、p−フェニルジアミン、ジメチルジチオカルバミン酸塩等が挙げられる。これらの中でも、重合体に残留しても着色等の悪影響を及ぼしにくい等の観点から、2,4−ジメチル−6−tert−ブチルフェノールが好ましい。なお、使用する重合禁止剤は、製造する重合体及びその原料として使用される単量体に応じて適宜選択される。
【0026】
上記液体における重合禁止剤の含有量は、液体全量を基準として5〜2000質量ppmであることが好ましく、10〜500質量ppmであることがより好ましい。この含有量が上記範囲よりも大きいと、重合体中に含まれる重合禁止剤の割合が高くなり、重合体がわずかながら着色する傾向がある。また、この含有量が上記範囲よりも小さいと、軸封軸受け部30近傍での原料単量体の重合反応を抑制する効果が低下する傾向があるとともに、溶媒として単量体を用いた場合には、当該単量体の重合反応を抑制する効果も低下する傾向がある。
【0027】
導入する液体の流量は、重合反応装置100のサイズや重合条件等に応じて適宜設定されるが、通常、0.01〜5L/minであり、好ましくは0.1〜3L/minである。液体の流量が上記範囲よりも大きいと、重合体中に含まれる重合禁止剤の割合が高くなり、重合体がわずかながら着色する傾向があり、上記範囲よりも小さいと、反応混合物中の未反応単量体やその重合物が軸封軸受け部30に侵入することを抑制する効果が低下する傾向がある。重合体反応槽10内での原料混合物の重合反応は、上記の流量で液体導入口36から空隙部34に液体を連続的に供給しながら行われる。
【0028】
重合反応装置100では、空隙部34に液体導入口36が設けられており、液体の導入によって空隙部34内を加圧状態とし、重合反応槽10内よりも高い圧力とする。このため、重合反応槽10から反応混合物が軸封軸受け部30に侵入することを十分に抑制することができ、あわせて、軸シールとして機能する。なお、空隙部34内の圧力の好適な範囲については、重合反応装置100のサイズや重合条件等に応じて適宜設定されるが、重合反応槽10内の圧力よりも高くし、且つメカニカルシール液32cの充填圧力よりも低くすることが好ましい。圧力が上がりすぎないように、液体の送液ポンプ本体に、リリーフ弁などの安全装置を設置することが好ましい。また、重合反応装置100には、最高使用圧力に応じて圧力計及び安全弁が設けられるので、安全弁が作動しない範囲で空隙部34内の圧力を設定する。軸封軸受け部30は、図1では、反応槽10の最上部に設置されているが、反応槽10の下部に設置されてもよい。重合反応装置100が上述の構成の軸封軸受け部30を備えることにより、重合反応槽内に気相部が存在する状態で重合反応を行う際に軸封軸受け部が重合反応槽内の反応混合物と接触する位置に設けられている場合や、重合反応槽内に実質的に気相部のない満液状態で重合反応を行うことにより軸封軸受け部が重合反応槽内の反応混合物と接触する場合においても、重合反応槽10から反応混合物が軸封軸受け部30に侵入することを十分に抑制することができる。
【0029】
本実施形態の重合反応装置100は、連続塊状重合法や連続溶液重合法に使用される連続重合装置であり、重合反応槽10は、攪拌翼22によって反応槽内を実質的に完全混合状態となし得るものである。攪拌翼22の形状としては、住友重機械工業(株)マックスブレンド翼、パドル翼、ダブルヘリカルリボン翼、MIG(ミグ)翼、神鋼パンテック(株)のフルゾーン翼等が用いられるが、特に限定されない。なお、攪拌効果を高めるためにも、重合反応槽10内にバッフルを取り付けることが望ましい。
【0030】
重合反応装置100は、攪拌効率が高い程、好ましいことは言うまでもないが、必要以上の攪拌動力は、反応槽10に余分な熱量を加えるだけであり好ましくない。従って、攪拌動力は好ましくは0.5〜20kW/m、より好ましくは1〜15kW/mである。この攪拌動力は、内容液の粘度、つまり重合体の含有率が高くなる程大きくすることが好ましい。
【0031】
重合反応槽10の内部は、実質的に気相のない満液状態とすることが好ましい。満液にすることにより、気相部や気液界面の槽内壁面での重合体の付着、生成が抑制され、これらの製品への混入による品質低下を抑制することができる。その上、重合反応槽10の容積を全て有効利用できるので、生産性を向上させることができる。
【0032】
重合反応槽10内を満液とするには、図1に示すように、重合反応後の重合体組成物の出口(重合体組成物排出口14)を反応槽10の最上部に設置するのが最も簡便である。この場合、原料(開始剤組成物及び単量体組成物)の供給口12は、図1に示すように、重合反応槽10の下部に設けることが好ましい。なお、重合反応槽10内に原料単量体の気体が発生しないようにすることが望ましく、そのために、重合反応槽10内の圧力を、反応槽10内の温度における反応混合物の蒸気圧以上の圧力とすることが好ましい。この圧力としては、ゲージ圧で概ね1.0〜2.0MPa程度である。
【0033】
また、重合反応槽10内は、外側から実質的に熱の出入りのない断熱状態にすることが好ましい。つまり、反応槽内の温度と反応槽外壁面側の温度とをほぼ同じ温度にすることが好ましい。具体的には、例えば図1に示すように、反応槽外壁面側にジャケット16を設置し、スチームや他の熱媒等を用いて反応槽外壁温度を反応槽内温度に追従させてほぼ同じ温度とすることによって行うことができる。
【0034】
ジャケット16は、重合反応槽10の略全体を覆っており、熱媒供給路(図示せず)からジャケット16の内部に蒸気、熱水、有機熱媒体などの熱媒を導入することにより、反応槽10を、適宜加熱または保温する。ジャケット16の温度は、供給される熱媒の温度または圧力によって、適宜調節することができる。ジャケット16内に導入された熱媒は、熱媒排出路(図示せず)から除去される。
【0035】
重合反応槽10を断熱状態とするのは、反応槽内壁面に重合体が付着するのを防止できることと、重合反応を安定化させ、暴走反応を抑制する自己制御性をもたらすためである。なお、反応槽内壁面の温度を内溶液の温度よりも高くし過ぎるのは、反応槽内に余分な熱が加わるので好ましくない。反応槽内と反応槽外壁の両者の温度差が少ない程好ましいが、現実的には±5℃程度の振れ幅の範囲内で調整すればよい。
【0036】
本実施形態において重合反応槽10内で発生する熱、つまり重合熱及び攪拌熱は、重合反応槽10から出ていく液状(シロップ状)の重合体組成物が持ち去る熱量とでバランスさせることが好ましい。重合体組成物が持ち去る熱量は、重合体組成物の量、比熱、温度(重合温度)によって定まる。
【0037】
重合温度は、用いるラジカル重合開始剤の種類にもよるが、好ましくは120〜180℃程度であり、より好ましくは130〜180℃である。この温度が高過ぎると、得られる重合体のシンジオタクチック性が低くなり、オリゴマーの生成量が増え、樹脂の耐熱性が低くなる傾向がある。
【0038】
重合反応槽10内での原料混合物の平均滞留時間は、好ましくは15分以上2時間以下、より好ましくは20分以上1.5時間以下である。この時間が必要以上に長いと、ダイマー、トリマー等のオリゴマーの生成量が多くなり、製品の耐熱性が低下する傾向がある。平均滞留時間は、単位時間当たりの単量体の供給量を変更することにより調節できる。
【0039】
重合反応槽10内への原料の供給は、ラジカル重合開始剤を含む開始剤組成物と、単量体を含む単量体組成物とをそれぞれ開始剤供給路51、単量体供給路52を通して別々に供給口12から供給してもよいし、供給口12と開始剤供給ポンプ53との間の開始剤供給路51と、供給口12と単量体供給ポンプ54との間の単量体供給路52とを合流させることにより、開始剤組成物及び単量体組成物を混合して供給口12から供給してもよいし、供給口12とは別の供給口(図示せず)をさらに設け、開始剤組成物と単量体組成物とを別々の供給口から供給してもよい。ここで、開始剤組成物は、例えばラジカル重合開始剤と単量体と連鎖移動剤とを混合したものであり、単量体組成物は、例えば単量体と連鎖移動剤とを混合したものである。
【0040】
開始剤組成物は、開始剤調合槽101で調合される。調合された開始剤組成物は、図1に示すように開始剤供給ポンプ53によって、開始剤調合槽101と重合反応槽10とをつなぐ開始剤供給路51を通って重合反応槽10内へ連続的に供給される。一方、単量体組成物は、単量体調合槽102で調合される、調合された単量体組成物は、図1に示すように単量体供給ポンプ54によって、単量体調合槽102と重合反応槽10とをつなぐ単量体供給路52を通って重合反応槽10内へ連続的に供給される。
【0041】
本実施形態で用いられる開始剤調合槽101及び単量体調合槽102は、上述した重合反応槽10と同様の攪拌装置を備えた調合槽を使用することができる。開始剤調合槽101では、ラジカル重合開始剤を単量体に完全に溶解させて開始剤液とする。また、開始剤調合槽101内の温度は、重合反応が進行しない温度に維持し、好ましくは−20〜10℃に維持する。一方、単量体調合槽102内の温度は、単量体が揮発しない温度に維持し、好ましくは−20〜10℃に維持する。
【0042】
開始剤供給ポンプ53及び単量体供給ポンプ54は、特に限定されるものではないが、重合反応槽10内への開始剤組成物及び単量体組成物の供給流量を一定量に設定可能なポンプであることが好ましい。具体的には、好ましくは、多連式往復動ポンプが挙げられ、より好ましくは、2連式無脈動定量ポンプ、3連式無脈動定量ポンプなどの無脈動定量ポンプが挙げられる。
【0043】
また、開始剤調合槽101及び単量体調合槽102と重合反応槽10とをつなぐ開始剤供給路51及び単量体供給路52に、加熱・冷却器を接続し、これによって重合反応槽10に供給する原料の温度を調節してもよい。
【0044】
開始剤調合槽101から重合反応槽10への開始剤組成物の供給量は、重合反応槽10の容量等により異なるが、例えば重合反応槽10の容量を10Lとした場合、好ましくは0.1〜10kg/hrであり、より好ましくは0.5〜5kg/hrである。また、単量体調合槽102から重合反応槽10への単量体組成物の供給量は、重合反応槽10の容量等により異なるが、例えば重合反応槽10の容量を10Lとした場合、好ましくは4〜40kg/hrであり、より好ましくは10〜30kg/hrである。
【0045】
なお、単量体調合の際に、溶存酸素による影響を防ぐために、単量体調合槽102中に不活性ガスをバブリングしたり、減圧脱気して溶存酸素を除去するのが一般的であるが、本実施形態の方法では、必ずしも厳密に除去する必要はなく、1.5〜3ppm程度存在していても重合反応を安定して行うことができる。調合した単量体組成物を重合反応槽10に供給する際に、異物除去のため、目的に応じた大きさのフィルターでろ過することが、得られる重合体を光学機器用材料に用いる場合、特に望ましい。
【0046】
重合反応装置100を用いた重合反応によって生成した重合体は、液状(シロップ状)の重合体組成物として、重合反応槽10の重合体組成物排出口14から取り出されて、重合体組成物導出路55を経由して移送、回収される。この重合体組成物には、未反応の原料単量体が含まれることから、必要により重合体組成物を加熱して、未反応の原料単量体を主とする揮発分を蒸発分離する。上記重合体組成物の移送方法としては、特公平4−48802号公報に記載の方法が好適である。また、上記揮発分の蒸発分離の方法としては、脱揮押出機を用いた方法が知られており、例えば、特公昭51−29914号公報、特公昭52−17555号公報、特公平1−53682号公報、特開昭62−89710号公報、特開平3−49925号公報などに記載の方法が好適である。
【0047】
なお、本発明に使用される重合反応槽10は、完全混合型の反応槽であることから、当該反応槽内で原料単量体から重合体に変換される重合率は、概ね、重合体組成物中の重合体含有率に相当する。本発明において、重合率は、特に限定されるものではないが、通常40〜70質量%に設定される。この重合率が高いほど、重合体の生産性が高くなるものの、反応系の粘度が高くなって、大きな撹拌動力が必要になってしまう。また、重合率が低いほど、重合体の生産性が低くなり、未反応の原料単量体を回収するための負担が大きくなってしまう。
【0048】
重合体組成物から分離、回収された原料単量体は、単量体回収タンクに貯留した上で、必要に応じて、再度、単量体調合槽102に供給することにより、重合反応に供することができる。なお、回収された原料単量体については、単量体回収タンクにて貯留している間に重合反応が進行しないように、重合禁止剤を2〜8ppmの割合で存在させ、気相部の酸素濃度を2〜8体積%に設定し、さらに、冷却した状態で、具体的には、例えば、0〜5℃程度の低温下で貯留しておくことが好ましい。
【0049】
本発明において、単量体、ラジカル重合開始剤及び連鎖移動剤としては、製造する重合体に応じて選択されるが、以下、好適な実施形態として、ポリメタクリル酸メチル等の(メタ)アクリル系重合体を製造する場合の原料について説明する。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」及びそれに対応する「メタクリル」を意味する。
【0050】
(メタ)アクリル系重合体の原料として使用される単量体としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)単独、または、(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)80質量%以上と、これと共重合可能な他のビニル単量体20質量%以下との混合物が挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)のアルキルとしては、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、t−ブチルなどが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルのなかでも、(メタ)アクリル酸メチルであることが好ましい。
【0051】
上記の共重合可能なビニル単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等の、上記(メタ)アクリル酸アルキル(アルキル基の炭素数が1〜4であるもの)以外の(メタ)アクリル酸エステル類;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸またはこれらの酸無水物;アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、アクリル酸モノグリセロール、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸モノグリセロールなどのヒドロキシル基含有モノマー;アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ジアセトンアクリルアミド、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等の窒素含有モノマー;アリルグリシジルエーテル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体が挙げられる。
【0052】
本発明を(メタ)アクリル酸エステル系重合体の生成に適用する場合において、反応槽に供給される重合開始剤としては、例えば、ラジカル重合開始剤が挙げられる。上記ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス−4−シアノバレリン酸などのアゾ化合物;ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、カプリエルパーオキサイド、2,4−ジクロルベンゾイルパーオキサイド、イソブチルパーオキサイド、アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、イソプロピルパーオキシジカーボネート、イソブチルパーオキシジカーボネート、s−ブチルパーオキシジカーボネート、n−ブチルパーオキシジカーボネート、2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−アミルパーオキシ−2−エチルヘキサエノート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−エチルヘキサノエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシイソノナエート、1,1,2−トリメチルプロピルパーオキシ−イソノナエート、t−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物が挙げられる。これらの重合開始剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0053】
ラジカル重合開始剤の配合量としては、特に限定されるものではないが、通常、原料の単量体100質量部に対して0.001〜1質量部である。2種以上のラジカル重合開始剤を混合して使用する場合、その合計使用量がこの範囲となるようにすればよい。反応槽に供給する重合開始剤は、生成する重合体や使用する原料単量体の種類に応じて選定されるものであって、本発明において特に限定されるものではないが、例えば、ラジカル重合開始剤については、重合温度での半減期が1分以内であるものが好ましい。重合温度での半減期が1分を超えると、反応速度が遅くなるために、連続重合装置での重合反応に適さなくなるおそれがある。ラジカル重合開始剤の温度と半減期の関係は、ラジカル重合開始剤の種類毎に各種文献や製造会社の技術資料に記載がある。本発明では、和光純薬(株)または化薬アクゾ(株)等の公知の製品カタログに記載の値を用いた。
【0054】
本発明を(メタ)アクリル酸エステル系重合体の生成に適用する場合において、反応槽には、生成する重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤を配合することができる。上記連鎖移動剤としては、単官能および多官能のいずれの連鎖移動剤であってもよく、具体的には、例えば、プロピルメルカプタン、ブチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、2−エチルヘキシルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、などのアルキルメルカプタン;フェニルメルカプタン、チオクレゾールなどの芳香族メルカプタン;エチレンチオグリコールなどの炭素数18以下のメルカプタン類;エチレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトールなどの多価アルコール類;水酸基をチオグリコール酸または3−メルカプトプロピオン酸でエステル化したもの、1,4−ジヒドロナフタレン、1,4,5,8−テトラヒドロナフタレン、β−テルピネン、テルピノーレン、1,4−シクロヘキサジエン、硫化水素などが挙げられる。これらは、単体で使用してもよく、2種以上を組合わせて使用してもよい。
【0055】
連鎖移動剤の配合量としては、使用する連鎖移動剤の種類などによって相違することから、特に限定されるものではないが、例えば、メルカプタン類を使用する場合には、原料の単量体100質量部に対して0.01〜3質量部であることが好ましく、0.05〜1質量部であることがより好ましい。この範囲の使用量が、重合体の機械的性質を損なわず、熱安定性を良好に保つので好ましい。2種以上の連鎖移動剤を組み合わせて使用する場合、その合計使用量がこの範囲となるようにすればよい。
【0056】
本発明において、重合体の重合方法は、溶媒を使用しない塊状重合でも、溶媒を使用した溶液重合でも良いが、特に好ましくは塊状重合である。
【0057】
連続溶液重合法にて重合を行う場合、重合反応に溶媒が使用される以外は、連続塊状重合法と同様に実施される。重合反応に使用する溶媒としては、連続溶液重合反応の原料単量体などに応じて適宜設定されるものであって、特に限定されるものではないが、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メチルイソブチルケトン、メチルアルコール、エチルアルコール、オクタン、デカン、シクロヘキサン、デカリン、酢酸ブチル、酢酸ペンチルなどが挙げられる。中でも、トルエン、メタノール、エチルベンゼン、酢酸ブチルが好ましい。溶媒は、開始剤組成物及び単量体組成物の一方又は両方に添加してもよく、重合反応槽10に直接供給してもよい。溶媒の割合は、特に限定されないが、原料混合物全体の5〜30質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましい。
【0058】
以上説明した重合反応装置及びそれを用いた重合体の製造方法においては、重合反応装置の軸封軸受け部近傍に原料単量体やその重合物等が付着することを十分に抑制できるため、シャフト及び攪拌翼の回転不良等の問題が生じることなく長期間にわたって連続して重合体を製造することができる。
【0059】
上述した重合反応装置及びそれを用いた重合体の製造方法は、重合体の中でも(メタ)アクリル系重合体の製造に好適に使用することができ、特に(メタ)アクリル酸メチルを主成分とする単量体混合物を重合して得られる(メタ)アクリル系重合体の製造に好適に使用することができる。
【0060】
上記の方法で得られた(メタ)アクリル系重合体等の重合体は、優れた透明性や耐候性が得られるため、照明、看板、車両等の多くの分野で好適に使用できる。特に、(メタ)アクリル系重合体は、光ディスク基盤用材料、フレネルレンズ、レンチキュラーレンズ、液晶ディスプレイのバックライトシステムに使用される導光板、拡散板や、液晶ディスプレイの保護前面板などの光学機器用材料、テールランプカバー、ヘッドランプカバー、バイザー、メーターパネル等の車両部材などに好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0061】
10…重合反応槽、12…原料供給口、14…重合体組成物排出口、16…ジャケット、20…シャフト、22…攪拌翼、30…軸封軸受け部、32…軸シール部(A)、34…空隙部、36…液体導入口、38…軸シール部(B)、40…軸封部、100…重合反応装置、101…開始剤調合槽、102…単量体調合槽。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単量体を含む原料混合物の重合反応を行う重合反応槽と、
該重合反応槽内で前記原料混合物の攪拌を行う、回転可能なシャフトに取り付けられた攪拌翼と、
前記シャフトを支持する軸封軸受け部と、
を備える重合反応装置であって、
前記軸封軸受け部は、軸シール部(A)、該軸シール部(A)と前記重合反応槽との間に形成された空隙部、該空隙部と前記重合反応槽との間に設けられた軸シール部(B)、及び、前記空隙部に重合禁止剤を含有する液体を導入する液体導入口から構成される軸封部を有し、且つ、前記液体導入口から導入される前記液体が、前記空隙部から前記重合反応槽内に排出されるように構成されている、重合反応装置。
【請求項2】
前記軸シール部(A)がメカニカルシールにより形成されている、請求項1記載の重合反応装置。
【請求項3】
前記軸シール部(B)がリップシールにより形成されている、請求項1又は2記載の重合反応装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の重合反応装置を用いて重合体を製造する方法であって、
前記重合禁止剤を含有する前記液体を前記液体導入口から前記空隙部に導入しながら、前記単量体を含む前記原料混合物を前記重合反応槽内に連続的に供給し、重合反応を行う工程を有する、重合体の製造方法。
【請求項5】
前記液体が、前記重合禁止剤を前記単量体に溶解させた液体である、請求項4記載の重合体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate