説明

重合可能な歯科材料のための抗菌性ナノシルバー添加物

一次粒子直径<40nmを有する銀粒子を抗菌性添加物として含有する重合可能な歯科材料は、例えば充填用コンポジット、補綴物基礎材料、接着剤、歯冠前装コンポジットおよびブリッジ前装コンポジットとして、並びに人工歯の材料として適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抗菌性添加物として元素の銀を含有する重合可能な歯科材料に関する。
【0002】
例えば充填用コンポジットのような重合可能な歯科材料は重合反応の際にある程度の体積収縮を示し、該体積収縮はモノマーの適切な選択および無機充填物質の添加により明らかに減少するもののそれでも完全には避けられない。この収縮により、歯質への充填材料の最適な接合を保証する接着剤が使用されるにも関わらず周縁部で亀裂が生じ、かつその結果、微生物が定着しそのため二次齲蝕が起こる。
【0003】
この点について、著しく周縁部で亀裂が生じる傾向にも関わらずその含有物質の抗菌特性に基づき二次齲蝕が起こらないか、またはわずかに起こるだけの伝統的な歯科材料である銀アマルガムの利点が明らかになる。
【0004】
充填用コンポジットのこの欠点を除去するために文献中および特許明細書中で、例えば抗生物質のような殺菌力のある添加剤が多数指摘される。抗生物質が広く行き渡る際に予測されうる口腔細菌叢の耐性も問題がないわけではない。そのほかに商品化する前の製造者における実地問題が生じる。というのも法的認可の大綱条件が抗生物質の添加により変更されうるからである:明らかに費用の掛かる認可法によって医用製品から薬剤が生まれる。
【0005】
銀は殺菌力のある添加剤として公知である。ただし、通常、銀は元素ではなくガラス(US6,593,260B2、Ishizuka Garasu Kabushiki Kaisha)、コア−シェル−粒子(US5,180,585、Du Pont de Nemours)、コア−シェル−粒子へ同時ドーピングしたもの(US5,180,585、Du Pont de Nemours)、ケイ酸へ同時ドーピングしたもの(EP1083146A1、Degussa)、ゼオライト等に施与された錯体としての銀化合物(US5,985,308、Westham Technologies)の形で使用される。さらに下方のマイクロメーター範囲の直径を有する多孔質の銀粒子が公知である(DE10146050A1、WO03/024494A1、DE10205600A1、WO02/17984A1)。
【0006】
通常、提案される銀粒子の大きさは数マイクロメーターであり、そのうえたいていさらにアグリゲート/アグロメレートとなっている。そのため材料は常に暗い固有色を有している。したがって歯牙色の歯科材料における使用はこれらの文献中に記載された銀材料の大部分に関して考慮されない。というのも低濃度においてですら色および透明度のような製品特性が不利に影響を及ぼされうるからである。
【0007】
このような欠点を避けるために重合可能な歯科材料が提案され、該歯科材料は抗菌性添加物として
○一次粒子直径<40nm、有利に1〜40nm、とりわけ1〜20nm)を有するナノスケールの銀粒子を含有する。(そのため銀粒子は光学的な屈折効果および回折効果をもたらさない)。
【0008】
抗菌作用はすでに銀1ppm、とりわけ10ppmおよび有利に銀100ppmでもって達成することができる。銀の割合は10質量%まででよく、かつ有利に5質量%を下回り、とりわけ2質量%を下回る。
【0009】
有利に粒子は以下のその他の特徴の少なくとも1つを有するかもしくは有しない。すなわち粒子は:
○均質に歯科用の材料中に混入されており、そのため表面被覆とはならない。この理由から、例えば充填材料において当然に生じる被覆の消耗により効果損失は生じない。バルク材料は常に一種の銀デポーであり、ここから銀は外側へ拡散してよく、さもなければ溶解過程により消費される。そのため長期的効果が保証される。
○アグロメレートとなっていない。というのもアグロメレーションが光学的に不利な効果をもたらすからである。
○担体物質または補助物質上に施与されていない;
○混入するために表面変性されている;
○アクリラート分散液の形で歯科用の材料中に導入されている。
【0010】
提案された材料は以下の利点を有する:
1.ナノスケールの粒子直径は非常に高い比表面積を生じる。これにより銀の全濃度は充填用コンポジット中で比較的低く保持されるが、それにも関わらず抗菌性の長期的効果が確保される。
2.ナノ粒子は銀により常であるように光の中で黒色または灰色で現れず、また歯科材料の色も損なうことがない。材料の透明度は本質的には低下しない。というのも粒径は可視光の波長を下回るからである(スペクトル範囲420〜750nmの<1/20)。
3.銀が使用される際の問題は、銀イオンの高すぎる濃度が毒性に作用しうることである(DE10205600A1)。それゆえ可溶性の銀化合物の高濃度の形成は所望されない。提案された材料によりこれらの問題は生じない。
【0011】
本発明による材料のために適切なナノ粒子の銀は、例えばニュルンベルクのBio−Gate Bioinnovative Materials社から提供される。適用案として、テキスタイル、織布、骨への移植用材料の被覆、並びに接着剤および被覆材料が挙げられる。
【0012】
銀は有利に0.05%〜0.5%で歯科材料中に含有されている。
【0013】
本発明による材料は歯科分野で、例えば充填用コンポジット、補綴物基礎材料、接着剤、歯冠前装コンポジットおよびブリッジ前装コンポジットとして、並びに人工歯の材料として適している。
【0014】
以下の実施例は本発明の説明に役立つが、本発明はこれらの例に限定されない:
以下の成分:
A アクリラートベースのモノマー
B 無機充填物としての歯科用ガラス、粒径約1μm
C 無機充填物としてのケイ酸、一次粒径<40nm
D 安定剤、開始剤
を有する歯科充填用コンポジット材料「Venus/Heraeus Kulzer」から試料を取り出し、かつランプ「Translux Energy」により硬化させる。残りの組成物に、平均直径約5mnのAg−ナノ粒子(Bio Gate社、エアランゲン)を約50ppmの濃度で混練機中で30分均質に混入する。もう一つの試料を取り出し、かつランプ「Translux Energy」により硬化させる。両方の硬化された試料の色に違いは見られない。
【0015】
銀ナノ粒子もしくは該ナノ粒子の分散液を、すでに充填用コンポジットの製造法のあいだに適切な場所で混入することも当然のことながら可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次粒子直径<40nmを有する銀粒子を含有する重合可能な歯科材料。
【請求項2】
銀の質量割合が少なくとも1ppmおよび最大で10質量%であり、有利に少なくとも10ppmおよび最大で5質量%、とりわけ少なくとも100ppmおよび最大で2質量%であることを特徴とする、請求項1記載の歯科材料。
【請求項3】
銀粒子が1〜20nmの一次粒子直径を有することを特徴とする、請求項2記載の歯科材料。
【請求項4】
銀粒子が均質に歯科用の材料中に混入されていることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項5】
銀粒子がアグロメレートとなっていないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項6】
銀粒子が混入するために表面変性されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項7】
銀粒子がアクリラート分散液の形で歯科用の材料中に混入されることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項8】
銀粒子が担体物質または補助物質上に施与されてないことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の歯科材料。
【請求項9】
充填用コンポジットとしての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項10】
接着剤としての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項11】
補綴物基礎材料としての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項12】
人工歯の材料としての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項13】
歯冠前装コンポジットおよびブリッジ前装コンポジットとしての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項14】
裂溝封鎖材としての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。
【請求項15】
自然歯の表面処理のための歯科用保護コーティングの成分としての、請求項1から8までのいずれか1項記載の歯科材料の使用。

【公表番号】特表2007−514675(P2007−514675A)
【公表日】平成19年6月7日(2007.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−544296(P2006−544296)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/014149
【国際公開番号】WO2005/058253
【国際公開日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(399011900)ヘレーウス クルツァー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (56)
【氏名又は名称原語表記】Heraeus Kulzer GmbH 
【住所又は居所原語表記】Gruener Weg 11, D−63450 Hanau, Germany
【Fターム(参考)】