重心位置測定装置
【課題】リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができる重心位置測定装置を提供する。
【解決手段】車両1の荷台11の上方に配され、積荷26が載置される載台25と、車両1の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、載台25を水平方向に自由振動可能に支持するロードセル21〜24と、水平方向に自由振動状態にある載台25の変位および加速度をそれぞれ検出する変位センサ35および加速度センサ36と、ロードセル21〜24からの荷重信号に基づいて載台25上における積荷26の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算部50と、ロードセル21〜24からの荷重信号と変位センサ35および加速度センサ36からの検出信号とに基づいて載台25上における積荷26の重心高さを演算する重心高さ演算部51とを備えるものとする。
【解決手段】車両1の荷台11の上方に配され、積荷26が載置される載台25と、車両1の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、載台25を水平方向に自由振動可能に支持するロードセル21〜24と、水平方向に自由振動状態にある載台25の変位および加速度をそれぞれ検出する変位センサ35および加速度センサ36と、ロードセル21〜24からの荷重信号に基づいて載台25上における積荷26の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算部50と、ロードセル21〜24からの荷重信号と変位センサ35および加速度センサ36からの検出信号とに基づいて載台25上における積荷26の重心高さを演算する重心高さ演算部51とを備えるものとする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の重心位置測定装置として、例えば特許文献1にて開示されているものがある。この特許文献1に係る装置においては、フレーム上の3箇所にそれぞれシリンダを介してロードセルを設置し、各ロードセルを介して測定対象物を載置するための計測台を支持し、シリンダを伸長させることによってロードセルを計測台の下面に押し付け、計測台を水平に維持した状態および傾斜した状態ごとに各ロードセルから得られる荷重データに基づいて、演算制御部が測定対象物の重心を演算するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85182号公報
【0004】
しかし、トレーラ等の荷台に荷物を載せて走行する車両に関しては、積荷の載せかえ等に伴う重量変化によって重心位置が変化してしまう。このため、重心位置を調べるためには積荷を載せかえるごとに車両を傾斜させて重心位置を測定する必要があるが、積荷を載せかえるたびにそのような重心位置測定動作を実施することは現実的には困難である。
【0005】
また、車両を傾斜させることなく定位置で重心位置を測定することができる装置が本出願人の既出願(特願2009−183443号)によって提案されているが、この装置では停車中に測定を行うために走行中に積荷の状態に変化があった場合の重心位置の変化については測定することができない。しかし、現実には走行中の振動などにより積荷の状態は変化する可能性があり、特に固定方法が不十分であった場合などには重心位置が大きく変化し、車両の運動特性に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
ところで、積荷の状態が変化することで車両を含む全体の重心位置は変化するが、実際には車両単体の重心位置は変化しておらず、車両の運動特性を変化させる主たる要因は積荷にある。したがって、車両が安全に走行するためには積荷の重心位置を常に知る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたもので、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができる重心位置測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による重心位置測定装置は、
車両の荷台上の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置であって、
前記荷台の上方に配され、積荷が載置される載台と、
車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、前記載台を水平方向に自由振動可能に支持する複数のロードセルと、
水平方向に自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの荷重信号に基づいて前記載台上における積荷の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算手段と、
前記ロードセルからの荷重信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて前記載台上における積荷の重心高さを演算する重心高さ演算手段と
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重心位置測定装置においては、車両の荷台の上方に、積荷が載置される載台が配される。この載台は、車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配される複数のロードセルによって自由振動可能に支持されている。
例えば、旋回時、遠心力等の影響によって車両全体に水平方向の力が作用すると、この水平方向の力の一部によって載台が水平方向に変位する。載台は、複数のロードセルによって自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、水平方向に自由振動する。この自由振動状態にある載台の変位および加速度のいずれか一方または両方は振動状態量検出手段によって検出される。
本発明の重心位置測定装置によれば、ロードセルからの荷重信号に基づいて載台上における積荷の水平面的重心位置が水平面的重心位置演算手段によって演算されるとともに、ロードセルからの荷重信号と振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて載台上における積荷の重心高さが重心高さ演算手段によって演算されるので、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る重心位置測定装置が装備されるトレーラ連結車両の平面図(a)および側面図(b)
【図2】載台の支持構造の説明図
【図3】復元力の発生の理論説明図
【図4】重心位置測定装置の制御系の概略システム構成図
【図5】マイクロプロセッサの機能ブロック図
【図6】重心位置の求め方の理論説明図(1)
【図7】重心位置の求め方の理論説明図(2)
【図8】重心位置測定プログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図9】重心位置測定動作のタイムチャート
【図10】載台支持構造の他の態様例の説明図(1)で、正面図(a)、(a)のA−A線断面図(b)および(a)のB部拡大図(c)
【図11】載台支持構造の他の態様例の説明図(2)で、正面図(a)、(a)のC−C線断面図(b)および(a)のD部拡大図(c)
【図12】載台支持構造の他の態様例の説明図(3)で、正面図(a)、(a)のE−E線断面図(b)
【図13】図10に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(a)および図11に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(b)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による重心位置測定装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る重心位置測定装置が装備されるトレーラ連結車両の平面図(a)および側面図(b)がそれぞれ示されている。
【0013】
<トレーラ連結車両の説明>
図1(a)(b)に示されるトレーラ連結車両1(以下、単に「車両1」と称する。)は、トラクタ2と、トレーラ3とにより構成されている。
トラクタ2は、3本の車軸4,5,6を有する3軸の牽引車両である。各車軸4,5,6には、それぞれ左右に車輪7,7;8,8;9,9が装着されている。
トレーラ3は、3軸の被牽引車両であり、トラクタ2の後部に重ね合わされる連結部10と、この連結部10から後方に向かって延設される荷台11と、この荷台11に支承される3本の車軸12,13,14と、各車軸12,13,14の左右に装着される車輪15,15;16,16;17,17とを備えて構成されている。
トラクタ2の後部には連結装置としてのカプラ18が装備され、トレーラ3の連結部10にはキングピン19が設けられ、カプラ18にキングピン19が噛み合わされることにより、トラクタ2とトレーラ3とが連結される。カプラ18に対するキングピン19の噛み合わせが解除されることにより、トラクタ2に対しトレーラ3が分離可能な状態となる。
本実施形態の重心位置測定装置20は、トレーラ3の荷台11に搭載されている。
なお、以下の説明において、前後左右方向は車両1の前進方向を基準として定めるものとする。
【0014】
<重心位置測定装置の概略説明>
重心位置測定装置20は、第1ロードセル21、第2ロードセル22、第3ロードセル23および第4ロードセル24と、載台25とを備えている。
ここで、4個のロードセル21,22,23,24は、車両1の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して荷台11の四隅に設置されている。
載台25は、積荷26を載置するのに十分な大きさの四角形の板状部材で構成され、荷台11の上方位置で4個のロードセル21,22,23,24によってその四隅が支持されている。
【0015】
<ロードセルの基本構造の説明>
図2に示されるように、ロードセル21〜24は、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型ロードセルであり、弾性体30と、密封ケーシング31とを備えている。
弾性体30は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属製で略円柱形状に形成され、その軸線を鉛直方向に向けて起立配置されている。
弾性体30は、軸線方向中央部に形成される起歪部30aと、上端に形成される上側凸面30bと、下端に形成される下側凸面30cとを有している。上側凸面30bおよび下側凸面30cはいずれも、所定の曲率半径Rの部分球面形状に形成されている。
弾性体30は、起歪部30aが密封ケーシング31内に気密に収められ、上端部および下端部がそれぞれ密封ケーシング31から露出させた状態で密封ケーシング31に組み込まれている。
【0016】
<ロードセルの上側受け部材および下側受け部材の説明>
弾性体30の上端部と載台25との間には、上側受け部材32が介在されている。上側受け部材32は、水平座面32aを有し、この水平座面32aを弾性体30の上側凸面30bに接触させた状態で載台25に固定されている。
弾性体30の下端部と荷台11との間には、下側受け部材33が介在されている。下側受け部材33は、水平座面33aを有し、この水平座面33aを弾性体30の下側凸面30cに接触させた状態で荷台11に固定されている。
【0017】
<復元力発生機構の基本構成の説明>
復元力発生機構は、弾性体30の上側凸面30bおよび上側受け部材32の水平座面32aと、弾性体30の下側凸面30cおよび下側受け部材33の水平座面33aとにより構成されている。復元力発生機構は、載台25の水平方向の変位y0に対して復元力Fを発生する。この復元力Fについて、図3を用いて以下に説明する。
【0018】
<復元力の発生の理論説明>
図3には、載台25の水平方向の変位y0に伴ってロードセル21〜24の弾性体30が垂直状態から横方向にy0だけ移動してθだけ傾斜した状態が示されている。図中記号を以下のように定める。
y0:弾性体30の上部の移動量
S:弾性体30の上部と下部の接触点長さ
H:弾性体30の高さ(ロードセル21〜24の高さ)
A:上側凸面30bの曲率半径(=R)
B:下側凸面30cの曲率半径(=R)
N:弾性体30に作用する垂直荷重
θ:弾性体30の傾斜角
【0019】
<復元力の発生の理論説明>
図3において、弾性体30の傾斜角θの値が微小であるならば、次式(1)が成立する。
tanθ≒y0/H ・・・(1)
また、弾性体30の上部と下部の接触点長さSは、次式(2)で表わすことができる。
S≒A・tanθ+(B−H)tanθ
=(A+B−H)・y0/H ・・・(2)
そして、垂直荷重Nと復元力Fとの比Kは、次式(3)で表わすことができる。
K=F/N≒S/H=(A+B−H)・y0/H2 ・・・(3)
上記式(3)より復元力Fは、次式(4)で表わすことができる。
F=N・(A+B−H)・y0/H2 ・・・(4)
【0020】
<載台の自由振動の説明>
例えば、旋回時、遠心力等の影響によって車両1全体に水平方向の力が作用すると、この水平方向の力の一部によって載台25が水平方向に変位する。載台25は、ダブルコンベックス・ローディング方式の複数のロードセル21〜24によって水平方向に自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、載台25には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。こうして、載台25の水平方向の変位に対して復元力Fを作用させることで、載台25を水平方向に自由振動させることができる。
【0021】
<変位センサ、加速度センサの説明>
図1(a)(b)に示されるように、荷台11と載台25との間において、第3ロードセル23と第4ロードセル24との中間位置には、変位センサ35および加速度センサ36がそれぞれ配置されている。
変位センサ35は、自由振動状態にある載台25の水平方向の変位を検出する変位検出手段として機能する。なお、変位センサ35としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば光学式変位センサ、渦電流式変位センサ、差動変圧式変位センサなどが挙げられる。
加速度センサ36は、自由振動状態にある載台25の水平方向の加速度を検出する加速度検出手段として機能する。なお、加速度センサ36としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば静電容量形加速度センサや、金属ひずみゲージ式加速度センサ、半導体ひずみゲージ式加速度センサ、圧電式加速度センサなどが挙げられる。
【0022】
<重心位置測定装置の制御系のシステム構成の説明>
図4に示されるように、重心位置測定装置20は、制御装置40と、操作装置41と、表示装置42とを備えている。
【0023】
<制御装置の概略説明>
制御装置40は、主として、増幅器43と、ローパスフィルタ44と、マルチプレクサ45と、A/D変換器46と、I/O回路47と、メモリ48と、マイクロプロセッサ(MPU)49とにより構成されている。
増幅器43は、送り込まれる信号をA/D変換可能な大きさに増幅して送り出す機能を有している。
ローパスフィルタ44は、低域周波数のみを信号として通過させる機能を有している。
マルチプレクサ45は、送り込まれる複数の信号を選択制御信号の指令に基づいて選択的に送り出す機能を有している。
A/D変換器46は、マルチプレクサ45からのアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有している。
I/O回路47は、A/D変換器46と、操作装置41と、表示装置42と、メモリ48と、MPU49との間で各種の信号やデータの受け渡しを行う機能を有している。
メモリ48は、PROMやRAMなどで構成され、所定プログラムや基本データなどを長期的に記憶したり、種々のデータや演算用数値などを一時的に記憶したりする機能を有している。
MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムの指示に従って、必要な信号をI/O回路47を介して受け取り、また必要なデータをメモリ48から受け取り、受け取った信号やデータに基づいて演算を実行する機能を有している。
【0024】
<操作装置の概略説明>
操作装置41は、操作スイッチや数値キーなどを備えてなり、測定開始・終了の指令や零点調整、使用モードの切り換え、数値設定などの種々の動作の際に用いられる。
【0025】
<表示装置の概略説明>
表示装置42は、例えば液晶ディスプレイからなり、測定結果や各種データの入出力画面などが表示される。
【0026】
<重心位置測定装置の制御系システムの処理動作の概略説明>
重心位置測定装置20の制御系システムにおいては、ロードセル21〜24、変位センサ35および加速度センサ36のそれぞれの信号は、増幅器43、ローパスフィルタ44、マルチプレクサ45、A/D変換器46およびI/O回路47を経由してMPU49に送られる。MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムに従って、I/O回路47からの信号を取り込み、またメモリ48に記憶されている種々のデータを読み込み、これらの信号やデータに基づいて積荷26の水平面的重心座標の演算や重心高さの演算を実行する。そして、その演算結果は表示装置42に表示される。
【0027】
<マイクロプロセッサの機能説明>
MPU49においては、所定プログラムが実行されることにより、図5に示される水平面的重心位置演算部50、重心高さ演算部51および表示信号生成部52のそれぞれの機能が実現される。
【0028】
<重心Gの平面座標(xG,yG)の求め方の理論説明>
次に、図6および図7を用いて、積荷26の水平面的重心座標、すなわち載台25に載せられた積荷26の重心Gを水平面(o−xy平面)に射影したときのその面上における重心Gの座標(xG,yG)の求め方について説明する。
ここで、載台25の幅方向(車両1の幅方向)の中心位置を通り全長方向に延びる幅方向中心線に沿ってx軸を定め、載台25の全長方向(車両1の全長方向)の中心位置を通り幅方向に延びる全長方向中心線に沿ってy軸を定め、x軸とy軸の交点、すなわち載台25の中央に原点oをとり、この原点oを通る鉛直線に沿ってz軸を定めて、直交座標系o−xyzを定める。
なお、理論説明の簡単化のために、載台25は密度が一定の直方体と仮定する。また、ロードセル21〜24のそれぞれの出力は無負荷時において零に調整されているものとする。
【0029】
<記号の定義の説明>
図6および図7中の記号および理論式で用いる記号の意味を下記のとおり定義する。
G:積荷26の重心
G0:載台25の重心
a:ロードセル21(23)とロードセル22(24)との間の距離
b:ロードセル21(22)とロードセル23(24)との間の距離
c:載台25の高さ
H:ロードセル21〜24の高さ(弾性体30の高さ)
Wi:各ロードセル21〜24に作用する静荷重(i=1,2,3,4)
W:積荷26の自重(=W1+W2+W3+W4)
W12:W1+W2
W24:W2+W4
なお、上記記号のうち、a,b,c,H,Rは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0030】
<重心Gの平面座標(xG,yG)の求め方の理論説明>
モーメントのつりあい条件として次式(5),(6)が成り立つ。
W24a−W(a/2+xG)=0 ・・・(5)
W12b−W(b/2+yG)=0 ・・・(6)
上記式(5),(6)より次式(7),(8)が得られる。
xG=a(W24/W−1/2) ・・・(7)
yG=b(W12/W−1/2) ・・・(8)
よって、W24,W12およびWの測定値を上記式(7),(8)に代入して計算することにより、重心Gの平面座標(xG,yG)を求めることができる。
【0031】
<積荷の重心高さhの求め方の理論説明>
次に、積荷26の重心高さhの求め方について、主に図7を用いて以下に説明する。以下の理論説明では、積荷26が載せられた載台25が自由振動状態にあることが前提となる。例えば、旋回時の遠心力等の影響による載台25の水平方向の変位に対して復元力発生機構からの復元力Fを作用させることで、積荷26が載せられた載台25を水平方向(y方向)に自由振動させる。なお、図7では、静止時における積荷26の重心Gのy座標yGをdで表わしている。また、o−yz座標系は空間に固定した座標系とする。
(文1)
【0032】
ここで、以下の説明で用いる新しい記号を定義しておく。
(文2)
【0033】
なお、上記記号のうち、m0,eは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0034】
積荷26が剛体であるならば、積荷26の重心Gと載台25の重心G0とのz方向の相対変位は零である。積荷26が非剛体の場合、その相対変位は零ではないが、その量は微小である。よって、その相対変位の量は以下の運動方程式において無視することとする。すなわち、z0(t)=zG(t)とおく。このとき、系の運動方程式は次式(9),(10)で表わされる。
【0035】
(文3)
【0036】
上記式(9),(10)は、積荷26が剛体であるか否かとは関係なく成立する。
また、転倒モーメントのつりあい条件として次式(11)を得る。
【0037】
【数1】
ここに、δは、重心Gの重心G0に対するy方向の相対変位である。δは(b/2−d)に比較して微小であるから以下の式変形においては無視する。
【0038】
(文4)
【0039】
【数2】
上記式(12)より、積荷26の重心高さhを求める次式(13)が得られる。
【0040】
【数3】
【0041】
前述した復元力Fを求める式(4)において、弾性体30に作用する垂直荷重NはMg(g:重力加速度)、弾性体30の上側凸面30bおよび下側凸面30cの曲率半径A,Bはいずれも所定半径Rであるから、ロードセル21〜24によって支持される載台25の復元力Fは、次式(14)で表わすことができる。
【0042】
【数4】
上記式(14)を上記式(13)に代入してhを書き直すと次式(15)となる。
【0043】
【数5】
ただし、kは次式(16)で表わされるものである。
【数6】
【0044】
(文5)
【0045】
(文6)
【0046】
【数7】
【数8】
【0047】
ここで、「剛体」とは、外力による変形が全く生じない「完全剛体」と、外力による変形が若干生じてもその変形による重心高さ測定上の影響が極めて少なくて完全剛体と見なしても何ら支障がない「見なし剛体」とを包含するものである。また、「非剛体」とは、外力による変形が生じてその変形の影響が重心高さ測定上無視できない物体を総称して表現したものである。
【0048】
(文7)
【0049】
<ロードセルで検出される荷重信号の補正の説明>
ところで、載台25の水平方向の自由振動に伴って、ロードセル21〜24は回転振動となる。これにより、ロードセル21〜24の軸方向に作用する荷重は、回転角θの関数となる。今、ロードセル21〜24で検出される荷重Wi´(t)が上記の軸方向荷重であると仮定する。
【0050】
このとき、Wi´(t)は次式(18)で表わすことができる。
【数9】
ただし、Fi(t)およびθはそれぞれ次式(19)および式(20)で表わされる。
【数10】
【数11】
ここに、Fi(t)は、各ロードセル21〜24に生じる復元力Fの符号を逆にしたものである。
上記式(18)により次式(21)が得られる。
【数12】
式(21)によりWi(t)がWi´(t)とy0(t)から求まることがわかる。
なお、傾斜補正の成されたデジタルロードセルを用いる場合は、その出力はWi(t)であるから、上述の補正は不要となる。
【0051】
<重心位置測定装置の計測動作の説明>
以上に述べたように構成される重心位置測定装置20の計測動作について、主に、図5の機能ブロック図、図8のフローチャートおよび図9のタイムチャートを用いて以下に説明する。なお、図8において記号「S」はステップを表わす。
以下の計測動作は、積荷26を載せた車両1の走行時に行われる。
【0052】
<ステップS1〜S3の処理内容の説明>
水平面的重心演算部50は、ロードセル21〜24からの静荷重信号Wi(i=1,2,3,4)を読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号Wiから積荷26の質量(重量)を求める(S1)。
また、水平面的重心演算部50は、次式(16)に基づいてkを演算する(S2)とともに、次式(7),(8)に基づいて積荷26の重心Gの平面座標(xG,yG)を算出する(S3)。
【数13】
xG=a(W24/W−1/2) ・・・(7)
yG=b(W12/W−1/2) ・・・(8)
【0053】
例えば、時刻t2から時刻t3の間において、車両1が旋回走行すると、遠心力等の影響によって車両1全体に水平方向の力が作用する。すると、この水平方向の力の一部によって載台25が水平方向に変位する。載台25は、ダブルコンベックス・ローディング方式の複数のロードセル21〜24によって自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、載台25には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。このため、載台25は水平方向(y方向)に自由振動する。
【0054】
<ステップS4,S5の処理内容の説明>
(文8)
【0055】
<ステップS6の処理内容の説明>
載台25が静止した時刻t5以降から時刻t6の間において、重心高さ演算部51は、ステップS1で取得した静荷重信号WiとステップS4,5で収得した動荷重信号Wi(t)とに基づいてΔW(t)およびΔW34(t)をそれぞれ演算する。
【0056】
<ステップS7の処理内容の説明>
時刻t6以降から時刻t7の間において、重心高さ演算部51は、次式(15)に基づいて積荷26の重心Gの重心高さhを演算する。なお、hの測定値は、あらかじめ定めた時間区間内の各サンプリング時刻において式(15)で計算されたhの平均値とする。
【数14】
【0057】
<ステップS8の処理内容の説明>
そして、表示信号生成部52は、ステップS3の演算の結果得られた水平面的重心位置(xG,yG)の値と、ステップS7の演算の結果得られた重心高さh(=zG)の値とを表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップS3,7の演算で求められた三次元重心位置の値が表示装置42に表示される。
【0058】
<本実施形態の重心位置測定装置の作用効果の説明>
本実施形態の重心位置測定装置20によれば、ロードセル21〜24からの荷重信号に基づいて載台25上における積荷26の水平面的重心位置(xG,yG)が水平面的重心位置演算部50によって演算されるとともに、ロードセル21〜24からの荷重信号と変位センサ35および加速度センサ36からの検出信号とに基づいて載台25上における積荷26の重心高さh(=zG)が重心高さ演算部51によって演算されるので、リアルタイムに積荷26の三次元重心位置を測定することができる。
【0059】
<本発明との用語の対応説明>
変位センサ35および加速度センサ36を含む構成が本発明の「振動状態量検出手段」に対応する。
水平面的重心座標演算部50が本発明の「水平面的重心位置演算手段」に対応する。
重心高さ演算部51が本発明の「重心高さ演算手段」に対応する。
【0060】
以上、本発明の重心位置測定装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0061】
<加速度検出手段の別態様例の説明>
上記実施形態においては、自由振動状態にある載台25の加速度を検出する加速度検出手段として、加速度センサ36を用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、重心高さ演算部51は、変位センサ35の検出信号に基づいて2回微分演算を実行することで、載台25の加速度を求めることができる。この場合、加速度センサ36は不要になる。なお、上記微分演算を重心高さ演算部51に実行させるのではなく、別途に加速度演算部を設け、この加速度演算部に上記微分演算を実行させる態様もあり得る。
【0062】
上記実施形態においては、車両1の鉛直方向の振動が測定結果に影響を及ぼしてしまうが、加速度センサ36として2軸検出可能なものを使用して、水平方向と鉛直方向の加速度を検出することにより、鉛直方向の影響を考慮した積荷26の重心位置の測定が可能になる。
【0063】
<動荷重変動ΔW(t)の測定の別態様例の説明>
(文9)
【0064】
<載台支持構造の変更例の説明>
上記実施形態では、図2に示されるように、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル21〜24と各ロードセル21〜24の上側受け部材32および下側受け部材33によって載台25を自由振動可能に支持する構造を採用したが、これに限定されるものではなく、図10に示されるような載台支持構造を採用してもよい。
【0065】
<載台支持構造の他の態様例(1)の説明>
図10に示される載台支持構造は、載台25から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように荷台11上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ軸形ロードセル63と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、軸形ロードセル63と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材65とを備えて構成されている。
軸形ロードセル63は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部66を有している。この窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められている。また、下部ピン64も同様に、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部67を有している。この窪み部67に吊り環部材65の下部が掛け止められている。
この載台支持構造においては、軸形ロードセル63の軸線回りの振り子の作用により、載台25の前後方向(軸形ロードセル63の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、軸形ロードセル63の窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められているので、吊り環部材65が軸形ロードセル63の軸線方向に移動した際に、吊り環部材65を窪み部66の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台25の左右方向(軸形ロードセル63の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0066】
<載台支持構造の他の態様例(2)の説明>
また、図10に示される載台支持構造に代えて、図11に示される載台支持構造を採用することもできる。
図11に示される載台支持構造においては、載台25から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように荷台11上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ上部ピン68と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、上部ピン68と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材69とを備えて構成されている。
上部ピン68は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部70を有している。この窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められている。
吊り環部材69の上下方向中央部には、引張形ロードセル71が介設されている。
この載台支持構造においては、上部ピン68の軸線回りの振り子の作用により、載台25の前後方向(上部ピン68の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、上部ピン68の窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められているので、吊り環部材69が上部ピン68の軸線方向に移動した際に、吊り環部材69を窪み部70の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台25の左右方向(上部ピン68の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0067】
<載台支持構造の他の態様例(3)の説明>
また、図10に示される載台支持構造に代えて、図12に示される載台支持構造を採用することもできる。
図12に示される載台支持構造においては、載台25の下面に固定される上側受け部材81と、設置ベース2上に固定される下側受け部材82と、下側受け部材82上に設置されるロードセル83と、ロードセル83と上側受け部材81との間に配設される鋼球84とを備えて構成されている。
上側受け部材81には、鋼球84との間に介在される上側受け座85が形成されている。上側受け座85は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面86を有している。
ロードセル83には、鋼球84との間に介在される下側受け座87が形成されている。下側受け座87は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面88を有している。
凹座面86,88の曲率半径は、鋼球84の球面84aの曲率半径よりも大きく設定されている。
復元力発生機構は、鋼球84の球面84aおよび上側受け座85の凹座面86と、鋼球84の球面84aおよび下側受け座87の凹座面88とにより構成され、載台25の水平方向の変位に対して復元力を発生する。
【0068】
<ダブルコンベックス・ローディング方式以外のロードセルを採用した場合の説明>
図2に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図10に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図13(a)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(23)で表わされる。
【数15】
このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(24)で示されるようになる。
【数16】
このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、軸形ロードセル63は鉛直方向の力を検出するものであるとする。
また、積荷26が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(24)を用いればよい。
【0069】
また、図2に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図11に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図13(b)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(25)で表わされる。
F=Mg・y0/l ・・・(25)
このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(26)で示されるようになる。
k=Mg/l ・・・(26)
このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、引張形ロードセル71は傾斜に応じた引張方向の力を検出するものであるとする。
また、積荷26が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(26)を用いればよい。
ただし、この場合、引張形ロードセル71は鉛直方向の力を検出していないので、式の中のΔWおよびΔW34の値は次式(27)(28)に示されるように補正演算が必要である。
【数17】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の重心位置測定装置は、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができるという特性を有していることから、車両の横転防止に資する有効なデータのリアルタイムな提供の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
11 荷台
20 重心位置測定装置
21 第1ロードセル
22 第2ロードセル
23 第3ロードセル
24 第4ロードセル
25 載台
26 積荷
35 変位センサ
36 加速度センサ
50 水平面的重心位置演算部
51 重心高さ演算部
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の重心位置測定装置として、例えば特許文献1にて開示されているものがある。この特許文献1に係る装置においては、フレーム上の3箇所にそれぞれシリンダを介してロードセルを設置し、各ロードセルを介して測定対象物を載置するための計測台を支持し、シリンダを伸長させることによってロードセルを計測台の下面に押し付け、計測台を水平に維持した状態および傾斜した状態ごとに各ロードセルから得られる荷重データに基づいて、演算制御部が測定対象物の重心を演算するようにされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−85182号公報
【0004】
しかし、トレーラ等の荷台に荷物を載せて走行する車両に関しては、積荷の載せかえ等に伴う重量変化によって重心位置が変化してしまう。このため、重心位置を調べるためには積荷を載せかえるごとに車両を傾斜させて重心位置を測定する必要があるが、積荷を載せかえるたびにそのような重心位置測定動作を実施することは現実的には困難である。
【0005】
また、車両を傾斜させることなく定位置で重心位置を測定することができる装置が本出願人の既出願(特願2009−183443号)によって提案されているが、この装置では停車中に測定を行うために走行中に積荷の状態に変化があった場合の重心位置の変化については測定することができない。しかし、現実には走行中の振動などにより積荷の状態は変化する可能性があり、特に固定方法が不十分であった場合などには重心位置が大きく変化し、車両の運動特性に悪影響を及ぼすこともある。
【0006】
ところで、積荷の状態が変化することで車両を含む全体の重心位置は変化するが、実際には車両単体の重心位置は変化しておらず、車両の運動特性を変化させる主たる要因は積荷にある。したがって、車両が安全に走行するためには積荷の重心位置を常に知る必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述のような事情に鑑みてなされたもので、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができる重心位置測定装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明による重心位置測定装置は、
車両の荷台上の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置であって、
前記荷台の上方に配され、積荷が載置される載台と、
車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、前記載台を水平方向に自由振動可能に支持する複数のロードセルと、
水平方向に自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの荷重信号に基づいて前記載台上における積荷の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算手段と、
前記ロードセルからの荷重信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて前記載台上における積荷の重心高さを演算する重心高さ演算手段と
を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重心位置測定装置においては、車両の荷台の上方に、積荷が載置される載台が配される。この載台は、車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配される複数のロードセルによって自由振動可能に支持されている。
例えば、旋回時、遠心力等の影響によって車両全体に水平方向の力が作用すると、この水平方向の力の一部によって載台が水平方向に変位する。載台は、複数のロードセルによって自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、水平方向に自由振動する。この自由振動状態にある載台の変位および加速度のいずれか一方または両方は振動状態量検出手段によって検出される。
本発明の重心位置測定装置によれば、ロードセルからの荷重信号に基づいて載台上における積荷の水平面的重心位置が水平面的重心位置演算手段によって演算されるとともに、ロードセルからの荷重信号と振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて載台上における積荷の重心高さが重心高さ演算手段によって演算されるので、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態に係る重心位置測定装置が装備されるトレーラ連結車両の平面図(a)および側面図(b)
【図2】載台の支持構造の説明図
【図3】復元力の発生の理論説明図
【図4】重心位置測定装置の制御系の概略システム構成図
【図5】マイクロプロセッサの機能ブロック図
【図6】重心位置の求め方の理論説明図(1)
【図7】重心位置の求め方の理論説明図(2)
【図8】重心位置測定プログラムの処理内容を説明するフローチャート
【図9】重心位置測定動作のタイムチャート
【図10】載台支持構造の他の態様例の説明図(1)で、正面図(a)、(a)のA−A線断面図(b)および(a)のB部拡大図(c)
【図11】載台支持構造の他の態様例の説明図(2)で、正面図(a)、(a)のC−C線断面図(b)および(a)のD部拡大図(c)
【図12】載台支持構造の他の態様例の説明図(3)で、正面図(a)、(a)のE−E線断面図(b)
【図13】図10に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(a)および図11に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルを表わす図(b)
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明による重心位置測定装置の具体的な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係る重心位置測定装置が装備されるトレーラ連結車両の平面図(a)および側面図(b)がそれぞれ示されている。
【0013】
<トレーラ連結車両の説明>
図1(a)(b)に示されるトレーラ連結車両1(以下、単に「車両1」と称する。)は、トラクタ2と、トレーラ3とにより構成されている。
トラクタ2は、3本の車軸4,5,6を有する3軸の牽引車両である。各車軸4,5,6には、それぞれ左右に車輪7,7;8,8;9,9が装着されている。
トレーラ3は、3軸の被牽引車両であり、トラクタ2の後部に重ね合わされる連結部10と、この連結部10から後方に向かって延設される荷台11と、この荷台11に支承される3本の車軸12,13,14と、各車軸12,13,14の左右に装着される車輪15,15;16,16;17,17とを備えて構成されている。
トラクタ2の後部には連結装置としてのカプラ18が装備され、トレーラ3の連結部10にはキングピン19が設けられ、カプラ18にキングピン19が噛み合わされることにより、トラクタ2とトレーラ3とが連結される。カプラ18に対するキングピン19の噛み合わせが解除されることにより、トラクタ2に対しトレーラ3が分離可能な状態となる。
本実施形態の重心位置測定装置20は、トレーラ3の荷台11に搭載されている。
なお、以下の説明において、前後左右方向は車両1の前進方向を基準として定めるものとする。
【0014】
<重心位置測定装置の概略説明>
重心位置測定装置20は、第1ロードセル21、第2ロードセル22、第3ロードセル23および第4ロードセル24と、載台25とを備えている。
ここで、4個のロードセル21,22,23,24は、車両1の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して荷台11の四隅に設置されている。
載台25は、積荷26を載置するのに十分な大きさの四角形の板状部材で構成され、荷台11の上方位置で4個のロードセル21,22,23,24によってその四隅が支持されている。
【0015】
<ロードセルの基本構造の説明>
図2に示されるように、ロードセル21〜24は、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型ロードセルであり、弾性体30と、密封ケーシング31とを備えている。
弾性体30は、例えばアルミニウム合金やステンレス等の金属製で略円柱形状に形成され、その軸線を鉛直方向に向けて起立配置されている。
弾性体30は、軸線方向中央部に形成される起歪部30aと、上端に形成される上側凸面30bと、下端に形成される下側凸面30cとを有している。上側凸面30bおよび下側凸面30cはいずれも、所定の曲率半径Rの部分球面形状に形成されている。
弾性体30は、起歪部30aが密封ケーシング31内に気密に収められ、上端部および下端部がそれぞれ密封ケーシング31から露出させた状態で密封ケーシング31に組み込まれている。
【0016】
<ロードセルの上側受け部材および下側受け部材の説明>
弾性体30の上端部と載台25との間には、上側受け部材32が介在されている。上側受け部材32は、水平座面32aを有し、この水平座面32aを弾性体30の上側凸面30bに接触させた状態で載台25に固定されている。
弾性体30の下端部と荷台11との間には、下側受け部材33が介在されている。下側受け部材33は、水平座面33aを有し、この水平座面33aを弾性体30の下側凸面30cに接触させた状態で荷台11に固定されている。
【0017】
<復元力発生機構の基本構成の説明>
復元力発生機構は、弾性体30の上側凸面30bおよび上側受け部材32の水平座面32aと、弾性体30の下側凸面30cおよび下側受け部材33の水平座面33aとにより構成されている。復元力発生機構は、載台25の水平方向の変位y0に対して復元力Fを発生する。この復元力Fについて、図3を用いて以下に説明する。
【0018】
<復元力の発生の理論説明>
図3には、載台25の水平方向の変位y0に伴ってロードセル21〜24の弾性体30が垂直状態から横方向にy0だけ移動してθだけ傾斜した状態が示されている。図中記号を以下のように定める。
y0:弾性体30の上部の移動量
S:弾性体30の上部と下部の接触点長さ
H:弾性体30の高さ(ロードセル21〜24の高さ)
A:上側凸面30bの曲率半径(=R)
B:下側凸面30cの曲率半径(=R)
N:弾性体30に作用する垂直荷重
θ:弾性体30の傾斜角
【0019】
<復元力の発生の理論説明>
図3において、弾性体30の傾斜角θの値が微小であるならば、次式(1)が成立する。
tanθ≒y0/H ・・・(1)
また、弾性体30の上部と下部の接触点長さSは、次式(2)で表わすことができる。
S≒A・tanθ+(B−H)tanθ
=(A+B−H)・y0/H ・・・(2)
そして、垂直荷重Nと復元力Fとの比Kは、次式(3)で表わすことができる。
K=F/N≒S/H=(A+B−H)・y0/H2 ・・・(3)
上記式(3)より復元力Fは、次式(4)で表わすことができる。
F=N・(A+B−H)・y0/H2 ・・・(4)
【0020】
<載台の自由振動の説明>
例えば、旋回時、遠心力等の影響によって車両1全体に水平方向の力が作用すると、この水平方向の力の一部によって載台25が水平方向に変位する。載台25は、ダブルコンベックス・ローディング方式の複数のロードセル21〜24によって水平方向に自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、載台25には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。こうして、載台25の水平方向の変位に対して復元力Fを作用させることで、載台25を水平方向に自由振動させることができる。
【0021】
<変位センサ、加速度センサの説明>
図1(a)(b)に示されるように、荷台11と載台25との間において、第3ロードセル23と第4ロードセル24との中間位置には、変位センサ35および加速度センサ36がそれぞれ配置されている。
変位センサ35は、自由振動状態にある載台25の水平方向の変位を検出する変位検出手段として機能する。なお、変位センサ35としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば光学式変位センサ、渦電流式変位センサ、差動変圧式変位センサなどが挙げられる。
加速度センサ36は、自由振動状態にある載台25の水平方向の加速度を検出する加速度検出手段として機能する。なお、加速度センサ36としては、種々の方式のものを採用することができ、例えば静電容量形加速度センサや、金属ひずみゲージ式加速度センサ、半導体ひずみゲージ式加速度センサ、圧電式加速度センサなどが挙げられる。
【0022】
<重心位置測定装置の制御系のシステム構成の説明>
図4に示されるように、重心位置測定装置20は、制御装置40と、操作装置41と、表示装置42とを備えている。
【0023】
<制御装置の概略説明>
制御装置40は、主として、増幅器43と、ローパスフィルタ44と、マルチプレクサ45と、A/D変換器46と、I/O回路47と、メモリ48と、マイクロプロセッサ(MPU)49とにより構成されている。
増幅器43は、送り込まれる信号をA/D変換可能な大きさに増幅して送り出す機能を有している。
ローパスフィルタ44は、低域周波数のみを信号として通過させる機能を有している。
マルチプレクサ45は、送り込まれる複数の信号を選択制御信号の指令に基づいて選択的に送り出す機能を有している。
A/D変換器46は、マルチプレクサ45からのアナログ信号をデジタル信号に変換する機能を有している。
I/O回路47は、A/D変換器46と、操作装置41と、表示装置42と、メモリ48と、MPU49との間で各種の信号やデータの受け渡しを行う機能を有している。
メモリ48は、PROMやRAMなどで構成され、所定プログラムや基本データなどを長期的に記憶したり、種々のデータや演算用数値などを一時的に記憶したりする機能を有している。
MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムの指示に従って、必要な信号をI/O回路47を介して受け取り、また必要なデータをメモリ48から受け取り、受け取った信号やデータに基づいて演算を実行する機能を有している。
【0024】
<操作装置の概略説明>
操作装置41は、操作スイッチや数値キーなどを備えてなり、測定開始・終了の指令や零点調整、使用モードの切り換え、数値設定などの種々の動作の際に用いられる。
【0025】
<表示装置の概略説明>
表示装置42は、例えば液晶ディスプレイからなり、測定結果や各種データの入出力画面などが表示される。
【0026】
<重心位置測定装置の制御系システムの処理動作の概略説明>
重心位置測定装置20の制御系システムにおいては、ロードセル21〜24、変位センサ35および加速度センサ36のそれぞれの信号は、増幅器43、ローパスフィルタ44、マルチプレクサ45、A/D変換器46およびI/O回路47を経由してMPU49に送られる。MPU49は、メモリ48に格納されている所定プログラムに従って、I/O回路47からの信号を取り込み、またメモリ48に記憶されている種々のデータを読み込み、これらの信号やデータに基づいて積荷26の水平面的重心座標の演算や重心高さの演算を実行する。そして、その演算結果は表示装置42に表示される。
【0027】
<マイクロプロセッサの機能説明>
MPU49においては、所定プログラムが実行されることにより、図5に示される水平面的重心位置演算部50、重心高さ演算部51および表示信号生成部52のそれぞれの機能が実現される。
【0028】
<重心Gの平面座標(xG,yG)の求め方の理論説明>
次に、図6および図7を用いて、積荷26の水平面的重心座標、すなわち載台25に載せられた積荷26の重心Gを水平面(o−xy平面)に射影したときのその面上における重心Gの座標(xG,yG)の求め方について説明する。
ここで、載台25の幅方向(車両1の幅方向)の中心位置を通り全長方向に延びる幅方向中心線に沿ってx軸を定め、載台25の全長方向(車両1の全長方向)の中心位置を通り幅方向に延びる全長方向中心線に沿ってy軸を定め、x軸とy軸の交点、すなわち載台25の中央に原点oをとり、この原点oを通る鉛直線に沿ってz軸を定めて、直交座標系o−xyzを定める。
なお、理論説明の簡単化のために、載台25は密度が一定の直方体と仮定する。また、ロードセル21〜24のそれぞれの出力は無負荷時において零に調整されているものとする。
【0029】
<記号の定義の説明>
図6および図7中の記号および理論式で用いる記号の意味を下記のとおり定義する。
G:積荷26の重心
G0:載台25の重心
a:ロードセル21(23)とロードセル22(24)との間の距離
b:ロードセル21(22)とロードセル23(24)との間の距離
c:載台25の高さ
H:ロードセル21〜24の高さ(弾性体30の高さ)
Wi:各ロードセル21〜24に作用する静荷重(i=1,2,3,4)
W:積荷26の自重(=W1+W2+W3+W4)
W12:W1+W2
W24:W2+W4
なお、上記記号のうち、a,b,c,H,Rは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0030】
<重心Gの平面座標(xG,yG)の求め方の理論説明>
モーメントのつりあい条件として次式(5),(6)が成り立つ。
W24a−W(a/2+xG)=0 ・・・(5)
W12b−W(b/2+yG)=0 ・・・(6)
上記式(5),(6)より次式(7),(8)が得られる。
xG=a(W24/W−1/2) ・・・(7)
yG=b(W12/W−1/2) ・・・(8)
よって、W24,W12およびWの測定値を上記式(7),(8)に代入して計算することにより、重心Gの平面座標(xG,yG)を求めることができる。
【0031】
<積荷の重心高さhの求め方の理論説明>
次に、積荷26の重心高さhの求め方について、主に図7を用いて以下に説明する。以下の理論説明では、積荷26が載せられた載台25が自由振動状態にあることが前提となる。例えば、旋回時の遠心力等の影響による載台25の水平方向の変位に対して復元力発生機構からの復元力Fを作用させることで、積荷26が載せられた載台25を水平方向(y方向)に自由振動させる。なお、図7では、静止時における積荷26の重心Gのy座標yGをdで表わしている。また、o−yz座標系は空間に固定した座標系とする。
(文1)
【0032】
ここで、以下の説明で用いる新しい記号を定義しておく。
(文2)
【0033】
なお、上記記号のうち、m0,eは既知の値であり、これらの値は予めメモリ48に記憶される。
【0034】
積荷26が剛体であるならば、積荷26の重心Gと載台25の重心G0とのz方向の相対変位は零である。積荷26が非剛体の場合、その相対変位は零ではないが、その量は微小である。よって、その相対変位の量は以下の運動方程式において無視することとする。すなわち、z0(t)=zG(t)とおく。このとき、系の運動方程式は次式(9),(10)で表わされる。
【0035】
(文3)
【0036】
上記式(9),(10)は、積荷26が剛体であるか否かとは関係なく成立する。
また、転倒モーメントのつりあい条件として次式(11)を得る。
【0037】
【数1】
ここに、δは、重心Gの重心G0に対するy方向の相対変位である。δは(b/2−d)に比較して微小であるから以下の式変形においては無視する。
【0038】
(文4)
【0039】
【数2】
上記式(12)より、積荷26の重心高さhを求める次式(13)が得られる。
【0040】
【数3】
【0041】
前述した復元力Fを求める式(4)において、弾性体30に作用する垂直荷重NはMg(g:重力加速度)、弾性体30の上側凸面30bおよび下側凸面30cの曲率半径A,Bはいずれも所定半径Rであるから、ロードセル21〜24によって支持される載台25の復元力Fは、次式(14)で表わすことができる。
【0042】
【数4】
上記式(14)を上記式(13)に代入してhを書き直すと次式(15)となる。
【0043】
【数5】
ただし、kは次式(16)で表わされるものである。
【数6】
【0044】
(文5)
【0045】
(文6)
【0046】
【数7】
【数8】
【0047】
ここで、「剛体」とは、外力による変形が全く生じない「完全剛体」と、外力による変形が若干生じてもその変形による重心高さ測定上の影響が極めて少なくて完全剛体と見なしても何ら支障がない「見なし剛体」とを包含するものである。また、「非剛体」とは、外力による変形が生じてその変形の影響が重心高さ測定上無視できない物体を総称して表現したものである。
【0048】
(文7)
【0049】
<ロードセルで検出される荷重信号の補正の説明>
ところで、載台25の水平方向の自由振動に伴って、ロードセル21〜24は回転振動となる。これにより、ロードセル21〜24の軸方向に作用する荷重は、回転角θの関数となる。今、ロードセル21〜24で検出される荷重Wi´(t)が上記の軸方向荷重であると仮定する。
【0050】
このとき、Wi´(t)は次式(18)で表わすことができる。
【数9】
ただし、Fi(t)およびθはそれぞれ次式(19)および式(20)で表わされる。
【数10】
【数11】
ここに、Fi(t)は、各ロードセル21〜24に生じる復元力Fの符号を逆にしたものである。
上記式(18)により次式(21)が得られる。
【数12】
式(21)によりWi(t)がWi´(t)とy0(t)から求まることがわかる。
なお、傾斜補正の成されたデジタルロードセルを用いる場合は、その出力はWi(t)であるから、上述の補正は不要となる。
【0051】
<重心位置測定装置の計測動作の説明>
以上に述べたように構成される重心位置測定装置20の計測動作について、主に、図5の機能ブロック図、図8のフローチャートおよび図9のタイムチャートを用いて以下に説明する。なお、図8において記号「S」はステップを表わす。
以下の計測動作は、積荷26を載せた車両1の走行時に行われる。
【0052】
<ステップS1〜S3の処理内容の説明>
水平面的重心演算部50は、ロードセル21〜24からの静荷重信号Wi(i=1,2,3,4)を読み込むとともに、読み込んだ静荷重信号Wiから積荷26の質量(重量)を求める(S1)。
また、水平面的重心演算部50は、次式(16)に基づいてkを演算する(S2)とともに、次式(7),(8)に基づいて積荷26の重心Gの平面座標(xG,yG)を算出する(S3)。
【数13】
xG=a(W24/W−1/2) ・・・(7)
yG=b(W12/W−1/2) ・・・(8)
【0053】
例えば、時刻t2から時刻t3の間において、車両1が旋回走行すると、遠心力等の影響によって車両1全体に水平方向の力が作用する。すると、この水平方向の力の一部によって載台25が水平方向に変位する。載台25は、ダブルコンベックス・ローディング方式の複数のロードセル21〜24によって自由振動可能に支持されているので、水平方向の変位が与えられると、載台25には、水平方向の変位に対する復元力発生機構からの復元力Fが作用する。このため、載台25は水平方向(y方向)に自由振動する。
【0054】
<ステップS4,S5の処理内容の説明>
(文8)
【0055】
<ステップS6の処理内容の説明>
載台25が静止した時刻t5以降から時刻t6の間において、重心高さ演算部51は、ステップS1で取得した静荷重信号WiとステップS4,5で収得した動荷重信号Wi(t)とに基づいてΔW(t)およびΔW34(t)をそれぞれ演算する。
【0056】
<ステップS7の処理内容の説明>
時刻t6以降から時刻t7の間において、重心高さ演算部51は、次式(15)に基づいて積荷26の重心Gの重心高さhを演算する。なお、hの測定値は、あらかじめ定めた時間区間内の各サンプリング時刻において式(15)で計算されたhの平均値とする。
【数14】
【0057】
<ステップS8の処理内容の説明>
そして、表示信号生成部52は、ステップS3の演算の結果得られた水平面的重心位置(xG,yG)の値と、ステップS7の演算の結果得られた重心高さh(=zG)の値とを表示させる表示信号を表示装置42に送信する。これにより、ステップS3,7の演算で求められた三次元重心位置の値が表示装置42に表示される。
【0058】
<本実施形態の重心位置測定装置の作用効果の説明>
本実施形態の重心位置測定装置20によれば、ロードセル21〜24からの荷重信号に基づいて載台25上における積荷26の水平面的重心位置(xG,yG)が水平面的重心位置演算部50によって演算されるとともに、ロードセル21〜24からの荷重信号と変位センサ35および加速度センサ36からの検出信号とに基づいて載台25上における積荷26の重心高さh(=zG)が重心高さ演算部51によって演算されるので、リアルタイムに積荷26の三次元重心位置を測定することができる。
【0059】
<本発明との用語の対応説明>
変位センサ35および加速度センサ36を含む構成が本発明の「振動状態量検出手段」に対応する。
水平面的重心座標演算部50が本発明の「水平面的重心位置演算手段」に対応する。
重心高さ演算部51が本発明の「重心高さ演算手段」に対応する。
【0060】
以上、本発明の重心位置測定装置について、一実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に記載した構成に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【0061】
<加速度検出手段の別態様例の説明>
上記実施形態においては、自由振動状態にある載台25の加速度を検出する加速度検出手段として、加速度センサ36を用いる例を説明したが、これに限定されるものではない。例えば、重心高さ演算部51は、変位センサ35の検出信号に基づいて2回微分演算を実行することで、載台25の加速度を求めることができる。この場合、加速度センサ36は不要になる。なお、上記微分演算を重心高さ演算部51に実行させるのではなく、別途に加速度演算部を設け、この加速度演算部に上記微分演算を実行させる態様もあり得る。
【0062】
上記実施形態においては、車両1の鉛直方向の振動が測定結果に影響を及ぼしてしまうが、加速度センサ36として2軸検出可能なものを使用して、水平方向と鉛直方向の加速度を検出することにより、鉛直方向の影響を考慮した積荷26の重心位置の測定が可能になる。
【0063】
<動荷重変動ΔW(t)の測定の別態様例の説明>
(文9)
【0064】
<載台支持構造の変更例の説明>
上記実施形態では、図2に示されるように、ダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル21〜24と各ロードセル21〜24の上側受け部材32および下側受け部材33によって載台25を自由振動可能に支持する構造を採用したが、これに限定されるものではなく、図10に示されるような載台支持構造を採用してもよい。
【0065】
<載台支持構造の他の態様例(1)の説明>
図10に示される載台支持構造は、載台25から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように荷台11上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ軸形ロードセル63と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、軸形ロードセル63と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材65とを備えて構成されている。
軸形ロードセル63は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部66を有している。この窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められている。また、下部ピン64も同様に、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部67を有している。この窪み部67に吊り環部材65の下部が掛け止められている。
この載台支持構造においては、軸形ロードセル63の軸線回りの振り子の作用により、載台25の前後方向(軸形ロードセル63の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、軸形ロードセル63の窪み部66に吊り環部材65の上部が掛け止められているので、吊り環部材65が軸形ロードセル63の軸線方向に移動した際に、吊り環部材65を窪み部66の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台25の左右方向(軸形ロードセル63の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0066】
<載台支持構造の他の態様例(2)の説明>
また、図10に示される載台支持構造に代えて、図11に示される載台支持構造を採用することもできる。
図11に示される載台支持構造においては、載台25から垂設される一対の脚部材61,61と、一対の脚部材61,61の間に位置するように荷台11上に立設される一対の支柱部材62,62と、一対の支柱部材62,62の上端部同士を繋ぐ上部ピン68と、一対の脚部材61,61の下端部同士を繋ぐ下部ピン64と、上部ピン68と下部ピン64とに掛け渡される吊り環部材69とを備えて構成されている。
上部ピン68は、その軸線方向中央部に、全周に亘って所定の曲率半径で窪んだ窪み部70を有している。この窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められている。
吊り環部材69の上下方向中央部には、引張形ロードセル71が介設されている。
この載台支持構造においては、上部ピン68の軸線回りの振り子の作用により、載台25の前後方向(上部ピン68の軸線と直交する水平方向)の変位に対する復元力が作用する。また、上部ピン68の窪み部70に吊り環部材69の上部が掛け止められているので、吊り環部材69が上部ピン68の軸線方向に移動した際に、吊り環部材69を窪み部70の最低部へと戻す揺り戻し力が作用する。この揺り戻し力の作用により、載台25の左右方向(上部ピン68の軸線方向)の変位に対する復元力が作用する。
【0067】
<載台支持構造の他の態様例(3)の説明>
また、図10に示される載台支持構造に代えて、図12に示される載台支持構造を採用することもできる。
図12に示される載台支持構造においては、載台25の下面に固定される上側受け部材81と、設置ベース2上に固定される下側受け部材82と、下側受け部材82上に設置されるロードセル83と、ロードセル83と上側受け部材81との間に配設される鋼球84とを備えて構成されている。
上側受け部材81には、鋼球84との間に介在される上側受け座85が形成されている。上側受け座85は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面86を有している。
ロードセル83には、鋼球84との間に介在される下側受け座87が形成されている。下側受け座87は、鋼球84の球面84aと接触される凹座面88を有している。
凹座面86,88の曲率半径は、鋼球84の球面84aの曲率半径よりも大きく設定されている。
復元力発生機構は、鋼球84の球面84aおよび上側受け座85の凹座面86と、鋼球84の球面84aおよび下側受け座87の凹座面88とにより構成され、載台25の水平方向の変位に対して復元力を発生する。
【0068】
<ダブルコンベックス・ローディング方式以外のロードセルを採用した場合の説明>
図2に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図10に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図13(a)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(23)で表わされる。
【数15】
このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(24)で示されるようになる。
【数16】
このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、軸形ロードセル63は鉛直方向の力を検出するものであるとする。
また、積荷26が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(24)を用いればよい。
【0069】
また、図2に示されるダブルコンベックス・ローディング方式のコラム型のロードセル11〜14に代えて、図11に示される載台支持構造を採用した場合の荷重検出に関わる力学モデルは図13(b)に示されるようになる。
この場合の復元力Fは、次式(25)で表わされる。
F=Mg・y0/l ・・・(25)
このFを式(13)に代入するにあたり、式(16)と同じようにkとして表わすと、次式(26)で示されるようになる。
k=Mg/l ・・・(26)
このkを式(16)に代えて式(15)に用いればよい。なお、引張形ロードセル71は傾斜に応じた引張方向の力を検出するものであるとする。
また、積荷26が剛体の場合は、式(17)´のkを式(16)に代えて式(26)を用いればよい。
ただし、この場合、引張形ロードセル71は鉛直方向の力を検出していないので、式の中のΔWおよびΔW34の値は次式(27)(28)に示されるように補正演算が必要である。
【数17】
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明の重心位置測定装置は、リアルタイムに積荷の三次元重心位置を測定することができるという特性を有していることから、車両の横転防止に資する有効なデータのリアルタイムな提供の用途に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0071】
1 車両
11 荷台
20 重心位置測定装置
21 第1ロードセル
22 第2ロードセル
23 第3ロードセル
24 第4ロードセル
25 載台
26 積荷
35 変位センサ
36 加速度センサ
50 水平面的重心位置演算部
51 重心高さ演算部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷台上の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置であって、
前記荷台の上方に配され、積荷が載置される載台と、
車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、前記載台を水平方向に自由振動可能に支持する複数のロードセルと、
水平方向に自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの荷重信号に基づいて前記載台上における積荷の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算手段と、
前記ロードセルからの荷重信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて前記載台上における積荷の重心高さを演算する重心高さ演算手段と
を備えることを特徴とする重心位置測定装置。
【請求項1】
車両の荷台上の積荷の三次元重心位置を測定する重心位置測定装置であって、
前記荷台の上方に配され、積荷が載置される載台と、
車両の幅方向および全長方向にそれぞれ所定の間隔を存して配され、前記載台を水平方向に自由振動可能に支持する複数のロードセルと、
水平方向に自由振動状態にある前記載台の変位および加速度のいずれか一方または両方を検出する振動状態量検出手段と、
前記ロードセルからの荷重信号に基づいて前記載台上における積荷の水平面的重心位置を演算する水平面的重心位置演算手段と、
前記ロードセルからの荷重信号と前記振動状態量検出手段からの検出信号とに基づいて前記載台上における積荷の重心高さを演算する重心高さ演算手段と
を備えることを特徴とする重心位置測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−58149(P2012−58149A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−203421(P2010−203421)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000208444)大和製衡株式会社 (535)
【Fターム(参考)】
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