説明

重荷重用タイヤ

【課題】ショルダー主溝のタイヤ半径方向内側付近でのベルトプライのセパレーションの発生を防止した重荷重用タイヤを提供する。
【解決手段】 カーカス6と、ベルト層7と、ショルダー主溝9と、ベルトクッションゴム10とを有する重荷重用タイヤである。ベルト層7は、第1乃至第4のベルトプライ7A乃至7Dを含む。第1乃至第3のベルトプライ7A乃至7Cの外端7Ae乃至7Ceはショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向外側である。第4のベルトプライ7Dの外端7Deはショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向内側である。ベルトクッションゴム10の内端10eは、ショルダー主溝内縁線L3よりもタイヤ軸方向内側に配される。ベルトクッションゴム10の内側領域10Aの断面積Sは、2.5mm以上かつ20mm以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トレッド部の耐久性を向上した重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
図4には従来の重荷重用タイヤのトレッド部の拡大断面図が示される。
該重荷重用タイヤは、トレッド部fに配されるベルト層bが、カーカスa側から半径方向外側に向かって順次重なる第1、第2、第3及び第4のベルトプライb1乃至b4で構成される。タイヤ半径方向の最も外側のベルトプライb4のタイヤ軸方向長さは、通常、他の3枚のベルトプライb1、b2、及びb3よりも小さく形成されている。また、従来の重荷重用タイヤは、前記ベルト層bのタイヤ軸方向の外端部と前記カーカスとの間の隔たりを埋める断面略三角形状のベルトクッションゴムcが配されている。このベルトクッションゴムcは、ベルト層bの端部の応力を緩和している。
【0003】
下記特許文献1には、第2、第3のベルトプライb2、b3間の距離d2を、第1のベルトプライb1とカーカスプライaとの間の距離d1よりも大きくし、かつベルトクッションゴムcのタイヤ軸方向の内端c1から第1のベルトプライb1のタイヤ軸方向の外端までの距離を規定することが記載されている。これらの構成により、特許文献1記載の重荷重用タイヤは、より効果的にベルト層bの端部からの損傷を防止することができる。
【0004】
【特許文献1】特開平11−222008号公報
【0005】
しかしながら、このような重荷重用タイヤは、前記内端c1とベルト層bの端部との位置関係については規定されているものの、前記内端c1とショルダー主溝eとの位置関係は何ら考慮されていない。
【0006】
前記クッションゴムcの内端c1は、通常、ショルダー主溝eよりもタイヤ軸方向外側に配されることが多いため、トレッドゴムの厚さが小さいショルダー主溝e付近に応力が集中しやすい。従って、ショルダー主溝eの内方に位置するベルトプライb1乃至b3にせん断歪みが発生し、とりわけベルトプライb2とb3との間でセパレーションが発生し易いという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、ベルトクッションゴムのタイヤ軸方向の内端が、ショルダー主溝の溝底面のタイヤ軸方向の内縁を通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線よりも、タイヤ軸方向内側に配し、かつ前記ショルダー主溝内縁線よりもタイヤ軸方向内側のベルトクッションゴムの断面積を規定することを基本として、ショルダー主溝のタイヤ半径方向内方でのベルトプライのセパレーションの発生を防止した重荷重用タイヤを提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端部と前記カーカスとの間の隔たりを埋める断面略三角形状のベルトクッションゴムと、前記トレッド部のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝とを有する重荷重用タイヤであって、前記ベルト層は、カーカス側から半径方向外側に向かって順次重なりかつベルトコードをタイヤ赤道に対して傾斜配列させた第1、第2、第3及び第4のベルトプライを含み、前記第1乃至第3のベルトプライは、タイヤ軸方向の外端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向外側に配され、前記第4のベルトプライは、タイヤ軸方向の外端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側に配され、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、前記ベルトクッションゴムは、そのタイヤ軸方向の内端が、前記ショルダー主溝の溝底面のタイヤ軸方向の内縁を通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線よりも、タイヤ軸方向内側に配され、かつ前記ベルトクッションゴムは、前記ショルダー主溝内縁線よりもタイヤ軸方向内側の領域である内側領域の断面積が、2.5mm以上かつ20mm以下であることを特徴とする。
【0009】
また請求項2の発明は、前記ベルトクッションゴムは、前記ショルダー溝内縁線上での厚さが、2.0mm以上かつ5.0mm以下である請求項1に記載の重荷重用タイヤである。
【0010】
また請求項3の発明は、前記ベルトクッションゴムは、そのタイヤ軸方向の内端と、前記ショルダー主溝内縁線とのタイヤ軸方向距離が、7.5mm以上かつ12.5mm以下である請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤである。
【0011】
また請求項4の発明は、前記ベルトクッションゴムは、正接損失tanδ1の値が、0.06より小さい請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の重荷重用タイヤは、カーカスと、該カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されるベルト層と、前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端部と前記カーカスとの間の隔たりを埋める断面略三角形状のベルトクッションゴムと、前記トレッド部のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝とを有する。
【0013】
また、本発明の重荷重用タイヤは、前記ベルトクッションゴムのタイヤ軸方向の内端が、ショルダー主溝の溝底面のタイヤ軸方向の内縁を通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線よりも、タイヤ軸方向内側に配され、かつ前記ベルトクッションゴムは、前記ショルダー主溝内縁線よりもタイヤ軸方向内側の領域である内側領域の断面積が、2.5mm以上かつ20mm以下であることを特徴としている。
【0014】
このような本発明の重荷重用タイヤは、前記ベルトクッションゴムのタイヤ軸方向の内端が、ショルダー主溝の溝底面のタイヤ軸方向の内縁を通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線よりも、タイヤ軸方向内側に配されるため、ショルダー主溝の内方に作用する応力を緩和し、ベルトプライのせん断歪みを抑制して、ショルダー主溝のタイヤ半径方向内方付近での第2のベルトプライと第3のベルトプライとのセパレーションの発生を防止する。
【0015】
また、本発明の重荷重用タイヤは、前記内側領域の断面積が、2.5mm以上かつ20mm以下に設定されているため、前記セパレーションの発生を防止しつつ、ベルトクッションゴムのゴムボリュームが過大となることを抑制し、ベルトクッションゴムの発熱による損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の重荷重用タイヤの一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1のトレッド部の拡大断面図である。
【図3】図1のショルダー主溝の拡大断面図である。
【図4】従来の重荷重用タイヤのトレッド部の拡大断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の一形態が図面に基づき説明される。
図1は、本実施形態の重荷重用タイヤ1の正規状態におけるタイヤ軸を含むタイヤ子午線断面図である。図2は、図1のトレッド部2の拡大断面図であり、図3は、図1のショルダー主溝9の拡大断面図である。
【0018】
ここで、正規状態とは、タイヤを正規リム(図示省略)にリム組みし、かつ、正規内圧を充填した無負荷の状態とする。以下、特に言及しない場合、タイヤの各部の寸法等はこの正規状態で測定された値とする。
【0019】
また前記「正規リム」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、当該規格がタイヤ毎に定めるリムであり、例えばJATMAであれば標準リム、TRAであれば "Design Rim" 、ETRTOであれば "Measuring Rim" とする。さらに「正規内圧」とは、タイヤが基づいている規格を含む規格体系において、各規格がタイヤ毎に定めている空気圧であり、JATMAであれば最高空気圧、TRAであれば表 "TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES" に記載の最大値、ETRTOであれば "INFLATION PRESSURE" とする。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態の重荷重用タイヤ1は、トレッド部2からサイドウォール部3を経てビード部4のビードコア5に至るカーカス6と、このカーカス6のタイヤ半径方向外側かつトレッド部2の内部に配されたベルト層7と、トレッド部2のタイヤ軸方向の最も外側に配されたショルダー主溝9と、該ショルダー主溝9のタイヤ軸方向内側に配されたクラウン主溝11と、前記ベルト層7のタイヤ軸方向の外端部と前記カーカス6との間の隔たりを埋める断面略三角形状のベルトクッションゴム10と、前記ビードコア5からタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびるビードエーペックスゴム8とが設けられている。
【0021】
本実施形態では、前記カーカス6は、1枚のカーカスプライ6Aからなり、トレッド部2からサイドウォール部3をへてビード部4のビードコア5に至るトロイド状の本体部6aと、ビードコア5の周りでタイヤ軸方向内側から外側に折り返された折返し部6bとを含む。また、前記カーカスプライ6Aは、カーカスコードをトッピングゴムで被覆したコードプライであって、本実施形態ではスチールコードからなる前記カーカスコードがタイヤ赤道Cに対して例えば75〜90゜の角度で傾けて配されている。
【0022】
前記ビードエーペックスゴム8は、硬質ゴムからなり、カーカスプライ6Aの本体部6aと折返し部6bとの間に配され、かつビードコア5からタイヤ半径方向外方に向かって先細状にのびる。これにより、サイドウォール部3及びビード部4の曲げ剛性を補強している。
【0023】
前記ショルダー主溝9は、トレッド部2のタイヤ軸方向の外側に、例えばタイヤ赤道Cに関して左右対称に配される。これにより、ウェット路面走行時、トレッド部2と路面との間の水が排出され、ウェット性能が発揮される。
【0024】
また、前記クラウン主溝11は、ショルダー主溝9のタイヤ軸方向内側に配され、本実施形態では例えばタイヤ赤道C上に配される。これにより、ショルダー主溝9と協働して、ウェット路面走行時、トレッド2と路面との間の水が排出され、ウェット性能が発揮される。他の実施形態として、前記クラウン主溝11は、複数本配されても構わない。
【0025】
前記ベルト層7は、カーカス6側から半径方向外側に向かって順次重なりかつベルトコードをタイヤ赤道Cに対して傾斜配列させた第1、第2、第3及び第4のベルトプライ7A、7B、7C及び7Dを含む。第1のベルトプライ7Aは、ベルトコードが例えばタイヤ赤道Cに対して45〜70°程度の角度で配列されるとともに、第2〜第4のベルトプライ7B〜7Dは、ベルトコードが例えばタイヤ赤道Cに対して10〜35°程度の角度で配列される。
【0026】
また、第1乃至第4のベルトプライ7A乃至7Dの間では、タイヤ赤道Cに対するコードの傾斜方向が相違する。これにより、各ベルトプライ7A乃至7Dのベルトコードが互いに交差するため、タイヤ周方向への拘束力が高まり、タガ効果を発揮してトレッド部2が強固に補強される。
【0027】
前記第1乃至第3のベルトプライ7A乃至7Cは、タイヤ軸方向の外端7Ae乃至7Ceが、前記ショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向外側に配される。これにより、ショルダー主溝9のタイヤ軸方向外側のトレッドショルダー部2sの剛性が高まる。
【0028】
また、前記第4のベルトプライ7Dは、タイヤ軸方向の外端7Deが、前記ショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向内側に配される。これにより、走行時に荷重が最も作用するトレッド中央部2cの剛性を効果的に高める他、第1乃至3のベルトプライ7A乃至7Cや、カーカス6等を外傷から保護するのに役立つ。
【0029】
ここで、ベルトプライ7A乃至7Cの前記外端7Ae乃至7Ceが、ショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向外側に配されるとは、図3に示されるように、トレッド部外面2oを仮想延長した延長線と、ショルダー主溝9のタイヤ軸方向外側の側壁面9soを仮想延長した延長線との交点P1を通るタイヤ半径方向線L1よりも、前記外端7Ae乃至7Ceがタイヤ軸方向外側に配されることを意味する。
【0030】
同様に、前記第4のベルトプライ7Dの前記7Deが、ショルダー主溝9よりもタイヤ軸方向内側に配されるとは、トレッド部外面2oを仮想延長した延長線と、ショルダー主溝のタイヤ軸方向外側の側壁面9siを仮想延長した延長線との交点P2を通るタイヤ半径方向線L2よりも、前記外端7Deがタイヤ軸方向内側に配されることを意味する。
【0031】
前記ベルトクッションゴム10は、前記ベルト層7のタイヤ軸方向の外端部7eと前記カーカス6との間の隔たりを埋める断面略三角形状をなす。このようなベルトクッションゴム10は、第1及び第3のベルトプライ7A乃至7Cの外端部での応力集中を緩和吸収し、ベルトプライ7A乃至7Cの外端7Ae乃至7Ceを起点としたセパレーションを防止するのに役立つ。
【0032】
また、前記ベルトクッションゴム10の複素弾性率E*は、大きすぎると、前記ベルトプライ7A乃至7Cの外端部への応力集中を十分に緩和吸収できなくなるため、好ましくは、6MPa以下、より好ましくは4.5MPa以下が望ましい。他方、ベルトクッションゴム10の複素弾性率E*が小さくなると、ベルト層7の外端部の剛性が低下し、操縦安定性が悪化するおそれがあるため、好ましくは、2MPa以上、より好ましくは3.5MPa以上が望ましい
【0033】
なお、本明細書において前記複素弾性率は、JIS−K6394の規定に準じ、下記の条件で(株)岩本製作所製の粘弾性スペクトロメータを用いて測定された値である。
初期歪:10%
振幅:±2%
周波数:10Hz
変形モード:引張
測定温度:70°C
【0034】
また、前記ベルトクッションゴム10の正接損失tanδは、大きすぎると、走行時にベルトクッションゴム10の発熱量が大きくなり、第1乃至第3の7A乃至7C間のゴムが熱劣化して、セパレーションが発生しやすくなる。このような観点から、ベルトクッションゴム10の正接損失tanδは、0.06より小さいことが望ましい。なお、本明細書において前記損失正接tanδは、前記複素弾性率E*と同じ条件にて測定される。
【0035】
前記ベルトクッションゴム10のタイヤ軸方向の内端10eは、タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面図において、ショルダー主溝9の溝底面9bのタイヤ軸方向の内縁9biを通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線L3よりも、タイヤ軸方向内側に配される。なお、ショルダー主溝9の溝底面9bのタイヤ軸方向の内縁9biとは、図3に示されるように、ショルダー主溝9の溝底面9bを仮想延長した延長線と、ショルダー主溝9のタイヤ軸方向外側の側壁面9siを仮想延長した延長線との交点P3を指す。
【0036】
従来の重荷重用タイヤでは、ベルトクッションゴム10の内端10eが、前記ショルダー主溝内縁線L3よりもタイヤ軸方向外側に配されており、ショルダー主溝9の内方に作用する応力を十分かつ効果的に緩和することができず、特にトレッド部2の摩耗中期において、第2及び第3のベルトプライ7B及び7Cのセパレーションが頻発していた。
【0037】
本発明では、前記ベルトクッションゴム10の内端10eが前記ショルダー主溝内縁線L3よりもタイヤ半径方向内側に配される。これにより、ショルダー主溝9の内方付近に作用する応力を緩和し、ベルト層7に作用するタイヤ半径方向のせん断歪みを緩和して、ショルダー主溝9のタイヤ半径方向内方での、第2のベルトプライ7Bと第3のベルトプライ7Cとのセパレーションの発生を防止する。また、これらの効果は、トレッドショルダー部2sの磨耗が進み、前記ベルトプライ7A乃至7Cの外端部への負荷が増加した状況で、顕著に発揮される。
【0038】
前記ベルトクッションゴム10は、図2に示されるように、前記ショルダー主溝内縁線L3よりもタイヤ軸方向内側の領域である内側領域10Aの断面積Sが、2.5mm以上かつ20mm以下に設定される必要がある。前記内側領域10Aの断面積Sが小さすぎると、十分にショルダー主溝9の内方付近に作用する応力を緩和することができず、セパレーションが発生しやすくなるため、望ましくは、9.0mm以上、より好ましくは14.0mm以上が望ましい。
【0039】
前記内側領域10Aの断面積Sは、大きすぎると、走行時にベルトクッションゴム10の発熱量が大きくなり、第1乃至第3のベルトプライ7A乃至7C間のゴムが熱劣化して、損傷しやすくなる。このような観点から、前記内側領域10Aの断面積Sは、望ましくは18mm以下、より好ましくは16.0mm以下が望ましい。
【0040】
前記ベルトクッションゴム10の前記ショルダー主溝内縁線L3上での厚さtは、小さすぎると、十分にショルダー主溝9付近に作用する応力を緩和することができず、セパレーションが発生しやすくなるため、望ましくは1.0mm以上、より好ましくは2.0mm以上が望ましい。また、前記厚さtは、大きすぎると、ベルトクッションゴム10の発熱量が大きくなり、第1乃至第3のベルトプライ7A乃至7C間のゴムが熱劣化して、損傷しやすくなる他、滑らかな円弧状であるカーカス6の断面形状を変形させるおそれがある。このため、前記厚さtは、望ましくは8.0mm以下、より望ましくは5.0mm以下が望ましい。
【0041】
前記ベルトクッションゴム10のタイヤ軸方向の内端10eと、前記ショルダー主溝内縁線L3とのタイヤ軸方向距離wは、小さすぎると十分にショルダー主溝9付近に作用する応力を緩和することができず、セパレーションが発生しやすくなるため、望ましくは5mm以上、より好ましくは7.5mm以上が望ましい。また、前記タイヤ軸方向距離wが大きすぎると、トレッド中央部2cに向けてベルトクッションゴム10の前記内端10eがのびることになり、トレッド中央部2cの剛性が低下するおそれがある。このような観点から、前記タイヤ軸方向距離wは、12.5mm以下が望ましい。
【0042】
なお、本明細書では、前記内側領域10Aの断面形状は三角形であるとみなし、該断面積Sは、前記厚さt及び前記タイヤ軸方向距離wから、下記の式(1)で求められる。
S=t×w×1/2−−−−−−(1)
【0043】
以上、本発明の重荷重用タイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記の具体的な実施形態に限定されることなく種々の態様に変更して実施しうるのはいうまでもない。
【実施例】
【0044】
図1の基本構造をなすサイズ11.00R20の重荷重用タイヤが表1の仕様に基づき試作されるとともに、各試供タイヤの対衝撃性、発熱性、走行後複素弾性率E*がテストされた。テスト方法は以下の通りである。
【0045】
<耐衝撃性>
各試供タイヤを20×8.00のリムに装着し、内圧1000kPaの状態で、外周面に衝撃用のスラットを突出させたドラム上で、速度40km/hにて走行させ、タイヤのトレッド部に損傷が発生するまでの走行距離が測定された。前記スラットは、タイヤ軸方向断面が高さ25.4mm、上辺30mm、底辺70mmの台形形状であり、かつ周方向長さが65mmの突起であり、該スラットの中心がショルダー主溝に位置するように取り付けられた。結果は、実施例1を100とした指数であり、数値が大きいほどトレッド部の耐久性が高いことを示す。
【0046】
<発熱性>
各試供タイヤを前記リムに装着し、内圧725kPa、荷重23.68kN、気温35℃の条件で、外周面が平滑なドラム上で、速度80km/hにて2時間走行させたときのトレッド部の温度が測定された。前記温度は、ショルダー主溝のタイヤ半径方向内方かつ第3のベルトプライの外表面からタイヤ半径方向外側に2mm隔てた位置にて測定した。結果は、実施例1の逆数を100とした指数であり、数値が大きいほど走行時の発熱量が小さいことを示す。
【0047】
<走行後複素弾性率E*>
各試供タイヤを、前記発熱性試験と同条件で走行させた後、タイヤを解体し、ショルダー主溝のタイヤ半径方向内方かつ第2及び第3のベルトプライの間のゴムの複素弾性率E*が測定された。結果は、実施例1を100とする指数であり、数値が大きいほど走行後の複素弾性率E*の低下が少ないことを示す。複素弾性率E*の低下が少ないということは、第2及び第3のベルトプライ間のせん断歪みが小さく、ゴムの劣化が少ないことを表している。
【0048】
【表1】


【0049】
表1から明らかなように、実施例1は、比較例1及び2と比べ、走行後複素弾性率E*、発熱性、耐衝撃性がバランス良く向上していることが確認できる。
【符号の説明】
【0050】
2 トレッド部
3 サイドウォール部
4 ビード部
5 ビードコア
6 カーカス
7 ベルト層
8 ビードエーペックスゴム
9 ショルダー主溝
10 ベルトクッションゴム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッド部からサイドウォール部を経てビード部のビードコアに至るカーカスと、
前記カーカスのタイヤ半径方向外側かつトレッド部の内部に配されるベルト層と、
前記ベルト層のタイヤ軸方向の外端部と前記カーカスとの間の隔たりを埋める断面略三角形状のベルトクッションゴムと、
前記トレッド部のタイヤ軸方向外側に配されたショルダー主溝とを有する重荷重用タイヤであって、
前記ベルト層は、カーカス側から半径方向外側に向かって順次重なりかつベルトコードをタイヤ赤道に対して傾斜配列させた第1、第2、第3及び第4のベルトプライを含み、
前記第1乃至第3のベルトプライは、タイヤ軸方向の外端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向外側に配され、
前記第4のベルトプライは、タイヤ軸方向の外端が、前記ショルダー主溝よりもタイヤ軸方向内側に配され、
タイヤ回転軸を含むタイヤ子午線断面において、
前記ベルトクッションゴムは、そのタイヤ軸方向の内端が、前記ショルダー主溝の溝底面のタイヤ軸方向の内縁を通るタイヤ半径方向線であるショルダー主溝内縁線よりも、タイヤ軸方向内側に配され、
かつ前記ベルトクッションゴムは、前記ショルダー主溝内縁線よりもタイヤ軸方向内側の領域である内側領域の断面積が、2.5mm以上かつ20mm以下であることを特徴とする重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記ベルトクッションゴムは、前記ショルダー溝内縁線上での厚さが、2.0mm以上かつ5.0mm以下である請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記ベルトクッションゴムは、そのタイヤ軸方向の内端と、前記ショルダー主溝内縁線とのタイヤ軸方向距離が、7.5mm以上かつ12.5mm以下である請求項1又は2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記ベルトクッションゴムは、正接損失tanδ1の値が、0.06より小さい請求項1乃至3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−112060(P2013−112060A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258004(P2011−258004)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)