説明

重荷重用空気入りタイヤ

【課題】耐クリープ性が向上し、低発熱性に優れたゴム組成物をゴムチェーファーに適用することによって、ビード部耐久性を向上させ、転がり抵抗を低減させた重荷重用空気入りタイヤを提供することにある。
【解決手段】天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなる変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムよりなるゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の充填剤を配合してなり、25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)が0.002以下であり、25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’が2.5MPa以下であるゴム組成物をゴムチェーファーに適用したことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用空気入りタイヤに関し、特に耐クリープ性およびビード部耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減させた重荷重用空気入りラジアルタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境問題への関心の高まりに伴う世界的な二酸化炭素排出規制の動きに関連して、自動車の低燃費化に対する要求が強まりつつある。このような要求に対応するため、タイヤ性能についても転がり抵抗の低減が求められている。また、トラックやバス、産業車輌、建設車輌、航空機等に装着される重荷重用空気入りタイヤにおいては、タイヤの更生が行われていることから、タイヤの骨格部材の低燃費化がさらに重要となる。従来、タイヤの骨格部材の低燃費化を実現する手法としては、タイヤの骨格部材により損失正接(tanδ)が低い低発熱性のゴム組成物を用いることが有効である。
【0003】
重荷重用空気入りタイヤを構成する骨格部材のうち、ゴムチェーファーは、ビード部のへたり(クリープ)を防止し、タイヤとリムとを固定させる重要な部材であり、リムとの摩擦抵抗に耐え、なおかつ低発熱、高耐破壊性であることが必要とされる。上記のようなタイヤの骨格部材の更なる低燃費化の要求に応えるべく、ゴムチェーファーに適用するゴム組成物をさらに低発熱のものとすることが求められている。
【0004】
従来、ゴム組成物の低発熱化の手段として、カーボンブラックなどの充填剤を減量させたり、カーボンブラックのグレードを下げる手法がある。また、ゴム成分のうち天然ゴムを変性することによりゴム成分へのカーボンブラックの分散性を向上させ、低発熱化させることが提案されている(例えば特許文献1)。
【0005】
【特許文献1】特開2006−151261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、充填剤を減量させたり、カーボンブラックのグレードを下げる手法によりゴムチェーファーを低発熱化させた場合、ゴムチェーファーの耐クリープ(へたり)性を悪化させたり、破壊特性の低下を招き、タイヤのビード部耐久性を悪化させる恐れがあった。また、ゴム成分のうち天然ゴムを変性する方法においては、一定の効果があるが、ゴムチェーファーに対する低発熱性及び高耐破壊性の要求と近年の更なる低燃費化の要求に応えるためには、破壊特性を向上させつつさらに転がり抵抗を低減させたタイヤを開発する必要がある。
【0007】
そこで、本発明は、耐クリープ性が向上し、低発熱性に優れたゴム組成物をゴムチェーファーに適用することによって、ビード部耐久性を向上させ、転がり抵抗を低減させた重荷重用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記問題点を解決すべく鋭意検討した結果、ゴム組成物において、ゴム成分として変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムを用い、25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)と、25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’を特定の範囲に規定することによって、耐クリープ性を向上させつつ低発熱化したゴム組成物が得られ、当該ゴム組成物をゴムチェーファーに適用したタイヤにおいて、ビード部耐久性を向上させ、転がり抵抗を低減させることが可能となることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明の重荷重用空気入りタイヤは、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなる変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムよりなるゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の充填剤を配合してなり、25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)が0.002以下であり、25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’が2.5MPa以下であるゴム組成物をゴムチェーファーに適用したことを特徴とする。
【0010】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの好適例においては、前記変性天然ゴムと変性ジエン系合成ゴムとの質量比(変性天然ゴム/変性ジエン系合成ゴム)が、80/20〜20/80の範囲内である。
【0011】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基から選ばれる1種又は2種以上である。
【0012】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記極性基含有単量体のグラフト量が天然ゴムラテックスのゴム分に対し0.01〜5.0質量%である。
【0013】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記変性ジエン系合成ゴムが変性ブタジエン系ゴムである。なお、前記変性ブタジエン系合成ゴムが、1,3−ブタジエンの単独重合体、又は1,3−ブタジエンとアニオン重合可能なコモノマーとの共重合体であって、該(共)重合体中のコモノマーの結合量が10質量%以下で、且つ下記式(I)で表されるアミノ基、及び下記式(II)で表される環状アミノ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有する変性ブタジエン系ゴムであることが好ましい。
【化1】


(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数12以下の、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である。)
【化2】


(式中、Rは、3〜16のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基、又はN−アルキルアミノアルキレン基を示す。)
【0014】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記変性ジエン系合成ゴムが、Snを有すると共にスチレン成分を20〜45質量%の範囲で含み且つビニル量が30質量%以下であるスズ変性スチレン−ブタジエンゴムである。
【0015】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記変性ジエン系合成ゴムが、一端にアミノ基を有し、他端にアルコキシシランを有する変性ジエン系合成ゴムである。
【0016】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記充填剤の配合量がゴム成分100質量部に対して55〜85質量部である。
【0017】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記充填剤がカーボンブラック及びシリカであり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラック及びシリカの合計の配合量のうち、シリカの配合量が0〜30質量部である。
【0018】
本発明の重荷重用空気入りタイヤの他の好適例においては、前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が50〜80m/gであり、ブチルテレフタレート吸油量が110ml/100g以上である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、耐クリープ性を向上させつつ、低発熱化したゴム組成物をゴムチェーファーに適用することによって、ビード部耐久性が向上し、転がり抵抗が低減した重荷重用空気入りタイヤを提供することができるという有利な効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下に、本発明を詳細に説明する。本発明の重荷重用空気入りタイヤは、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなる変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムよりなるゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の充填剤を配合してなり、25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)が0.002以下であり、25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’が2.5MPa以下であるゴム組成物をゴムチェーファーに適用することを特徴とする。
【0021】
上記ゴムチェーファーを構成するゴム組成物において、ゴム成分として変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムを組み合わせて配合することによって、ゴム組成物の損失正接tanδを変性天然ゴム又は変性ジエン系合成ゴムを単独で用いた場合よりも低下させることが可能であり、低発熱性及び耐クリープ性を改良することができる。
【0022】
また、上記ゴム組成物の25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)が0.002以下であることによって、耐クリープ性を向上させることができる。
【0023】
また、上記ゴム組成物の25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’が2.5MPa以下であることによって、ゴム組成物に配合する充填剤のゴム成分中への分散が改良され、低発熱性と耐クリープ性を向上させることができる。なお、低発熱性と耐クリープ性を更に向上させるという観点から、ΔE’は2.2MPa以下が好ましく、2.0MPa以下がより好ましい。
【0024】
次に、本発明の重荷重用空気入りタイヤのゴムチェーファーを構成するゴム組成物に含まれる変性天然ゴムについて説明する。
【0025】
本発明に係る変性天然ゴムは、天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなるものである。
【0026】
本発明に用いる天然ゴムラテックスは通常のものであって、フィールドラテックス、アンモニア処理ラテックス、遠心分離濃縮ラテックス、界面活性剤や酵素で処理した脱蛋白ラテックス及びこれらを組合せたもの等を挙げることができる。
【0027】
本発明に用いる極性基含有単量体としては、分子内に少なくとも一つの極性基を有する単量体であれば特に制限されない。この極性基含有単量体が有する極性基の具体例としては、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基及び含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基等を挙げることができる。これらの極性基を含有する単量体は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。極性基含有単量体は、これらの極性基の1種のみを含有していても良く、2種以上を含有していても良い。
【0028】
以下に、極性基含有単量体の具体例を挙げる。
【0029】
アミノ基含有単量体としては、1分子中に第1級、第2級及び第3級アミノ基から選ばれる少なくとも1つのアミノ基を有する重合性単量体がある。その中でも、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート等のような第3級アミノ基含有単量体が特に好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は「アクリル又はメタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
【0030】
第1級アミノ基含有単量体としては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、4−ビニルアニリン、アミノメチル(メタ)アクリレート、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、アミノブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0031】
第2級アミノ基含有単量体としては、例えば、
(1)アニリノスチレン、β−フェニル−p−アニリノスチレン、β−シアノ−p−アニリノスチレン、β−シアノ−β−メチル−p−アニリノスチレン、β−クロロ−p−アニリノスチレン、β−カルボキシ−p−アニリノスチレン、β−メトキシカルボニル−p−アニリノスチレン、β−(2−ヒドロキシエトキシ)カルボニル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−p−アニリノスチレン、β−ホルミル−β−メチル−p−アニリノスチレン、α−カルボキシ−β−カルボキシ−β−フェニル−p−アニリノスチレン等のようなアニリノスチレン類
(2)アニリノフェニルブタジエン、1−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン、3−アニリノフェニル−2−メチル−1,3−ブタジエン、1−アニリノフェニル−2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−メチル−1,3−ブタジエン、2−アニリノフェニル−3−クロロ−1,3−ブタジエン等のアニリノフェニルブタジエン類
(3)N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−(4−アニリノフェニル)メタクリルアミド等のN−モノ置換(メタ)アクリルアミド類
等が挙げられる。
【0032】
第3級アミノ基含有単量体としては、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリレート、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミド、ピリジル基を有するビニル化合物等が挙げられる。
【0033】
上記のN,N−ジ置換アミノアルキルアクリレートとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクチルアミノエチル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン等のアクリル酸又はメタクリル酸のエステル等が挙げられる。特に、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジオクルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート等が好ましい。
【0034】
また、N,N−ジ置換アミノアルキルアクリルアミドとしては、例えばN,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−エチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチルアミノブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジヘキシルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアクリルアミド化合物又はメタクリルアミド化合物等が挙げられる。これらのうち、特に、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジオクチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が好ましい。
【0035】
また、アミノ基の代わりに含窒素複素環基を有するものであっても良く、含窒素複素環としては、例えばピロール、ヒスチジン、イミダゾール、トリアゾリジン、トリアゾール、トリアジン、ピリジン、ピリミジン、ピラジン、インドール、キノリン、プリン、フェナジン、プテリジン、メラミン等が挙げられる。含窒素複素環は、他のヘテロ原子を環中に含んでいても良い。
【0036】
また、ピリジル基を有するビニル化合物としては、例えば、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン、5−メチル−2−ビニルピリジン、5−エチル−2−ビニルピリジン等が挙げられる。これらのうち特に、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン等が好ましい。
【0037】
ニトリル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が挙げられる。
【0038】
ヒドロキシル基含有単量体としては、1分子中に少なくとも1つの第1級、第2級及び第3級ヒドロキシル基を有する重合性単量体が挙げられる。かかる単量体としては、例えばヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルエーテル系単量体、ヒドロキシル基含有ビニルケトン系単量体等がある。このようなヒドロキシル基含有単量体の具体例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のようなポリアルキレングリコール(アルキレングリコール単位数が、例えば2〜23である。)のモノ(メタ)アクリレート類;N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−(2−ヒドロキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N,N−ビス(2−ヒドロキシメチル)(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有不飽和アミド類;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、p−ビニルベンジルアルコール等のヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物類;(メタ)アクリレート類がある。これらの中で、ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類、ヒドロキシル基含有ビニル芳香族化合物が好ましく、特にヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体が好ましい。ヒドロキシル基含有不飽和カルボン酸系単量体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等のエステル、アミド、無水物等の誘導体であり、特にアクリル酸、メタクリル酸等のエステル化合物が好ましい。
【0039】
カルボキシル基含有単量体としては、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、テトラコン酸、桂皮酸等の不飽和カルボン酸類;又はフタル酸、琥珀酸、アジピン酸等の非重合性多価カルボン酸と、(メタ)アリルアルコール、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有不飽和化合物とのモノエステルのような遊離カルボキシル基含有エステル類及びその塩等が挙げられる。これらの中で、不飽和カルボン酸類が特に好ましい。
【0040】
エポキシ基含有単量体としては、(メタ)アリルグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート、3,4−オキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0041】
アルコキシシリル基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロキシメチルトリメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルメトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルエトキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルトリプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルメチルジプロポキシシラン、(メタ)アクリロキシメチルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルプロポキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルフェノキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジベンジロキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルジメチルベンジロキシシラン、トリメトキシビニルシラン、トリエトキシビニルシラン、6−トリメトキシシリル−1,2−ヘキセン、p−トリメトキシシリルスチレン等を挙げることができる。
【0042】
本発明に用いるスズ含有単量体としては、アリルトリ−n−ブチルスズ、アリルトリメチルスズ、アリルトリフェニルスズ、アリルトリ−n−オクチルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−ブチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリメチルスズ、(メタ)アクリルオキシトリフェニルスズ、(メタ)アクリルオキシ−n−オクチルスズ、ビニルトリ−n−ブチルスズ、ビニルトリメチルスズ、ビニルトリフェニルスズ、ビニルトリ−n−オクチルスズ等を挙げることができる。
【0043】
本発明に係る変性天然ゴムは、例えば天然ゴムラテックスに極性基含有単量体を添加し、さらにグラフト重合用の開始剤を加えた後、乳化重合を行い、次いで生成重合物を凝固、乾燥することにより得ることができる。
【0044】
グラフト重合用の開始剤としては、特に限定はなく種々の開始剤、例えば乳化重合用の開始剤を用いることができ、その添加方法についても特に限定はない。一般に用いられる開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、過酸化水素、クメンヒドロパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ジヒドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等が挙げられる。なお、重合温度を低減させるためには、レドックス系の重合開始剤を用いるのが好ましい。かかるレドックス系重合開始剤に用いる過酸化物と組合せる還元剤としては、例えばテトラエチレンペンタミン、メルカプタン類、酸性亜硫酸ナトリウム、還元性金属イオン、アスコルビン酸等が挙げられる。特に、tert−ブチルヒドロパーオキサイドとテトラエチレンペンタミンとの組合せがレドックス系重合開始剤として好ましい。
【0045】
本発明で行うグラフト重合は、前述の極性基含有単量体を天然ゴムラテックス中に添加し、所定の温度で撹拌しながら重合する一般的な乳化重合で良い。ここで、予め極性基含有単量体に水と乳化剤を加え、十分に乳化させたものを天然ゴムラテックス中に添加しても良いし、極性基含有単量体を直接天然ゴムラテックス中に添加し、必要に応じて単量体の添加前又は添加後に乳化剤を添加しても良い。
【0046】
乳化剤としては、特に限定されず、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等のようなノニオン系の界面活性剤が挙げられる。
【0047】
ゴム組成物にカーボンブラックやシリカと配合した際の加工性を低下させることなく、本発明の効果を有効に発揮させることを考慮すると、天然ゴムの分子に対し万遍なく少量の極性基を導入することが重要であり、このために重合開始剤の添加量は極性基含有単量体100モルに対し1〜100モル%が好ましく、10〜100モル%がより好ましい。
【0048】
本発明に係る変性天然ゴムは、上述した各成分を反応容器に仕込み、30〜80℃で10分〜7時間反応させてグラフト重合を行うことにより、変性天然ゴムラテックスを得、この変性天然ゴムラテックスを凝固し、洗浄後、真空乾燥機、エアドライヤー、ドラムドライヤー等の乾燥機を用いて乾燥することにより得ることができる。
【0049】
本発明に係る変性天然ゴムにおいて、極性基含有単量体のグラフト量は天然ゴムラテックスのゴム分に対し0.01〜5.0質量%が好ましく、0.1〜3.0質量%がより好ましく、0.2〜1.0質量%が特に好ましい。極性基含有単量体のグラフト量が0.01質量%未満の場合、この変性天然ゴムを用いることによる本発明の効果を十分に得ることができず、5.0質量%を超えると、粘弾性、S−S特性(引張試験機における応力−歪曲線)等の天然ゴム本来の優れた特性が損なわれると共に、加工性が低下するおそれがある。
【0050】
次に、本発明の重荷重用空気入りタイヤのゴムチェーファーを構成するゴム組成物にゴム成分として上記変性天然ゴムと共に含まれる変性ジエン系合成ゴムについて説明する。
【0051】
本発明に係る変性ジエン系合成ゴムとして、例えば、変性ブタジエン系ゴム、スズ変性スチレン−ブタジエンゴム、一端にアミノ基を有し、他端にアルコキシシランを有する変性ジエン系合成ゴムが挙げられる。
【0052】
まず、変性ブタジエン系ゴムについて説明する。変性ブタジエン系ゴムとしては、1,3−ブタジエンの単独重合体、又は1,3−ブタジエンとアニオン重合可能なコモノマーとの共重合体であって、該(共)重合体(本明細書において「(共)重合」とは「重合又は共重合」を意味する。)中のコモノマーの結合量が10質量%以下で、且つ下記式(I)で表されるアミノ基、及び下記式(II)で表される環状アミノ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有する変性ブタジエン系ゴムが挙げられる。
【化3】



(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数12以下の、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である。)
【化4】



(式中、Rは、3〜16のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN−アルキルアミノアルキレン基を示す。)
【0053】
ここで、共重合体成分であるコモノマーとしては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、イソプレン、ピペリレン、及び1,3−ペンタジエン等の1種又は2種以上が挙げられ、これらの中でもスチレンが好ましい。
【0054】
この変性ブタジエン系ゴムは、コモノマーの結合量が10質量%以下であり、0質量%であるのが特に好ましい。この場合、変性ブタジエン系ゴムは、1,3−ブタジエンの単独重合体、即ちポリブタジエンの変性物である。また、上記変性ブタジエン系ゴムは、1,3−ブタジエン単位のビニル結合量が25質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのが更に好ましい。変性ブタジエン系ゴムのコモノマーの結合量及び1,3−ブタジエン単位のビニル結合量を上記の範囲に限定することで、ゴム組成物の耐クリープ性と低発熱性とを向上させることができる。また、上記変性ブタジエン系ゴムは、ガラス転移温度が−50℃以下であるのが好ましい。
【0055】
式(I)において、Rは、炭素数12以下のアルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基で、メチル基、エチル基、ブチル基、イソブチル基、オクチル基、シクロヘキシル基、3−フェニル−1−プロピル基等が好適に挙げられる。なお、式(I)中の2個のRは、同じでも異なっていてもよい。
【0056】
式(II)において、Rは、3〜16個のメチレン基を有する2価の、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基又はN−アルキルアミノアルキレン基である。ここで、置換アルキレン基には、1置換から8置換のアルキレン基が含まれ、置換基としては、炭素数1〜12の鎖状若しくは分枝状アルキル基、シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、アリール基及びアラルキル基が挙げられる。また、R基としては、トリメチレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オキシジエチレン基、N−アルキルアザジエチレン基、ドデカメチレン基及びヘキサデカメチレン基等が好ましい。
【0057】
上記R基は、環状アミン類から誘導することができ、該環状アミン類としては、特に限定されるものではないが、アザシクロヘプタン(即ち、ヘキサメチレンイミン)、2−(2−エチルヘキシル)ピロリジン、3−(2−プロピル)ピロリジン、3,5−ビス(2−エチルヘキシル)ピペリジン、4−フェニルピペリジン、7−デシル−1−アザシクロトリデカン、3,3−ジメチル−1−アザシクロテトラデカン、4−ドデシル−1−アザシクロオクタン、4−(2−フェニルブチル)−1−アザシクロオクタン、3−エチル−5−シクロヘキシル−1−アザシクロヘプタン、4−ヘキシル−1−アザシクロヘプタン、9−イソアミル−1−アザシクロヘプタデカン、2−メチル−1−アザシクロヘプタデセ−9−エン、3−イソブチル−1−アザシクロドデカン、2−メチル−7−t−ブチル−1−アザシクロドデカン、5−ノニル−1−アザシクロドデカン、8−(4'−メチルフェニル)−5−ペンチル−3−アザビシクロ[5.4.0]ウンデカン、1−ブチル−6−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、8−エチル−3−アザビシクロ[3.2.1]オクタン、1−プロピル−3−アザビシクロ[3.2.2]ノナン、3−(t−ブチル)−7−アザビシクロ[4.3.0]ノナン、1,5,5−トリメチル−3−アザビシクロ[4.4.0]デカン等が挙げられる。
【0058】
ブタジエン系ゴムに式(I)のアミノ基又は式(II)の環状アミノ基を導入する方法としては、例えば、特開2001−131227号公報に記載のように、ブタジエン系ゴムに結合した2−ヒドロキシ−1,3−プロピレン基を有する有機基に環状アミノ基の中の少なくとも一つの窒素原子を介して結合させる方法等もあるが、リチオアミンからなる重合開始剤を用いて重合開始末端を上記アミノ基で変性する方法が好ましい。
【0059】
即ち、炭化水素溶媒中で1,3−ブタジエンを主体とする1種以上のアニオン重合可能モノマーの溶液を生じさせ、下記式(III)で表されるリチオアミンを重合開始剤として上記モノマーを(共)重合させることで、式(I)のアミノ基又は式(II)の環状アミノ基が導入された変性ブタジエン系ゴムが得られる。
(AM)Li(Q)a ・・・(III)
(式中、aは0又は0.5〜3であり、Qは、炭化水素、エーテル類、アミン類及びそれらの混合物からなる群から選択される可溶化成分であり、AMは前記式(I)で表されるアミノ基又は式(II)で表される環状アミノ基である。)
【0060】
上記(Q)は可溶化成分であり、炭化水素、エーテル、アミン又はそれらの混合物であってもよい。この(Q)成分が存在すると、上記リチオアミンが炭化水素溶媒に可溶になる。また、上記(Q)には、3〜約300の重合単位から成る重合度を有するジエニルもしくはビニル芳香族のポリマー又はコポリマーが含まれる。上記ポリマーには、ポリブタジエン、ポリスチレン、ポリイソプレン及びそれらのコポリマーが含まれる。(Q)の他の例には、極性リガンド、例えば、テトラヒドロフラン(THF)及びテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)が含まれる。
【0061】
上記(AM)は、前記式(I)で表されるアミノ基又は式(II)で表される環状アミノ基であり、例えば、ポリマーの開始部位又は頭部に組み込まれることによって、官能性の少なくとも一つの基を末端に持ったポリマーが合成される。
【0062】
可溶成分である(Q)が、エーテル又はアミン化合物である場合、(Q)の存在下、無水の非プロトン性溶媒、例えばシクロヘキサン等を用いて官能化剤AM−Hの溶液を製造し、次に、この溶液に、同一又は同様の溶媒に溶解させた有機リチウム化合物の溶液を添加することにより、重合開始剤を生じさせることができる。上記有機リチウム化合物としては、下記式(VI)で表される化合物が好ましい。
Li ・・・(VI)
(式中、Rは、炭素数1〜約20のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基及びアラルキル基、並びにジオレフィン及びビニルアリールモノマー類から得られる25個以下の単位を有する短鎖長の低分子量ポリマー類からなる群から選択される。)
【0063】
ここで、アルキル基としては、n−ブチル基、s−ブチル基、メチル基、エチル基、イソプロピル基等が挙げられ、シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基、メンチル基等が挙げられ、アルケニル基としては、アリル基、ビニル基等が挙げられる。また、アリール基及びアラルキル基としては、フェニル基、ベンジル基、オリゴ(スチリル)基等が挙げられ、短鎖長ポリマー類としては、適当なモノマーのオリゴマー化を有機リチウムで開始させることによって生じさせたオリゴ(ブタジエニル)類、オリゴ(イソプレニル)類、オリゴ(スチリル)類等が挙げられる。上記有機リチウム化合物としては、n−ブチルリチウムが好ましい。式(III)のリチオアミンを生成するに際しては、特開平6−199921号公報等に開示されているin situ法を用いることもできる。
【0064】
また、必要に応じて式(III)のリチオアミンと以下の有機アルカリ金属化合物との混合物を重合開始剤として用いることもできる。この際、有機アルカリ金属化合物としては、下記式(VII)、式(VIII)、式(IX)、式(X)、又は式(XI)で表される化合物が好ましい。
M ・・・(VII)
OM ・・・(VIII)
C(O)OM ・・・(IX)
NM ・・・(X)
10SOM ・・・(XI)
(式(VII)〜式(XI)において、R、R、R、R、R及びR10は、それぞれ炭素数1〜12のアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基又はフェニル基であり、Mは、Na、K、Rb又はCsである。)
【0065】
ここで、金属成分Mとしては、Na及びKが特に好ましい。リチオアミンと有機アルカリ金属化合物からなる開始剤混合物は、好適には、該リチオアミン開始剤中のリチウム1当量当たり約0.02〜約0.5当量の有機アルカリ金属化合物を含有するのが好ましい。
【0066】
上記開始剤又はその混合物には、重合が不均一にならないようにキレート剤を添加することができる。有用なキレート剤としては、テトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)、オキソラニル環状アセタール類及び環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類等が挙げられ、これらの中でも、環状オリゴマー状オキソラニルアルカン類が特に好ましく、最も好ましいのは、2,2−ジ(テトラヒドロフリル)プロパンである。
【0067】
また、重合溶媒としては、種々のヘキサン類、ヘプタン類、オクタン類及びそれらの混合物などが用いられる。
【0068】
前記変性ブタジエン系ゴムは、更に、下記式(IV)で表されるカップリング剤から誘導される少なくとも1種のスズ−炭素結合を有するのが好ましい。この場合、前記変性ブタジエン系ゴムは、ゴム組成物の低発熱性を更に向上させることができる。
SnX ・・・(IV)
(式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜20のシクロアルキル基、炭素数6〜20のアリール基及び炭素数7〜20のアラルキル基からなる群から選択され、Xは塩素又は臭素であり、bは0〜3の整数、cは1〜4の整数である。但し、b+c=4である。)
【0069】
上記Rとしては、メチル基、エチル基、n−ブチル基、ネオフィル基、シクロヘキシル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。上記式(IV)のカップリング剤の中でも、四塩化スズ、RSnCl、RSnCl、RSnCl等が好ましく、四塩化スズが特に好ましい。
【0070】
また、上記変性ブタジエン系ゴムには、他の変性剤を使用することもできる。好ましい他の変性剤としては、カルボジイミド類、N−メチルピロリジノン、環状アミド類、環状尿素類、イソシアネート類、シッフ塩基、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等が挙げられる。
【0071】
上記変性ブタジエン系ゴムは、少なくとも1種の上記アミノ基(AM)を末端に有するポリマーであり、ここで、AMは、アミンと有機リチウム化合物との反応生成物から誘導することができる。
【0072】
また、上記変性ブタジエン系ゴムは、更にスズ−炭素結合を分子鎖中又は末端に有する多官能性のポリマーであるのが好ましく、該スズ−炭素結合は、例えば、停止剤、カップリング剤及び連結剤からなる変性剤から誘導することができる。これらの変性剤を反応容器に加えた後、容器を約1〜約1000分間撹拌することで、重合体にスズ−炭素結合が生成する。スズ−炭素結合を有する変性ブタジエン系ゴムは、補強性充填材であるカーボンブラックに対して大きな親和性を示すため、カーボンブラックの分散性を改善し、その結果、ゴム組成物の低発熱性が大きく向上する。
【0073】
次に、スズ変性スチレン−ブタジエンゴムについて説明する。スズ変性スチレン−ブタジエンゴムは、Snを有すると共にスチレン成分を20〜45質量%の範囲で含み且つビニル量を30質量%以下のものが好ましく、このようなスズ変性スチレン−ブタジエンゴムを用いることにより、低発熱性及びヒステリシスロスの向上を図ることができる。
【0074】
スズ変性スチレン−ブタジエンゴムは、溶液重合によって得られるスチレン−ブタジエン共重合体であって、スチレン成分が20〜45質量%の範囲で含まれ且つビニル量が30質量%以下にあり、スズは重合鎖中、スチレンの重合開始末端、重合活性末端の何れかに有していても良く、特に、スチレンの重合開始末端、又は重合活性末端の少なくとも一方の末端にSnを有する末端スズ変性スチレン−ブタジエンゴムであることが好ましい。 スズ変性スチレン−ブタジエンゴムは、例えば以下に示す重合開始剤を用いて製造することができる。
【0075】
基本的には原料として1,3−ブタジエン及びスチレンを用いる。また、アルカリ金属化合物、好ましくはリチウム化合物を重合開始剤とし、溶液重合(アニオン重合)させることにより得る。そして、このような重合により、末端が重合活性末端であるスチレン−ブタジエン共重合体からなるベースポリマー(反応停止前の活性末端を有する共重合体)を得る。ベースポリマーの末端をスズ化合物で変性することにより、所望のスズ変性スチレン−ブタジエンゴムを得る。
【0076】
また、重合開始剤としては、スズ原子を有するアルカリ金属化合物、好ましくはスズ原子を有するリチウム化合物を重合開始剤とすることができる。この場合、重合開始末端にもスズ原子が導入される。また、ポリマー鎖中にスズ原子を導入するものとしては、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンに加えてスズ原子含有化合物(モノマー)を使用することができる。
【0077】
ベースポリマーに使用する重合開始剤は、アルカリ金属化合物であるが、リチウム系化合物が良い。リチウム系化合物としては、通常のリチウム化合物だけでなく、上述したようにスズ原子を有するリチウム化合物、スズ原子及び窒素原子を有するリチウム化合物を使用しても良い。
【0078】
リチウム化合物としては、例えばヒドロカルビルリチウム、リチウムアミド化合物などが用いられる。ヒドロカルビルリチウムでは、重合開始末端がヒドロカルビル基であるスチレン−ブタジエン共重合体のベースポリマーが得られる。また、リチウムアミド化合物では、重合開始末端に窒素含有基を有するベースポリマーが得られる。
【0079】
ヒドロカルビルリチウムとしては、炭素数2〜20のヒドロカルビル基を有するものが良く、例えば、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、tert−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フェニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フェニルリチウム、4−フェニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、シクロペンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。
【0080】
リチウムアミド化合物としては、例えばリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムビス−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデシルアミド, リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド,リチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられる。
【0081】
その他のスズ原子を有するリチウム化合物としては、トリブチルスズリチウム,トリオクチルスズリチウムなどのトリオルガノスズリチウム化合物が挙げられる。スズ原子及び窒素原子を有するリチウム化合物としては、代表的なものとしてトリオルガノアミドスズリチウム(式が[R(R)N]SnLiで、Rが水素、Rは炭素水素基。)とトリオルガノイミドスズリチウム(式が[R(R)N]SnLiで、R及び、Rは炭素水素基であって、RとRの末端は互いに結合していて良い。)とを挙げることができる。具体的には、トリピロリジドスズリチウム、トリヘキサメチレンイミドスズリチウム、トリジエチルアミドスズリチウム、及びトリ(ジプロピルアミド)スズリチウムなどがある。
【0082】
また、原料として1,3−ブタジエン及びスチレンに加えてスズ原子含有化合物(モノマー)等を用いても良く、スズ原子含有化合物としては、2−トリブチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリオクチルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリシクロヘキシルスタニル−1,3−ブタジエン、2−トリフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジブチルフェニルスタニル−1,3−ブタジエン、2−ジフェニルオクチルスタニル−1,3−ブタジエン、m−ビニルベンジルトリブチルスズ、m−ビニルベンジルトリオクチルスズ、m−ビニルベンジルトリフェニルスズ、m−(1−フェニルビニル)ベンヂルトリブチルスズ、及びこれらのp体,m体/p体混合物などがある。
【0083】
スズ変性スチレン−ブタジエンゴムは、上記のリチウム化合物を重合開始剤として用い、アニオン重合によるスチレン−ブタジエン共重合体の製造方法としては特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、反応に不活性な有機溶剤、例えば脂肪族,脂環族,芳香族炭化水素化合物などの炭化水素系溶剤中において、有機リチウム化合物を重合開始剤として、スチレンと1,3−ブタジエンをアニオン重合させることにより、目的のスチレン−ブタジエン共重合体が得られる。この重合反応における温度は、通常−80〜150℃、好ましくは−20〜100℃の範囲で選定される。重合反応は、発生圧力下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相に保つ十分な圧力で操作することが望ましい。またより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。得られたベースポリマーにおける重合開始末端にヒドロカルビル基又は窒素含有基を有し、かつ他方の末端が重合活性である変性前のスチレン−ブタジエン共重合体の重合活性末端に、スズ化合物を反応させることにより、スズ変性スチレン−ブタジエン共重合体ゴムが得られる。
【0084】
上記スズ化合物としては、例えば四塩化スズ,トリブチルスズクロリド,トリオクチルスズクロリド,ジオクチルスズジクロリド,ジブチルスズジクロリド,塩化トリフェニルスズなどが挙げられる。
【0085】
スズ変性スチレン−ブタジエンゴムは、スチレン成分が20〜45質量%の範囲で含まれ且つビニル量が30質量%以下にあり、好ましくはスチレン成分が25〜35質量%の範囲であることが好ましい。
【0086】
スズ変性スチレン−ブタジエンゴムのスチレン成分が20質量%未満では、ゴムチェーファーにおける耐クリープ性及び低発熱性の両効果が十分でない。またスチレン成分が45質量%を超えると、ゴムチェーファーにおける発熱性を悪化させる。
【0087】
また、スズ変性スチレン−ブタジエンゴムに含まれるビニル量が30質量%を超えると、耐摩耗性が低下する。
【0088】
次に、一端にアミノ基を有し、他端にアルコキシシランを有する変性ジエン系合成ゴムについて説明する。
【0089】
この変性ジエン系合成ゴムは、次の条件を満たすことが好ましい。
(1) DSCにて測定したガラス転移点が−90℃〜−30℃
(2) ムーニー粘度(ML1+4/100℃)が10〜150
(3) 共役ジエンと、モノビニル芳香属化合物との共重合体である
(4) 共重合体の共重合に供する共役ジエン単量体及びビニル芳香族炭化水素単量体が各々ブタジエン及びスチレンである
(5) 炭化水素溶媒中で、リチウムアミド化合物を開始剤として用いて共役ジエン単量体を重合または共重合させた後、その重合活性末端と(式1)で示される分子内にアミノ基を含有するアルコキシラン化合物を反応させてなる
【化5】



ただし、各記号は以下のように定義する。
11:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基であり、n個のR11は互いに同じでも異なっていても良い。
12:炭素数1から12のアルキレン基、アリレン基、アリーレン基
13、R14:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基、アミノ基、エーテル基、イミノ基
n:2または3
(6) 上記リチウムアミド化合物が環状イミン化合物とアルキルリチウムから調整される
(7) 上記分子内にアミノ基を含有するアルコキシシラン化合物が(式2)で示される環状アミノ基を含有するシラン化合物である
【化6】


ただし、各記号は以下のように定義する。
11:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基であり、n個の
11は互いに同じでも異なっていても良い。
12:炭素数1から12のアルキレン基、アリレン基、アリーレン基
13:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基、アミノ基、エーテル基、イミノ基
n:2または3
(8) 上記分子内にアミノ基を含有するアルコキシシランが(式3)で示されるメチレンアミノ基を含有するシラン化合物である
【化7】


ただし、各記号は以下のように定義する。
11:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基であり、n個のR11は互いに同じでも異なっていても良い。
12:炭素数1から12のアルキレン基、アリレン基、アリーレン基
13:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基、アミノ基、エーテル基、イミノ基
n:2または3
(9) 上記環状アミノ基が(式4)で示される4,5−ジヒドロイミダゾール基である
【化8】


ただし、各記号は以下のように定義する。
11:炭素数1から12のアルキル基、アリル基、アリール基であり、n個のR11は互いに同じでも異なっていても良い。
12:炭素数1から12のアルキレン基、アリレン基、アリーレン基
n:2または3
【0090】
以下に、この変性ジエン系合成ゴムについてより詳細に説明する。
【0091】
この変性ジエン系合成ゴムは、炭化水素溶媒中で、リチウムアミド化合物を開始剤として用いて共役ジエン単量体を重合または共重合させた後、その重合活性末端と前記(式1)で示されるアミノアルコキシシランを反応させることにより得られる。
【0092】
本発明で用いられる共役ジエン単量体としては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、2,3−ジメチルブタジエン、2−フェニル−1,3−ブタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらは、一種単独で用いても、二種以上を混合して用いてもよい。中でも好ましいのは1,3−ブタジエンである。また、共役ジエン単量体との共重合に用いられる、ビニル芳香族炭化水素単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、1−ビニルナフタレン、3−ビニルトルエン、エチルビニルベンゼン、ジビニルベンゼン、4−シクロヘキシルスチレン、2,4,6−トリメチルスチレン等を例示することができる。中でも好ましいのは、スチレンである。更に、単量体として共役ジエン及びビニル芳香族炭化水素を用いて共重合を行う場合、各々1,3−ブタジエン及びスチレンを使用することが実用性、特にモノマーを容易に入手可能であり又アニオン重合特性がリビング性等の点で優れるとの理由から特に好ましい。
【0093】
重合に使用される開始剤としては、一般的なリチウムアミド化合物はいずれも使用する事ができる。具体的な例としては、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジヘプチルアミド、リチウムジヘキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ−2−エチルヘキシルアミド、リチウムジデカンアミド、リチウム−N−メチルピペラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミドリチウムメチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミド等が挙げられるが、カーボンブラックへの相互作用効果及び、重合開始能を考えた場合環状リチウムアミドである、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムヘプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、等が好ましくその中でも特に効果が優れるリチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジドが最も好ましい。これらのリチウムアミド化合物は、一般に重合に際して二級アミンと有機リチウム化合物より事前調整される場合が多いが、(特開平6−199921号)に示されるように、重合系中で調整する手法を用いてもよい。このようなリチウムアミド開始剤の調整に用いられる有機リチウム化合物の例としては、エチルリチウム、n−プロピルリチウム、i−プロピルリチウム、n−ブチルリチウム、sec −ブチルリチウム、t−オクチルリチウム、n−デシルリチウム、フエニルリチウム、2−ナフチルリチウム、2−ブチル−フエニルリチウム、4−フエニル−ブチルリチウム、シクロヘキシルリチウム、4−シクロペンチルリチウムなどが挙げられる。開始剤の使用量は単量体100g当り通常0.2〜20ミリモルの範囲で用いる。
【0094】
重合は、炭化水素溶剤などの有機リチウム開始剤を破壊しない溶剤中で行われる。適当な炭化水素溶剤としては、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、脂環族炭化水素から選ばれ、特に炭素数3〜8個を有するプロパン、n−ブタン、i−ブタン、n−ペンタン、i−ペンタン、n−ヘキサン、シクロヘキサン、プロペン、1−ブテン、i−ブテン、トランス−2−ブテン、シス−2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどが好ましい。またこれらの溶剤は2種類以上を混合して使用することもできる。
【0095】
なお、溶媒中の単量体濃度は、通常、5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%である。共役ジエンとビニル芳香族炭化水素の共重合の場合、仕込み単量体混合物中のビニル芳香族炭化水素の含量は好ましくは3〜50質量%、さらに好ましくは5〜45質量%である。
【0096】
本発明では、共役ジエン単量体のアニオン重合を行う際に既知のランダマイザーを用いることができる。ここで言うランダマイザーとは、共役ジエン重合体のミクロ構造のコントロール、例えばブタジエン重合体又はブタジエン−スチレン共重合体のブタジエン部の1,2結合、イソプレン重合体の3,4結合の増量等及び共役ジエン−ビニル芳香族炭化水素共重合体の単量体単位の組成分布のコントロール例えば、ブタジエン−スチレン共重合体のブタジエン単位、スチレン単位のランダム化等、の作用を有する化合物である。本発明におけるランダマイザーは特に制限されないが、一般に用いられているもの全てを含む。このものとしては例えばジメトキシベンゼン、テトラヒドロフラン、ジメキシエタン、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ビステトラヒドロフリルプロパン、トリエチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、N,N,N′,N′−テトラメチルエチレンジアミン、1,2−ジピペリジノエタンなどのエーテル類及び第3級アミン類などを挙げることができる。またカリウム−t−アミレート、カリウム−t−ブトキシド等のカリウム塩類またナトリウム−t−アミレート等のナトリウム塩等も用いることができる。
【0097】
ランダマイザーの使用量は有機リチウム化合物1モル当量当たり、0.01〜1000モル当量の範囲で用いられる。
【0098】
本発明に用いられる末端変性剤はアルコキシシリル基をその分子内に有する必要がある。アルコキシル基は(式5)に示されるようにアニオン重合末端にたいして求核置換反応を行なうことにより変性重合体の生成を可能にする機能がある。また重合体末端と反応時に一部のアルコキシシリル基が、残ることによりこの変性重合体の末端には(式6)に示すように環状アミノ基とアルコキシル基の双方が存在することになる。このうちアルコキシル基についてはこの重合体をシリカと配合した場合に、(式7)に示すようにシリカの表面官能基であるシラノール基と縮合反応することにより化学結合を生じる。このことによりこの変性重合体はシリカ配合において良好な補強特性を得ることができ、摩耗特性、破壊特性において良好な配合ゴムを得ることができる。
【0099】
【化9】

【0100】
【化10】

【0101】
【化11】

【0102】
また上記の作用機構から末端変性剤のアルコキシル基は珪素原子一個あたり二個以上有することが望ましい。すなわち、もしもアルコキシ基が一つのみしか含まれない場合、このアルコキシル基が重合体末端への付加反応に使用され、シリカ表面のシラノール基との縮合反応に用いられる官能基が残らないからである。又アルコキシル基としては一般に用いられるアルコキシル基はいずれも用いることができる。たとえばメトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、オクタノキシ基等があげられる。この中で特に一般的にはメトキシ基、エトキシ基及びフェノキシ基等が用いられる。
【0103】
本発明に使用されるアミノアルコキシ化合物のアミノ基は、塩基性を有するアミノ基構造であればいずれの官能基を用いても良好な結果を得る事ができる。常非還式の構造を持つアミノ化合物を重合体末端に導入した場合カーボンブラックとの相互作用が十分ではないため特にカーボンブラックを充填材として用いた場合において環状構造のアミノ基を有するものと比べて発熱性の改善効果が少ない。
【0104】
このような特性を、重合体の重合開始末端にもアミノ基を導入する事により系の塩基性を上げる事で解決可能である。さらに前記(式2)に示されるような環状構造アミノ基を有する場合においては、特に低ロス特性に優れた重合体を得る事ができる。
【0105】
環状アミノ化合物を用いた場合においては、特開平6−199921号公報にも示されているようにカーボンブラックとの特異的な相互作用を有するために良好な充填材分散効果を有する。またメチレンアミノ基を有する場合においても塩基性の相違から同様の効果がえられる。
【0106】
またさらに、特に塩基性の高いジヒドロイミダゾールを置換基として持つアルコキシシランで重合体末端を変性した場合、このような高い塩基性の官能基はカーボンブラック及びシリカの双方に非常に強い相互作用を持つために最も優れた充填材分散効果を持つことがわかった。
【0107】
本発明で使用される非環状アルコキシシランの具体例としては、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本発明で使用される非環状より好ましい環状アミノアルコキシシランの具体例としては、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリトリメトキシシラン、ヘキサメチレンイミノメチルトリメトキシシラン、ヘキサメチレンイミノメチルトリエトキシシラン、2−ヘキサメチレンイミノエチルトリエトキシシラン、2−ヘキサメチレンイミノエチルトリメトキシシラン、3−ピロリジノプロピルトリエトキシシラン、3−ピロリジノプロピルトリメトキシシラン、3−ヘプタメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3−ドデカメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ヘキサメチレンイミノプロピルエチルジエトキシシラン、N-(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N-(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N-(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾ−ル、2−(10−(トリエトキシシリル)デシル)−1,3−オキサゾリン、等があるが、3-ヘキサメチレンイミノプロピルトリエトキシシラン、ヘキサメチレンイミノメチルトリメトキシシラン、N-(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾ−ル、N-(3−トリメトキシシリルプロピル)−4,5−イミダゾ−ル、等が好ましく、さらにその中でもジヒドロイミダゾリジルプロピルトリエトキシシランが充填剤の分散効果及び補強効果において最も優れるとの理由で特に好ましい。
【0108】
本発明で使用される環状アミノアルコキシシランの量は、ジエン系単量体の重合に使用される、有機アルカリ金属1モルに対し通常0.25〜3.0モルであり、好ましくは0.5〜1.5モルである。
【0109】
0.25モルより少ない量ではアルコキシ基がカップリング反応に消費されて好ましくない。また3モルを超えるような量においては過剰の変性剤が無駄になるとともに、変性剤に含まれる不純物によりアニオン重合末端が失活して実質的な変成功率が低下して好ましくない。
【0110】
本発明における末端変性剤と重合体末端リチウムの反応温度はジエン系重合体の重合温度をそのまま用いることができる。具体的には30℃〜100℃が好ましい範囲としてあげられる。30℃未満では重合体の粘度が上昇しすぎる傾向があり100℃を超えると、末端アニオンが失活し易くなるので好ましくない。
【0111】
これらの環状アミノアルコキシシランの重合鎖末端への添加時期、方法については特に限定はないが一般的にこのような変性剤を用いる場合は、重合終了後に行なう場合が多い。
【0112】
この重合鎖末端変性基の分析は、アミノ末端量についてはHPLCを用いる方法で、アルコキシシランについてはNMRを用いる事によって行うことができる。
【0113】
得られた重合体または共重合体は、DSCにて測定したガラス転移点(Tg)が−90℃〜−30℃であることが好ましい。通常のアニオン重合の処方においては−90℃以下の重合体を得るのは困難であり又−30℃以上の重合体については室温領域で硬くなりゴム状組成物として用いるのにやや不都合である。
【0114】
本発明における変性ジエン系合成ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は10〜150、好ましくは15〜70である。ムーニー粘度が10未満の場合は破壊特性を始めとするゴム物性が十分に得られず、150を超える場合は作業性が悪く配合剤とともに混練りすることが困難である。
【0115】
本発明における変性ジエン系合成ゴムの重合は約−80〜150℃の範囲内で任意の温度で行うことができるが、−20〜100℃の温度が好ましい。重合反応は発生圧下で行うことができるが、通常は単量体を実質的に液相下に保つに十分な圧力で操作することが望ましい。即ち、圧力は重合される個々の物質や、用いる希釈剤及び重合温度にもよるが、所望ならばより高い圧力を用いることができ、このような圧力は重合反応に関して不活性なガスで反応器を加圧する等の適当な方法で得られる。
【0116】
一般に、開始剤成分、溶媒、単量体等重合工程に関与する全ての物質から、水、酸素、二酸化炭素及び他の触媒毒を除去するのが好適である。
【0117】
本発明に係るゴム組成物のゴム成分においては、より耐クリープ性、ビード部耐久性を向上させつつ、転がり抵抗を低減させるという観点から、変性天然ゴムと変性ジエン系合成ゴムとの質量比(変性天然ゴム/変性ジエン系合成ゴム)が、80/20〜20/80であることが好ましく、60/40〜40/60であることがより好ましい。
【0118】
なお、変性ジエン系合成ゴムとしては、前述の変性ブタジエン系ゴム、スズ変性スチレン−ブタジエンゴム、一端にアミノ基を有し、他端にアルコキシシランを有する変性ジエン系合成ゴムの各々の1種のみを用いてもよく、これらの2種以上を組み合わせて用いても良い。特に、これらのうちシラン変性BRを用いることが好ましい。
【0119】
本発明に係るゴム成分は、前記変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムの他、更に、この変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴム以外の他のゴム成分を含有していても良い。この場合、他のゴム成分としては、通常の天然ゴム及びジエン系合成ゴムが挙げられる。ジエン系合成ゴムとしては、例えばスチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、ポリブタジエン(BR)、ポリイソプレン(IR)等が挙げられる。これらの他のゴム成分は、1種を単独で用いても良く、2種以上を併用しても良い。ただし、これらの他のゴム成分は、全ゴム成分100質量部中40質量部以下であることが好ましい。
【0120】
本発明に係るゴム組成物中の充填剤の配合量は、前記ゴム成分100質量部に対し55質量部以上である。充填剤量が55質量部未満であると、耐クリープ性が劣化し、充分な破壊特性が得られないおそれがある。
【0121】
上記充填剤としては、カーボンブラック及びシリカが挙げられる。本発明においては、充填剤としてカーボンブラックを単独で配合するか、又はカーボンブラックとシリカの両方を配合することが好ましい。カーボンブラックを単独で配合する場合、良好な転がり抵抗性、耐クリープ性およびビード部耐久性を両立させるという観点から、カーボンブラックの配合量がゴム成分100質量部に対して55〜85質量部であることが好ましい。カーボンブラック及びシリカの両方を配合する場合、良好な転がり抵抗性、耐クリープ性およびビード部耐久性を両立させるという観点から、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラック及びシリカの合計の配合量のうち、シリカの配合量が0〜30質量部であることが好ましい。
【0122】
カーボンブラックとしては、市販のあらゆるものが使用でき、なかでもSAF,ISAF,HAF,FEF,GPFグレードのカーボンブラックを用いるのが好ましい。カーボンブラックは、特に窒素吸着比表面積(NSA)が50〜80m/gであり、ブチルテレフタレート吸油量が110ml/100g以上のものが好ましい。
【0123】
シリカとしては、市販のあらゆるものが使用でき、なかでも湿式シリカ、乾式シリカ、コロイダルシリカを用いるのが好ましい。シリカのBET比表面積としては150m/g以上のものが好ましく、より好ましくは170m/g以上、特に好ましくは190m/g以上である。このようなシリカとしては東ソー・シリカ(株)社製「ニプシルAQ」、「ニプシルKQ」などの市販品を用いることができる。
【0124】
本発明に係る上記ゴム組成物には、上述のゴム成分、充填剤の他、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、軟化剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等のゴム業界で通常使用される配合剤を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択し配合することができる。これら配合剤は、市販品を好適に使用することができる。なお、上記ゴム組成物は、ゴム成分に、充填剤と共に、必要に応じて適宜選択した各種配合剤を配合して、混練り、熱入れ、押出等することにより製造することができる。
【0125】
本発明の重荷重用空気入りタイヤは、ゴムチェーファーを上述のゴム組成物で構成してなるものである。本発明の重荷重用空気入りタイヤは、ゴムチェーファーを上述のゴム組成物で構成する以外特に制限は無く、常法に従って製造することができる。また、該重荷重用空気入りタイヤに充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を調整した空気の他、窒素、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガスを用いることができる。
【0126】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【実施例】
【0127】
製造例1:変性天然ゴムの製造方法
(1)天然ゴムラテックスの変性反応工程
フィールドラテックスをラテックスセパレーター(斎藤遠心工業製)を用いて回転数7500rpmで遠心分離して乾燥ゴム濃度60%の濃縮ラテックスを得た。この濃縮ラテックス1000gを、撹拌機、温調ジャケットを備えたステンレス製反応容器に投入し、予め10mlの水と90mgの乳化剤(エマルゲン1108,花王株式会社製)をN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート3.0gに加えて乳化したものを990mlの水とともに添加し、これらを窒素置換しながら30分間撹拌した。次いで、重合開始剤としてtert−ブチルヒドロパーオキサイド1.2gとテトラエチレンペンタミン1.2gとを添加し、40℃で30分間反応させることにより、変性天然ゴムラテックスを得た。
【0128】
(2)凝固、乾燥工程
次いで、ギ酸を添加してpHを4.7に調整することにより、変性天然ゴムラテックスを凝固させた。このようにして得た固形物をクレーパーで5回処理し、シュレッダーに通してクラム化し、熱風式乾燥機により110℃で210分間乾燥して変性天然ゴムAを得た。このようにして得た変性天然ゴムAの重量から極性基含有単量体としてのN,N−ジエチルアミノエチルメタクリレートの転化率は100%であることが確認された。また、該変性天然ゴムを石油エーテルで抽出し、さらにアセトンとメタノールの2:1混合溶媒で抽出することによりホモポリマーの分離を行ったところ、抽出物の分析からホモポリマーは検出されず、添加した単量体の100%が天然ゴム分子に導入されていることを確認した。
【0129】
製造例2:変性ブタジエンゴムの製造方法
乾燥し、窒素置換された800mlの耐圧ガラス容器に、シクロヘキサン300g、1,3−ブタジエン単量体50g、テトラヒドロフラン(THF)1mmolを注入し、これに0.55mmolのn−ブチルリチウムを加えた後ヘキサメチレンイミン0.5mmolを速やかに加え、50℃で2時間重合を行った。重合系は重合開始から終了まで、全く沈澱は見られず均一に透明であった。重合転化率は、ほぼ100%であった。
【0130】
重合溶液の一部をサンプリングし、イソプロピルアルコールを加え、固形物を乾燥し、ゴム状共重合体を得た。
【0131】
この重合系にさらに変性剤としてN−(3−トリエトキシシリルプロピル)−4,5−ジヒドロイミダゾールを0.55mmolを加えた後、さらに30分間変性反応を行った。この後重合系にさらにBHTのイソプロパノール5%溶液0.5mlを加えて反応の停止を行いさらに常法に従い重合体を乾燥することにより変性BRを得た。
【0132】
(実施例1〜3、比較例1〜5)
製造例1及び2をそれぞれ用いて、表1〜3に示す配合処方に従って、ゴム組成物を調整した。更に、該ゴム組成物を145℃で30分間加硫して加硫ゴムを得、該加硫ゴムの損失正接(tanδ)、動的弾性率(E’)、耐クリープ性を下記の方法で測定した。結果を表1〜3に示す。
【0133】
(1)損失正接(tanδ)
東洋清機(株)製のスペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用いて、初期荷重160g、周波数52Hz、測定温度25℃、歪2%でtanδを測定した。
【0134】
(2)動的弾性率(E’)
東洋清機(株)製のスペクトロメーター(動的粘弾性測定試験機)を用いて、初期加重160g、周波数52Hz、測定温度25℃にて、歪0.3%と歪2%時の動的弾性率(E’)をそれぞれ測定した。
【0135】
(3)耐クリープ性
JIS−#3号型試験片にて、(株)島津製作所製クリープ試験機を用い、定荷重モードでクリープ量を測定した。試験条件は以下のとおりである。結果は、表1及び3においてはゴム成分として未変性の天然ゴムおよび未変性のブタジエンゴムを用いた比較例1のゴム組成物のクリープ量を、表2においてはゴム成分として変性天然ゴムのみを用いた比較例8のゴム組成物のクリープ量を100として逆指数化した。指数値が大きいほど、クリープ量が小さく、良好な結果であることを示す。
試験条件:繰り返し引っ張り試験、荷重 1kg、周波数 5Hz
【0136】
次に、得られたゴム組成物をゴムチェーファーに適用したトラック・バス用タイヤ(11R22.5 14PR)を試作した。試作タイヤの転がり抵抗性、耐クリープ性及びビード部耐久性を下記の方法で測定した。結果を表1〜3に示す。
【0137】
(4)転がり抵抗
各試作タイヤをドラム試験にて、80km/時の走行時のタイヤ接地面に発生する進行方向に対する抵抗を測定し、表1及び3においてはゴム成分として未変性の天然ゴムおよび未変性のブタジエンゴムを用いた比較例1の値を、表2においてはゴム成分として変性天然ゴムのみを用いた比較例8の値を100とし、指数で表示した。この値が小さい程、転がり抵抗が小さく良好である。
【0138】
(5)ビード部耐久性
各試作タイヤについて、空気圧900kPaで酸素を充填し、60℃で1カ月間放置した後、ビード部の耐久性を確認するため、荷重6270kg、速度60km/時の条件でドラム試験を行い、走行距離を測定した。表1及び3においてはゴム成分として未変性の天然ゴムおよび未変性のブタジエンゴムを用いた比較例1を、表2においてはゴム成分として変性天然ゴムのみを用いた比較例8をコントロールとして指数で表した。指数の大きいほうが長距離を走行したことを示し、すなわちビード部耐久性に優れていることを示す。
【0139】
【表1】

【0140】
*1 RSS#4.
*2 製造例1で製造した変性天然ゴム.
*3 製造例2で製造した変性ブタジエンゴム.
*4 JSR社製「BR01」.
*5 旭カーボン社製「#70」.
*6 旭カーボン社製「#16」.
*7 N−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン.
*8 N−(tert−ブチル)−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド.
【0141】
表1において、ゴム成分として変性天然ゴムと変性ブタジエンゴムの両方を配合し、充填剤量、tanΔ/充填剤量、ΔE’が本発明で規定する範囲内である実施例1〜3では、未変性の天然ゴム及び未変性のブタジエンゴムを配合した比較例1よりも耐クリープ性、ビード耐久性が向上し、転がり抵抗が低減した。
【0142】
一方で、未変性の天然ゴム及び未変性のブタジエンゴムを配合し、カーボンブラックの量を減量した比較例2と、未変性の天然ゴム及び未変性のブタジエンゴムを配合し、カーボンブラックのグレードを低級化した比較例3では、比較例1より転がり抵抗が低減したが、耐クリープ性、ビード部耐久性が劣化した。
【0143】
また、変性天然ゴムと未変性のブタジエンゴムを配合した比較例4、未変性の天然ゴムと変性ブタジエンゴムを配合した比較例5では、いずれの配合でもtanδの低減および転がり抵抗の改良が見られたが、耐クリープ性の悪化が見られた。
【0144】
また、変性天然ゴム及び変性ブタジエンゴムを配合し、カーボンブラックの量が本発明で規定する範囲より小さい比較例6では、比較例1より転がり抵抗は低減するものの、耐クリープ性及びビード部耐久性の劣化が見られた。一方で、変性天然ゴム及び変性ブタジエンゴムを配合し、カーボンブラックの量が本発明で規定する好ましい範囲より大きく、ΔE’が2.5MPaを越える比較例7では、比較例1より耐クリープ性が向上したが、転がり抵抗およびビード部耐久性が劣化した。
【0145】
【表2】

【0146】
*1〜5、7、8は表1と同じ.
【0147】
表2において、変性天然ゴムと変性ブタジエンゴムの配合比が80:20〜20:80の範囲内である実施例4〜8では、変性天然ゴムのみ配合した比較例8よりも耐クリープ性、ビード部耐久性が向上し、転がり抵抗が低減した。
【0148】
一方で、変性天然ゴムと変性ブタジエンゴムとの質量比が10/90である比較例9では、耐クリープ性と転がり抵抗が比較例8と同等であり、ビード部耐久性が比較例8より劣化していた。
【0149】
【表3】

【0150】
*1〜5、7、8は表1と同じ.
*9 東ソー・シリカ社製 ニプシルAQ.
【0151】
表3において、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラック及びシリカの合計の配合量のうち、シリカの配合量が0〜30質量部の範囲内にある実施例2、9〜12では、未変性の天然ゴム及び未変性のブタジエンゴムを配合した比較例1よりも耐クリープ性、ビード部耐久性が向上し、転がり抵抗が低減した。
【0152】
一方で、シリカの配合量が35質量部で、ΔE’が2.5MPaを越える比較例10では、比較例1より耐クリープ性が向上し、転がり抵抗が低減したが、ビード部耐久性が劣化した。また、カーボンブラック及びシリカの合計の配合量が90質量部であり、ΔE’が2.5MPaを越える比較例11では、比較例1より耐クリープ性が向上したが、転がり抵抗とビード部耐久性が劣化した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ゴムラテックスに極性基含有単量体をグラフト重合し、凝固、乾燥してなる変性天然ゴム及び変性ジエン系合成ゴムよりなるゴム成分100質量部に対して、55質量部以上の充填剤を配合してなり、25℃における2%歪時の損失正接(tanδ)とゴム成分100質量部に対する充填剤量との比(tanδ/充填剤量)が0.002以下であり、25℃における0.3%歪時と2%歪時の動的弾性率の差ΔE’が2.5MPa以下であるゴム組成物をゴムチェーファーに適用したことを特徴とする重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項2】
前記変性天然ゴムと変性ジエン系合成ゴムとの質量比(変性天然ゴム/変性ジエン系合成ゴム)が、80/20〜20/80の範囲内であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項3】
前記極性基が、アミノ基、イミノ基、ニトリル基、アンモニウム基、イミド基、アミド基、ヒドラゾ基、アゾ基、ジアゾ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルボニル基、エポキシ基、オキシカルボニル基、スルフィド基、ジスルフィド基、スルホニル基、スルフィニル基、チオカルボニル基、含窒素複素環基、含酸素複素環基、アルコキシシリル基及びスズ含有基から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項4】
前記極性基含有単量体のグラフト量が天然ゴムラテックスのゴム分に対し0.01〜5.0質量%であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項5】
前記変性ジエン系合成ゴムが変性ブタジエン系ゴムであることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項6】
前記変性ブタジエン系合成ゴムが、1,3−ブタジエンの単独重合体、又は1,3−ブタジエンとアニオン重合可能なコモノマーとの共重合体であって、該(共)重合体中のコモノマーの結合量が10質量%以下で、且つ下記式(I)で表されるアミノ基、及び下記式(II)で表される環状アミノ基からなる群から選択された少なくとも1種の官能基を有する変性ブタジエン系ゴムであることを特徴とする請求項5記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【化1】


(式中、Rは、それぞれ独立して炭素数12以下の、アルキル基、シクロアルキル基又はアラルキル基である。)
【化2】


(式中、Rは、3〜16のメチレン基を有する、アルキレン基、置換アルキレン基、オキシアルキレン基、又はN−アルキルアミノアルキレン基を示す。)
【請求項7】
前記変性ジエン系合成ゴムが、Snを有すると共にスチレン成分を20〜45質量%の範囲で含み且つビニル量が30質量%以下であるスズ変性スチレン−ブタジエンゴムであることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項8】
前記変性ジエン系合成ゴムが、一端にアミノ基を有し、他端にアルコキシシランを有する変性ジエン系合成ゴムであることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項9】
前記充填剤の配合量がゴム成分100質量部に対して55〜85質量部であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項10】
前記充填剤がカーボンブラック及びシリカであり、ゴム成分100質量部に対するカーボンブラック及びシリカの合計の配合量のうち、シリカの配合量が0〜30質量部であることを特徴とする請求項1記載の重荷重用空気入りタイヤ。
【請求項11】
前記カーボンブラックの窒素吸着比表面積(NSA)が50〜80m/gであり、ブチルテレフタレート吸油量が110ml/100g以上であることを特徴とする請求項10項に記載の重荷重用空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2009−7455(P2009−7455A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−169105(P2007−169105)
【出願日】平成19年6月27日(2007.6.27)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】