説明

重複エリア加熱器付マイクロ波フューザ装置

本マイクロ波フューザ装置は複製装置用であり、重複エリア(14)が生じるようレシーバ材移送経路(A)に面し千鳥配置された複数個のマイクロ波加熱器(10a,10b)を備え、それらマイクロ波加熱器(10a,10b)に対しレシーバ材移送経路沿いに相対移動中のレシーバ材(R)に向け、それらマイクロ波加熱器からマイクロ波エネルギを印加することで、そのレシーバ材にトナー像を熔着させる。本マイクロ波フューザ装置は、千鳥配置されているマイクロ波加熱器(10a,10b)同士の重複エリア(14)に面するよう配置された1個又は複数個の補助マイクロ波加熱器(16a,16b)を備える。その補助マイクロ波加熱器(16a,16b)からレシーバ材に向けマイクロ波エネルギを印加することで、そのレシーバ材の温度を高温に維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電写真式複製装置内でレシーバ材へのトナー像熔着に使用されるマイクロ波フューザ、特にレシーバ材移送方向に対しイントラック且つクロストラックに千鳥配置(staggered)された複数個の加熱器を有するマイクロ波フューザに関する。
【背景技術】
【0002】
静電写真式複写機、プリンタ等といった市販の一般的な複製装置では、まず誘電性を有する電荷保持部材乃至光導電部材(誘電性支持材)の均一帯電面に帯電パターンによる潜像を形成し、次いでその誘電性支持材上の潜像に色素性マーキング粒子(ドライインク)を吸着させて現像する。更に、紙シート、透明フィルム等の媒体(レシーバ材)をその誘電性支持材に接触させて電界を印加することで、現像で生じたドライインク像(トナー像)を誘電性支持材からレシーバ材へと転写させる。転写後は、レシーバ材及びその上の像を誘電性支持材から引き離して移送し、更にその像に熱及び圧力を加えてレシーバ材に固着(熔着)させることで、恒久的な複製像をレシーバ材上に発現させる。
【0003】
こうした装置では、個々のレシーバ材へのトナー像熔着をマイクロ波で行うことが可能である。マイクロ波による熔着プロセスは体積加熱プロセスであるので、そのレシーバ材の表裏にトナーを付着させておけば、両面のトナーを同時に熔融させてその面に固着させることができる。印刷先のレシーバ材が個別シート状であるなら、レシーバ材移送の都合上、レシーバ材を複数個のセグメントに区切って加熱しトナーを熔着させる仕組みにするのが望ましい。例えば、レシーバ材移送方向(イントラック方向)及びそれと交差する方向(クロストラック方向)の双方に沿ってその位置をずらし、数個のマイクロ波加熱器を配置することで(千鳥配置)、それを実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第4187405号明細書
【特許文献2】米国特許第5536921号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2002/0088799号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2003/0013034号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2007/0079718号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ただ、個々の加熱器にはクロストラック方向沿い加熱プロファイルがあるので、別々の加熱器で加熱されるエリア同士をクロストラック方向に沿って数mm程度重ならせる必要がある。レシーバ材及びその上のトナーのうちこの重複エリアを通る部分は、加熱から再加熱までの間に一旦大きく冷まされるため、その部分の画質は低くなる。即ち、重複エリアを通った部分と、それ以外のエリアで印刷された部分(加熱器を1回しか通っておらずその後は冷めるだけであった部分)とでは、印刷された画像の光沢、場合によってはその濃度に違いが生じる。こうした加熱後除熱による画質低下を抑えるには、レシーバ材のうち重複エリアを通過中の部分がある臨界温度以下の温度に下がらないようにすればよいが、その手段として赤外線加熱、紫外線加熱又は高温空気加熱を使用したとすると、重複エリア内だけを精密に加熱するのが難しいため画質が更に低下してしまう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の諸問題に鑑み、本願では、重複してカバーするエリアが生じるようレシーバ材移送経路に面し千鳥配置された複数個のマイクロ波加熱器を備え、それらマイクロ波加熱器に対しレシーバ材移送経路沿いに相対移動中のレシーバ材に向け、それらマイクロ波加熱器からマイクロ波エネルギを印加することで、そのレシーバ材にトナー像を熔着させる複製装置用のマイクロ波フューザ装置であって、千鳥配置されているマイクロ波加熱器同士で重複してカバーされるエリアに面するよう配置された1個又は複数個の補助マイクロ波加熱器を備え、その補助マイクロ波加熱器からレシーバ材に向けマイクロ波エネルギを印加することでそのレシーバ材の温度を高温に維持するマイクロ波フューザ装置を提案する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】静電写真式複製装置内のマイクロ波フューザを通過中のレシーバ材を示す斜視図である。
【図2】静電写真式複製装置内のマイクロ波フューザ、特に千鳥配置されている複数個のマイクロ波加熱器及びその千鳥配置により生じる重複エリアを示す上面図である。
【図3】静電写真式複製装置内のマイクロ波フューザ、特に本発明の特徴に係る重複エリア加熱器を示す上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、別紙図面を参照し本発明の好適な実施形態に関し詳細に説明する。
【0009】
図1に、マイクロ波フューザ装置10及びそれに対するレシーバ材Rの移送経路(矢印線A)を示す。この装置10は、レシーバ材R上の個々のセグメントにトナー像を好適に熔着させることができるよう、前述の通り複数個のマイクロ波加熱器をイントラック,クロストラックの両方向に沿い互い違いに配置、即ち経路Aに面して千鳥配置した構成である。図2に、それらマイクロ波加熱器10a、10b及び10cの平面配置を示す。マイクロ波加熱器の千鳥配置個数は、その種の加熱器の一般的な寸法や、レシーバ材移送経路沿いにマイクロ波フューザ装置を通過していくレシーバ材の寸法に依存するので、無論、図示例(3個)と違う個数になることもある。複数個のマイクロ波加熱器をこうして千鳥配置すると、前述の通り、前段の加熱器と後段の加熱器により重複して加熱されるエリア12,14が発生する。こうした重複エリアで不利益な温度条件(加熱又は除熱)が発生するのを防ぐため、本実施形態では、それらのエリアに面するよう補助マイクロ波加熱器16a,16bを設けている。これらの加熱器16a,16bは、対応する重複エリアだけを実質的に覆えればよいので割合に薄型である。
【0010】
本実施形態では、重複エリア12,14をそうした薄型の補助マイクロ波加熱器16a,16bで加熱することで、期待以上の独特な効果を多数発生させている。まず、エリア12,14に面して設けられている加熱器16a,16bは、自前のマイクロ波エネルギ源無しで稼働させることができる。即ち、熔着を担っているマイクロ波加熱器10a,10b又は10c(図2参照)で生じる反射エネルギで対応する補助マイクロ波加熱器を稼働させることができる(図3参照)。また、それは、それらの加熱器への電力注入口にサーキュレータを実装し、熔着プロセスの実行に不要なエネルギをそのサーキュレータで分離させ、サーキュレータ・補助マイクロ波加熱器間に設けた適当な伝送路(例えば20)を介しそのエネルギを重複エリア加熱器(例えば16a)に供給する構成を採ることで、実現することができる。更に、こうした構成は、エリア12,14内でレシーバ材の温もりを保つのに必要なマイクロ波電力がレシーバ材重量で左右され、そのレシーバ材への熔着に必要なマイクロ波電力と反比例する点からしても有益である。まず、単位面積当たり重量が小さな軽量レシーバ材と単位面積当たり重量がより大きな重量レシーバ材を比べると、軽量レシーバ材の方が重量レシーバ材より小電力で熔着を施せるが、軽量レシーバ材は重量レシーバ材より速く冷めるため、軽量レシーバ材のうち重複エリアを通過中の部分の温もりを保つには、重量レシーバ材におけるそれより大きなマイクロ波電力が必要になる。そうしたレシーバ材の違いに対しては、加熱器内可調素子を適切に調整し且つマイクロ波電力値を正確に選択してその加熱器に適量のエネルギを供給すること、即ち主としてレシーバ材により吸収されてしまいエネルギ反射がほとんど生じないようマイクロ波エネルギ値を選択することで、対処することができる。単純にマイクロ波電力を増加させるだけだとレシーバ材が損傷する可能性もあるので可調素子を調整する。重複エリア加熱器を使用するに当たっては、この仕組みを利用し、主たる加熱器内の可調素子を最適な状態からずらすようにする。即ち、供給したマイクロ波エネルギがレシーバ材で全て吸収されるのではなく、その一部が反射エネルギの形態をとって幅狭な重複エリア加熱器に供給されるようにする。
【0011】
また、その重複エリア加熱器は自前の可調部材無しでレシーバ材の違いに対応させることができる。即ち、上述の仕組みを利用し、軽量レシーバ材には最大限のまた重量レシーバ材にはより少量のエネルギが吸収されるよう、補助マイクロ波加熱器に供給されるエネルギを調整することができる。例えば、チューナ、誘電負荷、プランジャ等の周知可調部材のうち相応のものを使用し、個別のレシーバ材の特性に適合するよう補助マイクロ波加熱器向けのエネルギを調整することで、レシーバ材に供給される電力を最適化することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重複してカバーするエリアが生じるようレシーバ材移送経路に面し千鳥配置された複数個のマイクロ波加熱器を備え、それらマイクロ波加熱器に対しレシーバ材移送経路沿いに相対移動中のレシーバ材に向け、それらマイクロ波加熱器からマイクロ波エネルギを印加することで、そのレシーバ材にトナー像を熔着させる複製装置用のマイクロ波フューザ装置であって、
千鳥配置されているマイクロ波加熱器同士で重複してカバーされるエリアに面するよう配置された1個又は複数個の補助マイクロ波加熱器を備え、その補助マイクロ波加熱器からレシーバ材に向けマイクロ波エネルギを印加することでそのレシーバ材の温度を高温に維持するマイクロ波フューザ装置。
【請求項2】
請求項1記載のマイクロ波フューザ装置であって、その補助マイクロ波加熱器が、千鳥配置されているマイクロ波加熱器で生じた反射エネルギで稼働するマイクロ波フューザ装置。
【請求項3】
請求項2記載のマイクロ波フューザ装置であって、それら加熱器へのマイクロ波エネルギ注入口にサーキュレータがあり、熔着プロセスの実行に不要なエネルギをそのサーキュレータで分離させ、サーキュレータ・補助マイクロ波加熱器間に設けた適当な伝送路を介しそのエネルギを補助マイクロ波加熱器に供給するマイクロ波フューザ装置。
【請求項4】
請求項3記載のマイクロ波フューザ装置であって、重複エリアを通り移送されていくレシーバ材を適当な温度に保つのに必要なマイクロ波エネルギを、レシーバ材重量に応じ且つそのレシーバ材への熔着に必要なマイクロ波エネルギと反比例して分離させるマイクロ波フューザ装置。
【請求項5】
請求項1記載のマイクロ波フューザ装置であって、軽量レシーバ材には最大限のまた重量レシーバ材にはより少量のエネルギが吸収されるよう、相応量のエネルギをその補助マイクロ波加熱器に供給するマイクロ波フューザ装置。
【請求項6】
請求項5記載のマイクロ波フューザ装置であって、チューナ、誘電負荷及びプランジャを含む一群の周知可調部材のうち相応のものを使用し、個別のレシーバ材の特性に適合するようその補助マイクロ波加熱器向けのエネルギを調整することで、レシーバ材に供給されるエネルギ量を最適化するマイクロ波フューザ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−525411(P2010−525411A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−506205(P2010−506205)
【出願日】平成20年4月11日(2008.4.11)
【国際出願番号】PCT/US2008/004717
【国際公開番号】WO2008/133811
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】